原始惑星系円盤内でロスビー波不安定性によって形成される渦 小野智弘 ( 京都大 ), 武藤恭之 ( 工学院大 ), 富田賢吾 ( 大阪大 ), 野村英子 ( 東工大 ) Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 1
様々な原始惑星系円盤構造 若い星の周りにあるガス円盤 円盤内のダストが合体成長し 惑星を形成 近年 詳細な円盤構造が明らかになってきている ALMA によるダスト連続光観測 非軸対称 リング スパイラル HD142527 HL Tau Elias 2-27 Fukagawa+13 ALMA Partnership+15 Pérez+16 Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 2
Fukagawa+13 Fukagawa+13 ガスの非軸対称構造 HD142527 ダスト連続光観測 Muto+15 実線 : ガス分布破線 : ダスト分布赤線 : 高面密度側青線 : 低面密度側 ガス輝線観測 理論モデル ダスト分布は強く非軸対称 ( 約 70 倍 ) ガス分布は弱く非軸対称 (3-10 倍 ) Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 3
どうやって非軸対称構造を作るのか ガス渦 を用いるモデルが有力 1. 流体不安定性によるガス渦形成 ロスビー波不安定性 (e.g., Lovelace+99, Li+00, 01) Baroclinic 不安定性 (e.g., Klahr & Bodenheimer 03) Vertical shear 不安定性 (e.g., Goldreich & Schubert 67) Zombie vortex 不安定性 (Marcus+13, 15) 2. ガス渦によるダスト捕獲 r ガス ダスト Fu+14 Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 4
面密度 ロスビー波不安定性 [RWI] 差動回転円盤中で起こるシアー不安定性 動径方向の密度分布に強い変化がある時 不安定 ex.) 密度バンプ 軸対称密度バンプ 20 回転 @r=1 半径 不安定時 ガス渦を形成 複数の渦ができた後 合体により一つの渦に 最終的に渦移動が起こり中心星に落下 Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 5
面密度 ロスビー波不安定性 [RWI] 差動回転円盤中で起こるシアー不安定性 動径方向の密度分布に強い変化がある時 不安定 ex.) 密度バンプ 軸対称密度バンプ 20 回転 @r=1 半径 不安定時 ガス渦を形成 複数の渦ができた後 合体により一つの渦に 最終的に渦移動が起こり中心星に落下 Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 6
面密度 ロスビー波不安定性 [RWI] 差動回転円盤中で起こるシアー不安定性 動径方向の密度分布に強い変化がある時 不安定 ex.) 密度バンプ 軸対称密度バンプ 800 回転 @r=1 半径 不安定時 ガス渦を形成 複数の渦ができた後 合体により一つの渦に 最終的に渦移動が起こり中心星に落下 Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 7
面密度 ロスビー波不安定性 [RWI] 差動回転円盤中で起こるシアー不安定性 動径方向の密度分布に強い変化がある時 不安定 ex.) 密度バンプ 軸対称密度バンプ 800 回転 @r=1 半径 不安定時 ガス渦を形成 複数の渦ができた後 合体により一つの渦に 最終的に渦移動が起こり中心星に落下 Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 8
不安定成長率 面密度 線形安定性解析 (Ono+16) 背景流 2 次元 平衡 軸対称 平行流 ガウシアン面密度分布高さ A, 幅 w がパラメータ A 1 w r 仮定 一様エントロピー ( 順圧 ) 高い 不安定成長率の分布レイリー不安定 結果 ( 円盤スケールハイト =0.1) A 非軸対称モードに対するバンプの不安定性を調べた 中立安定線を求めた 低い #Poster 9 Muto: 非圧縮の場合 小さい w 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 9
不安定成長率 レイリー不安定 レイリー条件 比角運動量 (j = r 2 Ω) の動径勾配が負になる場所が存在する レイリー条件を満たすと不安定となって動径勾配が負となる領域を消す 面密度の動径変化が強い時 圧力勾配力の効果でレイリー条件を満たし得る 高い A 不安定成長率の分布 レイリー不安定 低い小さい w 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 10
本研究の目的 目標 観測される円盤非軸対称構造の成因がロスビー波不安定性であるかを明らかにする 本研究の目的 1. 線形安定性解析の結果を検証する 2. ロスビー波不安定性によってどのような渦が形成されるのかを調べる 使う道具 2 次元流体シミュレーション (athena++) Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 11
面密度 数値計算の設定 Code : Athena++ Coordinates : cylindrical (2D: r φ) Reimann Solver : HLLC Spatial Reconstruction : PLM(2 次 ) Hydro time-integration : VL2(2 次 ) 仮定 : 一様エントロピー流 ( 順圧 ) 計算領域 (r) : [0.3:3.1] dr: 渦領域 0.002, 領域外 0.004 計算領域 (φ) : [-π:π] grid: 渦領域 1024, 領域外 512 計算時間 : r=1 の場所で200 回転 (t=400π) 減衰領域 : [0.3,0.375], [2.6:3.1] で速度を初期値へ減衰境界条件 (r) : 初期条件で固定 境界条件 (φ): 周期境界計算機 : 基礎物理研究所 CRAY XC40, CfCA Cray XC30 初期条件 2 次元 平衡 軸対称 平行流ガウシアン面密度分布 # パラメータ ( 高さ A, 幅 w) A 1 http://princetonuniv ersity.github.io/athe na/index.html w r Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 12
解析方法面密度分布 方位角平均面密度をガウシアンでフィッティング Σ=1+A exp r r c Δw 高い 2 phase2 1 つの渦が移動 方位角平均面密度分布 A 低い phase1 数 ~ 数十回転で渦が合体 小さい w 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 13
結果 1: 進化線 円盤スケールハイト =0.1 レイリー中立安定の状況を初期条件に 10run A 平均面密度分布の進化線 phase1 phase2 高い レイリー不安定 phase 転換点 全 run で渦形成 w A 初期バンプが大きいほど phase2 が見えなくなる 中立安定線で進化は止まるわけではない 低い 中立安定線 小さい w : 初期条件 : phase 転換点 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 14
結果 2: 規格化した進化線 case A の (A, w) を初期値で規格化した場合の進化線 Phase 転換点は A/A 0 = ( w/ w 0 ) 1.25 の線上にのる 高い 平均面密度分布の規格化進化線 初期バンプが小さいほど 大きい割合で進化する A/A 0 低い 緑線 : A ( w) 1 青線 : A ( w) 1.25 小さい w/ w 0 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 15
結果 3: 進化線上を初期条件におく A ( w) 1.25 線上を初期条件として計算 レイリー中立安定 ~ ロスビー中立安定 : 4 run ロスビー中立安定の時以外で渦形成 全 run で phase 転換点は A/A 0 = ( w/ w 0 ) 1.25 の線上にのる 初期バンプが大きい時ほど phase2 が見えなくなる 高い A 平均面密度分布の進化線 レイリー不安定 低い 小さい w 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 16
結果まとめ 1. 線形安定性解析の検証 不安定領域では渦形成が起こる 中立安定 安定領域では渦形成は起こらない 2. ロスビー波不安定性でどんな渦が形成されるのか 最終的には渦は1つ 方位角平均密度分布の形が緑領域のパラメータを持つ 高い A 平均面密度分布の進化線 レイリー不安定 低い 小さい w 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 17
結果まとめ 1. 線形安定性解析の検証 不安定領域では渦形成が起こる 中立安定 安定領域では渦形成は起こらない 2. ロスビー波不安定性でどんな渦が形成されるのか 最終的には渦は1つ 方位角平均密度分布の形が緑領域のパラメータを持つ 高い A 平均面密度分布の進化線 レイリー不安定 低い 小さい w 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 18
渦中心の面密度 渦の強さ 面積 実際の観測で重要なのは渦中心での面密度 渦の面積 数値シミュレーションの結果できる渦のアスペクト比 (χ b/a) は常に χ~6-8 であった 渦のアスペクト比が一定の時 渦中心での面密度 A/ w 渦の面積 w 2 φ 高い b a 形成される渦の分布 r 小さいが高い渦 大きいが低い渦は作ることができない 低い 小さい 渦の面積 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 19
渦中心の面密度 観測への示唆 ロスビー波不安定性でできる渦は サイズが大きいものが選択的に観測されると期待される ロスビー波不安定性によってできた渦なら緑領域の中に入る 緑領域に入らない渦はロスビー波不安定性で作れない 他のメカニズムか他の物理効果が必要 高い 形成される渦の分布 低い 小さい 渦の面積 大きい Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 20
まとめ & 課題 まとめ ロスビー波不安定性について数値シミュレーションを用いて調べた Ono+16 の線形安定性解析が正しいことを確認した ロスビー波不安定性によってできた渦が満たすべき 方位角平均密度分布に制限をつけた 課題 異なる背景 熱的性質を持つ円盤への拡張 実際の観測モデルへの適用 3D, 粘性, 自己重力, 磁場などの影響を考慮 より深い物理的解釈 Dec. 20th, 2016 理論懇シンポジウム 2016@ 東北大 21