THE ANNUAL REPORTS OF HEALTH, PHYSICAL EDUCATION AND SPORT SCIENCE VOL.36, 65-69, 報告書 ( 体育研究所プロジェクト研究 ) 体育 保健体育科におけるアクティブ ラーニングの視点による授業改善 ベースボ

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2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

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ている それらを取り入れたルーブリックを生徒に提示することにより 前回の反省点を改善し より具体的な目標を持って今回のパフォーマンスに取り組むことができると考える 同に そのような流れを繰り返すことにより 次回のパフォーマンス評価へとつながっていくものと考えている () 本単元で重点的に育成をめざす

3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ


愛媛県学力向上5か年計画

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(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

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調査の概要調査方法 : インターネットによる調査調査対象 : 全国のイーオンキッズに通う小学生のお子様をお持ちの保護者 500 名全国の英会話教室に通っていない小学生のお子様をお持ちの保護者 500 名計 1,000 名調査実施期間 : イーオン保護者 :2017 年 4 月 1 日 ( 土 )~

平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

総合的な学習の時間とカリキュラム・マネジメント

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

「標準的な研修プログラム《

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平成29年度 中学校英語科教育 理論研究

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新潟市立亀田西中学校

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41 仲間との学び合い を通した クラス全員が学習に参加できる 授業づくり自分の考えを伝え 友達の考えを聞くことができる子どもの育成 42 ~ペア グループ学習を通して~ 体育における 主体的 対話的で深い学び を実現する授業づくり 43 ~ 子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定の工夫 ~ 4

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

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授業の構成要素 学び合う授業で育つ 3 つの力 資料 2 基礎 基本の力知識 理解 技能 問題解決力思考力 判断力 表現力 想像力 学ぼうとする力学習意欲 自己有用感 身に付けた知識 技能を活用したり その成果を踏まえた探究活動を行う中で学び合う授業を展開する 教師の役割 < 問題提示の工夫 > 多

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3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

5 主体的 対話的で深い学びの視点 (1) 主体的な学びとしての視点主体的な学びとして 本単元ではプレゼンテーションを作成する段階で 聞き手の関心を最大限ひきつけることができるようなテーマの設定を生徒たち自身に行わせたい このことにより 教師から与えられたテーマではなく 自分たち自身もより興味 関心

実践 報告書テンプレート

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

成績評価を「学習のための評価」に

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消費者教育のヒント集&事例集

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

訂されている 幼稚園 小 中学校学習指導要領改訂の基本的な考え方として 次の 3つがあげられる 1. 子供たちに求められる資質 能力を明確にし それらを社会と共有していくという社会に開かれた教育課程を実現していく 2. 現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で 知識の理解の質を高めていく 3

6 指導計画 (7 時間扱い ) (1) 単元の 1: 字手紙 のねらいの確認と受取人決定指導計画 2: 手紙の基本知識の確認と書くことの内容の整理 3: 時候の挨拶作成 ひと文字練習と下書き 4: ひと文字練習と下書き 5: 相互評価 推敲 ( 本時 ) 6: 推敲および清書 7: 清書と宛名書き

2、協同的探究学習について

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3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

Taro-自立活動とは

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課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

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第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

表 回答科目数と回答数 前期 後期 通年 ( 合計 ) 科目数 回答数 科目数 回答数 科目数 回答数 外国語 ( 英語 ) 120 / 133 3,263 / 4, / 152 3,051 / 4, / 285 6,314 / 8,426 外国語 ( 英語以

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

5 児童生徒質問紙調査 (~P23) (1) 運動に対する意識等 [ 小学校男子 ] 1 運動やスポーツを [ 小学校女子 ] することが好き 1 運動やスポーツをすることが好き H30 全国 H30 北海道 6 放課後や学校が休みの日に 運動部や地域のスポーツクラブ以外で運動やスポーツをすることが

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市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

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5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

新学習指導要領の理念と カリキュラム マネジメント 2019( 平成 31) 年 1 月 16 日 文部科学省 3 階講堂 天笠茂 ( 千葉大学特任教授 )

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

H27 国語

佐賀県教育センター 平成 24 年 2 月 1 日 新学習指導要領で評価が変わる! 新学習指導要領における学習評価の進め方 ( 中学校特別活動 ) 平成 24 年度から, 中学校では新学習指導要領が全面実施となります 新学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の考え方については, 平成 23 年 7 月

Q1: 社会に開かれた教育課程 の実現とは, どのようなことですか? A: 教育課程を編成する際には, よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念とともに, 子どもたちにどのような資質 能力を育むのかについて学校と社会が共有することが求められています さらに, 社会と連携 協働することでそ

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しかし 今回取り上げるティーボールは 攻守の切り替えがわかりやすく バッティングに関しては 止まっているボールを打つため 自分のタイミングで打つことができまた チームを組んでのゲームにおいても バッティングティーの高さを変えたり 守備位置やゲームのルールを工夫 ( ルールについては別紙参照 ) した

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の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

して)知識を問う問題)とB(主として活用を問う問題)の平均正答率が,いずれも全国国立平均を

西ブロック学校関係者評価委員会 Ⅰ 活動の記録 1 6 月 17 日 ( 火 ) 第 1 回学校関係者評価委員会 15:30~ 栗沢中学校 2 7 月 16 日 ( 水 ) 学校視察 上幌向中学校 授業参観日 非行防止教室 3 9 月 5 日 ( 金 ) 学校視察 豊中学校 学校祭 1 日目 4 9

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し, 定期的に評価することで 自己の考え を自覚する場面を意図的に設定している 本教材の学習においては, 様々な情報の中から必要な情報を取り出し, 整理 分析し, それに基づいた自分の考えを表現する活動を通して, 自己の考えの深まりや広がり を実感させることによって, 課題改善につなげたいと考えてい

平成 30 年 4 月 1 日 平成 30 年度 第 70 回 日本連合教育会研究大会 桐生大会 大会主題 分科会研究協議題 等 Ⅰ 大会主題及び大会主題設定の趣旨 Ⅱ 分科会研究協議題 研究協議題設定の理由 研究協議の視点 (1) 第 1 分科会国語 (2) 第 2 分科会 社会 (3) 第 3

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Taro-H29結果概要(5月25日最終)

1. 調査結果の概況 (1) の児童 ( 小学校 ) の状況 < 国語 A> 今年度より, ( 公立 ) と市町村立の平均正答率は整数値で表示となりました < 国語 B> 4 国語 A 平均正答率 5 国語 B 平均正答率 ( 公立 ) 74.8 ( 公立 ) 57.5 ( 公立 ) 74 ( 公立

国語の授業で目的に応じて資料を読み, 自分の考えを 話したり, 書いたりしている

(2) 計画学習課題 学習内容 時間 連立方程式とその解 二元一次方程式とその解の意味 2 連立方程式とその解の意味 ( 本時 1/2) 連立方程式の解き方 文字の消去の意味 加減法による連立方程式の解き方 5 代入法による連立方程式の解き方 連立方程式の利用 問題を解決するために 2つの文字を使っ

授業科目名 保健体育科教育法概論 Ⅰ (Introduction to Teaching Method for Health and Physical Education Ⅰ) 科 目 番 号 授 業 形 態 講義 単 位 数 1 単位 標準履修年次 2 年次 実 施 学 期 秋

3 第 3 学年及び第 4 学年の評価規準 集団活動や生活への関心 意欲態度 集団の一員としての思考 判断 実践 学級の生活上の問題に関心 楽しい学級をつくるために を持ち 他の児童と協力して意 話し合い 自己の役割や集団と 欲的に集団活動に取り組もう してよりよい方法について考 としている え 判

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

123

上に食に関する指導の充実が求められている 食環境の乱れが社会的課題とっている今日 中学生が食生活の自立を目指した学習をすることは大切なことであるので 本時は 自分や家族の食生活の中で見付けた問題点の改善に自主的に取り組むことができるように 指導を進めることにした 指導に当たっては これまでの学習を踏

H26研究レポート一覧(6年研)変更2017.3.22

基礎を育てることを主なねらいとしている 現在 地方自治体を取り巻く状況は 少子高齢化 情報化 グローバル化 経済の変動などによ り急速に変化している また 地方分権を推進する法律がつくられ 各地方自治体は 財政の健全 化や組織の改編 市町村合併等の新しい枠組みづくりに取り組んでいる さらに 子育て支

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

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3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

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主語と述語に気を付けながら場面に合ったことばを使おう 学年 小学校 2 年生 教科 ( 授業内容 ) 国語 ( 主語と述語 ) 情報提供者 品川区立台場小学校 学習活動の分類 B. 学習指導要領に例示されてはいないが 学習指導要領に示される各教科 等の内容を指導する中で実施するもの 教材タイプ ビジ

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Transcription:

THE ANNUAL REPORTS OF HEALTH, PHYSICAL EDUCATION AND SPORT SCIENCE VOL.36, 65-69, 2017 65 報告書 ( 体育研究所プロジェクト研究 ) Improving courses in physical education and health education through active learning:focusing on softball 松 井慎一 Shinichi MATSUI Ⅰ. は じ め に 平成 29 年 3 月に告示された新学習指導要領で は 一人一人の児童生徒が 自分の良さや可能性 を認識するとともに あらゆる他者を価値のある 存在として尊重し 多様な人々と協働しながら 様々な社会的変化を乗り越え 豊かな人生を切り 拓き 持続可能な社会の創り手となることができ るようにするため 学習指導要領自体の枠組みを 次のように見直した 1 何ができるようになるか 2 何を学ぶか 3 どのように学ぶか 4 子供一人一人の発達をどのように支援するか 5 何が身に付いたか 6 実施するために何が必要か以上の枠組みの中 3どのように学ぶか について 主体的 対話的で深い学び の実現に向けた授業改善が求められている いわゆる アクティブ ラーニング の視点からの授業改善であるが これは 形式的に対話型を取り入れた授業や 特定の指導の型を目指した技術の改善だけではなく 学習者が能動的に授業に取り組みなが ら 学習者の個性に応じた多様で質の高い学びを引き出すことを意図するものである 今回の研究においては ベースボール型球技 ソフトボール に着目し 従来の学習方法とチ ーム編成を組み合わせた授業研究を行い それぞれの特徴を比較 分析することで 能動的な学びのための学習の在り方を探った Ⅱ. 研究方法国士舘大学体育学部の学生による研究授業及びアンケートの実施 29 人の学生 ( ソフトボール競技経験者 15 人未経験者 14 人 ) が 3 つのパターンの授業を実施するとともに 毎回アンケート調査を行い その結果を比較する 1. 授業形態 (1)パターン1 一斉練習形式 ( 教師が練習内容や留意事項を最初に示す ) 二人一組でキャッチボール ( 相手の胸に投げる 正面で捕る ) 投球練習 ( スリングショット ウインドミル ) 国士舘大学体育学部 (Faculty of Physical Education, Kokushikan University)

66 松井 守備練習 ( 塁間程度の距離で捕ったら捕手へ返球する ) 打撃練習 ( トスバッティング フリーバッティング ) (2) パターン2 グループ別練習形式 ( 練習内容は教師が示す ) グループ編成 A ソフトボール競技未経験者 B ソフトボール競技経験者と未経験者の混合 C ソフトボール競技経験者 二人一組でキャッチボール ( 相手の胸に投げる 正面で捕る ) 投球練習 ( スリングショット ウインドミル ) 守備練習 ( 塁間程度の距離で捕ったら捕手へ返球する ) 打撃練習 ( トスバッティング フリーバッティング ) (3) パターン3 グループ別練習形式 ( グループごとに練習内容を決定する ) グループ編成パターン2 同様グループ練習 キャッチボール 投球練習 守備練習 打撃練習 Ⅲ. 研究結果概要 1. アンケート自己評価の結果概要 アンケートの自己評価は全体的に高く 本学体育学部学生たちの運動好きでどの形態の授業でも積極的に取り組むという姿勢が見て取れる また 教職課程を履修している学生が多く 指導者の考えや活動内容の意図するものを理解している 又はしようとしていることも自己評価の高さに表れていると考える 授業形態別に見ると パターン1では やや不十分 不十分といった項目が一定程度みられるが パターン2ではA Bグループの一部にやや不十分と回答した項目が見られる程度となっている パターン3では 全グループで全項目において 十分満足又は満足という評価となっている 2. アンケート自由記述の概要 (ABCはグループを表す ) パターン1では 教師の指示や助言は的確であっても ペアが未経験者同士の場合 正しく理解したり 教え合ったりすることができず あまり技能面を向上させることができなかった 2. アンケートの内容 アンケート内容項目 自己評価 興味 関心を持って取り組んだ見通しを持って最後まで取り組んだこれまでの知識や技能を向上できた自己の課題等を発見し 向上策を考えて取り組んだ他者の特徴等に気付き 称賛や指摘を行った全体として能動的に取り組んだ 自由記述 自己評価 A 十分満足 B 満足 C やや不十分 D 不十分

67 パターン2では レベルに応じた練習ができたが 見本などが分からず技術面の向上があまり感じられなかった (A) 経験者と一緒に活動することで課題発見や向上策も見つかりやすく内容も楽しかった 経験者は物足りないのではないかと感じた (B) 先生から指示された内容は できることが多く体慣らし程度に感じた しかし 経験者同士で活動したためレベルの高い内容になったと思う (C) パターン3では 自分たちで考え意見を出し合って内容を決めるので みんな積極的になりとても楽しくできた チームワークも感じながら良い雰囲気で活動できた (A) ウインドミル投法では 未経験者は最初全くできなかったが 経験者の投球を見たり 投げ方を教わったりすると上達していた 教える楽しさ 教わる楽しさの両方があった また たくさん指摘 助言をもらったので向上できた (B) 自分たちで練習内容等を考えた方が やらされている感じがなくいいと思う 経験者だけだったので色々なことができたが 未経験者がいるとなるとそうはいかないこともあると思った (C) 3. 考察パターン1 二人一組の際に 経験者と未経験者とで分かれてしまっていた この場合 未経験者たちは不十分な理解のまま運動している危険性がある 研究授業においても 経験者たちのプレーに圧倒され 観客のような心情になっていた未経験者の様子も見られたことから 一斉指導という授業形態を選ぶ場合の留意事項としてペアの組み方を押さえておく必要がある パターン2 グループAは 未経験者のみのため失敗を恐れ ず 積極的に楽しめたという評価 グループ C は 経験者のみのため少し物足りないという評価であ る 学び合いという点では グループ B の経験者 と未経験者の混合がベターな環境であると考えら れる パターン 3 どのグループも自分たちで練習内容を決めたこ とで 意欲的に取り組んだと評価している その 意欲が 知識 技能の定着 思考力 判断力 表 現力等の向上 学びに向かう力や人間性等の醸成 にどうつながるかは軽々に評価できないが 目標 達成のために自分たちで手段を工夫していくこと が求められている現在においては ふさわしい方 法であると考えられる Ⅳ まとめ 新学習指導要領で求められている 主体的 対 話的で深い学び を実現させるには 学習者のレ ディネスをはじめ 学習者の健康状態 学習集団 の雰囲気等 学びの前提や土台となるものも非常 に重要になる 指導者は これらの状況を把握し つつ 学習者がより能動的な学習を重ねることで より良く生きる力を育んでいくよう 常に授業改 善に取り組んでいかなければならない 今回の研 究では 学習グループは経験値レベルを混合させ できるだけ自分たちで運動メニューも考えさせた 方が能動的な学習につながるという結果となった が 授業のねらいに応じ 柔軟で的確な学習環境 を提供していくことが必要であると考える 引用 参考文献 1) 中央教育審議会答申 ( 平成 28 年 12 月 21 日 ) 2) 中学校学習指導要領 ( 平成 29 年 3 月文部科学省 ) 3) 中学校学習指導要領解説保健体育編 ( 平成 29 年 7 月文部科学省 ) 4) 授業が変わる! 新学習指導要領ハンドブック中学校保健体育編 ( 平成 29 年 7 月時事通信出版局 )

68 松井 参考アンケート自己評価集計 パターン 1 興味 関心を持って取り組んだ 19 10 0 0 見通しを持って最後まで取り組んだ 13 14 1 1 これまでの知識や技能を向上できた 12 12 5 0 自己の課題等を発見し 向上策を考えて取り組んだ 11 11 6 1 他者の特徴等に気付き 称賛や指摘を行った 13 9 5 2 全体として能動的に取り組んだ 16 12 1 0 パターン2 グループA 興味 関心を持って取り組んだ 7 2 0 0 見通しを持って最後まで取り組んだ 1 8 0 0 これまでの知識や技能を向上できた 1 2 6 0 自己の課題等を発見し 向上策を考えて取り組んだ 2 6 1 0 他者の特徴等に気付き 称賛や指摘を行った 2 6 1 0 全体として能動的に取り組んだ 7 2 0 0 パターン2 グループB 興味 関心を持って取り組んだ 7 3 1 0 見通しを持って最後まで取り組んだ 6 4 1 0 これまでの知識や技能を向上できた 5 4 1 1 自己の課題等を発見し 向上策を考えて取り組んだ 5 4 2 0 他者の特徴等に気付き 称賛や指摘を行った 7 2 2 0 全体として能動的に取り組んだ 8 3 0 0 パターン2 グループC 興味 関心を持って取り組んだ 9 0 0 0 見通しを持って最後まで取り組んだ 6 3 0 0 これまでの知識や技能を向上できた 6 3 0 0 自己の課題等を発見し 向上策を考えて取り組んだ 3 6 0 0 他者の特徴等に気付き 称賛や指摘を行った 7 2 0 0 全体として能動的に取り組んだ 8 1 0 0

69 パターン 3 グループ A 興味 関心を持って取り組んだ 7 2 0 0 見通しを持って最後まで取り組んだ 7 2 0 0 これまでの知識や技能を向上できた 8 1 0 0 自己の課題等を発見し 向上策を考えて取り組んだ 7 2 0 0 他者の特徴等に気付き 称賛や指摘を行った 8 1 0 0 全体として能動的に取り組んだ 8 1 0 0 パターン3 グループB 興味 関心を持って取り組んだ 10 1 0 0 見通しを持って最後まで取り組んだ 9 2 0 0 これまでの知識や技能を向上できた 8 3 0 0 自己の課題等を発見し 向上策を考えて取り組んだ 10 1 0 0 他者の特徴等に気付き 称賛や指摘を行った 9 2 0 0 全体として能動的に取り組んだ 10 1 0 0 パターン3 グループC 興味 関心を持って取り組んだ 9 0 0 0 見通しを持って最後まで取り組んだ 8 1 0 0 これまでの知識や技能を向上できた 7 2 0 0 自己の課題等を発見し 向上策を考えて取り組んだ 7 2 0 0 他者の特徴等に気付き 称賛や指摘を行った 8 1 0 0 全体として能動的に取り組んだ 9 0 0 0