WBS に基づく プロジェクト管理システムの実現 IPA フォーラム 2007, SEC コンファレンス @ 明治記念館平成 19 年 10 月 30 日 原田晃粟根達志, 伊野谷祐二, 大里立夫, 大野治 松下誠, 楠本真二, 井上克郎 日本電子計算株式会社株式会社日立製作所大阪大学 大学院情報科学研究科 1
エンタープライズ系ソフトウェアの特徴 エンタープライズ系ソフトウェアとは 企業, 行政機関 教育機関, 医療機関等の組織の経営, 活動, プロセスを支援するソフトウェア 多種多様である 大規模である 個別開発である プロジェクト型の開発である 受託開発が多い 業務知識は発注者である顧客側にある 種々の課題が存在 2
エンタープライズ系ソフトウェア 開発プロジェクトの特徴 プロジェクトの特徴 作業, 成果物が膨大 プロジェクトメンバが多い 開発拠点が分散 情報共有が難しい ( 計画, 状況, 成果物 ) 利用する参考資料が膨大 人手でのプロジェクト管理が難しい プロジェクト管理を支援するシステムが必要 プロジェクト管理システム プロナビ を開発 3
プロナビ の目標 PC 上での統合的な作業環境の実現 提供 プロジェクト計画( 工程, 作業, 担当者, 成果物 ) の明確化 プロジェクト進捗状況の把握 プロジェクトメンバ間での成果物, プロジェクト状況の共有 規則, 標準, ワークシート等の知識の活用 プロセス, 作業の標準化 プロナビ WBS の作成 作業の階層化 作業と担当者, 成果物, スケジュール / 実績, 参考資料の相互関連付けと一元管理 プロナビによるプロナビWBSの管理とプロジェクトデータ ( プロジェクト計画 / 状況, 成果物, 参考資料 ) の一元管理 4
プロナビ WBS WBS 経営管理システム 従業員管理システム WORK1 システム計画 WORK2 要求分析 WORK2.1 ビジネスプロセス分析 WORK2.1.1 業務用語集 情報付加 WBSへの付加情報 前提ワーク 参照する知識情報 WORK1.1 文書作成基準 プロジェクトデータの一元管理 ワークの計画 / 状態 責任者 : 原田晃 プロジェクト 開始予定日 :2004/4/5 情報 DB 終了予定日 :2004/4/16 実績開始日 :2004/4/5 実績終了日 :- 進捗状況 : 着手 成果物ファイル成果物ファイル名 : 用語集成果物 DB 担当者 : 粟根達志 登録者 : 粟根達志 登録日時 :2004/4/9 10:00:00 更新日時 :2004 知識情報バージョン番号 :2 DB 進捗状況 : 顧客レビュー中 5
プロナビの構成 クライアント PC プロナビ Web サーバ プロジェクト 情報 DB プロジェクト情報管理部 プロジェクト計画 策定 プロジェクト情報表示 project view 管理者 成果物 DB 知識情報 DB 成果物管理部知識情報管理部 クライアント PC プロジェクト情報表示 project view private view 成果物作成 開発者 Intranet/Internet 知識情報表示 6
Project Viewの画面例 プロジェクトの観点からの情報 進捗状況 /TO DO 管理 TO SEE 管理 7
Private View の画面例 個人の観点からの情報 管理者 / 開発者の属している全てのプロジェクトに関する情報を表示 8
プロナビによるプロジェクト管理例 - 管理者 - 従来手法によるプロジェクト管理 プロナビによるプロジェクト管理 プロジェクト 組織に存在するWBS 作成標準や参 組織の標準フ ロナヒ WBS を基にカスタマイス 計画作成 考書を参考に作成 してフ ロナヒ WBSを作成 進捗状況開発者から進捗状況の報告を受け, project view から作業の進捗状況を把の把握ガントチャートに記入握 必要に応じて成果物 DB に格納されている成果物の内容を直接, 確認 成果物の承認 管理者に送付されてきた成果物の内容を確認して承認 成果物 DB に格納されている成果物の内容を確認して承認. 結果をフ ロナヒ WBS に反映 成果物の 印刷物 ( 電子ファイル ) にして決められ 成果物ファイルとしてハ ーシ ョン番号が付加さ 管理 た書棚 (DB) で保管 れ成果物 DBに格納 9
プロナビによるプロジェクト管理例 - 開発者 - 従来手法によるプロジェクト管理 プロナビによるプロジェクト管理 作業, カ ントチャートから確認 project viewから確認 スケシ ュール の確認 成果物前提作業の成果物や知識情報を project view に表示された前提作業やの作成参照し作成. 成果物や知識情報を知識情報の一覧から選択し内容を参照. 探し出すための負荷が大一覧表示される資料はWBSの作業と対応づけられており探す負荷は殆どない 成果物の承認依頼 進捗状況の報告 作成の完了した成果物を承認者に送付する 定期的に進捗状況をフ ロシ ェクト管理者に報告 承認者にメール等で承認を依頼. 承認者は成果物 DBに格納されている成果物を確認 作業の着手, 完了, 承認完了の度に project viewの該当する項目に事象を反映する 10
実運用システムの概要 可用性, 性能の観点からプロナビWebサーバ,DBサーバを冗長化 23Hr 365 日運用 (1Hr でデータのバックアップを実施 ) プロナビ Webサーバ 総容量 3TB クライアント PC クライアント PC Intranet/ Internet 負荷分散装置 Web/AP サーバ Web/AP サーバ Web/AP サーバ DB サーバ DB サーバ DB DB DB 11
適用プロジェクト総数 適用開始後,7 年間で 3,000 に近い適用実績 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 00 年 01 年 02 年 03 年 04 年 05 年 06 年 07/ 上 12
アクティブプロジェクト数クト数 適用中のプロジェクト ( アクティブプロジェクトク ) 数が 500 を突破 600 500 400 300 200 100 0 06/08 06/10 06/12 07/02 07/04 07/06 13
適用促進策 プロナビ運用初期時の促進策 適用推進部門が, プロナビを利用するための環境の作成,WBS のカスタマイズ, 成果物のプロナビへの登録を代行. 更に出前教育を実施. 分散拠点では設置の容易な ADSL を活用しネットワーク性能を確保. 成功事例を作り, それを梃子に会社幹部から何度も何度も適用拡大を号令. 現在の適用促進策 実施頻度 重要プロジェクトに対する適用状況の監視と警告 1 回 / 月 アンケートによる利用状況調査とユーザ要望の収集 1 回 / 年 ユーザ要望に対する定期的な機能エンハンス 2~4 回 / 年 リリースニュースによるエンハンス内容のスによるエンハンス内容の PR 2~4 回 / 年 ヘルプデスクによる問合せ対応 5~10 件 / 月 適用を検討しているプロジェクトに対する個別説明 デモの実施 1 回 /2ヶ月 社内教育の中でのプロナビの紹介 8~10 回 / 年 14
アンケート結果 ( 満足調査 ) プロナビの活用度の高い上位 100 プロジェクトの管理者権限保有者にアンケート 2005 年度回答率 33% A B C D E F G H データの一元管理複数拠点で利用できるファイルサーバの構築工数削減サーバメンテナンス等の管理工数削減操作の容易性機能の豊富さその他満足できる点がない : 2006 年度回答率 44% 2005 年 2006 年 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 15
アンケート結果 ( 不満調査 ) A B C D E F G 障害によりプロナビが使用不可になる性能が低い準備が煩わしい操作が難しい機能不足その他不満を感じない プロナビがプロジェクト管理に必須のものになりつつあることを示している : 2005 年 2006 年 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 16
アンケート結果 ( 利用暦, 利用回数 ) プロナビの利用暦プロナビの総利用回数 A B C D A 1 年未満 1~2 年未満 2~3 年未満 3 年以上今回が初めて 3 年以上, 利用している人が 50%, 利用回数が4 回以上の人が約 40% と, 一度, 利用すると繰返し利用することが多いことを確認できる. 初めてプロナビを利用する人が約 30% おり, プロナビの利用プロジェクト数増加を裏付けている. B 2 回目 C D 3 回目 4~10 回目 E 10 回以上 17
適用効果 ( ヒアリング結果 ) プロジェクト管理者 7 名に対するヒアリング結果 評価項目 効 管理者開発者 開発作業の標準フ ロナヒ WBSが用意されているので個最新の成果物を参照できるので仕様の確認が効率化別フ ロナヒ の作成が容易であった別フロナヒの作成が容易であった. でき, 仕様に関する不良がなくなった. - 他の開発者が作成した成果物の再利用ができ効率が上がった. 成果物の管理 情報の共有化 進捗状況の管理 - 果 作業手順, 記述例等の知識情報を参照しながら作業ができるので経験が浅くても効率よく作業をできた. 開発委託先から随時, 成果物を登録しても最新版の成果物をすぐに入手できた. らうことで, 検収前に成果物をチェックでき目的の成果物を容易に探し出せるようになった納品時の品質を向上することができた. - 版の間違いによる不良がなくなった. フ ロシ ェクト計画書, 基準書等のフ ロシ ェクトの方 - 針のフ ロシ ェクト内への徹底が容易になった. 複数の開発拠点の全メンハ が常に同じ情報を即時に共有できた. 直接, 成果物の内容を確認できるので進捗会議での報告の裏づけを容易にとれるようになった. 成果物のチェックが簡単に行えた. - - - 18
評価 累計で約 3,000プロジェクトが適用, 常時 500 以上のプロジェクトが適用中であり, プロジェクト管理を支援するシステムとして定着化している. プロナビを使うことが文化になっていると言うことができる. 利用回数が4 回以上の人が 40% いること, 不満足調査で 障害によるサービス停止 をあげている人が30% いることからも裏付けされる. 満足調査, 不満調査からも, 利用した人のほぼ全員が満足している. プロジェクト計画, 状況, 成果物, 参考資料等の情報の一元管理や共有が非常に少ない負荷で実現できることに60% の人が満足している. プロジェクト完了時に成果物は再利用可能な知識情報として蓄積される. 利用回数が2 回以上の人が 70% いることからも, 蓄積されたプロジェクト成果物の次のプロジェクトでジクトでの再利用は拡大していると考えることができる. 成果物の再利用により作業, 成果物の標準化と作業の効率化が図られる. プロナビの適用プロジェクト数が増えるに従い再利用可能な知識情報が増加し, 益々, 標準化と高効率化が進む. プロナビにより非常に優秀な管理者 / 開発者の作業環境がメンバ全員の PC 上に実現されたことになり, コミュニケーションロス, 情報の錯綜, 作業の混乱を防止できる. 19
まとめ プロジェクトの計画 / 進捗状況, 作業, 成果物, 担当者, 参考資料を対応付け, 一元管理するためのWBSモデルを提案した. WBS モデル ( プロナビ WBS) を利用したプロジェクト管理システム プロナビ を開発した. プロナビの現場での適用を推進したところ, 累計で約 3,000, 常時 500 以上のプロジェクトが適用している. また, アンケート調査からも満足度が高く, 実用的なプロジェクト管理システムであることを確認できた. プロナビは なくてはならないシステム, 使うことが当り前のシステム になっており, プロナビを使うことが組織全体の文化になりつつある. 20