糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

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されており これらの保菌者がリザーバーとして感染サイクルに関与している可能性も 考えられています 臨床像ニューモシスチス肺炎の 3 主徴は 発熱 乾性咳嗽 呼吸困難です その他のまれな症状として 胸痛や血痰なども知られています 身体理学所見には乏しく 呼吸音は通常正常です HIV 感染者に合併したニ

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2005年 vol.17-2/1     目次・広告

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

( 参考文献 2 より引用 ) 注意点であるが 参考文献 1 によると 測定の時期 マイコプラズマの既往が重要のようだ enzyme immunoassay (ELISA) tests for M. pneumoniae-specific IgM positive in up to 80% afte

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 庄司仁孝 論文審査担当者 主査深山治久副査倉林亨, 鈴木哲也 論文題目 The prognosis of dysphagia patients over 100 years old ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 日本人の平均寿命は世界で最も高い水準であり

結核発生時の初期対応等の流れ

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

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第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

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横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする

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ROCKY NOTE 食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ

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妊婦の推定感染経路 2 番目は 妊婦さんの推定感染経路です 2011 年は中国 ベトナムなど海外で感染した夫や本人です 海外からの感染に注意が必要でした ところが 2012 年は夫 同僚から妊婦さんへの感染が認められたので 同居家族 同僚のワクチン接種を勧めるよう喚起しました さらに 2013 年に

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よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

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入した場合には 経気道的な散布巣として臓側胸膜から 2-3mm 離れた内側に小葉中心性粒状影や tree-in-bud といわれる小葉中心性病変を呈しますが この所見をみた場合には呼吸器感染症を強く疑います 汎小葉性病変は 小葉間隔壁に囲まれた ほぼ 1, 2cm 四方の小葉内が細胞浸潤や滲出物ある

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

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15,000 例の分析では 蘇生 bundle ならびに全身管理 bundle の順守は, 各々最初の 3 か月と比較し 2 年後には有意に高率となり それに伴い死亡率は 1 年後より有意の減少を認め 2 年通算で 5.4% 減少したことが報告されています このように bundle の merit

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す ウイルスの中で検出頻度の高いものはライノウイルス コロナウイルスが多く これに続くのが RS ウイルス インフルエンザウイルス パラインフルエンザウイルス アデノウイルスです また これらのウイルスには季節的流行の特徴があり ライノウイルスは春と秋 RS ウイルス コロナウイルス インフルエンザ

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2018 年 10 月 31 日放送 成人 RS ウイルス感染症 坂総合病院副院長高橋洋はじめに RS ウイルスは小児科領域ではよく知られた重要な病原体ですが 成人例の病像に関しては未だ不明の点も多いのが現状です しかし近年のいくつかの報告を契機として この病原体の成人領域での疫学や臨床像 とくに高齢者における重要性が少しずつ明らかになってきています 今回は成人における RS ウイルス肺炎の病像を当施設の成績を踏まえてお話しさせていただきます 感染と診断法このウイルスは接触および飛沫感染によってヒト~ヒト間を伝播し 潜伏期間は3 5 日間です 感染により終生免疫が獲得されることはなく生涯にわたって再感染を繰り返します 不顕性感染は稀で 90% 以上が顕性感染をおこすとされていますが このあたりの成績はほとんどが乳幼児のデータから得られたものであり 成人高齢者でも同様の傾向を示すかどうかは明らかではありません また冬季に流行する代表的な気道病原性ウイルスとして知られていますが 実際には近年ではむしろ夏から秋に流行する年も多く 本年度も当院では8 月から9 月にかけて人工呼吸症例を含めかなりの数の成人例が見いだされています 診断に際しては小児科領域では主に抗原迅速検査が広く普及しており 感度 特異性とも良好ですが 成人では出現するウイルス量が乳幼児の千分の一と少なく 陽性持続期間も数日間のみであるため 迅速検査の陽性率が非常に低い ということが大きな問題となります 文献的には成人での迅速検査陽性率は 20

~30% とされています したがって成人例の診断ではペア血清での抗体価上昇の確認が検査の主役となります 抗体価は乳幼児では上昇が不良な場合も少なくないとも言われていますが 成人の自験例では迅速検査や PCR 培養が陽性のケースではほぼ例外なく抗体価の有意上昇が確認できています 抗体検査は迅速性には欠けますが 根気よく追跡していくと非常に多くの成人例を拾い上げることが可能です 成人症例の疫学成人症例の疫学に関しては 年間に健常高齢者の5% 弱 基礎疾患保有者の6% 強が RS ウイルス感染症に罹患すること 基礎疾患保有者が感染すると 15% で入院が必要となること そして入院率 死亡率はインフルエンザとほぼ同等であったことがこれまでに示されています また高齢者施設では年間に入居者の5~10% が RS ウイルス感染症に罹患し 発症例のうち 10~20% が肺炎を併発することも知られています 成人肺炎の原因としての報告頻度は検査法や流行状況が異なるためか1% から 10% まで幅が大きいです 続いて当院で私達が実際に経験した成人肺炎症例の成績をお示しします まず当院において 1 年間前向きに約 300 例の成人肺炎症例を登録して抗原迅速検査 PCR 抗体価の検討を行なったときの成績では RS ウイルス関連肺炎症例が 1 年間で 18 例 約 6% 見いだされました 流行期間である 11 月 ~4 月では 10% 強の陽性率であり やはり私達が日常診療で診ている国内の肺炎の患者さんたちの中には 実は RS ウイルスが関与する症例が数多く含まれている ということがおわかりいただけるかと思います また診断面では 迅速検査陽性例は全体の 20% 弱 PCR 陽性例を含めても 40% 弱であり 60% 以上の症例はペア血清の確認によりはじめて診断できています インフルエンザやヒトメタニューモウイルスとは違って やはり成人 RS ウイルス感染症例の全体像を把握するためには抗体価の追跡が不可欠である ということも言えるのではないでしょうか

臨床像 患者背景 予後この検討例も含めて 私達が当院で実際に診療にあたってきた成人の RS ウイルス肺炎は約 220 例ですが そのなかで 昨年 2 月までに診断した 186 例における臨床像 患者背景 予後などの成績をお示しします 発症時期に関しては年ごとに流行状況が異なり 一方ではオフシーズンにも散発例がときに見いだされることから全体でみるとほぼ通年で陽性例が確認されています 病型としては市中肺炎 (CAP) が 2/3 医療 介護関連肺炎(NHCAP) が 1/3 の比率となっています また入院治療例が 80% 外来治療例が 20% となっていました 平均年齢は 77.6 歳で 当院で診断された他のウイルス関連肺炎症例と比較すると発症年齢は最も高齢です 年齢構成を見ても大部分が 60 歳以上に分布していますが これは高齢者がもっぱら罹患しやすいということではなくて 若年者では乳幼児との接触など感染機会自体は多いが罹患しても肺炎まで至ることは少ない と解釈すべきものと思われます 予後に関しては 死亡退院率は全体で 6.1% でしたが 70 歳未満の死亡例はなく 70 歳台では死亡率 3.4% 80 歳台では 6.9% 90 歳台では 15% と年齢とともに明らかな死亡率の上昇が認められています 他の病原体との合併感染例はおよそ 50% で確認されており やはり肺炎球菌やインフルエンザ菌との合併感染例が多く見いだされています とくに冬季では 診断された肺炎球菌肺炎のうち 20% 以上が実は RS ウイルスとの合併感染だったシーズンもありました また RS ウイルス単独感染例と混合感染例の予後を比較すると 単独感染例のほうが生命予後は明らかに不良でありました 臨床像に関しては まず最高体温は平均 37.9 72% の症例が急性期に酸素投与を必要とし 喀痰 咳嗽 喘鳴などの呼吸器症状は概ね高頻度でしたが 食思不振 倦怠感 頭痛や関節痛 筋痛などの全身症状を呈する症例は比較的少数でした インフルエンザと比較すると呼吸器症状や低酸素血症は目立つが高熱はきたしにくく全身症状は軽度 ということですが これは既存の成人例に関する国外報告と大きな相違はありません 胸部画像所見としては 多発性 両側性の分布を示す症例が過半数を占めますが 陰影自体は通常の浸潤影を呈するケースも多く スリガラス影が主体の症例は全体の

1/4 程度でした 感染経路としては 文献的には小児例で積極的に家族の検査を施行したところ家族内発症率が 50% 近かったといった論文も報告されています しかし当院の症例では 詳細に問診をしても小児接触歴も sick contact も一切確認できないケースが全体の 70% を占めておりました ときには祖母 息子 孫の3 代同時感染といった例も見いだされるのですが そういったケースはかなり少数派です また施設入所例が 20% で 全例が気道感染の施設内流行など確認されない散発例であった点も特徴的と思われます おそらく RS ウイルスは 流行期間においてはごく軽症の上気道炎程度の症状で市中を広く循環しているものと推測されます 基礎疾患に関しては健常人の発症例は 10% 以下であり 大部分の症例は明らかな基礎疾患を有しています 内訳としては COPD など慢性呼吸器疾患が最も高率であり 以下に脳血管障害後遺症 慢性心疾患 糖尿病と続きます 急性期診断が困難なケースが多いため大部分の症例では抗菌薬が併用されており 当初からウイルス単独肺炎を疑って抗菌薬未使用で経過をみて改善が確認された症例は実際には多くはありません ウイルス関連肺炎の病像比較高齢患者の主体を占める NHCAP 症例でみると RS ウイルス陽性肺炎例のうち 40% 近い症例が初期診断は 誤嚥性肺炎 として入院となっています 高齢者で 誤嚥性肺炎 と診断された症例のなかには 実は本病原体による肺炎例やウイルス感染を契機として二次的に嘔吐 誤嚥を発症した症例などが少なからず含まれているものと思われます また RS ウイルス陽性肺炎例と陰性肺炎例とを比較すると 陽性例のなかには救命はできても病前

より明らかに PS が低下してしまう症例が高率に見いだされてきます さらには NHCAP 症例中における病像を当院のインフルエンザ陽性肺炎例と RS ウイルス陽性肺炎例で比べてみると RS ウイルス陽性例のほうがインフルエンザ陽性例よりも死亡率が高く 入院期間も長期化しています おわりにまとめになりますが 成人の RS ウイルス関連肺炎は主に高齢者に発症し その頻度は流行期間中では 10% 以上と決して稀なものではありません 死亡例ばかりでなく感染を契機とした PS 低下例も稀ならず認められており 入院期間が長期化しやすいなど 高齢化社会を迎えた今日の日本においては医療経済的な観点からも重要な病原体といえます 近年では全自動の遺伝子診断系など高感度かつ比較的迅速な検査機器も多数登場してきており 治療面でも有効性の高い抗ウイルス薬の開発がかなり進められていますので 数年後には国内における RS ウイルスの診断と治療をめぐる状況は大きく変貌してくるかもしれません