2. 日本の子どもの貧困と対策の現状
日本の子どもの貧困の現状 厚生労働省 国民生活基礎調査 子どもの貧困率の改善のいっぽうで 当事者 支援者の 実感 や関連指標との乖離 ( 厚生労働省母子世帯 貯蓄がない 2012 年 36.5% 2015 年には 37.6% へと増加 )
相対的貧困は 貧困をとらえる指標の 1 つにすぎない
藤原武男先生 ( 国立成育医療センター社会医学研究部部長 ) 作成スライド 日本公衆衛生学会シンポジウム 子どもの貧困と健康 2015 年 11 月 5 日長崎ブリックホール
子どもの貧困の実態把握の難しさ 見た目は 普通 に見える子どもが多い ( 欠食 虫歯 服装 におい 引っ越しの多さなどでわかる ケースは最困難層 緊急の支援が必要 ) 生活の困難は絶対に言わない ( 友達に家が貧乏とばれることは 絶対に嫌 ) ( 学校 教員の感度も低いケースが多い )
奨学金 子ども食堂 学習支援大事だけれど ほんとうに貧困の当事者の子どもたちがのぞんでいることでしょうか? 正社員とバイトって違うんですか? 自分で自由に使えるお金がほしい バイトするような奴はいらないと先生に部活動を辞めさせられた スマホがない女子高生って生きていけないって知ってますか? そもそも 子ども 若者の 声 を大人は聞こうとする努力をしているのでしょうか?
あすのば 2016 年調査からの子どもの声 入学時の 3 万円で子どもを前向きに幸せにすることができる
あすのば 子どもの生活と声 1500 人アンケート (2017 年度 ) 目的 : 当事者たちのくらしや 声 を議員 所管官庁 自治体 社会に届けたい! アンケート対象 2016 年度に あすのば入学 新生活応援給付金 を届けた住民税非課世帯 生活保護世帯 社会的養護のもとで暮らした経験のある 子ども本人 ( 高校 子ども本人 ( 高校 大学 1 年世代 ) 保護者 ( 社会的養護を除いた小学 ~ 大学 1 年世代 ) アンケート方法 : 郵送法 有効回答数 子ども票 547 票 ( 有効回答率 38.4%) 保護者票 959 票 ( 有効回答率 54.1% ) 合計 1506 票 ( 有効回答率 47.1% ) 調査期間 2017 年 10 月 31 日から 12 月 18 日 大規模調査ではないが 子どもの貧困の当事者データベース としての価値は高い
子どもの声
大人の声
そもそも 学校にかかる経費が高コストである状況 低コスト化や入学 進学時支援制度の拡充を!
貧 ( 低所得 ) 子どものいる低所得世帯に困りごとが多発すること = 子どもの貧困問題 困 ( 生活面での困りごと ) 特徴 : 貧 ( 低所得 ) と 困 ( 生活面での困りごと ) の 2 つの軸
貧 の軸 勤労月収 114,000 円 86% は年間 300 万円未満で生活
貧 の軸 世帯の 52% は貯金なし 65% は子どもが生まれる前 乳幼児期 小学生の頃から経済的に厳しい状況が継続
困 の軸 経済的な理由で塾 習い事を 69% の世帯を あきらめ経験 乳幼児の頃から厳しい世帯では 75% が あきらめ経験
東京都子どもの生活実態調査 困窮層 + 周辺層 小学校 3 年までに半数が 授業がわからなくなった 小 4 の壁 説の崩壊 子どもたちの わからない 感覚に向き合えている学校現場 教育委員会が多くはないという現状の把握でもある
困 の軸 保護者全体の 41% 生活保護世帯の 63% の健康状態が 良くない
困 の軸 就学援助制度 知らなかった 17% 利用なし層の 6 割が 支援制度自体を知らなかった 高校生等奨学給付金でも同様の傾向 情報ギャップ 問題
学校独自の家庭支援チーム さまざまな支援制度に子ども 保護者をつなぐ ( 自治体とも連携 教職員配置の充実により実現 ) Story Telling Room ( 貧困層ターゲット予算による 4D 機器の導入 全校生徒の ICT タブレット ) 情報ギャップ問題に対応するためには学校はじめ子どもと接する現場でのサポートがもっとも重要 日本でも貧困層ターゲット予算や教職員加配の拡充を! Breakfast Club ( 朝ごはんクラブ ケータリングや不登校 児童虐待支援員の学校配置 活用 )
子どもの貧困対策の法制化 2013 年 6 月 29 日 子どもの貧困対策の推進に関する法律成立 超党派議員による議員立法 衆参両院で全会一致可決 2014 年 8 月 29 日 子供の貧困対策に関する大綱 閣議決定 国の大綱とともに 都道府県の計画を努力義務化 子供の貧困対策に関する大綱 では 4 つの支援を重視 1 教育の支援 ( 学力保障 福祉機関との連携 就学 進学の支援等 ) 2 生活の支援 ( 保護者の生活支援 子どもの生活支援 子どもの就労支援 支援人員の確保等 ) 3 保護者に対する就労の支援 ( 親に対する就労支援 学び直しの支援 就労機会の確保等 ) 4 経済的支援 ( 教育扶助の支給方法 生活保護の子供の進学時の支援等 )
教育支援の背景には厳しい教育機会格差 ( 子供の貧困対策に関する大綱より ) 生活保護世帯に属する子供の高等学校等進学率 90.8% ( 全日制 67.6% 定時制 11.5% 通信制 5.1% 中等教育学校後期課程 0.1% 特別支援学校高等部 4.9% 高等専門学校 0.7% 専修学校の高等課程 0.9%) 〇生活保護世帯に属する子供の高等学校等中退率 5.3% 生活保護世帯に属する子供の大学等進学率 32.9% ( 大学等 19.2% 専修学校等 13.7%) 児童養護施設の子供の進学率及び就職率高等学校等卒業後の進路進学率 22.6%( 大学等 12.3% 専修学校等 10.3%) 就職率 69.8% ひとり親家庭の子供の進学率及び就職率高等学校卒業後の進路進学率 41.6%( 大学等 23.9% 専修学校等 17.8%) 就職率 33.0%
貧困対策のプラットフォーム としての学校 内閣府 子どもの貧困検討会での報告者のモデル 1 貧困への無知 モデル 貧困 は見えない 親 子ども 指導上の問題 は見える 学校 3 プラットフォーム モデル 母子家庭 失業 アルコール依存 ネグレクト 低学力 遅刻 不衛生 2 丸抱え モデル 保護者の貧困状態がそれほど深刻ではない場合には有効な場合も多い 家庭の状態そのものも改善しようと家庭訪問や食事の支援も教職員が頑張ってしまうが 指導上の問題 の改善 親 子ども 学校 関連機関 ( ケースワーカー 医療機関 児童相談所等 ) 親や家庭への支援 親 子ども 指導上の問題 の改善 早期の問題発信 学校 SSW 子どもの貧困問題等に専門性を有するスクールソーシャルワーカー (SSW) の活用により 学校をプラットフォーム ( 拠点 ) としてサステイナブルな子どもの貧困問題の改善をしていく仕組み = プラットフォーム モデル 専門職協働型 ( あるいは専門職役割分担型 ) プラットフォーム
貧困対策のプラットフォーム としての学校 内閣府 子どもの貧困対策大綱のモデル 経済的支援 就学前 ( 幼児 ) 教育 義務教育 高校 学校教育による学力保障 大学 専修学校等 学校を窓口とした福祉機関との連携 教育支援とともに 子どもに対しても保護者に対しても生活支援 高校における就労支援まで含め学校が窓口としての役割を発揮 長期包括支援型 プラットフォーム 評価できる点 1 子ども 家庭 高校中退者等への支援も学校がプラット フォームと想定 = 地域拠点としての学校の重要性 2 小学校から高等学校段階までの長期間の支援 子どもの貧困状態や貧困の連鎖を断ち切るうえで重要 3 大綱の基本理念として 子ども自身の利益が重視されて 課題 いる ( 教育基本法 - 学校教育法体系との違い ) 1 経済的支援において専修学校 大学進学の経済的給付金の ハードルが高すぎる 2 食の支援は明確な記述がない 3 貧困率の高い学校への優先的な資源配分 ( とくに SSW スクールカウンセラーや教員配置 ) なども盛り込まれて いない 4 教員の役割が限定されていない さらなる多忙化の懸念も =
でもそれだけで十分なのか? そもそも子どもの貧困対策のゴールとは何でしょうか? 相対的貧困率が下がること? 家計の低所得が改善すること? それとも?