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3. 発症時の尿中 Cペプチド<10µg/day, または, 空腹時血清 Cペプチド<0.3ng/mLかつグルカゴン負荷後 ( または食後 2 時間 ) 血清 Cペプチド<0.5ng/mLである *: 劇症 1 型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は, 必ずしもこの数字は該当しない < 参考所見

糖尿病患者 : 世界の動向 我が国を含む西太平洋地区にかなりの患者が存在する 2040 年 642M 全世界には 3 億 8200 万人の糖尿病患者が存在する 2035 年には世界の糖尿病患者数は 5 億 9200 万人になると予測される 診断すらついていない人が多い 418M IDF Diabet

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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救急カンファ 2019/7/26 HHS と DKA の治療 松山赤十字病院 内科 ( 糖尿病 代謝内分泌 ) 近藤しおり

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HHS hyperosmolar hyperglycemic syndrome 高浸透圧高血糖症候群 ( 状態 ) 診断 著しい高血糖 (600 mg/dl 以上 ) と高度な脱水に基づく高浸透圧血症により循環不全をきたした状態 著しいアシドーシスは認めない (ph 7.3~7.4) 高齢の 2 型糖尿病患者が 感染症 脳血管障害 手術 高カロリー輸液 利尿薬やステロイドの投与により高血糖をきたした場合に発症しやすい 発症までに数日の期間

DKA deiabetic ketoacidosis 糖尿病ケトアシドーシス 診断 極度のインスリン欠乏とコルチゾールやアドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモンの増加により 高血糖 (300 以上 ) 高ケトン血症 (β- ヒドロキシ酪酸の増加 ) アシドーシス (ph 7.3 未満 ) をきたした状態 最近 SGLT2 阻害薬の投与により 高血糖がなくても糖尿病ケトアシドーシスが生じることもある 直ちに初期治療を開始 専門医のいる医療機関へ移送

HHS と DKA の初期治療は同じ 1 十分な輸液 2 インスリンの少量持続静注 1 直ちに生理食塩水点滴静注 (500mL/h) 開始 尿量みながら調整. 成人で 2000~3000mL の脱水 2 速効型インスリン = ヒューマリン R R ( 当院採用 ) 0.1 単位 /kg 体重 /h をシリンジポンプで静脈内投与 3 血清 K 5.0 meq/l 切り始めたら 輸液中に K 補充 * 重炭酸塩 (HCO3-) によるアシドーシスの補正は ph 7.0 以上では行わない.

HHS と DKA の初期治療の実際 直ちに生理食塩水点滴静注 (500 ml/h) 開始 速効型インスリン = ヒューマリン R R 0.5ml=50 単位 + 生食 49.5 ml= 50 単位 /50ml をシリンジポンプで 5.0mL/h で持注 ( 生食ルートの側管 ) 2 時間ごとに血糖チェック インスリン量調整 4~6 時間後には初回血清 K 値確認 K 調整 6 時間程度でインスリン定常状態まで減量 翌朝改善あれば 翌日昼 ~ インスリン皮下注射に変更可能となることが多い

HHS hyperosmolar hyperglycemic syndrome 高浸透圧高血糖症候群 ( 状態 ) 合併症 脳浮腫 肺炎 消化管出血 腎不全 脳血管合併症 肺動脈塞栓症 低 K 血症 対策 意識状態 バイタルサイン 電解質の経時的モニター

DKA deiabetic ketoacidosis 糖尿病ケトアシドーシス 合併症 脳浮腫 高 Cl 性代謝性アシドーシス 低 K 血症 対策 意識状態 バイタルサイン 電解質の経時的モニター

DKA HHS 糖尿病の病態 インスリン依存状態インスリン非依存状態 発症以前には糖尿病と診断されていないこともある 発症前の既往 誘因 インスリン注射の中止や減量 インスリン抵抗性の増大 感染 心神ストレス 清涼飲料の多飲 SGLT2 阻害薬の投与 感染症 脱水 手術 脳血管障害 薬剤 ( ステロイド 利尿薬 高カロリー輸液 SGLT2 阻害薬 ) 内分泌疾患 ( クッシング症候群 バセドウ病 ) 心疾患

DKA HHS 発症年齢若年者 30 歳以下が多い高齢者が多い 前駆症状 消化器症状 : 悪心 腹痛 嘔吐 呼吸困難感激しい口渇 多飲 多尿 体重減少 甚だしい倦怠感 明確かつ特異的なものに乏しい倦怠感 ぼーっとしている 頭痛 消化器症状

身体所見 DKA 脱水 アセトン臭 Kussmaul 大呼吸 循環虚脱 頻脈 HHS 脱水 アセトン臭はなし 循環虚脱 けいれんや振戦など背景にある基礎疾患の症状 検査所見 血糖値 300~1000 mg/dl ph 7.3 以下血清 Na 正常 ~ 軽度低下尿ケトン体 (+)~(3+) 血清総ケトン体 3mM 以上 血糖値 600~1500 mg/dl ph 7.3~7.4 血清 Na 150 meq/l 以上尿ケトン体 (-)~(+) 血清総ケトン体 0.5~2mM

簡易ケトン体チェック アボットフリースタイル 血糖値用電極 : 青ケトン体用電極 : 紫 血糖値用 β ヒドロキシ酪酸正常 0.6 mmol/l 未満

糖尿病ケトアシドーシス (DKA) と 高血糖高浸透圧症候群 (HHS) の違い インスリン欠乏の程度の違い より高度のインスリン欠乏 ケトン体産生 インスリン欠乏度 : DKA > HHS 2 型でも重症感染症合併時などは DKA になる

ケトン体 ケトン体 3 分画総ケトン体 βヒドロキシ酪酸アセト酢酸 3 つ目のケトン体 : アセトンは呼気中に排泄される * 血中ケトン体と尿中ケトン体は必ずしも平行しない 尿ケトン陰性でもケトアシドーシスは否定できない * ケトン体簡易測定器も有用 ( 当院救外にもあり )

症例提示 < 症例 >53 歳 女性 主婦 < 主訴 > 旅行中の東京で嘔吐 意識もうろう < 家族歴 > 糖尿病の家族歴無し < 経過 >33 歳時急性 1 型糖尿病発症 8 年前に低血糖昏睡で救急搬送歴あり 強化インスリン療法中であるが SMBGはほとんどせず インスリンを注射しないことも良くある HbA1Cは 8~12 % と変動有り 3 日前から東京観光中で昨夜から食事がほとんど摂れていない為 インスリンはほぼ一昼夜注射していないとのこと

<その後の経過 > 同行の友人が看護師であり 主治医に状況を電話で説明 インスリン中断によるケトアシドーシスが疑われ 直ちに救急病院を受診指示 同日東京の病院に入院 補液とインスリン投与を受け 3 日後軽快退院 (S) 旅先で低血糖が嫌なので 食べなかったからインスリンは注射しなかった インスリン依存状態であることを説明 基礎インスリンは食べなくても必要であることを説明

2009 年 6 月の事例 40 歳代後半の男性 2 日前 ( 木 ) 夕方から悪心 1 日前 ( 金 ) 開業医を受診 制吐薬 胃腸薬を処方 当日 ( 土 ) 午前 2 時 30 分 頭が痛い 眠れない と総合病院の救急外来を歩いて受診 救急外来担当医は 心気症 と判断し帰宅させた 同日午前 7 時妻の目の前で心肺停止 救急車で再来院 血糖値 1500 mg/dl, Na 108 meq/l, Cl 67 meq/l HbA1c(JDS)6.6 % 蘇生に無反応 午前 9 時死亡確認

劇症 1 型糖尿病 DKAで発症することが多い 日本人 1 型糖尿病の約 20% 日本人 1 型糖尿病有病率 10 万人に1.5 人 劇症 1 型は日本全体で年間 300 人程度の発症 免疫チェックポイント阻害薬の副作用として 1 型糖尿病 頻度は400 人投与して約 1 人 慢性高血糖症状ではなく 腹痛嘔吐頭痛など急性代謝失調症状

低血糖 糖 10g( カレースプーン 1 杯 ) 摂取 糖尿病治療における緊急事態 血糖値が 70 mg/dl 以下 中枢神経系は 100% ブドウ糖に依存 血糖低下に対しては拮抗調節反応 (counter regulation) で対応 血漿ブドウ糖 (mg/dl) 80 60 50 40 20 カテコラミンとグルカゴンの分泌 自律神経症状発汗 動悸 コルチゾールと成長ホルモンの分泌 神経症状 嗜眠 昏睡 植物状態 0 死亡

低血糖の対応 意識障害を診たら まず血糖測定を SU 薬による低血糖昏睡は 処置で意識が回復しても1~2 日は必ず経過観察入院 意識障害が4 時間以上では 不可逆な高次脳機能障害をひきおこす

高齢者の低血糖の特徴 生理機能低下認知症で症状を自覚できない 伝えられない 自律神経反応低下冷や汗や動悸などを経ず 中枢神経症状がいきなり現れてしまう * 低血糖による不穏 異常行動を認知症と間違えられる

低血糖の対応 意識障害を診たら まず血糖測定を SU 薬による低血糖昏睡は 処置で意識が回復しても1~2 日は必ず経過観察入院 意識障害が4 時間以上では 不可逆な高次脳機能障害をひきおこす

まとめ 1.DKAやHHSでは, 大量の生食とインスリンの持続静脈内投与が必要. 2. 意識障害をみたらまず血糖値. 3. SU 薬による低血糖昏睡は, 一度覚醒しても必ず経過観察入院.