飯 舘 村 放 射 能 汚 染 状 況 調 査 (2016 年 3 月 25 日 -27 日 )の 報 告 2016 年 4 月 20 日 IISORA 放 射 能 調 査 チーム 今 中 哲 二 遠 藤 暁 菅 井 益 郎 市 川 克 樹 林 剛 平 上 澤 千 尋 澤 井 正 子 小 澤 祥 司 2011 年 3 月 11 日 地 震 津 波 をきっかけとして 福 島 第 1 原 発 事 故 がはじまってから5 年 が 経 過 し た 2013 年 秋 の 段 階 で 11 市 町 村 約 1200 平 方 km だった 避 難 指 示 の 対 象 区 域 は その 後 田 村 市 (2014/4/1) 川 内 村 の 一 部 (2014/10/1) 楢 葉 町 (2015/9/5)の 避 難 指 示 が 解 除 され 現 在 の 避 難 指 示 区 域 は 9 市 町 村 約 900 平 方 km となっている (その 他 に 伊 達 市 川 内 村 南 相 馬 市 の 特 定 避 難 勧 奨 地 点 160 カ 所 については 2014 年 12 月 までに 避 難 指 示 解 除 されている ) 飯 舘 村 では 来 年 春 に 予 定 されている 避 難 指 示 解 除 に 向 け この 数 年 大 規 模 な 除 染 作 業 が 実 施 された 結 果 村 内 の 至 るところ にフレコンバッグの 仮 仮 置 場 が 出 現 し 異 様 な 風 景 を 作 り 出 している( 図 1は 伊 丹 沢 地 区 仮 仮 置 場 1) 我 々のグループは 2011 年 3 月 末 より 定 期 的 に 飯 舘 村 の 放 射 能 汚 染 調 査 を 行 ってきた 最 初 の 調 査 は 事 故 直 後 に 大 変 な 汚 染 が 起 きているはずなのに 情 報 がほとんど 出 てこない というなかで の 緊 急 の 調 査 と 情 報 発 信 を 目 指 していた 現 在 の 我 々に 要 求 されている 役 割 は 継 続 的 な 調 査 に 基 づ く 現 状 把 握 と 将 来 に 関 する 確 かな 情 報 発 信 であろう この 3 月 26 日 に 事 故 からまる5 年 の 調 査 を 実 施 した 調 査 メンバー 今 中 ( 京 都 大 ) 遠 藤 グエン( 広 島 大 ) 菅 井 ( 國 學 院 ) 市 川 (オフィスブレイン) 小 澤 (IISORA) 林 ( 東 北 大 ) 澤 井 上 澤 ( 原 子 力 資 料 情 報 室 )に フォトジャーナリストの 豊 田 が 同 行 事 故 から5 年 ということもあって NHK( 石 原 ディレクター) TV 朝 日 ( 岸 本 ディレクター) MBS( 津 村 ディ レクター)の3TV クルーの 同 行 取 材 があった 調 査 日 程 -3 月 25 日 ( 金 ): 夕 方 に 三 々 五 々いいたてふぁーむに 集 合 今 中 小 澤 菅 井 市 川 上 澤 は 日 産 レンタカーでエルグランドを 借 り 福 島 駅 前 を 午 後 3 時 に 出 発 遠 藤 ら 広 島 大 組 は 別 のレンタカ 図 1. 飯 舘 村 伊 丹 沢 地 区 の 仮 仮 置 場 1.2016 年 3 月 27 日 撮 影. 1
ーで 早 めに 飯 舘 村 入 りし 土 壌 コアのサンプリング 午 後 6 時 前 からいいたてふぁーむでミーティン グ 翌 日 の 調 査 の 打 合 わせの 後 今 中 が 南 相 馬 川 房 地 区 と 川 俣 山 木 屋 乙 8 区 の 汚 染 調 査 結 果 を 報 告 その 後 は 飯 舘 村 地 元 関 係 者 を 交 えて 懇 談 -3 月 26 日 ( 土 ): 朝 7 時 半 にいいたてふぁーむを 出 発 し 走 行 サーベイを 開 始 午 前 10 時 に 長 泥 入 り 長 泥 地 区 内 の 走 行 サーベイの 後 十 文 字 交 叉 点 近 辺 にて 歩 行 サーベイ 12 時 前 にゲート 退 出 昼 食 は 前 日 に 予 約 していたセブンイレブン 弁 当 で 役 場 前 にて 昼 食 ( 役 場 は 閉 まっていた) 午 後 の 走 行 サーベイにて 飯 舘 村 全 域 を 終 了 ( 途 中 山 津 見 神 社 で 休 憩 )し 16 時 45 分 ふぁーむに 帰 着 澤 井 が 合 流 -3 月 27 日 ( 日 ):9 時 過 ぎにふぁーむを 出 発 し 小 宮 の 仮 置 場 を 見 物 した 後 蕨 平 の 仮 設 焼 却 場 を 見 物 調 査 メンバーは 三 々 五 々 帰 路 に エルグランド 組 は 川 俣 の 道 の 駅 のそば 屋 で 昼 メシした 後 新 装 移 転 した 椏 久 里 に 寄 ってコーヒー 今 中 は 14:16 福 島 発 のやまびこに 乗 って 帰 宅 へ 今 回 の 調 査 内 容 村 内 全 域 走 行 サーベイ:2011 年 3 月 の 最 初 のときから 続 けている 調 査 で 村 内 主 要 道 路 を 車 ( 日 産 エルグランド)で 走 行 しながら 定 点 で 停 車 して 車 内 の 放 射 線 量 率 を 測 定 し 村 内 の 線 量 率 分 布 を 求 める 2011/3/29 2011/10/5 2012/3/27 2013/3/17 (2014/3/16) 2014/4/26 2015/3/26 に 続 く7 回 目 2014/3/16 は 積 雪 40cm のため 参 考 データ 長 泥 地 区 歩 行 サーベイ:2012 年 3 月 から 続 けている 調 査 で 飯 舘 村 内 で 最 も 大 きな 汚 染 を 受 け ている 長 泥 地 区 の 十 文 字 交 叉 点 近 辺 の 道 路 を 散 策 しながら 家 屋 玄 関 先 での 放 射 線 量 率 を 測 定 2012/3/27 2013/3/17 2014/4/26 2015/3/26 に 続 く5 回 目 土 壌 サンプリング: 飯 舘 村 数 カ 所 の 定 点 で 長 さ 30cm の 土 壌 コアをサンプリング( 広 島 大 グルー プ 担 当 ) 調 査 結 果 村 内 走 行 サーベイ 日 産 のワゴン 車 エルグランドで 村 内 の 主 要 道 路 を 走 りながら 定 点 で 一 旦 停 車 し 2 列 目 左 座 席 に 座 った 今 中 が 日 立 ALOKA 製 の CsI ポケットサーベイメータ PDR-1112つを 両 手 にもって 膝 の 位 置 での 空 間 線 量 率 を 読 み 取 った 今 回 は 236 カ 所 で 測 定 し 解 析 にはその 平 均 値 を 用 いた 各 測 定 点 の 座 標 は GARMIN 製 GPS で 記 録 した また 比 較 のため 広 島 大 のフランス 製 Million Technologies 社 製 NaI スペクトロサーベイメータ SPIR-ID をエルグランドの 後 部 荷 物 置 き 場 において 車 内 測 定 を 行 った SPIR-ID では 走 行 サーベイ 中 0.5 秒 ごと 放 射 線 量 率 と 座 標 を 記 録 した 走 行 サーベイの 放 射 線 量 率 は 車 体 と 人 体 とで 遮 蔽 される 分 車 外 に 比 べると 小 さな 値 である 表 1は 今 回 3カ 所 で PDR-111 測 定 によって 車 内 と 車 外 を 比 較 して 求 めた 放 射 線 透 過 係 数 である 平 均 は 0.77 つまり 道 路 上 ではエルグランド 車 内 の 測 定 値 の 約 3 割 増 し と 言 ってよい ( 去 年 は 4 カ 所 の 平 均 で 0.61 だった 今 年 との 違 いの 原 因 を 検 討 中 ) 表 1. 走 行 サーべイ( 日 産 エルグランド) 車 内 への 放 射 線 量 率 透 過 係 数 測 定 場 所 車 内 車 外 線 量 率 μsv/h 透 過 車 外 平 均 μsv/h 左 1m 後 1m 右 1m 前 1m 係 数 長 泥 地 区 道 路 上 1.0 1.9 1.3 1.15 1.4 1.44 0.70 旧 直 売 所 駐 車 場 0.44 0.57 0.53 0.54 0.54 0.545 0.80 山 津 見 神 社 駐 車 場 0.36 0.43 0.42 0.44 0.46 0.435 0.83 < 透 過 率 平 均 =0.77> 2
μsv/h (a) μsv/h (b) 図 2. 走 行 サーベイデータの 内 挿 に 基 づく 飯 舘 村 内 の 放 射 線 量 率 分 布 マップ. 上 (a):pdr-111.236 カ 所 の 測 定 値 ( 黒 )は 1.29 倍 して 道 路 上 の 値 に 換 算 してから 内 挿. 下 (b):spir-id. 約 4 万 7000 の 測 定 値 ( 青 線 )は まず PDR-111 を 基 準 とする 感 度 比 較 を 基 に 1.27 倍 し さらに 道 路 上 への 換 算 のため 1.29 倍 した. データの 内 挿 には ArcGIS を 用 い Kriging/Disjunctive 法 で 行 った. 3
図 2は 走 行 サーベイによる 測 定 値 を 道 路 上 の 値 に 換 算 し 地 理 情 報 システム ArcGIS を 用 いて 飯 舘 村 全 域 の 放 射 線 量 率 マップを 作 成 したものである 上 (a)は PDR-111 測 定 に 基 づくもので 下 (b)は SPIR-ID 測 定 に 基 づく 両 者 は 全 体 では 似 たパターンを 示 しているが 微 妙 に 違 っている 一 番 の 違 いはデータの 数 (236 対 4 万 7000)で データが 多 い SPIR-ID の 方 が 細 かいマップになっ ているが 必 ずしもそれがベターとも 思 えない むしろ 走 行 サーベイに 基 づく 内 挿 マップの 不 安 定 さの 現 れと 思 っておこう 走 行 サーベイ 平 均 線 量 率 μsv/h 100 10 1 各 調 査 日 の 平 均 値 14/3/16 積 雪 40cm 減 衰 の 理 論 曲 線 Cs137 Cs134 0.1 2011/1/1 2012/1/1 2013/1/1 2014/1/1 2015/1/2 2016/1/2 2017/1/2 調 査 の 日 図 3. 走 行 サーベイによる 平 均 車 内 放 射 線 量 率 の 推 移. 表 2. 放 射 線 量 率 分 布 のパラメータ μsv/h. 調 査 日 測 定 ポイ 標 準 偏 最 小 10パーセ メディア 90パーセ 平 均 値 ント 数 差 値 ンタイル ン ンタイル 最 大 値 2011 年 3 月 29 日 130 6.7 4.5 1.5 2.5 5.7 15.2 20.0 2011 年 10 月 5 日 122 1.9 0.98 0.45 0.81 1.8 3.6 5.3 2012 年 3 月 27 日 139 1.8 1.1 0.29 0.65 1.6 3.5 5.5 2013 年 3 月 17 日 170 1.3 0.82 0.27 0.50 1.2 2.6 4.7 2014 年 3 月 16 日 * 209 0.57 0.34 0.11 0.22 0.48 1.0 2.6 2014 年 4 月 26 日 238 1.1 0.67 0.19 0.38 0.90 2.2 4.4 2015 年 3 月 26 日 257 0.77 0.55 0.13 0.27 0.65 1.5 3.7 2016 年 3 月 26 日 236 0.55 0.41 0.10 0.19 0.44 1.0 3.0 *;2014 年 3 月 16 日 は 約 40cm の 積 雪 だったが 道 路 上 は 除 雪 されていた. 図 3は 走 行 サーベイの 平 均 線 量 の 推 移 をプロットしたもので 表 2には 線 量 率 分 布 のパラメー タを 示 した( 車 内 線 量 率 であり 道 路 上 への 補 正 はなし) 図 3の 実 線 は 2012 年 3 月 27 日 の 放 射 線 量 率 が 1.8μSv/h だったとして (2011 年 3 月 の 土 壌 サンプルで 測 定 した 放 射 能 組 成 を 用 いて)そ の 前 後 の 物 理 的 減 衰 だけを 考 慮 した 理 論 曲 線 である 2011 年 3 月 末 には ヨウ 素 131( 半 減 期 8 日 )やテルル 132/ヨウ 素 132( 半 減 期 3 日 )の 影 響 が 大 きかったが 半 年 後 にはそうした 半 減 期 の 短 い 核 種 は 消 滅 し それ 以 降 はセシウム 134( 半 減 期 2 年 )とセシウム 137( 半 減 期 30 年 )が 主 体 である 2014 年 までは 測 定 値 と 理 論 曲 線 がよく 一 致 しているが 2015 年 2016 年 と 測 定 値 の 方 が 小 さくな る 傾 向 が 認 められる 飯 舘 村 では 現 在 帰 村 に 向 けて 大 規 模 な 除 染 が 実 施 されており 理 論 曲 線 よ り 測 定 値 が 小 さくなる 傾 向 が 現 れたのは 除 染 効 果 のように 見 える 4
長 泥 地 区 の 歩 行 サーベイ 飯 舘 村 でただひとつ 帰 還 困 難 区 域 に 指 定 されている 長 泥 地 区 については 走 行 サーベイに 加 えて 2012 年 より 長 泥 十 文 字 交 差 点 付 近 を 徒 歩 で 周 りながら 各 戸 の 家 屋 玄 関 前 などの 放 射 線 量 率 を PDR で 測 定 する 歩 行 サーベイ 調 査 を 行 っている 図 4は この 3 月 26 日 に 実 施 した 歩 行 サーベイに 基 づく 放 射 線 量 率 マップである 十 文 字 交 叉 点 の 北 側 の 低 いスポットは 2012 年 にモデル 除 染 が 実 施 さ れた 場 所 である この5 年 間 の 歩 行 サーベイについて 平 均 放 射 線 量 率 の 推 移 をプロットしたものが 図 5である 各 年 度 の 平 均 値 と 測 定 ポイント 数 は 2012:8.5µSv/h(177 点 ) 2013:5.7(159) 2014:4.4(73) 2015: 3.4(129) 2016:2.7(68)である 理 論 曲 線 の 計 算 方 法 は 図 3の 場 合 と 同 じで 2012 年 3 月 27 日 の 歩 行 サーベイ 平 均 値 に 合 わせてある 図 3と 同 じく 測 定 値 の 減 衰 が 理 論 曲 線 より 早 くなっている ことは 興 味 深 い 長 泥 地 区 では 2012 年 のモデル 除 染 以 降 除 染 作 業 はされていないので 除 染 の 影 響 ではなくて 放 射 性 セシウムの 流 出 や 土 壌 中 への 沈 降 による 効 果 が 主 ではないかと 思 われる ちなみ に 2013 年 以 降 の( 平 均 測 定 値 )/( 理 論 値 ) 比 を 計 算 してみると 2013 年 ;0.83 2014 年 ;0.83 2015 年 ;0.72 2016 年 ;0.66 となり 放 射 性 セシウムの 移 行 再 分 布 が 着 実 に 進 行 していると 思 わ れる 今 後 の 推 移 を 観 察 したい ( 図 3について 同 じく( 平 均 測 定 値 )/( 理 論 値 ) 比 を 計 算 してみ ると 0.92 0.91 0.78 0.64 となった ) μsv/h 図 4. 長 泥 地 区 十 文 字 交 叉 点 近 辺 の 走 行 サーベイ 結 果. 上 の 図 は Google 航 空 写 真. 5
走 行 サーベイ 平 均 線 量 率 μsv/h 100 10 各 調 査 日 の 平 均 値 減 衰 の 理 論 曲 線 Cs137 Cs134 1 2011/1/1 2012/1/1 2013/1/1 2014/1/1 2015/1/2 2016/1/2 2017/1/2 調 査 の 日 図 5. 長 泥 地 区 歩 行 サーベイによる 平 均 放 射 線 量 率 の 推 移. 理 論 値 は 2012 年 測 定 日 に 合 わせてある. 以 上 で 雑 ぱくながら この3 月 26 日 に 実 施 した 福 島 原 発 事 故 からまる5 年 の 飯 舘 村 の 放 射 能 汚 染 調 査 のまとめとしておく 参 考 :これまでの 調 査 報 告 2011 年 3 月 :http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/nsrg/seminar/no110/iitatereport11-4-4.pdf 2012 年 3 月 :http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/nsrg/fksm/iitate201203.pdf 2013 年 3 月 :http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/nsrg/isp/iitatereport2013-3-17.pdf 2014 年 3 月 4 月 :http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/nsrg/fksm/iitate_memo14-7-2.pdf 2015 年 3 月 :http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/nsrg/fksm/iitate_memo15-4-13.pdf 3 月 27 日 朝 のいいたてふぁーむ 出 発 前 の 集 合 写 真 6