突然の災害に負けない社内の体制整備 最終回 火災からの企業防衛 77 東京海上日動リスクコンサルティング ( 株 ) 危機管理グループグループリーダー茂木寿 日本では 消防法において規模 用途に応じ 消防計画 の策定が義務付けられている 一般的に企業においては ほとんどの拠点 施設で この消防計画策

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資料 1-6 認知症高齢者グループホーム等に係る消防法令等の概要 1 消防法令の概要 主な消防用設備等の設置基準消防用設備等の種別消火器屋内消火栓設備スプリンクラー設備自動火災報知設備消防機関へ通報する設備誘導灯 設置基準規模 構造にかかわらずすべて延べ面積 700 m2以上延べ面積 275 m2以

平成21年6月1日施行

ウ火元責任者は 自主検査の結果 異常が認められたときは 防火管理者及び防火管理責任者 ( 工事責任者 ) に報告し 指示を受けて対処する (2) 放火対策ア建物の外周部及び階段等には 可燃性の工事用資材又は梱包材等は置かないようにする やむを得ず置く場合は整理整頓し防炎シート等で覆い保管する イ工事

参考資料 三郷市火災予防条例の一部を改正する条例案の素案 平成 26 年 9 月 三郷市消防本部 大規模な屋外催しにおける防火管理体制の構築について 1 改正の背景 1 京都府福知山市花火大会火災平成 25 年 8 月 15 日 京都府福知山市で行われた花火大会において 死者 3 名 負傷者 56

消防計画

平成  年  月  日

ことを想定しているが これは既に違反対象物の公表制度を実施している消防本部の運用実態等を参考に 当該制度の実施に伴う事務負担やその効果等について検討を行った結果 特に都市部における建物の利用者数等による火災危険性が高いことを考慮したものである なお その他の消防本部においても政令指定都市の消防本部の

資料 2-3 超大規模防火対象物等における自衛消防活動に係る訓練の充実強化方策 ( 案 ) 平成 30 年 10 月 31 日 事務局

学校施設管理について

消防法 ( 抄 ) ( 昭和 23 年 7 月 24 日法律第 186 号 ) 最終改正 : 平成 27 年 9 月 11 日法律第 66 号 第 17 条 ( 消防用設備等の設置 維持と特殊消防用設備等の適用除外 ) 学校 病院 工場 事業場 興行場 百貨店 旅館 飲食店 地下街 複合用途防火対象

すぐ連絡! すぐ実施! 杉並消防署からのお知らせ 自衛消防訓練を実施しましょう 自衛消防訓練は 火災が発生した場合に消防隊が現場に到着するまで 自衛消防 活動により 迅速 的確に人命の保護と災害の拡大防止の措置をとれるようにする ことを目的としています 訓練の種別 自主的に訓練することが必要です!

工事中の消防計画 第 1 工事計画について 1 工事概要 ( 別紙 1 ) 2 工事工程表 ( 別紙 2 ) 3 緊急時連絡体制 ( 別紙 3 ) 4 関連業者一覧 ( 別紙 4 ) 第 2 目的及び適用範囲 1 目的この計画は 消防法第 8 条第 1 項の規定に基づきにおける防火管理について必要な

隣地境界線126 第 3 章消防用設備等の設置単位 さいたま市消防用設備等に関する審査基準 消防用設備等の設置単位消防用設備等の設置単位は 建築物 ( 屋根及び柱又は壁を有するものをいう 以下同じ ) である防火対象物については 特段の規定 ( 政令第 8 条 第 9 条 第 9 条の

議のうえ統括防火管理者として選任し 防火管理上必要な業務の内容について説明をしたうえで 全体についての防火管理業務を行わせなければならない 3 前項の規定により 統括防火管理者を選任したときは 防火管理対象物における管理権原者の主要な者として を代表者として指定し 代表者名をもって届出を行うものとす

報設備 共同住宅用非常コンセント設備 特定小規模施設用自動火災報知設備 加圧防排煙設備及び複合型居住施設用自動火災報知設備第二講習の対象講習は 消防法施行規則 ( 昭和三十六年自治省令第六号 以下 規則 という ) 第三十一条の六第六項各号のいずれかに該当する者を対象とするものとする 第三講習科目及

第 3 章 1. の既往調査研究 1で紹介した 小規模多機能サービスに関する調査報告書 にも指摘されていたように 小規模多機能サービス事業所の整備にあたっては 建築基準法 消防法上の取り扱いの点で検討の余地を残している これに関して 2006 年 1 月に長崎県大村市の認知症高齢者グループホームで発

目 次 第 1 はじめに 2 1 ガイドライン策定の目的 2 2 ガイドラインの対象となる防犯カメラ 2 3 防犯カメラで撮影された個人の画像の性格 2 第 2 防犯カメラの設置及び運用に当たって配慮すべき事項 3 1 設置目的の設定と目的外利用の禁止 3 2 設置場所 撮影範囲 照明設備 3 3

14個人情報の取扱いに関する規程

1 策定の目的 この手引書は 茅ヶ崎市地域防犯カメラ ( 以下 地域防犯カメラ という ) の設置及び運用について配慮すべき事項を定めることにより 地域防犯カメラの有用性とプライバシー保護等との調和を図り 地域防犯カメラを適切かつ効果的に活用し 茅ヶ崎市の安心して安全に暮らせるまちづくりを推進するこ

目次 ( )

油漏洩 防油堤内 にて火災発生 9:17 火災発見 計器室に連絡 ( 発見 者 計器室 ) 発見後 速やかに計 器室に連絡してい る 出火箇所 火災の状況及び負傷者の発生状況等を確実に伝え 所内緊急通報の実施 火災発見の連絡を受 けて速やかに所内 緊急通報を実施し 水利の確保 ( 防災セ ンター 動

消防用設備・機械器具等に係る最近の検討状況等

178 第 3 章消防用設備等の設置単位 さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 小規模特定用途複合防火対象物 ( 政令別表第 1⒃ 項イに掲げる防火対象物のうち 特定用途に供される部分の床面積の合計が当該部分が存する防火対象物の延べ面積の10 分の1 以下であり かつ 300m2未満であ

第 1 はじめに 1 ガイドライン策定の目的安全で安心なまちづくりを進める上で 近年 防犯カメラの設置は広く有用であると認められており 市内においても防犯カメラの設置が進んでいます しかし その一方で 知らないうちに自分の姿が撮影され 目的外に利用されること等に不安を感じる市民の方もいます そこで

5) 輸送の安全に関する教育及び研修に関する具体的な計画を策定し これを適確に実施する こと ( 輸送の安全に関する目標 ) 第 5 条前条に掲げる方針に基づき 目標を策定する ( 輸送の安全に関する計画 ) 第 6 条前条に掲げる目標を達成し 輸送の安全に関する重点施策に応じて 輸送の安全を確 保

小規模建築物用消防計画の手引き〔本文〕

る設備装置への徹底した温度管理のほか 熱や火花 静電気など着火源の排除 酸や鉄塩 不純物などの接触を排除するなど その貯蔵 取り扱いには細心の注意が必要とされる 重合反応を防止するため 通常は重合停止剤を添加し安定させているが それでも制御可能な範囲を超える熱源や過酸化物 鉄錆などがあれば重合を促進

点検実施設備等会場内の構築物火気使用設備器具ガス使用設備器具電気器具等危険物施設 点検実施年月日 8 消防職員の立入検査に伴う立会い消防職員の立入検査がある場合は ATC 防火 防災管理者 防火責任者及び各小間の責任者が立ち会うものとする 9 消防用設備等の点検 (1) 防火責任者は 補助者とともに

個人情報保護規定

1 はじめに 本市では 平成 17 年に 鹿児島市安心安全まちづくり条例 を定め 地域の安全は地域で守る を基本理念に 市と市民 事業者等が連携 協働し 安心して安全に暮らせるまちづくりを進めてきました これまでに防犯パトロール隊や青色防犯パトロール車による防犯活動をはじめ 安心安全ネットワーク会議

1 ガイドライン策定の目的防犯カメラについては テレビや新聞で報道されているように 犯罪の解決や犯罪の抑止につながることなど その効果は社会的に認められており さまざまな施設に防犯カメラが設置されております しかし その効果が認知される一方で 防犯カメラにより個人のプライバシーなどの人権が侵害される

ごと又は施行規則第 1 3 条第 1 項第 2 号に規定する小規模特定用途複合防火対象物における特定の用途部分ごとに設置義務が生じるときも同様とする ( 報告及び公表の決定 ) 第 4 条査察員は 立入検査において 公表の対象となる違反を認めた場合は 立入検査結果通知書により署長に報告するものとする

消防法令が改正され 防火防災管理体制が強化されます! ~ 消防法第 8 条の 2 統括防火防災管理者制度 ~ 近年 雑居ビル等で多くの死傷者を伴う火災が相次いで発生していることや東日本大震災での激しい揺れにより 高層ビル等において人的 物的被害が発生したことを受け 防火 防災体制を強化するために消防

川越地区消防局 消防署組織図 消防局長 消防局 ( 代 ) 総務課 総務担当 消防団担当 財務担当職員担当 管理担当 予防課 予防担当 査察指導担当 保安担当 警防課 警防担当 装備担当 救急課 0

事務連絡 平成 27 年 3 月 31 日 各都道府県消防防災主管課 東京消防庁 各指定都市消防本部 御中 消防庁予防課 認知症高齢者グループホーム等の火災対策の充実のための介護保険部 局 消防部局及び建築部局による情報共有 連携体制の構築に関するガイドラインに係る執務資料の送付 認知症高齢者グルー

ください 5 画像の保存 取扱い防犯カメラの画像が外部に漏れることのないよう 一定のルールに基づき慎重な管理を行ってください (1) 取扱担当者の指定防犯カメラの設置者は 必要と認める場合は 防犯カメラ モニター 録画装置等の操作を行う取扱担当者を指定してください この場合 管理責任者及び取扱担当者

2 病院次のいずれにも該当する病院のうち 相当程度の患者の見守り体制を有するもの ( 火災発生時の消火活動を適切に実施することができる体制を有するものとして総務省令で定めるもの ) 以外のもの ( ア ) 特定診療科名を有するもの ( イ ) 一般病床又は療養病床を有する病院 火災発生時の延焼を抑制

消 防 計 画

消防法施行規則等の一部を改正する省令等の公布について ( 参考資料 ) 別紙 1 1 改正理由 (1) 背景住宅宿泊事業法 ( 平成 9 年法律第 65 号 ) が平成 30 年 6 月 15 日に施行され 住宅宿泊事業に係る事前の届出が同年 3 月 15 日に開始された ( 住宅宿泊事業法の施行期

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Ⅱ. 防犯カメラの設置及び運用に当たっての留意事項 1 設置の目的防犯カメラの設置者は 犯罪 又は事故を防止するなどの目的を明確にし その目的を逸脱した運用を行わないようにしてください 2 撮影の範囲と設置場所防犯カメラで撮影された映像は その取扱いによっては 撮影された個人のプライバシーを侵害する

第 3 倉庫に係る防火安全対策 1 目的この基準は 近年 倉庫が大規模化し また 作業所的要素が出てくるなど特殊化する傾向が見られることから 倉庫に係る出火防止 延焼拡大防止 避難の安全確保等に係る具体的基準を定めたものである 2 指導対象この基準に基づき指導する防火対象物の範囲は次に掲げるものとす

平成25年中には、放火自殺者を除き火災による死者は1,278人

8. 内部監査部門を設置し 当社グループのコンプライアンスの状況 業務の適正性に関する内部監査を実施する 内部監査部門はその結果を 適宜 監査等委員会及び代表取締役社長に報告するものとする 9. 当社グループの財務報告の適正性の確保に向けた内部統制体制を整備 構築する 10. 取締役及び執行役員は

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2 スプリンクラー設備の設置基準の見直し 消防法施行令第 12 条第 1 項関係 スプリンクラー設備を設置しなければならない防火対象物又はその部分に 次に掲げるもの 火災発生時の延焼を抑 制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するものを除く で延べ面積が 275 m2未満のものが追加さ

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p81-96_マンション管理ガイド_1703.indd

3 署長は 前条の申請のあった防火対象物について 該当する審査項目のいずれかが判定基準に適合していないと認めたときは 申請者に対して その旨を第 3 号様式による防火基準不適合通知書により通知するものとする 4 署長は 第 2 項の規定による通知を行ったときは 第 4 号様式による防火基準適合表示対

目次 4. 組織 4.1 組織及びその状況の理解 利害関係者のニーズ 適用範囲 環境活動の仕組み 3 5. リーダーシップ 5.1 経営者の責務 環境方針 役割 責任及び権限 5 6. 計画 6.1 リスクへの取り組み 環境目標

基準2 消防用設備等の設置単位の取扱いに関する基準

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ホテル火災対策検討部会報告書 ( 概要 ) < 検討の目的及び体制 > 平成 24 年 5 月 13 日 ( 日 ) 広島県福山市において死者 7 名 負傷者 3 名が発生したホテル火災を踏まえ ホテル 旅館等の火災被害拡大防止対策及び火災予防行政の実効性向上等に関する検討を実施 予防行政のあり方に

防災業務計画 株式会社ローソン

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テロ対処訓練の実施 従業員 出入業者等が参加するテロ対処訓練を定期的に実施し テロ発生時の対応要領について確認するとともに 参加者のテロ対策への意識を高める また 警察 消防 海上保安機関 周辺の民間事業者等と共同で訓練を実施することで より実態に即した訓練が可能となる 救命講習の受講 テロ発生時に

平成23年度事例集04

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特別養護老人ホーム外川園

安全管理規程

基準19 ハロゲン化物消火設備の設置及び維持に関する基準

(2) 総合的な窓口の設置 1 各行政機関は 当該行政機関における職員等からの通報を受け付ける窓口 ( 以下 通報窓口 という ) を 全部局の総合調整を行う部局又はコンプライアンスを所掌する部局等に設置する この場合 各行政機関は 当該行政機関内部の通報窓口に加えて 外部に弁護士等を配置した窓口を


火災を感知するために常に作動しており その電池の寿命の目安は約 10 年とされています 新築住宅への住宅用火災警報器の設置義務化から 10 年超が経過しており 電池切れや本体内部の電子機器の劣化により適切に作動しないことが懸念されます このため消防庁では 住宅用火災警報器の設置の徹底や適切な維持管理

火対象物の公表の要否を決定するものとする ( 公表の予告 ) 第 5 条署長は 前条第 4 項の規定により公表が必要であると決定した場合は 公表予告書 ( 第 2 号様式 ) により関係者に対し公表の予告をするものとする 2 前項に規定する公表の予告は 査察規程第 20 条第 1 項に規定する立入検

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PowerPoint プレゼンテーション

PPTVIEW

安全衛生規程

直しも行う これらの事務については 稟議規程 文書管理規程 契約書取扱規程は管理本部長が所管 情報管理規程 情報セキュリティ管理規程はコンプライアンス推進部長が所管し 運用状況の検証 見直しの経過等 適宜取締役会に報告する なお 業務を効率的に推進するために 業務システムの合理化や IT 化をさらに

( 消防機関への報告等 ) 第 6 条防火管理者は 防火管理業務の適正を図るため 常に消防機関と連絡を密にし 次の業務を行うものとする (1) 消防計画の提出 ( 改正の場合はその都度 ) (2) 建築物及び諸設備の設置又は変更の事前連絡並びに法令に基づく諸手続 (3) 消防用設備等の点検結果の報告

ガイドライン策定の目的 和歌山県では 和歌山県安全 安心まちづくり条例 ( 平成 18 年 3 月 24 日条例第 26 号 ) に基づき 家庭及び地域における人と人との絆を大切にし お互いが支え合い 及び助け合うとともに 安全で安心な暮らしに配慮した環境の整備を行うまちづくりを推進しています その

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Q5: 点検で不合格になった場合は? A5: 点検で不合格になった容器弁は 新品の容器弁に更新する必要があります Q6: 点検ではなく更新することはできるの? A6: 更新することはできます 更新した場合は 容器弁の安全性 の点検は必要ありません 劣化の著しいものや当工業会が交換を推奨する期間 (1

番号 特定共同住宅等の種類と必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等 二方向避難型特定共同住宅等である (1) 初期拡大抑制性能 ( その 2) 図面番 ア地階を除く階数が 5 以下のもの 消火器具屋外消火栓設備動力消防ポンプ設備 又は住戸用及び共同住宅用非常警報設備 イ地階を除く階数

( 例 ) 病床数が 60 の場合 職員の総数が5 人以上であり かつ 当該職員のうち宿直勤務者を除いた職員数が2 人以上である体制をいう イ規則第 5 条第 3 項第 1 号に規定する 職員の数 とは 一日の中で 最も職員が少ない時間帯に勤務している職員 ( 宿直勤務者を含む ) の総数を基準とす

第 3 点検の期間点検の期間は 次の表の上欄 ( 左欄 ) に掲げる用設備等の等並びに同表中欄に掲げる点検の内容及び方法に応じ 同表下欄 ( 右欄 ) に掲げるとおりとする ただし 特殊用設備等にあっては 法第 17 条第 3 項に規定する設備等設置維持計画に定める期間によるものとする 用設備等の等

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特定個人情報の取扱いに関する管理規程 ( 趣旨 ) 第 1 条この規程は 特定個人情報の漏えい 滅失及び毀損の防止その他の適切な管理のための措置を講ずるに当たり遵守すべき行為及び判断等の基準その他必要な事項を定めるものとする ( 定義 ) 第 2 条 この規定における用語の意義は 江戸川区個人情報保

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第 1 ガイドライン策定の目的及び対象 1 ガイドライン策定の目的美濃加茂市では犯罪のない安全で安心できる住みよい地域社会を実現するため 平成 21 年 10 月に 美濃加茂市防犯活動推進条例 を施行するとともに 同条例に基づく防犯計画を策定し 市民 事業者及び市が一体となって 犯罪のないまちづくり

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さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 第 4 渡り廊下で接続されている場合の取り扱い 155 第 4 渡り廊下で接続されている場合の 取り扱い

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既存の高越ガス設備の耐震性向上対策について

作成例

品質マニュアル(サンプル)|株式会社ハピネックス

はじめに 個人情報保護法への対策を支援いたします!! 2005 年 4 月 個人情報保護法 全面施行致しました 個人情報が漏洩した場合の管理 責任について民事での損害賠償請求や行政処分などのリスクを追う可能性がござい ます 個人情報を取り扱う企業は いち早く法律への対応が必要になります コラボレーシ

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事業者が行うべき措置については 匿名加工情報の作成に携わる者 ( 以下 作成従事者 という ) を限定するなどの社内規定の策定 作成従事者等の監督体制の整備 個人情報から削除した事項及び加工方法に関する情報へのアクセス制御 不正アクセス対策等を行うことが考えられるが 規定ぶりについて今後具体的に検討

特定駐車場用泡消火設備

東京都建築安全条例の見直しの考え方

消火活動のため 消防自動車隊を中心とする消火班をはじめ 避難誘導班や救護班からなる自衛消防 隊を組織しており 夜間休日においても 11 名以上が初期消火活動にあたることにしています 火災が起こった場合 まず火災感知器の感知等により中央制御室の当直長 ( 常駐 ) に連絡が入ります 当直長は 発電所内

高圧ガス(第576号),P48-53

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突然の災害に負けない社内の体制整備 最終回 火災からの企業防衛 77 東京海上日動リスクコンサルティング ( 株 ) 危機管理グループグループリーダー茂木寿 日本では 消防法において規模 用途に応じ 消防計画 の策定が義務付けられている 一般的に企業においては ほとんどの拠点 施設で この消防計画策定が必要となっている 消防計画とは 防火管理者が管理権原者の指示を受けて作成する防火管理に関する基本計画書のことで 防火管理業務が計画的 ( 組織的 ) に 適正かつ効果的に行われるための基本的な方針を定めたものである なお 消防計画には以下の事項を盛り込む必要がある 1 自衛消防の組織に関すること 2 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること 3 消防用設備等の点検および整備に関すること 4 避難通路 避難口 安全区画 排煙または防煙区画その他の避難施設の維持管理およびその案内に関すること 5 防火壁 内装その他防災上の構造の維持管理に関すること 6 定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること 7 防災上必要な教育に関すること 8 消火 通報および避難訓練の実施に関すること ( 特定防火対象物にあっては 避難訓練および消火訓練を年 2 回以上実施しなければならない また あらかじめ消防機関に通報しなければならない ) 9 火災 地震その他の災害が発生した場合における消火活動 通報連絡および避難誘導に関すること 10 防火管理について消防機関との連絡に関すること 11 新築 改築 移転 修繕または模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者 またはその補助者の立会い その他火気の使用または取扱いの監督に関すること 12 全各号に掲げるもののほか 防火対象物における防火管理に関して必要な事項 前記の消防計画における必要事項は 言い換えれば 企業が防火対策として実施しなくてはならない点を明示していると言える 当然 企業は火災の危険性を認識しており 消防計画を策定し 防災訓練等を定期的に実施している しかしながら 連載第 1 回 地震から本社機能を守る でも述べた通り 昨今の日本においては 企業活動の集約化やサプライチェーンの緻密化によって連鎖的影響が広がることで 火災による影響が自社に止まらず 産業界全体に影響を与える例も増加している 2003 年 9 月に発生した化学メーカー工場の火災では 当該工場が全焼し 約 2 週間後に一部生産を再開したものの 全面復旧には約 10 カ月を要した また この火災では 有毒ガス発生の恐れがあるとして地域住民 5,032 人に対し 避難指示が出されたことから 総務省消防庁は 避難指示の対象者が 5,000 人を超え 社会的影響が極めて大きい と判断し 改正消防法 (1) を初適用して原因調査のため 独立行政法人 消防研究所の職員 2 人と同庁の職員 1 人を現地に派遣した この火災では 同社の売上にも多大な影響を与えたが 同社取引先にも影響が及んでおり 企業を取り巻くリスクのなかで 火災は依然として大きな脅威であることがうかがわれる 以下は 火災から企業活動 機能をどのように守るかについてまとめたものである 注 : (1) 2001 年 9 月に発生した新宿区歌舞伎町ビルの火災を踏まえて 2002 年 4 月に消防法の一部が改正された 1

主な改正点は 1 違反是正の徹底 [ 立入検査の制限の見直し 措置命令 使用禁止命令等の発動要件の明確化 措置命令等を発した場合の公示義務付け等 ]2 防火管理の徹底 [ 新しく防火対象物定期点検報告制度が施行され 法令を遵守している防火対象物に対する点検報告義務の免除や 点検済表示 認定表示等が導入された ]3 避難 安全基準の強化 [ 避難上必要な施設等の管理が義務付けられた ]4 違反に対する罰則についても 個人だけでなく法人も対象とすることとなり 最高で 1 億円以下の罰金となった 1. リスクとしての火災の特徴 企業リスクとしての火災の特徴としては 下記の点を挙げることが出来る 1 自然災害同様に被害の範囲が広範囲であるという点が最も特徴的である 例えば 人的被害の他 物的損害では 火災による焼損害だけでなく 煙や臭気等による損害や消火活動にともなう消火薬剤による水濡れ 汚れといった二次的な損害が 出火場所以外でも発生する さらに 火災による操業中断 環境破壊 信用失墜等での機会損失や予想利益の減少等 火災リスクが企業経営を揺るがす被害をもたらす可能性がある 2 自然災害の発生は 未然に発生自体を抑制することは出来ないが 火災については 対策を講じることで 発生頻度や損害の大きさをある程度抑制することが可能である 3 火災が発生し 工場の操業が停止した場合 自社の被害の他 取引先への影響が多大である また 自然災害とは違い 取引先への供給停止により その責任を強く追及される可能性が高いことも火災の特徴であると言える 前記のようなことから 火災は企業経営に多大な影響を与えることに留意する必要がある そのため 企業としての防火対策は 自然災害以上に対策を講じることが社会的責任であることに留意する必要があると言える 2. 防火対策の要諦 弊社では 火災 爆発リスクの基本的な考え方を MCOPE( エムコープ ) という略字で示している これは 火災リスクを回避し 損失を軽減するために考慮すべき下記のような 5 つの要素の頭文字をとったものである MCOPE( エムコープ ) を一軒の家に例えると 下図のように表すことができる この図の M は家の土台部分に相当し MCOPE( エムコープ ) の根幹をなす最も重要な役割を担っており 経営者や管理者は 防火管理についての方針や目標をトップマネジメントとして関係者に示すことが重要である 特に 不特定多数の人々が出入りする特定防火対象物については 共同防火管理協議会を設置し ビルの権原者 ( 管理者 責任者 ) とテナントの権原者 ( 管理者 責任者 ) が一体となって防火管理に取り組むことが重要である C は 建物の柱 床 梁 壁 屋根等の耐火性能を示すものであるが 延焼防止や避難を容易にするために設けられる防火戸 防火シャッターならびに排煙設備等の維持管理も重要である O は 建物の用途や業務内容 設備の状況 原材料や製品等の保管状況であるが 危険物 可燃物の貯蔵 取扱方法および遮断装置 安全装置等の有無などがポイントとなる P は 消防用設備等の設置ならびに維持管理の状況等と消防署までの距離であるが 消防通報の体制 方法等がポイントとなる E は 類焼あるいは放火等によって発生する他責による火災で 類焼等については 隣接する建物との距離や外壁の構造等が影響する 放火については 5 年連続して出火原因の 1 位を占めており 監視カメラによる不審者の監視や可燃物の除去等が重要である 2

3. 企業として防火対策 企業における防火対策としては 下記のような措置を講ずる必要がある なお 下記は工場を例にとって記載している (1) 発火源の特定工場内の発火源について その着火性 延焼物の有無等について 保管している薬品 製品 設備 機械 装置等について 詳細に検討することが不可欠である また 喫煙場所の防火対策等 人為的な問題に起因する火災についても詳細に検討する必要がある (2) 機械 設備における火災危険度の把握工場内にある機械 設備における火災危険度については 次のような分類をし 把握することが肝要である (A) 火花 静電気に注意を要する機械 設備 グラインダー 粉砕機 製綿機 放電加工機等 (B) 摩擦熱に注意を要する機械 設備 旋盤 印刷機 織物機械等 (C) その他の機械 設備 混合機 / 調合機 焼入設備 ボイラ 自動半田付装置 3

タービン軸受 圧延機 塗装ブース 変電設備 等 (D) 人為的な火災危険 たばこ ライター 等 (3) 被害想定の実施第 1 回 地震から本社機能を守る でも述べている通り 火災による被害想定が不可欠である 特に 多様な発火源を持つ薬品 設備 機械 装置等がある場合には これらが設置されている場所で火災が発生した場合に どの程度延焼するか等について検討し 人的 物的 経営面について 詳細な被害想定を行うことが重要である (4) 防火対策の実施 (A) 社内体制の整備社内における組織横断的な防火対策の推進体制 ( 防災委員会等 ) や火災発生時の対策本部体制 自衛消防隊の組織等について体制整備することが必要である (B) 計画 マニュアルの策定防火対策全般についてまとめた消防計画 マニュアルの策定が不可欠である 当然ながら ほとんどの企業の拠点 施設では消防計画が策定されているが 機能的な消防計画にするために 内容の見直し等が必要な場合もある (C) 火災発生時の体制整備火災が発生した場合における消火活動 通報連絡 避難誘導等について 消防計画 マニュアル等に明記し 社内に周知徹底することが重要である (D) 火災発生の防止体制の整備近年における火災原因としては 内部からの失火もさることながら 放火による火災が非常に多い そのため 施設における警備体制の拡充も火災発生の抑止において実効性がある また たばこの不始末等による失火も多いことから 工場内の喫煙場所の設定や敷地内禁煙の措置を講じることが重要である また 工場内へのライター等の発火器具の持込みを禁止にすることも効果的である (E) 火災の早期発見 初期消火体制の整備火災の早期発見は 防火対策の中心とも言える 例えば 自動火災報知設備 非常警報設備 屋内消火栓設備 避難器具設備 泡消火設備 防火シャッター等は 大規模施設では 不可欠の設備となる また スプリンクラー等の消化設備については 一定規模以上の工場には設置が義務付けられているが 工場内の火災危険度が高いと思われる場合には これら消火設備の設置を検討することも必要である (F) 点検 検査体制防火対象物についての火災予防上の自主検査 消防用設備等の点検および整備を実施する体制の整備が不可欠である (G) 避難体制 延焼防止に関する対策の実施避難通路 避難口 安全区画 排煙 防煙区画 その他避難施設の設置 案内および維持管理に関する対策の実施が必要となる また 防火壁 内装 その他防災上の構造に関する防火対策の実施 維持管理に関し 実施体制を整備することも重要である さらに 施設における定員の遵守 その他収容人員の適正化に関して徹底する体制の整備も必要となる (H) 教育 訓練の充実社員の防火意識の周知徹底のため 防災上必要な教育を行うことが不可欠である また 消火 通報および避難訓練を定期的に実施することが必要である 特に これらの訓練を通じ 問題点 改善点を明確化し 継続的改善を図ることが何よりも重要であると言える 4

4. まとめ これまで 4 回にわたり災害からの企業防衛について 記載してきた これまで 何度か言及している通り 昨今の日本においては 企業活動の集約化やサプライチェーンの緻密化による連鎖的影響の広がりにより 災害による影響は自社に止まらず 産業界全体に影響を与える例が増加している また 近年における企業の社会的責任への関心の盛り上がりを受け 企業がよき 企業市民 として活動することが 強く求められており その意味では災害対策を含むリスクマネジメント体制構築が企業活動に不可欠となっていることを十分に理解する必要があると言える 企業におけるリスクマネジメント体制構築においては 社員各々がリスクに対する感性を高め 認識を深めることが 最終的な目的 ゴールとなる そのため 多大な時間と労力を要する活動となるが 企業としては 継続的に活動をしていくことが何よりも重要であると肝に銘じることが不可欠である これまで 4 回にわたり 災害からの企業防衛について記載してきたが これらが貴社のリスクマネジメント体制構築の一助となれば幸甚である 以上 ( 本稿は ビジネス法務 2005 年 7 月号 ( 株式会社中央経済社 ) に掲載されたものを同社の許可をもって転載したものです ) ( 第 77 号 2005 年 12 月発行 ) 5