LHC における Higgs 探索 東京大学素粒子物理国際研究センター中村浩二 On behalf of & 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 1
Higgs 粒子 1964 年 : 対称性の破れとゲージ粒子の質量 (P. Higgs et. al.) 質量のあるスカラー粒子 :Higgs 粒子の存在 Higgs 粒子の質量 : 理論からの予想は困難 1983 年 : W/Z ボソンの発見 1995 年 : トップクォークの発見 質量におおまかな制限 (92 +34-26GeV) しかし LEP(~2000 年 ) : m H <114GeV 棄却 Tevatron(~2011 年 ) : 158 < m H <173GeV 棄却いまだに未発見 LHC は残る領域を探索するパワフルなマシーン 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 2
最速ヒッグス粒子生成マシーン Tevatron 2.5fb -1 今回は 1-2fb -1 の good data を解析 4 x 10 32 LHC EPS LHC でのヒッグスの生成断面積は 15x Tevatron(@120GeV) Peak luminosity は 6 倍 LHC は Tevatron の約 100 倍のレートでヒッグスを生成 Peak 時は約 50 event/sec (@120GeV) LP 2.4 x 10 33 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 3
ヒッグス粒子の生成崩壊過程 Gluon Fusion(ggF) Vector Boson Fusion(VBF) W/Z 随伴生成 (WH/ZH) 生成過程 崩壊過程 bb, WW, ττ, γγ, ZZ すべてが大事 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 4
主要なチャンネル 現在探索が行われている過程の Higgs の生成率 ( 数 ) Low mass : H ττ High mass : H WW 1 fb -1 での生成数 10 3 10 2 10 1 10 0 典型的な事象選択後の信号 背景事象数分布を用いた解析につては信号が 90% 含まれる領域の事象数 channel Ns bkg S/N H ττ (ggf/vbf) τ l τ h 8.0 1200 1/150 τ l τ l +jet 0.8 47 1/60 H γγ (ggf) 16 723 1/45 H bb(wh) 5.5 992 1/180 H WW (ggf) H ZZ (ggf) lνlν+0j 21 32 ~1 lνlν+1j 7.2 15 1/2 lνqq 53 2x10 4 1/400 llll 2.8 3.1 ~1 1-2 fb -1 llνν 4.5 62 1/14 llqq 31 7433 1/240 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 5
今回結果を出したチャンネル H γγ (1.08fb -1 ): 16pSE-6 山村 ( 東大 ) H WW lνlν (1.70fb -1 ): 16pSE-4 増渕 ( 東大 ) 17pSD-3 吉原 ( 東大 ) lνqq (1.04fb -1 ): 17pSD-2 後藤 ( 東大 ) H ZZ 4l (2.2fb -1 ) llνν (1.04fb -1 ) llqq (1.04fb -1 ) H bb (1.04fb -1 ) H ττ (1.06fb -1 ): 16pSE-5 中村 ( 東大 ) 17pSD-7 塙 ( 筑波大 ) 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 6
H γγ 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 7
H γγ W/top の loop を介した崩壊で 崩壊分岐比が小さい (0.2%) σxbr=0.04pb 特徴的かつ Simple な崩壊で 背景事象が少なく アクセプタンスも大きい イベントセレクション Trigger : 2 photon trigger 2つのhigh-qulity isolated photon (pt1>40gev, pt2>25gev) *CMS: 30GeV Signal Model Cristal Ball + gaus tail 120GeV σ core =1.7GeV Background decomposition 基本てきにリミット計算には使わないが Isolation と同定の質から γj, jj の割合を計算 主なバックグラウンド pp γγ ~30pb( 約 1000 倍 ) Mγγ の分解能が鍵 jet γ fake γ+jet と jet-jet 事象 (1.8x10 5, 4.8x10 8 pb) 10 4 レベルの除去 両方とも理論の不定性が大きい data で見積もる必要あり Conversion と 5 つのカテゴリー Conversionの数 Etaの領域 信号 σ core γγ purity Nconv = 0 共にcentral( η <0.75) 8% 1.39GeV 83% それ以外 28% 1.59GeV 69% Nconv 1 共にcentral( η <0.75) 7% 1.61GeV 75% central-forwardの境目 16% 2.10GeV 70% それ以外 41% 1.88GeV 70% 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 8
Mγγ 分布 全カテゴリー 共に unconverted 共に central( η <0.75) : 8% それ以外 : 28% 少なくとも一つconverted. 共にcentral( η <0.75) : 7% central-forwardの境目 : 16% それ以外 : 41 % 赤線は double exponential によるフィット リミット計算ではこの line をバックラウンドとする 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 9
結果と CMS との比較 95%CL limit (ATLAS) CMS Classifiers R9 energy fraction in the highest cell max η central/forward high/low pt γγ 8 Categories Mass resolusion σ eff =2.40GeV (ATLAS より若干悪い クリスタルの LED calibration で改善する ) 3.3xSM@120GeV No significant Excess Found for both exp. 3.5xSM@120GeV (2.8xSM expected) CMS : 140GeV に excess (p=0.25%) 1.6σ by Look Elsewhere Effect 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 10
H WW 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 11
H WW lνlν 崩壊分岐比が大きく バックグラウンドも少ない 125GeV-200GeV で最も感度が良いチャンネル イベントセレクション 2 つの異符号のレプトン (e or μ) M ll >15(10) for ee, μμ, (eμ), M ll Mz METrel>40(25) for ee, μμ, (eμ) 0jet pt ll >30GeV 1jet b-jet veto pt tot <30GeV Z ττ veto 主なバックグラウンド WW, W+jets (0jet) Top, WW (1jet) W+jets はすべてデータから見積もる (Fake rate method) WW, top は 分布は MC を信じ データ (CR) を用いて規格化 Event Topology とセレクション SM WW から信号を分けるためのセレクション Higgs の質量領域ごとに最適化 mh<170 170 mh<220 mh 220 Mll <50GeV <65GeV 50<Mll<180GeV Δφll <1.3 <1.8 No Cut MT 0.75*mH< M < mh 0.60*mH< M < mh Top CR 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 12
MT 分布と limit 0 jet 95% CL で 154<mH<186GeV の質量領域を棄却 1 jet 110-150GeV はデータがバックグラウンドのみに比べて 2σ 弱高く 130GeV の信号と同程度 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 13
The Same channel from CMS 0 jet ほぼ ATLAS と同様の手法 細かい質量領域カテゴリーでの最適化 WW CR 1 jet 95% CL で 147<mH<194GeV の質量領域を棄却 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 14
H WW lνqq 大きな W+jets バックグラウンド 低い質量のヒッグス探索は困難 240<mH<600 GeV 質量分布をフィットして peak を探す イベントセレクション 1 つの high-pt (30GeV) lepton(e or μ) 2 本の high-pt (25GeV) jet 2jet mass が W の質量 (71 < mjj<91gev) 主な背景事象と観測数 3xSM (5xSM expected) @ 400GeV 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 15
H ZZ 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 16
H ZZ ll+x 4lepton(6%): 崩壊分岐比が小 バックグラウンドが少ない 質量分解能が良い llqq(70%): 崩壊分岐比が大 Z+jets バックグラウンドが大きい llνν(20%): mh>2mz で最も感度の高いチャンネル 唯一 low mass 探索が可能 Off shell(zz*) が使えない 探索が行われている質量領域 4lepton llqq llνν 100 200 300 400 500 600 共通のセレクション :mz(±15gev) に再構成される 2 つの lepton ペア (>20GeV) *4l は 7GeV for 2 nd 4 lepton セレクション もう一つの lepton ペアは mh 依存なカット mh<120gev mll>15gev mh>200 GeV mll>60gev llqq セレクション MET<50GeV >2jet with mw(-10+20gev) カテゴリー :2b-tag と 0/1b-tag llνν セレクション MET>66(82)GeV for mh<280(>=280)gev and b-jet veto High mass : boost Z (Δφll<2.25) Background は ZZ* (Top) 見積もりは MC Background は Z+jets Mjj のサイドバンドから評価 Background は Top MC で評価 (b-tag CR でチェック ) 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 17
結果 (4lepton) と CMS との比較 CMS 1.66fb -1 95% CL で 190<mH<200GeV と 214<mH<226GeV の質量領域を棄却 mh=242gev に小さな excess(p=6.8%) 185<mH<290GeV の 4 箇所を棄却 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 18
結果 (llqq, llνν) llqq w/o b-tag llqq b-tag llνν 2xSM(3xSM) @360GeV 95% CL で 350<mH<450GeV の質量領域を棄却 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 19
H bb/ττ 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 20
WH/ZH bb Low mass で圧倒的な崩壊分岐比 バックグラウンドが多いため W/Z 随伴生成のみ解析 イベントセレクション WH 1 lepton (25GeV) ZH 2 leptons (20GeV) mz(±15gev) 2 b-tagged jets (25GeV) MET>25GeV mt<40gev MET>50GeV WH 主な背景事象と観測数 ZH WH ZH 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 21
H ττ 低い質量領域で重要なチャンネル MSSMヒッグス探索においてもGolden チャンネル lep-lep lep-had had-had e or μ 2 (15/10GeV) 1(25/20GeV) 0 Had-tau 0 1(20GeV) 2(40/30GeV) MET >20GeV >25GeV MT l,met イベントセレクション Δφ/sumpT >2.0/<120GeV 主なバックグラウンド <30GeV Z τ τ W+jets, QCD, Top その他 Z ee/μμ, Top, WW/WZ/ZZ Z ττ の分布および W+jets, QCD はデータから見積もる SM ヒッグス探索 lep-lep+1jet と lep-had チャンネル MSSM ヒッグス探索 lep-lep, lep-had, had-had すべてのチャンネル SM ヒッグス探索用の lep-lep+1jet : 0.8 signal, 47 bkg event, 46 event obs. 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 22
質量分布 ll+1jet SM ヒッグス探索 MSSM ヒッグス探索 hh ll lh 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 23
SM および MSSM の制限 SM MSSM mhmax シナリオ μ>0 のとき ma-tanβ 領域の制限 2011 年 9 月 17 日 6xSM(12xSM exp.)@120gev モデルによらない制限 日本物理学会 @ 弘前 24
Combination 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 25
ATLAS Combin したチャンネル 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 26
ATLAS combination 棄却した領域 146-232, 256-282, 296-466GeV (Expected は 130-450 まですべてを棄却 ) 広い領域で expected よりも高い観測値 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 27
CMS combine したチャンネル 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 28
CMS combination 棄却した領域 145-216, 226-288, 310-400GeV (Expected は 130-450 まですべてを棄却 ) 広い領域で expected よりも高い観測値 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 29
結果の解釈 ( 発見の可能性 ) 2σ 3σ p-value Signal がないと仮定したときのデータを観測する確率 Significant な excess はない 120GeV 以下と 130GeV 付近は信号ありに近い分布 しかし まだ統計のふらつきを見ている CMS のスパイクは ZZ(γγ) によるもの ZZ や γγ の excess は慎重に扱う必要がある (LEE) 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 30
実験前の予測との比較 と 課題 / 展望 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 31
実験前の予測感度と課題 実験前の感度予測 実際の結果 全体的にほぼ予想通り 特に ggf が支配的な過程 H ZZ, H WW, H γγ Low mass 探索に課題 H ττ : VBF 過程 H bb : boost Higgs 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 32
Low mass Higgs (m H <130GeV) 現在この領域を探索しているチャンネル 典型的な事象選択後の信号 背景事象数分布を用いた解析につては信号が 90% 含まれる領域の事象数 @120GeV channel Ns bkg S/N H ττ (ggf/vbf) τ l τ h 8.0 1200 1/150 τ l τ l +jet 0.8 47 1/60 H γγ (ggf) 16 723 1/45 H bb(wh) 5.5 992 1/180 H WW(ggF) lνlν+0j 2.6 25 1/10 lνlν+1j 0.9 8 1/9 H ZZ(ggF) llll 0.1 0.3 1/3 S/N を上げる努力 VBF, boost Higgs 120GeV 信号の数 ( アクセプタンス ) を増やす努力 pt の閾値を下げる すべてのチャンネルが重要!! データを理解することで改善可能 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 33
まとめと展望 7TeV の衝突開始以来 1 年半 順調にデータが取得され ヒッグス粒子の質量に対する制限に歴史的な革新があった LEP Tevatron ATLAS CMS 許される領域 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 許されている領域は 466GeV 以上の high mass と 290GeV 付近の極小さい領域を除けば 114GeV<mH<145GeV この領域の探索には改良の余地が多い 5fb -1 ( 今年 ) で 125GeV 以上のヒッグスは 3σ で発見することが予想されている (realistic) 残る領域は解析の改善及び来年のデータ (+10fb -1 ) で明らかにする 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 34
現在は あれはやはりヒッグスなんじゃないか? 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 35
来年には どこにあるのか すぐに明らかになるさ あれはやはりヒッグスなんじゃないか? 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 36
backup 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 37
統計手法 (Profile Likelihood) Likellihood の構築 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 38
統計手法 (Profile Likelihood) Test Statistics( 何を用いて検定するか ) 観測量 (s, b, nuisance parameter) を用いて作ることができる量 例えば 最も簡単には event 数 (S/ B) LEP 以降の実験ではこれが複雑化 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 39
統計手法 (Profile Likelihood) ATLAS/CMS での test statistics 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 40
Confidence Level と p-value 基本的にTest Statisticsはμの関数 ~ L(, θ) q 2ln L(, θ) Confidence Level μ を固定して θ のみをパラメータにしたフィット (conditional ensemble) θ はμの時のベストフィット μもθもパラメータにしたベストフィット (unconditional ensemble) μもθはベストフィット p-value μ=0の時の確率 p 0 = f(q 0 0, θ (0, obs))dq 0 q 0,obs L(0, θ) L(, θ) 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 41 q~ 0 2ln
Look Elsewhere Effect(Trial Factor) 信号がないときに 1 回の実験で 5σ の excess を観測する確率と n 回の独立した実験のうちもっとも大きな excess が 5σ になる確率は等しくない 極端な例 :background が 10-7 event の時 1event 観測されたら 5σ ただし 独立な実験を 10 7 回繰り返せば起こりうる つまり n 回試行で最大の excess はその点の実際の excess よりも大きな確率で起こる 独立具合が鍵 極小さな q 0 と何度交差しているかで評価 ZZ->4l や γγ は mass 間の相関が少ないのでこの数が多い 実際の p-value との差が大 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 42
2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 43
2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 44
EPS results 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 45
Low mass combination 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 46
2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 47
2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 48
2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 49
ATLAS combination (CLs) 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 50
CMS p-value ( チャンネルごと ) 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 51
Charged Higgs (t H + b csb) Top から崩壊する H + を探索 Br(H+ cs)=100% を仮定 Mjj の分布を使い t H+ の崩壊分岐比に対する制限を与える W b t t b H + c s 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 52
Charged Higgs (t H + b τνb) leptonic decay と hadronic decay それぞれ解析 2011 年 9 月 17 日日本物理学会 @ 弘前 53