IT 投 資 の 最 適 化 ~ 活 きたIT 投 資 に 向 けて~ 最 終 回 :ITを 通 じた 事 業 への 貢 献 ~ 業 務 リスクの 削 減 とIT 統 制 当 Newsletter では これまで IT 投 資 マネジメントについて 現 状 と 問 題 点 から 効 果 を 出 すための 考 え 方 と 方 法 を 事 例 を 交 えて 述 べてきました 我 々 CDI ソリューションズが 顧 客 に 対 して IT マネジメントの 構 築 や 個 別 IT 案 件 についての 投 資 をサポートする 際 には Newsletter 第 6 回 業 務 コストの 適 正 化 施 策 前 編 で 述 べたように 必 ず ワンセットで 企 業 の 状 態 を 把 握 し また 改 革 を 推 進 する 必 要 があると 考 えています 企 業 活 動 における 成 果 とは 業 務 を 通 じて 創 出 されるものであり 業 務 を 担 うのは 生 身 の 人 に 他 ならない ことが 我 々が 関 与 する 際 の 根 底 の 考 え 方 であるからです このような 考 え 方 に 対 して 過 去 には 話 が 大 袈 裟 すぎる トップまで 巻 き 込 まず IT 部 門 の 範 囲 内 で 事 を 上 手 く 運 びたい そこまで 範 囲 を 広 げられない といった 反 応 が 時 と してあったことも 事 実 です しかし 昨 今 では ワンセットでの 改 革 に 今 回 はどこまで 取 り 組 むか という 現 実 面 での 施 策 の 検 討 は 行 うにしても ヒトや 組 織 業 務 や 制 度 を 視 野 に 入 れた IT 整 備 の 推 進 が 必 要 であるという 考 え 方 に 異 論 を 唱 える 向 きは 少 ないと 思 いま す 当 Newsletter の 最 終 回 では 企 業 のリスクと 機 会 および IT を 含 めた 内 部 統 制 に 対 して これまで 述 べた IT 投 資 マネジメントの 考 え 方 がどのように 位 置 づけられ また 貢 献 するかについて 紹 介 し まとめとしたいと 思 います 企 業 にとってのリスク 近 年 毎 日 のように 経 営 者 がお 詫 び 記 者 会 見 で 頭 を 下 げる 光 景 を 目 の 当 たりにするように なりました 企 業 活 動 の 全 体 に 対 して 経 営 者 が 管 理 監 督 責 任 を 明 確 に 問 われているとい うことは 厳 しく 認 識 しておく 必 要 があると 思 います 例 えば BCP(Business Continuity Plan: 事 業 継 続 計 画 )を 立 案 し 災 害 発 生 時 などにおける 事 業 の 停 止 への 対 策 を 講 じるこ とが 求 められるようになっているのは この 企 業 責 任 への 要 求 水 準 の 高 まりの 端 的 なもの であると 言 えます 内 部 統 制 上 最 も 大 きなリスクは マネジメント オーバーライド(Management Override) と 呼 ばれるものです これは 社 長 や 部 長 など 権 限 を 有 する 管 理 職 によって 誰 のチェック も 受 けずに 独 断 専 行 で 為 される 不 正 を 指 します この 種 の 不 正 に 対 しては 社 内 のどのよ うな 権 限 に 対 しても 第 三 者 チェックなどの 検 証 がなされる 仕 組 みを 整 備 するとともに 不 正 が 行 われにくい 企 業 風 土 や 文 化 を 醸 成 することがもちろん 必 要 です しかしそれでも - 1
悪 意 を 持 った 人 間 の 計 画 的 な 行 為 は 完 全 には 防 げません このような 犯 罪 行 為 や 天 災 の 類 は 完 全 に 予 防 することは 不 可 能 であるため このような 状 況 に 陥 ったらどうする とい う 対 処 復 旧 の 施 策 を 準 備 しておくことが 極 めて 重 要 になります このように 社 会 的 責 任 を 負 う 企 業 はこんにち 犯 罪 行 為 や 災 害 に 起 因 する 不 利 益 や 混 乱 も コントロールすべし と 求 められています これらのリスクの 中 で 企 業 が 抱 えるもっ とも 大 きなリスクは 日 々 普 通 の 社 員 によって 遂 行 される 日 常 業 務 の 品 質 そのものと 言 えるのではないでしょうか この 種 のリスクの 怖 さは 犯 罪 や 天 災 とは 異 なるところにあ ります ひとりのちょっとした 気 の 緩 みが 明 日 には 通 常 になり 気 づかぬうちに 蔓 延 して 気 がつけばムリ ムラ ムダだらけの 業 務 のための 業 務 が 膨 れ 上 がることにあります IT 投 資 の 検 討 も このような 状 態 を 前 提 としてなされているかもしれません 一 旦 できあがった 組 織 や 制 度 は 今 度 はその 維 持 が 目 的 と 化 してしまいがちです しかし 社 会 や 経 営 の 環 境 は 日 々 変 化 しつつあり 企 業 で 働 く 人 間 もまた 同 様 です リスクを 最 小 化 しようと 思 うなら 刻 々と 変 化 する 状 況 を 適 切 に 把 握 して 迅 速 な 対 策 を 施 し 必 要 に 応 じて 手 を 打 てる 自 由 度 を 確 保 する 必 要 があります このための 前 提 となるのが 業 務 と IT の 可 視 化 に 他 なりません 見 えない 判 らない 対 象 はコントロールできません 我 が 社 で はどのような 業 務 プロセスによってビジネスが 成 り 立 っているか どこにどのようなリ スク( 不 正 やミス)が 発 生 し 得 るか IT はそれをどのようにサポートしているか IT に よってリスクをどのようにカバーしているか がわからないことには リスク 軽 減 のチャ ンスはないと 言 っていいでしょう リスク 認 識 と 企 業 価 値 の 向 上 企 業 価 値 を 図 る 上 での 重 要 な 評 価 基 準 の 1 つとして 企 業 が 生 み 出 す 成 果 (リターン)が あげられます ところで 過 去 成 功 している 企 業 が 将 来 にわたって 成 果 を 上 げ 続 ける 保 証 はありませんから 将 来 成 果 を 上 げ 得 るか を 判 断 するための 情 報 すなわち どのよ うなリスクを 認 識 コントロールし ヒト モノ カネ 情 報 という 資 源 をどのように 投 入 するか についての 姿 勢 や 考 え 方 その 実 行 を 担 保 する 仕 組 みについての 情 報 が 必 要 と されます 換 言 すれば 企 業 が 掲 げる 売 上 高 前 年 比 120% の 類 の 数 値 だけでは 信 用 さ れず なぜ 120%といえるのか? 120%を どのように 達 成 するのか? という 根 拠 が 求 められていると 言 えます 企 業 活 動 に 関 わるさまざまなリスクと 機 会 を 冷 徹 に 把 握 し 経 営 資 源 の 投 入 と 業 務 遂 行 を 正 しく 実 施 することによってのみ 我 が 社 は 成 果 をあげ 得 る と 表 明 する 資 格 を 得 られま す 企 業 価 値 を 向 上 させるには どうリスクを 認 識 し どの 機 会 に 挑 戦 するか ( 経 営 戦 略 )と 戦 略 意 思 決 定 の 土 台 となる リスクと 機 会 を 把 握 管 理 ( 統 制 )する 仕 組 み ( 組 織 体 制 )が 欠 かせません( 図 表 1) - 2
企 業 価 値 の 評 価 リスクとリターンによる 評 価 投 資 に 対 する 将 来 のリターン 経 営 戦 略 リスクと 機 会 の 将 来 仮 説 リスクと 機 会 の 管 理 組 織 体 制 業 務 遂 行 統 制 コンプライ アンス リスクの 最 小 化 業 務 とITの 可 視 化 ( 図 表 1) リスクとリターンの 統 制 による 企 業 価 値 向 上 業 務 と IT の 可 視 化 の 重 要 性 可 視 化 あるいは 見 える 化 という 言 葉 は 企 業 経 営 においては 既 に 一 般 化 した 言 葉 だ と 言 えます もちろん 可 視 化 そのものは 目 的 ではなく 把 握 できないものはコントロール できない のですから 可 視 化 はコントロールあるいは 意 思 決 定 のための 前 提 のひとつに 過 ぎません 見 えない ことの 弊 害 や 不 具 合 業 務 の 非 効 率 性 や 判 断 の 困 難 さは 多 くの 人 が 実 感 していることと 思 います まず 見 えるようにしよう は 避 けて 通 れない 重 要 な ステップです 特 に IT については どこでどんなシステムが 稼 働 していて どのように 使 われているか が 把 握 されている 企 業 は 多 くないというのが これまでの 我 々の 経 験 で す IT の 可 視 化 の 重 要 性 は 多 くの 企 業 で 認 識 されているにも 関 わらず 実 際 に 必 要 な 可 視 化 が 実 現 されないのは 可 視 化 への 投 資 からの 成 果 回 収 に 熟 達 していないからであるといって いいでしょう 新 旧 取 り 混 ぜて 錯 綜 する 多 くの 情 報 の 整 理 部 門 間 の 情 報 伝 達 の 壁 の 他 得 た 情 報 を 他 者 が 判 るように 表 現 する 技 術 さらには 個 々の 人 間 がもつ 理 解 の 枠 組 みの 壁 たしかに 可 視 化 の 達 成 と 更 新 には 多 くの 努 力 とコストが 必 要 とされます し かし 例 えば 新 システムの 仕 様 について 激 論 が 交 わされている 中 その 業 務 をやめてしま え! という 発 想 や それを 言 える 根 拠 場 の 納 得 感 は 可 視 化 された 情 報 の 共 有 なしに は 獲 得 され 難 いものだと 感 じます - 3
コントロールのためには 可 視 化 が 前 提 ではありますが 実 はこの 前 提 の 充 足 が 最 大 のチャ レンジと 言 えます IT アセットの 可 視 化 (Newsletter 第 5 回 )やシステムマップの 作 成 ( 同 第 4 回 )に 際 しては ぜひこのことを 再 確 認 した 上 で 取 り 組 んでいただきたいと 思 います IT 統 制 可 視 化 に 関 連 して 内 部 統 制 の 視 点 からの IT 統 制 について 簡 単 に 触 れておきます 既 にご 存 知 のとおり 日 本 版 SOX 法 においては 米 SOX 法 での 内 部 統 制 の 構 成 要 素 に 対 して IT への 対 応 が 付 加 されています これは IT は 企 業 活 動 に 不 可 欠 であり 従 っ て IT への 有 効 な 内 部 統 制 は 不 可 避 であるにもかかわらず 日 本 企 業 においては IT そのも のに 対 するコントロールおよび 企 業 IT の 実 態 そのものが 米 国 に 較 べ 未 成 熟 である 点 が 要 因 として 考 えられます このことは 我 々CDI ソリューションズの J-SOX 関 連 プロジェクト を 通 じた 経 験 からも 言 えることです 当 Newsletter では 第 1 回 で IT 投 資 の 現 状 と 問 題 点 を 述 べました 使 われないシステム は 企 業 活 動 の 成 果 に 貢 献 しないばかりか 不 良 債 権 化 することも 第 4 回 で 述 べました これ らのことから 言 えるのは IT 統 制 整 備 を 企 業 価 値 向 上 の 機 会 と 捉 え 業 務 と IT 全 般 の 棚 卸 しを 行 う 取 り 組 みとすべきということです 特 定 のシステムや 機 能 が 使 われていないとき その 業 務 はどのように 処 理 されているので しょう 逆 に 使 われていないシステムの 情 報 の 適 切 さを 保 証 することに どのような 意 味 があるのでしょうか 情 報 システムが 複 雑 化 肥 大 化 あるいは 不 良 債 権 化 する 大 きな 要 因 のひとつは 業 務 が 整 理 されないことです もし 各 部 門 独 自 の 要 求 仕 様 があるのだとし たら それら 業 務 には 必 ず 独 自 の 統 制 手 段 がセットになっていなければなりません バラ バラな 統 制 手 段 を 適 切 に 運 用 することの 愚 かさはいうまでもありません 企 業 としては 業 務 と IT の 可 視 化 を 進 めるための 絶 好 の 機 会 として 内 部 統 制 の 視 点 を 導 入 すべきであると 思 います 潜 在 していたリスクを 洗 い 出 し それらを 新 たな 付 加 価 値 に 繋 げるチャンスだ と 捉 えらるべきです 当 Newsletter の 結 びにかえて 当 Newsletter では IT 投 資 マネジメントの 必 要 性 と 取 組 みのあり 方 を 事 例 を 交 えて 紹 介 してきました ここで 読 者 に 伝 えたかった 内 容 のすべては 我 々CDI ソリューションズの 知 識 と 経 験 およびこのテーマに 携 わる 者 としての 根 拠 となる 考 え 方 または 価 値 観 から 産 み 出 されたものです テーマと 内 容 に 合 わせて 経 営 用 語 や IT 用 語 を 用 いていますが IT 投 資 の 考 え 方 そのものは 極 めてシンプルなものだと 思 っています それは 例 えば 成 果 を 上 げたいなら 上 がるように 計 画 せよ コントロールしたいなら 可 視 化 せよ というもの - 4
です 使 い 古 された 言 葉 ではありますが これは PDCA サイクル( 経 営 層 から 現 場 レベル まで)の 確 立 とそれを 実 行 するための 基 盤 ( 業 務 組 織 体 制 IT) 構 築 をしっかりとやっ ていくことに 他 なりません ところが 既 に 見 てきたとおり IT 投 資 に 関 しては これ らの 取 り 組 みがなされていない 企 業 もまだまだ 多 いと 感 じています 一 昨 年 の 12 月 から 9 回 に 渡 って 発 行 してきた 当 Newsletter が 今 後 の 皆 様 の IT 投 資 マネジメントへの 取 り 組 みの 一 助 になれば 幸 いです CDI ソリューションズ ディレクター 森 田 克 己 (もりた かつみ) - 5