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正誤表 ( 抜粋版 ) 気象庁訳 (2015 年 7 月 1 日版 ) 注意 この資料は IPCC 第 5 次評価報告書第 1 作業部会報告書の正誤表を 日本語訳版に関連する部分について抜粋して翻訳 作成したものである この翻訳は IPCC ホームページに掲載された正誤表 (2015 年 4 月 1

のような事象でさえ わずか数分前の警告によって生命を救えることもある リスクの発生を定期的に再検討することが重要である たとえば 気候変動やその他の変化の結果として極端な気象現象 ( 暴風雨 熱波 野火など ) の発生頻度や激しさが高まる可能性があり 新たな地球物理学的データやその他のデータによって

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気候変動 2014: 影響 適応及び脆弱性 気候変動に関する政府間パネル第 5 次評価報告書第 2 作業部会報告書 政策決定者向け要約技術要約 Christopher B. Field Working Group II Co-Chair Department of Global Ecology Ca

報道発表資料 平成 26 年 11 月 2 日 文 部 科 学 省 経 済 産 業 省 気 象 庁 環 境 省 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 第 5 次評価報告書 統合報告書の公表について 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 第 40 回総会 ( 平成 26 年 10 月 27

間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

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受付番号 Panasonic NPO/NGO サポートファンド for SDGs [ 国内助成 ] 2019 年募集 新規助成応募企画書 ( 様式 1) パナソニック株式会社御中 応募要項に記載の 個人情報の取り扱い に同意の上 応募します 応募日 :2019 年月日 (1) 応募団体

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特集 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) 第 3 作業部会 (WG3) 報告書について RITE Today 2015 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) 第 3 作業部会 (WG3) 報告書について システム研究グループリーダー秋元圭吾 1. はじめに 気候変動に関する政府間パネル

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1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

幸福度指標の持続可能性面での指標の在り方に関する調査研究報告書

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これまでの G7 コミットメント及び持続可能な開発のための世界的な枠組み を定める 2030 アジェンダに沿って行動する必要性を認識しつつ, 我々 G7 首 脳は, 以下にコミットする 強靱な沿岸及び沿岸部コミュニティ 1. より良い適応計画, 緊急事態への備え及び回復の支援 我々は, 政策ギャップ

タイトル

IPCC 第 5 次評価報告書第 1 作業部会報告書概要 ( 気象庁訳 ) 正誤表 (2015 年 12 月 1 日修正 ) 第 10 章気候変動の検出と原因特定 : 地球全体から地域まで 41 ページ気候システムの特性第 1 パラグラフ 15 行目 ( 誤 ) 平衡気候感度が 1 以下である可能性

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温暖化影響への適応の重要性 ~ 適応と緩和の双方が不可欠 ~ かんわ緩和策 温室効果ガスの排出を抑制する 適応策 温暖化による悪影響に備える 出典 : 環境省 適応への挑戦

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などの極端現象も含め 気候変動による影響を評価している さらに AR4 は 長期的な展望として 適応策と緩和策のどちらも その一方だけではすべての気候変動の影響を防ぐことができないが 両者は互いに補完し合い 気候変動のリスクを大きく低減することが可能であることは 確信度が高い とし 最も厳しい緩和努

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

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(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

資料2   低炭素社会づくりに向けて

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

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気候変動と森林 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) から 2014 年 8 月 29 日 東京 第 3 回森林分野における国際的な動向等に関する報告会 林野庁森林利用課 佐藤雄一

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問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

資料の目的 平成 30 年 3 月 7 日の合同部会において 費用対効果評価に関する検討を進めるにあたり 科学的な事項については 医療経済学等に関する有識者による検討を行い 中医協の議論に活用することとされた 本資料は 当該分野の有識者による検討を行い 科学的な観点から参考となる考え方やデータを提示

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ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

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73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

IT 人材需給に関する調査 ( 概要 ) 平成 31 年 4 月経済産業省情報技術利用促進課 1. 調査の目的 実施体制 未来投資戦略 2017 ( 平成 29 年 6 月 9 日閣議決定 ) に基づき 第四次産業革命下で求められる人材の必要性やミスマッチの状況を明確化するため 経済産業省 厚生労働

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どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

図 1 平成 19 年首都圏地価分布 出所 ) 東急不動産株式会社作成 1963 年以来 毎年定期的に 1 月現在の地価調査を同社が行い その結果をまとめているもの 2

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

(3) 技術開発項目 長周期波の解明と対策 沿岸 漁場の高度利用 ライフサイクルコストに基づく施設整備と診断技術 自然災害( 流氷 地震 津波など ) に強いみなとづくり 等 30 項目 技術開発項目として 30 項目の中から 今後 特に重点的 積極的に取り組んでいく必要のある技術開発項目として 1

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OECD よりよい暮らしイニシアチブ (OECD Better Life Initiative) は 人々の生活の質を形成する重要な生活の諸側面に焦点を当てたもので 2011 年に始まりました このイニシアチブは定期的に更新される幸福指標とその分析からなっており How's Life? と題する報告

IPCC 第 5 次報告書における排出ガスの抑制シナリオ 最新の IPCC 第 5 次報告書 (AR5) では 温室効果ガス濃度の推移の違いによる 4 つの RCP シナリオが用意されている パリ協定における将来の気温上昇を 2 以下に抑えるという目標に相当する排出量の最も低い RCP2.6 や最大

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Rodrigo Domingues UNDP Borja Santos Porras/UNDP Ecuador UNDP Kazakhstan 2

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図 表 2-1 所 得 階 層 別 国 ごとの 将 来 人 口 の 推 移 ( 億 人 ) 開 発 途 上 国 中 間 国 先 進 国

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Transcription:

図 SPM.6.: 漁業についての気候変動リスク (A)~1000 種の魚類及び無脊椎動物の最大漁獲可能量世界再分布予測 予測は 乱獲または海洋酸性化の潜在的影響分析は行わず SRES A1B を使用し 2001~2010 年及び 2051~2060 年の 10 年平均を比較した (B)RCP8.5(1986 ~2005 年から 2081~2100 年の ph 変化 ) 下での海洋酸性化の予測分布を示す世界地図に示された海洋軟体動物と甲殻類漁業 ( 現在の推定年間漁獲率 0.005 トン /km 2 ) 及び既知の暖水サンゴ及び冷水サンゴの位置 [WGI AR5 図 SPM.8] 下のグラフは 軟体動物 甲殻類 サ 21

ンゴ 社会経済的に関連のある ( 例えば 沿岸保全や漁業に関連する ) 脆弱な動物門にわたって海洋酸性化への感度を比較したものである 研究を通じて分析された種の数が CO 2 上昇の各カテゴリーについて示されている 2100 年について 各 CO 2 分圧 (pco 2) のカテゴリー内に収まる RCP シナリオは次の通り :500~650 μatm ( ほぼ大気中の ppm 相当 ) については RCP4.5 651~850 μatm については RCP6.0 851~1370 μatm については RCP8.5 2150 年までに RCP8.5 は 1371~2900μatm のカテゴリー内に収まる コントロールカテゴリーは 380μatm に対応 [6.1, 6.3, 30.5, 図 6-10 及び 6-14; WGI AR5 Box SPM.1] 食料安全保障及び食料生産システム 熱帯及び温帯地域の主要作物 ( 麦 米 及びトウモロコシ ) において 適応がない場合 気候変動はその地域の気温上昇が 20 世紀後半の水準より 2 またはそれ以上になると 個々の場所では便益を受ける可能性はあるものの 生産に負の影響を及ぼすと予測される ( 確信度が中程度 ) 予測される影響は作物や地域また適応シナリオによって異なり 2030~ 2049 年の期間についての 20 世紀後半との比較で 予測の約 10% が 10% 以上の収量増を示し 予測の約 10% が 25% 以上の収量減を示している 2050 年以降 収量へのより深刻な影響のリスクは増加し 温暖化の水準次第となる 図 SPM.7 参照 気候変動は 多くの地域で徐々に年間の作物収量の変動性を増大させると予測される これらの予測される影響は 急速に作物の需要が伸びる中で起こるだろう 54 食料安全保障のあらゆる側面は 食料へのアクセス 利用 価格の安定などにおいて 潜在的に気候変動の影響を受けている ( 確信度が高い ) 海洋漁獲可能量のより高緯度への再分布は熱帯の国々において供給量 収入 及び雇用の減少リスクをもたらし 食料安全保障に潜在的な影響を伴う ( 確信度が中程度 ) 20 世紀後半の水準より ~4 かそれ以上の世界平均気温上昇は 増大する食料需要と組み合わさり 世界的及び地域的に食料安全保障に大きなリスクをもたらしうる ( 確信度が高い ) 食料安全保障のリスクは 一般的には低緯度地域でより大きい 55 図 SPM.7: 21 世紀の気候変動による作物収量の変化予測の要約 図には 異なる排出シナリオ 熱帯及び温帯地域 並びに適応及び非適応ケースの組み合わせについての予測が含まれている 世界平均気温が 4 またはそれ以上上昇するシナリオについて作物システムへ 54 7.4-5, 22.3, 24.4, 25.7, 26.5, 表 7-2, 図 7-4, 7-5, 7-6, 7-7, 7-8 55 6.3-5, 7.4-5, 9.3, 22.3, 24.4, 25.7, 26.5, 表 7-3, 図 7-1, 7-4, 7-7, Box 7-1 22

の影響が検討された研究は相対的に少ない 短期及び長期の 5 つの時間枠について データ (n=1090) が 各将来予測期間の中間点を含む水平軸に 20 年間ごとにプロットされている 作物収量の変化は 20 世紀後半の水準を基準としたものである 各時間枠のデータは合計して 100% となる [ 図 7-5] 都市域 気候変動の多くの世界的リスクは都市域に集中している ( 確信度が中程度 ) レジリエンスを構築し持続可能な開発を可能にする手順により気候変動への良好な適応を世界的に加速できる 暑熱ストレス 極端な降水 内水洪水 沿岸洪水 地滑り 大気汚染 干ばつ及び水不足が都市域において人々 資産 経済 及び生態系にリスクをもたらす ( 確信度が非常に高い ) 不可欠なインフラやサービスが欠如している人々 または質の悪い住居や曝露された地域に暮らす人々についてはリスクが増幅する 基礎的なサービスの不足を減らし 住居を改良し レジリエントなインフラシステムを構築することで都市域における脆弱性や曝露を著しく低減できる 都市における適応は 効果的な多層の都市リスクガバナンス 政策やインセンティブの合致 地方公共団体や地域社会の適応能力の強化 民間部門との相乗効果 適切な資金調達と制度開発から便益を受ける ( 確信度が中程度 ) また 低所得グループや脆弱な地域社会の能力 発言力 及び影響力の向上や地方公共団体との協働も適応に役立つ 56 農山漁村域 将来の農山漁村域への主要な影響は 近い将来 及びそれ以降において 世界全体で食料及び非食料作物の生産地域がシフトすることも含め 水の利用可能性及び供給 食料の安全保障 及び農業所得への影響を通して現れると予想されている ( 確信度が高い ) これらの影響は 農山漁村域における貧困層 例えば世帯主が女性である世帯や 土地 近代的な農業資材 インフラ 及び教育へのアクセスが限られている世帯の厚生に不均衡な影響を及ぼすと予想される 農業 水 森林 及び生物多様性についてのさらなる適応は 農山漁村の意思決定の文脈を考慮した政策を通じて起こりうる 取引の改革や投資は 小規模農業の市場へのアクセスを改善しうる ( 確信度が中程度 ) 57 主要な経済部門及びサービス ほとんどの経済部門について 人口 年齢構成 収入 技術 相対的価格 生活様式 規制 及びガバナンスといった駆動要因の影響が 気候変動の影響に対して相対的に大きくなると予測される ( 証拠が中程度 見解一致度が高い ) 気候変動は 住宅及び商業部門の暖房のエネルギー需要を低減させ 冷房のエネルギー需要を増大させると予測される ( 証拠が確実 見解一致度が高い ) 気候変動は 資源 ( 例 : 水流 風 日射 ) 技術的過程 ( 例 : 冷却 ) または立地 ( 例 : 沿岸地域 氾濫原 ) 次第で エネルギー源や技術に対し異なった影響を与えると見込まれる より深刻かつ / または頻繁な極端気象現象かつ / またはハザードの類型は 様々な地域で損失や損失の変動性を増大させ 特に開発途上国において 保険制度に対しより多くのリスクベースの資本を調達しつつ補償可能な範囲を提示するよう課題をつきつけると予想される 大規模な官民協働によるリスク低減のイニシアチブや 56 3.5, 8.2-4, 22.3, 24.4-5, 26.8, 表 8-2, Box 25-9, CC-HS 57 9.3, 25.9, 26.8, 28.2, 28.4, Box 25-5 23

経済の多様化は適応行動の一例である 58 気候変動による世界経済への影響については推計するのが困難である 過去 20 年にわたって実施された経済影響予測は 経済部門の小分類の対象範囲がそれぞれ異なり また多くの仮定に依存する上 それらの多くは議論の余地があり かつ多くの推計は 壊滅的な変化 ティッピングポイント 及び多くのその他の要因を考慮していない 59 これらの認識されている限界を踏まえた 2 までの追加的な気温上昇に対する世界の年間経済損失についての不完全な推計値は 収入の 0.2 から 2.0% の間にある ( 平均 ±1 標準偏差 )( 証拠が中程度 見解一致度は中程度 ) 損失は この範囲より小さくなるよりはむしろ大きくなる可能性がどちらかといえば高い ( 証拠が限定的 見解一致度は高い ) さらに 国家間及び各国内で大きな差違がある 損失は気温上昇が大きくなるほど加速的に増大するが ( 証拠が限定的 見解一致度は高い ) 3 程度またはそれ以上の追加的気温上昇についての定量的な推計で完了したものはほとんどない 二酸化炭素の排出によって徐々に増大する経済的影響の推計値は 炭素 1 トン当たり数ドルから数百ドルの間にある 60 ( 証拠が確実 見解一致度が中程度 ) 推計値は 仮定される被害関数及び割引率によって大きく変動する 61 人間の健康 今世紀半ばまでに 予測される気候変動は 主に既存の健康上の問題を悪化させることで人間の健康に影響を与えるだろう ( 確信度が非常に高い ) 21 世紀を通じて 気候変動は気候変動がないベースラインとの比較において 多くの地域や特に低所得の開発途上国において 健康被害の増大をもたらすと予想される ( 確信度が高い ) 例として より強力な熱波や火災による負傷 疾病 及び死亡の可能性がより増大すること ( 確信度が非常に高い ); 貧困地域において減少する食料生産に起因する栄養不足の可能性の増大 ( 確信度が高い ); 脆弱な人々の労働能力の喪失や労働生産性低下から来るリスク ; 及び食料媒介性や水媒介性の疾病リスクの増大 ( 確信度が非常に高い ) や生物媒介の疾病リスクの増大 ( 確信度が中程度 ) が挙げられる 正の影響としては 一部の地域で 極端な寒さの減少 ( 確信度が低い ) 食料生産の地理的移動 ( 確信度が中程度 ) 及び一部の疾病を媒介する生物の能力の減少により 寒さに関連する死亡率や罹患率がわずかに減少することなどが予想される しかし 21 世紀にわたって世界的には 負の影響の程度や深刻度が正の影響をますます上回ると予測される ( 確信度が高い ) 近い将来の健康のための最も効果的な脆弱性低減策は 清潔な水や衛生施設の提供などの基本的な公衆衛生対策を実施及び改善し 予防接種や小児保健サービスなど重要な医療を確保し 災害に備え対応する能力を増強し 貧困を削減するプログラムである ( 確信度が非常に高い ) 高排出シナリオ RCP8.5 では 2100 年までに 一部の地域における年間のある時期の高温と多湿が複合した状況が 食料生産あるいは野外活動などの通常の人間活動を危険にさらすことになると予測されている ( 確信度が高い ) 62 58 3.5, 10.2, 10.7, 10.10, 17.4-5, 25.7, 26.7-9, Box 25-7 59 人命 文化的遺産 及び生態系サービスの損失といった多くの影響は査定して貨幣価値化することが困難であるため 災害損失の推計値は下限推計値とされ 損失推計値への反映は十分でない 非公式あるいは文書化されていない経済活動や間接的経済効果への影響は 一部の地域や分野で非常に重要である可能性があるが 一般的には報告される損失推計には計上されていない [SREX 4.5.1, 4.5.3, 4.5.4] 60 炭素 1 トン = 二酸化炭素 3.667 トン 61 10.9 62 8.2, 11.3-8, 19.3, 22.3, 25.8, 26.6, 図 25-5, Box CC-HS 24

人間の安全保障 21 世紀中の気候変動は 人々の強制移転を増加させると予測されている ( 証拠が中程度 見解一致度が高い ) 農山漁村域及び都市域の両方において 特に低所得の開発途上国における 計画的移住のための資源が欠如している集団が極端な気象現象へのより強い曝露を経験した場合 強制移転のリスクが高まる 移動機会の拡大は そのような人々の脆弱性を低減させうる 移住パターンの変化は 極端な気象現象とより長期的な気候変動性と変化のどちらにも対応することができ 移住も効果的な適応戦略になりうる 移動における変化の定量的予測については その複雑さや複数の要因が存在する特性上 確信度が低い 63 気候変動は 貧困や経済的打撃といった十分に裏付けられている紛争の駆動要因を増幅させることによって 内戦やグループ間暴力行為という形の暴力的紛争のリスクを間接的に増大させうる ( 確信度が中程度 ) 気候の変動性とこれらの形の紛争を関連付ける多数の系統の証拠が存在する 64 多くの国々の重要なインフラや領土に及ぼす気候変動の影響は 国家安全保障政策に影響を及ぼすと予想される ( 証拠が中程度 見解一致度が中程度 ) 例えば 海面水位上昇による土地浸水は 小島嶼国や広範な海岸線を持つ国の領土一体性にとってのリスクをもたらす 海氷 共有水資源 遠洋漁業資源における変化といった越境する気候変動の影響の中には 国家間の対立を増大させる可能性があるものがあるが 強固な国家及び政府間制度が 協力を強化し これらの対立の多くを管理することができる 65 生計及び貧困 21 世紀を通じ 気候変動の影響は経済成長を減速させ 貧困削減をより困難にさせ 食料の安全保障をさらに蝕み 既存の貧困の罠を長引かせ 新たな貧困の罠をつくると予測され 後者は特に都市域や新たな飢餓のホットスポットにおいて影響があると予測される ( 確信度が中程度 ) 気候変動の影響は ほとんどの開発途上国における貧困を悪化させ 先進国 開発途上国双方の不平等が拡大している国々に新たな局所的貧困を作り出すと予想されている 都市域及び農山漁村域では 深刻な食料不足や高い不平等性のある地域 ( 特にアフリカ ) も含め 賃金労働に依存する貧困世帯で 食料の純購入者である世帯では 特に食料価格の高騰に影響される一方 自営農業に従事する世帯は便益を受けうると予想される 保険制度 社会的保護対策 及び災害リスク管理は もしも政策が貧困や多次元的不平等対策を講じるならば 貧困層や社会の主流から取り残された人々の間の長期的な生計のレジリエンスを強化する可能性がある 66 B-3. 地域ごとの主要なリスク及び適応の可能性 リスクは 時間を通じ あらゆる地域及び集団にわたって 適応及び緩和の範囲など無数の要因に依存して変化するだろう 確信度が中程度から高いと特定された主要な地域リス 63 9.3, 12.4, 19.4, 22.3, 25.9 64 12.5, 13.2, 19.4 65 12.5-6, 23.9, 25.9 66 8.1, 8.3-4, 9.3, 10.9, 13.2-4, 22.3, 26.8 25

クの抜粋を評価に関する Box SPM.2 に示した 地域リスク及び潜在的便益の詳しい概要は 技術要約のセクション B-3 及び WGII AR5 パート B: 地域的側面を参照 評価に関する Box SPM.2. 地域ごとの主要なリスク この評価に関する Box は 各地域のいくつかの代表的主要なリスクに注目する 主要なリスクは 本編の各章のセクションに詳述されている科学的 技術的 社会経済的関連文献の評価に基づいて特定された 主要なリスクの特定は 次の具体的基準を用いた専門家の判断に基づいて行われた : 影響の程度が大きいこと 確率が高いこと または不可逆性 ; 影響のタイミング ; リスクに寄与する持続的な脆弱性または曝露 ; 適応または緩和を通じたリスク低減の可能性が限られていること 各主要なリスクについて リスクの水準は 3 つの時間枠について評価された 現在については どこに現行の適応の不足があるか特定しつつ 現行の適応及び仮説的に高度に適応した状態についてリスク水準が推定された 2 つの将来の時間枠については 適応の可能性と限界を表現しつつ 現行の適応が継続する場合及び高度に適応した状態について リスク水準が推定された リスク水準は 利用可能な文献に基づき 起こりうる結果についての可能な限り広い範囲での確率とその結果を統合している これらの起こりうる結果は 気候に関連するハザード 脆弱性 及び曝露の相互作用からもたらされる 各リスク水準は 気候及び非気候要因からの総合リスクを反映する 社会経済開発経路 脆弱性及びハザードへの曝露 適応能力 及びリスク認識の違いによって 主要なリスクやリスク水準はあらゆる地域や時間にわたって異なってくる 評価が多様な状況下の異なる物理的システム 生物学的システム及び人間システムにおける潜在的な影響と適応を考慮するため リスク水準は 特に地域にわたって 必ずしも比較することはできない 本リスク評価は 評価されたリスク水準の解釈上の価値や目標の違いの重要性を認める 26