Title 認 知 言 語 学 から 見 た 手 の 多 義 性 メトニミー 表 現 を 中 心 に Author(s) 林, 科 成 Citation 対 話 と 深 化 の 次 世 代 女 性 リーダーの 育 成 : 魅 力 あ る 大 学 院 教 育 イニシアティブ Issue Date 2007-03-10 URL http://hdl.handle.net/10083/3366 Rights Resource Type Research Paper Resource Version publisher Additional Information This document is downloaded at: 2016
国 際 日 本 学 コンソーシアム: 国 際 ジョイントゼミⅠ( 日 本 語 日 本 語 教 育 部 門 ) 認 知 言 語 学 から 見 た 手 の 多 義 性 メトニミー 表 現 を 中 心 に 林 科 成 1. はじめに われわれの 言 語 表 現 の 中 では 直 接 的 にあるいは 間 接 的 に 身 体 基 盤 によってなされたものが 多 いようであ る 五 感 に 基 づく 表 現 といい 時 間 や 空 間 意 識 に 関 す る 表 現 といい 人 間 を 中 心 に 考 えなければ 成 立 できな い 表 現 である なかんずく 身 体 部 位 によって 外 部 世 界 との 接 触 で 生 まれた 様 々な 表 現 が 基 本 的 だと 言 われ ている しかし それはより 複 雑 な 言 語 表 現 に 欠 かせ ない 土 台 ともいえる 本 稿 では 身 体 部 位 詞 の 中 で 外 部 世 界 ともっとも 直 接 かつ 具 体 的 な 架 け 橋 と 位 置 づけ られる 手 を 取 り 上 げ その 多 義 的 意 味 が 身 体 部 位 としての 手 との 間 に 如 何 に 関 連 付 けるかを 分 析 し たい 一 方 多 義 語 を 研 究 するに 際 しては その 拡 張 のプ ロセスが 見 逃 さなければならないと 思 われる 辞 書 を 調 べて 分 かるように 手 の 多 義 性 の 構 成 が 殆 ど 隣 接 性 (contiguity)に 関 わって 成 り 立 たれたメトニミー 表 現 であるため 本 稿 の 目 的 は 意 味 が 拡 張 されたそれら の 表 現 が 手 との 間 に 如 何 なる 関 連 性 を 持 って いるのかについて 明 らかにすることである 2. 先 行 研 究 従 来 日 本 語 における 身 体 部 位 を 表 す 語 彙 に 対 する 研 究 は 多 くなされた ( 国 広 1970/ 池 上 1975/ 山 梨 1995/ 松 中 2000 など)なお 諸 研 究 によって 手 の 意 味 拡 張 が 言 葉 そのものの 持 っている 形 態 と 機 能 に 起 因 するとし メタファーとメトニミーの 観 点 から 多 義 派 生 の 類 型 が 整 理 されている( 白 川 1978/ 成 瀬 1978/ 前 田 1985) しかし これらの 研 究 は 拡 張 のタイ プを 分 類 することに 重 点 が 置 かれ その 多 義 性 の 本 質 をより 掘 り 下 げていないようである 一 方 手 に 関 する 慣 用 句 を 出 発 点 としてよい 成 果 を 収 めた 研 究 もある(Kövecses 1995 / 有 薗 2004) 有 薗 (2004)は Kövecses(1995)Kövecses and Radden(1998) の Action ICM という 概 念 を 踏 まえながら 日 本 語 の 手 に 関 する 慣 用 句 を 行 為 面 (メトニミー 的 側 面 )からその 知 識 体 系 (フレーム 1 )にわたるいく つかの 用 法 にまとめており 手 という 概 念 を 言 及 す ると < 人 > < 力 > < 技 術 / 能 力 >さらに< 支 配 > などに 関 する 知 識 体 系 が 常 に 喚 起 されると 指 摘 してい る しかし これは 慣 用 句 を 対 象 として 得 られたもの で まだ 手 の 持 っている 多 義 性 に 対 する 包 括 的 な 分 析 とはいえない 手 の 多 義 性 を 考 察 すると 手 が 成 し 遂 げた 行 為 という 側 面 を 確 かに 無 視 することができない 人 間 にとって 手 は 自 分 の 意 志 に 従 ってある 動 作 を 実 現 させるもっとも 直 接 的 な 道 具 であるため 行 為 側 面 からメトニミーを 経 由 して 意 味 の 多 義 的 構 造 が 形 成 されると 考 えられるのは 珍 しくない よって 本 稿 で は 従 来 の 分 類 成 果 を 参 考 にし 多 義 性 の 構 成 にも 欠 か せない 行 為 的 要 素 をも 取 り 合 わせながら 手 に 関 す るメトニミー 表 現 をより 全 面 的 に 分 析 することを 目 指 す 3. 研 究 方 法 と 範 囲 本 稿 ではまず 辞 書 に 載 っている 手 の 多 義 的 意 味 を 取 り 上 げて メトニミー 的 拡 張 により 手 の 意 味 同 士 が 如 何 なる 関 係 を 持 つかに 基 づいて 分 類 し そ れぞれの 意 味 形 成 の 枠 組 みを 考 察 する その 上 認 知 言 語 学 の 参 照 点 能 力 という 概 念 を 分 析 の 方 法 とし て 援 用 する 参 照 点 能 力 とは アメリカの 言 語 学 者 Langacker によって 提 唱 され 人 間 の 注 意 すべき 認 知 能 力 の 一 つのことである 人 間 は ある 対 象 を 把 握 する 際 必 ずしも 直 接 に 対 象 を 捉 えるわけではなく とき には 何 らかの 手 がかりを 媒 介 にし 目 標 の 対 象 に 到 達 するという 場 合 がある 我 々の 言 語 表 現 にもこういっ た 認 知 能 力 が 映 っているという 2 なお 本 稿 は 手 に 関 する 表 現 を 考 察 するが 造 語 成 分 としての 手 ( 例 えば 手 打 ち 手 作 り 手 帳 など 手 ~ という 形 をとる 言 葉 )や 慣 用 句 の 一 部 の 手 などは 考 察 対 象 としない 造 語 の 要 素 としての 場 合 は 手 の 意 味 は 殆 ど 主 語 成 分 として 構 成 され 身 体 部 位 詞 としての 意 味 が 強 く 残 っているた め 分 析 の 対 象 として 扱 わない ( 例 えば 手 打 ち は 手 で 打 って 作 る を 意 味 すること) 一 方 慣 用 句 の 場 合 では 意 味 面 的 に 分 類 すれば 手 の 意 味 が 分 解 可 能 と 分 解 不 可 能 この 二 つのタイプがあり Nunberg(1994)の 用 語 に 従 うと Idiomatic combination と 97
林 科 成 : 認 知 言 語 学 から 見 た 手 の 多 義 性 メトニミー 表 現 を 中 心 に Idiomatic phrase にあたる 前 者 は 例 えば 手 を 借 り る の 場 合 では 手 で< 力 助 け>を 借 りる で< 受 ける>をそれぞれ 意 味 する つまり 慣 用 句 の 構 成 要 素 はそれぞれの 意 味 的 役 割 を 担 うということで ある それに 対 して 後 者 の 例 としては 手 を 握 る が 挙 げられる それは< 仲 直 りをする>< 同 盟 を 結 ぶ >などの 意 味 を 表 すが 手 を 握 る における 手 と 握 る とがそれぞれ 慣 用 句 の 一 部 の 意 味 を 担 ってい るのではなく ひとつのまとまりとして 見 なければ 意 味 が 成 立 しない つまり 意 味 的 には 分 析 の 焦 点 が 語 から 句 へ 移 転 させざるを 得 ない 恐 れがあり 分 解 度 の 低 い 慣 用 句 における 手 の 意 味 は 本 稿 では 考 察 対 象 としない 4. メトニミーとは 認 知 言 語 学 では 多 義 性 の 派 生 過 程 ではメタファー とメトニミーという 概 念 が 重 要 な 役 割 を 果 たしている と 考 えられる ここでは 本 稿 の 研 究 対 象 であるメト ニミー 表 現 を 簡 単 に 説 明 する 二 つの 事 物 の 外 界 における 隣 接 性 あるいは 二 つの 事 物 概 念 の 思 考 内 概 念 上 の 関 連 性 に 基 づ いて 一 方 の 事 物 概 念 を 表 す 形 式 を 用 いて 他 方 の 事 物 概 念 を 表 すという 比 喩 ( 籾 山 :2001) 金 髪 の 人 ) < 会 社 名 - 製 品 >:トヨタが 好 きだ (トヨタ ト ヨタ 産 の 自 動 車 ) 鍋 を 食 べに 行 こう における 鍋 とは 鍋 とい う 入 れ 物 を 意 味 するのではなく 鍋 と 隣 接 関 係 に ある 内 容 物 である 料 理 ということである 他 の 例 もそ れぞれ 文 字 通 りの 意 味 ではなく 二 つの 事 物 の 隣 接 性 関 連 性 に 基 づいて 別 の 意 味 に 指 すのである こ れは 言 葉 の 経 済 性 を 図 るために 形 成 された 言 語 の 省 略 現 象 の 一 種 ともいえる 相 手 の 誤 解 を 招 かない 場 合 あるいは 意 味 が 正 しく 伝 達 できる 場 合 に 限 り 言 語 表 現 をなるべく 経 済 的 に 使 うという 傾 向 がある なお 未 知 の 事 物 を 名 づけるとき メトニミーリン クによって 関 連 付 けられる 例 も 見 られる 手 紙 とい う 言 葉 である 用 事 などを 書 いて 他 人 に 送 る 文 書 を 指 すのである 手 とは 何 の 関 係 があるかを 聞 かれると 手 で 書 いた 紙 と 答 える 人 が 多 いかもしれない 今 までその 語 源 については 定 説 がないが 一 般 的 には 手 元 におき 雑 用 に 使 った 紙 のことで それに 文 をした ため 4 という 説 が 認 められ 手 と 関 係 があると 否 定 できなかろうか このように 手 と 紙 との 間 にある 空 間 的 に 隣 接 関 係 で 形 成 された 手 紙 という のがメトニミー 表 現 ともいえる 籾 山 氏 の 定 義 によれば メトニミーの 性 質 が 比 喩 と 指 摘 されているが 認 知 言 語 学 で 扱 われるメトニミ ーは 人 間 の 言 語 表 現 の 基 盤 をなしているものと 視 され 文 学 作 品 などに 用 いられる 修 辞 法 のメトニミーとは 本 質 的 に 異 なる 例 えば 汚 い 車 を 洗 う という 表 現 を 挙 げよう 言 うまでもなく それは ( 車 の) 外 側 を 洗 う という 意 味 である この 場 合 車 という 全 体 の 概 念 をもって 局 部 の 車 の 外 側 を 意 味 するような 表 現 はメトニミーによってなされたものだと 認 知 言 語 学 では 考 えられている 3 このような 表 現 は 決 して 修 辞 的 表 現 として 認 められないが 我 々の 言 語 表 現 を 支 え る 重 要 な 基 盤 である 次 に メトニミー 的 な 拡 張 表 現 として 他 のタイプ が 挙 げられる < 容 器 - 中 身 >: 鍋 を 食 べに 行 こう ( 鍋 鍋 に 入 った 料 理 ) < 作 者 - 作 品 >:ベートーヴェンを 聞 く (ベート ーヴェン ベートーヴェンの 作 品 ) < 部 分 - 全 体 >:そこに 金 髪 が 立 っている ( 金 髪 5. 手 の 辞 書 的 意 味 まず 手 元 の 辞 書 の 意 味 記 述 を 調 べ 身 体 部 位 手 と 派 生 された 主 要 な 諸 意 味 との 間 に 如 何 なる 関 連 性 を 持 つかという 視 点 から 暫 定 的 に 次 のように 分 類 を 整 理 する 5 < 部 分 - 全 体 > 1ある 動 作 をする 人 : 働 き 手 など < 主 体 - 機 能 > 2 所 有 : 手 に 入 れる など 3 労 力 : 手 が 足 りない など 4 能 力 : 手 に 負 えない など 5わざ: 四 十 八 手 など 6 回 数 ( 助 数 詞 ): 三 手 で 詰 む など 7 手 間 細 工 : 手 のこんだ 細 工 など 8 支 配 : 手 の 者 など 9 方 法 手 段 策 略 : これよりほかに 手 が 無 い など 10 方 面 方 角 6 : 後 ろ 手 など < 媒 介 - 結 果 > 11 文 字 筆 跡 : これは 疑 い 無 く 彼 の 手 だ など 98
国 際 日 本 学 コンソーシアム: 国 際 ジョイントゼミⅠ( 日 本 語 日 本 語 教 育 部 門 ) 12 傷 : 手 を 負 う など 13 種 類 品 質 : この 手 の 品 物 など 5.1 < 部 分 - 全 体 > 日 常 の 言 語 表 現 の 中 で < 部 分 - 全 体 >の 関 係 をも とに 成 り 立 たれたメトニミー 表 現 が 多 い たとえば カレイを 食 べる というように 部 分 の カレイ をもって 全 体 の カレイライス を 表 す 例 と 黒 板 を 消 す というように 全 体 の 黒 板 をもって 部 分 の 黒 板 に 書 かれた 文 字 など を 表 す 例 である 日 本 語 には 部 分 である 身 体 部 位 詞 を 用 いて 全 体 である 人 を 表 す 例 がしばしば 見 られる 例 え ば 顔 ぞろい 頭 割 り 口 を 減 らす 話 し 手 な どである これらの 表 現 は 部 分 で 全 体 を 表 す とい う 関 係 が 成 立 し いわゆる 隣 接 関 係 によるメトニミー 表 現 なのである なお 人 の 意 味 を 帯 びているこれ らの 身 体 部 位 詞 には 手 に 関 する 表 現 が 一 番 多 く 占 めているようである 7 その 形 態 的 特 徴 から 分 類 すれば 次 のようにまとめられる ど 3 動 詞 辞 書 形 + 手 : 引 く 手 討 っ 手 など 4 名 詞 + 手 : 楽 手 旗 手 など 5 形 容 的 品 詞 + 手 : 若 手 ( 囲 碁 用 語 ) 先 手 など この 五 つの 種 類 の 中 では 1 動 詞 の 連 用 形 + 手 という 形 をとるものがもっとも 数 多 く 占 めており 手 は< 動 詞 を 表 す 動 作 を 行 う 人 >を 意 味 している また 手 の 前 にくる 語 は 動 作 を 表 す 語 彙 でなくても 意 味 的 に 誤 解 を 招 くことが 少 ない 例 えば 他 動 詞 の 対 象 である 旗 ( 旗 を 持 つ)や 性 質 属 性 を 表 す 若 などは 意 味 的 に< 人 >を 表 す 手 と 関 連 付 けられ るからである ここで 挙 げた 五 つのタイプはいずれにしても 手 が 身 体 部 位 である 意 味 から 身 体 部 位 が 属 する 主 体 つまり 全 体 的 概 念 を 表 す 人 へと 拡 張 したこと を 伺 える( 図 1) 空 間 の 隣 接 関 係 によるこのような< 部 分 - 全 体 >の 表 現 もメトニミーの 典 型 だと 思 われる 1 動 詞 の 連 用 形 + 手 : 買 い 手 語 り 手 など 2 動 作 性 のある 品 詞 + 手 : 運 転 手 投 手 な 図 1 手 人 5.2 < 主 体 - 機 能 > 人 間 は 五 感 を 通 して 世 界 と 接 触 する また 人 間 も 意 志 のあるものである 自 分 の 意 志 に 従 っていろいろ なことを 成 し 遂 げることができる その 際 もっとも 直 接 的 な 媒 介 としては 身 体 部 位 の 手 が 考 えられる ま た さまざまな 動 作 を 行 う 際 手 が< 行 為 >< 機 能 > などの 意 味 にも 繋 がりが 見 える よって 手 の 多 義 性 の 多 くはそれから 派 生 されたことも 予 想 できるので ある 次 に 例 を 見 てみよう (1) 当 時 の 労 働 省 が 石 綿 工 場 の 従 業 員 の 家 族 や 周 辺 住 民 の 健 康 被 害 について 危 険 性 を 指 摘 する 通 達 を 出 していた なのに 国 は 有 効 な 手 を 打 た なかった ( 天 声 人 語 05/07/22) 例 (1)における 手 を 打 つ とは < 方 法 対 策 を 提 出 する>ということである この 場 合 手 の 解 釈 には 身 体 性 の 意 味 が 失 われ < 何 かに 対 処 する 方 法 手 段 >という 意 味 になる これは 手 の 備 えている 機 能 面 の 要 因 に 関 わるに 違 いない 手 は ある 行 為 が 成 し 遂 げられた 過 程 で 様 々な 概 念 が 残 されたわけ である 物 事 のやり 方 はその 一 つである しかし それはやや 抽 象 的 なもので 捉 えにくい 概 念 であるため その 出 来 事 に 密 接 的 な 関 係 を 持 つ 手 を 通 じて 表 現 されるようになる それについては 次 の 節 で 詳 しく 説 明 するが ここで 手 の 機 能 で 派 生 された 諸 意 味 のタイプを 表 1 にまとめて 示 す 99
林 科 成 : 認 知 言 語 学 から 見 た 手 の 多 義 性 メトニミー 表 現 を 中 心 に 表 1 働 く:< 能 力 >< 労 力 > 手 の 機 能 握 る 把 握 する:< 所 有 >< 支 配 > 物 方 向 を 指 す:< 方 角 > 物 事 を 行 う:< 方 法 手 段 >< 手 間 細 工 >< 回 数 ><わざ> 次 にそれぞれを 簡 略 に 説 明 する 手 を 使 ったり ものを 作 ったりできることから 生 産 力 のある 物 として 意 識 されるのが 通 常 である し たがって 手 が 足 りない 手 を 貸 す 手 に 余 る 手 に 負 えない などのように < 力 >や< 能 力 >を 意 味 する 用 法 が 見 られる しかし < 力 >を 表 す 手 に 関 する 表 現 は 多 くの 場 合 < 人 >と 解 釈 されても 通 じる 手 が 要 る ( 人 ) 手 不 足 などがその 例 であ る なぜなら 物 理 的 には 手 が 人 の 一 部 分 で 手 が 必 要 とする 場 合 は 同 時 に 主 体 である 人 が 必 要 とするということも 意 味 するのである よって 手 が 人 と 一 つのまとまりとして 扱 われるのが 可 能 である 次 に < 所 有 > < 支 配 >の 場 合 はどうであろう 手 には< 握 る>< 掴 む>という 機 能 があるため そこから 手 にする 手 に 入 る などの< 所 有 >を 表 す 表 現 が 派 生 されたと 考 えられる 自 由 な( 誰 にも 所 持 されていない) 状 態 にあるものを 手 でキャッチ した 後 自 分 の 意 志 によって 移 動 させたり 形 を 変 え たりすることができるかもしれない つまり コント ロールできる 状 態 になってしまう 自 由 な 状 態 から 不 自 由 な 状 態 へ 変 化 したその 過 程 において< 所 有 >の 意 味 が 派 生 されたのではないか なお もしその コントロールできるものが 人 間 ならば それを 命 令 したりして 手 下 手 の 者 などのような< 支 配 >の 意 味 も 生 じてくると 予 測 できる 表 2 Ⅰ Ⅱ Ⅲ もの の 状 態 自 由 不 自 由 不 自 由 主 体 と もの との 関 係 所 有 でない 所 有 支 配 次 に < 方 向 方 角 >の 意 味 を 帯 びている 手 の 表 現 を 見 たい 例 (2)のように 手 を 用 いてある 方 面 を 指 し 示 す 用 法 が 考 えられる (2)( 前 略 )それは 確 かに 落 下 傘 に 違 いなかった 行 手 の 左 手 に 当 って 一 ばん 遠 い 山 の 上 に 一 抹 の 白 雲 が 浮 かび その 雲 の 遥 か 向 うに 白 い 落 下 傘 が 一 つ 見 えた ( 井 伏 鱒 二 黒 い 雨 ) 具 体 的 な 実 体 概 念 である 身 体 部 位 詞 の 手 をもっ て 抽 象 的 空 間 概 念 < 方 向 方 角 >を 表 す 表 現 が 興 味 深 い この 類 の 言 葉 には 山 手 脇 手 後 ろ 手 などがあり それぞれ< 山 の 方 >< 脇 の 方 >< 後 ろの 方 >とも 言 い 換 えることができる しかし 身 体 部 位 手 の 意 味 から< 方 向 >の 意 味 までは 一 体 どのよう に 拡 張 されたかについては 討 論 の 余 地 があると 思 う 松 中 (2002)は 手 の 多 義 性 を 分 類 するとき 基 本 的 に 形 態 と 機 能 と 二 つに 分 け < 方 向 >と いう 意 味 解 釈 をメタファー 的 に 形 態 位 置 的 派 生 の 下 位 分 類 の 一 つに 収 めるのである ところが 辞 書 における< 方 向 >の 項 目 の 記 述 を 渡 ってみると その 派 生 の 要 因 が 表 3 のように 手 の< 指 す>という 機 能 面 にある 傾 向 がある 表 3 説 明 辞 書 別 < 手 で 指 すもの>の 意 から 派 生 した 広 辞 苑 学 研 国 語 大 辞 典 説 明 されていない 日 本 国 語 大 辞 典 新 明 解 国 語 辞 典 大 辞 林 100
国 際 日 本 学 コンソーシアム: 国 際 ジョイントゼミⅠ( 日 本 語 日 本 語 教 育 部 門 ) 松 中 (2002)によると 体 が 中 心 として 位 置 される と 右 手 と 左 手 が 体 の< 右 の 方 >< 左 の 方 >にあるのに 違 いないから このような 手 と 人 間 との 位 置 関 係 から 捉 えれば 位 置 の 類 似 性 が 見 つか るとしている そうであれば 山 手 脇 手 後 ろ 手 などの 表 現 に 対 して 説 得 力 に 欠 けるように 思 われ る そもそも 手 には 方 向 を 指 す 機 能 が 備 えて いるため メトニミー 的 派 生 をなしているのだという 点 を 見 逃 すことができない 最 後 は 物 事 を 行 う 時 拡 張 された 各 意 味 に 対 す る 考 察 である 例 として < 方 法 手 段 >を 表 す 手 が 良 い 悪 い 奥 の 手 その 手 は 食 わない < 手 間 手 数 >を 表 す 手 が 掛 かる 手 を 抜 く 囲 碁 などを 動 かす< 回 数 >の 用 法 <わざ>を 表 す 相 撲 の 手 などの 表 現 がある これらが 全 て 手 の 機 能 によっ て 成 立 されたメトニミー 表 現 であると 言 える 簡 単 に 言 えば この 類 の 表 現 は 手 が 動 作 を 行 う 過 程 で 付 随 的 に 生 じたものだと 見 なすことができる もしある 物 事 を 行 う という 出 来 事 を コト の 概 念 と 見 な せば それぞれの 派 生 義 は 表 4 のように 関 連 付 けられ る 表 4 物 事 を 行 う という 出 来 事 を 構 成 するフレーム コトを 行 う 形 (manner) < 方 法 手 段 > <わざ> コトを 行 う 中 身 (content) < 手 間 手 数 > コトを 行 う まとまり(unity) < 回 数 > 人 間 が 手 を 通 じて 物 事 を 成 し 遂 げるとき 基 本 的 にはⅠ 動 作 の 始 まり Ⅱ 動 作 の 進 行 Ⅲ 動 作 の 終 わり と 三 つの 段 階 が 含 まれる 形 とは 動 作 が 始 まってから 終 わりにかけて そのやり 方 或 いは 振 る 舞 いがどうであるかということである その 概 念 の 意 味 はⅠとⅢを 含 んでいるかもしれないが 主 とし てⅡの 段 階 からヒントを 得 られたものである 中 身 は 主 としてⅡの 段 階 からヒントを 得 たのであり 単 に 動 作 の 姿 を 描 くのではなく その 具 体 的 な 内 容 を 指 し 示 すものである まとまり は Ⅰ Ⅱ Ⅲのい ずれが 欠 いてはならないものであり 動 作 の 最 初 から 最 後 までの 全 体 像 ( 一 体 性 )を 捉 える 部 分 である こ のように 手 を 媒 介 とする 動 作 は 形 中 身 まとまり のどの 側 面 に 焦 点 が 絞 られるかによって 様 々な 多 義 的 な 意 味 が 結 び 付 けられる 言 い 換 えれば 手 には< 方 法 手 段 > <わざ> < 手 間 手 数 > < 回 数 >などの 意 味 が 成 立 するというのは どの 視 点 に 立 って 動 作 を 捉 えるかによって 決 められるので ある 5.3 < 媒 介 - 結 果 > < 媒 介 - 結 果 >に 分 類 された 三 つの 派 生 義 (< 文 字 筆 跡 >< 傷 >< 種 類 品 質 >)は 基 本 的 に 手 の 機 能 によって 成 立 された 表 現 でもある 前 節 の< 主 体 - 機 能 >の 下 位 分 類 に 収 められるのも 可 能 であるが い ずれも 手 の 産 物 という 共 通 的 な 特 徴 があるため 別 の 類 として 扱 う この 類 における 手 の 意 味 は 手 による 動 作 行 為 から 残 した 一 種 の 結 果 痕 跡 といえよう 例 えば < 文 字 筆 跡 >を 意 味 する 手 は 身 体 部 位 の 手 が 筆 などを 用 いて あるところに 筆 跡 を 残 したという ことである < 傷 >を 意 味 する 手 は 中 世 から 用 いられた 表 現 のようであるが それは 身 体 部 位 の 手 が 武 器 などを 持 って 相 手 に 傷 つけて 残 された 跡 のこ とであり 重 手 深 手 痛 手 などの 表 現 がある そして < 種 類 品 質 >を 表 す 手 は 身 体 部 位 の 手 が あるものを 工 夫 してできた 結 果 の 状 態 をい う < 質 >を 指 す 薄 手 の 茶 碗 の 手 や < 類 > を 指 す その 手 の 映 画 などの 用 例 が 見 られる 8 なお こういった 事 柄 の 成 立 を 理 解 するにあたって 図 2 のように 時 間 的 な 要 素 も 考 えなければならない 図 2 動 作 主 媒 介 対 象 力 の 伝 達 人 手 時 間 の 流 れ 結 果 の 継 続 背 景 化 した 部 分 焦 点 された 部 分 101
林 科 成 : 認 知 言 語 学 から 見 た 手 の 多 義 性 メトニミー 表 現 を 中 心 に < 媒 介 - 結 果 >の 関 係 からなるメトニミー 表 現 は 手 を 通 してある 対 象 に 力 を 及 ぼし 対 象 の 状 態 をある 程 度 変 えたりすることに 起 因 している 実 際 動 作 の 対 象 に 跡 が 残 されたというものの 焦 点 化 された 部 分 が 対 象 ではないという 点 が 興 味 深 い 人 間 はこのよう な 場 合 対 象 の 結 果 状 態 を 全 然 意 識 していないわけで はないが むしろ 媒 介 ( 或 いは 人 よりもっと 直 接 関 わっている 部 位 )の 手 に 目 を 向 ける 傾 向 が 見 られる 手 がなければ 対 象 そのものが 何 も 変 わら ず 元 の 状 態 を 続 けるはずであるため 対 象 の 結 果 状 態 の 代 わりに 決 定 的 な 役 割 を 果 たす 手 に 注 意 が 喚 起 されるのが 納 得 できる 6. 参 照 点 能 力 から 見 た 手 の 多 義 性 認 知 言 語 学 では メトニミーメ 表 現 が 人 間 の 重 要 な 認 知 能 力 の 一 つである 参 照 点 能 力 という 認 知 的 基 盤 に 築 かれているとされている 参 照 点 能 力 の 概 念 に 関 し ては 本 多 啓 (2003)の 説 明 を 引 用 して 説 明 する Langacker の 認 知 文 法 では 目 的 とする 認 識 表 現 の 対 象 を 目 標 (target)と 呼 び それを 認 識 表 現 するための 媒 介 とされるものを 参 照 点 (reference point)と 呼 ぶ 我 々は 参 照 点 を 経 由 して 目 標 に 到 達 する(mental contact)わけである これが 成 功 する ためには 目 標 は 参 照 点 から 十 分 近 い 範 囲 になけ ればならない この 範 囲 を 参 照 点 の 支 配 圏 (dominion)と 呼 ぶ 9 つまり われわれ 人 間 は ある 対 象 を 把 握 する 際 に その 対 象 が 抽 象 的 或 いは 直 接 捉 えにくい 場 合 別 の 既 に 分 かっているもの 又 は より 把 握 しやすいもの を 参 照 点 として 活 用 し 本 来 把 握 したい 対 象 を 捉 える という 認 知 能 力 が 考 えられる 例 えば 本 棚 の 上 に 村 上 春 樹 がある という 文 を 理 解 するには なぜ 村 上 春 樹 という 人 が 本 棚 の 上 にある と 読 み 取 らないので あろうか 村 上 春 樹 が 村 上 春 樹 という 人 が 書 いて いる 本 という 意 味 を 指 すことが 分 かっていない 人 は いないだろう この 場 合 実 際 に 話 し 手 の 指 している 目 標 物 がその 作 品 である 場 合 でも 村 上 春 樹 という 顕 著 な 対 象 が 先 に 認 知 され < 作 家 - 作 品 >の 隣 接 関 係 を 基 に 村 上 春 樹 の 作 品 という 概 念 が 捉 えられる 例 である その 隣 接 関 係 は 具 体 的 とは 限 らず 抽 象 的 関 係 でもありうる これの 例 として Langacker の 規 定 している 概 念 図 10 と 合 わせて 見 れば 図 3 のように 表 示 される 図 3 D R T C= 認 知 主 体 R= 村 上 春 樹 T= 村 上 春 樹 の 作 品 認 知 プロセス C 焦 点 化 された 部 分 では 本 稿 で 分 類 された< 部 分 - 全 体 > < 主 体 - 機 能 > < 媒 介 - 結 果 >の 諸 意 味 を 参 照 点 の 概 念 から 見 ればどうであろうか 手 には 様 々な 意 味 が 成 り 立 った 場 合 主 として 手 という 概 念 の 把 握 しやすい 具 体 的 な 身 体 部 位 を 媒 介 ( 参 照 点 )にして 空 間 的 隣 接 関 係 にある< 人 >の 意 味 と 機 能 的 隣 接 関 係 にある < 能 力 ><わざ>< 手 間 >< 方 面 >< 文 字 >< 種 類 > などの 意 味 が 拡 張 されたということである よって それらの 派 生 義 と 手 との 認 知 関 係 を 図 式 化 すれば 図 4 のようになる (また 認 知 主 体 から 参 照 点 へ 参 照 点 から 目 標 へのアクセス(access)をP1 とP2 に 分 けることにする ) 図 4 D R P1 P2 T R= 手 T=< 部 分 - 全 体 > < 主 体 - 機 能 > < 媒 介 - 結 果 > に 収 められる 諸 意 味 C 102
国 際 日 本 学 コンソーシアム: 国 際 ジョイントゼミⅠ( 日 本 語 日 本 語 教 育 部 門 ) ここで 参 照 点 R と 目 標 物 T との 関 係 をもっと 少 し 触 れておく < 部 分 - 全 体 >によってなされたメトニ ミー 表 現 は R の 手 と T の 人 とが 具 体 的 従 属 関 係 である それを 比 べて < 主 体 - 機 能 >の 手 と 手 による 機 能 の 関 係 と < 媒 介 - 結 果 >の 手 と 手 による 痕 跡 の 関 係 の 方 が やや 抽 象 的 従 属 関 係 であることが 分 かる 認 知 主 体 C( 人 間 )は 既 知 の 概 念 である 手 を 優 位 的 に 知 覚 し 手 が 支 配 し ている 概 念 領 域 D( 手 と 何 らかの 関 係 のある 領 域 ) の 中 で 様 々な 概 念 をサーチしながら 関 連 づけるわけで ある すなわち C から R への 認 知 プロセス(P1)は 具 体 的 な 概 念 手 へのコンタクトであるのに 対 して R から Tへの 破 線 の 矢 印 (P2)は 見 える 空 間 存 在 物 と 具 体 的 な 形 をなしていない 概 念 とも 結 びつけら れるのが 可 能 である 他 方 参 照 点 から 目 標 物 への 認 知 はただ 単 一 なプロ セスで 認 知 されるわけではなく 図 5 のように 複 数 の 媒 介 が 介 在 する 場 合 も 考 えられる 図 5 文 字 を 表 す 手 (e.g 男 手 男 で 書 いた 文 字 )の 認 知 過 程 D R 手 R 1 筆 c T 字 c C c 認 知 主 体 が 手 による 書 かれた 文 字 を 理 解 す るに 際 しては そのツール(R 1 )である 筆 概 念 を 経 て 字 を 到 達 するわけである このようにいくつ かの 媒 介 を 通 してなされた 手 に 関 わるメトニミー 表 現 には 各 参 照 点 が 如 何 に 位 置 づけられているのか また それが 多 義 性 の 生 成 にはどのような 影 響 を 与 え ているのかについては 今 後 の 研 究 課 題 として 考 察 し ていきたい 7. まとめ 本 稿 で 考 察 した 手 に 関 するメトニミー 表 現 は 図 6 のようにまとめられる 参 照 点 能 力 で 人 間 が 手 の 支 配 する 概 念 領 域 の 範 囲 が 具 体 的 な 人 ないし 抽 象 的 な 機 能 を 含 んで いることが 明 らかになった 捉 えにくい 概 念 の 目 標 物 をゲットするには その 概 念 に 近 い 関 係 に 立 っている 分 かりやすいものが 焦 点 化 され 知 覚 されるため 手 を 通 して 様 々な 多 義 的 意 味 が 拡 張 される 一 方 意 味 拡 張 のプロセスから 見 れば 人 を 表 す 手 の 表 現 以 外 全 て 手 の 機 能 面 に 関 わって 派 生 されたのである (< 媒 介 - 結 果 >の 類 に 属 する 表 現 も 手 が 動 けなかったら 成 立 できない 表 現 である) なお < 主 体 - 機 能 >の 関 係 でなされた 諸 意 味 は 手 の 機 能 そのものに 着 目 する 派 生 義 (< 能 力 >< 労 力 >< 所 有 >< 支 配 >< 方 角 >)と 手 による 行 為 にポイントが 置 かれる 派 生 義 (< 方 法 手 段 >< 手 間 細 工 >< 回 数 ><わざ>) と 二 つのタイプに 分 けられる < 媒 介 - 結 果 >の 派 生 義 も< 主 体 - 機 能 > の 関 係 で 手 による 産 物 だと 見 なすことができよう 図 6 具 体 的 隣 接 関 係 < 部 分 - 全 体 > < 働 く> 手 抽 象 的 隣 接 関 係 < 主 体 - 機 能 > < 媒 介 - 結 果 > 機 能 面 からの 派 生 行 為 面 からの 派 生 < 握 る> < 指 す> 形 中 身 まとまり 103
林 科 成 : 認 知 言 語 学 から 見 た 手 の 多 義 性 メトニミー 表 現 を 中 心 に 注 1. フレーム(frame)という 概 念 はフィルモア(Fillmore)に よって 提 案 されたものである ある 概 念 を 理 解 するのに 前 提 となるような 知 識 構 造 ということであり その 言 語 自 身 の 文 化 体 験 価 値 観 ものの 見 方 などによって 構 築 された ものでもある レイコフ(Lakoff)の 理 想 化 認 知 モデル (Idealized Cognitive Model)とラネカー(Langacker)の 認 知 領 域 (cognitive domain)とほぼ 同 じ 概 念 である 2. 山 梨 (2000)によると 日 本 語 では 参 照 点 能 力 がかかわる 言 語 現 象 として メトニミー 照 応 指 示 表 現 話 題 化 な どがあるとしている (pp.86-99 参 照 ) 3. 類 例 としては 車 を 掃 除 する が 挙 げられる この 場 合 全 体 の 車 で 部 分 の 車 の 内 側 を 指 し 示 すのである 4. 前 田 富 祺 監 修 (2005) 日 本 語 源 大 辞 典 pp.793 と 西 垣 幸 夫 (2005) 日 本 語 の 語 源 辞 典 pp.435 をご 参 照 5. メトニミーリンクによって 派 生 された 意 味 の 中 で < 代 価 代 金 >を 表 す 酒 手 と 中 近 世 の 雑 税 の 一 種 である 河 手 などとがある それらは 時 代 に 応 じてつくられた 言 葉 であり 現 代 日 本 語 ではそれほど 用 いられないようである ため 本 稿 では 考 察 対 象 としない 6. < 方 向 方 角 >を 表 す 手 に 関 する 表 現 例 えば 行 く 手 脇 手 などは 身 体 を 中 心 にメタファー 的 に 拡 張 され た 用 法 だと 指 摘 される 説 もある 7. インターネットの 大 辞 泉 を 検 索 して 定 着 語 として 使 われ る 身 体 部 位 詞 の 中 で 人 の 意 味 を 持 っている 手 に 関 する 言 葉 ( 慣 用 句 を 含 まない)は 約 118 語 に 達 する 8. < 類 >に 属 する 表 現 は < 質 >の 表 現 から 派 生 されたやや 抽 象 的 な 用 法 だと 思 う 例 えば 奥 手 ( 晩 稲 ) は 元 々 成 熟 の 遅 い という 性 質 である 稲 などを 意 味 するが 後 は 奥 手 な 人 のように 遅 く 成 熟 するという 類 の 人 をも 指 す ようになる 9. 本 多 啓 (2003) 第 3 章 認 知 言 語 学 の 基 本 的 な 考 え 方 シリーズ 認 知 言 語 学 入 門 第 1 巻 認 知 言 語 学 への 招 待 辻 幸 夫 編 大 修 館 書 店 pp.74-75 10. Langacker, Ronald W. 1993. Reference-point Constructions, Cognitive Linguistics, N04, No.1, pp.1-38. 図 3 の 場 合 C は 認 知 主 体 (conceptualizer) R は 参 照 点 (reference point) T は 目 標 (target) D は 参 照 点 によって 限 定 される 支 配 範 囲 (dominion) 破 線 の 矢 印 は 認 知 主 体 が 参 照 点 を 経 由 して 目 標 に 到 達 していくメンタル コンタクト(mental contact) を 示 す また 太 線 のサークルで 囲 まれたものは 認 知 の 領 域 においては 焦 点 化 された 部 分 にあたる 主 要 的 な 参 考 文 献 G.レイコフ&M.ジョンソン(1986) レトリックと 人 生 渡 辺 昇 一 ら 訳 大 修 館 書 店 Heine, Bernd. 1997. Cognitive Foundations of Grammar. New York:Oxford University Press. 有 薗 智 美 (2005) 身 体 部 位 ( 口 手 )を 含 む 慣 用 表 現 の 意 味 分 類 日 本 認 知 言 語 学 会 論 文 集 第 5 巻 pp.487-496 日 本 認 知 言 語 学 会 国 広 哲 弥 (1982) 意 味 論 の 方 法 大 修 館 書 店 クワンヌット カンムアン(1999) 身 体 部 位 表 現 の 意 味 拡 張 -タイ 語 と 日 本 語 の 比 較 を 中 心 に- 言 語 科 学 論 集 第 5 号 京 都 大 学 総 合 人 間 学 部 基 礎 科 学 科 巻 下 吉 夫 瀬 戸 賢 一 (1997) 文 化 と 発 想 とレトリック 研 究 社 出 版 松 本 曜 (2000) 日 本 語 における 身 体 部 位 詞 から 物 体 部 分 詞 へ の 比 喩 的 拡 張 :その 性 質 と 制 約 認 知 言 語 学 の 発 展 坂 原 茂 編 317-346 ひつじ 書 房 松 中 完 二 (2002) 現 代 多 義 語 の 構 造 現 代 日 本 語 講 座 第 4 巻 語 彙 飛 田 良 文 佐 藤 武 義 編 明 治 書 院 瀬 戸 賢 一 (2005) よく 分 かる 比 喩 ことばの 根 っこをもっ と 知 ろう 研 究 社 出 版 辻 幸 夫 編 (2003) シリーズ 認 知 言 語 学 入 門 第 1 巻 認 知 言 語 学 への 招 待 大 修 館 書 店 山 梨 正 明 (1995) 認 知 文 法 論 くろしお 出 版 山 梨 正 明 (2000) 認 知 言 語 学 原 理 くろしお 出 版 りん かせい/ 台 湾 大 學 日 本 語 学 科 大 学 院 3 年 kaji1222@gmail.com 104