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ライドシェアとは何か? 前総括主任研究官山上俊行 1. はじめに 最近 ライドシェア ( またはライドシェアリング ) の議論が行われるようになり *1 この言葉を耳にする機会が多くなった ライドシェアは日本語に訳すと 相乗り であるが 我が国では相乗りが一般的ではなく馴染みも薄い ライドシェアとは一体何であろうか 当研究所において 運輸分野における個人の財 サービスの仲介ビジネスに係る欧米諸国の動向等に関する調査研究 を実施した (P58~に掲載) その調査研究では ここ数年で急速に利用が拡大している新しい運送サービス ( ライドシェアの一形態 ) を対象としており 筆者は昨年秋に米国カリフォルニア州サンフランシスコを訪れて現地調査を行ってきた 米国においては カープールによる相乗り TNC(Transportation Network Company) による運送サービス ( 以下 TNC サービス という ) 等 様々なライドシェアが行われており 本稿では米国におけるライドシェアの背景や形態 利用状況等を紹介したい 2. ライドシェアの背景 米国で一般的な相乗りは カープール と呼ばれ これは出発地 目的地が同一の人々による通勤時の自家用車の相乗りであり 主要な交通手段の一つとなっている 米国全体の通勤時の交通手段をみると ドライバー 1 人が乗車する自家用車が77% カープール9% 鉄道 バス 5% であり *2 カープールは鉄道 バスよりも上位にある また サンフランシスコでは交通手段におけるカープールの利用割合は 16% である *3 このように米国社会ではカープールは一般的であるが どのような経緯で利用されるようになってきたのだろうか 米国においてフォードが 198 年に自動車の大量生産を開始してから 自動車が広く普及し 現代社会において欠かせない存在となっている 195 年代に始まった高速道路網の整備は 都市間のみならず都市内にも建設され その結果 大量の自動車が都心まで入り込み 都心部には広大な駐車場が整備された 自動車の利便性向上や人々の所得向上によって 多くの人々が自動車を保有し モータリゼーションが進んでいった 自動車の普及によって 都心部に住んでいた人々は郊外の広い庭のある一戸建て住宅に移り住み 都市に新たに入ってきた人々も都心部ではなく郊外で暮らし始め 地価の安い郊外の土地が次々と住宅地に変わっていき 低密度の郊外都市が開発された このような都市における移動は自動車が主流にな 2 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季

189 1917 1921 1925 1929 1933 1937 1941 1945 1949 1953 1957 1961 1965 1969 1973 1977 1981 1985 1989 1993 1997 21 25 29 213 百万 り 通勤ラッシュ時には道路が混雑していった 都市人口の増加に伴う都市のスプロール化に加えて 郊外においては大規模なショッピングモールが開業するとともに オフィス機能も都心部から移転し 複合機能を持った副都心的な都市 ( エッジ シティ ) が生まれた 郊外と都心の交通の拡大 エッジ シティ間の交通も加わり 低密度に拡散した都市形態が道路混雑に拍車をかけた *4 一方 公共交通に関しては 戦前に多くの都市に路面電車が走り ピーク時の 192 年には現在の LRT 利用者 (214 年 531 百万人 ) の26 倍 138 億人が利用していた ( 図 1) *5 しかし バスや鉄道は大量旅客輸送に優れており 日本の大都市部のような高密度居住 高密移動の地域でこそふさわしく 米国のように低密度構造の都市ではその意義が著しく低下していった 路面電車は乗客が急減し経営を悪化させて撤退を余儀なくされ バスも路線の廃止やサービスの低下が進み これによって 高齢者 子供や経済的に車を持てない者が交通弱者となり 移動の機会が失われていった * 6 人 25 2 15 1 5 出典 )APTA 資料から作成 バス鉄道 LRT 路面電車公共交通全体 図 1 米国における公共交通の利用者数の推移 ( 延べ利用者数 ) 通勤の交通手段としてのドライバー 1 人が乗車する自家用車は交通混雑の主な要因であるが この割合は年々増加し 道路混雑は一層激しさを増した このため 道路インフラの整備に加えて 自動車の通行量を抑制する施策が推進され 地下鉄 LRT の整備 パークアンドライドの駐車場の整備 カープールといった相乗りの推進等が行われている カープールに関する施策としては カープールへの補助 HOV レーン (High Occupancy Vehicle Lane) いわゆるカープールレーンの整備が挙げられる HOV レーンは複数の人員が乗車する自動車のための専用車線であり 複数人員が乗車する自家用車 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季 3

やバン バスの走行が可能である 混雑する一般車線を横目に速やかに走行できることから時間短縮の メリットは大きい HOV レーンは ドライバー 1 人が乗車する自家用車から公共交通やカープールへ の転換を誘導するインセンティブとして機能している * 7 3. ライドシェアの種類 米国のライドシェアには カープール (Carpool) バンプール (Vanpool) カジュアルカープール (Casual Carpool) 等の以前から行われているもの ( 以下 伝統的ライドシェア という ) や 最近発展してきた TNC サービスがある 内容は次のとおりである *8 カープールは 一般ドライバーが自家用車に出発地や目的地が同一である者を同乗させる相乗りであり 長年にわたって多くの形態に広がっていった 情報通信技術の発達によって スマートフォンでその場で直前に申込むことも可能になった ドライバーは ガソリン代等の実費程度まで受け取れるが 利益を得ることはできない また 報酬を得ていないので 商用保険への加入は求められていない バンプールは 大型車両であるバンを利用した多くの者 (7~15 人 ) による相乗りである その費用は乗客が分担するが 中には企業や行政の補助で負担が軽減されているものもある カジュアルカープール ( スラッジング ) は 一般ドライバーが自家用車に通勤の途中で道路沿いの乗り場に並ぶ者を同乗させる相乗りで ドライバーと乗客はお互いに面識がないことが特徴である カープールとヒッチハイクを掛け合わせたものである TNC サービスは カープール バンプール カジュアルカープールといった伝統的なライドシェアリングに対して 近年急速に発展しているものである これは 212 年にカリフォルニア州サンフランシスコで始まった新たな運送サービスであり リアルタイムライドシェアリング オンデマンドライドシェアリング ライドソーシングとも呼ばれている 事業主体を TNC(Transportation Network Company) と定義し 事業主体が自ら運送せずに 事業主体が運営するプラットフォームにおいて一般ドライバーと乗客を仲介し 一般ドライバーが自家用車を用いて有償の運送サービスを提供するものである スマートフォンのアプリケーションで予約 評価 支払を行う また 料金は 地域や車種ごとに距離 時間によって決められ 乗車前の料金把握も可能である ただし 料金は乗車の需要が高い時間帯には上昇する仕組みとなっている ( サージプライシング ) 代表的な事業者には Uber Lyft がある 4.TNC サービスの利用実態 TNC サービスが始まってから 5 年程度であるにもかかわらず 利用者は急激に増加している 誰がどのような目的で利用しているのだろうか 利用者層や利用目的などを明らかにしていきたい なお TNCサービスに関する統計データがまだ少ない 本稿では複数の調査結果を紹介するものの 特定の地域 都市を対象にしているために全体の姿を示したものではなく また 調査手法や対象等も異なっているために 相互に整合性が図られていないことにご留意願いたい 4 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季

最初に紹介するのは L.Rayle ら (215) によるカリフォルニア州サンフランシスコで行われた調査研究で TNC サービスの利用者を対象に属性や利用目的等についてアンケートを行ったものである 利用者層利用者の年齢別の分布状況をみると TNC サービスは 44 歳以下が 92% 特に 34 歳以下が 73% と全体の 4 分の 3 であり 一般市民の 32% と比較しても若年層の利用が多いと言える ( 図 2) タクシーを週 1 回以上利用する者との比較でも若年層が多い傾向が見られた *9 % 6 5 4 3 2 1 15-24 25-34 35-44 45-54 55-64 65- TNC サービス利用者タクシー利用者 ( 週 1 回以上 ) サンフランシスコ市民 年齢 出典 )L.Rayle ら (215) 資料から作成図 2 サンフランシスコにおける TNC サービス等利用者の年齢別分布状況収入別の分布状況は 年収 3 万ドル未満は一般市民より少ないものの 他はほぼ同様であった ( 図 3) * 1 % 3 25 2 15 1 5-3 3-7 7-1 1-2 2- 不明 千ドル TNCサービス利用者サンフランシスコ市民出典 )L.Rayle ら (215) 資料から作成図 3 サンフランシスコにおける TNC サービス利用者の収入別分布状況 利用目的 TNC サービスを利用する移動の目的については 社交 レジャー ( レストラン バー コンサート 友人や家族への訪問 ) が 67% 通勤が 16% 公共交通への乗り継ぎが 5% 空港アクセスが 4% 買い物 用事が 3% である また 金曜日または土曜日の利用が 48% で週末の利用が多くなっている なお 聞き取り調査を夕方から夜に実施したことから 実際よりも社交 レジャーが高い割合になり 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季 5

1: 2: 3: 4: 5: 6: 7: 8: 9: 1: 11: 12: 13: 14: 15: 16: 17: 18: 19: 2: 21: 22: 23: : 通勤等は低い割合になっていると考えられている ちなみに タクシーを週 1 回以上利用する者の理由については 夜間の外出が 45% 通勤が 27% 空港アクセスが 23% 買い物や日中の活動が 14% 業務 仕事が 11% である * 11 選択理由 TNC サービスを選択する理由については 支払の容易さ (35%) 待ち時間の少なさ (3%) 目的地への速達性 (3%) 車の呼びやすさ (21%) 飲酒運転の回避 (21%) 駐車の必要がないこと (18%) 信頼性 (16%) 快適性 安全性 (12%) 他の手段よりも安い費用 (1%) 公共交通を利用できないこと (2%) が挙げられている * 12 スマートフォンのアプリケーションを利用することから 支払いの容易さ 車の呼びやすさ が上位になるのは想定したものの 待ち時間の少なさ は意外であった ライドソーシングの待ち時間はタクシーと比べてどの程度違うのだろうか タクシーを自宅へ配車する場合 待ち時間 1 分以内 の割合は平日昼間で 35% これが平日夜間や週末には 16% に下がる 一方 TNC サービスは 平日 週末を問わずに待ち時間 1 分以内が約 9% であり タクシーに比べて待ち時間は非常に短い 待ち時間の特徴としては TNC サービスが時間や場所による違いがほぼないのに対して タクシーは時間や場所によってバラつきがあり 中心部から離れるほど待ち時間が長くなっている * 13 利用時間帯カリフォルニア州公益事業委員会 (CPUC) がTNC 事業者の報告をまとめた資料によると * 14 TNC サービスの時間毎の乗車数については 17 時台から深夜にかけて利用が多くなっており 22 時台の乗車数は 12 時台の約 2 倍となっている ( 図 4) 百万人 8 7 6 5 4 3 2 1 出典 )CPUC 資料から作成 図 4 カリフォルニア州における TNC サービスの時間帯別利用者数 6 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季

百万 百万 利用距離次に TNC サービスの利用距離別の乗車割合については 1~2 マイル (1.6~3.2km) が全体の 21% と最も高く 次に 3~5 マイルの 2% 5~1 マイル 2~3 マイルの 18% となっている 5 マイル (8km) 以下が全体の 3 分の 2 を占めており 近距離の利用が多い傾向が見られる ( 図 5) 回 3 25 2 15 1 5-1 1-2 2-3 3-5 5-1 1-2 2- 出典 )CPUC 資料から作成 マイル 図 5 カリフォルニア州における TNC サービスの距離別乗車数の分布状況 さらに TNC サービスの利用料金ごとの乗車数の分布をみると 5~1 ドルが 38% 1~15 ドル が 23% 15~2 ドルが 11% 5 ドル以下が 1% であり 15 ドル以下が 7 割と大部分である ( 図 6) 回 45 4 35 3 25 2 15 1 5-5 5-1 1-15 15-2 2-25 25-3 3-4 4-5 5- ドル出典 )CPUC 資料から作成 図 6 カリフォルニア州における TNC サービスの料金別乗車数の分布状況 5. 公共交通との関係性 Shared-Use Mobility Center(SUMC) が シェアリングモビリティと公共交通の関係性を分析するた めに 米国内 7 都市の鉄道 バス TNC サービス バイクシェアリング カーシェアリングの利用者 を対象に調査を行い 以下の結果を明らかにした (7 都市 : オースティン ボストン シカゴ ロサンゼルス 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季 7

サンフランシスコ シアトル ワシントン DC) 利用時間帯時間帯別の利用状況について 一日のうち朝夕の通勤時間帯は鉄道やバスの利用が多いのに対して 夜から明け方は TNC サービスの利用が多い ( 図 7) また 平日及び週末の利用状況は 平日に鉄道 バスが高く 週末にドライバー 1 人が乗車する自家用車や TNC サービスが高い傾向がみられる 深夜や週末に TNC サービスの利用割合が高まっているのは 公共交通の運行本数 頻度が低下している時間帯であり TNC サービスが公共交通の補完的役割を果たしていると推測されるとしている *15 18 人 16 14 12 1 8 6 4 2 平日週末 5am-7am 8am-1am 11am-4pm 5pm-7pm 8pm-1pm 11pm-4am 出典 )SUMC 資料から作成 バス鉄道 TNC サービスドライバー 1 人乗車の自家用車 図 7 米国内 7 都市における TNC サービス等の時間帯別利用者の分布状況 利用頻度 TNC サービス利用時の移動目的は レクリエーションが 54% 通勤が 21% 買い物 用事が 16% である このうち通勤目的の利用者について利用頻度を見ると 当日 前日の利用は ライドソーシング TNC サービスが 24% 鉄道 バスがそれぞれ 38% である 両日を除く一週間以内の利用は ライドソーシング 37% 鉄道 バスが 22% 23% である このことから ライドソーシングを通勤目的に利用する者であっても 普段は主に鉄道やバスを利用し 状況に応じて時々ライドソーシングを利用しているという実態が分かる また 通勤利用に限らず ライドソーシングを最も多く利用すると回答した者についても 毎日の利用が 7% 一か月に 1~3 回の利用が 43% であり 時々の利用がほとんどで ある *16 代替交通手段 TNC サービスにより代替された交通手段は カーシェアリングが 24% ドライバー 1 人が乗車する自家用車が 2% 家族 友人の送迎が 14% バスが 8% 鉄道が 6% となっている ドライバー 1 人が乗車する自家用車と家族 友人の送迎をあわせた自家用車 34% 鉄道 バスの公共交通が 14% である 8 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季

( 図 8) *17 この結果から 自家用車の利用者は TNC サービス利用に転換したと推測できるが 自家用車だけでなく鉄道 バスといった公共交通の利用者も転移していると考えられる TNC サービスとサービス面で競合するタクシーについては APTA の調査結果では明らかでないことから L.Rayle(215) らの調査研究の結果を示す これによると TNC サービスの代替交通手段は タクシー 39% バス 24% 鉄道 路面電車 9% 徒歩 8% ドライバー 1 人が乗車する自家用車 6% 家族 友人による送迎 1% である *18 上記調査とは設問や対象地域が異なっており単純な比較はできないものの タクシー バスの利用が高い一方 自家用車の利用が低くなっている 公共交通の視点でみれば TNC サービスへの利用の転換で利用者が減少する一方 TNC サービスが公共交通との乗り継ぎに利用され 利用者を創出している可能性も考えられ TNC サービスの公共交通への影響はプラス マイナスのどちらとも言い難い % 3 25 2 15 1 5 出典 )SUMC 資料から作成 図 8 米国内 7 都市における TNC サービス利用者の代替交通手段 6. 最後に 米国のライドシェアについて カープール バンプール カジュアルカープール TNC サービスを述べてきた 一般的な相乗りは 一般ドライバーが自家用車で移動する際に同じ方向に向かう人を同乗させることであり 交通量の減少 燃料代の節約や大気汚染の低減に資するものである これにカープールなどが該当するのは十分理解できるが TNC サービスは 伝統的ライドシェアとの相違点も多く 相乗りに含めてよいのだろうか TNC サービスと伝統的ライドシェアの相違点としては まずは 伝統的ライドシェアは同乗者の移 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季 9

動がドライバーの移動に従属的であるのに対して TNC サービスは同乗者の移動が主目的となることが挙げられる すなわち 目的地を実質的に決定するのが伝統的ライドシェアはドライバーであるのに対して TNC サービスは乗客であるということである 二点目として 同乗者がドライバーに支払う対価が 伝統的ライドシェアが無料または実費であるのに対して TNC サービスはドライバーの利益も含めた金額であることである 三点目は 同乗に伴い生じる走行について 伝統的ライドシェアが同乗者の乗降のための迂回にとどまるのに対して TNC サービスはこれに加えて乗車申込みの多い場所における走行などが加わることが挙げられる これらの相違点を考慮すれば TNC サービスは相乗りというよりタクシー ハイヤーに近いという意見もあるであろう L.Rayle ら (214) は TNC サービスを伝統的ライドシェアとは異なるライドソーシング (ridesourcing) という別の概念による分類を試みている * 19 また TNC サービスは自動車の位置情報から乗車申込みができるアプリケーションを利用者に提供しているが この機能がタクシーの 流し営業 に相当するという見解もある 相乗りについては 資源の有効活用であり交通量の減少や大気汚染の緩和につながると一般的に考えられている TNC サービスは 確かに車両や人材の有効活用という面はあり 同方向に向かう同乗者を乗せている可能性も否定はできない しかし 1 週間当たり 35 時間以上を TNC サービスの運転手として運転する者が 15% 程度存在し * 2 彼らは他人のために運転していると言ってもよいかもしれない 走行の必要がない自家用車を乗客の求めに応じて走行させることから 道路交通や環境に新たな負荷を生じさせることになる こうなると相乗りよりタクシーに近いという見方もあろう 運輸分野における個人の財 サービスの仲介ビジネスに係る欧米諸国の動向等に関する調査研究 においては 米国の TNC サービスをライドシェアの一形態に整理したものの TNC サービスが相乗り タクシー ハイヤーのどちらに近いかという点は見解が分かれるであろう ライドシェアといっても一様ではなく様々な形態があり これらを的確に把握しつつ議論を深めていただければ幸いである 後注 *1 未来投資会議構造改革徹底推進会合 第 4 次産業革命 (Society5.) イノベーション 会合第 4 次産業革命 ( 第 4 回 ) 平成 29 年 2 月 6 日 *2 USDOT, Table 1-41: Principal Means of Transportation to Work *3 Corey. Canapary & Galanis Research 5 頁 *4 家田 岡 52-54 頁参考 *5 APTA, Appendix A: Historical Tables Table 1 *6 西村 2 頁 *7 中村 11-12 頁参考 *8 U.S. Department of Transportation Federal Highway Administration, 13,17,19 頁 *9 L.Rayle(215) ら 172 頁 *1 同上 *11 同上 1 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季

*12 上掲書 173 頁 *13 同上 *14 CPUC 33-35 頁 *15 SUMC 12-14 頁 *16 上掲書 11,15 頁 *17 上掲書 16 頁 *18 L.Rayle(215) ら 175 頁 *19 L.Rayle(214) ら 1 頁 *2 Jonathan V. Hall ら 18 頁 文献表 *U.S. Department of Transportation. National Transportation Statistics. *Corey. Canapary & Galanis Research, San Francisco Municipal Transportation Agency (SFMTA) Travel Decisions Survey 215: Summary Report *Shared-Use Mobility Center(SUMC). Shared Mobility and the Transformation of Public Transit. 216. *California Public Utilities Commission (CPUC), Safety and Enforcement Division Transportation Enforcement Branch. Summary of Transportation Network Companies Annual Reports 214 and 215 submissions. * 家田仁 岡並木編著国際交通安全学会 都市と交通研究グループ著 都市再生交通学からの回答 学芸出版社 23 年 * 西村弘 クルマ社会アメリカの模索 白桃書房 1998 年 * American Public Transportation Association(APTA). Public Transportation 216 Fact Book. 217. * 中村実男 米国における道路混雑対策 -HOV レーンの成果と課題 - 明大商学論叢 第 92 巻第 1 号 21 年 * U.S. Department of Transportation, Federal Highway Administration (USDOT, FTA). Shared Mobility: Current Practices and Guiding Principles. 216. *Lisa Rayle, Danielle Dai, Nelson Chan, Robert Cervero, Susan Shaheen. Just a better taxi? A survey-based comparison of taxis, transit, and ridesourcing services in San Francisco. 215. *Lisa Rayle, Susan. Shaheen, Nelson Chan, Danielle Dai, Robert Cervero. App-Based, On- Demand Ride Services: Comparing Taxi and Ridesourcing Trips and User Characteristics in San Francisco. University of California Transportation Center, 214. *Jonathan V. Hall, Alan B. Krueger. An analysis of the Labor Market for Uber s Driver-Partners in the United States. 215. 国土交通政策研究所報第 65 号 217 年夏季 11