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血栓止血誌 (4):445~453, 2013 凝固 線溶 血小板タンパク質の機能発現機構 中村 徹, 寺澤秀俊, 中冨靖, 濱本高義 Coagulation factor IX;its molecular structure and functional mechanism Toru NAKAMURA,Hidetoshi TERAAWA,Yasushi NAKATOMI, Takayoshi HAMAMOTO coagulation factor IX,activated factor IX,post-translational modification 1. はじめに血液凝固 IX 因子 ( 以下,FIX) はアミノ酸 415 残基からなる分子量約 57,000 の 1 本鎖糖タンパク質である.FIX 遺伝子は 8 つのエキソンと 7 つのイントロンからなる 34kb の塩基長であり,X 染色体の Xq27.1 に位置する 1).FIX は肝臓で生合成され, 血中濃度は 3~5μg/mL であり, 加齢に応じてこの血中濃度は高くなる 2). ヒト血漿由来 FIX の血漿中の半減期は約 24 時間である 3). 生体内において,FIX は内因系凝固因子の活性型 XI 因子 ( 以下,FXIa) または外因系凝固開始因子の組織因子 / 活性型 VII 因子複合体 ( 以下,TF/FVIIa) により,Arg145-Ala146 および Arg180-Val181 間のペプチド結合が順に切断され, 活性型 IX 因子 ( 以下,FIXa) に変換される.FIXa はコファクターである活性型 VIII 因子 ( 以下,FVIIIa) とリン脂質,Ca 2+ 共存下で, Xase と呼ばれる複合体を形成し,X 因子 ( 以下, FX) を活性型 X 因子 ( 以下,FXa) に活性化する. 最終的にはα-トロンビンがフィブリノゲンをフィブリンに変換し, 活性型 XIII 因子 ( 以下, FXIIIa) 共存下, フィブリン網を形成しつつ止血の役割を果たす ( 図 1) 4). FIX は血液凝固経路において, 内因系経路と外因系経路の交差点に位置する因子として重要な役割を果たし, その遺伝的欠乏症は血友病 B として知られている. その主な原因は点変異であり, 全体の約 9 割を占める. 本稿では, これまで報告されている知見を基に FIX の各ドメインの分子構造と機能について概説する 5). i)fix の一次構造 FIX はシグナル配列およびプロ配列を含め 461 アミノ酸残基からなる前駆体蛋白質として肝臓で生合成される.FIX 前駆体は 28 残基のシグナル配列が切断された後,18 残基のプロ配列がプロセッシング酵素により切断され, 成熟した FIX として血中へ分泌される. 成熟 FIX はアミノ末端側からγカルボキシグルタミン酸 (Gla) ドメインおよび 2 つの上皮細胞成長因子様 (EGF 様 ) ドメイン, 活性化ペプチド領域, セリンプロテアーゼドメイン領域で構成される. セリンプロテアーゼドメイン領域はトリプシンやキモトリ 一般財団法人化学及血清療法研究所蛋白製剤研究部 860-8568 熊本市北区大窪 1-6-1 Therapeutic Protein Products Research Department, The Chemo-ero-Therapeutic Research Institute, KAKETUKEN 1-6-1 Okubo, Kita-ku, Kumamoto 860-8568, Japan Tel: 096-344-2189 Fax: 096-344-9234 e-mail: nakamura-t@kaketsuken.or.jp

446 日本血栓止血学会誌第 24 巻第 4 号 TF FXII, HMWK, PKA FXIIa 外因系凝固経路 FXI FXIa FIX Ca 2+, Mg 2+, PL, FVIIIa FX 内因系凝固経路 Ca 2+ FVIIa FVII FIXa FXa Ca 2+, PL, FVa FII FIIa FI FXIII FXIIIa Fibrin Monomar Cross Link Fibrin Multimer 図 1 血液凝固カスケード TF:Tissue Factor,HMWK:High molecular weight kininogen,pka:prekallikrein,pl:phospholipids, FVa: 活性型血液凝固 V 因子,FII: プロトロンビン,FIIa: トロンビン,FI: フィブリノーゲン, FXII: 血液凝固 XII 因子,FXIIa: 活性化血液凝固 XIII 因子,FXIII: 血液凝固 XIII 因子 プシンと相同性が高い. 成熟過程において,FIX は小胞体で翻訳後修飾を受けるが, 遺伝子組換えの FIX は宿主細胞の翻訳後修飾を受けるため, ヒトの FIX の修飾と異なる ( 表 1, 図 2). 以下, 各ドメインの構造について詳しく述べる. ii) 各ドメインの構造と機能 Gla ドメイン Gla ドメインはビタミン K 依存性凝固蛋白質に含まれる共通のドメインであり, 因子間で高い相同性を有する.FIX では肝臓でγカルボキシラーゼによってアミノ末端側の 12 個のグルタミン酸がγカルボキシル化される. ビタミン K は, この反応の補助因子であり, 還元型ビタミン K は γカルボキシラーゼとともにグルタミン酸残基を γカルボキシル化し, 酸化されたビタミン K は, ビタミン K エポキシドレダクターゼ (VKOR) によって還元される. このγカルボキシラーゼは,FIX プロペプチド内の Ala-10 に変異があると親和性が低下する. また,Arg-4( プロペプチド ) を Gln に変異させると,Gla 化が不十分な組換え体が得られることが分かっており,Gla 化にはプロペプチド領域が関与する 6) 8). FIX の Gla ドメインには 8 つの陽イオン結合部位が存在する. この部分に Ca 2+ が結合すると, FIX の立体構造が安定化し,Gla ドメイン内の疎水性アミノ酸残基の側鎖とリン脂質膜とが相互作用できるようになる. また,Ca 2+ に加え,Mg 2+ 存在下で,FIX 活性が上昇することが森田らによって報告されている 9).Bajaj ら 10) によると, Mg 2+ は FIXa とリン脂質膜との相互作用を促進させるという.Mg 2+ は 8 つの陽イオン結合部位のうち 1,7,8 番目に配位すると考えられている. 逆に,Mg 2+ だけでは FIX の Gla ドメインはリン脂質膜と結合できず,Gla 残基の 2 番目から 5 番目の 4 つの Ca 2+ がΩ( オメガ ) ループ 1 (Gly4- Gln11) の安定化に必要と考えられている 11).Gla ドメイン内のΩループは EGF 様ドメイン-2( 以下,EGF-2,Cys88-Cys124 に相当 ) と共に, 活性化血小板やリン脂質膜上で FX を活性化するための Xase 形成に重要である 12). FIX のΩループ内の Lys5 は脊椎動物の FIX 間でよく保存されているが, その他のビタミン K 依存性凝固蛋白質では保存されていないユニークな塩基性アミノ酸である 13).Cheung らによって Lys5 を Ala に置換した FIX 変異体は IV 型コラーゲンとの結合能を消失することが報告され,FIX のΩループ内の Lys5 は血管内皮細胞や, 基底膜の IV 型コラーゲンに結合する際に重要な役割を果たすことが示された 14).

中村, ほか : 血液凝固 IX 因子 その分子構造と機能発現メカニズムについて 447 表 1 血漿由来 IX 因子と遺伝子組換え IX 因子の翻訳後修飾の比較 24)38) ヒト血漿由来遺伝子組換え由来 Gla 化の数 12/12 残基 100% 60% 11/12 残基 0% 35% 10/12 残基 0% 5% EGF-1 Asp64 β-ヒドロキシル化 37% 46% er53 O 型糖鎖 (Xyl) 1 -Glc,(Xyl) 2 -Glc (Xyl) 2 -Glc er61 O 型糖鎖 ia-α2,6-gal- ia-α2,6-galβ1,4-glcnac-fuc β1,4-glcnac-fuc AP( 活性化ペプチド ) Tyr155 硫酸化,er158 リン酸化完全に修飾されているもの 70% 4% どちらか一方が修飾されているもの 30% 21% 全く修飾されていないもの 0% 75% } Asn157 N 型糖鎖 α2-3,α2-6 で α2-3 のみ Asn167 N 型糖鎖 シアル化 シアル化 Thr159 O 型糖鎖 Thr169 O 型糖鎖 部分的に糖鎖が付加 部分的に糖鎖が付加 Thr172 O 型糖鎖 } 文献では数値の記載がないため, 全てを 100% と仮定した場合の割合を示した. Gla domain EGF-1 EGF-2 AP erine protease domain β P 図 2 FIX のドメイン構成 :O 型糖鎖 :N 型糖鎖 β:β ヒドロキシル化 P: リン酸化 : 硫酸化 EGF 様ドメイン EGF 様ドメインは Ca 2+ 高親和性結合部位を有する EGF 様ドメイン-1( 以下,EGF-1) と FVIIIa との結合に寄与する EGF-2 からなる. EGF-1 内の er53 と er61 は翻訳後修飾により O-グリコシル化され,Asp64 はβヒドロキシル化されている.EGF-1 の er53 に結合する O 型糖鎖はキシロース (Xyl) とグルコース (Glc) からなり,(Xyl) 1 -Glc と (Xyl) 2 -Glc の 2 種類が存在する 15). 遺伝子組換え FIX では (Xyl) 1 -Glc は観察されないため, 血漿由来 FIX の特徴のひとつとなっている ( 表 1).EGF-1 の Ca 2+ 結合部位は Asp64-er68 ヘアピンループとその近 くのβ-ストランド間に位置する.EGF-1 への Ca 2+ の結合は EGF-2 とセリンプロテアーゼドメインの位置を調節し,FVIIIa との相互作用を最適化することで酵素活性を促進している. しかし, EGF-1 と Thr39-Val46 の疎水配列は内皮細胞への結合には関与しておらず, また直接 Xase の形成にも関与していない 16) 19). なお,EGF-1 は TF/FVIIa による FIX の活性化には必須であるが,FXIa による FIX の活性化には必須ではないという 20).EGF-2 には 3 つのループが存在し, ファーストループ (Asn89- Gly93) はコファクターである FVIIIa との結合に関与し, サードループ (er102-val108) は基質

448 日本血栓止血学会誌第 24 巻第 4 号 である FX との結合に関与している 21).EGF-1 と EGF-2 を繋ぐ領域のアミノ酸配列とその長さ (Leu84-Thr87) は,FVIIIa の A2 ドメインとの相互作用に重要であり, この部位を改変した FIX では FX の活性化能が低下する 22). 活性化ペプチド活性化ペプチド ( 以下,AP) 内には翻訳後修飾を受ける箇所が数多く存在し,FIX のクリアランスに関与している 23).FIX の糖鎖修飾では,Asn157 と Asn167 は N-グリコシル化され, Thr159,Thr169 と Thr172 は O-グリコシル化されている. また,Tyr155 は硫酸化されており, er158 はリン酸化されている. 表 1 に示すように, ヒト血漿由来 FIX の AP の質量分析の結果から,Tyr155 が硫酸化され, かつ er158 がリン酸化されているものは 70% であり, どちらか一方のみ修飾されているものは 30% である. 一方, 遺伝子組換え FIX では硫酸化され, かつリン酸化されたものは約 4% しかなく, 両アミノ酸共に修飾されていないものは 75% にも及ぶ 24). 血漿由来の FIX のリン酸化を脱リン酸化すると血中回収率が著しく低下する. リン酸化が血中回収率に影響を与えるという仮説に基づき,AP をポリリン酸化した FIX 改変体を用いて血中回収率を調べたところ, 予想に反して血中回収率は遺伝子組換え FIX よりも低下した. したがって, 翻訳後修飾による血中回収率の差はリン酸化ではなく糖鎖ではないかと考察されている 25). 糖鎖に関する報告によれば, ヒト血漿由来 FIX の AP の N 型糖鎖はα2-3,α2-6 で結合したシアル酸を含んでいるが,CHO 細胞で産生される遺伝子組換え FIX ではα2-3 で結合したシアル酸のみである. こうした AP の糖鎖の翻訳後修飾の差がヒト血漿由来と遺伝子組換えの FIX のクリアランスの差に影響していると考えられている 24). セリンプロテアーゼドメイン一般に, セリンプロテアーゼは求核攻撃をもつセリン残基および触媒残基としてヒスチジン残基とアスパラギン酸残基をもつ. これら 3 つのアミノ酸は空間的に er-his-asp の順で並んでおり, セリンの水酸基の水素原子とヒスチジンの窒 FIXa 1 site Ca 2+ 高親和性領域 図 3 プロテアーゼドメインのカルシウムイオン結合部位, Autolysis Loop, 触媒部位と 1 部位の位置関係 N:NH 2 末端,C:COOH 末端,D: アスパラギン酸の側鎖黄, H: ヒスチジンの側鎖マゼンダ,: セリンの側鎖緑, 1site D:1 部位のアスパラギン酸黒矢印は基質の結合部位に結合した P1 側鎖の位置を示している.FIXa は Autolysis Loop の C150 の R( アルギニン ) と C151 のセリンの結合を切断する.Ca 2+ は C70, C80 のグルタミン酸の側鎖と結合することで構造を安定化し,FIXa による Autolysis Loop の切断に対し保護的に働く.( 文献 26 より引用, 一部改変 ) 素原子が, またヒスチジンの窒素原子とアスパラギン酸の酸素原子が水素結合している. セリンプロテアーゼは基質とミカエリス型複合体を形成すると, セリンの水酸基のプロトンがヒスチジンに移る. プロトン化ヒスチジンはアスパラギン酸との水素結合によって安定化されている. プロトンを失ったセリンの水酸基の酸素原子は基質のペプチド主鎖にあるカルボニル基の炭素原子に求核攻撃を行う. それによってセリンの水酸基と基質ペプチドのカルボニル基が共有結合した四面体型の中間複合体が形成される. 次いで四面体型の中間複合体が分解し, 基質のペプチド結合が切断され, アシル酵素中間体が形成する. その後, 水がアシル酵素中間体のアシル基を攻撃し, 最終的に基質を切り離して水解する. FIXa では er365(c195),his221(c57),asp269 (C102) が Catalytic triad を形成する ( カッコ内の C の数字はキモトリプシンナンバー ). この触媒部

中村, ほか : 血液凝固 IX 因子 その分子構造と機能発現メカニズムについて 449 FIX 1 146 181 415 LC AP HC FIXα TF/FVIIa, PL, Ca 2+ FXIa, Ca 2+ RVV-X FIXaα 1 145 146 181 415 LC AP HC 1 146 180 181 415 LC AP HC TF/FVIIa, PL, Ca 2+ FXIa, Ca 2+ FIXaβ RVV-X 1 145 181 415 LC HC 図 4 FIX の活性化機構 LC:Light Chain,AP:Activation Peptide,HC:Heavy Chain,RVV-X:Russell s Viper Venom factor X activator 位に加えてセリンプロテアーゼドメイン内には,Autolysis ループと呼ばれる領域と Ca 2 + 高親和性領域が存在する. これら 2 つの領域は 2 箇所の水素結合で繋がっている.Autolysis ループは FIXa がチモーゲンの FIX を切断する領域 (er318-arg319) を含むため, このように呼ばれている.Autolysis ループで切断された FIX は,Catalytic triad を形成できなくなるため酵素活性を示さない.Ca 2 + 結合ループには 1 つの Ca 2 + が Glu235(C70),Asn237 (C72),Glu240(C75),Glu245(C80) で配位しており,Ca 2 + は FIXa の立体構造を維持するのに重要な働きを担っている ( 図 3). これにより, セリンプロテアーゼドメインでの Ca 2 + の結合は Autolysis ループの切断 (er318-arg319) を抑制している 26). iii)fix 活性化機構 FIX の活性化には切断順序の違いにより 2 つの経路が存在する.1 つは FXIa, あるいは TF/ FVIIa による活性化経路である ( 図 4). この経路では, まず Arg145-Ala146 間のペプチド結合が切断されて FIXαとなり, 次いで Arg180- Val181 のペプチド結合が切断され,35 残基の AP が遊離し,Cys132-Cys289 がジスルフィド結合した 2 本鎖の FIXaβ(FIXa) へと変換される. もう 1 つの経路は蛇毒の Russel s viper venom の X 因子活性化酵素 (RVV-X) により活性化される経路である. 前述の活性化経路とは異なり Arg180-Val181 のペプチド結合が先に切断され, FIXaαを産生する. その後,Arg145-Ala146 間のペプチド結合が切断されて 2 本鎖の FIXaβ (FIXa) へと変換される. 中間体である FIXaα と FIXαは合成基質と天然基質である FX の活性化能が異なる.FIXαは合成基質の水解活性を有するが, その効率は FIXaβの 4 分の 1 以下である. なお, 基質を FX にすると,FIXαは FXa を産生することができない. 一方,FIXaα の合成基質の水解活性は FIXaβの活性にほぼ等しい. しかし, 基質を FX にすると FXa の産生効率は FIXaβに比べて低くなる 27). このように FIX の中間体や FIXaβの活性は低分子の基質と高分子の基質の間で反応性が大きく異なる. TF/FVIIa による FIX 活性化は,TF/FVIIa の TF と FIX の Gla ドメイン及び EGF-1 ドメインとが相互作用することによって上記のペプチド結合が切断される. この反応では,Arg145- Ala146 間のペプチド結合のみが切断されているため FIXαが観察できる. このことから,TF/ FVIIa による活性化は, 産生された FIXα が TF/FVIIa 複合体から一度解離し, 解離した

450 日本血栓止血学会誌第 24 巻第 4 号 図 5 FXIa による FIX 活性化機構のモデル ( 文献 33 より引用 ) E:Exosite,A:Active site FIXα は再び TF/FVIIa と結合し,Arg180- Val181 のペプチド結合を切断することで FIXaβ へと 2 段階で変換していることが分かる 2. すなわち,TF/FVIIa は FIXαよりも FIX に対する親和性が高い. したがって,TF/FVIIa による FIX の活性化は Arg180-Val181 のペプチド結合切断が律速である 28)29). 一方, ホモダイマーである FXIa による FIX の活性化では, ホモダイマー中の FXIa のアクティブサイトが 2 箇所あり活性化の中間体が観察されないことから,FXIa が FIX の 2 箇所のペプチド結合を切断すると考えられていた 30). しかし,FXI の結晶構造が明らかにされるとアクティブサイトが互いに近接せず反対方向を向いていることから, この考えは否定された. その後,Gailani らは,2 箇所ある FXIa のアクティブサイトのうち 1 箇所のみを不活化した FXIa を用いて FIX を活性化すると,FIXαが蓄積されることを見出した. この結果により,TF/FVIIa による FIX 活性化と同様に FXIa による FIX の活性化においても, 産生された FIXαは FXIa から一度解離し, 解離した FIXαは再び別の FXIa と結合し,Arg180-Val181 のペプチド結合を切断することで FIXaβへと変換していることが判明した. すなわち,FXIa は FIX よりも FIXα に対する親和性が高いために, 中間体が観察され ないという 31)32).FXIa による FIX の活性化は, TF/FVIIa の活性化と異なり Arg145-Ala146 間のペプチド結合の切断が律速である. 最近, 同グループは, 一部の FXIa では 1 箇所のアクティブサイトだけで一度も乖離することなく FIX を FIXa に活性化する可能性についても報告している ( 図 5) 33). iv)xase による FX 活性化 FIXa は単独でも基質である FX を活性化するが, その活性化速度は遅い.FIXa はコファクターである FVIIIa,Ca 2+, リン脂質共存下で複合体 (Xase) を形成すると, 酵素活性は劇的に増強し, FX の活性化速度は 10 9 倍まで高められる. また, Xase による FX の活性化は,TF/FVIIa による FX の活性化の~50 倍効率が良い 34). FIXa は Xase を形成するとき FVIIIa とリン脂質上で結合する. この結合には FVIIIa の A2 ドメインと A3 ドメインが関与している. 前者の FIXa との親和性は低く Kd~300nM 程度であるが, 後者の FIXa との親和性は高く Kd~15nM である. これまでの報告から,FIXa と FVIIIa との結合部位は 3 箇所同定されている.1FIXa の 330-339 ヘリックスと FVIIIa の 558-565 の領域,2FIXa の 301-303 の領域と FVIIIa の 712 周辺領域,3FIXa の Phe25,Tyr69,Asn92 と

中村 ほか 血液凝固 IX 因子 その分子構造と機能発現メカニズムについて 451 アクティブサイト 75 80Å 図 6 脂質二重膜と相互作用する Xase のステレオビュー 文献 35 より一部改変 FVIIIa の重鎖 ダークグレー FVIIIa の軽鎖 ライトグレー リン脂質と相互作用する FVIIIa の C1 C2 ドメインと FIXa の Gla ドメイン 青 FIXa の重鎖 橙 FIXa の軽鎖 黄 EG 7Å 6Å 図 7 エチレングリコール EG の結合部位 文献 37 より引用 一部改変 左図 エチレングリコールの結合部位と各アミノ酸側鎖との距離 P1-R P1 の側鎖 右図 エチレングリコールと各基質結合部位との距離 FPR-CMK Phe-Pro-Arg-Chloromethyl ketone FVIIIa の 1811-1818 の領域 である この複合 体をリン脂質上でモデリングすると FIXa の活 性触媒基は液相に接する上部に位置し 膜表面か 35 ら約 75 80Åの距離に位置している 図 6 由としては EG が FIXa のアクティブサイトに構 造変化を起こさせ P3 位の疎水性の残基とトリ また 活性化された FIXa はアルコールにより 合成基質に対する触媒活性が上昇することが知ら 部位は FVIIa 同様に 60 ループと 99 ループの間 であると考えられたが Zogg らによって EG は れている 1 価のアルコールよりも 2 価のアルコー ルのほうが顕著に合成基質の水解活性を増強さ せる 特にエチレングリコール EG 存在下で は その酵素活性は 20 倍も増強される その理 FIXa の 170 ヘリックスの er171 の Oγおよび Tyr225 のカルボニル基の酸素とアミド基の窒素 Glu217 のアミド基の窒素と水素結合しているこ とが示された EG は 3 位である Glu217 と直 ペプチドの合成基質がアクセスしやすくなるため 36 だと考えられている 図 7 この EG の結合

452 日本血栓止血学会誌第 24 巻第 4 号 接相互作用して, それぞれ 6.0A と 7.0A の距離にある 1 位と 4 位に影響を与える. この結果, FIX の触媒活性が上昇すると考えられている 37). 2. おわりに 以上のように,FIX はその構造と機能について数多くの研究がなされている. 血漿由来の血液凝固 IX 因子製剤と遺伝子組換え由来の血液凝固 IX 因子製剤との血中回収率の差は, 宿主の違いによる翻訳後修飾の差がその原因とされているが, 決定的な結論に至っていない. 今後, 最新の技術を用いた解析等により,FIX のより詳細な分子構造と機能発現のメカニズムが解明されることが期待される. 謝辞 : 稿を終えるにあたり, 校閲していただいた岩永貞昭先生と執筆の機会を与えていただいた武谷浩之先生 ( 崇城大学生物生命学部応用生命科学科教授 ) に深謝します. Disclosure of Conflict of Interests The authors indicated no potential conflict of interest. 文 1)Yoshitake, chach BG, Foster DC, Davie EW, Kurachi K: Nucleotide sequence of the gene for human factor IX(antihemophilic factor B). Biochemistry 24:3736-3750, 1985. 2)Zhang K, Kurachi, Kurachi K:Genetic mechanisms of age regulation of protein C and blood coagulation. 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中村, ほか : 血液凝固 IX 因子 その分子構造と機能発現メカニズムについて 453 26)Mathur A, Zhong D, abharwal AK, mith KJ, Bajaj P: Interaction of factor IXa with factor VIIIa. J Biol Chem 272: 23418-23426, 1997. 27)Lenting PJ, ter Maat H, Clijsters PP, Donath MJ, van Mourik JA, Mertens K:Cleavage at arginine 145 in human blood coagulation factor IX converts the zymogen into a factor VIII binding enzyme. J Biol Chem 270:14884-14890, 1995. 28)Davie EW, Fujikawa K, Kisiel W:The coagulation cascade:initiation, maintenance, and regulation. Biochemistry 30:10363-10370, 1991. 29)Hoffman M, Monroe DM, Oliver JA, Roberts HR:Factors IXa and Xa play distinct roles in tissue factor-dependent initiation of coagulation. Blood 86:1794-1801, 1995. 30)Wolberg A, Morris DP, tafford DW:Factor IX activation by factor XIa proceeds without release of a free intermediate. Biochemistry 36:4074 4079, 1997. 31)mith B, Gailani D:Update on the physiology and pathology of factor IX activation by factor XIa, Expert Rev Hematol 1:87-98, 2008. 32)mith B, Verhamme IM, un MF, Bock PE, Gailani D:Char- acterization of novel forms of coagulation factor XIa:independence of factor XIa subunits in factor IX activation. J Biol Chem 283:6696 6705, 2008. 33)Geng Y, Verhamme IM, Messer A, un MF, mith B, Bajaj P, Gailani D:A sequential mechanism for exosite-mediated factor IX activation by factor XIa. J Biol Chem 287:38200-38209, 2012. 34)Mann KG, Krishnaswamy, Lawson JH:urface-dependent hemostasis. emin Hematol 29:213-226, 1992. 35)Ngo JC, Huang M, Roth DA, Furie BC, Furie B:Crystal structure of human factor VIII:Implications for the formation of the factor IXa-factor VIIIa complex. tructure 16:597-606, 2008. 36)türzebecher J, Kopetzki E, Bode W, Hopfner KP:Dramatic enhancement of the catalytic activity of coagulation factor IXa by alcohols. FEB Letters 412:295-300, 1997. 37)Zögg T, Brandstetter H:tructural basis of the cofactor-and substrate-assisted activation of human coagulation factor IXa. tructure 17:1669-1678, 2009. 38)White GC 2nd, Beebe A, Nielsen B:Recombinant factor IX. Thromb Haemost 78:261-265, 1997. 1 Ω( オメガ ) ループは Gla ドメインへのカルシウムの結合により現れるループ構造であり, リン脂質膜との相互作用に関与する. 2 一般に Arg, Lys 残基に特異性を示すセリンプロテアーゼは, 次の残基が疎水性残基であるより, 親水性残基の方をより早く水解する.