国語第 学年安芸高田市立美土里中学校指導者妹尾美和 単元名 表現から作者のメッセージを読み取ろう 大人になれなかった弟たちに 米倉斉加年著 本単元で育成する資質 能力 コミュニケーション能力, 協調性 平成 2 年 0 月 7 日 ( 金 ) 第 4 校時 第 学年男子 9 名女子 0 名計 9 名 研究主題 主体的に学び, 表現する児童生徒の育成 ~ 課題発見 解決学習 を取り入れ, 資質 能力の育成を目指す 学び合い の授業づくりを通して ~ 単元観 2 生徒観 本単元は, 国語科学習指導要領中学校第 学年 C 本学級の生徒は, おおむね落ち着いた雰囲気で授 読むこと の ウ場面の展開や登場人物などの描 業を受けることができており, 意欲的に作品を読 写に注意して読み, 内容の理解に役立てること み, 内容について考えようとする姿勢がみられる エ文章の構成や展開, 表現の特徴について, 自 今まで 花曇りの向こう や 光る地平線, 星 分の考えを持つこと また, 伝統的な言語文化と の花が降るころに などで, 文中の表現から読み 国語の特質に関する事項 イ言葉の特徴やきまり 取りをし, 交流するという授業を実施してきたが, に関する事項 の ( ウ ) 事象や行為などを表す多 その際には自分の言葉でしっかりと読み取り, 解 様な語句について理解を深めるとともに, 話や文 釈したことを書ける生徒が多い中, 口頭では表現 章の中の語彙について関心を持つこと という 3 できるが文章として書くことが難しい, という生 つの内容をねらいとする 徒が数名見られた 今回学習する作品は, 戦争という状況の中で作者 学期の定期テストの結果から, 条件に従って登 が体験した 弟の死 を中心として書かれたもの 場人物の心情を記述する設問の正答率が低かっ である 母や作者自身の弟に対する思いが話し口 た これは, 授業では穴埋め形式だった設問を記 調で書かれており, 展開が理解しやすくなってい 述式にしたため, 対応できなかったものと思われ るため, 生徒たちが無理なく作品に入ることので る きる教材と言える また, 当時の作者と本学年の 学期に行った生徒アンケートでは, 友だちの 生徒の年齢が近いことや, 幼い兄弟に対する思い 発表を聞いたり自分の意見を述べたりしている が書かれていることから, 生徒が自分自身に重ね の項目で,9 人中 5 人が肯定的な回答をしてい て読み深めるのに適した作品であると考え, この る 本単元でも, 文中の表現を根拠にして登場人 単元を設定した 物の心情を自分なりに考え, 表現し, 他者との意 見交流を通してさらに考えを深めさせたい 3 指導観指導にあたっては, 次の3 点に留意して指導をしていく () 本単元では, 単元全体を通した問いを設定し, 毎時間それを意識した読みをさせるため, 作品を何度も範読することで読み浸らせ, さらに繰り返し音読させることで作品に入り込めるようにしたい また, 作品を場面ごとに整理し, 登場人物相互の関係や, 語句 表現技法についての理解を徹底させる (2) 読み取らせる描写を精選し, 作品全体の解釈につながるような発問を行う そして, その描写から読み取れることや自分の考えをじっくりと記述させる その際, 自分なりに考えた言葉で丁寧に表現させたい 机間指導の際には,
キーワードや良い表現をその都度評価し, そこから自分の表現でより深く書き込めるように誘導する (3) 個で読み取った後はペアで交流し, 聞き取った意見をもとに解釈を深めさせる その後の全体交流では, 学びがつながっていくような意図的指名を行い, その中で読みを共有し, 考えの深まりを実感できるようにする そのために, 机間指導中には生徒の記述した文章を素早く見取り, 読みが深まるような発言の順番が組み立てられるように注意したい 4 単元の目標 学習指導要領との関連 作品を読んで内容について考え, 感想を交流して考えを広げようとする 国語への関心 意欲 態度 人物の言動や様子, 心情を表す語句に着目して読み, その人柄や心情を捉えることができる C 読むことウ 文章中の表現から, その言葉の持つ意味について読み取り, 自分の考えをもつことができる C 読むことエ 使われている表現の意味を正しく理解し, 内容の読み取りをしている 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 5 単元の評価規準国語への関心 意欲 態度 読む能力 言語についての知識 理解 技能 登場人物の心情を読み取る ことを通して, 作品から受け取った作者の意図やメッセージ, それに対する自分たちの 考えを交流する言語活動 を通した指導 作品を読んで, 登場人物の心情や 描写の効果, 登場人物の言動の意 文中の語句について, その文脈上 考えを読み取り, 自分のものの見 味などを考え, 内容の理解に役立 の意味を正しく理解している 方や考え方と比較しようとして てている いる 2 文章に表れているものの見方や 考え方をとらえ, 自分の考えを広 げている 6 本単元において育成しようとする資質 能力とのかかわり 本校で育成したい資質 能力は, 基礎学力の定着 2 課題発見 解決力 3 コミュニケーション 能力 4 協調性 5 適応力 6 学ぶ楽しさ の自覚の 6 つである そのうち, 本単元で重点的に 指導したい資質 能力は以下の 2 つである ス キ ル 意 欲 育成したい資質 能力 3 コミュニケーショ ン能力 4 協調性 本単元の学習を通して目指す姿 ( ) と育成するための支援 工夫 ( ) 発表者は自信を持って自分の意見を発表し, 聞き手は自分との表現の違いに注意して 聞き, 考えを深めている まずペアで発表することで互いの意見を聞き取り, 肯定的な聴き方でその考えを共有 させる ペアや全体で自他の考えを交流する際に, 共感的 肯定的な反応を返しながら聴いた り, 自分の表現と比較したりするなどして自分の考えを深めている 文章の表現から読み取りをする学習活動において, 他者と考えを交流し合う場面を積
態 度 極的に仕組んでいく そこから自分の文章を推敲することにより, 他者との関わり合 いの中で自分の考えが深まった事を実感させる 7 指導と評価の計画 ( 全 5 時間 ) 次時学習内容生徒の思考の流れ 評価規準 ( 評価方法 ) 資質 能力の評価 ( 評価方法 ) 課題の設定 作品を読み, 感想を書く 戦争はいけない 何もいいこ 作品の時代背景や登場人物の とがない 関係などを理解して感想を書 弟もだが, 僕 もかわいそ いている ( ノート ) 関 知 うだ 戦争はむごい 第 一 次 2 情報の収集整理 分析 感想交流をし, 内容や語句の意 母はつらかったと思うが強 他者の感想を聞いて自分の考え 味 表現技法などを確認 理解し い人だ を深め, さらに文中の表現につ た上で, 表現の中で気になる点が なぜ弟の名前がカタカナなの いて考えている ( 行動観察 ) ないか探す だろうか 関 単元を貫く課題設定 母親や作者の心情を読み取ることを通して, 弟の名前をカタカナ表記にした作者の意図を考え, どん なメッセージが込められているのかを読み取ろう 情報の収集 整理 分析 3 母の表情について書かれた場面 から, 母の心情を読み取る なぜ母親は何も言わずに立ち去ったのだろう 悔しさ 悲しみ 強い 悲しい悲しい という表現から, 母親の心情を読み取っている ( ノート ) 読 ペアや全体で自他の考えを交流 第 二 次 いきどおり あきらめ 怒り 孤独感 する際に, 共感的 肯定的な反応を返しながら聴いたり, 自分の表現と比較したりするなどして自分の考えを深めている ( 行動観察 ) 協調性 発表者は自信を持って自分の意見を発表し, 聞き手は自分との表現の違いに注意して聞き, 考えを深めている ( 行動観察 ) コ
ミュニケーション能力 情報の収集 整理 分析 4 弟を棺に入れる場面での母と作 者の心情を読み取る ( 本時 ) 大きくなっていたわが子を見て, 母はどのような思いだったのだろう 悲しみ 怒り 謝罪 今まで泣いたことのない母親が泣く姿を見て, 作者はどういう気持ちだったのだろう 謝罪 後悔 使命感 初めて という表現に着目し, 登場人物それぞれの心情を読み取っている ( ノート ) 読 ペアや全体で自他の考えを交流する際に, 共感的 肯定的な反応を返しながら聴いたり, 自分の表現と比較するなどして自分の考えを深めている ( 行動観察 ) 協調性 発表者は自信を持って自分の意見を発表し, 聞き手は自分との表現の違いに注意して聞き, 考えを深めている ( 行動観察 ) コミュニケーション能力 まとめ 創造 表現 振り返り 5 弟の名前がなぜカタカナ表記になっているのかを考え, 作者が作品に込めたメッセージを読み取る ヒロシマやナガサキも同じようにカタカナ表記になっている 作者はどのような意味を込めているのだろう 弟の死を強調 戦争の象徴 読み取ったことを踏まえながら, 作者がどういう意図でカタカナ表記にしたのかを考え, 込められたメッセージについて自分なりの意見を書いている ( ノート ) 読 第 三 次 罪のないすべての戦死者 に対する弔い ペアや全体で自他の考えを交流する際に, 共感的 肯定的な反応を返しながら聴いたり, 自分の表現と比較するなどして自分の考えを深めている ( 行動観察 ) 協調性 発表者は自信を持って自分の意見を発表し, 聞き手は自分との表現の違いに注意して聞き, 考えを深めている ( 行動観察 ) コミュニケーション能力
本時の学習 () 本時の目標 作品の中に込められた言葉から, 母親と作者 ( 僕 ) の心情を読み取る (2) 観点別評価規準 初めて という表現に着目し, そこから母親と作者 ( 僕 ) の心情を読み取っている 読 (3) 学習の展開分 予想される生徒の反応 2 学習目標を確認し, 前時までの学習を振り返る 指導上の留意点 配慮を要する生徒への支援 評価規準 ( 方法 ) 教科の指導事項 資質 能力 目標 母と僕の心情を読み取ろう 5 2 学習場面の範読を聞き, 場面を想像し 場面をイメージできるように, 抑揚や ながら読む 強弱に気を付けて範読する 2 3 母が, 初めて泣きました の 読み取りをする部分に線を引き, 視写 部分を繰り返し音読する させる 着目すべきキーワードを予想させる 悔やむ気持ち 申し訳ない気持ち 謝罪の気持ち 悲しみの気持ち 4 初めて という表現に着目し, 母の 机間指導をし, 良い表現は評価する 初めて という 心情を読み取る 個人 ノートに本文中の言葉に注目させなが 表現に着目し, 母 守ってあげられなかったと悔やむ気持 ら記述させる の心情を読み取っ ち 個別に声をかけ, 書きやすいように他 ている ( ノート ) 大きく育ててあげられなくて申し訳ない のキーワードを提示する 読 という気持ち 満足に食べさせてあげられなくてごめん ねという謝罪の気持ち 食べ物がない中でもけなげに育っていた わが子がもうこれ以上大きくなれない ことを改めて思い知らされた悲しみの 気持ち 5 共通点や相違点を意識しながらグル キーワード ( 悔やみ, 謝罪, 悲しみな 他者の意見を聞き ープで交流する グループ 全体 ど ) で似ているものを分類させたり, 取り, 良い表現など 分類しながらキーワードを出させたり を書き取っている する ( 行動観察 ) コミ 個別に声をかけ, 書きやすいように他 ュニケーション能
のキーワードを提示する 力 協調性 6 読み取った 母 の心情を踏まえなが 母 の心情との関係で, 僕 の心情 母 の心情を踏 ら, 僕 の心情を読み取る 個人 を本文中の言葉に注目させながらノー まえて 僕 の心情 僕のせいで弟の食べ物がなくなってしま トへ整理させる を読み取っている って申し訳なく思う気持ち 机間指導をし, 良い表現は評価する ( ノート ) 読 僕が盗み飲みさえしなければ, という後 個別に声をかけ, 書きやすいように他 悔の気持ち のキーワードを提示する 弟だけでなく母にまでも悪いことをして しまったという罪悪感 母を泣かせてしまったのは, 盗み飲みを してしまった僕のせいでもある これか らは弟の分まで母を支えていかなければ ならないという気持ち 7 読み取ったことをグループで交流し 母 の心情と対比させながら, キー 他者の意見を聞き た後, 全体で交流する グループ 全 ワード ( 謝罪, 後悔, 罪悪感, 決意な 取り, 良い表現など 体 ど ) で似ているものを分類させたり, を書き取っている 分類しながらキーワードを出させたり ( 行動観察 ) コミ する ュニケーション能 力 協調性 4 自分の解釈を見直す ( 書きまとめる ) グループや全体での交流からの気づき を赤ペンでノートに書き込ませること で整理させ, もう一度自分が書いた文 章の見直しをさせる 5 9 学習場面の範読を再度聞き, 読み取っ 読み取った内容を確認しながら読む た内容を確認しながら振り返りをする 予想される生徒の振り返り 母や僕の気持ちをしっかりと読み取ることができた さんの という意見になるほどと思った 私も さんと同じような意見だった でも, 表現の仕方が違っていたので, 次回, 取り入れてみようと思った 今回読み取った心情をもとに, 次の時間は作者の意図を考えていきたい
(4) 板書計画目標母と僕の心情を読み取ろう大人になれなかった弟たちに 米倉斉加年母が, おおきくなっていたんだね, とヒロユキのひざを曲げて棺に入れました そのとき, 母は初めて泣きました 母の心情作者 ( 僕 ) の心情その際, 悲しみ, 怒り, 謝罪などの 全体で交流する 単元目標弟の名前をカタカナ表記にした作者の意図を考えよう 3~5 行 3~5 行