Economic Trends マクロ 経 済 分 析 レポート テーマ: 原 油 2ドル/バレルの 衝 撃 発 表 日 :8 年 5 月 23 日 ( 金 ) ~ 今 年 度 1ドル=1 円 想 定 で 家 計 負 担 増 74,756 円 / 年 経 常 利 益 13.3% 押 下 げ~ 第 一 生 命 経 済 研 究 所 経 済 調 査 部 主 席 エコノミスト 永 濱 利 廣 (3-5221-4531) エコノミスト 鈴 木 将 之 (3-5221-4547) ( 要 旨 ) 原 油 高 騰 が 続 いており 今 後 の 日 本 経 済 に 及 ぼす 影 響 が 注 目 される 一 部 では 29 年 度 以 降 の 原 油 価 格 について1バレル 2 ドルを 前 提 とした 中 期 経 営 計 画 を 策 定 する 企 業 も 出 現 している 原 油 価 格 の 上 昇 は ガソリン ジェット 燃 料 油 灯 油 等 の 石 油 製 品 石 油 化 学 基 礎 製 品 有 機 化 学 中 間 製 品 合 成 樹 脂 ゴム 等 の 化 学 製 品 電 気 ガス 熱 供 給 窯 業 原 料 非 鉄 金 属 鉱 物 等 の 鉱 業 といった 部 門 を 中 心 に 価 格 上 昇 圧 力 をかける 今 後 の 為 替 が 平 均 1 円 /ドルのもとで WTIが 今 年 度 末 に 2 ドル/バレルまで 上 昇 し うち 半 分 が 各 部 門 の 産 出 価 格 に 転 嫁 されるとすれば 企 業 物 価 企 業 向 けサービス 価 格 消 費 者 物 価 に それぞれ+2.8% +.7% +1.3% 程 度 の 押 上 げ 圧 力 がかかる 一 方 家 計 の 負 担 増 加 額 を 試 算 す れば 2 ドル 到 達 ケースで 世 帯 平 均 74,756 円 / 年 となり 品 目 別 ではガソリン 灯 油 等 の 石 油 製 品 電 力 都 市 ガス 小 売 飲 食 店 道 路 輸 送 娯 楽 サービス 等 の 負 担 が 増 える 逆 に 投 入 価 格 上 昇 分 のうち 産 出 価 格 に 転 嫁 できない 部 分 のコスト 増 は 最 終 的 に 産 業 全 体 のコス トを+14.3 兆 円 程 度 押 上 げる 部 門 別 に 見 れば 石 油 製 品 を 筆 頭 に 電 力 ガス 熱 供 給 化 学 製 品 運 輸 建 設 商 業 といった 部 門 でコストが5 千 億 円 以 上 増 加 することになる 原 油 価 格 の 上 昇 は 企 業 収 益 や 賃 金 の 抑 制 を 通 じた 個 人 消 費 や 設 備 投 資 の 押 下 げを 通 じて 経 済 成 長 も 抑 制 する 為 替 1 円 /ドル 推 移 今 年 度 末 にWTI2 ドル 到 達 を 想 定 すれば 今 後 3 年 間 の 実 質 GDPと 法 人 企 業 経 常 利 益 の 前 年 比 をそれぞれ 8 年 度 に.6% 13.3% 9 年 度 に 1.% 7.2% 1 年 度 に.9% 4.2% 程 度 押 し 下 げる 経 済 のグローバル 化 や 寡 占 化 によって 今 後 も 原 油 や 穀 物 金 属 をはじめとした 資 源 価 格 が 高 水 準 で 推 移 すれば 資 源 の 多 くを 輸 入 に 頼 る 一 方 で 人 口 減 少 等 により 国 内 市 場 の 拡 大 が 抑 制 される 日 本 経 済 は 構 造 的 に 苦 境 に 立 たされやすい 1バレル 2 ドル 時 代 に 現 実 味 原 油 高 騰 が 続 いている( 資 料 1) WTIは5 月 22 日 に 一 時 1バレル=135 ドル 台 をつけるなど 14 ドル 台 乗 せも 現 実 味 を 帯 びてきており 経 済 活 動 に 及 ぼす 影 響 が 注 目 される こうした 中 一 部 では 原 油 1バレル 2 ドルを 前 提 に 中 期 経 営 計 画 を 策 定 する 企 業 も 出 現 している 原 油 価 格 が 上 昇 すれば 直 接 的 には 企 業 の 投 入 コストが 上 昇 し その 一 部 が 産 出 価 格 に 転 嫁 される ことから 変 動 費 の 増 分 が 売 上 高 の 変 化 分 に 比 べて 大 きいほど 利 益 に 対 する 悪 影 響 が 大 きくなる つ まり 原 油 価 格 の 上 昇 が 企 業 収 益 に 及 ぼす 影 響 は 企 業 の 価 格 転 嫁 の 動 向 如 何 で 大 きく 異 なってくる また 価 格 が 転 嫁 された 分 は 家 計 にとっては 最 終 製 品 の 価 格 上 昇 を 通 じて 実 質 購 買 力 の 低 下 をも たらす となれば 売 上 の 面 からも 企 業 収 益 に 悪 影 響 が 及 ぶことから 原 油 価 格 が 上 昇 すれば 個 人
消 費 や 設 備 投 資 への 悪 影 響 を 通 じて 経 済 成 長 率 にも 影 響 を 及 ぼしうる そこで 本 稿 では 産 業 連 関 表 やマクロ 計 量 モデルを 用 いて 今 年 度 の 平 均 ドル 円 レートが 1 円 / ドルのもとで WTIの 価 格 が 年 度 末 に11 ドル/バレル 215 ドル/バレル 32 ドル/バレ ルになった 場 合 に それぞれ 物 価 や 企 業 収 益 などを 通 じてマクロ 経 済 に 及 ぼす 影 響 を 試 算 してみた( 資 料 1 2) (ト ル/バレル) 25 2 15 1 5 27 年 1 月 27 年 3 月 27 年 5 月 27 年 7 月 資 料 1 今 後 のWTIの 想 定 ケース3 予 測 ケース2 ケース1 27 年 9 月 27 年 11 月 28 年 1 月 28 年 3 月 28 年 5 月 28 年 7 月 ( 出 所 )ロイター 予 測 は 第 一 生 命 経 済 研 究 所 28 年 9 月 28 年 11 月 29 年 1 月 29 年 3 月 (ト ル/ 円 ) 125 12 115 11 15 1 95 9 27 年 1 月 27 年 3 月 27 年 5 月 27 年 7 月 資 料 2 ドル 円 レートの 想 定 27 年 9 月 27 年 11 月 28 年 1 月 28 年 3 月 28 年 5 月 予 測 ( 出 所 )ロイター 予 測 は 第 一 生 命 経 済 研 究 所 28 年 7 月 28 年 9 月 28 年 11 月 29 年 1 月 29 年 3 月 原 油 2 ドル 到 達 で 家 計 の 負 担 増 は 年 74,756 円 まずは 原 油 高 騰 が 製 品 やサービス 価 格 に 及 ぼす 影 響 について 試 算 してみよう 具 体 的 には 平 成 18 年 版 簡 易 延 長 産 業 連 関 表 から 導 かれる 均 衡 価 格 モデル 1 を 用 いて それぞれのケースについて 企 業 がコスト 増 の 半 分 を 価 格 転 嫁 した 場 合 の 物 価 上 昇 率 を 試 算 した まず 各 物 価 統 計 への 影 響 についてみると 原 油 の 想 定 により 影 響 は 大 きく 異 なるが 特 に 今 年 度 末 2 ドルのケースを 想 定 すれば 企 業 物 価 企 業 向 けサービス 価 格 消 費 者 物 価 をそれぞれ+2.8% +.7% +1.3% 程 度 押 し 上 げることになる( 資 料 3) これを 部 門 別 に 見 ると やはり 原 油 の 依 存 度 が 高 い 部 門 を 中 心 に 製 品 価 格 の 上 昇 圧 力 が 高 くなる ( 資 料 4) 最 も 上 昇 率 が 高 いのは ガソリン ジェット 燃 料 油 灯 油 軽 油 重 油 ナフサ 液 化 石 油 ガス 等 を 含 む 石 油 製 品 である それに 続 くのが エチレン プロピレンや 石 油 化 学 系 芳 香 族 製 品 等 が 含 まれる 石 油 化 学 基 礎 製 品 となる 更 に 原 油 を 原 料 とする 都 市 ガス 電 力 熱 供 給 業 等 も 上 昇 する また 石 油 化 学 基 礎 製 品 を 原 料 とする 有 機 化 学 中 間 製 品 や 合 成 樹 脂 合 成 ゴム 等 も 上 昇 し 石 灰 石 等 を 含 む 窯 業 原 料 鉱 物 や その 他 の 非 金 属 鉱 物 も 価 格 押 上 げ というように 幅 広 い 分 野 に 影 響 が 出 ることになる このように 原 油 価 格 の 上 昇 は 石 油 製 品 をはじめ 化 学 製 品 電 力 ガス 熱 供 給 鉱 業 といっ た 部 門 を 中 心 に 製 品 価 格 を 押 し 上 げることになる 一 方 こうした 価 格 上 昇 は 家 計 の 負 担 増 をもたらす そこで 続 いては 一 般 市 民 生 活 上 への 影 響 を 見 るべく 原 油 価 格 上 昇 の 半 分 を 企 業 部 門 が 転 嫁 した 場 合 に 家 計 部 門 に 及 ぶ 負 担 増 加 額 について 各 部 門 の 消 費 額 増 加 分 を 全 国 の 世 帯 数 で 除 して 求 めてみた すると 世 帯 の 年 平 均 負 担 増 加 額 は 年 度 1 産 業 連 関 表 に 示 されている 様 々な 原 材 料 コストの 積 み 上 げによって 製 品 価 格 が 決 まるという 前 提 で 価 格 の 波 及 効 果 を 測 定 するも の それぞれの 製 品 価 格 の 上 昇 率 は その 製 品 一 単 位 を 製 造 するために 他 の 企 業 から 購 入 した 原 材 料 部 品 燃 料 輸 送 サービスな どのコスト 増 加 分 の 総 計 を 元 の 製 品 価 格 で 除 して 求 めた その 意 味 で 各 部 門 の 価 格 上 昇 率 は 生 産 コストの 上 昇 率 あるいは 増 加 した 諸 々のコストを 全 て 製 品 価 格 に 転 嫁 した 場 合 の 生 産 者 価 格 の 上 昇 率 を 示 すものとも 言 える ただし 人 件 費 減 価 償 却 費 など のいわゆる 付 加 価 値 部 分 は 変 化 しないと 仮 定 している
末 1 ドル/バレルケースでは 16,41 円 / 年 にとどまるが 同 15 ドル/バレルケースでは 45,967 円 / 年 となり 同 2 ドル/バレルケースに 至 っては 74,756 円 / 年 にまで 達 すると 計 算 される 従 って 今 後 の 原 油 価 格 の 動 向 次 第 では 価 格 面 から 家 計 部 門 に 及 ぼす 影 響 も 大 きくなるといえよう( 資 料 5) なお 分 野 別 に 見 れば ガソリン 軽 油 等 の 石 油 製 品 を 筆 頭 に 電 力 都 市 ガス 小 売 飲 食 店 道 路 運 送 娯 楽 サービス 等 といった 品 目 の 消 費 価 格 に 値 上 げ 圧 力 がかかることになる このように 我 々の 日 常 生 活 に 及 ぼす 影 響 まで 考 慮 すれば 原 油 価 格 の 上 昇 は 家 計 にも 甚 大 な 影 響 を 及 ぼすことが 予 想 される 3 2.5 2 1.5 1.5 資 料 3 原 油 高 騰 が 各 物 価 統 計 に 及 ぼす 影 響 2.79 2ドル 1.72 15ドル 1.31 1ドル.61.67.81.41.15.29 企 業 物 価 企 業 向 けサービ ス 物 価 消 費 者 物 価 ( 出 所 ) 日 銀 総 務 省 経 産 省 資 料 より 第 一 生 命 経 済 研 究 所 作 成 25 2 15 1 5 石 油 製 品 資 料 4 原 油 高 騰 が 各 部 門 別 の 価 格 に 及 ぼす 影 響 石 油 化 学 基 礎 製 品 都 市 ガス 有 機 化 学 中 間 製 品 電 力 合 成 樹 脂 合 成 ゴム 熱 供 給 業 2ドル 15ドル 1ドル 窯 業 原 料 鉱 物 その 他 の 非 金 属 鉱 物 ( 出 所 ) 日 銀 総 務 省 経 産 省 資 料 より 第 一 生 命 経 済 研 究 所 作 成 ( 円 / 年 ) 35, 3, 25, 2, 15, 1, 5, 3,47 18,697 石 油 製 品 6,675 電 力 都 市 ガス 資 料 5 原 油 高 騰 が 及 ぼす 家 計 の 負 担 増 2ドル 2ドル 合 計 74,756 円 15ドル 15ドル 合 計 45,967 円 1ドル 1ドル 合 計 16,41 円 6,536 3,541 4,19 5,951 2,399 2,177 1,836 3,659 1,338 1,468 1,257 1,153 2,177 1,435 1,36 1,129 777 1,475 773 79 527 478 43 93 322 276 253 ( 出 所 ) 日 本 銀 行 総 務 省 経 済 産 業 省 資 料 より 第 一 生 命 経 済 研 究 所 作 成 小 売 飲 食 店 道 路 貨 物 輸 送 娯 楽 サービス その 他 の 対 個 人 サービス 道 路 旅 客 輸 送 医 療 原 油 2 ドル 到 達 は 企 業 のコストを 14.3 兆 円 押 上 げ 一 方 企 業 が 原 油 価 格 上 昇 の 半 分 を 製 品 価 格 に 転 嫁 すれば 各 部 門 のコスト 増 をもたらす そこで 続 いては 原 油 価 格 の 上 昇 分 のうち 半 分 を 産 出 価 格 に 転 嫁 した 場 合 に 及 ぶコスト 増 加 額 について 産 業 連 関 表 を 用 いて 算 出 してみよう 産 業 全 体 への 影 響 から 確 認 すると コスト 増 の 半 分 を 価 格 に 転 嫁 して 他 の 部 分 が 変 化 しないと 仮 定 すれば 産 業 全 体 では+14.3 兆 円 ほどコストが 増 加 することになる( 資 料 6) これを 部 門 別 に 見 る と 原 油 への 依 存 度 等 の 違 いにより 影 響 度 がかなり 異 なることがわかる 具 体 的 には 石 油 製 品 への 影 響 が 大 きい 石 油 石 炭 製 品 の+5. 兆 円 を 筆 頭 に 電 力 ガス 熱 供 給 で+1.5 兆 円 石 油 化 学 基 礎 製 品 や 有 機 化 学 中 間 製 品 合 成 樹 脂 ゴム 等 への 影 響 が 大 きい 化 学 製 品 で+1.3 兆 円 道 路 輸 送 への 影 響 が 大 きい 運 輸 で+.8 兆 円 窯 業 原 料 や 非 鉄 金 属 鉱 物 を 通 じた 影 響 が 大 きい 建 設 で +.6 兆 円 小 売 等 の 商 業 で+.5 兆 円 というように 各 部 門 に 大 きなコスト 押 上 げ 圧 力 がかかる この 試 算 はあくまで 各 部 門 が 価 格 を 半 分 転 嫁 したことよる 各 部 門 のコスト 増 加 額 を 示 したもので あり 実 際 は 川 上 ほど 転 嫁 率 が 高 く 川 下 になるほど 転 嫁 率 が 低 くなる しかし 以 上 の 結 果 を 踏 ま えれば 石 油 価 格 の 上 昇 は 直 接 依 存 度 の 大 きくない 部 門 も 含 めて 幅 広 く 各 産 業 のコスト 増 をもたら
すといえる 資 料 6 原 油 価 格 の 高 騰 が 及 ぼす 各 部 門 へのコスト 増 加 額 ( 単 位 億 円 ) 順 位 部 門 2ドル 15ドル 1ドル 順 位 部 門 2ドル 15ドル 1ドル 1 石 油 石 炭 製 品 49,52 3,45 1,87 17 パルプ 紙 木 製 品 1,835 1,128 43 2 電 力 ガス 熱 供 給 15,438 9,492 3,389 18 一 般 機 械 1,87 1,111 397 3 化 学 製 品 13,93 8,51 2,874 19 農 林 水 産 業 1,516 932 333 4 運 輸 7,978 4,95 1,751 2 窯 業 土 石 製 品 1,243 764 273 5 建 設 6,65 3,729 1,331 21 通 信 放 送 956 588 21 6 商 業 5,292 3,254 1,162 22 金 融 保 険 912 561 2 7 対 個 人 サービス 4,426 2,722 972 23 金 属 製 品 867 533 19 8 その 他 の 製 造 工 業 4,33 2,663 951 24 水 道 廃 棄 物 処 理 86 529 189 9 輸 送 機 械 3,778 2,323 829 25 不 動 産 813 5 179 1 対 事 業 所 サービス 3,328 2,46 731 26 非 鉄 金 属 652 41 143 11 食 料 品 3,7 1,849 66 27 繊 維 製 品 459 282 11 12 電 気 機 械 2,956 1,818 649 28 分 類 不 明 441 271 97 13 医 療 保 健 社 会 保 障 介 護 2,919 1,795 641 29 鉱 業 372 229 82 14 鉄 鋼 2,716 1,67 596 3 その 他 の 公 共 サービス 261 161 57 15 公 務 2,212 1,36 486 31 精 密 機 械 258 158 57 16 教 育 研 究 2,133 1,312 468 32 事 務 用 品 215 132 47 全 産 業 142,658 87,719 31,315 ( 出 所 ) 経 済 産 業 省 平 成 18 年 簡 易 延 長 産 業 連 関 表 より 第 一 生 命 経 済 研 究 所 試 算 経 済 成 長 率 への 影 響 は 来 年 度 がピーク 以 上 より 原 油 価 格 の 上 昇 はコスト 増 の 面 から 見 ても 甚 大 であるといえよう 特 に 部 門 別 に 見 れば 石 油 製 品 電 力 ガス 熱 供 給 化 学 製 品 運 輸 建 設 商 業 といった 部 門 に 大 きなコ スト 増 となる また 我 々の 日 常 生 活 に 関 連 する 分 野 としては ガソリン 灯 油 や 光 熱 水 道 費 等 の 値 上 げを 通 じて 購 買 力 を 阻 害 する 可 能 性 も 否 定 できない 従 って 原 油 価 格 の 上 昇 は 減 速 局 面 にある 日 本 経 済 に 対 する 大 きなリスク 要 因 と 考 えられる なお より 現 実 的 な 経 済 全 体 への 影 響 についてマクロ 計 量 モデルを 用 いて 試 算 すれば ドル 円 レー ト 1 円 /ドルの 下 でのWTI2 ドル 到 達 の 影 響 は 個 人 消 費 や 設 備 投 資 の 押 し 下 げを 通 じて 今 後 3 年 間 の 実 質 GDPおよび 法 人 企 業 の 経 常 利 益 をそれぞれ 28 年 度 に.6% 13.3% 29 年 度 に 1.% 7.2% 21 年 度 にも.9% 4.2% 程 度 押 し 下 げることになる( 資 料 7 8) 注 目 されるのは 企 業 収 益 への 影 響 は 28 年 度 がピークとなるが 経 済 成 長 率 への 影 響 はタイムラ グを 伴 い 29 年 度 がピークとなることである このように 原 油 価 格 の 上 昇 はマクロ 経 済 全 体 で 見 ても タイムラグを 伴 って 甚 大 な 悪 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 が 高 い -.2 -.4 -.6 -.8-1 -1.2 資 料 7 原 油 高 による 経 済 成 長 率 押 下 げ 効 果 -.6 -.7 -.4 為 替 原 油 計 -.6 -.9 -.7 -.6 -.9-1. 28 29 21 28 29 21 28 29 21 1 15 2-2 -4-6 -8-1 -12-14 資 料 8 原 油 高 による 経 常 利 益 前 年 比 押 し 下 げ 効 果 -8.5-2.8-1.9 為 替 原 油 計 -1.9-5. -3. -13.3-7.2-4.2 28 29 21 28 29 21 28 29 21 1 15 2 ( 出 所 )マクロモデルより 第 一 生 命 経 済 研 究 所 試 算 ( 出 所 )マクロモデルより 第 一 生 命 経 済 研 究 所 試 算 近 年 は 経 済 のグローバル 化 や 寡 占 化 が 進 展 しており 物 価 がこれまでと 比 較 して 世 界 の 需 給 条 件 を 反 映 した 水 準 よりも 高 く 決 まりやすくなっている 経 済 のグローバル 化 が 進 む 初 期 段 階 では 世 界 の 物
価 は 低 位 安 定 してきたが この 背 景 には 中 国 や 他 のアジア 諸 国 など 近 年 急 速 に 生 産 能 力 を 拡 大 させ てきた 国 々が 安 価 な 製 品 の 供 給 を 通 じて 先 進 国 の 価 格 動 向 にも 大 きな 影 響 を 及 ぼしてきたことがあ る しかし 新 興 諸 国 が 経 済 成 長 率 を 高 めた 23 年 頃 からはむしろ 経 済 のグローバル 化 は 実 体 金 融 両 面 を 通 じて 商 品 市 況 の 押 し 上 げ 要 因 として 作 用 している このため 今 後 も 世 界 経 済 の 高 成 長 が 持 続 すれば 世 界 の 商 品 市 況 は 更 なる 供 給 不 足 の 状 態 になる 可 能 性 があろう 従 って 今 後 もトレン ドとしては 企 業 の 原 材 料 価 格 が 高 止 まる 可 能 性 が 高 い これは 日 本 のように 原 油 をはじめとした 資 源 の 多 くを 海 外 に 依 存 する 国 々とっては 所 得 が 資 源 国 へ 流 出 し 続 ける 環 境 にあることを 意 味 する 資 源 を 海 外 に 依 存 していても 新 興 諸 国 のように 世 界 経 済 の 成 長 ペースを 大 きく 上 回 る 成 長 を 実 現 していれば 資 源 国 への 流 出 を 補 って 余 りある 所 得 の 拡 大 が 可 能 だ しかし 人 口 減 少 等 により 国 内 市 場 の 拡 大 が 抑 制 される 我 が 国 では 内 需 主 導 の 景 気 回 復 は 困 難 であり 所 得 の 拡 大 も 困 難 な 状 況 が 続 く 可 能 性 が 高 い 従 って 世 界 中 で 資 源 の 争 奪 戦 が 繰 り 広 げられる 限 り 日 本 経 済 は 構 造 的 に 苦 境 に 立 たされやすい 環 境 にあるといえる