小児慢性腎不全診療 -最近の動向-

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日本臨床腎移植学会 第 16 回集中セミナー 最近の小児腎不全と腎移植 東京女子医科大学腎臓小児科 三浦健一郎 服部元史 2019/2/15 大阪 本日の内容 1. 小児末期腎不全の原因疾患 2. 小児末期腎不全の腎代替療法 3. 小児腎移植の現況 4. 原疾患に応じた治療戦略 5. 今後の課題 1

1. 小児末期腎不全の原因疾患 その他 8.7% 腎虚血 1.7% HUS 1.7% 不明 7.5% Hattori M, et al. Clin Exp Nephrol 2015 2006-2011 全国調査 糸球体性腎炎 5.9% 嚢胞性腎疾患 ( 多発性嚢胞腎 ネフロン癆など ) 9.6% FSGS 12.2% 12.9% CAKUT 39.8% 遺伝性腎症 (Alport 症候群 先天性ネフローゼ症候群など ) 本日の内容 1. 小児末期腎不全の原因疾患 2. 小児末期腎不全の腎代替療法 3. 小児腎移植の現況 4. 原疾患に応じた治療戦略 5. 今後の課題 2

本邦小児末期腎不全患者の疫学調査 2012 日本小児腎臓病学会統計調査委員会 初回腎代替療法 経年的変化 Hattori M et al. Clin Exp Nephrol 19:933-938, 2015 腹膜透析 血液透析 先行的腎移植 腎代替療法なし 不明 1999 年 0~19 歳 (n=102) 54.9 40.2 3.9 1.0 2006~2011 年 0 ~19 歳 60.5 15.7 21.9 (n=540) 1.1 0.8 (%) 0 20 40 60 80 100 小児末期腎不全の腎代替療法 初回腎代替療法の選択 年齢別 日本小児腎臓病学会調査報告 2006-2011 年 3

透析療法開始後の腎移植実施率 腎代替療法開始後の生存率 服部ほか. 透析会誌 2014 本日の内容 1. 小児末期腎不全の原因疾患 2. 小児末期腎不全の腎代替療法 3. 小児腎移植の現況 4. 原疾患に応じた治療戦略 5. 今後の課題 4

小児腎移植数の推移 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 120 100 Total No.: 2,876 80 60 40 20 0 生体腎献腎 ( 心停止 ) 献腎 ( 脳死 ) Transplant year 免疫抑制薬開発の歴史 服部元史. 移植 49: 209, 2014 1950 1960 1970 1980 1990 2000 ステロイド 代謝拮抗薬 ステロイド アザチオプリン 1984 ミゾリビン 2001 ミコフェノール酸モフェチル (MMF) アルキル化薬 シクロホスファミド カルシニューリン拮抗薬 抗リンパ球抗体 その他 ALG 1985 シクロスポリン (CsA) 1991 1996 タクロリムス (FK506) ムロボナブ CD3 1994 2002 バシリキシマブ デオキシスパーガリン 5

移植年代別生存率 : 生体腎移植 MMF とバシリキシマブ導入 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 FK 導入 CsAとMZ 導入 64-85 86-95 <.0001 64-85 96-01 <.0001 64-85 02-14 <.0001 86-95 96-01 0.7411 86-95 02-14 0.1868 96-01 02-14 0.6643 1964~1985 No. at risk 406 316 274 244 189 生存率 [SE] 82.7 [1.9] 77.3 [2.1] 74.1 [2.2] 71.5 [2.4] 1986~1995 No. at risk 602 556 497 427 278 生存率 [SE] 96.6 [0.7] 93.4 [1.0] 92.8 [1.1] 91.2 [1.2] 1996~2001 No. at risk 425 394 345 117 - 生存率 [SE] 98.1 [0.7] 97.6 [0.8] 96.9 [0.9] - 2002~2014 No. at risk 869 460 101 - - 生存率 [SE] 98.9 [0.4] 98.1 [0.7] - - 移植年代別生存率 : 献腎移植 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 MMFとバシリキシマブ導入 FK 導入 CsAとMZ 導入 64-85 86-95 0.0081 64-85 96-01 <.0001 64-85 02-14 <.0001 86-95 96-01 0.8993 86-95 02-14 0.0895 96-01 02-14 0.1769 1964~1985 No. at risk 49 29 26 22 18 生存率 [SE] 72.5 [6.5] 67.4 [7.0] 62.0 [7.4] 58.8 [7.7] 1986~1995 No. at risk 52 42 38 34 21 生存率 [SE] 87.8 [4.7] 85.8 [5.0] 85.8 [5.0] 85.8 [5.0] 1996~2001 No. at risk 31 29 24 12 - 生存率 [SE] 96.8 [3.2] 93.3 [4.6] 93.3 [4.6] - 2002~2014 No. at risk 122 66 15 - - 生存率 [SE] 98.1 [1.3] 96.6 [2.0] - - 6

移植年代別生着率 : 生体腎移植 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 MMF とバシリキシマブ導入 FK 導入 CsA と MZ 導入 64-85 86-95 <.0001 64-85 96-01 <.0001 64-85 02-14 <.0001 86-95 96-01 0.001 86-95 02-14 <.0001 96-01 02-14 0.2406 1964~1985 No. at risk 292 182 135 106 83 生着率 [SE] 62.3 [2.8] 46.2 [2.9] 37.2 [2.8] 32.8 [2.8] 1986~1995 No. at risk 419 351 311 266 161 生着率 [SE] 84.9 [1.8] 76.4 [2.1] 70.1 [2.3] 63.4 [2.4] 1996~2001 No. at risk 367 329 282 95 - 生着率 [SE] 93.7 [1.3] 87.9 [1.7] 85.4 [2.0] - 2002~2014 No. at risk 747 393 87 - - 生着率 [SE] 96.4 [0.7] 92.3 [1.4] - - 移植年代別生着率 : 献腎移植 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 64-85 86-95 0.0791 64-85 96-01 <.0001 64-85 02-14 <.0001 86-95 96-01 0.0307 86-95 02-14 <.0001 96-01 02-14 0.0853 FK 導入 MMF とバシリキシマブ導入 CsA と MZ 導入 1964~1985 No. at risk 41 12 7 6 4 生着率 [SE] 30.6 [7.3] 17.9 [6.1] 15.3 [5.7] 12.75 [5.3] 1986~1995 No. at risk 34 15 10 9 7 生着率 [SE] 44.1 [8.5] 29.4 [7.8] 29.4 [7.8] 26.1 [7.6] 1996~2001 No. at risk 20 17 13 7 - 生着率 [SE] 85.0 [8.0] 70.0 [10.3] 63.6 [11.1] - 2002~2014 No. at risk 96 49 10 - - 生着率 [SE] 83.5 [4.1] 68.0 [7.8] - - 7

移植腎生着率の国際比較 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 Dharnidharka VR et al, N Engl J Med 371:549-558, 2014 1 年生着率 5 年生着率 NAPRTCS 2003-2010 生体腎移植 97 84 NAPRTCS 2003-2010 献腎移植 95 78 CTS 2005-2008 生体腎移植 98 92 CTS 2005-2008 献腎移植 94 84 日本 2002-2014 生体腎移植 99 97 日本 2002-2014 献腎移植 99 91 先行的腎移植 (PEKT) 35% 服部元史ほか 日本小児腎不全学会雑誌 31:57, 2011 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 8

先行的腎移植 : 国際比較 adopted from Comprehensive Pediatric Nephrology, Mosby, 2008 10% 90% Japan 小児献腎移植の動向 宍戸清一郎 腎と透析 85:493-498, 2018 2002 年 2010 年 9

小児 ABO 不適合腎移植の割合 JPKTSG 2015 10.9% 9.9% 10.1% 89.1% ABO 適合 ABO 不適合 患者生存率 (2002-2015) ABOi-recipients と ABOc-recipients の比較 Hattori M et al. Transplantation 102:1934-42, 2018 log-rank test p=0.949 1 year 3 years 5 years 10 years Compatible 99.4 99.1 99.1 98.7 SE 0.3 0.3 0.3 0.5 Incompatible 99.0 99.0 99.0 99.0 SE 1.0 1.0 1.0 1.0 Years after transplantation 10

Number of recipients 移植腎生着率 (2002-2015) ABOi-recipients と ABOc-recipients の比較 Hattori M et al. Transplantation 102:1934-42, 2018 log-rank test p=0.773 1 year 3 years 5 years 10 years Compatible 98.0 95.9 93.3 86.7 SE 0.5 0.7 1.0 1.7 Incompatible 96.0 93.5 92.1 85.9 SE 2.0 2.6 2.9 5.1 Years after transplantation B リンパ球の除去 : 脾臓摘出とリツキシマブ Hattori M et al. Transplantation 102:1934-42, 2018 Splenectomy was performed at the time of transplantation until the middle to the late 2000s, and thereafter rituximab was administered before transplantation. Transplant year 11

ABO 不適合腎移植患者の移植腎生着率 (2002-2015) 脾臓摘出とリツキシマブの比較 Hattori M et al. Transplantation 102:1934-42, 2018 log-rank test p=0.737 1 year 3 years 5 years 10 years Rituximab 94.6 94.6 94.6 87.3 SE 3.1 3.1 3.1 7.5 Splenectomy 97.4 91.9 88.9 84.2 SE 2.5 4.5 5.3 6.8 Years after transplantation 本日の内容 1. 小児末期腎不全の原因疾患 2. 小児末期腎不全の腎代替療法 3. 小児腎移植の現況 4. 原疾患に応じた治療戦略 5. 今後の課題 12

1CAKUT(congenital anomalies of kidney and Urinary tract; 先天性腎尿路異常 ) AST/ALT (U/L) 800 700 600 出生低異形成腎 生体腎移植 糖尿病 (NODAT) Kanda S, et al. Pediatr Transplant 2016 転居当院へ 今回の入院 500 400 300 AST ALT 200 100 症例のまとめ Kanda S, et al. Pediatr Transplant 2016 肝臓 頻回の肝酵素上昇 ( 過去 5 年間に 10 回 ) 腎臓 両側低異形成腎 膵臓 移植後 糖尿病発症 (New-onset diabetes after transplantation : NODAT) 一元的に説明するには? 13

HNF1B 異常 Hepatocyte nuclear factor 1B = 転写因子 MODY5( 家族性糖尿病 ) の原因として知られていた CAKUT 肝機能障害 女性生殖器異常をともなうことがある HNF1B-associated renal and extra-renal disease -an expanding clinical spectrum. (Clissold RL, et al. Nat Rev Nephrol 2015) HNF1Bスコア Faguer S. et al, Kidney Int, 2014 8 点以上で HNF1B 遺伝子解析を推奨 本症例 +10 HNF1B 遺伝子異常を検出 14

CAKUT の遺伝子診断とその意義 99 人の低異形成患者のうち17 人 (17%) に遺伝子変異あり HNF1B 8 人 PAX2 7 人 (Weber S. et al, J Am Soc Nephrol, 2006) 650 家系のCAKUT 患者 (VUR 288, 低異形性 120, 片腎 90) のうち41 家系 (6.3%) に遺伝子変異あり SALL1 9 家系 HNF1B 6 家系 (Hwang DY. et al, Kidney Int, 2014) PAX2 5 家系 腎外症候への対応をより適切に行うことができる可能性 ( 事前の準備 迅速な対応 過剰な検査の回避など ) Kanda S, et al. Pediatr Transplant 2016 2FSGS 腎移植後再発 巣状分節性糸球体硬化症 (focal segmental glomerulosclerosis; FSGS) はステロイド抵抗性ネフローゼ症候群 (steroid-resistant nephrotic syndrome; SRNS) を呈し 10-20 年で40-60% が末期腎不全に至る希少難病である Am J Transplant 2013 FSGS の腎移植後再発例ではグラフトロスの危険性が高まるため 再発リスク評価はきわめて重要である 腎移植後再発率は6-55% と報告によって頻度が大きく異なる 病因分類の重要性 Pediatr Nephrol 2015 15

(1) FSGS の病因分類 分類 病因 ネフ ローゼ 病理像, 特に foot process effacement (FPE) Primary Circulating factor (CF) + FPE: びまん性 ステロイド 免 疫抑制薬の 有効例あり 治療 腎移植後再発 あり Secondary adaptive viral drug-induced ネフロン数の減少 ( 低形成腎 低出生体重 ) 肥満 逆流性腎症など HIV, CMV, パルボウイルス B19, EBV など CNI, bisphosphonate, interferon など - FPE: 部分的 Perihilar variant 糸球体肥大 RAS 阻害薬 +/- さまざま ウイルスに対 する治療 なし +/- さまざま薬剤中止なし Genetic 遺伝子変異 +/- FPE: 部分的が多い ステロイド 免 疫抑制薬は ほぼ無効 感染が続けばあり なし Rosenberg AZ, Kopp JB. Clin J Am Soc Nephrol 2017, De Vriese AS, et al. J Am Soc Nephrol 2018 より改変 Genetic FSGS これまでに 30 以上の責任遺伝子が同定されている 細胞外基質 スリット膜 細胞骨格 ミトコンドリ ア機能 DNA 修復 転写 核輸送 シグナル伝達 ライソゾーム 繊毛 non-syndromic COL4A3 COL4A4 COL4A5 NPHS1 (nephrin) NPHS2 (podocin) CD2AP PTPRO MYO1E ACTN4 INF2 AHRGP24 AHRGDIA INF2 WT1 NUP95 NUP107 NUP203 XPO5 NXF5 PAX2 PLCE1 TRPC6 TTC21B syndromic ITGB4 LAMB2 MYH9 INF2 MTTL1 MTTL2 COQ2 COQ6 PDSS2 ADCK4 WT1 LMX1B SMARCAL1 NXF5 EYA1 WDR73 LMNA KANK4 SCARB2 16

次世代シークエンサーによる SRNS の遺伝子解析 Sadowski, Hildebrandt, et al. J Am Soc Nephrol 2014 米国 ヨーロッパのコホート 1783 名 発症年齢別患者数 27 遺伝子を対象とするパネル解析 発症年齢別の遺伝子変異割合と種類 WT1 NPHS2 NPHS1 (nephrin) 低年齢発症ほど遺伝子変異の検出率が高い全体として 29.5% の家系に遺伝子変異あり (2) 移植後再発のリスク評価 既報では High 前回移植時の再発既往 Nat Rev Nephrol 2015 11: 371 384 J Am Soc Nephrol 2014; 25:1342-1348 Low Genetic FSGS 人種 腎代替療法開始年齢 >12 歳 末期腎不全までの期間 <3 年 発症年齢 >6 歳 移植前透析期間 ドナータイプ など これらは再発リスク因子として確立していない 17

初期ステロイド治療への反応性と FSGS 再発リスク Bierzynska A, et al. Kidney Int 2017 遺伝子変異あり 再発 0% 初期ステロイド治療に反応した例では遺伝子変異がなく 腎移植後再発率がきわめて高い FSGS における foot process effacement (FPE) とネフローゼ症候の関係 Sethi S, et al. Clin Kidney J 2014, Nephrol Dial Transplant 2015 diffuse segmental ネフローゼを呈する例は diffuse FPE 非ネフローゼ例は segmental FPE 18

移植後再発と遺伝子変異の有無で層別化した固有腎電顕像 (FPE) の検討 対象 : 東京女子医科大学腎臓小児科で腎移植を行った FSGS 18 例 移植後再発なし + 遺伝子変異あり = genetic FSGS 8 例 移植後再発あり = primary FSGS 10 例 genetic FSGS primary FSGS 移植後再発と遺伝子変異の有無で層別化した固有腎電顕像 (FPE) の検討 対象 : 東京女子医科大学腎臓小児科で腎移植を行った FSGS 18 例 移植後再発なし + 遺伝子変異あり = genetic FSGS 8 例 移植後再発あり = primary FSGS 10 例 p<0.001 FPE (%) Genetic segmental FPE Primary diffuse FPE genetic 61±12% primary 98±6% 19

当科で腎移植を受けた FSGS 患者の再発リスク評価 対象 :2008 年 1 月 ~2018 年 3 月に腎移植を施行した FSGS 患者のうち 遺伝子解析を施行済みの症例 FSGS (n=17) 家族歴 / 腎外症状 ネフローゼかつびまん性 FPE 移植後再発の既往 Adaptive (n=0) Virus/ Medication (n=0) Genetic familial (n=2) Genetic syndromic (n=1) primary (n=8) 疑 疑 primary FSGS ネフローゼ症候群を呈し かつ 1 固有腎びまん性 ( 80%)FPE 2 初回移植時再発歴あり 1 2 のいずれかを満たすもの 遺伝子検査 ( エクソーム解析 ) n=6 当科で腎移植を受けた FSGS 患者の再発リスク評価 対象 :2008 年 1 月 ~2018 年 3 月に腎移植を施行した FSGS 患者のうち 遺伝子解析を施行済みの症例 FSGS (n=17) Adaptive (n=0) n=6 家族歴 / 腎外症状 ネフローゼかつびまん性 FPE 移植後再発の既往 Virus/ Medication (n=0) 遺伝子検査 Genetic familial 変異あり (n=2) Genetic syndromic 3/3 例 (n=1) 100% 変異あり primary (n=8) 0/8 例 0% 変異あり 5/6 例 83% あり Genetic familial (n=2) Genetic syndromic (n=1) NUP107 (n=2), WT1 (n=1) Primary (n=8) Genetic sporadic(n=5) NUP107 (n=3), WT1 (n=1), INF2 (n=1) なし分類困難 (n=1) 移植後再発 0/3 例 (0%) 3/8 例 (38%) 0/5 例 (0%) 0/1 例 (0%) 20

FSGS の病因分類 分類 病因 ネフ ローゼ 病理像, 特に foot process effacement (FPE) Primary Circulating factor (CF) + FPE: びまん性 ステロイド 免 疫抑制薬の 有効例あり 治療 腎移植後再発 あり Secondary adaptive viral drug-induced ネフロン数の減少 ( 低形成腎 低出生体重 ) 肥満 逆流性腎症など HIV, CMV, パルボウイルス B19, EBV など CNI, bisphosphonate, interferon など - FPE: 部分的 Perihilar variant 糸球体肥大 RAS 阻害薬 +/- さまざま ウイルスに対 する治療 なし +/- さまざま薬剤中止なし Genetic 遺伝子変異 +/- FPE: 部分的が多い ステロイド 免 疫抑制薬は ほぼ無効 感染が続けばあり なし Rosenberg AZ, Kopp JB. Clin J Am Soc Nephrol 2017, De Vriese AS, et al. J Am Soc Nephrol 2018 より改変 FSGS の腎移植後再発リスク評価 ( 案 ) FSGS 病歴等から除外 diffuse FPE, ネフローゼ Secondary FSGS (adaptive, virus, drug) 再発 低リスク 両者 (+) PSL, 免疫抑制薬感受性 (-) それ以外 遺伝子解析 (+) 変異 (-) 変異 (+) Primary FSGS 分類困難 Genetic FSGS 再発高リスクリスク不明低リスク 21

FSGS の腎移植後再発リスク評価まとめ FSGS 再発リスクの評価においては primary FSGS とそれ以外をいかに鑑別するかが重要である 次世代シークエンサーの普及により genetic FSGS の診断が比較的容易になってきている ネフローゼ症候 FPE (diffuse or segmental) ステロイド / 免疫抑制薬への反応性を参考にした病因分類は 移植後 FSGS の移植後再発リスク評価および遺伝子解析の適応を判断するうえで非常に有用である (3) 腎移植後 FSGS 再発の治療 therapeutic plasma exchange (PE) prophylactic PE 22

移植後 FSGS 再発に対するtherapeutic PEの報告 メタアナリシス 6 つの非ランダム化比較研究 117 例が対象 Vlachopanos G, et al. J Transplant 2015 PE 群 79%, control 群 32% で CR または PR PE は移植後 FSGS 再発に対する有効な寛解導入療法である PE への反応性と関連する因子 メタアナリシス Kashgary A, et al. BMC Nephrol 2018 対象 :77 case reports and case series, 全 423 名 寛解率 71% (95%CI: 66-75%). 完全寛解 (UP <0.5 g/ 日 ) 寛解 = or 部分寛解 (UP 0.5-3.5 g/ 日 ) 蛋白尿が少ないことが寛解と有意に関連 再発から 2 週間以内に PE を開始することが寛解と関連する傾向 23

移植後 FSGS 再発に対する prophylactic PE の報告 著者年年齢 n 結果 Ohta 2001 Transplantation 小児 21 PPなし : 再発 4/6 PPあり : 再発 5/15 Rainthavorn 2005 小児 13 PP1 回 : 再発 3/3 PP <5 回 : 再発 4/7 PP >5 回 : 再発 0/3 Gohh 2007 Am J Transplant Gonzalez 2011 Pediatr Transplant 成人 10 周術期に2 週間 PE: 再発 3/10 (6 人は一次移植で再発あり ) 小児 34 PPなし : 再発 10/17 PPあり : 再発 9/17 効果あり 効果なし prophylactic PE の報告は乏しい 移植後 FSGS 再発に対する予防的 rituximab (+ PE) の報告 Audard V, et al. Transplant Int 2012 全員 2 次移植かつ前回移植で再発あり No. 年齢 腎種 DSA rituximab PE induction 再発 1 33 献腎 B7, B59 375 mg/m 2 6 回 ATG (-) day 0 2 43 献腎 (-) 375 mg/m 2 (-) IL2Ra (-) day 0 3 28 生体腎 (-) 375 mg/m 2 (-) IL2Ra (-) day 0, 7 4 40 献腎 A24 375 mg/m 2 day 0, 7 15 回 ATG (-) rituximab (+PE) が移植後 FSGS 再発予防に有効な可能性 24

移植後 FSGS 再発に対する予防的 rituximab + PE( 当科の試み ) Chikamoto H, et al. Pediatr Transplant 2012 7 歳女児 1 回目の移植時に FSGS 再発あり Rituximab + PE を施行し再発なし 3 年後も蛋白尿なく腎機能安定 移植後 FSGS 再発に対する予防的 rituximab + PE ( 当科その後 ) 二次性 / 遺伝性 FSGS を除外 家族歴あり / 腎外症候性 遺伝子異常あり ウイルス性 薬剤性 代償性 ネフローゼ症候群の基準を満たさない 25

FSGS の移植後再発に対する治療まとめ FSGS の腎移植後再発に対する PE で約 6~7 割の症例が寛解している 蛋白尿が少ないことと早期に PE を開始することが寛解と関連する可能性がある 再発の高リスク群において 予防的リツキシマブ + 血漿交換は再発予防に有効である可能性がある 今後 さらに症例を蓄積して寛解に関連する因子を解析し FSGS の移植後再発に対する治療法を確立する必要がある 3 Alport 症候群 代表的な遺伝性腎炎 糸球体基底膜を構成する IV 型コラーゲンの形成不全による遺伝性進行性腎症 血尿で発症 蛋白尿が次第に増悪 遺伝様式 80%: X 連鎖 α5 鎖 15%: 常染色体劣性 α3 鎖または α4 鎖 感音性難聴 ( 高音域 ) 合併 26

一つ一つのモノマーは三量体構造 α1-α1-α2 or α3-α4-α5, or α5-α5-α6 正常基底膜 Alport 症候群 不規則な肥厚緻密層の網目状変化 27

Alport 症候群の Ⅳ 型コラーゲン α2, α5 染色像 α2 α5 merge normal XLAS male XLAS female ARAS Alport 症候群の腎予後 XLAS 末期腎不全の患者の割合 ( % ) 男性 女性 28

Alport 症候群の腎移植におけるドナー選択 X 連鎖型女性がドナー候補の場合 アルポート症候群診療ガイドライン 2017 適応 相対的適応 非適応 45 歳を超え尿異常がなく腎機能正常 45 歳を超え血尿を有するが腎機能正常 45 歳以下または蛋白尿 腎機能障害あり 海外ガイドライン (JASN 2013) では XLAS 女性は腎提供を極力避けるべき 常染色体劣性型保因者がドナー候補の場合 アルポート症候群診療ガイドライン 2017 適応 血圧正常 蛋白尿なし 腎機能正常 一部 蛋白尿 腎機能障害を呈する場合があり 注意が必要 5. 今後の課題 献腎ドナーの不足 慢性抗体関連拒絶 ノンアドヒアランス 29

透析導入後の累積腎移植実施率 服部元史ほか 日児腎誌 26:330, 2013 1 year 2 years 3 years 4 years 5 years 13.7% 22.7% 32.9% 43.6% 51.1% 献腎移植と生体腎移植 ( 日本 ) 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 10.0% Living 90.0% Deceased 30

生体腎移植の割合 : 国際比較 adopted from Comprehensive Pediatric Nephrology, Mosby, 2008 10% 90% 日本臓器移植ネットワークより提供 31

15 歳未満と 20 歳未満を対象とした場合の小児末期腎不全患者数と原因疾患 日本小児腎臓病学会調査 (1998~1999) 報告をもとに作成服部元史 五十嵐隆 日児腎誌 22:222-225, 2009 15 歳未満 (n=120) 20 歳未満 (n=207) 増加症例数 IgA 腎症 0 11 11 膜性腎症 0 2 2 ループス腎炎 0 1 1 ANCA 関連腎炎 0 1 1 抗 GBM 抗体腎炎 0 1 1 膜性増殖性糸球体腎炎 1 3 2 急速進行性腎炎症候群 2 4 2 紫斑病性腎炎 1 2 1 巣状分節性糸球体硬化症 26 40 14 低 異形成腎 38 50 12 逆流性腎症 2 10 8 アルポート症候群 5 11 6 閉塞性尿路疾患 4 6 2 溶血性尿毒症症候群 2 3 1 ネフロン癆 5 6 1 改正臓器移植法 2009 年 7 月成立 2010 年 7 月施行 本人の意思不明でも家族の承諾があれば臓器提供が可能 15 歳未満の小児からの脳死下臓器提供が可能 腎臓移植の基準等に関する作業班 2009 年 11 月 ~2010 年 11 月 大島進一 相川厚 飯野靖彦 佐多徹太郎 服部元史 両角國男 湯沢賢治 16~20 歳未満にも 12 点を加点 (2011 年 3 月 ~) 32

腎臓移植選択基準の改正 : 腎臓移植小児優先ルール 腎臓移植の基準等に関する作業班 2014~2016 年 2018 年 ~ 2018 年 3 月 20 日 : 小児優先ルール運用開始 : ドナーが20 歳未満の場合は 選択時 20 歳未満であるレシピエントを優先 2018 年 10 月 1 日 : 血液型一致と適合のレシピエント優先ルール運用開始 : ドナーが20 歳未満の場合は 選択時 20 歳未満である血液型一致と適合のレシピエントを優先 献腎ドナーの不足 慢性抗体関連拒絶 ノンアドヒアランス 5. 今後の課題 33

移植腎廃絶の理由 (1996~2014 年 ) 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 生体腎移植 献腎移植 n=174 n=53 慢性拒絶反応 n (%) 54 (31.8) 15 (28.3) 急性拒絶反応 n (%) 9 (5.2) 8 (15.1) 原疾患の再発によるもの n (%) 10 (5.7) 3 (5.7) Primary Nonfunction n (%) 5 (2.9) 2 (3.8) 拒絶反応に感染症 多臓器不全などが合併 n (%) 3 (1.7) 3 (5.7) 患者自身による免疫抑制薬の中止 n (%) 18 (10.3) 3 (5.7) 医学的理由による免疫抑制薬の中止 n (%) 3 (1.7) 0 薬剤性腎障害 n (%) 1(0.6) 0 技術的問題 n (%) 4 (2.3) 0 死亡のため n (%) 6 (3.4) 1 (1.9) その他 n (%) 20 (11.5) 6 (11.3) 不明 n (%) 41 (23.6) 12 (22.6) AMR の治療 1. ドナーに対する免疫反応の抑制 induction agents, triple immunosuppression (CNI, MMF, steroid) 2. 抗体除去 PE, DFPP, immunoadsorption 3. 抗体産生および補体活性化の抑制 IVIG, Eculizumab 4. 抗体産生細胞の除去 Rituximab, Bortezomib 小児での報告は乏しい 34

de novo DSA と AMR 腎機能 小児レシピエント82 名 ( 中央値 14 歳 ) 観察期間 4.3 (1-8.7) 年 Ginevri, et al. Am J Transplant 2012 血清 Cr の推移 抗 HLA 抗体なし non DSA DSA de novo DSA は AMR 腎機能低下と有意に関連 小児 chronic AMR に対する IVIG+rituximab 対象 :20 名の小児レシピエント ( 中央値 15 歳 ) Billing H, et al. Transplant Int 2012 Heidelberg, Germany Transplant glomerulopathy (+) 11 例 5 例改善 Transplant glomerulopathy (-) 9 例 9 例改善 35

小児 chronic AMR に対する IVIG+rituximab Billing H, et al. Transplant Int 2012 Heidelberg, Germany 2 年のフォローで比較的良好な経過小児 AMR に対して IVIG+rituximab が有効である可能性今後の検証が必要 献腎ドナーの不足 慢性抗体関連拒絶 ノンアドヒアランス 5. 今後の課題 36

移植腎廃絶の理由 (1996~2014 年 ) 服部元史ほか 日本臨床腎移植学会雑誌 4:301-312, 2016 生体腎移植 献腎移植 n=174 n=53 慢性拒絶反応 n (%) 54 (31.8) 15 (28.3) 急性拒絶反応 n (%) 9 (5.2) 8 (15.1) 原疾患の再発によるもの n (%) 10 (5.7) 3 (5.7) Primary Nonfunction n (%) 5 (2.9) 2 (3.8) 拒絶反応に感染症 多臓器不全などが合併 n (%) 3 (1.7) 3 (5.7) 患者自身による免疫抑制薬の中止 n (%) 18 (10.3) 3 (5.7) 医学的理由による免疫抑制薬の中止 n (%) 3 (1.7) 0 薬剤性腎障害 n (%) 1(0.6) 0 技術的問題 n (%) 4 (2.3) 0 死亡のため n (%) 6 (3.4) 1 (1.9) その他 n (%) 20 (11.5) 6 (11.3) 不明 n (%) 41 (23.6) 12 (22.6) 年齢別腎移植成績 NAPRTCS データ Smith JM, et al. Pediatr Transplant 2002 12 歳以上 12 歳以上 生体腎移植 n=3,631 Non-adherence の問題 献腎移植 n=3,142 37

レシピエント年齢別の移植腎生着率 ( 東京女子医科大学腎臓小児科 ) R0-5 1983-2000 R0-5 2000-2016 R6-11 1983-2000 R6-11 2000-2016 R12-19 1983-2000 R12-19 2000-2016 12-19 歳 年齢別の graft loss のリスク Van Arenconk KJ, et al. CJASN 2013 the Scientific Registry of Transplant Recipients (SRTR) を用いた検討 (n=16,266) Graft lossのリスクは17-24 歳で有意に高い vs 3-17 歳 ahr 1.61 (95%CI, 1.52 1.70; P,0.001) vs >24 歳 ahr 1.28 (95% CI, 1.18 1.38; P,0.001) 移植時年齢別 性別 人種別 原疾患別 どのサブ解析でみても思春期 ~ 青年期の graft loss のリスクが高い 38

日腎会誌 2016 移行スケジュール ~10 歳 13 歳 15-16 歳 16-18 歳 治療に対する理解と責任 教育的支援 単独で診療を受ける ( 親は後で加わる ) チェックリストの評価 疾患 治療に対する深い理解症状悪化の把握と対応 小児科内で成人科チームと面会小児科チームとの類似点や心配事について話し合い 準備が整った と考えられる年齢 成人科の見学 質問や心配事の相談小児科 成人科双方への受診 39

チェックリスト 病気 治療に関する知識病名 治療などを自分で説明できる 体調不良時の対応どういうときに どういう方法で受診すべきか 医療者との対等なコミュニケーション質問する 質問に答える 自己管理の状況を伝える 診療情報の自己管理検査結果などを記録 保管する 自立した受療 セルフケア行動受診スケジュール 薬剤の管理 自宅でも血圧測定や検尿 思春期 青年期患者としての健康教育喫煙 飲酒の質問 就職 進学 妊娠 出産に関する相談 主体的な移行準備自ら必要な情報を収集する 移行サマリー 診断名 今までの治療歴 現在の治療 薬の内容 検査結果 ( 腎生検含む ) 通院先 薬局 学校 職場の情報 対応が必要な場面 対応法 患者が自分で記入し持参する 40

小児腎不全と腎移植 : まとめ 免疫抑制薬の開発と周術期管理の進歩により 1980 年代半ば以降の生命予後と 1990 年代半ば以降の短期 (10 年 ) 移植腎生着率は 一定のレベルに達している 小児 ABO 血液液型不適合生体腎移植の成績は 血液型適合生体腎移植と比べ全く遜色はない 2000 年代前半より 約 20~25% の症例で 先行的腎移植が実施されている 原疾患の診断 ( 遺伝子解析を含む ) が移植後管理に有用な場合がある FSGS においては事前の病因分類と移植後再発のリスク評価が重要である 今後の課題 献腎ドナーが乏しいなか 小児優先ルールが運用され 小児献腎移植システムは整備されつつある 小児の抗体関連拒絶の実態と治療法に関する報告は乏しい ノンアドヒアランスは移植腎機能廃絶の大きな要因であり チーム対応 ( 患者本人の理解を高める ) が不可欠 移行医療の導入が喫緊の課題である 謝辞 大変お忙しいなかデータ入力を行って頂いている全国の先生方に心より感謝申し上げます データ解析のご許可を賜った日本移植学会前理事長 : 高原史郎先生 日本移植学会理事長 : 江川裕人先生 日本移植学会登録委員会 : 湯沢賢治先生 八木澤隆先生 日本臨床腎移植学会前理事長 : 吉村了勇先生 日本臨床腎移植学会理事長 : 剣持敬先生 日本臨床腎移植学会登録委員会 : 田邉一成先生 八木澤隆先生に深謝いたします 山形大学ゲノム情報解析ユニット佐藤秀則小児科橋本多恵子 東京大学小児科張田豊神田祥一郎 東京女子医科大学遺伝子医療センター山本俊至 東京女子医科大学腎臓小児科石塚喜世伸金子直人薮内智朗 日本臨床腎移植学会 臨床研究奨励制度 41