トワーク 構 造 を 分 析 することで, 遺 伝 子 が 変 異 したときに 何 が 起 こるか 予 測 することができる. 遺 伝 子 ネットワークは 大 変 膨 大 なものであり, 複 雑 な 連 結 成 分 を 含 むため,そのままでは 解 釈 や 把 握 が 困 難 である.よ って, 何



Similar documents
<4D F736F F D2088E293608E71836C F815B834E89C28E8B89BB2E646F63>

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

表紙

KINGSOFT Office 2016 動 作 環 境 対 応 日 本 語 版 版 共 通 利 用 上 記 動 作 以 上 以 上 空 容 量 以 上 他 接 続 環 境 推 奨 必 要 2

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

積 載 せず かつ 燃 料 冷 却 水 及 び 潤 滑 油 の 全 量 を 搭 載 し 自 動 車 製 作 者 が 定 める 工 具 及 び 付 属 品 (スペアタイヤを 含 む )を 全 て 装 備 した 状 態 をいう この 場 合 に おいて 燃 料 の 全 量 を 搭 載 するとは 燃 料

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

m07 北見工業大学 様式①

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

1 書 誌 作 成 機 能 (NACSIS-CAT)の 軽 量 化 合 理 化 電 子 情 報 資 源 への 適 切 な 対 応 のための 資 源 ( 人 的 資 源,システム 資 源, 経 費 を 含 む) の 確 保 のために, 書 誌 作 成 と 書 誌 管 理 作 業 の 軽 量 化 を 図

SXF 仕 様 実 装 規 約 版 ( 幾 何 検 定 編 ) 新 旧 対 照 表 2013/3/26 文 言 変 更 p.12(1. 基 本 事 項 ) (5)SXF 入 出 力 バージョン Ver.2 形 式 と Ver.3.0 形 式 および Ver.3.1 形 式 の 入 出 力 機 能 を

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

1 調査名称:太田市総合交通体系調査

続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

(2) 広 島 国 際 学 院 大 学 ( 以 下 大 学 という ) (3) 広 島 国 際 学 院 大 学 自 動 車 短 期 大 学 部 ( 以 下 短 大 という ) (4) 広 島 国 際 学 院 高 等 学 校 ( 以 下 高 校 という ) ( 学 納 金 の 種 類 ) 第 3 条

一般競争入札について

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

Taro-給与公表(H25).jtd

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

スライド 1

<4D F736F F D208E52979C8CA78E598BC68F5790CF91A390698F9590AC8BE08CF D6A2E646F6378>

<8BB388F58F5A91EE82A082E895FB8AEE967B95FB906A>

平成17年度高知県県産材利用推進事業費補助金交付要綱

別紙3

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>


第4回税制調査会 総4-1

18 国立高等専門学校機構

01.活性化計画(上大久保)

測量士補 重要事項「写真地図作成」

主要生活道路について

(別紙3)保険会社向けの総合的な監督指針の一部を改正する(案)

PowerPoint プレゼンテーション

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

総合評価点算定基準(簡易型建築・電気・管工事)

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 135, , , , , ,600

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

佐渡市都市計画区域の見直し


Microsoft Word - 交野市産業振興基本計画 doc

Microsoft Word - 公表資料(H22).doc

大田市固定資産台帳整備業務(プロポーザル審査要項)

2 県 公 立 高 校 の 合 格 者 は このように 決 まる (1) 選 抜 の 仕 組 み 選 抜 の 資 料 選 抜 の 資 料 は 主 に 下 記 の3つがあり 全 高 校 で 使 用 する 共 通 の ものと 高 校 ごとに 決 めるものとがあります 1 学 力 検 査 ( 国 語 数

1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地


する 婦 人 相 談 所 その 他 適 切 な 施 設 による 支 援 の 明 記 禁 止 命 令 等 をすることが できる 公 安 委 員 会 等 の 拡 大 等 の 措 置 が 講 じられたものである 第 2 改 正 法 の 概 要 1 電 子 メールを 送 信 する 行 為 の 規 制 ( 法

募集新株予約権(有償ストック・オプション)の発行に関するお知らせ

<81696D373188A E58A77816A E93788D9191E5834B C8EAE82502E786C73>

(2) 国 道 196 号 自 転 車 走 行 空 間 社 会 実 験 ( 平 成 21 年 度 ) 概 要 松 山 市 内 の 国 道 196 号 において 自 転 車 レーンを 設 置 する 社 会 実 験 を 実 施 し 歩 行 者 と 自 転 車 の 分 離 による 走 行 空 間 の 安

<4D F736F F D208DE3905F8D8291AC8B5A8CA48A948EAE89EF8ED0208BC696B18BA492CA8E64976C8F BD90AC E378C8E89FC92F994C5816A>

公 営 企 業 職 員 の 状 況 1 水 道 事 業 1 職 員 給 与 費 の 状 況 ア 決 算 区 分 総 費 用 純 利 益 職 員 給 与 費 総 費 用 に 占 める ( 参 考 ) 職 員 給 与 費 比 率 22 年 度 の 総 費 用 に 占 A B B/A める 職 員 給 与

<4D F736F F D B83578F4390B E797748CA E88E68E7792E88AEE8F805F48508C668DDA95AA816A E646F63>

慶應義塾利益相反対処規程

Taro-学校だより学力調査号.jtd

一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 3 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 級 3 級 4 級 5 級 6 級 単 位 : ( ) 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 137, 163,7 4,9 31,4 71, 33,3 359,7 最 高 号 給 の 給 料 月 額

目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 が 無 い た め 記 載 し て お り ま せ ん 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 ( 参 考 ) 区 分 民 間 給 与 A 公 務 員 給 与 B 較 差 A - B 勧 告 ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 国 の 改

16 日本学生支援機構

島根大学における学生等の授業料その他の費用に関する規則

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

Microsoft Word - 不正アクセス行為の禁止等に関する法律等に基づく公安

波佐見町の給与・定員管理等について

いう )は 警 告 をしたときは 速 やかに その 内 容 及 び 日 時 を 当 該 警 告 を 求 める 旨 の 申 出 をした 者 に 通 知 しなければならないこととされ また 警 告 をし なかったときは 速 やかに その 旨 及 び 理 由 を 当 該 警 告 を 求 める 旨 の 申

資料2-2 定時制課程・通信制課程高等学校の現状

者 が 在 学 した 期 間 の 年 数 を 乗 じて 得 た 額 から 当 該 者 が 在 学 した 期 間 に 納 付 すべき 授 業 料 の 総 額 を 控 除 した 額 を 徴 収 するものとする 3 在 学 生 が 長 期 履 修 学 生 として 認 められた 場 合 の 授 業 料 の

東京都立産業技術高等専門学校

Taro-08国立大学法人宮崎大学授業

1

2 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 静 岡 県 国 類 似 団 体 2 技 能 労 務 職 区 41.8 歳 42.6 歳 43.5

<4D F736F F D203193FA8AD45F95CA8E86325F89898F4B315F94F093EF8AA98D AD97DF914F82CC8FEE95F182CC8EFB8F C28E8B89BB2E646F63>

(3) その 他 市 長 が 必 要 と 認 める 書 類 ( 補 助 金 の 交 付 決 定 ) 第 6 条 市 長 は 前 条 の 申 請 書 を 受 理 したときは 速 やかにその 内 容 を 審 査 し 補 助 金 を 交 付 すべきものと 認 めたときは 規 則 第 7 条 に 規 定 す

(3) 善 通 寺 市 の 状 況 善 通 寺 市 においては 固 定 資 産 税 の 納 期 前 前 納 に 対 する 報 奨 金 について 善 通 寺 市 税 条 例 の 規 定 ( 交 付 率 :0.1% 限 度 額 :2 万 円 )に 基 づき 交 付 を 行 っています 参 考 善 通 寺

< EC8E F58B8B975E8CF6955C8CB48D652E786C73>

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

公表表紙

Transcription:

平 安 京 ビュー を 用 いた 階 層 型 遺 伝 子 ネットワークの 可 視 化 西 山 慧 子 伊 藤 貴 之 お 茶 の 水 女 子 大 学 大 学 院 E-mail : {nishy, itot}@itol.is.ocha.ac.jp 概 要 遺 伝 子 ネットワークとは, 各 遺 伝 子 をノードとし, 遺 伝 子 間 をエッジで 接 続 して 構 築 されるデータである. 数 千, 数 万 といった 大 量 の 遺 伝 子 群 で 構 成 される 遺 伝 子 ネットワークには, 複 雑 な 連 結 成 分 を 含 むことが 多 く,その 解 釈 や 把 握 が 困 難 な 場 合 も 多 い. 本 論 文 では, 遺 伝 子 群 にクラスタリングとネットワーク 化 を 同 時 に 適 用 して 構 築 される, 階 層 型 ネットワークデー タを 対 象 とした 可 視 化 手 法 を 提 案 する. 提 案 手 法 では, 各 々の 遺 伝 子 は 数 種 類 の 発 現 率 を 持 つと 仮 定 し,その 発 現 率 の 相 関 性 の 高 さによりクラスタリングを 行 う.それと 同 時 に 提 案 手 法 では, 発 現 率 の 相 関 性 が 高 い 遺 伝 子 間 をエッジ で 連 結 することにより,ネットワークデータも 同 時 に 生 成 する. 提 案 手 法 ではこの 遺 伝 子 ネットワークデータを, 大 規 模 階 層 型 データ 可 視 化 手 法 平 安 京 ビュー の 拡 張 手 法 を 用 いて 可 視 化 する. 提 案 手 法 を 用 いることにより, 遺 伝 子 学 の 研 究 者 は, 膨 大 な 遺 伝 子 群 の 中 から, 特 定 の 遺 伝 子 の 相 互 関 係 を 分 析,あるいは 興 味 深 い 特 徴 を 持 つ 遺 伝 子 の 発 見,などが 容 易 になるものと 考 えられる. なお 本 論 文 は 遺 伝 子 ネットワークの 可 視 化 を 試 みるものであるが, 提 案 手 法 における 階 層 型 ネットワークデータの 可 視 化 手 法 は, 拡 大 性 とランダム 性 の 高 い 複 雑 ネットワークと 呼 ばれるネットワーク 全 般 に 適 用 可 能 な, 応 用 範 囲 の 広 い 可 視 化 手 法 である. Visualization of Hierarchical Gene Network Using HeiankyoView Keiko Nishiyama Takayuki Itoh Graduate School of Humanities and Sciences, Ochanomizu University Abstract Gene network is a network that denotes each gene as node and connects pairs of genes by edges. It composes of a large amount of gene cluster, and therefore they contain complex connected elements, which are often difficult to interpret and grasp. This report presents a technique for visualizing hierarchical gene network data, constructed by clustering and networking techniques. The technique assumes that each gene has multiple expression rate values, and they are clustered and networked according to the correlation of the expression rate values. We visualize the data by using the enhanced "HeiankyoView", which has been originally presented as a large-scale hierarchical data visualization technique. Our technique makes easier to analyze specific genes and discover genes which has interesting features. 1. はじめに 情 報 可 視 化 は 世 の 中 にある 一 般 的 な 情 報 を 可 視 化 する 研 究 分 野 [1]である.その 応 用 範 囲 は 非 常 に 広 いが, 最 近 では 特 に 生 物 情 報 の 可 視 化 の 研 究 が 活 発 に 進 められている. 生 物 情 報 の 中 でも 特 に 急 速 に 研 究 が 進 んでいる 分 野 に, 遺 伝 子 (ゲノ ム) 解 析 があげられる. 現 在 既 に,ヒトゲノム 解 読 は 完 了 し ているといわれているが,これは DNA を 構 成 する 塩 基 配 列 が 解 読 されたというだけであり,その 遺 伝 子 の 振 る 舞 いなど は,はっきり 分 かっていない.そこで 現 在 その 遺 伝 子 の 振 舞 いについての 研 究 が 必 要 とされている.その 中 でもマイクロ アレイデータ[2]からの 遺 伝 子 ネットワーク 同 定 問 題 は,バイ オインフォマティックス 分 野 における 重 要 なトピックのひと つであると 言 える. 遺 伝 子 ネットワークとは, 各 遺 伝 子 をノードとし, 遺 伝 子 間 にエッジがあるようなネットワーク 構 造 で,ゲノム 上 での 位 置 関 係, 代 謝, 制 御 パスウェイ 上 での 隣 接 関 係, 転 写 時 の 共 発 現 率, 蛋 白 質 相 互 作 用 など, 多 くの 性 質 を 表 現 するため に 用 いられる. 遺 伝 子 ネットワークは 多 くの 場 合 において 無 向 グラフとして 扱 われるが,パスウェイなどの 遷 移 関 係 を 表 す 場 合 に 限 って 有 向 グラフとして 扱 われる.このようなネッ 106

トワーク 構 造 を 分 析 することで, 遺 伝 子 が 変 異 したときに 何 が 起 こるか 予 測 することができる. 遺 伝 子 ネットワークは 大 変 膨 大 なものであり, 複 雑 な 連 結 成 分 を 含 むため,そのままでは 解 釈 や 把 握 が 困 難 である.よ って, 何 らかの 方 法 でより 興 味 深 い 遺 伝 子 群 を 抽 出 し, 注 目 すべき 対 象 を 絞 り 込 むことが 必 要 である.しかしながら 常 に 目 的 に 叶 った 結 果 を 得 る 事 ができていないというのが 現 状 で ある. 情 報 可 視 化 はこのような 目 的 において 非 常 に 有 効 であ ると 考 えられる. A B C D E F 遺 伝 子 群 B,E 図 1. クラスタ 生 成 の 一 例 A,D C,F クラスタリング 結 果 1 A,B,E D C,F クラスタリング 結 果 2 B E 本 論 文 では, 数 万 から 数 十 万 の 遺 伝 子 発 現 を 一 度 に 調 べる ことが 可 能 である,マイクロアレイデータを 参 照 して 各 遺 伝 子 に 数 種 類 の 発 現 率 を 仮 定 し,この 相 関 性 の 高 さで 遺 伝 子 を クラスタリングし,さらに 相 関 性 の 高 い 遺 伝 子 同 士 をエッジ で 接 続 した 階 層 型 ネットワークデータを 想 定 する.このとき 図 1 で 示 すように,クラスタリングの 方 法 や 実 行 条 件 によっ て,クラスタリング 結 果 はさまざまに 変 化 する. 図 1 より, Aは{B,E},{D},{C,F}の 3 組 の 遺 伝 子 と 同 一 のクラスタに 属 す る 可 能 性 があるといえる.このことより,Aは 複 数 の 遺 伝 子 の 機 能 を 同 時 に 持 つ 遺 伝 子 かもしれない,と 予 測 できる.こ のように,2 種 以 上 の 遺 伝 子 の 機 能 を 同 時 にもつ 遺 伝 子 は, マルチドメインと 呼 ばれ,この 発 見 は 遺 伝 子 分 析 の 中 でも 興 味 深 い 問 題 である.しかし 1 つのクラスタリング 結 果 だけを 可 視 化 しても,このような 特 性 は 発 見 しにくい.このような 現 象 は, 遺 伝 子 クラスタリング 結 果 と 遺 伝 子 ネットワークを 組 み 合 わせて 可 視 化 することにより,その 存 在 が 理 解 しやす くなると 考 えられる. 本 論 文 では, 遺 伝 子 群 に 対 してクラスタリングとネットワ ーク 化 を 同 時 に 適 用 して 生 成 される, 階 層 型 ネットワークデ ータの 可 視 化 手 法 を 提 案 する. 提 案 手 法 は 図 2 に 示 すような, 異 なるクラスタ 間 をまたいで 相 関 性 を 有 する 遺 伝 子 間 をエッ ジで 表 現 することで,マルチドメインに 代 表 される 遺 伝 子 の 興 味 深 い 現 象 の 発 見 に 貢 献 するものである. 提 案 手 法 では 情 報 可 視 化 手 法 平 安 京 ビュー [3]を 用 いてクラスタリング 結 D クラスタリング 結 果 3 A C F 果 を 階 層 型 データとして 可 視 化 し,それにエッジを 重 ねて 描 くことにより 階 層 型 ネットワークデータを 表 現 する. なお 本 論 文 が 提 案 する 階 層 型 ネットワークデータ 可 視 化 手 法 は,3.4 節 にて 後 述 するとおり, 大 規 模 かつランダム 性 の 高 い 複 雑 ネットワーク 全 般 に 適 用 できる,きわめて 適 用 範 囲 の 広 い 手 法 である. A D B E C,F 図 2. クラスタにネットワークを 重 ねた 一 例 2. 関 連 研 究 2.1 遺 伝 子 情 報 の 可 視 化 遺 伝 子 情 報 は 大 規 模 かつ 複 雑 な 性 質 をもつことが 多 い.そ のため,その 全 貌 を 理 解 するために 情 報 可 視 化 技 術 は 有 用 で あると 考 えられる. 特 に,3 章 で 後 述 するマイクロアレイか ら 得 られる 遺 伝 子 情 報 の 可 視 化 は, 近 年 活 発 に 議 論 されてお り,その 諸 手 法 を 比 較 する 論 文 も 発 表 されている[4]. マイクロアレイから 得 られる 遺 伝 子 情 報 は, 一 般 的 には 遺 伝 子 名 および 実 験 方 法 を 行 と 列 にする 表 形 式 データとして 与 えられる.このような 表 形 式 データを 可 視 化 する 最 も 単 純 な 方 法 は, 表 の 構 造 をそのまま 画 面 上 に 表 現 する 技 術 である. 遺 伝 子 分 析 の 分 野 で 最 も 有 名 な TreeView[5]というオープン ソースの 可 視 化 技 術 は,まさに 遺 伝 子 名 と 実 験 方 法 を 行 と 列 にした 表 形 式 の 可 視 化 を 実 現 している. しかし 遺 伝 子 情 報 に 限 らず, 表 形 式 デー タの 中 には, 情 報 が非 常 に 大 規 模 かつ 疎 であるものも 多 い.そのため,このよ うなデータをそのまま 表 として 表 示 することは, 画 面 空 間 の 有 効 利 用 の 点 で 必 ずしも 合 理 的 であるとは 限 らない.これを 改 善 する 一 案 として, 表 形 式 データからクラスタリングによ って 形 成 される 階 層 型 データ,あるいはゼロでない 値 をもつ 行 と 列 を 連 結 して 形 成 されるネットワークデータに 変 換 して から 表 示 する,という 試 みが 多 く 行 われている[6]. 本 論 文 の 提 案 手 法 は,この 考 え 方 に 基 づき, 表 形 式 データとして 与 え られる 遺 伝 子 情 報 を, 階 層 型 ネットワークデータに 変 換 して 可 視 化 するものである. 近 年 では, 表 形 式 データを 表 のまま 可 視 化 する 手 法 と, 木 構 造 やグラフに 変 換 して 可 視 化 する 手 法 との 比 較 に 関 する 研 究 も 発 表 されている[7]. 2.2 ネットワークデータの 可 視 化 ネットワークデータの 可 視 化 手 法 は,すでに 多 様 な 観 点 か 107

らの 研 究 が 進 んでいる.ネットワークデータのノード 位 置 の 算 出 のために 力 学 モデルを 用 いた 手 法 [8]や, 大 規 模 ネットワ ークの 部 分 拡 大 表 示 [9]やインクリメンタルな 表 示 [10,11]を 実 現 した 手 法 などは,この 研 究 分 野 を 活 性 化 した 代 表 的 な 研 究 成 果 といえる.またウェブのリンク 構 造 の 可 視 化 [12]をはじめ として,ネットワークデータの 可 視 化 の 応 用 分 野 の 開 拓 も 活 発 に 進 んでいる. 複 雑 に 絡 むネットワークデータ 中 の 注 目 部 分 をわかりやす く 表 示 するための 代 表 的 な 手 法 として,3 次 元 的 な 引 き 上 げ 操 作 により, 注 目 ノード,および 注 目 ノードとエッジで 連 結 されているノードも 連 鎖 的 に 引 き 上 げて 表 示 する 納 豆 ビュ ー という 手 法 が 報 告 されている[13]. 本 論 文 の 提 案 手 法 は, 納 豆 ビューに 類 似 した 考 え 方 で,ネットワークデータ 中 の 注 目 部 分 を 3 次 元 表 示 するものである. 2.3 階 層 型 データの 可 視 化 階 層 型 データの 可 視 化 手 法 の 著 名 な 手 法 の 中 には, 階 層 構 造 を 木 構 造 として 表 現 する 手 法 と, 階 層 構 造 の 末 端 にあたる 葉 ノードを 2 次 元 的 に 画 面 空 間 に 展 開 する 手 法 がある. 前 者 の 中 で 有 名 な 手 法 には,Hyperbolic Tree[14]や Cone Tree[15] があげられる. 後 者 の 中 で 有 名 な 手 法 には, 画 面 空 間 の 2 次 元 的 分 割 により 葉 ノードを 一 括 表 示 する TreeMaps[16]があげ られる. 本 論 文 の 提 案 手 法 が 用 いる 階 層 型 データ 可 視 化 手 法 平 安 京 ビュー も, 後 者 に 属 する 手 法 である. 本 論 文 では 大 量 の 遺 伝 子 情 報 を 一 画 面 に 展 開 して 一 括 表 示 することを 目 的 としているため, 後 者 のような 階 層 型 データ 可 視 化 手 法 の ほうが 適 切 であると 考 えられる. 階 層 構 造 とネットワーク 構 造 の 両 者 を 併 せ 持 つ 可 視 化 技 術 は, 近 年 になって 活 性 化 している 研 究 分 野 である. 旧 来 の 研 究 の 例 として,3 次 元 的 に 階 層 構 造 を 表 現 するネットワーク データ 可 視 化 手 法 [17]や,クラスタごとにズーム 値 を 変 えた 2 次 元 的 なネットワークデータ 可 視 化 手 法 [18]などが 知 られて いる.また 近 年 では,Cone Tree や TreeMaps などの 既 存 の 階 層 型 データ 可 視 化 手 法 にネットワークデータを 付 加 する 形 式 の 可 視 化 手 法 [19,20]が 発 表 されると 同 時 に,その 画 面 上 の 混 雑 を 回 避 するためのネットワークデータの 曲 線 化 に 関 する 手 法 [6]も 発 表 されている. 本 論 文 の 提 案 手 法 では[6,19,20]と 同 様 に, 階 層 型 データ 可 視 化 手 法 にネットワークデータを 付 加 する 形 で, 階 層 構 造 とネットワーク 構 造 の 両 者 をあわせもつ 情 報 を 可 視 化 するものである. 2.4 階 層 型 データ 可 視 化 手 法 平 安 京 ビュー 本 論 文 の 提 案 手 法 では, 平 安 京 ビュー [21]を 用 いて 遺 伝 子 情 報 の 階 層 構 造 を 可 視 化 する. 平 安 京 ビュー は, 階 層 型 データの 葉 ノードを 長 方 形 のアイコンで, 枝 ノードを 長 方 形 の 枠 で 表 現 し, 階 層 構 造 を 2 次 元 の 長 方 形 群 の 入 れ 子 構 造 で 表 現 し,これらをできるだけ 小 さい 画 面 空 間 に 配 置 すること で, 階 層 型 データ 全 体 を 一 画 面 に 表 示 する. この 手 法 は 2.2 節 でも 論 じたように, 階 層 型 データ 中 の 葉 ノードと 枝 ノードの 親 子 関 係 よりも, 階 層 型 データ 全 体 に 分 布 する 葉 ノード 群 を 全 て 一 画 面 に 表 現 することに 主 眼 をおい た 視 覚 化 手 法 である. 図 3. 平 安 京 ビュー による 大 規 模 階 層 型 データの 可 視 化 の 例 平 安 京 ビューの 特 徴 の 一 つに, 階 層 型 データを 構 成 する全 て の葉 ノードを, 同 じ 大 きさ 同 じ 形 状 で,かつ 画 面 上 で 全 く重 なり 合 わないように 表 示 する 点 がある. 提 案 手 法 におい て 遺 伝 子 情 報 を 画 面 上 で 探 索 する 際 に, 全 ての 遺 伝 子 が 平 等 に 同 じ 大 きさで,かつ 画 面 上 で 重 ならないように 表 示 される ことは 重 要 である. 同 じような 特 徴 を 有 する 階 層 型 データ 可 視 化 手 法 に,TreeMaps[15]から 派 生 した Quantum Treemap[21] という 手 法 がある.Quantum Treemap と 平 安 京 ビュー の 実 行 結 果 は 文 献 [22,23]にて 数 値 比 較 されている.この 比 較 結 果 によると 平 安 京 ビュー は, 部 分 領 域 のアスペクト 比, 類 似 データ 間 の 可 視 化 結 果 の 類 似 度,の2 点 においてQuantum Treemap よりも 大 幅 に 良 好 な 結 果 をあげている.これらの 利 点 もまた, 階 層 化 された 遺 伝 子 情 報 の 可 視 化 に 有 用 であると 考 えられる. 3. 提 案 内 容 3.1 本 論 文 が 対 象 とするデータ DNA マイクロアレイとは,スライドガラスやシリコンなど の 基 板 上 に, 数 千 数 万 のスポットが 配 置 され, 各 スポットに 一 種 類 ずつ DNA や 遺 伝 子 を 固 定 し, 整 列 配 置 (アレイ 化 ) したものの 総 称 したものである.このスライドガラスに, 化 学 反 応 実 験 を 施 すと, 反 応 するスポットだけが 蛍 光 する. 各 108

スポットの 蛍 光 強 度 をスキャナで 読 み 取 ることにより, 発 現 率 傾 向 を 採 取 し, 数 千 から 数 万 の 遺 伝 子 発 現 情 報 を 一 度 の 実 験 で 採 取 可 能 になっている. また 遺 伝 子 は, 複 数 の 塩 基 により 構 成 されており, 遺 伝 子 の 発 現 率 とは, 一 般 的 に 遺 伝 子 を 構 成 する 塩 基 群 の 中 の 反 応 し た塩 基 の 確 率 を 指 す. 本 論 文 で 扱 う 遺 伝 子 ネットワークとは,このDNAマイクロ アレイから 採 取 される 遺 伝 子 の 発 現 率 を 元 に, 構 築 されるネ ットワークを 示 す. 遺 伝 子 ネットワークの 構 築 手 法 には,グ ラフィカル ガウシアンモデルを 用 いた 手 法 [24] 等 が 知 られ ている.また 推 定 された 遺 伝 子 ネットワークの 実 用 例 として, 薬 剤 ターゲット 遺 伝 子 の 同 定 [25,26] 等 も 発 表 されている. 3.2 階 層 型 遺 伝 子 ネットワークデータの 構 築 提 案 手 法 は,m 個 のマイクロアレイ 上 に n 個 の 遺 伝 子 があ り,その 各 々の 発 現 率 が 実 数 値 として 与 えられているとする. 提 案 手 法 では,この 実 数 値 から m n の 表 形 式 データを 構 築 し,n 個 の 遺 伝 子 の 発 現 率 を m 次 元 ベクタとして 扱 うとする. そしてクラスタリングによって, 発 現 率 傾 向 の 近 い 遺 伝 子 が 同 一 のクラスタに 属 するような 階 層 構 造 を 構 築 し,この 構 造 を 平 安 京 ビューで 表 示 可 能 な 階 層 型 データに 変 換 する.さら に,この 階 層 型 データにネットワークデータを 重 ねるように 表 示 することで, 階 層 型 ネットワークデータを 可 視 化 する. 提 案 手 法 におけるクラスタリングおよびネットワーク 化 の 手 順 の 概 要 を 図 4 に 示 す. たとすると, 平 安 京 ビューによる 階 層 型 データ 可 視 化 結 果 は 図 5( 下 )のようになる. 8 S 2 c1 c4 7 6 c2 c5 c3 図 5. ( 上 ) 階 層 的 なクラスタリング ( 下 ) 平 安 京 ビューにより 表 示 されたクラスタ 5 4 0 1 r ij S 1 3 c6 2 c8 1 c9 c7 c c c 3 c4 c5 c6 c7 c8 c9 1 2 続 いてネットワーク 化 の 手 順 について 説 明 する. 任 意 の 2 個 のノード( 遺 伝 子 )を nodea, nodeb とし,m 種 類 のマイク ロアレイに 対 する 発 現 率 が 与 えられているとする.さらに, nodea の 発 現 率 を A = { a1, a2..., am} nodeb の 発 現 率 を B = b, b..., b } { 1 2 m とする.このときnodeAとnodeBの 発 現 率 同 士 の 相 関 性 を, r 図 4. 階 層 型 データへの 変 換 我 々の 実 装 では,Cluster 3.0 [27]というクラスタリングソフ トウェアに 実 装 されている 階 層 的 クラスタリングアルゴリズ ムを 適 用 して, 階 層 型 データを 構 築 する. 図 5( 上 )において, クラスタをc 1 ~c 9 とすると, 提 案 手 法 では 距 離 が 近 いクラスタ に 対 して 併 合 処 理 を 反 復 することで,デンドログラムを 作 成 し, 階 層 的 クラスタリングを 実 現 する.このときクラスタ 間 距 離 に 複 数 の 閾 値 を 設 け,この 閾 値 より 距 離 の 小 さいクラス タを 一 階 層 に 収 める,という 処 理 を 反 復 することで 階 層 型 デ ータを 構 築 する. 仮 に 図 5( 上 )に 示 すS 1,S 2 の 2 つの 閾 値 を 設 け 以 下 の 式 で 算 出 する. r d = 1.0 D max ただし d は A,B 間 のユー クリッド 距 離 の 2 乗 で, d = で 示 される. (1) m 2 ( ai bi ) (2) i= 1 D max は,すべてのノードの 組 み 合 わせにお ける d の 最 大 値 である. 提 案 手 法 では, 値 が 一 定 値 よ り大 きい 時,この 2 つのノードを 接 続 するエッジを 表 示 する. r 109

以 上 の算 出 式 は,クラスタリングに 使 用 したソフトウェア Cluster3.0 に 導 入 された 算 出 式 である.クラスタリングとネッ トワーク 生 成 の 結 果 に 一 貫 性 を 持 たせるため, 提 案 手 法 でも Cluster3.0 と 同 様 に,ユークリッド 距 離 空 間 を 用 いてネットワ ークを 生 成 した. 原 理 的 にはユークリッド 距 離 空 間 以 外 の 距 離 空 間 ( 例 えばマンハッタン 距 離 空 間 )も 採 用 可 能 であるが, その 有 効 性 について 我 々はまだ 検 証 していない. 以 上 の 処 理 により 遺 伝 子 データは, 以 下 の 要 素 から 構 成 さ れる 階 層 型 ネットワークに 変 換 される. 遺 伝 子 を 表 現 するノード N = { n,..., n } 1 n ノード 2 個 を 連 結 する p 本 のエッジ e = { ni, n j ), E = { e1,..., ep} 1 個 以 上 のノードで 構 成 される q 個 のクラスタ c = { ni,..., n j ), C = { c1,..., cq} D = { N, E, C 3.3 階 層 型 ネットワークデータの 可 視 化 階 層 型 ネットワークデータ } 本 論 文 では 1 章 にて 述 べたとおり, 遺 伝 子 群 にクラスタリ ングとネットワーク 化 の 両 方 を 適 用 した 階 層 型 ネットワーク データの 可 視 化 手 法 を 提 案 する. 提 案 手 法 は 以 下 の 機 能 性 を 重 視 した 手 法 である. (1) できるだけ 多 くの 遺 伝 子 を 一 画 面 に,クラスタ 単 位 で 表 示 できること (2) 注 目 したい 任 意 の 遺 伝 子 を 強 調 でき,その 遺 伝 子 と 相 関 性 の 高 い 遺 伝 子 の 分 布 を 理 解 しやすいこと まず(1)を 満 たすために, 提 案 手 法 では 2.4 節 で 紹 介 した 平 安 京 ビュー を 用 いて, 遺 伝 子 を 表 すノード 群 N を 均 一 な 大 きさの 正 方 形 で 表 現 し,クラスタ 群 C を 長 方 形 の 枠 で 表 現 す る.これらのノードは 画 面 上 でクリッカブルな 状 態 で 表 示 さ れている.このため,クリック 操 作 によって 遺 伝 子 の 詳 細 情 報 などを 提 示 するような GUI を 構 築 することも 可 能 である. 続 いて(2)を 満 たすために 提 案 手 法 では, 特 定 の 遺 伝 子 を 表 すノード( 以 下, 注 目 ノードと 称 する)をユーザに 指 定 させ, エッジ 群 E の 中 から 注 目 ノードに 連 結 されているエッジだけ を 表 示 する.さらに 提 案 手 法 では, 注 目 ノード,および 注 目 ノードから 直 接 エッジで 連 結 されているノード( 以 下, 連 結 ノードと 称 する)を 3 次 元 的 に 表 示 する.ここで x,y,z の 3 軸 で 構 成 される 直 交 座 標 系 を 仮 定 し, 平 安 京 ビュー による N および C の 画 面 配 置 結 果 を 平 面 z=0 上 に 表 示 するとする. 提 案 手 法 では, 注 目 ノード 連 結 ノード 以 外 のノードは z=0 上 の 正 方 形 として 平 面 的 に 描 画 するが, 注 目 ノード 連 結 ノー ドはこの 正 方 形 を 底 面 とする 角 柱 として 立 体 的 に 描 画 する. このような 立 体 的 な 描 画 を 適 用 することを, 本 論 文 では 以 下 z 軸 方 向 に 沿 って 引 き 上 げる と 称 する.この 引 き 上 げる 操 作 により, 提 案 手 法 では 注 目 ノードと 連 結 ノードの 接 続 性 を 強 調 表 現 することが 可 能 になる. 我 々の 実 装 では, 平 安 京 ビューの 画 面 上 で 注 目 ノードをクリックするか,または 検 索 エンジンのようなキーボード 入 力 によるGUI で 注 目 ノードを 指 定 すると,その 注 目 ノードおよび 連 結 ノードを,z 軸 方 向 に 引 き 上 げて 表 示 する. 一 般 的 に, 膨 大 な 遺 伝 子 群 の 中 から, 注 目 すべき 興 味 深 い 遺 伝 子 を 視 覚 的 に 発 見 することは 容 易 ではない.ここで 本 研 究 の 目 的 において,クラスタ 間 をまたぐエッジを 多 く 持 つ 遺 伝 子 は,マルチドメインなどの 興 味 深 い 現 象 をもつ 遺 伝 子 で ある 可 能 性 が 高 い.そこで 提 案 手 法 では,クラスタ 間 をまた ぐエッジを 一 定 以 上 有 するノードを,あらかじめ 所 定 の 色 で 表 示 する.これにより, 特 殊 な 反 応 のありそうな 遺 伝 子 群 を 発 見 しやすくできる. 3.4 提 案 手 法 の 応 用 例 世 の 中 には, 様 々なネットワークデータが 存 在 する. 本 論 文 では, 遺 伝 子 をノードとし, 相 関 性 の 高 い 遺 伝 子 をエッジ で連 結 するネットワークを 対 象 としているが,このネットワ ークは 近 年 注 目 されている 複 雑 ネットワーク の 一 種 であ ると 考 えられる. 複 雑 ネットワークとは, 際 限 ない 拡 大 性 を 有 し,ランダム 度 の 高 いリンク 構 造 を 有 するネットワークの 総 称 である. 特 に近 年 では 情 報 技 術 の 発 達 により, 多 くの 分 野 において 複 雑 ネットワークが 見 られる. 例 えば 以 下 のようなネットワーク は, 複 雑 ネットワークの 一 種 であると 考 えられる. 文 書 データベースに 出 現 するキーワード 間 の 相 関 性 か ら 構 築 したネットワーク. 計 算 機 のアクセス 履 歴,コンピュータウィルスの 感 染 経 路 などのログから 構 築 したネットワーク. ニューロンやタンパク 質 の 情 報 伝 達 経 路 から 構 築 した ネットワーク. 会 社 や 社 会 の 人 間 関 係 における 様 々な 人 間 関 係 のネッ トワーク. ウェブのリンク 構 造 のネットワーク. 本 論 文 の 提 案 手 法 は, 遺 伝 子 ネットワークに 限 らず, 上 記 のような 複 雑 ネットワーク 全 般 に 適 用 可 能 な, 応 用 範 囲 の 広 い手 法 であると 考 えられる. 4. 実 行 結 果 我 々は 提 案 手 法 を Java SDK 1.5 で 実 装 し,COMPAQ EvoD510 CMT (CPU 2.8GHz, RAM 1GB) 上 で 実 行 した.オペ レーティングシステムには Windows XP を 用 い,ディスプレ 110

イ 解 像 度 は 1024x768 画 素 に 設 定 した.また 遺 伝 子 データとし て, 以 下 の URL に 公 開 されているイースト 遺 伝 子 発 現 率 デー タを 用 いた. http://bonsai.ims.u-tokyo.ac.jp/~mdehoon/software/cluster/demo.txt 以 下 に 結 果 画 像 を 示 し, 結 果 画 像 に 対 する 考 察 を 論 じる. 4.1 結 果 画 像 まず 我 々は,クラスタリングにおいて 作 成 したデンドログ ラムにおけるクラスタ 間 距 離 に 2 つの 閾 値 ( 図 5 におけるS 1 お よびS 2 )を 設 け, 遺 伝 子 データから 2 階 層 のクラスタを 構 築 した. 著 者 らの 実 験 ではS 1 =0.9, S 2 =0.8 であった. 続 いてS 1,S 2 とは 別 に,もう 一 つの 閾 値 を 設 け, 式 (2)におけ るr 値 が 閾 値 以 上 である 2 ノード 間 にエッジを 生 成 した. 著 者 らの 実 験 では 閾 値 は 0.98 であった. このようにして 生 成 された 階 層 型 遺 伝 子 ネットワークファ イルを 読 み 込 み, 提 案 手 法 を 用 いて 表 示 した. 提 案 手 法 によ っ て 各 ノードの 画 面 上 の 位 置 を 算 出 するのに,0.24 秒 を 要 し た.なお 平 安 京 ビュー の 処 理 時 間 や 画 面 配 置 結 果 は,ノ ード 数 や 階 層 の 深 さには 単 純 に 比 例 しない. 平 安 京 ビュー の 処 理 時 間 や 配 置 結 果 を 悪 化 させる 方 向 に 影 響 を 及 す 変 数 は, 上 位 クラスタの 配 下 に 属 する 下 位 クラスタの 個 数 である.よ って 提 案 手 法 のために 複 数 の 閾 値 を 用 いてクラスタリングを 行 う 場 合 には, 特 定 の 上 位 クラスタの 配 下 に 属 する 下 位 クラ スタの 個 数 が 大 きくなりすぎないように,という 点 に 留 意 し て 閾 値 を 決 定 する 必 要 がある.この 閾 値 を 適 切 に 自 動 算 出 す る 手 法 の 確 立 は, 今 後 の 課 題 のひとつといえる. 図 6. 提 案 手 法 を 用 いた, 注 視 ノードが 一 つの 実 行 例. 以 上 の 処 理 による 可 視 化 の 例 を 図 6 に 示 す.この 可 視 化 結 果 では,クリック 操 作 によって 単 一 のノードを 注 目 ノードと して 指 定 し,その 注 目 ノードと 連 結 ノードとの 関 係 を 黄 色 い エッジで 表 示 している.クリック 操 作 等 に 伴 う 再 描 画 の 処 理 時 間 は, 画 面 のズーム 率 やエッジ 表 示 数 に 大 きく 依 存 するの で 一 概 には 言 えないが,おおむね 0.2~0.5 秒 程 度 であった. 筆 者 らの 実 装 では,ソフトウェアの 可 搬 性 の 高 さの 観 点 から, GPU などのグラフィックス 高 速 表 示 装 置 を 全 く 用 いず,また OpenGL やDirectX などの 3 次 元 グラフィックスライブラリを 全 く 用 いていない.これらを 用 いるように 実 装 しなおすこと で, 描 画 時 間 は 大 きく 向 上 すると 考 えられる. 一 般 的 に,マイクロアレイにて 一 度 に 測 定 する 遺 伝 子 情 報 は, 数 百 ~ 数 千 個 である 場 合 が 多 い. 一 方 で 我 々は 経 験 上, 1024x768 画 素 程 度 の 画 面 解 像 度 において 平 安 京 ビュー を 用 いる 場 合,ノード 個 数 が 3000~5000 個 程 度 であれば, 階 層 型 データ 全 体 をクリッカブルな 状 態 で 一 画 面 に 表 示 でき ることを 観 察 している.この 性 能 は, 提 案 手 法 においてクラ スタリング 結 果 から 得 られる 階 層 型 データにおいても 同 等 であると 考 えられる.よって 提 案 手 法 を 用 いることで, 一 般 的 なマイクロアレイ 実 験 結 果 から 得 られる 遺 伝 子 情 報 を, 一 画 面 上 に 観 察 可 能 になると 考 えられる. 図 6 では,クラスタ 内 のノードすべてと 注 目 ノードが 連 結 している,というクラスタを 丸 で 囲 んだ.この 赤 丸 で 示 すよ うなクラスタが 存 在 するということは, 注 目 ノードは 現 在 属 するクラスタの 他 に, 丸 で 示 すクラスタに 属 していてもおか しくない,ということを 示 している.つまり,この 注 目 ノー ドが 示 す 遺 伝 子 はマルチドメインかもしれない,ということ が 推 測 できる. また, 図 6 を 詳 しく 調 べてみると, 所 定 の 色 ( 紫 )で 表 示 されたノードを 両 端 とするエッジが 多 く 存 在 していること が解 る.また 他 のノードを 注 目 ノードに 指 定 した 場 合 にも, 同 様 の 結 果 が 観 察 された. このことより, 図 6 に 示 す 遺 伝 子 ネットワークは,マルチ ドメインの 可 能 性 のある 遺 伝 子 同 士 が 複 雑 に 絡 み 合 ったネ ットワークである,といえる. 図 7,8 は, 提 案 手 法 により, 注 目 ノードと 連 結 ノードを z 軸 方 向 に 引 き 上 げた 結 果 画 像 である. 図 8( 左 )の 注 目 ノードを 引 き 上 げていない 画 像 では,どのノ ードが 注 目 ノードとエッジで 連 結 されているのか, 一 目 には 理 解 しにくい.それに 対 して 図 8( 右 )では, 注 目 ノードを 引 き 上 げることにより, 注 目 ノードと 連 結 ノードを 一 目 瞭 然 に 発 見 できることがわかる. これらの 結 果 画 像 より,ネットワークの 注 視 部 分 を z 軸 方 向 に 引 き 上 げることにより,ノード 間 の 連 結 関 係 が 理 解 しや すくなると 言 える. 111

芸術科学会論文誌 Vol. 6 No. 3 pp. 106-116 い とのことであった 4.1 節に示したように 我々はまだイ ンターネット上に公開された遺伝子情報だけを有し また遺 伝子情報分析を専攻する情報処理の専門家との議論を経ただ けであり 遺伝子実験の専門家と共同で研究を進める体制を 持っていない この問題については 今後の課題として検討 していきたい なお提案手法を用いることで 1 章で示したマルチドメイ ンの特性以外にも 以下のような遺伝子特性も表現できると 考えられる [オーソログ遺伝子 ] 複数の生物種間で存在する遺伝子で 共通の祖先種では同一の遺伝子であり 現在の機能も同一の 遺伝子群 複数の生物種の遺伝子情報から構成される階層型 遺伝子ネットワークデータにおいて 同じクラスタに複数の 生物種の遺伝子が属する場合 その遺伝子群はオーソログ遺 図7. 注視ノードを1段階引き上げた表示画像 伝子の可能性が高いと判断できる [パラログ遺伝子 ] ある生物種に存在する 2 つの遺伝子が 祖先種では同一の遺伝子であるような遺伝子群 提案手法に よる可視化技術では エッジで連結された遺伝子を 3 次元的 に表現することから 非常に強い相互関係を持つパラログの 理解にも向いていると考えられる また 現在ノードの色を クラスタをまたぐエッジを多く 持つノードに特定する為に用いている しかしノードの色を 使用するのについては 事例ごとに指定する事も可能である 例えばオーソログ遺伝子の事例の場合 複数の生物種それぞ れに色をつける等で より特性を発見することが容易になる と考えられる 4.2.2 可視化技術に対する主観評価 続いて 提案手法による可視化技術が遺伝子ネットワーク 図 8. 左 注視ノードをひきあげてない結果画像 を効果的に可視化できているか否かについて 可視化に知識 のある被験者 11 人よりアンケートを採取することで検証し 右 注視ノードを引き上げた結果画像 た アンケートでの質問項目は 以下の 2 点である 4.2 結果画像の考察 項目 1 クラスタをまたぐエッジを多く持つ遺伝子に色をつ 4.2.1 遺伝子情報分析の観点からの考察 けた結果(図 9(左))と 色をつけない結果(図 9(右))を 我々は提案手法により得られた結果画像を 遺伝子情報分 比較し 探索対象となる遺伝子の絞り込みやすさを 析を専攻する研究者に提示し 結果画像が遺伝子ネットワー 採点する 項目 2 以下の 4 つの結果画像を比較し 注目したい任意の クを効果的に表現できているか尋ねた 4.1 節にて結果画像を示したように 提案手法ではクラスタ 遺伝子 およびその遺伝子と相関性の高い遺伝子の をまたぐエッジを多く持つ遺伝子に色をつけている 結果画 分布を理解しやすいか否かを採点する 像では この色がついた遺伝子同士が複雑に絡み合いネット どのノードも引き上げなかった結果 (図 10(左上)) ワークを構成していることが可視化できている この可視化 注目ノードだけを引き上げた結果 (図 10(右上)) 結果画像を遺伝子情報分析の研究者に提示したところ 興味 注目ノードと連結ノードを 同じ高さまで引き上げた 結果 (図 10(左下)) 深い遺伝子群の絞込みに効果的である という評価を頂いた しかし これらの遺伝子がマルチドメインなのか否かを検証 するためには 遺伝子実験にまで遡る必要があるかもしれな 112 注目ノードと連結ノードの両方を引き上げ しかも注 目ノードを連結ノードよりも高く引き上げた結果

( 図 10( 右 下 )) また 項 目 2 においては, 上 記 4つの 結 果 画 像 それぞれに 対 し, 以 下 の4つの 観 点 においてそれぞれ 評 価 して 頂 いた. 質 問 1: 注 目 ノードの 把 握 質 問 2:エッジにより 連 結 されたノードの 把 握 質 問 3: 注 目 ノードや, 連 結 されたノードの 把 握 質 問 4: 連 結 されたノードの 分 布 においての 把 握 以 上 の 計 6 画 像 について 被 験 者 から,1 から 5 までの 5 段 階 で 数 値 評 価 を 頂 いた.この 5 段 階 評 価 は,5 が 最 高 点,1 が 最 低 点 であるとする. 示 す.この 結 果 より, 遺 伝 子 を 表 現 するノードに 色 を 付 ける ことが, 探 索 対 象 とする 遺 伝 子 を 絞 り 込 む 目 的 において 有 用 であることが 検 証 された. 続 いて 項 目 2 について 検 証 する. 図 10 に 示 した 4 枚 の 可 視 化 結 果 について, 被 験 者 による 数 値 評 価 の 平 均 値 を 表 2 に 示 す. 表 1: 項 目 1 の 評 価 評 価 の 平 均 図 9( 左 ) 4.2 図 9( 右 ) 1.6 図 9. ( 左 )クラスタをまたぐエッジを 多 く 持 つ 遺 伝 子 に 色 を 付 けた 結 果.( 右 ) 色 を 付 けない 結 果. 表 2. 項 目 2 の 評 価 質 問 1 質 問 2 質 問 3 質 問 4 総 合 評 価 図 10 2.60 3.10 4.00 3.40 3.27 ( 左 上 ) 図 10 4.50 3.30 3.60 3.40 3.70 ( 右 上 ) 図 10 4.30 4.40 3.70 3.80 3.97 ( 左 下 ) 図 10 4.60 4.50 4.20 3.80 4.27 ( 右 下 ) まず 項 目 1 について 検 証 する.クラスタをまたぐエッジを 多 く 持 つ 遺 伝 子 に, 色 を 付 けた 結 果 ( 図 9( 左 ))と 付 けない 結 果 ( 図 9( 右 ))について, 被 験 者 による 数 値 評 価 の 平 均 値 を 表 1に 図 10. ( 左 上 )どのノードも 引 き 上 げなかった 結 果 ( 左 下 ) 注 視 ノードとエッジで 連 結 されているノードを, 同 じ 高 さまで 引 き 上 げた 結 果 ( 右 上 ) 注 視 ノードだけを 引 き 上 げた 結 果 ( 右 下 ) 注 視 ノードが,エッジで 連 結 されているノ ードより, 一 段 階 高 く 引 き 上 げた 結 果 表 2 に 示 す 結 果 について 考 察 する.まず 質 問 1,2 より,そ れぞれの 結 果 を 比 較 し, 注 目 ノードを 引 き 上 げることの 効 果 が 検 証 できたことがわかった. 質 問 3 において, 各 図 におい て 評 価 に 大 きく 差 はでなかった.この 問 題 に 関 しては,エッ ジを 引 いていることにより, 対 象 となるノードを 確 認 できる ことが, 理 由 と 考 えられる. 質 問 4 においては, 図 1 と 図 2, 図 3 と 図 4 が,それぞれ 同 値 となった.また 図 3 および 図 4 の 平 均 値 が, 図 1 および 図 2 に 比 べ, 高 いことより, 全 体 分 布 の 把 握 に 関 しても,ノードを 引 き 上 げることが 効 果 的 に 作 用 113

していると 考 察 できた. 最 後 に 総 合 評 価 からも,ノードを 引 き 上 げることで,また 注 目 ノードと 連 結 ノードの 引 き 上 げ 方 に 差 をつけることにより,より 効 果 的 に 提 案 手 法 の 結 果 を 示 すことができると 考 えられる.しかし, 注 目 ノードの 位 置 が 変 わったり, 連 結 ノードがより 多 くなるにつれて,この 数 値 評 価 結 果 が 変 わりうることも 想 定 される.また 現 段 階 では, 注 目 ノードと 連 結 ノードだけをエッジで 連 結 しているが, 今 後 の 課 題 として, 連 結 ノードとエッジで 結 ばれているノード 等 も 引 き 上 げることによって,さらに 遺 伝 子 分 析 に 貢 献 でき ないか 検 討 するべきと 考 えている. 4.3 既 存 の 遺 伝 子 情 報 可 視 化 ソフトウェアとの 比 較 マイクロアレイデータから 得 られる 遺 伝 子 発 現 率 情 報 の 可 視 化 ソフトウェアの 中 の 多 くは,ノード 間 の 相 互 関 係 をエッ ジで 結 ぶ 古 典 的 なネットワーク 2 次 元 可 視 化 手 法 [28]や, TreeView[5]と 呼 ばれるクラスタリング 結 果 の 可 視 化 手 法 を 搭 載 しており, 遺 伝 子 分 析 に 携 わる 多 くの 研 究 者 がこれらを 利 用 している. 以 下,これらの 手 法 に 対 する 提 案 手 法 の 優 位 性 について 論 じる. まず 前 者 の 方 法 では, 発 現 率 の 相 関 性 の 高 いノードをエッ ジで 結 んで 表 示 することから, 遺 伝 子 間 の 関 連 性 は 一 目 瞭 然 である.しかし, 一 画 面 に 表 示 するノード 数 は 数 十 ~ 数 百 程 度 にとどまっている.またクラスタリング 結 果 を 同 時 に 表 示 してはいない.それに 対 して 提 案 手 法 には, クラスタ 単 位 で, 整 然 と 構 造 化 された 形 で 遺 伝 子 群 を 表 示 する. 数 千, 数 万 といった 膨 大 な 量 の 遺 伝 子 の 分 布 の 全 貌 を, 一 画 面 に 一 括 表 示 できる. といった 点 で 利 点 があると 考 えられる. 続 いて 後 者 の TreeView は,N 個 の 遺 伝 子 に 関 する M 種 類 の 発 現 率 情 報 を,N 行 M 列 の 表 形 式 データとして 表 現 する. この 手 法 は 全 てのノードの 組 み 合 わせに 対 する 相 関 性 を 網 羅 的 に 表 現 できる 利 点 がある.しかし,その 組 み 合 わせの 多 く は 相 関 性 が 低 いものであり, 必 ずしも 画 面 空 間 を 有 効 に 利 用 した 可 視 化 結 果 を 提 示 しているとは 限 らない,という 問 題 が ある.また,クラスタを 単 位 とした 概 略 的 な 傾 向 をつかみに くい,という 問 題 もある.それに 対 して 提 案 手 法 には, 入 れ 子 構 造 による 階 層 型 データ 表 示 により, 遺 伝 子 群 を クラスタ 単 位 で 概 略 的 に 可 視 化 できる. 相 関 性 の 高 い 2 ノード 間 のみをエッジで 表 現 することに より, 相 関 性 の 高 いノードにのみ 注 視 した 可 視 化 を 実 現 できる. といった 点 で 利 点 があると 考 えられる. 5. まとめと 今 後 の 課 題 本 論 文 では, 遺 伝 子 発 現 率 情 報 に 対 してクラスタリングと ネットワーク 化 の 両 方 を 適 用 して 得 られる 階 層 型 ネットワー クデータの 可 視 化 手 法 を 提 案 した. 提 案 手 法 はネットワークとクラスタを 同 時 表 示 することに より, 遺 伝 子 学 的 に 興 味 深 いマルチドメインなどの 特 性 の 発 見 に 貢 献 できると 考 えられる.また,クラスタをまたぐエッ ジを 多 く 持 つノードに 特 定 の 色 をつけることにより, 興 味 深 い 遺 伝 子 の 早 期 発 見 に 貢 献 できると 考 えられる. 今 後 の 課 題 として, 以 下 の 点 を 議 論 したいと 考 えている. 結 果 画 像 から 発 見 された 現 象 が, 本 当 に 遺 伝 子 学 的 に 興 味 深 い 特 性 なのか 否 か, 遺 伝 子 実 験 の 専 門 家 を 交 えての 検 証. オーソログ 遺 伝 子 やパラログ 遺 伝 子 を 含 めて,より 多 く の 遺 伝 子 特 性 を 意 識 した 可 視 化 結 果 の 考 察. 複 数 の 注 目 ノードを z 軸 方 向 に 引 き 上 げた 時,あるいは 注 目 ノードだけでなく 連 結 ノードに 連 結 されたノード まで 含 めて 多 段 階 にわたってノードを 引 き 上 げた 時,の 効 果 的 なネットワークの 表 現 手 法 の 確 立. 有 向 グラフを 構 成 する 遺 伝 子 ネットワークの 可 視 化. オントロジーなどの 情 報 を 加 味 した,より 遺 伝 子 の 研 究 に 貢 献 できる 可 視 化 ソフトウェアとしての 開 発. 各 クラスタの 画 面 上 の 位 置 の 最 適 化. クラスタリングの 適 切 な 閾 値 ( 図 5 のS 1,S 2 に 相 当 する 変 数 値 )の 発 見 方 法 に 関 する 考 察. 遺 伝 子 ネットワークに 限 らず, 複 雑 ネットワーク 全 般 に 応 用 できる 階 層 型 ネットワーク 可 視 化 手 法 の 確 立,およ び 遺 伝 子 ネットワーク 以 外 の 階 層 型 ネットワークデー タでの 検 証. 謝 辞 ソフトウェア Cluster 3.0 の 開 発 者 であるコロンビア 大 学 Michael De Hoon 氏 には,クラスタリング 技 術 に 関 して 貴 重 な ご 助 言 を 賜 ったことを 感 謝 いたします. 遺 伝 子 ネットワークに 関 する 議 論 に 関 して, 東 京 大 学 宮 野 悟 教 授, 中 谷 明 弘 助 教 授, 渋 谷 哲 朗 講 師, 井 本 清 哉 助 手,お 茶 の 水 女 子 大 学 瀬 々 潤 准 教 授 から 貴 重 なご 意 見 を 賜 ったこと を 感 謝 いたします. 本 研 究 の 一 部 は, 日 本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 補 助 金 の 助 成 に 関 するものです. 参 考 文 献 [1] Card s. k., Mackinlay J. D., Shneiderman B., Reading in Information Visualization: Using Vision to Think, Morgan 114

Kaufmann, ISBN1-55860-533-9, XVII, pp. 686-712, 1998. [2] 有 田, 遺 伝 子 ネットワークと 確 率 モデル Genetic Networks and Probilistic Models, 2001 年 ベイジアンネットチュートリ アル, pp. 50-53, 2001. [3] Itoh T., Takakura H., Sawada A., Koyamada K., Hierarchical Visualization of Network Intrusion Detection Data in the IP Address Space, IEEE Computer Graphics and Applications, Vol. 26, No. 2, pp. 40-47, 2006. [4] Saraiya P., North C., Duca K., An Evaluation of Microarray Visualization Tools for Biological Insight, IEEE Information Visualization 2004, pp. 1-8, 2004. [5] TreeView, http://www.gmod.org/node/91 [6] Holten D., Hierarchical Edge Bundles: Visualization of Adjacency Relations in Hierarchical Data, IEEE Information Visualization 2006, pp. 741-748, 2006. [7] Ghoniem M., Fekete J., Castagiloia P., A Comparison of the Readility of Graphs Using Node-Link and Matrix-Based Representations, IEEE Information Visualization 2004, pp. 17-24, 2004. [8] Eades, P., "A Heuristic for Graph Drawing," Congressus Numerantium, Vol. 42, pp. 149-160, 1984. [9] Sarcar M., Brown M. H., Graphical Fisheyes Views of Graphs, Communication of the ACM, Vol. 37, pp. 73-83, March 1994. [10] Huang M. L., et al., WebOFDAV Navigatingand Visualizing the Web On-Line with Animated Context Swapping, 7th WWW Conf, pp. 636-638, 1998. [11] North S., Incremental Layout in DynaDAG, Graph Drawing 95, pp. 409-418, 1995. [12] Mukherjea, S., Foley J. and Hudson S., Visualizing Complex Hypermedia Networks through Multiple Hierarchical Views, Proceedings of ACM SIGCHI '95, Denver, Colorado, pp. 331 337, May 1995. [13] 塩 澤, 西 山, 松 下, 納 豆 ビュー の 対 話 的 な 情 報 視 覚 化 における 位 置 付 け, 情 報 処 理 学 会 論 文 誌, Vol. 38, No. 11, pp. 2331-2342, 1997. [14] Lamping, J. and Rao, R., "The Hyperbolic Browser: A Focus + Context Technique for Visualizing Large Hierarchies," Journal of Visual Languages and Computing, Vol. 7, No. 1, pp. 33-55, 1996. [15] Carrire J. and Kazman R., "Research Report: Interacting with Huge Hierarchies: Beyond Cone Trees," Proceedings of the IEEE Conference on Information Visualization '95, IEEE CS Press, pp. 74-81, 1995. [16] Johnson B., et al., Tree-Maps: A Space-Filing Approach to the Visualization of Hierarchical Information Space, IEEE Visualization 91, pp. 275-282, 1991. [17] Eades P., et al., Multilevel Visualization of Clustered Graphs, Graph Drawing 96, pp. 101-112, 1996. [18] Schaffer D., et al., Navigating Hierarchically Clustered Networks through Fisheye and Full-Zoom Methods, ACM Trans. Computer-Human Interaction, Vol. 3, No. 2, pp. 162-188, 1996. [19] 我 妻, 藤 代, 堀 井, 階 層 的 因 果 関 係 の 対 話 的 可 視 化, 第 10 回 ビジュアリゼーションカンファレンス, 2004. [20] Fekete J.-D., Wang D., Dang N., Plaisant C., Overlaying Graph Links on Treemaps, IEEE Information Visualization 2003 Poster Conpendium, pp. 82-83, 2003. [21] Bederson B., Schneiderman B., Ordered and Quantum Treemaps: Making Effective Use of 2D Space to Display Hierarchies, ACM Transactions on Graphics, Vol. 21, No. 4, pp. 833-854, 2002. [22] Itoh T., Yamaguchi Y., Ikehata Y., Kajinaga Y., Hierarchical Data Visualization Using a Fast Rectangle-Packing Algorithm, IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics, Vol. 10, No. 3, pp. 302-313, 2004. [23] 伊 藤, 山 口, 小 山 田, 長 方 形 の 入 れ 子 構 造 による 階 層 型 データ 視 覚 化 手 法 の 計 算 時 間 および 画 面 占 有 面 積 の 改 善, 可 視 化 情 報 学 会 論 文 集, Vol. 26, No. 6, pp. 51-61, 2006. [24] De Hoon, M.J.L., Imoto, S. Kobayashi, K., Ogasawara, N. & Miyano, S., Inferring gene regulatory networks from time-ordered gene expression data of Bacillus subtilis using differential equations, Pac. Symp. Biocomput., 8, pp. 17-28, 2003. [25] Savoie, C.J. Aburatani, S. Watane, S. Eguchi, Y. Muta, S. Miyano, S., Imoto, S., Kuhara, S. & Tashiro, K., Use of gene networks from full genome microarray libraries to identify functionally relevant drug-affected genes and gene regulation cascades, DNA Research, No.10, pp.19-25, 2003. [26] Imoto, S., Savoie, C.J., Aburatani, S., Kim, S., Tashiro, K., Kuhara, S. & Miyano, S., Use of gene networks for identifying and validating drug targets, J. Bioinform, Comput. Biol., No.1, pp. 459-474, 2003. [27] Open Source Clustering Software (Cluster 3.0), http://bonsai.ims.u-tokyo.ac.jp/~mdehoon/software/cluster/ [28] Open Source gene network Software (IPA), http://www.digital-biology.co.jp/japanese/ingenuity/index.html [29] 西 山, 伊 藤, 平 安 京 ビュー を 用 いた 階 層 型 遺 伝 子 ネッ トワークの 可 視 化, 第 22 回 NICOGRAPH 論 文 コンテスト, 2006. 115

著 者 紹 介 西 山 慧 子 2006 年 お 茶 の 水 女 子 大 学 理 学 部 情 報 科 学 科 卒 業. 現 在 お 茶 の 水 女 子 大 学 大 学 院 人 間 文 化 研 究 科 数 理 情 報 科 学 専 攻 在 学 中. 情 報 処 理 学 会 会 員. 伊 藤 貴 之 1990 年 早 稲 田 大 学 理 工 学 部 電 子 通 信 学 科 卒 業.1992 年 早 稲 田 大 学 大 学 院 理 工 学 研 究 科 電 気 工 学 専 攻 修 士 課 程 修 了. 同 年 日 本 アイ ビー エム( 株 ) 入 社.1997 年 博 士 ( 工 学 ).2000 年 米 国 カーネギーメロン 大 学 客 員 研 究 員.2003 年 から 2005 年 ま で 京 都 大 学 大 学 院 情 報 学 研 究 科 COE 研 究 員 ( 客 員 助 教 授 相 当 ). 2005 年 日 本 アイ ビー エム( 株 ) 退 職,2005 年 よりお 茶 の 水 女 子 大 学 理 学 部 情 報 科 学 科 助 教 授.ACM, IEEE Computer Society, 情 報 処 理 学 会, 芸 術 科 学 会, 画 像 電 子 学 会, 他 会 員. 116