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Transcription:

MOOCs がもたらすボーダレスな 教育と社会 重田勝介 北海道大学情報基盤センター 2013/10/24 サイエンティフィック システム研究会 2013 年度合同分科会会合

重田勝介 ( しげたかつすけ ) 北海道大学情報基盤センター准教授 経歴 大阪大学大学院卒 ( 博士人間科学 ) 東京大学助教 UC Berkeley 客員研究員をへて現職 専門分野 著書 教育工学 オープンエデュケーション デジタル教材の教育学 ( 東京大学出版会 共著 ) 職場学習の探求 ( 日本生産性出版 共著 ) オープンエデュケーション ネット空間における 知の開放 は大学に何をもたらすか ( 東京電機大出版局 単著 出版予定 )

私の活動 (1): オープンエデュケーションの 実践 大学によるオープンエデュケーション事業 講義映像 オープン教材の開発サイト運営 北海道大学オープンコースウェア h6p://ocw.hokudai.ac.jp/ itunes U

私の活動 (2): オープンエデュケーションの 研究 米国大学における教育オープン化の研究 UC Berkeley におけるオープンエデュケーション事業と組織体制の調査研究 米国大学や非営利団体によるオープンエデュケーションの調査研究 一般社団法人オープン教育研究所の設立 教育のオープン化に関心のある方々と協働 先進事例の情報発信 (Facebook 等 ) ワークショップの開催 MOOCs の開講

あらまし 1. MOOCs とは何か 事例と特徴について 2. オープンエデュケーション と MOOCs 無料の教材 教材ウェブサイト 学習コミュニティ MOOCsのアドバンテージ 3. 高等教育に取り入れられる MOOCs 大学教育への MOOCs 導入推進と批判 4. MOOCs がもたらすインパクト オンライン教育が変える大学と社会

1. MOOCs とは何か オープンエデュケーションの拡大と MOOCs 誕生 MOOCs 拡大の背景

MOOCs とは Massive(ly) Open Online Courses の略 大規模公開オンライン講座 数週間で学べる学習コースを開設 教材 の公開だけでなく 教育 を行う 数万人を超える受講者 世界中から参加する学習コミュニティ 無料で受講できる コース完了者に 認定証 を発行 ( 有償の場合も )

事例 :Coursera 大学講義を MOOCs として公開する プロバイダ 2012 年にスタンフォード大教授らが設立した教育ベンチャー企業 (6 千万ドル超を調達 ) 世界 80 大学による 400 以上のコースを公開 400 万人を超える受講者 多言語対応 東京大学がコースを公開中

事例 :Udacity 大学レベルの MOOCs を公開する プロバイダ 2012 年にスタンフォード大教授が設立した教育ベンチャー企業 大学単位ではなく個人の教員がコースを開講 通常の大学にはない講義も 人工知能によるロボットカーの制作 28 のコースを公開 203 ヶ国の学習者が受講

事例 :edx MOOCsを公開する大学連携 コンソーシアム 2012 年に設立 MITとハーバード大学による 合計 6 千万ドルを出資 世界 27 ヶ国の大学が参加 100 万人を超える受講者 京都大学が参加 オープンソースプラットフォーム Googleと mooc.org を開設 誰でも MOOCs を作れるウェブサイト

事例 :FutureLearn MOOCs を公開する大学連携 コンソーシアム 英国オープンユニバーシティが所有する企業 140 ヶ国の学生が受講登録済み 英国やオーストラリア アイルランドの大学が参加 20 コースを公開

事例 :JMOOC 我が国において産学連携のもと MOOCs の利用普及を図る協議会 複数の MOOCs プラットフォームを提供 2014 年春以降にコース公開

MOOCs の 学習コース とは? テーマ : 学部生レベルの入門講義特殊性の高い講義 ( 例 : ロボットカー制作 ) 構造 :e ラーニング教材 + コミュニティ機能 ビデオや資料 クイズを使い順序を追って学ぶ シミュレーション教材 レポートのピアレビュー ディスカッションボード 修了者に認定証交付

MOOCs の特徴 これまでの大学による e ラーニング との違い 誰でも受講できる ( 学生である必要はない ) 無料 ( 学費不要 ) 単位は与えられない 例外あり コース完了は必須でない ( 修了率 10% 程度 ) 世界規模で拡がる学習コミュニティ 数百万人の学習者が出会う 世界中で行われるオフ会 ミートアップ

2. オープンエデュケーションの 広がりと MOOCs 無料の教材 教材ウェブサイト 学習コミュニティ 大学にとって 社会にとってのメリット

オープンエデュケーションの始まり (1) 大学教育へのインターネット導入 1990 年代 : 大学教育に e ラーニングが普及 インターネットやブラウザの普及とともに 1990 年代後半 : 米国の一部大学が連合して教育コースを販売するウェブサイトを開設 Fathom( コロンビア大学 ) AllLearn( イェール大 ケンブリッジ大など ) 数年で終了 原因 : 利用者が集まらなかった 有料モデルが成立しにくいことが示された

オープンエデュケーションの始まり (2) 無料の教材公開スタート オープンエデュケーションとは 教育を オープン にし学習機会を促進する活動 あらゆる人々が教育 学習に参加 社会から広い支持を集める ( 寄付財団の支援 ) 2001 年 MIT OpenCourseWare 開設 大学の教材やシラバス 講義ビデオなどを公開 世界数十ヶ国の大学へと普及 オープン教材の制作と公開が広まる OER(Open EducaXonal Resources)

オープンエデュケーションの特徴 (1) 教材をオープンにする活動 無料の教材 教科書をインターネット上で公開 教科書 教材 インターネット上の無料教材 教科書 お金がかかる 無料で学べる! 学びたい人 学びたい人

OER(Open EducaXonal Resources) インターネットで公開された教育用素材 文書資料 画像 動画 電子教科書 再利用 で多様性を促す クリエイティブ コモンズ ライセンス 国際的ムーブメントによる普及 UNESCO 2012 世界 OER 議会 OER は誰でも作れる 個人 企業 非営利組織 大学

オープンエデュケーションの特徴 (2) 教材を探せるウェブサイト 学びたい目的に即して 適切な教材を取得 どれを使えばいいんだ?? 目的に合った教材が探せる! 学びたい人 学びたい人 検索 統合 分類

オープンコースウェア (OpenCourseWare: OCW) 正規講義のシラバスや教材 講義ビデオを無償公開単位認定なし (PublicaXon= 出版 ) 発展途上国向けに教材を翻訳 ( 国際教育協力 ) OCW 教材を使ったオンライン上の学習コミュニティ

itunes U / Khan Academy 企業が開設したサイトで教材を無料で公開 個人や非営利団体が教材を作り無料で公開

オープンエデュケーションの特徴 (3) 共に学び教え合うコミュニティ 学び教え合うことで学習の意欲と成果を高める 学び合う学習コミュニティ 学びたい人 分からない所を聞けない 一人で学ぶのは大変 学びたい人 一緒に学ぼう! 学びたい人

OpenStydy / Mozilla Open Badge オンラインで学び教える 学習コミュニティ OCW と連携同じ教材を共に使って学ぶ デジタルバッジ ( 認定証 ) を交付する仕組み 学習経験を示す リンク 知識技能を示すシグナル

OER で学ぶ大学 学位取得 Saylor 財団が無料公開するオープンな教科書 オープンな教科書を使って学び大学単位や学士号が取得できる 既存のオンライン大学 (Excelsior College) と連携 試験で達成度評価 学士号を 1 万ドル程度で取得できるコース

Open Learning Initiative カーネギーメロン大学によるオンライン学習環境 個別指導システムによる理解度確認 学習履歴による進度把握 ( ビックデータ活用 ) 認知科学 学習科学の研究者が協力

オープンエデュケーションが広まる背景 : 理念 と 実利 の共存 社会貢献活動として 教育格差の是正 : 発展途上国への 国際教育協力 知 へのアクセス改善 公共財 としての大学 : 大学の理念に沿う リクルーティング ( 高校生 留学生 社会人 ) グローバル対応 ( 英語での教材公開 ) コスト削減と質向上 電子教科書の無償配布 講義教材にOERを使い授業改善

反転授業 (Flipped Classroom) The Flipped Classroom: Turning the Traditional Classroom on its Head - http://www.knewton.com/flipped-classroom/ 知識習得はオンライン ( 講義ビデオを視聴 ) 知識確認やディスカッションを教室で行う ドロップアウト ( 米国では30%) を低減する効果 OERやMOOCsを教材として使う

大学の抱える課題ニーズ増大 学生の変化 持続性 大学卒の人財ニーズ急増 先進国 : 成人の大学卒人口はまだ1/3 程度 発展途上国 : 若年人口爆発とキャンパスと教員不足 非伝統的 な学生の増加 社会人入学働き家族を養いながら学ぶ ドロップアウトの増加 米国で非伝統的な学生の修了率は 24% 米国における大学の持続性への懸念 大学の学費高騰と財政悪化 ( 補助金削減 )

社会が支えるオープンエデュケーション 慈善寄付団体 ヒューレット財団 ゲイツ財団 セイラー財団 社会貢献事業の一環数十億ドル規模 大学や非営利団体に出資し 間接的に支援 政府 米国 : 労働省再教育に利用 アジア アフリカ 南アメリカ教育機会の不足を補う 大学は活動の 媒体

オープンエデュケーション 進化形 としてのMOOCs cmoocs と xmoocs 2008- 個人によるオンライン講座 (cmoocs) 協同的な知識構築を目指すブログ等で交流 2011- 大学レベルのオンライン講座 (xmoocs) 大学レベルの教育を大規模にオンラインで実施 技術イノベーションの後押し ウェブブラウザーで動作するシミュレーションソフト ビデオデリバリーの改善 (YouTube) オープンソースでプラットフォーム公開 (edx) 中国 フランスにおける国家レベルの開発 活用

MOOCs とは オンライン講座によるオープンな教育サービス OER を使った学習コミュニティ MOOCs 講師 学び合う学習コミュニティ 数週間の学習コースを共に受講する 認定証 学びたい人 学びたい人 受講者 学習コミュニティ 受講者

MOOCs のアドバンテージ : 持続性の高いオープンエデュケーション ビジネスモデル 修了証発行による手数料徴収 ( 数十ドル ) 優秀な学生の企業斡旋 IT 企業へのジョブマッチング (Coursera,Udacity) カスタマイズ教材の販売 寄付金に頼らない教育オープン化 事業 大学は優秀な学生を世界中から発掘できる 企業や個人も MOOCs を開設できる 企業内研修 (Yahoo が社内教育に Coursera を活用 ) オンライン インターンによる人財確保

3. 高等教育に取り入れられる MOOCs 大学教育に取り入れられる MOOCs MOOCs 導入への批判

大学教育に導入される MOOCs 教材レポジトリとして講義で利用 MOOCsを使ったブレンド型学習 推進する法案制定 ( カリフォルニア州 SB520) MOOCs を使ったオンライン大学院 ジョージア工科大コンピュータサイエンス Udacityを使って安価に (7000ドル) 8 人の教員追加で1 万人の学生を教える オンライン教材リポジトリとして使われる MOOCs 既存の大学教育に位置づけられコモディティ化?

大学単位を取れる MOOCs 認定証 Coursera の認定証 Signature Track ウェブカメラで写真付き身分証明書を確認 タイピングのパターン認識によるなりすまし防止 認定証で大学単位を取る ACE Credit ( 米国大学の単位推薦サービス ) 米国 2000 の大学で単位に置き換えることができる 認定証を通学している大学の単位補充に

事例 : サンノゼ州立大学の MOOCs 活用 反転授業に Udacity や edx のコースを利用 学生に edx のコース ( 電子回路 ) を使うことで受講生の合格率を 50% から 90% に上昇 他の州立大学キャンパスにも拡大予定 大学生や高校生 社会人が Udacity のコースを受けて単位取得 (SJSU Plus) コース修了率は高かった (83%) 高校生のコース修了率は低い 一旦休止しコースの改善を行う

事例 :Semester Online 教育ベンチャー企業 2U が立ち上げたオンライン教育コンソーシアム 複数の中堅大学やカレッジがオンラインコースを MOOCs として公開 修了者には単位授与 ボストン大学 エモリー大学などが参加 オンライン教育普及を目的とした大学連合

MOOCs 導入への批判 (1) 大学での MOOCs 活用に反発する動き 大学教員からの申し立て 大学の自由 を奪うとの懸念 サンノゼ州立大哲学科での JusXce X 導入中止マイケル サンデル教授への公開質問状 学内に是非を問う委員会が必要との意見 ( ハーバード大リベラルアーツ学部 )

批判の根拠 : 大学によって異なる MOOCs との関わり MOOCs を 作る 大学 トップユニバーシティ MOOCs 開発 公開 独自性のある質の高い学習コースを公開 MOOCs を 使う 大学 カレッジ 話す教科書 として教材利用 反転授業の教材として利用教育の質向上 仲介役となるプロバイダ (Coursera など ) MOOCs を 使う 大学はプロバイダに対価を払う ( 単位付与を行う場合 学生個人の利用は無料 )

MOOCs 導入への批判 (2) 無償? のMOOCs MOOCsでの学びは必ずしも タダ ではない 認定証発行 (Coursera) 事務手数料レベル 個人認証と剽窃防止に対する対価としては適当 教科書販売斡旋?(Coursera) オンラインコースで用いる電子教科書を無償提供 受講期間後も読みたい場合は各自で購入 教育コストを下げている事は確か 学習者は別の形で対価を払う例 : 学習履歴データ

4. MOOCs が高等教育へもたらす インパクト 大学が直面する 2 度目の変革期 オンライン教育で変わる大学と社会

大学が迎えた 2 度目の変革期 (1) 印刷革命がもたらした大学の衰退 12 世紀西ヨーロッパに大学が誕生 拡大へ 国家から独立した組合 国境を越えたネットワーク 14 世紀印刷革命 宗教改革国家の影響が増大し宗派ごとに分断 印刷物の普及と手紙の交換により 知的活動の拠点が大学の 外 にヴァーチャルに出現 大学の地位低下 (15 世紀から 16 世紀 ) 王立アカデミーなど他の機関に代替される 職業学校や専門学校などに機能分化

大学が迎えた 2 度目の変革期 (2) インターネットがもたらす大学の変化 19 世紀音声 映像メディアの普及 20 世紀末インターネットの普及 デジタル技術の普及は情報の流通や知的活動を組織を超えて促す印刷革命に並ぶインパクト オンライン教育が大学を変える これまで大学は新しいメディアを視聴覚教材として大学の 中 の教育環境を改善 拡張してきた 遠隔教育 e ラーニング インターネット上では誰でも教育学習に参加できる 物理的なキャンパスも必要ない (MOOCs)

大学が迎えた 2 度目の変革期 (3) 大学の 外 に広がるオープンな学習環境 インターネットと現代的な 知 との親和性 相対的 批判的な知として常に変動し再構成 社会のなかで協同的に知的構築の交流 多くの人が集まり学ぶ 場 の持つ優位性 インターネットは本来オープン性を持っている 現代的な知的活動と相性がよい 大学は 2 度目の変革期 を乗り越えるか? 14 世紀の再現 : 規模縮小と機能分化? 異なるシナリオ : オープンネスとの 共存?

事例 : オープンネスと共存する大学 : Western Governors University 米国の知事団体が設立 OER を活用し安価に 課目一つでも履修できる他大学と単位互換 学生知識や技能を考慮して単位を与える 社会での経験が 単位 として認定される Competency- based 能力に応じた単位認定

事例 : 企業によるオンライン教育プロダクトについて学ぶMOOCs Mapping with Google Course 新しいGoogleマップの機能の解説ビデオ クイズ 課題の提出 ハングアウト 開発コミュニティ形成

Open EducaXon Alliance Udacity が Google, AT&T らと協同設立 IT 企業で働く若い人財を MOOCs で育成 企業と協同してカリキュラム開発 若年層の就職難に対応 ミスマッチング を解決 社会のニーズと近接したオンライン教育のあり方

オンライン教育がもたらすもの (1) e ラーニングが果たした大学の拡張 ( かつて ) 高等教育においては社会へ出るための準備を完了することを想定していた 直線的なキャリアを描くことが前提 e ラーニング :ICT が拡げた大学 企業による教育環境

オンライン教育がもたらすもの (2) ボーダレスな教育 の実現 複線的なキャリアや学び直しを前提とする 制度の 外側 を支えるオープンエデュケーション 誰でも 自由に教え 自在に学べる 社会へ MOOC 認定証を 承認 するかは社会が決める 単位や学位と同じような能力を示す資格に?

オンライン教育がもたらすもの (3) ボーダレスな教育 に必要なもの 教育制度への 出口 入口 を整備する重要性 出口 : 社会の多様なニーズに応じた学習環境 入口 : 単位互換制度 認定証の社会承認

まとめ : オンライン教育がもたらす教育と社会 社会変化に対応できる人財育成 予測しえない未来に適応可能な人財の教育 一生涯学び続ける社会へ 学校と大学では抱えきれない学習機会 オープンな学習環境が社会を支える オンライン教育や MOOCs が今世紀の学習を支える社会インフラへ ボーダレスな教育 がもたらされる社会へ 課題もあるが 社会変革も期待される

まとめ :21 世紀の 学び と高等教育 単位や学位の 相対化 MOOCs により能力ベースの単位認定が普及? MOOCs の認定証が単位と比較される シグナル に グローバル競争にさらされる大学教員 他では教えられない内容 方法を持つ教員が強みを増す ( 国境を越えた競争原理への反発 ) 高等教育への多様なプレイヤーの参入 教育ベンチャー企業 非営利団体 個人 オープン エデュケーション = 教える 自由 イノベーション が教育制度 機関の価値を問う

日本における期待 (1): 学び と企業 社会 MOOC は企業にとって魅力があるのか? 企業内教育 : 蓄積された経験 +eラーニングも 採用 : 新卒一括採用ジェネラリストは育つか? 分野と目的を区切った MOOC 活用はあり得る 社内におけるIT 人財育成 (Coursera + Yahoo!) 中途採用 ( 優秀な人材を獲得するためのMOOC) 教育環境を 開く メリットを MOOC で享受 教えること が社会にもたらす副次的効果 大学が ( まだ ) 持っているオープン教育の知恵を導入

日本における期待 (2):JMOOC 誰もが MOOC を開講できるプロバイダの誕生 持続性のために JMOOC に期待したいこと オープンソースプラットフォームの提供 edx コミュニティベースの開発 ノウハウ共有 グローバルプロジェクトへの参画 プラットフォームのインタオペラビリティ確保 Coursera による API 提供 ( 大学が外部アプリ制作 ) 講師へのサポート コンテンツ開発 : よい授業 あっての流行る MOOC 講義運営のノウハウ : 講師同士のつながり形成 講師が講義を宣伝する機会の提供

JMOOC 講座 2014 年開講 オープンエデュケーションと未来の学び LDL(League of Daigomi Learning) で開講 武田俊之 ( 関西学院大 )+ 森秀樹 ( 大阪大 )+ 重田 MOOC+ 公開講座で反転授業 MOOC でオープンエデュケーションの 基礎知識 を学ぶ ビデオ教材 有識者とのインタビューコンテンツ 公開講座 オープンエデュケーションを使ったキャリア形成を考えるワークショップ

MOOCs がもたらすボーダレスな 教育と社会 重田勝介 北海道大学情報基盤センター Twi6er ID: shigejam 2013/10/24 サイエンティフィック システム研究会 2013 年度合同分科会会合