悪性黒色腫(メラノーマ)薬物療法の手引き version

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

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要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

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目次 1. はじめに P2 2. 本剤の特徴, 作用機序 P3 3. 臨床成績 P4 4. 施設について P8 5. 投与対象となる患者 P10 6. 投与に際して留意すべき事項 P12 1

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一般社団法人日本皮膚悪性腫瘍学会 悪性黒色腫 ( メラノーマ ) 薬物療法の手引き version1. 2019 2014 年における免疫チェックポイント阻害薬である抗 PD-1 抗体ニボルマブと低分子性分子標的薬である BRAF 阻害薬ベムラフェニブの相次ぐ製造販売承認に端を発する新規薬剤の開発の成功と実地臨床への応用によって 進行期の悪性黒色腫に対する薬物療法は画期的かつ急激な変革期を迎えた このような薬物療法の進化を受けて 日本皮膚科学会悪性黒色腫 ( メラノーマ ) 薬物療法の手引き作成委員会では 2016 年夏に 悪性黒色腫新規薬剤に対する治療の手引き (version 1, 2016) を新たに作成 公開するに至った その後も新規薬剤の承認に対応し 2017 年に 1 回目の改訂 (version 1, 2017) を行ったが 今回新たにニボルマブとイピリムマブの 2 種の免疫チェックポイント阻害薬の併用療法と 新たな低分子性分子標的薬である BRAF 阻害薬エンコラフェニブと MEK 阻害薬ビニメチニブの併用療法の承認を受けて薬物治療戦略を見直し 改訂版 (version1, 2019) として公開することとした ニボルマブとイピリムマブ併用療法の奏効率は それぞれの単剤による効果を上回る良好なものであるが 半数を超える患者に重篤な副作用が出現することや 最適な使用のためには腫瘍細胞における PD-L1 の発現状況を十分考慮する必要があること さらには既治療例での効果や安全性についてのデータの蓄積が不十分であることなど 留意すべき点は少なくない 近年 免疫チェックポイント阻害薬の効果には病型別に差があり 日本人に多い acral melanoma や mucosal melanoma では奏効率が低いということも知られてきている 免疫チェックポイント阻害薬の有効性 安全性に関する情報の多くは海外臨床試験のデータから成り立っているため 臨床試験の成績をどのように受け入れ解釈して実際の治療に生かしていくかに関しては 当然のことながら慎重な姿勢が求められる 低分子性分子標的薬については BRAF 阻害薬 /MEK 阻害薬の併用療法が主体

となり 原則として BRAF 阻害薬単剤による治療が第 1 選択とされることはほぼなくなっている 今回開発が進んだことによって 我々は 2 種類の BRAF 阻害薬 /MEK 阻害薬併用療法を投与可能となった いずれも非常に高い奏効率を得られるが 薬剤耐性の出現による効果の減弱という弱点を完全に克服できたわけではない これら 2 種類の治療法では安全性プロファイルに若干の違いがあるため 実際の使用に際してはこの点にも注意する必要がある こういった治療法の進歩に伴い 薬剤選択はより一層複雑化している 治療薬のより効果的かつ安全な使用を目指すためにも 本手引きの実地診療での活用を期待するものである 2019 年春 日本皮膚悪性腫瘍学会悪性黒色腫 ( メラノーマ ) 薬物療法の手引き作成委員 会 委員長 : 山﨑直也 国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科 委員 : 清原祥夫 静岡県立静岡がんセンター皮膚科 宇原久 札幌医科大学皮膚科 爲政大幾 大阪府立大阪国際がんセンター腫瘍皮膚科 竹之内辰也新潟県立がんセンター新潟病院皮膚科 事務局 : 福島聡 熊本大学皮膚科

試験悪性黒色腫 ( メラノーマ ) 薬物療法の手引 version 1. 2019 BRAF 変異あり 根治切除不能な悪性黒色腫 BRAF 変異なし PD : progressive disease PS : performance status BSC : best supportive care 低分子性分子標的薬 1, 2 免疫チェックポイント阻害薬 3, 4, 5 ダブラフェニブ トラメチニブ エンコラフェニブ ビニメチニブ ニボルマブ イピリムマブ ニボルマブ ペムブロリズマブ PD ないし低分子性分子標的薬での最良効果を確認後 PS 良い PS 悪い 6 床臨BSC BRAF 変異のある場合に選択可能 トラメチニブビニメチニブ ダブラフェニブ エンコラフェニブ ベムラフェニブ 1 ニボルマブ 7 ニボルマブイピリムマブ ペムブロリズマブ イピリムマブ 殺細胞性抗がん剤

付記 1 ダブラフェニブとトラメチニブの併用と BRAF 阻害薬単剤による治療の効果を比較した 2 つの試験がある ダブラフェニブ単剤と比較した試験では, 奏効率はそれぞれ 68% 対 55% 3 年全生存率は 44% 対 32% 1), ベムラフェニブ単剤と比較した試験では, 奏効率はそれぞれ 64% 対 51%, 生存期間の中央値は 25.6 ヵ月対 18 ヵ月と報告されている 2) 奏効率, 生存期間ともに併用療法が勝っているので 合併症等によって併用療法が困難な場合に限り,BRAF 阻害薬単剤による治療を考慮する 2 エンコラフェニブとビニメチニブの併用とベムラフェニブ単剤ならびにエンコラフェニブ単剤による治療の効果を比較した試験がある 主要評価項目である無増悪生存期間の中央値は 併用群の 14.9 ヵ月に対してベムラフェニブ単剤では 7.3 ヵ月であり 副次評価項目である全生存期間の中央値は 33.6 ヵ月対 16.9 ヵ月 BIRC( 盲検下独立評価委員会 ) 判定での奏効率は 64% 対 41% と報告されている 3)4) 3 未治療例を対象としたニボルマブ イピリムマブの併用 ニボルマブ単剤 イピリムマブ単剤の 3 群による第 III 相試験では 奏効率はそれぞれ 58% 44% 19% 3 年全生存率は 58% 52% 34% と報告されている 5) ただし 悪性黒色腫に対するニボルマブ イピリムマブ併用療法の適応に関するニボルマブ ( 遺伝子組み換え ) 製剤の使用ガイドライン 6) の記載においては 1% 以上の PD-L1 発現率が確認された患者では原則としてニボルマブの単独投与を優先するとされている

付記 4 ペムブロリズマブとイピリムマブを比較した試験では,2 年全生存率がペムブロリズマブ 10 mg / kg (2 週もしくは 3 週毎 ) で 55%, イピリムマブで 43% であり, ぺムブロリズマブにおいて有意な改善が得られたと報告されている 7) 5 ニボルマブからイピリムマブの順とイピリムマブからニボルマブの順で連続投与した 2 群の比較試験では,OS 中央値においてニボルマブ先行群の方が優れていたと報告されている (not reached 対 16.9 ヵ月 ) 8) 6 PS の悪化要因が一部の臓器転移による場合には, 薬物療法も考慮する 7 抗 PD-1 抗体投与後のセカンドライン治療としてのニボルマブ イピリムマブ併用療法の効果については後ろ向き試験によって奏効率 20% と報告されている 9)

参考文献 1. Long G, Flaherty K, Stroyakovskiy D, et al. Ann Oncol. 2017 ; 28 : 1631-39.(COMBI-d) 2. Long G, Stroyakovskiy D, Gogas H, et al. Lancet. 2015 ; 386 : 444-51.(COMBI-v) 3. Dummer R, Ascierto P, Gogas H, et al. Lancet Oncol. 2018;19:603 15. (COLUMBUS) 4. Dummer R, Ascierto P, Gogas H, et al. Lancet Oncol. 2018;19:1315 27. (COLUMBUS) 5. Wolchok J, Chiarion-Sileni V, Gonzalez R, et al. N Engl J Med. 2017 ; 377 : 1345-56. (CheckMate 067) 6. 厚生労働省最適使用推進カ イト ラインニホ ルマフ ( 遺伝子組換え ) ~ 悪性黒色腫 ~ https://www.pmda.go.jp/files/000226934.pdf 7. Schachter J, Ribas A, Long G, et al. Lancet Oncol. 2017; 390:1853-62.(KEYNOTE-006) 8. Weber J, Gibney G, Sullivan R, et al. Lancet Oncol. 2016 ; 17: 943-55.(CheckMate 064) 9. Zimmer L, Apuri S, Eroglu Z, et al. Eur J Cancer. 2017; 75: 47-55. 10. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology Melanoma. Version 1, 2019. 根治切除不能な悪性黒色腫に対して本邦で 2014 年以降に承認された薬剤 ( 承認順 / 一般名 ) * 低分子性分子標的薬 ベムラフェニブ ダブラフェニブ トラメチニブ * 免疫チェックポイント阻害薬 ニボルマブ ペムブロリズマブ エンコラフェニブ ビニメチニブ イピリムマブ

悪性黒色腫 ( メラノーマ ) 薬物療法の手引 version 1. 2017 からの改訂点 アルゴリズム : ニボルマブ イピリムマブ併用を 1st ライン治療に追加 ニボルマブ イピリムマブ併用を 2nd ライン治療に追加 エンコラフェニブ ビニメチニブ併用を 1st ライン治療に追加 エンコラフェニブ ビニメチニブ併用を 2nd ライン治療に追加 ベムラフェニブを 1st ライン治療から削除 ( 注釈を追加 ) イピリムマブを 1st ライン治療から削除 PS の表記を変更 付記 : 1 から 7 の記載内容を更新 これに伴い 5 を 6 に変更 参考文献 : 文献を更新 変更 文献 10) は本アルゴリズム全体の構築の参考とした 臨床試験の名称を付記

改訂について本邦において今後新規薬剤が承認されたり, 適応拡大がなされた際には, 随時更新を予定している 公表日本皮膚悪性腫瘍学会会員向けに日本皮膚悪性腫瘍学会ホームページに掲載するとともに日本皮膚悪性腫瘍学会機関誌である Skin Cancer 誌に発表する 資金源本手引作成のための費用は全て日本皮膚悪性腫瘍学会が負担した 委員は会議参加のための交通費, 宿泊費, 原稿作成, 会議参加に対する報酬を受け取っていない 資金提供者である日本皮膚悪性腫瘍学会によるガイドラインの内容に影響を及ぼすような介入はなかった 利益相反本手引で取り上げた薬剤および医療機器の開発 販売に関連した個人および団体への報酬で, 日本皮膚悪性腫瘍学会の定める利益相反規定に抵触するものはなかった 免責事項本手引は個々の状況に応じて診療ガイドラインの補助として柔軟に使いこなすべきものであって, 医師の裁量権を規制するものではない 本手引を医事紛争や医療訴訟の資料として用いることは, 本来の目的から逸脱するものである 本手引は作成時における健康保険の適用と学術的根拠に基づき作成されているが, 保険診療の手引書ではなく, またガイドラインに記載のある未承認薬が保険診療において自由に使用可能であることも意味しない 未承認薬の使用および保険適用されている薬剤同士でも認可外の使用法は, 各施設において倫理委員会の使用申請 承認を受けるなどの適切な対応が必要である