高度交通システムと情報通信技術 2019/6/28 高取祐介 1
ITS( 高度交通システム ) I Intelligent( 高度 知能化 ) T Transport( 輸送 交通 ) S Systems( システム ) 情報通信技術を用いて 人やモノの移動を高度化するためのシステムの総称 交通問題の解決 利便性向上が目的事故防止 渋滞解消 環境改善など 2
ITS の要素技術 人や物が実世界で移動する 人や物の位置を測定する技術が必要 ( ポジショニング技術 ) 自分の位置 / 自分以外の位置 移動している人や物がお互いの情報を交換することでシステムの価値が高まる 人や物の情報 ( 位置等 ) を交換するため無線通信ネットワーク技術が重要 3
位置測位 ( ポジショニング ) システム 測位衛星 : GPS( 米 ) Galileo(EU) 準天頂衛星 ( 日 ) マーカ系位置特定 Wifi 系位置特定 ダイナミックマップ 4
GPS(Grobal Positioning System) 30 個の GPS 衛星が地球に向けて GPS 信号を送信している 地上の受信機は最低 4 個の GPS 衛星からの信号を受信すると 自分の 3 次元位置と衛星の時計との時刻のずれを算出できる 5
GPS(Global Positioning System) 高層ビルが林立する場所や 高架の下 トンネルなどでは反射波や電波が届かず 利用が困難となる 6
マーカ系位置特定 地面に敷設されたマーカに情報を持たせ その情報を読み込むことで自分の位置を特定する RFID(Radio Frequency IDentification ) 磁気マーカ マルチモーダルマーカ 7
Wifi 系位置特定 Finger Printing 自分の端末が 現在見える Wifi アクセスポイントの SSID や アクセスポイントから受信した信号の強度 (RSSI) などをもとに データベースを参照して自位置の候補を探 索する アクセスポイント情報 位置情報 データベースサーバ 8
ダイナミックマップ 車両が取得した道路 周辺環境情報をもとにデータベースに位置を参照し 位置情報を得る 周辺データ 位置情報 9
ITS の無線通信 10
ITS の無線通信 DSRC 802.11p 無線 LAN(802.11a) と同様の通信方式 比較的限られた領域 ( 数 100m 範囲 ) における通信 アメリカ 日本で採用決定 LTE/5G Cellular-V2X 携帯端末網を利用して車車 路車 歩車間通信を行う 欧州 中国はこちら側 11
車車間通信の問題点 : 普及率問題 通信機器を持つ車両同士でしか通信できない 得られる車両の情報は通信機器の普及率に比例する アプリケーション性能が普及率に依存する 普及率 =60% の例 : 通信機器 センサ搭載車両 : 通信機器 センサ非搭載車両 12
障害物検出 障害物検出用デバイス 電波利用 : ミリ波レーダセンサ 光 (active) 利用 : レーザレーダセンサ 光 (passive) 利用 : イメージセンサ ( ステレオカメラ ) センサ利用アプリケーション ACC/FVCWS( 同一車線センサ利用 ) LCDAS( 側方車線センサ利用 ) 13
ミリ波レーダセンサ 機能 : ミリ波を出射することで対象物から反射してきた電波を受信し, 伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などを基に, 対象物の位置や自車との相対速度を測定する 検出距離は比較的長い (100m~) が 検出角度は狭い (±10 度前後 ) 適用例 :ACC( オートクルーズコントロール ) FVCWS( 前方車両衝突警報システム ) など http://techon.nikkeibp.co.jp/article/car/20090327/167937/?ss=imgview&fd=1544291436 14
レーザレーダセンサ 機能 : パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し 対象の距離を測定する 検出範囲は広角 天候 ( 雨や雪 ) や外乱 ( 光 ) の影響を受ける 検出距離は構成にもよるが 安価なものは検出距離が短い ( 数十メートル程度 ) 適用例 : 特性から 前方車両検出のほか 近距離の側方車両検出用に利用されることが多い 車線検出などの例もある 15
イメージセンサ ( ステレオカメラ ) 機能 :2 台のカメラから取得した画像から視差情報を取得し 対象物への距離を測定する検出範囲は広角 検出距離は数十メートル程度 視界不良時や逆光に弱い 距離センサだけでなく 画像認識によるアプリケーションも実現可能 適用例 :ACC( オートクルーズコントロール ) FVCWS( 前方車両衝突警報システム ) をはじめ 画像処理ベースの認識も可 ( 白線検出 歩行者検出 ) 16
ミリ波レーダレーザレーダイメージセンサ 検出距離とても長いまぁまぁ長いまぁまぁながい 検出角狭いとても広いまぁまぁ広い 検出角 検出距離 17
障害物センサを利用したアプリケーション ACC(Adaptive Cruise Control) 前方車両に追従して設定速度内で加速 減速をコントロールする (Honda アコードハイブリッドの例 ) 18
障害物センサを利用したアプリケーション FVCWS(Forward Vehicle Collision Warning System) 前方車両に追突しないようにドライバに警告する ( 米国 Federal Motor Carrier Safety Administration より ) http://www.fmcsa.dot.gov/facts-research/researchtechnology/report/forward-collision-warning-systems.htm 19
障害物センサを利用したアプリケーション 車線変更意思支援システム (Lane Change Decision aid system:lcdas) Bosch 社サイトより http://www.bosch- automotivetechnology.us/en_us/us/component_us/sf_cv_da_lane- Assist_SF_CV_Driver-Assistance-Systems_559.html?compId=72 20
車載センサを利用した障害物検出 http://special.mercedes-benz.co.jp/safety/the_new_eclass/ 21
ステレオビジョンカメラ 22
人間の目による奥行きの知覚 デジタルカメラを使って人間の目と同じように奥行きを知覚 ステレオカメラ 23
ステレオカメラ ステレオカメラ 対象物を複数の異なる方向から同時に撮影することにより その奥行き方向の情報も記録できるようにしたカメラ 活用例 映像分野 自動車分野 ロボット分野 3 次元計測分野 医療分野など レンズ 24
ステレオカメラによる距離測定 ステレオカメラの例 25
ステレオカメラのセッティング 1. 2 組の同じカメラを一本の直線状に置く 2. 2 組のカメラの向きをそろえる ( 平行撮影 ) 3. 2 組のカメラの間隔を決める ( 人間の目の間隔はおよそ 60~70mm) 26
ステレオカメラの距離計測原理 27
デジタル画像 コンピュータ上で利用する画像は点 ( ピクセル ) の集合で表現されている 28
( デジタル ) カメラの構造 光 レンズ イメージセンサ 1/2.3 型 ( 幅 6.2mm 高さ 4.4mm) イメージセンサ 注 : イメージセンサに写る画像は上下左右が逆さまに写る 29
カメラと目標との相似関係の発見 カメラレンズ カメラレンズ イメージセンサ イメージセンサ ( キリン ( 実体 )- レンズ中心 - キリン ( 撮像 ) を赤線で結んでいる ) 30
カメラと目標との相似関係の発見 カメラレンズ カメラレンズ イメージセンサ イメージセンサ ( キリン ( 実体 )- レンズ中心 - キリン ( 撮像 ) を赤線で結んでいる ) 31
カメラと目標との相似関係の発見 2 1 4 3 1カメラ- 目標の距離 [mm] ( 不明 ) 2レンズ- 撮像素子の距離 [mm] カメラスペックからわかる 3レンズ間距離 [mm] あらかじめ設定する 4 撮影素子上の左右画像の視差 [mm] 測定すればわかる 相似の関係より 1:2 = 3:4 1 4 = 2 3 両辺を 4 で割ると 1 = 2 3 4 2 は既にわかっており 3 は自分であらかじめ設定するので 4 がわかれば 1 が計算できる 32
イメージセンサ上の視差はどのように測る? 右 左 33
イメージセンサ上の視差はどのように測る? 左 右 34
イメージセンサ上の視差はどのように測る? 視差 35
実際の計算 ( デジタル画像利用 ) 1カメラから目標までの距離 ( 不明 ) 2レンズから撮像素子までの距離 5.9mm 3レンズ間の距離 ここでは100mm 4 左右画像の視差 実際に測定する 4 の求め方 4 視差 [mm] 6 デジタル画像上の視差 ( ここが知りたい ) 5 素子サイズ (6.2mm) 7デジタル画像の幅 デジタル画像撮像素子 これも 4:5=6:7 となるので 4=5 6 7 で求められる 36
デジタル画像上の視差 ( ピクセル単位 ) 6 デジタル画像上の視差 7 デジタル画像の幅 (640 ピクセル ) 視差 4= 素子サイズ 6.2mm5 6 7 6 が 8 ピクセルならば視差 4=6.2mm5 8 ピクセル 6 640 ピクセル 7 =0.0775mm 37
1カメラから目標までの距離 ( 不明 ) 2レンズから撮像素子までの距離 5.9mm 3レンズ間の距離 200mm 4 左右画像の視差 0.0775mm 先ほど求めた 1 = 2 3 4 に 4 = 0.0775 を代入すると 1 = 5.9mm 200mm 0.0775mm 15225mm 15m で目標までの距離が求まる 38
ステレオカメラによる視差 左カメラ 右カメラ 視差画像 ( 左 ) 近いところ ( 視差が大きい ) 明るい ( 白っぽい ) 遠いところ ( 視差が小さい ) 暗い ( 黒っぽい ) 39
ステレオカメラの測定可能範囲 40
測定可能範囲について (1) 両方のカメラに写る必要がある OK NG ( カメラ間距離が長い ) NG ( 画角が狭い ) NG ( 物体が近すぎる ) 41
測定可能範囲について (2) 視差が 1 ピクセル以上離れている 視差が 0 無限遠方 42