人件費について 1. 総額人件費分析で人件費人件費の適正度適正度を把握把握するする 人件費は どの企業にとっても三大経費の一つになっています 総額人件費が経営に与えている影響を分析し 人件費が自社にとって適正な水準であるかを確認し 今後の総額人件 費の目標を設定します 特に重要な指標は 労働分配率 1 人当り売上高 1 人当り付加価値 ( 労働生産性 ) 1 人当り経常利益 1 人当り人 件費 です 業界平均値 ベンチマーク企業と比較することにより 経営改善の切り口を発見することができます 例えば 下記の会社では 付加価値率は業界平均より低いですが 社員 1 人当りの生産性が高く 1 人当りの売上高も 高いことがわかります このことからは 原材料費の削減余地があることがわかります 一方 社員は精鋭化されていることも分かります 更に見ると 1 人当りの人件費が 業界平均より高いため 労働分配率は高くなっていますが 1 人当りの経常利益も業 界平均より高い水準にあります これは 人件費以外の固定費がきちんと管理されているためといえます 整理すると この企業は少数精鋭 高収益 高賃金が実現されている理想的な姿であると見ることができます 今後の課題は 原価率の削減という結論になります A 社 業 ( 黒字企業 145 件 ) 付加価値率 45.2% 46.8% 労働生産性 9,203 千円 8,582 千円 労働分配率 53.1% 44.2% 1 人当り売上高 20,342 千円 18,328 千円 1 人当り人件費 4,882 千円 3,792 千円 1 人当り経常利益 1,429 千円 774 千円 総額人件費とは 基本給や諸手当といった現金給与だけではなく 企業で負担する社員の法定福利費や厚生費 賞与 や退職金をも含めた 人件費の総額を意味します このデータで重要なポイントは 所定内給与を 100 とすると総額人件費は 170 に相当するという点です シミュレーションを実施する際には 固定する条件と変動させる条件を設定します 条件には 売上 付加価値 ( 率 ) 固 定費 昇給率 を入れます
1 売上高の推移見通し 2 付加価値率の見通し 3 固定費 設備投資の見通し 4 昇給率の見通し 自社の総額人件費の分析を行った結果 総額人件費水準が高いということが判明した場合 総額人件費水準を是正し ていく必要が出てきます 単純にリストラや人件費の切り下げを行うことは 企業の最大の財産である人材の流出やモチベーションのダウンといっ たマイナス要素の方が大きく出る場合がほとんどです したがって 人件費水準の是正には複数年に渡る中期的な取り組みが必要になります 対策の方法は以下のようになります 1 管理 ( スタッフ ) 部門の人員の 売上に貢献できる部門へ配置転換を促進する 2 退職者の補充を抑える あるいは非正規社員で対応する 3 効率化 システム化の推進で1 人当たりの生産性を向上させる 4 賞与の支給乗率を引き下げ 決算賞与を取り入れる 5 昇給率を下げる どのような対応を取るにしても 自社の適正な労働分配率を設定して その労働分配率へ 何年かけて是正していくの かという目標を設定し その目標に向けた複数年の人件費計画を立てることがポイントになります 2. 総額 個別人件費水準個別人件費水準の設定設定 役職役職 等級制度等級制度からから設計設計するする 1 適正労働分配率の算定算定と移行計画移行計画の作り方人件費はどの企業においても三大経費の一つになっているはずです 適正な人件費管理なくして 健全な経営は成り立ちません 企業にとっての適正労働分配率は 目標利益 目標売上高から逆算して導き出していくことができます この計算から導き出される適正労働分配率は 現実とはかけ離れたものになってしまう場合があります 適性労働分配率は 経営者が総合的判断の上で見極めるべきでしょう 適正労働分配率と 現状の労働分配率が大きくかけ離れている場合 一気に適正労働分配率レベルに引き下げることは 難しくなります
このような場合は 3 年から5 年のスパンで 水準の是正を行っていく計画を立てることが妥当でしょう 昇給率 賞与支給係数の調整で 個別賃金へのインパクトが緩和されるような措置を講じていくべきです 労働分配率是正計画労働分配率是正計画の例 現状の労働分配率 55% 適正労働分配率 50% 2 個別人件費水準を底上底上げするためのポイント生計費や 同業他社の賃金水準との比較分析を行った結果 自社の賃金水準が相当低いことが判明した場合 どのように個別賃金水準を引き上げていけばいいのでしょう これは 人事制度だけの問題ではなく 経営的な問題と大きく関係してきます 労働分配率を上げずに 個別賃金水準を引き上げるということは 相反するように見えます しかし その手段はあります 労働分配率の計算式は以下のようになっています 更に 総額人件費と付加価値は以下の計算式によって成り立っています 総額人件費 = 一人当たり人件費 社員数 付加価値 = 売上高 付加価値率このように見ると 労働分配率を上昇させずに一人当たり人件費の水準を引き上げるための方法が見えてきます 第一は 社員数の適正化です 定年退職者 中途退職者の補充を制限する 定型業務であれば パート社員で補充するなどの人員調整を行うことにより 一人当たりの人件費を高めていくことができるようになります 第二は 付加価値を増やすことです 付加価値が高まれば人件費へ配分できる金額を増加させることができます 付加価値を高めるために 生産コスト 仕入れコストの低減 間接人員を売上 利益の向上に直結する部門へ配置転換する などの施策を打っていくことがポイントとなります
3 個別人件費水準を引き下げるためのポイント自社の個別賃金水準が 生計費や同業他社との比較分析を行った結果 かなり高いことが分かった場合の対処方法です 個別人件費が高く 労働分配率が適正あれば 理想の経営状態であると言えます 高賃金 低労働分配率 は企業にとっても社員にとってもよいことです しかし 高賃金 高労働分配率 となっている場合は 個別賃金水準の是正が必要になることもあります まずは 前節で解説したような検討を行った上で それでも個別賃金水準の是正が必要になった場合は やむを得ず水準訂正を行います 手法的に一番簡単なのは 全社員の賃金一律カットですが この方法は絶対にお勧めできません 労働基準法上も賃金カットに関しては厳しい要件を課しています 労務トラブルのもとになることはもちろん 社員の士気低下 優秀な社員の退職といった 多くの問題をもたらすからです この場合は 新しい賃金制度の基本設計の中で 是正されたモデル賃金をきちんと作りこみます それを基礎として 賃金表 昇給率を設定し 10 年スパンで水準訂正を行っていくべきです 経営状況がそのようなスパンを許さない場合は 賞与支給率 ( 月数 ) の変更 昇給率 ( 昇給額 ) の抑制 あるいは停止 によって3 年から5 年のスパンで修正を図るべきです 4 等級が持つ機能機能を理解理解する一般的に 企業は一般職に対しては職務の遂行を求め 管理職に対しては役割の遂行を求めています その担うべき担当職務や役割を明確にするために部門や役職が存在しています その一方 企業内には異なった役割を果たす部門が存在します また 同じ部門であっても 人員の数 売上や利益の規模が違う部署が存在する場合も多くみられます このように複数の要素がある組織において 役職だけで組織横断的な社員の位置づけを明確化することはできません 組織横断的に担当職務や役割の相対的な位置づけを明確化するための枠組みが等級制度なのです 1 事業所 かつ単一機能の企業であれば 役職だけで人事制度全体を作り上げることも可能ですが ほとんどの企業においては等級制度を人事制度の核におく必要があります 等級等級フレームのフレームの例
3. 個人別賃金水準分析で賃金相場賃金相場とのギャップをとのギャップを把握把握するする 経営シミュレーションで把握できた自社の賃金水準が 社外の環境と比較してどうなのかということも考慮する必要があります 社員の生活水準を維持していくことや 同業他社 あるいは業界平均の水準などを加味した上で 賃金水準を決定します 1 基本給の分析個別賃金の分析はプロット図を作成し行います まず 基本給の社内格差を把握するために基本給のプロット図を作成します 基本給プロット図は年齢 勤続と基本給を軸としたグラフであり 賃金決定の基本的な社内システムを確認します 社内における職種別 役職別の賃金格差をみることも重要です 2 所定内賃金を分析分析する次に生計費データを含め 年齢または勤続年数と所定内賃金を軸に プロット図を作成し分布をみます これによって生活費とのバランスを検討します 一般職は最低生計費のライン近辺に 管理職は修正標準生計費と愉楽生計費の間に分布するのが一般的です 年収 ( 賞与 残業手当含残業手当含む ) 生計費比較 1 標準生計費 2 修正標準生計費 3 愉楽生計費 4 最低生計費 5 単身最低生計費 各地域における標準的な生活水準を求めることを目的として 総務省が実施している 家計調査 に基づき 各都道府県人事委員会等が算出する消費支出データ 消費支出に 税金 保険料 の非消費支出を加えて 負担修正した実支出 ただし 貯蓄 投資を除く 修正標準生計費のおよそ 50% 増 これを超えたラインが愉楽的な生活が可能な目安のひとつ これを超えると支出項目の雑費のウエイトが急激に高まる 修正標準生計費のおよそ 20% 減 健康や体裁を維持することが可能な目安のひとつ このラインを下回ると消費支出に占める食料費のウエイトが高くなる 修正標準生計費のおよそ 40% 減 単身者の最低生計費である 独身者ではなく被扶養者がいない者という解釈 費目別費目別 世帯別標準生計費 ( 市 ) ( 単位 : 円 )
データを収集できれば 同業他社との比較も行なうべきです 株式会社グローバルプランニング代表新井田和男 Copyright (C) 2009 niida-jinjiconsul.com All Rights Reserved.