FA 用 コントローラの 技 術 革 新 と 適 用 分 野 拡 大 名 古 屋 製 作 所 FAシステム 統 括 部 長 森 田 英 昭 1.まえがき 三 菱 電 機 はFA 事 のメインコンセプトとして 顧 客 の TCO(Total Cost of Ownership) 削 減 を 図 る e F@ctory ( 図 1)を 提 唱 し, 工 場 の 自 動 化, 見 える 化 を 推 進 してきた シーケンサ,モーションコントローラなどのFA 用 コント ローラを 始 め 各 種 FA 用 制 御 機 器,それらをつなぐネット ワーク 群,エンジニアリングツールの 提 供 に 加 え,パート ナーとの 連 携 (e F@ctory Alliance)を 通 じてトータルソ リューションの 実 現 に 取 り 組 んでいる 本 稿 では,e F@ctoryの 中 核 となるFA 用 コントローラ を 中 心 に 技 術 の 変 遷 と 将 来 展 望 を 述 べる 2.FA 事 をとりまく 環 境 今 日 のものづくりの 現 場 では, 製 品 の 高 性 能 化 に 伴 う 生 設 備 の 複 雑 化 が 進 み, 設 備 の 設 計 立 ち 上 げを 含 む 導 入 及 び 保 守 コストが 増 大 している また, 従 来 のタクトタイ ム 向 上 の 要 求 に 加 え, 製 品 サイクル 短 縮 化 に 伴 う 変 種 変 量 生 への 柔 軟 な 対 応 が 課 題 となっている これらの 課 題 に 対 し,FA 機 器 間 や 情 報 システムを 統 合 して 生 システ ム 全 体 を 最 適 化 することで, 設 備 の 生 性 向 上 を 図 るとと もに, 設 計 立 ち 上 げ 運 用 保 守 コスト 削 減 を 実 現 する トータルソリューションの 要 求 が 高 まっている さらにグ ローバル 化 によって 生 拠 点 の 海 外 展 開 が 進 む 中, 生 設 備 の 制 御 プログラムなど 顧 客 の 技 術 (ノウハウ)を 保 護 する ためのセキュリティ 対 策 も 重 要 な 課 題 となっている 3. 技 術 の 変 遷 3. 1 三 菱 FAトータルソリューション:e F@ctory 生 システムの 構 築 と 運 用 管 理 を 最 適 化 するためのコン セプトがe F@ctoryである 機 種 間 連 携 ( 横 連 携 )による 制 御 の 高 速 化, 使 い 勝 手 の 向 上 及 び 情 報 システムと 生 現 場 の 情 報 連 携 ( 縦 連 携 )によるTCO 削 減 を 実 現 する 3. 1. 1 機 種 間 連 携 ( 横 連 携 ):iq Platform 当 社 はe F@ctoryの 基 盤 を 形 成 するFA 統 合 プラット フォームとして iq Platform を 提 唱 している( 図 2) iq Platformとはシーケンサを 中 心 とした 先 進 のコント ローラ,エンジニアリング 環 境,ネットワークを 統 合 し, 顧 客 の 設 計 立 ち 上 げ 運 用 保 守 の 全 てのフェーズでコ スト 削 減 を 実 現 するものである ⑴ コントローラ 統 合 同 一 バス 上 に 装 着 可 能 なシーケンサ モーションコント ローラ CNC ロボットCPU(マルチCPU)を 開 発 すると ともに, 各 コントローラ 間 のデータ 通 信 を 高 速 同 期 する 機 能 を 実 装 し, 高 速 高 精 度 な 制 御 を 実 現 した ⑵ 統 合 エンジニアリング 環 境 複 数 のコントローラ(シーケンサ,モーションコントローラ, 表 示 器 等 )のエンジニアリング 環 境 を 統 合 することによって 図 1. 三 菱 FAトータルソリューション:e F@ctory 22 (508) 三 菱 電 機 技 報 Vol.88 No.9 2014
設 計 情 報 を 共 有 し,プログラミングの 効 率 化 を 実 現 した ⑶ ネットワーク 生 設 備 の 複 雑 化 によって, 装 置 間 で 高 速 大 容 量 のデー タ 交 換 が 可 能 なネットワークが 求 められており, 当 社 はギ ガビットEthernet 技 術 を 活 用 したCC Link IEネットワー クを 開 発 した また, 使 用 用 途 に 合 わせてCC Link(フィールドネット ワーク) AnyWire(センサネットワーク) SSCNET Ⅲ/H(サー ボネットワーク)など 適 材 適 所 なネットワークを 提 供 する 3. 1. 2 情 報 連 携 ( 縦 連 携 ) 従 来 の 生 現 場 では,ネットワークの 階 層 ごとにプロト コルが 異 なっていたため, 末 端 のデバイスまで 生 データ を 収 集 するのは 困 難 であった 当 社 はネットワーク 階 層 を 超 えて 上 位 から 下 位 までシームレスに 接 続 できるSLMP (Seamless Message Protocol)によって, 運 用 保 守 のし やすい 最 適 なシステム 構 築 を 実 現 している 今 後 は,パー トナー 製 品 を 含 めた 接 続 機 器 の 更 なる 拡 充 と, 機 器 のプロ ファイルやFB(Function Block)を 活 用 した 接 続 容 易 性 の 向 上 を 図 っていく また, 現 場 の 装 置 とITシステムの 接 続 にはゲートウェイパソコンの 使 用 と 通 信 プログラムの 開 発 が 必 要 であり,これらの 維 持, 管 理 コスト 削 減 も 課 題 と なっていた 当 社 は,データベースとダイレクト 接 続 する MESインタフェースユニットによって, 生 情 報 の 収 集 と 運 用 管 理 を 簡 単 に 低 コストで 実 現 した 3. 2 進 化 と 継 承 MP(Micro Processor) 搭 載 PLC(Programmable Logic Controller) 誕 生 以 前 のシーケンス 制 御 の 主 流 は, 有 接 点 リレーであっ たが, 設 置 工 事 や 回 路 変 更 の 煩 雑 さなどの 問 題 点 があった この 有 接 点 リレー 制 御 の 課 題 を 克 服 するのが, 無 接 点 リ レー 制 御 のPLCであり, 当 社 ではシーケンサと 命 名 し,その 1 号 機 を1973 年 に 出 荷 し,1977 年 から 汎 用 機 の 市 販 を 始 めた その 後,1980 年 にシーケンサ MELSEC Kシリーズ を 発 表 して 以 来, MELSEC Aシリーズ MELSEC Qシ リーズ と 進 化 を 続 け, 高 速 化, 小 型 化 を 進 めつつ 高 い 信 頼 性 と 豊 富 な 品 ぞろえで 生 現 場 の 高 度 化 に 貢 献 してき た( 図 3) また,MELSEC Qシリーズでは, 専 用 DCS (Digital Control System) 相 当 の 高 度 なプロセス 制 御 を 手 軽 に 実 現 可 能 なプロセス 二 重 化 CPU,マイコンやパソ コン 置 き 換 え 用 途 のC 言 語 コントローラ, 国 際 安 全 規 格 に 適 合 した 安 全 シーケンサ 安 全 コントローラ 等, 用 途 の 多 様 化 にも 対 応 してきた 進 化 し 続 ける MELSECシリーズ は, 顧 客 の 設 計 資 を 守 るための 継 承 も 重 視 している 従 来 製 品 との 互 換 性 を 確 保 し, 新 シリーズへのスムーズな 移 行 を 可 能 としている 当 社 は,この 進 化 と 継 承 を 更 に 発 展 させ, 製 造 の 革 新 的 な 進 歩 を 牽 引 (けんいん)するために,2014 年 6 月 に MELSEC iq Rシリーズ を 発 売 した 3. 3 MELSEC iq Rシリーズのコンセプト MELSEC iq Rシリーズは,Reduce TCO(TCO 削 減 ), Reliability( 信 頼 性 ),Reuse( 継 承 )の3つのコンセプトに 基 づき,7つの 課 題 を 解 決 する( 図 4) 3. 3. 1 Reduce TCO(TCO 削 減 ) ⑴ Productivity( 生 性 ) 新 開 発 高 速 システムバス 及 びシーケンス 演 算 用 LSIで 実 現 した 先 進 的 な 性 能 によって, 生 設 備 のタクトタイムを 短 縮 し, 生 性 向 上 を 実 現 する ⑵ Engineering(プログラム 開 発 ) 簡 単 で 直 感 的 なプログラミングが 可 能 な 新 世 代 エンジニ アリングツール GX Works3 によって,エンジニアリン グコスト 削 減 を 実 現 する ⑶ Maintenance(メンテナンス) 不 慮 のトラブルを 未 然 に 防 ぐ 予 防 保 全 や,トラブル 発 生 時 の 早 期 復 旧 に 対 応 する 様 々なメンテナンス 機 能 によって, ダウンタイム 短 縮 と 顧 客 の 製 品 品 質 確 保 に 貢 献 する 図 2.FA 統 合 プラットフォーム:iQ Platform 図 3. 当 社 シーケンサのロードマップ: 進 化 と 継 承 23 (509)
⑷ Connectivity(ネットワーク) 生 管 理 レベルからセンサなどのデバイスレベルまで, ネットワーク 階 層 の 違 いを 意 識 せず,SLMPによるシーム レスなデータ 通 信 を 可 能 とすることで, 運 用 保 守 コスト の 削 減 に 貢 献 する 3. 3. 2 Reliability( 信 頼 性 ) ⑴ Quality( 品 質 ) MELSEC K / A / Qシリーズで 培 った 確 かな 品 質 は, 生 システムの 信 頼 性 向 上 と 製 品 品 質 の 向 上 という 付 加 価 値 を 創 出 する また,CE,ULなど 多 種 多 様 な 国 際 規 格 に 幅 広 く 対 応 し, 世 界 各 国 で 容 易 に 適 用 可 能 である ⑵ Security(セキュリティ) 制 御 プログラムを 保 護 するためのセキュリティキー 認 証 や, 制 御 システムへの 不 正 アクセスを 防 止 するIPフィルタ などの 強 力 なセキュリティ 機 能 によって, 模 造 品 の 製 造 や 制 御 プログラムの 不 正 流 用 を 防 止 する 3. 3. 3 Reuse( 継 承 ) ⑴ Compatibility( 互 換 性 ) MELSEC Qシリーズのプログラムは,MELSEC iq R シリーズ 用 のプログラムに 変 換 可 能 なため,MELSEC Qシリーズで 蓄 積 した 資 を 有 効 活 用 できる また, 入 出 力 ユニットやアナログユニットのピン 配 置 及 びコネクタは, MELSEC Qシリーズと 同 一 なので, 外 部 機 器 配 線 をその まま 使 用 できる 3. 4 MELSEC iq Rシリーズにおける 技 術 革 新 タクトタイムの 大 幅 な 短 縮 を 実 現 するため, 高 速 システ ムバス, 及 びシーケンス 演 算 用 LSIを 開 発 した 伝 送 速 度 3Gbpsの 高 速 システムバスによって,ネットワークユニッ トとの 大 容 量 データ 処 理 の 飛 躍 的 な 高 速 化 (MELSEC Qシ リーズ 比 40 倍 )を 実 現 した また,マルチCPU 間 に 専 用 の 高 速 バスを 設 けることで,シーケンサCPUとモーション CPU 間 のデータ 交 換 周 期 を 高 速 化 (MELSEC Qシリーズ 比 4 倍 )し, 高 精 度 モーション 制 御 を 実 現 した さらに,システムバスを 一 新 し,ネットワークの 伝 送 周 期 (リンクスキャン)と 割 り 込 みプログラムの 実 行 周 期 を 同 期 可 能 とした 例 えばネットワーク 上 の 機 器 のセンサ 入 力 に 応 じて, 別 のネットワーク 上 の 機 器 のアクチュエータを 制 御 するような 場 合 に,センサ 入 力 演 算 アクチュエー タ 出 力 までの 時 間 のばらつきがなくなり, 安 定 した 製 造 品 質 が 実 現 できる CPUユニットの 命 令 処 理 時 間 を 表 1に 示 す PC MIX 値 で419 命 令 /µsという 高 速 化 (MELSEC Qシ リーズ 比 約 7 倍 )を 実 現 するため,シーケンス 制 御 に 最 適 化 した 多 段 パイプライン,データキャッシュ, 分 岐 予 測 等 の 技 術 を 搭 載 した ST 言 語 やFBの 実 行 方 式 の 革 新 によっ て, 演 算 性 能 を 大 幅 に 向 上 させた(ST 言 語 のIF 命 令 の 処 理 時 間 はMELSEC Qシリーズ 比 175 倍 ) これらの 高 速 化 に よって, 複 数 CPUで 分 散 制 御 していたシステムを1CPU で 集 中 制 御 することで,システムコスト 削 減 に 貢 献 する また,このように 革 新 的 な 高 速 制 御 を 実 現 したMELSEC iq Rシリーズは, 高 速 伝 送 高 速 演 算 を 実 現 しながら, EMC( 電 磁 環 境 適 合 性 ) 試 験 や 各 種 ノイズ 試 験 など,あら ゆる 製 造 シーンを 想 定 した 品 質 評 価 試 験 をクリアしており, 製 造 現 場 の 過 酷 な 環 境 に 耐 えうる 信 頼 性 を 確 保 している 3. 5 MELSEC iq Rシリーズで 搭 載 した 新 機 能 MELSEC iq Rシリーズでは, 界 初 のデータベース 内 蔵 機 能,イベント 履 歴 機 能, 専 用 ハードウェアを 使 用 した セキュリティ 機 能 を 搭 載 した 3. 5. 1 データベース 内 蔵 機 能 従 来, 生 現 場 では,レシピデータや 生 実 績 データを パソコンで 管 理 していたため,シーケンサにレシピデータ を 設 定 したり,シーケンサから 生 実 績 データを 収 集 した りするには, 顧 客 がパソコン 上 で 実 行 するプログラムを 開 発 する 必 要 があった MELSEC iq Rシリーズでは,シー ケンサ 内 にデータベースを 内 蔵 し,このデータベースにア 図 4.MELSEC iq Rシリーズのコンセプト 表 1.CPUユニットの 命 令 処 理 時 間 種 別 RnCPU ( 新 製 品 ) QnUDEHCPU ( 従 来 製 品 ) 接 点 命 令 (ns) 0.98 9.5 データ 転 送 命 令 (ns) 1.9 19 浮 動 小 数 点 演 算 (ns) 9.8 57 ST 言 語 (IF 命 令 )(ns) 8 1,400 PC MIX ( 注 2) ( 命 令 /µs) 419 60 ( 注 2) 1µsで 実 行 する 基 本 命 令 やデータ 処 理 などの 平 均 命 令 数 で, 数 値 が 大 きいほど 処 理 速 度 が 速 いことを 示 す ST:Structured Text 24 (510) 三 菱 電 機 技 報 Vol.88 No.9 2014
クセスするための 専 用 命 令 を 併 せて 搭 載 した これによっ て 顧 客 は, 制 御 プログラム 上 で 使 用 するレシピデータの 抽 出 や 生 実 績 データの 追 加 更 新 を 容 易 に 行 うことが 可 能 となる( 図 5) また,データベースのインポート/エクス ポートが 可 能 なため, 利 用 目 的 に 応 じてデータベースを 簡 単 に 活 用 することが 可 能 である 3. 5. 2 イベント 履 歴 機 能 顧 客 のシステムで 障 害 が 発 生 した 場 合, 関 係 者 に 操 作 履 歴 などを 確 認 する 必 要 があり 原 因 究 明 に 時 間 がかかっ ていた MELSEC iq Rシリーズでは,シーケンサへの 制 御 プログラム 変 更,RUN / STOP / RESETスイッチ 操 作,SDカード 挿 抜 操 作 等, 顧 客 の 操 作 履 歴 を 従 来 のエラー 履 歴 の 情 報 とともに 確 認 可 能 なイベント 履 歴 機 能 を 各 コン トローラ(シーケンサ,モーションコントローラなど)に 搭 載 した これによって 障 害 発 生 時 の 状 況 を 正 確 に 把 握 でき, 原 因 の 早 期 究 明 が 可 能 となる 3. 5. 3 セキュリティ 機 能 シーケンサに 格 納 している 制 御 プログラムなどの 顧 客 の 技 術 (ノウハウ)はパスワード 認 証 で 保 護 することが 一 般 的 だが,パスワードは 漏 洩 (ろうえい)した 場 合 に 漏 洩 範 囲 が 特 定 できないなどの 課 題 がある 近 年, 海 外 向 け に 装 置 を 開 発 している 顧 客 から,パスワード 以 外 でのセ キュリティ 機 能 強 化 やシーケンサ 故 障 時 は 現 地 の 保 全 メン バーだけで, 簡 単 に 交 換 したいという 要 望 も 増 えてきてい る MELSEC iq Rシリーズでは, 専 用 のハードウェア( 拡 張 SRAM(カセット)を 使 用 したセキュリティキー 認 証 に よって,パスワードを 使 用 しないセキュリティ 機 能 を 実 現 し た( 図 6) この 機 能 は,エンジニアリングツール, 制 御 プログラム 及 びシーケンサのそれぞれにセキュリティキーを 登 録 し, セキュリティキーが 一 致 しないエンジニアリングツールか らは, 制 御 プログラムの 読 み 出 し/ 閲 覧 を 制 限 する ま た, 制 御 プログラムを 実 行 する 際 もセキュリティキーが 一 致 しないシーケンサ 上 では 制 御 プログラムの 実 行 を 制 限 す る これによって, 技 術 の 漏 洩, 不 正 コピーによる 模 倣 品 製 造 を 防 止 できる さらにシーケンサの 拡 張 SRAMカセッ トにセキュリティキーを 登 録 できるため,シーケンサ 故 障 による 交 換 時 に, 拡 張 SRAMカセットを 差 し 替 えるだけ で, 簡 単 にシーケンサにセキュリティキーが 登 録 可 能 とな り, 高 信 頼 性 と 利 便 性 の 両 立 を 実 現 した 3. 6 エンジニアリングツール FA 統 合 エンジニアリングソフトウェア MELSOFT iq Works によって 複 雑 化 するシステムのプログラム 開 発 の 効 率 化 を 実 現 する MELSOFT iq Worksは, 次 のソフト ウェアで 構 成 している ⑴ MELSOFT Navigator(システム 管 理 用 ツール) ⑵ GX Works3(シーケンサ 用 ツール) ⑶ MT Works2(モーションコントローラ 用 ツール) ⑷ GT Works3( 表 示 器 画 面 作 成 用 ツール) MELSOFT iq Worksでは,システムを 構 成 する 機 器 及 び 各 ソフトウェア 間 の 機 能 連 携 /データ 共 有 によって, 従 来 は 機 器 別 に 作 成 していた 設 計 情 報 の 一 元 管 理 を 可 能 とし, ソフトウェア 開 発 の 効 率 化 を 図 っている MELSEC iq Rシリーズ 対 応 のGX Works3ではプログ ラム 部 品 を 選 ぶだけの 簡 単 プログラミング( 図 7)によって, 次 に 述 べる 各 開 発 フェーズのコスト 削 減 を 実 現 する 3. 6. 1 システム 設 計 部 品 選 択 ウィンドウからアナログ 変 換 ユニットなど 必 要 なユニットを 選 んで 配 置 する 直 感 的 な 操 作 によって,シス テム 構 成 図 作 成 や 各 ユニットのパラメータ 設 定 を 可 能 とし ている また,システム 構 成 の 変 更 に 追 従 してプログラム やパラメータを 自 動 変 更 する 機 能 を 備 え, 既 存 プロジェク トを 容 易 に 流 用 可 能 としている 3. 6. 2 プログラミング の 図 6.セキュリティ 機 能 図 5.データベース 機 能 25 (511)
あらかじめ 登 録 されている 各 ユニットのデータ 変 数 (ユ ニットラベル)や,プログラム 部 品 (ユニットFB)をプログ ラムエディタにドラッグ&ドロップすることで 簡 単 にプロ グラムが 作 成 できる 3. 6. 3 デバッグ 運 用 保 守 コントローラとパソコンとのケーブル 接 続 によって, GX Works3の 診 断 画 面 を 自 動 表 示 する 機 能 を 搭 載 してい る 異 常 発 生 した 原 因 とその 対 処 方 法 を 診 断 画 面 に 明 示 するため,GX Works3の 操 作 に 不 慣 れな 現 場 担 当 者 でも, 迅 速 な 一 次 診 断 が 可 能 となる 3. 7 ネットワーク 生 設 備 の 複 雑 化 や 生 情 報 の 見 える 化 に 対 する 要 求 が 高 まる 中 で, 膨 大 な 制 御 データや 生 データを 高 速 に 通 信 するネットワークが 求 められている 当 社 が 開 発 したネッ トワーク CC Link IE は,1Gbpsの 広 帯 域 を 制 御 通 信 用 と 情 報 通 信 用 に 分 割 することによって, 制 御 通 信 の 定 時 性 を 保 証 しつつ,TCP/IPでは 実 現 できないリアルタイムな データ 収 集 を 実 現 する また,ネットワークの 異 常 箇 所 を ビジブルに 確 認 できる 簡 単 診 断 機 能 を 持 ち,システムのダ ウンタイムを 短 縮 する 3. 7. 1 ネットワーク 技 術 の 進 化 CC Link IEコントローラネットワークは, 最 大 128K ワードの 大 容 量 通 信 と 光 二 重 ループによって 大 規 模 なコン トローラ 分 散 制 御 を 可 能 としている CC Link IEフィー ルドネットワークは,コントローラ 分 散 制 御,I/O 制 御 と 安 全 制 御,モーション 制 御 を 統 合 するオールラウンドな ネットワークで 多 様 なシステムに 対 して 最 適 なネットワー ク 構 築 が 可 能 である MELSEC iq Rシリーズでは, 大 規 模 な 同 期 制 御 を 必 要 とする 生 設 備 の 導 入 コスト 削 減 の ため,CC Link IEフィールドネットワーク 同 期 通 信 機 能 に 対 応 させた MELSEC iq Rシリーズの 新 規 機 能 であるユ ニット 間 同 期 機 能 と 組 み 合 わせることで, 複 数 のシーケンサ システムによる 同 期 制 御 を 簡 単 に 実 現 可 能 とした また,ラ インのリレイアウトや 設 備 の 追 加 に 伴 う 保 守 コストを 削 減 す るため,CC Link IEコントローラネットワークをメタルケー ブルに 対 応 した ライン 型,スター 型,リング 型 配 線 等 のト ポロジーが 自 由 に 選 べ, 装 置 の 追 加 削 除 を 簡 単 に 行 える 3. 7. 2 ネットワーク 全 体 のシームレスな 連 携 当 社 はCC Link IEに 加 え, 豊 富 なパートナー 製 品 を 利 用 できるフィールドネットワーク(CC Link), 高 速 高 信 頼 の 同 期 型 モーションネットワーク(SSCNET Ⅲ/H), センサ アクチュエータを 分 散 制 御 できるフレキシブルな センサネットワーク(AnyWire)など, 顧 客 の 目 的 用 途 に 合 わせて 適 材 適 所 なネットワークを 提 供 している さ らにMELSEC iq Rシリーズでは,SLMPによる 各 ネッ トワークのシームレスなデータ 通 信 を 可 能 にしている( 図 8) SLMPは,ネットワークのアプリケーション 層 に 対 応 するシンプルなクライアントサーバ 型 の 共 通 プロトコル で,ネットワークの 階 層 境 界 を 意 識 せず,どの 機 器 から でも 同 じ 方 法 でアクセスを 可 能 にする また,ソフトウェ ア 開 発 だけで 対 応 製 品 を 開 発 できるため, 市 販 の 様 々な 機 器 とも 簡 単 に 接 続 できる 今 後,シリアル 通 信 など 対 応 ネッ トワークを 拡 充 するとともに, 機 器 のプロファイル 情 報 や FBをGOTなど 他 機 器 と 共 有 し,ネットワークのどこから でもパラメータ 設 定 やモニタ 診 断 を 可 能 にするなど,ネッ トワーク 導 入 保 守 の 容 易 化 を 進 める 3. 7. 3 ネットワークのオープン 化 CC Link IEは, 既 にグローバルスタンダードとなって いるCC Linkと 同 じCC Linkファミリーである オープ ン 化 を 推 進 するCC Link 協 会 のパートナー 企 は2,097 社 (2014 年 3 月 末 時 点 )に 達 しており,CC Link IE 接 続 機 器 の 拡 充 を 進 めている さらに, 半 導 体 FPD(Flat Panel Display) 界 の 国 際 規 格 (SEMI), 日 本 標 準 規 格 (JIS), 中 国 国 家 規 格 (GB), 国 際 標 準 化 規 格 (ISO,IEC), 韓 国 国 家 図 7. 次 世 代 エンジニアリング 環 境 図 8.ネットワーク 26 (512) 三 菱 電 機 技 報 Vol.88 No.9 2014
規 格 (KS), 台 湾 規 格 (CNS)を 取 得 しているCC Linkに 続 き,CC Link IEもSEMIを 取 得 するなど 国 際 標 準 化 規 格 への 対 応 を 推 進 している 3. 8 センサ 連 携 近 年 の 生 現 場 では 製 造 ラインから 様 々な 情 報 を 収 集 す るセンサの 数 が 膨 大 となり 管 理 も 複 雑 化 している 当 社 は, 生 設 備 の 立 ち 上 げ 運 用 保 守 コスト 削 減 に 貢 献 する iq Sensor Solution(iQSS) を2012 年 11 月 に 展 開 開 始 した ( 図 9) iqssに 基 づいたセンサシステムでは, 様 々なメー カーのセンサの 設 定 と 管 理 が1つのエンジニアリングツー ル 上 で 一 括 して 行 えるため,センサ 群 の 一 体 運 用 が 可 能 で, センサ 個 別 の 設 計 は 不 要 でありシステムの 立 ち 上 げコスト を 削 減 できる また,センサのパラメータ 設 定 と 変 更,バッ クアップ/リストアをエンジニアリングツールから 容 易 に 行 えるため,センサの 運 用 保 守 コスト 削 減 が 図 れ, 生 現 場 でのトータルコスト 削 減 が 可 能 となる 今 後,iQSS 対 応 のセンサ 品 ぞろえを 広 げるため 国 内 外 のセンサメー カーとのパートナー 化 を 推 進 するとともに,MELSEC iq RシリーズのiQSS 対 応 を 進 め, 多 くの 生 現 場 のTCO 削 減 に 貢 献 していく 3. 9 駆 動 制 御 との 連 携 当 社 の 駆 動 機 器 は MELSERVO J4シリーズ を 始 め, 多 彩 なラインアップを 実 現 して 幅 広 い 駆 動 装 置 への 対 応 を 可 能 としている さらに,これらの 駆 動 制 御 にはシーケンサ とモーションコントローラを 組 み 合 わせた 当 社 独 自 のマル チCPUシステムによって, 駆 動 制 御 性 能 と 柔 軟 なシステ ム 拡 張 性 を 両 立 させてきた MELSEC iq Rシリーズでは このシステムを 更 に 強 化 し, 高 速 システムバスによるデー タ 交 換 周 期 の 高 速 化 (4 倍 )やモーション 制 御 の 高 速 化 ( 約 1.5 倍 )を 実 現 した さらにシーケンサ 制 御 との 親 和 性 や 使 いやすさを 改 善 している 3. 9. 1 高 精 度 同 期 制 御 の 実 現 ユニット 間 同 期 機 能 によって, 複 数 のモーション 制 御 ユ ニット(シンプルモーションユニット)を 同 期 させることが 可 能 となった( 図 10) これによって 駆 動 システムの 同 期 精 度 を 損 なうことなく 制 御 軸 数 の 拡 張 も 可 能 である 例 え ば 従 来 はシンプルモーション1 台 ごとに 最 大 16 軸 の 同 期 し かできなかったが, 複 数 台 のシンプルモーションで32 軸 以 上 の 同 期 制 御 が 可 能 となる このため,より 大 規 模 なシス テムでも 同 期 制 御 による 製 造 品 質 の 安 定 化,タクトタイム の 短 縮 につながる 3. 9. 2 エンジニアリングツールの 統 合 モーションCPUを 使 用 する 場 合,シーケンス 制 御 プロ グラム( 例 えばラダー)とモーション 制 御 プログラム(モー シ ョ ンSFC(Sequential Function Chart))で 別 々 に 制 御 プログラムやエンジニアリングツールが 必 要 であった MELSEC iq Rシリーズではシーケンス 制 御 命 令 にモー ション 専 用 命 令 を 拡 張 した これによって,GX Works3 だけでモーション 制 御 のプログラミングが 可 能 となってい る 当 然 ながら, 高 速 なモーション 制 御 が 必 要 な 場 合 は, 従 来 のMT Works2によるモーションSFCを 使 用 した 制 御 プログラムも 使 用 可 能 である 4.む す び 工 場 自 動 化 の 中 核 となるMELSEC iq Rシリーズの 開 発 及 びエンジニアリングツールやFAネットワーク 等 の 周 辺 製 品 の 最 新 技 術 について 述 べた 今 後 は,MELSEC iq Rシリーズの 品 ぞろえ 拡 充 (C 言 語 コントローラ, 計 装 コ ントローラ, 安 全 コントローラ 開 発 等 )と 耐 環 境 性 強 化 ( 高 温 腐 食 性 ガス 耐 性 の 対 応 等 )によって, 適 用 範 囲 を 拡 大 していく また,トラブル 時 の 一 括 データ 収 集 機 能 強 化 や パートナー 連 携 によるシミュレーション 強 化 によって, 保 全 性 向 上 及 び 上 流 設 計 での 利 便 性 向 上 など,e F@ctory を 更 に 進 化 させ,TCO 削 減 を 推 進 していく との の 図 9.iQSS(iQ Sensor Solution) 図 10. 駆 動 制 御 との 連 携 27 (513)