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IbarakiChristianUniversityLibrary ~ 文部科学省 特別支援教育に関する調査の結果 特別支援教育資料 に基づいて茨城キリスト教大学紀要第 52 ~号社会科学 p.145~150 145 ~ 文部科学省 特別支援教育に関する調査の結果 特別支援教育資料 に基づいて~ 平田正吾 椎木久夫 1 はじめに 2017 年 3 月に新たに告示された小学校と中学校の学習指導要領においては, 特別な配慮を必要とする児童 生徒 への指導に関する記述が 第 1 章総則 に, より具体的に盛り込まれると共に, その対象として従来から挙げられていた 障害のある児童 生徒 や 海外から帰国した児童 生徒 だけでなく, 不登校児童 生徒 が新たに付け加えられた この内, 障害のある児童 生徒については, 特別支援学級や通級による指導において, 特別支援学校での自立活動を取り入れ, あるいは参考にしつつ指導を行うよう定められている こうした変化に加え, 学校教育法施行規則の一部改正により, 平成 30 年度から高等学校でも 通級による指導 が, 新たに制度化され実施されることとなった このように現在, 我が国の特別支援教育は, 特に小学校や中学校, 高等学校に在籍する児童生徒への指導に関して新たな変革の時期にあると言える こうした現況において, これまでの小学校や中学校の通級による指導や特別支援学級の現状を把握することは, 今後の課題を整理し改善する上で重要であろう 文部科学省は, 定期的に我が国における特別支援教育についての全国調査を行い, その結果を 特別支援教育に関する調査の結果 や 特別支援教育資料 として, ホームページに公表している これらの調査は, 都道府県別に結果が示されている場合が多く, 我が国における特別支援教育の現状を比較的細かく捉えることが可能であるように思われる 本稿は, こうした分析のまず第 1 段階として, この文部科学省による資料に基づき, 筆者らの所属大学が所在する茨城県の小学校や中学校における 通級による指導 と 特別支援学級 の現状と課題を明らかにすることを目的とするものである 2 文部科学省による調査の基礎的事柄茨城県の現状分析に移る前に, 本稿で主に用いるデータの基礎的事柄について, まず述べておく 本稿で分析するのは, 文部科学省のホームページ上の 特別支援教育について の 資料 における データ 欄から得られた一連のPDFデータである より具体的には, 特別支援教育資料関連 から 特別支援教育資料( 平成 28 年度 ) の第 1 部から第 3 部のデータを取得した 更に, 特別支援教育に関する調査の結果関連 の 特別支援教育に関する調査結果について ( 平成 29 年度 ) から, 平成 29 年度通級による指導実施状況調査結果について ( 別紙 2) を取得した また, 特別支援教育に関する調査結果について ( 平成 28 年度 ) から, 平成 28 年度通級による指導実施状況調査結果について ( 別紙 2)

146 平田正吾 椎木久夫 も取得した これらのデータは全て2018 年 6 月 4 日に取得した まず 平成 29 年度通級による指導実施状況調査結果について を見ると, このデータは公立の小学校, 中学校, 義務教育学校及び中等教育学校の前期課程を対象として実施されており, 調査項目としては通級による指導を受けている児童生徒数に加え, 指導時間や通級形態, 設置学校数や担当教員数などが挙げられる この調査結果でまず注目すべきは, 平成 29 年度に通級による指導を受けている児童生徒数が昨年度より10.8% 増加していることである 通級による指導を受けている児童生徒は, 平成 5 年度の制度開始時点では 12,259 名 ( 小学校 11,963 名, 中学校 296 名 ) であったが, それ以降にいずれの学校でも対象者は増加し続け, 平成 29 年度では108,946 名 ( 小学校 96,996 名, 中学校 11,950 名 ) となっている なお, 平成 29 年度の小学校においては, 言語障害として指導を受けている児童が最も多く (37,134 名 ), 続いて自閉症 (16,737 名 ) や情緒障害 (12,308 名 ), 学習障害 (13,351 名 ), 注意欠陥多動性障害 (15,420 名 ) として指導を受けている児童が, 概ね同程度存在している 一方, 中学校において言語障害として指導を受けている生徒は比較的少なく (427 名 ), 学習障害として指導を受けている者が最も多く (3,194 名 ), 続いて自閉症 (2,830 名 ) や情緒障害 (2,284 名 ), 注意欠陥多動性障害 (2,715 名 ) として指導を受けている生徒が概ね同程度存在している 指導時間を見ると, 小学校と中学校のいずれにおいても週 1 単位時間である者が最も多く, その次に週 2 単位時間である者が多くなっている 続いて 特別支援教育資料 ( 平成 28 年度 ) における特別支援学級についての記載( 国 公 私立計 ) を見ると, 特別支援学級に関しても, その在籍児童生徒数は小学校 (152580 人 ) と中学校 (65,259 人 ) のいずれにおいても昨年度より増加している 特別支援学級の在籍児童生徒数は, 平成初期にやや減少に転じた時期も認められるが, 平成 7 年以降は一貫して上昇傾向にある なお, 平成 28 年度の小学校においては, 自閉症 情緒障害として指導を受けている児童が最も多く (72,032 名 ), 続いて知的障害 (71,831 人 ) の児童が多い これらの障害に比して, 肢体不自由 (3,302 人 ) や病弱 身体虚弱 (2,265 人 ), 言語障害 (1,554 人 ), 難聴 (1,155 人 ) や弱視 (441 人 ) などの児童は少ない これと同様の傾向は, 平成 28 年度の中学校においても認められ, 知的障害 (34,534 人 ) や自閉症 情緒障害 (27,939 人 ) として指導を受けている生徒が, その大半を占めている 最後に, 平成 28 年度において義務教育段階で特別支援学級に在籍している者は, 義務教育段階の児童生徒総数 (9,980,769 人 ) の2.2% であり, 通級による指導を受けている者は1.0%(98,311 人 ) であることが, この資料では報告されている 3 茨城県の現状と課題 1) 通級による指導 について表 1は, 平成 28 年度及び平成 29 年度の資料に基づく茨城県で 通級による指導 を受けている児童生徒数を示したものである なお, いずれの報告も各年度の5 月 1 日時点の結果を示したものである 平成 29 年度 5 月 1 日の時点において, 茨城県で 通級による指導 を受けている小学校の児童は969 名, 中学校の生徒は58 名である その内訳を見ると, 平成 29 年度において小学校では言語障害や情緒障害として指導を受けている児童が最も多く, 中学校では情緒障害

~ 文部科学省 特別支援教育に関する調査の結果 特別支援教育資料 に基づいて ~ 147 表 1 通級による指導 を受けている茨城県の児童生徒数 言語情緒学習注意欠陥肢体病弱 自閉症弱視難聴計障害障害障害多動性障害不自由身体虚弱平成小学校 365 12 318 10 28 176 60 0 0 969 29 年度中学校 0 3 29 0 7 17 2 0 0 58 平成小学校 363 33 209 10 26 157 83 0 0 881 28 年度中学校 0 0 0 0 5 0 0 0 0 5 として指導を受けている生徒が最も多くなっている こうした茨城県の通級による指導を受けている児童生徒数は, 小学校に関しては全都道府県の中でも17 番目に少ない数であり, 中学校に関しては11 番目に少ない数である 平成 29 年度における通級による指導を受けている児童は全国の都道府県の内, 最も多い所では 16,263 名 ( 東京都 ) である一方, 最も少ない所では144 名 ( 高知県 ) となっている また, 中学校の生徒に関しては最も多い所では2,465 名 ( 東京都 ) である一方, 最も少ない所では39 名 ( 高知県 ) となっている こうした児童生徒の人数については, 各都道府県における義務教育段階の児童生徒の総数などの違いを当然考慮する必要があるが, 都道府県によって通級による指導を受けている児童生徒の人数が大きく異なることは明らかである さて表 1を見ると, 平成 28 年度に茨城県の中学校で通級による指導を受けている生徒が 5 名のみであることは注目に値する この人数は, 平成 28 年度においては香川県と共に全国で最も少ないものである これらの生徒は難聴として指導を受けており, 茨城県において難聴の通級指導教室は特別支援学校にのみ設置されていることを踏まえると ( 茨城県教育庁特別支援教育課,htp:/www.edu.pref.ibaraki.jp/board/gakkou/tokubetsushien/ syurui/nantsu.html), 平成 28 年度当初に中学校で通級による指導を受けていた生徒は存在していなかったと言える これは小学校において, 少なからず通級による指導を受けている児童がいることを踏まえると, 看過することができない事態である 小学校で通級による指導を受けていた児童が, その状態の改善や進路によって中学校でも継続して通級による指導を受けるとは限らないが, 中学校でも引き続き通級による指導を必要とする者は一定数生じるものと考える方が自然であろう 中学校でも小学校から引き続き通級による指導を受けている者の数について, 今回入手した資料には記載がなかったため, 通級による指導を受けている生徒数を小学校で指導を受けている児童数で除することから, 極めて簡潔な近似であるが, この実態の把握を試みた 平成 29 年度のデータに基づき, この指標をまず都道府県ごとに算出したところ, その平均は0.125( 標準偏差 0.083) であった この値が最も高いのは島根県 (0.425) であり, 最も低いのは山形県 (0.021) であった 茨城県の値は0.06 であり, これは全都道府県の中でも9 番目に低い値である 平成 28 年度のデータについても同様の分析を行ったところ, その平均は0.116( 標準偏差 0.084) であった この年度における茨城県の値は0.006 であり, これは全都道府県の中で最も低いものであった これらの分析から, 茨城県において小学校で通級による指導を受けていた者は, 他の都道府県と比して中学校では指導を受けていない場合が多いことが示唆される こうした者

148 平田正吾 椎木久夫 達が仮に中学校でも小学校から引き続き指導や支援を必要としているならば, どのような対応が現在取られているのか, その実態を小学校からの引き継ぎの有無なども含め把握する必要がある 平成 28 年度から平成 29 年度にかけて, 茨城県で通級による指導を受けている生徒が増加しているのは, 平成 29 年度から言語障害や情緒障害の通級指導教室が中学校に新たに設置されたことに主によるものと考えられる ( 茨城新聞クロスアイ,2018 年 2 月 17 日, 特別支援教育県教員, 人材確保急ぐ.htp:/ibarakinews.jp/news/newsdetail. php?f_jun=15187830771067) 新たに中学校に通級指導教室が設置された年度の当初から, そこで指導を受けている生徒が少なからず生じていることは, こうした制度のニーズが高いものであったことを示唆しており, 茨城県の中学校における通級指導制度は更なる拡充を求められていると言える また, 先に算出した人数比についての分析は, 我が国全体で見ても小学校から引き続き中学校でも通級による指導を受けている者が多くはないことを示唆している ( 中学校 1~3 年における人数を小学校 1~6 年における人数で除しているので, その値が1 近傍にないことは当然であるが, それでも平均が0.1 程度であるのは小さな値であるように思われる ) 先にも述べたように, 平成 30 年度から高等学校でも通級による指導が開始されている こうした高等学校における指導を拡充させることは当然のことながら, その前段階である中学校における指導に関しても更なる充実が求められていると言える 2) 特別支援学級 について平成 28 年度において, 茨城県で 特別支援学級 に在籍している小学校の児童は5,480 名, 中学校の生徒は2,420 名である その内訳を見ると, 平成 28 年度において小学校では自閉症 情緒障害 (2,885 名 ) か知的障害 (2,091 名 ) として指導を受けている児童がほとんどであり, これは中学校でも同様である ( 自閉症 情緒障害 :1,263 名, 知的障害 :1,135 名 ) 通級による指導と同様に, 小学校で特別支援学級に在籍していた児童が中学校でも引き続き在籍しているのか近似的に検討するため, 中学校における在籍人数を小学校における人数で除したものを再び求めた その結果, その全国平均は0.438( 標準偏差 0.071) であった 茨城県の値は, ほぼ平均に近い0.442 であった また, 茨城県の自閉症 情緒障害の特別支援学級について同様の指標を求めたところ, その値は0.438 となり, 知的障害の特別支援学級については0.542 という値が得られた 特別支援学級に在籍している児童が各学年に均等に存在していると仮定した場合, 小学校 4~6 年の児童が全て中学校でも特別支援学級に在籍することが多いならば, 特別支援学級に在籍している児童の半数と, 中学校で特別支援学級に在籍している生徒数の比は1 近傍になることが予想される 実際に, 茨城県の自閉症 情緒障害の特別支援学級と知的障害の特別支援学級に関して, こうした指標を求めたところ比較的 1に近い値が得られた ( 自閉症 情緒障害 :0.88, 知的障害 : 1.09) このように, 茨城県で自閉症 情緒障害や知的障害の特別支援学級に在籍している生徒の多くは, 小学校から引き続き特別支援学級に在籍している者達ではないかと予想される この結果は更に, 先に見た小学校で自閉症 情緒障害として通級による指導を受けていた児童が, 中学校で自閉症 情緒障害の特別支援学級に新たに在籍する場合が少ないことを同時に示唆しているようにも思われる

~ 文部科学省 特別支援教育に関する調査の結果 特別支援教育資料 に基づいて ~ 149 4 おわりに以上, 本稿では文部科学省による調査結果に関して, 特に児童生徒数に注目した分析を行うことにより, 茨城県における 通級による指導 と 特別支援学級 の現状分析を試みた 公表されているデータの性質から間接的な推論に頼らざるを得ないが, 茨城県で通級による指導を受けていた児童が, 中学校では通級による指導を受けることなく通常学級に在籍している場合が多いことは明らかであり, こうした生徒達の中学校での実態を把握する必要がある また, 平成 29 年度から茨城県の中学校における通級指導教室の数は増加しつつあるとは言え, そこで指導を受けている生徒の数は近隣の県と比較すると未だ少ない ( 今回分析した資料によると, 平成 29 年度に福島県で通級による指導を受けている生徒は110 名であり, 栃木県では194 名である ) 中学校での通級による指導を, 今後更に拡充するための課題についても把握し, その解決方策を検討していく必要がある 一方, 特別支援学級については, 多くの者が小学校から引き続き中学校でも特別支援学級に在籍している可能性が示唆された これらの者達の小学校から中学校における個別の指導計画や支援計画の引き継ぎの実際や, 中学校を卒業後の進路などについて今後検討を行うことにより, 茨城県における特別支援学級の現状と課題をより仔細に把握していく必要がある 引用文献 茨城県教育庁特別支援教育課 (2018). 通級指導教室 ( 難聴 )(htp:/www.edu.pref.ibaraki.jp/board/ gakkou/tokubetsushien/syurui/nantsu.html,2018 年 6 月 4 日最終アクセス ) 茨城新聞クロスアイ (2018). 特別支援教育県教員 人材確保急ぐ (htp:/ibarakinews.jp/news/ newsdetail.php?f_jun=15187830771067,2018 年 6 月 4 日最終アクセス ) 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 (2018). 特別支援教育資料 ( 平成 28 年度 ) 第 1 部集計編 第 2 部データ編 (htp:/www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1386910. htm,2018 年 6 月 4 日最終アクセス ) 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 (2018). 平成 29 年度通級による指導実施状況調査結果について (htp:/www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/ icsfiles/afieldfile/2018/05/14/ 1402845_03.pdf,2018 年 6 月 4 日最終アクセス ) 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 (2017). 平成 28 年度通級による指導実施状況調査結果について (htp:/www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/ icsfiles/afieldfile/ 2017/04/07/1383567_03.pdf,2018 年 6 月 4 日最終アクセス )

150 平田正吾 椎木久夫 Classesandresourceroomsforstudentswithdisabilities inibaraki:anote ShogoHirata,HisaoShiki Abstract Thisbriefarticlereviewedseveraltopicsrelatedtofeaturesofclassesandresourceroomsfor studentswith disabilitiesin Ibarakiprefecture.ResultsofMinistryofEducation,Culture, Sports,Science and Technology (MEXT)surveys assessing specialneeds education were analyzed.theyrevealthatstudentsusingresourceroomshaveincreasedinrecentyearsin Japan.Nevertheless,few resourceroomsexistinjuniorhighschoolsofibaraki.thequantityand qualityofspecialneedseducationofibarakimustbeinvestigated.especialy,thepresentstateof studentswithseveraldevelopmentdisabilitiessuchasemotionaldisturbance,autism spectrum disorders,andspecificlearningdisordersinjuniorhighschoolmustbespecificalyexamined.