彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています しかし 観察 実験などにおいて 予想したり 結果を考察し 自分の考えをまとめたりすること には苦手意識をもっています また 全国学力 学習状況調査の結果からも 我が国の児童における課題として 科学的根拠をもとに説明すること 実生活の場面に習得した知識や技能を活用することがあげられています そのため 小学校の理科の授業において 予想や仮説をたて 見通しをもった観察 実験 を展開することが大切です ここでは 問題解決の過程を通して 科学的な見方や考え方を養う理科の授業について紹介します 平成 25 年 3 月 1
1 問題解決の能力を育てること 児童が自然の事物 現象に親しむ中で興味 関心をもち そこから問題を見いだし 予想や仮説を基に観察 実験などを行い 結果を整理し 相互に話し合う中から結論として科学的な見方や考え方をもつようになる過程の中で 問題解決の能力が育成されます 自然に親しむ見通しをもつ 問題解決の過程 自然事象への働きかけ あれ? どうしてかな? 不思議だな? 興味 関心をもって自然の事物 現象とかかわることにより 問題を見いだし それ以降の学習活動へつなげる 問題の把握 設定 ~について調べてみよう ではなく 何が なぜ どのように ~するのか 対象となる自然の事物 現象から問題意識をいだくように 意図的な活動を工夫する 予想 仮説の設定 ~ならば ~であろう 問題に対する児童の考えを明らかする 検証計画の立案 ~について どのように調べるか 予想や仮説を自然の事物 現象で検証するための方法 計画をたてる 素朴な見方や考え方をもつ 観察 実験など ~について 観察 実験などで調べてみる 問題解決の中心となる活動である 課題を解決するための児童による意図的 計画的な活動となる 結果の整理 結果は ~である 一定の視点を基にした観察結果を出す 実験の装置や状況に影響されない客観的な実験結果を出す 考察 結果から言えることは ~である 観察 実験の結果を相互に話し合い検討する 予想や仮説と結果を比較する 結論 ~は~である ( 一般化 ) 児童による問題解決を通した科学的な見方や考え方を養う 科学的な見方や考え方にかわる 2
2 科学的な見方や考え方を養うこと 理科の学習は 児童の既にもっている自然についての素朴な見方や考え方を 観察 実験などの問題解決の活動を通して 少しずつ科学的な見方や考え方に変容させていく営みです 児童の科学的な見方や考え方を育てる観察 実験などの例 H24 小学校初任者研修資料 理科教育の現状と課題 指導上の工夫について より (1) 観察の指導のポイント ( 行田市立東小学校原口昌義先生作 ) 観察の指導をするときは 観察する部分をできるだけポイントをしぼって 具体的に示すことが大切です ただ漠然とながめさせるのではなく 視点をもって観察させることにより 子どもたちは 観察物の特徴をより具体的にとらえることができるようになります また 観察 記録のしかた する部分や時期を見逃さずに観察させることも大切です 場合によっては 観察したいものを飼育や栽培して 全員が観察できるようにしましょう 観察カード ( 教師の見本 ) 観察カード ( 児童 ) 教師が見本をみせることで 児童の書く技術が向上します 児童に身に付けさせ たい技能や視点を意識しながら作成します ( 例 ) 視点に基づき気付いたことすべてを書く 大きさ 数 触った感じなど数を 意識して客観的に書く 色を塗る など 3
(2) 実験の指導のポイント 実験の指導をするときは まず 予想 仮説などの見通しや実験結果を考察することが大切です 児童の考えを板書に示すことで 考え方の変容を視覚化することができます 予想する場面 考察する場面 まとめの場面 などにおける児童の考えを 自信度によって ぜったい たぶん もしかしたら の 3 段階に分けて 自分のネームプレートなどを貼っていきます 実験後 考えが変わった児童は プレートを動かすことで変容を確認できます 実験カード ( 児童 ) 実験を行うにあたっては 正確な記録をノートやワークシートなどに記入することが大切です 実験の記録の場合は 自分たちで計画した実験方法を記録する 場合と 共通の実験を行い その結果を記録するため のものと大別できます いずれの場合も できる限り子どもの考えを生かすことを主目的にし 見やすくポイントしぼって記録できるようにすることが大切です また 実験の手順や実験器具の取り扱いを指導する場合は 器具などのイラストとその操作時の注意点などをまじえながら 丁寧に分かりやすく手順を示すことが必要です ICT を活用した説明 4 実験後 結果について考察した自分の考えを発表し合い 科学的な見方や考え方になることが必要です 発表するときには 聞いているみんなに分かるような理由や考え を説明する言語力が求められています 電子黒板などのICTを活用し 観察 実験の結果を表やグラフにまとめたり 根拠となる資料 映像を提示して 情報交換を図ると分かりやすいです 児童は 理由を付けての自分なりの予想や実験結果の考察を発表することで 少しずつ科学的な見方や考え方に基づいて説明できるようになっていきます
(3) ものづくりの指導のポイント ものづくりは 科学的な原理や法則について実感を伴った理解を促すものとして効果的であり 学習内容と日常生活や社会との関連を図る上でも有効です また ものをつくる という活動の特質から 一つのものをつくり上げる喜び 興味 関心といった意欲や自主的な態度 最後まで物事をやり遂げる力なども育成することができます ものづくりは 学習内容と関連付けた上で指導計画の中に位置付けて行うことが大切です (4) ノート作りの指導のポイント 作成したものでゲームや大会などの活動をしたあと 勝利者インタビューを行い 説明する力を育成します ここでは, 空気でっぽうでどこまで飛ばせるか大会 の対戦で勝った児童がインタビューを受けています インタビューを設定することで あまり恥ずかしがらずに発表でき 空気の性質についての科学的な見方や考え方を育成します 理科のノートを書くことを通して 児童の思考力を高めます はじめは ノートに 問題 予想 観察 実験 結果 考察 など 項目立てて整理して書くと 問題解決の過程が見えてきます また 単元の最後に 内容をまとめたノートを作ると 自分の復習にもなり 学習事項が定着してきます まとめノートのポイント 1 見開き 2 ページで書く 2 大切な言葉 ( キーワードなど ) を全て入れる 3 図や表なども入れる 4 見やすくていねいに書く など 5 ポイントを強調して美しいノートを目指す など 5
3 観察 実験 Q&A Q&A どうすればいい? Q 科学的な見方や考え方はどうすればつくのですか? A 問題解決の能力や自然を愛する心情 自然の事物 現象についての理解を基にして 科学的な見方や考え方が構築されます 児童の既にもっている自然についての素朴な見方や考え方を 観察 実験などの問題解決の活動を通して 少しずつ科学的な見方や考え方に変容させていくことが大切です Q 見通しをもって観察 実験などを行うとはどういうことですか? A 見通しをもつ とは 児童が自然に親しむことによって見いだした問題に対して 予想や仮説をもち それらを基にして観察 実験などの計画や方法を工夫して考えることです 見通し は 児童自ら発想したものであるため 観察 実験が意欲的なものになることが考えられます Q 観察 実験を準備する時間がないのですが どうすればいいですか? A 同じ学年内で単元を統一すれば 協力して準備や予備実験ができます 一人で悩まず 教師同士で協力して観察 実験などを行えるような体制をつくることから始めましょう Q 実験器具の扱い方がよくわからないのですが どうすればいいですか? A 一緒に働いているベテランの教師や理科主任などにまずは聞いてみましょう 教科書 指導書など様々な資料をもとに自分で調べてみることも大切です また 実験をするときに予想される事故や危険性についても必ず把握しておきましょう Q 後片付けが大変なのですが どうすればいいですか? A 後片付けも含めて授業計画を立ててみてはいかがでしょうか 実験の準備や 後片付けも児童にやらせてみることは必要だと思います 他にもいろいろな課題がでてくるかもしれませんが 一人で悩まず みんなで 情報を共有し 協力しあう雰囲気が大切です 参考文献 引用文献 文部科学省 小学校学習指導要領解説理科編 ( 平成 20 年 8 月 ) 文部科学省 小学校理科の観察 実験の手引き ( 平成 23 年 3 月 ) 6