調 査 レポート 2008/ 春 No.61 調 査 報 告 最 近 の 電 子 マネーの 動 向 1.はじめに 電 子 マネー1の 市 場 が 急 拡 大 している ここ 数 年 での 普 及 拡 大 の 推 進 役 となってきたのが Edy(エディ) や Suica(スイカ) に 代 表 されるリアル 型 電 子 マネーであるが 2007 年 に は 首 都 圏 の 私 鉄 バス 会 社 による PASMO(パ スモ) セブン&アイによる nanaco(ナナコ) イオングループによる WAON(ワオン) と 新 しい 電 子 マネーの 発 行 が 相 次 いだ 電 子 マネ ーは 一 定 のサービス 仕 様 が 出 揃 い これから 本 格 的 な 拡 大 期 を 迎 えるとみられる 本 レポート では 最 近 の 電 子 マネーの 動 向 をみるとともに 今 後 の 普 及 に 向 けての 課 題 点 等 を 探 る 2. 電 子 マネーの 現 状 電 子 マネーとは 金 銭 的 価 値 をICカード 等 に 蓄 積 し( 前 払 い 式 ) それを 用 いて 決 済 を 行 う 小 額 決 済 用 のツールであり 利 用 場 所 からリアル 型 とサイバー 型 とに 大 別 される( 図 表 1) リアル 型 は 主 に 現 金 の 代 わりに 交 通 機 関 や 一 般 の 店 舗 コンビニ 等 で 利 用 されており EdyやSuica PASMO nanaco WAONなどがあ る 一 方 サイバー 型 は もともとゲームや 音 楽 ソフトウェアなどのデジタルコンテンツ 販 売 向 けに 開 発 された 決 済 方 法 で インターネッ ト 中 心 に 利 用 されている 金 銭 的 価 値 をネット 上 のサーバーで 管 理 する サーバーウォレット (server wallet) 型 と 顧 客 の 端 末 で 管 理 する ク ライアントウォレット(client wallet) 型 とがある が 主 なサイバー 型 電 子 マネーは いずれもサ ーバーウォレット 型 である なお リアル 型 電 子 マネー 発 行 会 社 が 提 供 す るおサイフケータイ 用 の モバイルEdy や モ バイルSuica 等 は リアル 店 舗 インターネッ ト 両 方 で 使 えることから 中 間 的 な 存 在 とも 言 えるが 分 類 上 はサイバー 型 の クライアント ウォレット 型 に 分 類 される 主 な 事 業 会 社 サービス 開 始 年 ( 図 表 1) 主 な 電 子 マネーの 種 類 リアル 型 サイバー 型 交 通 系 流 通 系 Edy Suica PASMO ICOCA nanaco WAON WebMoney BitCash デジコイン NET CASH Pちょコム セブン&アイ ビットワレット JR 東 日 本 パスモ JR 西 日 本 ホールディ イオン ウェブマネー ビットキャッ NTTカードソリ NTT コ ミ ュ ニ UFJニコス シュ ューションズ ケーションズ ングス 2001 年 11 月 2004 年 3 月 2007 年 3 月 2005 年 10 月 2007 年 4 月 2007 年 4 月 1999 年 4 月 1997 年 6 月 2001 年 7 月 2002 年 3 月 2001 年 11 月 リアル 型 電 子 マネーについては 近 年 急 拡 大 が 提 供 するEdyは サービス 開 始 が2001 年 と 古 く 続 いている( 図 表 2) 電 子 マネーの 発 行 元 の 業 種 電 子 マネーの 草 分 け 的 存 在 である 2007 年 12 月 から 電 子 マネー 発 行 専 業 交 通 系 流 通 系 の 末 現 在 ( 以 下 同 じ) 累 計 発 行 枚 数 が3,600 万 枚 3つに 大 別 して 具 体 的 にみていく 月 間 決 済 件 数 は2,250 万 件 に 上 る 利 用 可 能 店 舗 電 子 マネー 発 行 専 業 であるビットワレットが は71,000 店 と 群 を 抜 いて 多 い 1 本 稿 では 予 め 現 金 または 預 金 と 引 き 換 えに 電 子 的 な 金 銭 的 価 値 をICカード 等 に 蓄 積 するような 前 払 式 のものを 扱 うこととし いわゆるポストペイ 型 電 子 マネーと 呼 ばれる 小 額 クレジット 決 済 ( 現 在 id Quicpay Smartplus/ VISA Touchなど)については あくまでクレジットカードの 範 疇 とした 17
中 央 三 井 トラスト ホールディングス 交 通 系 電 子 マネーとしては 2004 年 3 月 からJR 東 日 本 がサービス 開 始 したSuicaが 主 に 駅 中 施 設 等 での 利 用 を 増 やし 累 計 発 行 枚 数 は1,984 万 枚 月 間 決 済 件 数 は1,892 万 件 と 急 拡 大 している 2007 年 3 月 には Suicaとの 相 互 利 用 で 注 目 を 集 めたPASMOのサービスが 開 始 され サービス 開 始 からわずか4 日 間 で100 万 枚 を 突 破 し 一 時 在 庫 切 れとなるほどであった PASMOの 累 計 発 行 枚 数 は660 万 枚 と 年 度 の 目 標 枚 数 500 万 枚 を 大 幅 に 上 回 っている これで SuicaとPASMOあわせ た 発 行 枚 数 は 約 2,600 万 枚 月 間 決 済 件 数 は 約 2,200 件 とほぼEdyに 匹 敵 する 形 となった Suicaを 巡 っては 2008 年 3 月 からは ICOCA(イ コカ JR 関 西 )やTOICA(トイカ JR 東 海 交 通 SF 機 能 のみ)との 相 互 利 用 も 始 まる 他 空 路 (JAL 04 年 12 月 提 携 ANA 07 年 11 月 提 携 ) でも 利 用 可 能 となった また 駅 ナカから 街 ナカまで の 動 きとして すでにイオンとの 業 務 提 携 に 加 え トヨタファイナンスとの 提 携 に より 2008 年 3 月 から 首 都 圏 名 古 屋 圏 でのタク シーや 飲 食 店 等 を 中 心 にQUICPayとの 共 有 端 末 の 導 入 を 開 始 する 予 定 であるなど Suica 利 用 圏 が 大 きく 広 がり 利 便 性 がアップする 予 定 である 流 通 系 電 子 マネーとして 注 目 されたのが 07 年 4 月 からサービスが 開 始 された セブン&アイ によるnanacoとイオンによるWAONである nanacoは 全 国 約 1 万 2 千 店 のセブンイレブンで 使 える 利 便 性 の 高 さから 累 計 発 行 枚 数 530 万 枚 月 間 決 済 件 数 については 3,000 万 件 と 主 要 電 子 マネーで 最 多 となった 一 方 のWAONは 発 行 枚 数 220 万 枚 ( 利 用 件 数 は 非 公 表 )とやや 低 調 であるが Suicaとの 提 携 で 着 実 な 拡 大 が 見 込 まれる ( 図 表 2) 主 要 電 子 マネーの 普 及 状 況 ( 万 枚 万 件 ) 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 WAON nanaco PASMO Suica Edy 決 済 件 数 計 流 通 系 交 通 系 2,000 1,000 0 2002 年 末 2003 年 末 2004 年 末 2005 年 末 2006 年 末 2007 年 末 ( 注 )1.Suicaの 発 行 枚 数 は 電 子 マネー 対 応 のみ 2. 決 済 件 数 は 1ヵ 月 当 たり 平 均 件 数 非 公 表 のWAONを 除 く 合 計 ( 資 料 ) 各 社 公 表 資 料 より 作 成 一 方 のサイバー 型 電 子 マネーについては 先 に 述 べたとおり 物 販 というよりむしろデジタ ルコンテンツの 購 入 に 利 用 されており 2006 年 12 月 の 日 経 金 融 新 聞 によれば 1000 億 円 程 度 に まで 拡 大 している デジタルコンテンツ 市 場 は 着 実 に 拡 大 しており デジタルコンテンツ 協 会 によれば 個 人 向 けとみられるインターネット 配 信 及 び 携 帯 電 話 配 信 のデジタルコンテンツの 市 場 規 模 は 2006 年 に 約 6,000 億 円 2007 年 ( 予 測 値 )には 約 7,300 億 円 と 拡 大 する 見 込 みである( 図 表 3) このうち 特 に 電 子 マネーの 利 用 決 済 が 高 いのがオンラインゲームである 首 都 圏 情 報 ベンチャーフォーラム オンライ ンゲーム 市 場 統 計 調 査 報 告 書 (2007) によれば 18
調 査 レポート 2008/ 春 No.61 オンラインゲームの 売 上 は2004 年 の578 億 円 か ら2006 年 に1,015 億 円 に 登 録 会 員 数 2 は2004 年 1,942 万 人 から4,198 万 人 へと 大 幅 に 増 加 してい る オンラインゲーム( 課 金 ベース 2005 年 デ ータ)の 登 録 会 員 の 年 齢 別 割 合 をみると 23~ 29 歳 が28%と 最 も 多 く 次 いで 30~39 歳 が24% 19~22 歳 が23% 18 歳 未 満 が18%と 会 員 の 多 くが 若 年 層 である このため クレジットカー ドを 保 有 していない 層 が 電 子 マネーを 利 用 して いるものとみられる ( 億 円 ) 2,500 2,000 1,500 図 書 画 像 テキスト ゲーム 音 楽 映 像 ( 図 表 3)デジタルコンテンツ 市 場 規 模 の 推 移 ( 億 円 ) 6,000 5,000 4,000 図 書 画 像 テキスト ゲーム 音 楽 映 像 3,000 1,000 2,000 500 1,000 0 0 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 予 測 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 予 測 インターネット 配 信 ( 注 )オンラインデータベースを 除 く ( 資 料 )( 財 )デジタルコンテンツ 協 会 デジタルコンテンツ 白 書 2007 携 帯 電 話 配 信 なお 携 帯 電 話 向 け 配 信 については 携 帯 電 話 会 社 の 公 式 サイトでの 利 用 が 多 く その 場 合 携 帯 電 話 の 通 話 料 金 と 合 算 する 形 が 多 かったが 最 近 では 携 帯 電 話 からPCサイトへ 接 続 する 機 能 が 充 実 し 携 帯 配 信 分 野 でも 電 子 マネー 決 済 が 増 加 する 可 能 性 は 大 きい ただし この 場 合 モバイルEdyやモバイルSuicaなどが 大 勢 を 占 め る 可 能 性 がある 3. 電 子 マネーのビジネスモデル ここで 改 めて 電 子 マネーのビジネスモデル をみてみよう( 図 表 4) まず 電 子 マネー 発 行 専 業 であるEdyの 場 合 を 見 る Edyの 大 きな 特 徴 としては Edyの 発 行 元 であるビットワレットが Edy 発 行 の 権 利 を 実 際 のカード 発 行 会 社 に 与 える(マルチ イシュア ー:multi issuer) 形 を 取 っていることにある ビジネスモデルの 構 成 は ビットワレット カ ード 発 行 体 3 加 盟 店 利 用 者 の4 者 からなる ビットワレットは Edyブランドの 管 理 や 清 算 業 務 加 盟 店 業 務 ( 募 集 管 理 等 )を 主 業 務 とする 一 方 実 際 のカード 発 行 や 利 用 者 獲 得 については 別 のカード 会 社 等 が 担 う 形 をとっている このため ビットワレットは 加 盟 店 獲 得 の ため 割 引 クーポンを 付 与 するなど 加 盟 店 支 援 サービスに 力 をいれ 一 方 実 際 に 電 子 マネ 2 各 ゲーム 提 供 会 社 の 課 金 ゲームにおける 登 録 会 員 数 の 累 積 であり 重 複 者 も 多 数 いるとみられる 3 カードの 発 行 体 はさらに Edyを 発 行 するバリューイシュアー(クレジットカード 会 社 や 銀 行 等 13 社 ) とEdy 搭 載 のカードのみを 発 行 する( 社 員 証 会 員 証 ポイントカードなどを 発 行 する 企 業 など)カード 発 行 者 に 分 けられ ており バリューイシュアーとカード 発 行 者 が 提 携 してカードが 発 行 される バリューイシュアーはプリカ 法 の 登 録 事 業 者 となる 必 要 があるが カード 発 行 のみの 場 合 は 事 業 者 登 録 の 必 要 がない 19
中 央 三 井 トラスト ホールディングス ーを 利 用 してもらうためには カード 発 行 会 社 であるクレジットカード 会 社 等 が 利 用 者 にプラ スアルファの 付 加 価 値 ( 一 般 的 にはポイント) を 付 与 するような 施 策 ( 例 えばEdyをクレジット でチャージするとポイントを 加 算 するなど)を 行 ってきており それが 電 子 マネー 利 用 のイン センティブになってきた しかしながら 貸 金 業 法 の 改 正 等 による 業 況 悪 化 もあって クレジ ットカード 会 社 は2008 年 よりクレジットでの 電 子 マネー 入 金 に 対 しポイント 加 算 を 止 めている 決 済 の 流 れについては まず 利 用 者 が 電 子 マネーを 購 入 (チャージ)し 電 子 マネー 会 社 はそ れに 相 当 する 代 金 を 受 け 取 る 利 用 者 が 実 際 に 加 盟 店 で 電 子 マネーを 利 用 すると 加 盟 店 に 手 数 料 分 を 差 し 引 いた 額 が 振 り 込 まれる ビッ トワレットの 主 な 収 益 源 は 加 盟 店 からの 手 数 料 であるが その 他 ライセンス システム 利 用 料 事 務 手 数 料 等 がある 次 に 交 通 系 や 流 通 系 の 電 子 マネーについて みてみよう このタイプは 電 子 マネーの 発 行 と 物 品 サービスの 提 供 を 同 じ 会 社 が 行 う 自 家 発 行 型 4 である 点 が 電 子 マネー 専 業 とは 異 なる ここでは Suicaの 例 を 見 てみよう 実 際 には JR 東 日 本 内 部 では 電 子 マネーの 発 行 業 務 加 盟 店 業 務 改 札 機 でのSuica 受 け 取 りなど いくつかの 事 業 部 に 分 担 して 運 営 がなされてい るが ここでは 簡 略 化 して 発 行 体 としてい る 決 済 の 流 れは Edyと 同 様 であるが 大 きく 異 なるのは 実 際 に 利 用 者 が 利 用 する 店 舗 も NEWDAYSなど 同 一 グループの 店 舗 が 基 本 とな っており 3 と4 の 動 きは 社 内 取 引 になる また クレジットによる 決 済 機 能 (チャージ)につ いても VIEWカードに 限 定 されている(ただし 2006 年 1 月 からサービスを 開 始 したモバイル Suicaについては 当 初 VIEWカードに 限 定 されて いたが 加 入 者 の 低 迷 もあって 同 年 10 月 から 他 のクレジットカードや 銀 行 からのチャージも 可 能 となった) 先 にも 述 べたが 加 盟 店 は 駅 ナカから 街 ナカまで という 動 きの 中 ファミ リーマートなどのコンビニやカメラ 量 販 店 ス ーパーなど 第 三 者 へも 順 次 拡 大 中 である Edy ( 図 表 4) 電 子 マネーのビジネスモデルと 資 金 の 流 れ Suica 4 利 用 代 金 を 入 金 JR 東 日 本 グループ 1 電 子 マネー 購 入 カード 発 行 体 3 決 済 データ 集 信 ビットワ レット 4 手 数 料 を 除 く 金 額 を 入 金 VIEWカード 4' 駅 中 店 舗 等 3' 2 発 行 体 1 4 3 加 盟 店 利 用 者 2 加 盟 店 で 利 用 加 盟 店 利 用 者 2 現 金 預 金 の 流 れ 電 子 マネーの 流 れ 社 内 取 引 電 子 マネー 発 行 専 業 以 外 の 事 業 会 社 が 発 行 体 まず 発 行 体 については クレジットカード あるいは 加 盟 店 として 電 子 マネー 事 業 に 参 入 会 社 は 電 子 マネーへのチャージとしてクレジ 導 入 する 目 的 を 考 えてみよう( 図 表 5) ット 利 用 を 促 し 潜 在 的 なクレジットカードの 4 現 在 電 子 マネーは 前 払 い 証 票 等 に 関 する 法 律 ( 通 称 プリカ 法 )に 依 拠 している 証 票 の 発 行 形 態 には 自 家 発 行 型 と 第 三 者 発 行 型 の2つがあり 前 者 は 証 票 の 発 行 者 からのみ 物 品 の 購 入 やサービスを 受 けることがで きるもの 後 者 はそれ 以 外 のもの 20
調 査 レポート 2008/ 春 No.61 利 用 を 開 拓 することにあるとみられる また 鉄 道 系 電 子 マネー 会 社 にとっては そもそも 電 子 マネー 事 業 自 体 は 乗 車 券 のICカード 化 に 付 属 して 始 まったものであり 鉄 道 利 用 者 への 利 便 性 向 上 で 鉄 道 利 用 を 増 やすこと( 集 客 効 果 )や 駅 中 店 など 関 連 会 社 の 売 上 増 にあろう また 流 通 系 電 子 マネー 会 社 にとっては 加 盟 店 側 のレジの 混 雑 緩 和 や 小 銭 のハンドリングコ ストの 削 減 といったメリットをそのまま 享 受 で きるという 点 もあるが 主 な 狙 いとしては 顧 客 の 囲 い 込 み 及 び 購 買 履 歴 データによるマーケ ティングにあると 思 われる 一 方 加 盟 店 側 にとっては メリットとして は レジの 混 雑 の 緩 和 や 小 銭 のハンドリングや 両 替 などのコスト 削 減 顧 客 の 囲 い 込 みや 販 促 への 利 用 が 考 えられる 一 方 デメリットとし ては 読 み 取 り 端 末 の 設 置 などの 導 入 コストが かかることや 現 金 化 までの 期 間 が 長 い 加 盟 店 手 数 料 が 発 生 するなどがあげられよう ( 図 表 5) 電 子 マネー 事 業 参 入 の 動 機 と 加 盟 店 側 の 導 入 メリット デメリット 電 子 マネー 発 行 体 加 盟 店 側 参 入 動 機 クレジットカード 会 社 :クレジットカードの 潜 在 的 市 場 の 開 拓 鉄 道 系 : 鉄 道 利 用 客 へのサービス 利 便 性 向 上 集 客 関 連 会 社 の 売 上 増 流 通 系 : 顧 客 の 囲 い 込 み(マーケティングデータの 取 得 ) メ リ ッ ト デ メ リ ッ ト レジの 混 雑 緩 和 小 銭 のハンドリングや 両 替 などのコスト 削 減 顧 客 の 囲 い 込 み(マーケティングデータの 取 得 ) 導 入 コストがかかる 現 金 化 までの 期 間 が 長 い 手 数 料 が 発 生 する 4. 今 後 の 課 題 好 調 に 拡 大 を 続 ける 電 子 マネー 市 場 であるが 電 子 マネー 事 業 の 採 算 という 面 では 依 然 厳 し い 状 況 にある Edyを 発 行 するビットワレットも 未 だに 赤 字 続 きである また Suicaも 中 期 経 営 計 画 等 で Suica 事 業 を 鉄 道 事 業 や 生 活 サービス 事 業 に 並 ぶ 中 核 事 業 にするとしているが 今 の ところまだ 発 展 途 上 である ただし これは 新 しい 決 済 手 段 が 使 用 できるようになるための 初 期 投 資 によるもので 投 資 採 算 は 今 後 普 及 が 拡 大 するかどうかにかかってこよう 今 後 電 子 マネーがより 普 及 していくには 共 有 化 と 信 頼 ( 安 全 ) 性 の 確 立 が 鍵 を 握 ろ う 電 子 マネーの 目 下 の 競 争 相 手 (competiter) は 現 金 であり いかに 現 金 利 用 者 を 取 り 込 める かにかかっている その 意 味 でも これまでも 普 及 の 後 押 しとなってきたマイレージなどの 企 業 ポイントとの 連 携 は 電 子 マネーを 利 用 する 大 きなインセンティブとして 働 こう また 現 金 と 同 じ 土 俵 に 立 つという 意 味 では どこでも 使 えるという 環 境 作 りが 欠 かせない 小 額 決 済 市 場 を 巡 っては 本 稿 では 触 れなか ったが 小 額 クレジット 決 済 (id QUICPay Smartplus/VISA Touch)もあり 規 格 が 乱 立 し ている 当 初 から 課 題 となっていた 読 み 取 り 端 末 の 共 有 化 は マルチリーダーなど 技 術 的 に は 可 能 になったものの 顧 客 の 囲 い 込 みなどの 思 惑 や 導 入 コスト 面 の 問 題 もあって それほど 進 んでいない また 共 用 端 末 が 導 入 されてい たとしても Edy+ 小 額 クレジット Suica+ 小 額 クレジット 決 済 のような 形 に 止 まっており 電 子 マネーの 主 戦 場 ともいえるコンビニでも 利 用 範 囲 が 限 定 されている 状 況 である ただし 今 春 には 複 数 の 電 子 マネー 対 応 の 自 販 機 の 実 用 化 も 計 画 されているほか 2 月 下 旬 からは 三 井 不 動 産 系 の 商 業 施 設 運 営 会 社 が SuicaとEdyを1 台 で 決 済 できる 初 の 読 み 取 り 端 末 の 運 用 を 開 始 するなどの 動 きもみられる なお 共 有 化 に 関 しては おサイフケータイ がICカードに 代 えて 主 流 となることで 大 きく 進 展 する 可 能 性 もある NFC ( Near Field Communication)という 現 在 の 非 接 触 ICの 技 術 21
中 央 三 井 トラスト ホールディングス 仕 様 5 より 上 位 の 規 格 への 互 換 が 可 能 となるか らである ドイツやアメリカではすでに 実 証 実 験 も 行 われており また 国 内 においても 2008 年 度 に 実 証 実 験 ( 国 際 規 格 のPayPassを 採 用 )を 実 施 する 予 定 である ただし おサイフケータ イに 関 しては すでにほとんどの 携 帯 電 話 には 機 能 が 標 準 装 備 されており 2007 年 3 月 末 時 点 約 3,000 万 台 と 携 帯 電 話 全 体 の3 分 の1まで 普 及 し ているが 実 際 に 電 子 マネー 機 能 を 利 用 してい るのは 2007 年 末 現 在 で841 万 台 (Edy Suica nanacoの 合 計 ) 電 子 マネーの 総 発 枚 数 に 占 める 割 合 は 約 13%とそれほど 進 んでいない おサイフケータイはICカードに 比 べて 利 点 も 多 いが( 図 表 6) アプリケーションのダウンロー ドなど 一 定 の 操 作 が 必 要 である 他 おサイフケ ータイの 売 り でもある 様 々な 機 能 が 一 つ に 集 約 できるという 点 が 逆 に 携 帯 電 話 の 紛 失 破 損 時 の 不 安 感 を 高 めている 後 者 に 対 す る 懸 念 は かなり 根 強 いものであると 思 われる ため 不 安 を 払 拭 するような 保 障 や おサイフ ケータイで 利 用 する 異 なる 事 業 者 のサービスに 対 して 万 が 一 の 際 には 一 括 して 対 応 できるよ うなサービス 等 をより 充 実 させるなど 相 応 の 工 夫 が 必 要 だろう ( 図 表 6)おサイフケータイのメリット(IC カード 対 比 ) 機 能 追 加 統 一 表 示 機 能 ( 残 高 照 会 履 歴 参 照 ) おサイフケータイ 携 帯 アプリの 追 加 で 利 用 サービスを 追 加 可 能 メモリの 範 囲 内 で 異 なる 事 業 者 のサービスを 同 時 搭 載 可 能 いつでも 確 認 できる オンラインサービス(チャージ) いつでも 可 能 セキュリティ 遠 隔 ロックができるなど セキュリティレ ベルが 向 上 (ただし 利 用 者 がロック 機 能 を 設 定 しない 場 合 は カード 型 と 同 様 ) IC カードタイプ 基 本 的 に 1 枚 のカードに 利 用 できるアプ リは 1 サービス 利 用 者 はサービス 毎 に 複 数 枚 のカードを 持 つことになる 決 まったリーダーライターの 使 用 が 必 要 ( 場 所 が 限 定 ) お 店 のチャージ 機 や 決 まったリーダーラ イターが 必 要 ( 場 所 が 限 定 ) 盗 難 紛 失 時 には 基 本 的 に 補 償 なし もう 一 方 の 信 頼 ( 安 全 ) 性 の 確 立 については 電 子 マネーは 現 在 のところ 包 括 的 に 規 律 する 法 制 等 はなく 前 払 式 証 票 等 の 規 制 に 関 する 法 律 (プリカ 法 )に 依 拠 しているのみである プリカ 法 では 発 行 者 に 対 する 供 託 義 務 が 定 められて いるが サーバーウォレット 型 電 子 マネーのよ うに 証 票 に 該 当 するものがない 電 子 マネーは 法 制 度 の 対 象 外 となっており サービス 提 供 社 の 破 綻 や 不 正 使 用 の 際 の 利 用 者 の 保 護 等 早 急 な 対 応 が 求 められている また 換 金 や 譲 渡 な ど 既 存 の 出 資 法 や 銀 行 法 などにも 抵 触 しかね ない 事 例 も 出 てきている こうした 中 金 融 庁 でも 決 済 に 関 する 研 究 会 でルール 作 りについて 検 討 が 重 ねられてお り 今 後 金 融 審 議 会 での 決 済 サービスに 関 す る 新 法 策 定 を 目 指 すという ただし 規 制 を 強 化 しすぎると かえって 普 及 の 足 かせにもなる 可 能 性 もあり 電 子 マネー 利 用 拡 大 に 向 けて 入 念 な 検 討 が 期 待 される ( 貞 清 栄 子 ) 5 非 接 触 ICの 技 術 仕 様 には TypeA TypeB Felicaがあり TypeA 方 式 は 欧 州 の 電 子 マネーで 採 用 されている 他 今 春 にも 始 まるタバコ 自 販 機 の 成 人 識 別 カード taspo(タスポ) が 該 当 する 日 本 国 内 向 けの 電 子 マネー や 小 額 クレジット 決 済 はFelicaを 採 用 22