パーソントリップ 沿 岸 域 学 会 誌,Vol.22 調 査 による No.2, pp.63-76 島 内 在 住 者 の 交 通 行 動 実 態 分 析 (Journal of Coastal Zone Studies) 論 文 2009 年 9 月 パーソントリップ 調 査 による 島 内 在 住 者 の 交 通 行 動 実 態 分 析 大 崎 上 島 を 事 例 として An Analysis of Travel Behavior of People Living in a Island Based on a Person Trip Survey Case Study of the Osaki-Kamijima Island * 岡 山 正 人 Masato OKAYAMA 要 旨 : 我 が 国 は 大 小 さまざまな 島 が 存 在 するが,こうした 島 々をはじめ 地 方 の 多 くの 地 域 では 過 疎 化, 高 齢 化 が 進 み, 特 に 高 齢 者 のモビリティの 確 保 が 大 きな 問 題 となっている しかし,こうした 地 域 では 住 民 の 交 通 特 性 を 分 析 するための 基 礎 的 なデータがほとんど 存 在 しないため,その 特 性 などはまったく 把 握 されてお らず,モビリティの 確 保 のための 計 画 案 の 策 定 などに 支 障 を 来 している そこで 本 研 究 では, 過 疎 化, 高 齢 化 が 著 しい 瀬 戸 内 海 に 浮 かぶ 大 崎 上 島 の 住 民 を 対 象 に, 都 市 部 などで 一 般 に 行 われているパーソントリップ 調 査 を 実 施 することにより, 島 民 の 交 通 行 動 の 特 性 について 分 析 した その 結 果, 島 民 の 交 通 行 動 に 関 する 基 礎 的 な 知 見 として,トリップ 数 やトリップ 目 的, 利 用 交 通 手 段 などの 実 態 を 明 らかにするとともに, 特 に 高 齢 者 の 交 通 行 動 の 特 性 について 考 察 した キーワード:パーソントリップ 調 査, 交 通 行 動, 過 疎 化, 高 齢 化.はじめに 我 が 国 は 大 小 さまざまな 島 が 存 在 するが,こう した 島 々をはじめ 地 方 の 多 くの 地 域 では 過 疎 化, 高 齢 化 が 進 み 特 に 高 齢 者 のモビリティの 確 保 が 大 きな 問 題 となっている 本 研 究 で 対 象 とする 大 崎 上 島 においてもこうした 問 題 に 対 処 するため, 近 年 コミュニティバスの 運 行 が 始 まった しかし, こうした 地 域 では 住 民 の 交 通 行 動 の 特 性 を 分 析 す るための 基 礎 的 なデータがほとんど 存 在 しないた め, 高 齢 者 の 交 通 行 動 の 特 性 などもまったく 把 握 されておらず,モビリティの 確 保 のための 計 画 運 行 に 支 障 を 来 している そこで 本 研 究 では, 瀬 戸 内 海 に 浮 かぶ 大 崎 上 島 の 島 民 を 対 象 にパーソントリップ 調 査 を 行 い,そ の 結 果 をもとに 島 民, 特 に の 高 齢 者 を 中 心 に,その 交 通 行 動 の 特 性 について 分 析 を 試 みた 高 齢 化 の 進 展 とともに, 高 齢 者 のモビリティに ) 関 する 意 識 構 造 や 交 通 行 動 を 明 らかにしようと した 研 究 がなされてきている その 内 本 研 究 と 同 様, 交 通 行 動 に 関 するものでは, 西 井 らがパーソ ントリップ 調 査 とアクティビティダイアリー 調 査 の 組 み 合 わせにより, 生 活 の 諸 活 動 との 関 連 で 高 齢 者 の 交 通 行 動 の 実 態 を 明 らかにしようとしたも のなどがある 2) しかしながら,これらの 研 究 は 都 市 部 を 対 象 としたものが 多 く, 本 研 究 のように 地 方 の 限 られた,しかも 島 のように 狭 く 隔 離 され * 正 会 員 広 島 商 船 高 等 専 門 学 校 流 通 情 報 工 学 科 -63-
岡 山 : た 地 域 を 対 象 としたものは 非 常 に 少 ない 2. 分 析 対 象 地 域 の 概 要 本 研 究 では, 過 疎, 高 齢 化 問 題 を 抱 える 島 とし て 大 崎 上 島 を 分 析 対 象 とした 図 は 大 崎 上 島 の 位 置 を, 表 はその 主 な 概 要 を 示 したものである 大 崎 上 島 は, 瀬 戸 内 海 のほぼ 中 央, 広 島 県 竹 原 市 の 沖 約 0km に 浮 かぶ 面 積 約 43.26km 2 の 島 であ る 2005 年 の 国 勢 調 査 によれば 大 崎 上 島 の 人 口 は 9,238 人 であるが,20 年 前 の 985 年 には 4,0 人 であり, 他 の 瀬 戸 内 海 の 島 々と 同 様 過 疎 化 が 急 速 に 進 んでいる 一 方, 高 齢 化 も 進 んでおり,65 歳 以 上 の 人 口 は 985 年 には 9.8%であったが,2005 年 現 在, 既 に 39.6%にもなっている 大 崎 上 島 は,かつて 東 野 町 大 崎 町 木 江 町 の 3 つの 町 からなっていたが,いわゆる 平 成 の 大 合 併 により, 現 在 は 大 崎 上 島 町 のひとつ の 町 に 合 併 した 近 隣 の 島 々は 呉 市 などと 合 併 し ており, 大 崎 上 島 は 行 政 的 には 取 り 残 された 感 が 大 崎 上 島 竹 原 今 治 三 原 図 大 崎 上 島 の 位 置 瀬 戸 内 海 新 居 浜 表 大 崎 上 島 の 概 要 位 置 瀬 戸 内 海 のほぼ 中 央, 広 島 県 竹 原 市 の 沖 約 0Km 面 積 約 43.26Km 2 人 口 9,238 人 (2005 年 国 勢 調 査 ) 人 口 密 度 約 23.5 人 /Km 2 (2005 年 国 勢 調 査 ) 本 州 および 四 国 とのアクセスとしてフェリー, 高 速 公 共 交 通 機 関 艇 がある また, 島 内 には 路 線 バスおよびコミュニ ティバスが 運 行 している 診 療 所 6 件 医 療 介 護 施 設 指 定 介 護 老 人 福 祉 施 設 2 件 介 護 老 人 保 健 施 設 件 島 内 は, 区 と 呼 ばれる 4 の 集 落 により 構 成 その 他 されており, 多 くの 区 には 集 会 所 がある あり, 町 役 場 への 負 担 はその 責 務 同 様, 財 政 的 に も 大 きくなってきている 大 崎 上 島 は, 昔 から 存 在 し, 現 在 は 区 と 呼 ばれている4 の 集 落 により 構 成 されている ほと んどの 区 には 集 会 所 もあり,その 利 用 頻 度 は 高 く, 婦 人 会 やサークルなども 多 く 存 在 し, こうした 集 会 所 を 利 用 することで 活 動 を 行 ってい る このように 区 を 単 位 としたコミュニティ としての 繋 がりは 非 常 に 強 い 大 崎 上 島 と 本 州 との 間 には 6 航 路 約 80 便 / 日 の フェリーや 高 速 艇 がある 他, 四 国 側 と 往 来 してい る 航 路 も 航 路 8 便 / 日 存 在 する また, 島 の 外 周 や 島 を 横 断 する 幹 線 となる 道 路 はほとんど 舗 装 さ れ, 車 が 容 易 に 通 行 できるようになっている そ の 一 方, 島 内 には 山 中 を 中 心 に 車 が 通 行 できない 狭 い 道 路 も 多 く 存 在 し, 外 周 道 路 沿 いだけではな く,こうした 狭 い 道 沿 いにも 民 家 が 点 在 してい る また, 公 共 交 通 機 関 としては, 主 に 外 周 道 路 を 通 行 する 路 線 バスや, 近 年 ではコミュニティバス も 運 行 をはじめており,モビリティという 点 では 他 の 瀬 戸 内 海 の 島 々に 比 べ 恵 まれているとする 見 方 もある しかしながら, 近 隣 の 島 々が 橋 によっ て 本 州 と 陸 続 きになってきたこと, 島 内 の 路 線 バ スは 補 助 金 を 受 け 運 行 されているが,この 数 年 内 には 補 助 金 もうち 切 られる 予 定 であり,その 運 行 の 継 続 が 懸 念 されていること,また,コミュニテ ィバスの 運 行 もまだ 始 まったばかりでもあり, 島 民 に 浸 透 しているとは 言 い 難 く, 不 満 の 声 も 多 い など, 必 ずしも 今 後 の 状 況 は 恵 まれていない こ うしたことから, 島 内 での 移 動 はそのほとんどを 自 動 車 に 頼 っているものと 思 われる また, 島 内 には 診 療 所 が 6 件, 介 護 施 設 に ついては 指 定 介 護 老 人 福 祉 施 設 が 2 件 ある 他, 介 護 老 人 保 健 施 設 も 件 ある 近 年 2 件 の ス ーパーマーケット, 件 の 日 曜 大 工 店 が 島 に -64-
パーソントリップ 調 査 による 島 内 在 住 者 の 交 通 行 動 実 態 分 析 進 出 している しかしながら,これらの 施 設 は 島 内 に 点 在 する 形 で 存 在 しており, 自 動 車 を 利 用 で きない 者 にとってはこれらの 施 設 を 利 用 すること は 大 変 不 自 由 な 状 態 になっている 3. 使 用 データの 概 要 3. 大 崎 上 島 を 対 象 としたパーソントリップ 調 査 の 概 要 本 研 究 では, 大 崎 上 島 住 民 の 交 通 行 動 の 実 態 を 探 るためパーソントリップ 調 査 を 行 った パーソ ントリップ 調 査 とは, 人 の 一 日 の 移 動 行 動 を 対 象 に 調 査 することにより, 住 民 の 交 通 行 動 の 特 性 や 交 通 全 般 の 実 態 を 把 握 しようとするもので, 大 都 市 を 中 心 に 定 期 的 に 行 われているものである 3) 本 調 査 は 2006 年 月 に 約 ヶ 月 をかけて 行 っ たもので, 島 内 のNPO 法 人 かみじまの 風 の 協 力 を 得, 婦 人 会 や 区 長 会 を 通 して 調 査 票 を 配 布 し ていただくとともに,これらの 方 々に 被 験 者 の 調 査 票 への 記 入 に 際 しそのサポートもお 願 いした こうした 方 法 で 調 査 を 実 施 したのは, 高 齢 化 率 が 高 い 島 内 で 調 査 を 行 う 場 合, 高 齢 により 調 査 票 へ の 記 載 が 困 難 となる 場 合 が 多 く 想 定 され, 高 齢 者 のデータが 著 しく 少 なくなることが 懸 念 されたこ と,また, 役 場 などから 島 内 で 郵 送 等 によるアン ケートを 実 施 すると, 回 収 率 が 0%にも 満 たない 可 能 性 が 高 い,といった 意 見 をいただいたためで ある なお, 調 査 対 象 としたのは 小 学 校 高 学 年 以 上 の 島 民 で, 先 に 述 べた 区 単 位 に, 配 布 に 協 力 い ただいた 人 たちとともに,できるだけ 無 作 為 にな るように 調 査 対 象 を 選 び, 調 査 に 協 力 していただ ける 方 のみにアンケートを 配 布 することとした 主 な 調 査 内 容 は, 一 般 のパーソントリップ 調 査 と 同 様, 回 答 者 の 属 性 ( 性 別, 年 齢, 居 住 区, 自 動 車 免 許 の 保 有 の 有 無 など),2トリップの 発 着 地 および 発 着 刻,3トリップ 目 的,4 利 用 交 通 手 段,などとした ゾーニングは, 島 内 は 先 に 述 べた 区 をひとつのゾーンとして4 ゾーンを 考 え, 島 外 は 竹 原 市 三 原 市 旧 安 芸 津 町 と いうように 合 併 以 前 の 行 政 区 とした その 結 果 そ の 他 を 含 め 64 ゾーンを 設 定 した また, 通 常 のパーソントリップ 調 査 では 事 前 に 決 めた 特 定 の 一 日 の 交 通 行 動 を 調 査 し, 曜 日 も 火 曜 から 木 曜 を 対 象 に 行 われている しかしながら, 本 調 査 では 先 述 したような 調 査 方 法 の 特 性 上, 被 験 者 一 人 一 人 の 調 査 には 大 変 長 い 間 を 要 し, 調 査 票 を 受 け 取 る 日 は, 最 初 と 最 後 の 被 験 者 とでは ヶ 月 近 くの 違 いが 出 る そのため, 特 定 の 一 日 の 交 通 行 動 を 調 査 することは 困 難 であると 考 え, 被 験 者 には 調 査 票 を 受 け 取 った 日 に 一 番 近 い 平 日 の 交 通 行 動 を 記 載 してもらうこととした すなわ ち, 平 日 に 調 査 票 を 受 け 取 った 被 験 者 にはその 日, またはその 前 日 が 平 日 であれば 前 日 の 行 動 を, 土 日 であればその 日 に 一 番 近 い 金 曜 日 の 行 動 を 記 載 してもらった このため, 通 常 のパーソントリッ プ 調 査 では 対 象 とならない 月 曜 や 金 曜 のデータも 含 まれているが, 事 前 のヒヤリング 調 査 では 平 日 と 休 日 とでは 交 通 行 動 に 大 きな 違 いがあるものの, 平 日 であれば 曜 日 による 差 は 見 られなかった 以 下 では,こうして 得 られたデータを 基 に, 島 民 の 平 日 の 交 通 行 動 の 特 性 について 分 析 を 試 みる 3.2 調 査 結 果 の 概 要 分 析 精 度 のことを 考 えるとデータは 多 い 程 良 く, 調 査 前 にはまずは 人 口 の 約 割 に 当 たる 000 票 程 度 の 調 査 票 の 回 収 を 目 指 していた しかしなが ら, 実 際 には 先 に 述 べたような 方 法 で 調 査 を 実 施 したため, 回 収 に 間 が 掛 かったことや, 調 査 そ のものに 協 力 していただけなかった 人 も 少 なくな く, 結 果 として 有 効 な 回 答 として 回 収 できたのは 調 査 実 施 年 度 の 島 民 人 口 9,088 人 の 約 7.9%に 当 た る 722 票 のみであった -65-
岡 山 : この 回 収 した 調 査 票 の 男 女 比 を 調 べたところ, 図 2 に 示 すように 島 の 実 際 の 男 女 比 とほぼ 同 じ, 男 性 約 46%, 女 性 約 54%であった また,65 歳 以 上 の 高 齢 者 の 比 率 を 調 べたところ, 図 3 に 示 す ように 約 5%で, 調 査 の 実 際 の 比 率 の 40.4%に 比 べ 少 なくなっていた 高 齢 者 の 調 査 票 への 記 載 の 困 難 さを 考 慮 し, 先 に 述 べたような 方 法 で 調 査 を 実 施 したが,このような 結 果 となった 調 査 の 手 伝 いをしていただいた 方 々からは,70 歳 を 超 え る 高 齢 者 では 調 査 票 への 記 入 だけではなく, 調 査 そのものへの 拒 否 反 応 も 強 く, 高 齢 者 への 調 査 の 困 難 さを 認 識 させられる 声 が 聞 かれた なお, 回 収 した 調 査 票 のうち 学 生 生 徒 は 約 5%, 専 業 主 婦 は 約 7%, 無 職 は 約 9% となっており, 約 70%は 何 らかのかたちで 職 に 就 いているものであった では 専 業 主 婦 が 約 30%, 無 職 が 約 42%となっており,この 2 つで 7 割 以 上 を 占 めていた 図 4 では, 交 通 行 動 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすと 考 えられる 自 動 車 免 許 の 有 無 について 調 べた この 図 を 見 ると, 免 許 を 持 たないもの は 全 体 の 3% であることがわかる なお,65 未 満 では 免 許 を 持 たないものの 比 率 は 8%であったのに 対 し,65 歳 以 上 では 約 40%が 免 許 を 持 たないものであった 一 般 に, 性 別 や 職 種, 特 に 学 生 か 専 業 主 婦 かな どによっても 交 通 行 動 は 異 なるものと 考 えられる しかしながら, 今 後 のさらなる 高 齢 化 の 進 展 に 向 けて 特 に 高 齢 者 の 交 通 行 動 を 知 ることが 非 常 に 重 要 であるものと 考 えられること,その 高 齢 者 のサ ンプルデータが 少 ないこと,さらには, 性 別 や 職 種 など 様 々な 個 人 属 性 による 違 いを 分 析 できるほ どサンプル 数 がないことなどから, 以 下 では 回 収 した722 票 を の 高 齢 者 とそれ 未 満 の 者 と のみに 分 けて 分 析 することとした なお,こうしたことから 本 研 究 での 分 析 対 象 は, 65 歳 未 満 では 何 らかの 職 に 就 いているもの(65 歳 未 満 のデータの 内 の 約 79%), では 専 業 主 婦 無 職 のものが 中 心 となっている 4. 高 齢 者 のトリップ 特 性 の 概 要 ここでは, 上 述 したデータをもとに, 島 民, 特 に 高 齢 者 のトリップ 特 性,すなわち,トリップ 数 やトリップ 目 的, 利 用 交 通 手 段 などを 分 析 する 分 析 結 果 の 考 察 では, と 未 満 の 相 違 を 見 ることで, 高 齢 者 の 交 通 特 性 を 分 析 するとともに, 都 市 計 画 中 央 情 報 センター の 配 布 している 全 4) 国 都 市 パーソントリップ 調 査 集 計 結 果 を 用 い て 一 般 の 都 市 部 との 違 いも 見 ることとした 5% 女 性 54% 男 性 46% 図 2 アンケートデータの 男 女 の 比 率 5 歳 以 上 3% 5 歳 以 上 65 歳 未 満 82% 図 3 アンケートデータの 年 齢 構 成 免 許 無 し 3% 免 許 有 り 87% 図 4 アンケートデータの 免 許 の 有 無 の 比 率 4. トリップ 数 図 5 は, 得 られた 調 査 票 をもとに, 一 人 日 当 たりの 平 均 トリップ 数 とトリップ 数 の 分 布 状 況 を, 65 歳 未 満 と の 高 齢 者 に 分 けて 図 示 した ものである この 図 より,65 歳 未 満 の 平 均 トリッ プ 数 は 2.93, では 3.0 と, の 方 が 少 し 多 くなっている 分 布 状 況 を 見 ると 何 れ も 2 トリップ/ 日 が 半 分 を 示 しており,4 トリッ プ/ 日 までで 85% 以 上 占 めている こうした 中 で, では 4 トリップ/ 日 が 20%を 越 えてお り 65 歳 未 満 と 若 干 の 違 いが 見 られる -66-
パーソントリップ 調 査 による 島 内 在 住 者 の 交 通 行 動 実 態 分 析 60% 50% 40% 55% 50% 平 均 トリップ 数 65 歳 未 満 :2.93 :3.0 65 歳 未 満 20% 8% 6% 4% 2% 65 歳 未 満 30% 20% 0% 0% 7% 4% 2% 6% 5% 7% 8% 8% 2トリップ 3トリップ 4トリップ 5トリップ 6トリップ 以 上 0% 8% 6% 4% 2% 0% 6 7 8 9 0 2 3 4 5 6 7 8 9 2 0 2 2 図 5 日 当 たりのトリップ 数 の 分 布 図 6 間 帯 別 のトリップ 数 の 構 成 比 先 の 都 市 計 画 中 央 情 報 センターの 資 料 によれば 三 大 都 市 圏 ( 東 京, 大 阪, 名 古 屋 を 中 心 とした 都 市 圏 )や 地 方 都 市 ( 札 幌, 広 島, 福 岡 など)では 日 の 平 均 トリップ 数 は 約 2.3 となっており,これ から 考 えると 大 崎 上 島 島 民, 特 に 高 齢 者 のトリッ プ 数 は 比 較 的 多 いものと 思 われる 4.3 トリップ 長 ( 間 ) 次 に,トリップの 長 さをその 所 要 間,すなわ ち, トリップ 間 によって 調 べた 大 崎 上 島 で は, 島 外 に 出 るためにはフェリーまたは 高 速 艇 を 使 う 必 要 がある 島 民 が 島 外 に 出 る 際 に 最 もよく 利 用 していると 思 われるフェリーを 利 用 した 場 合, フェリーの 所 要 間 はほぼ 30 分 であり, 島 内 外 ま 4.2 出 発 刻 別 のトリップ 数 の 分 布 図 6 は, 出 発 刻 別 のトリップ 数 について 65 歳 未 満 とそれ 以 上 との 違 いを 見 たものである この 図 を 見 ると,65 歳 未 満 では, 通 勤 通 学 と 見 られ る 朝 7 と, 職 場 などからの 帰 宅 によるものと 思 われる 夕 方 7 に 大 きなピークが 見 られ, 一 般 の 都 市 部 と 同 様 な 傾 向 が 見 られる 5) しかしな がら, を 見 るとそれらの 傾 向 とはかなり 異 なった 傾 向 が 見 られる では, 朝 8 から 0 にかけてピークが 見 られるものの, 65 未 満 のものほど 突 出 したものではない また, 夕 方 8 以 降 のトリップ 数 は 65 歳 未 満 と 同 様 減 少 傾 向 が 見 られるが,65 歳 未 満 の 7 に 見 ら れるような 大 きなピークが 全 く 見 られない なお こうした 傾 向 から, 朝 8 から までのト リップ 数 の 合 計 は 全 体 の 47%にもなっており, 高 齢 者 の 交 通 行 動 の 約 半 分 がこの 間 帯 で 行 われて いることがわかる たは 島 外 内 のトリップでは 30 分 以 上 のトリップ 間 となることが 予 想 される そこでまず, 各 トリップを 島 内 々 で 行 われ ているものと その 他,すなわち 島 内 から 島 外, 島 外 から 島 内, 島 外 間 で 行 われているものとに 分 け,それぞれの 比 率 を 調 べた その 結 果 を 示 した のが 図 7 である この 図 を 見 ると 65 歳 未 満 以 上 とも,85% 以 上 が 島 内 々で 行 われたトリップで あることがわかる このように, 島 民 は 交 通 行 動 のほとんどを 島 内 々で 行 っているものと 考 えられる 次 に 図 8 では, 島 民 の 交 通 行 動 のほとんどを 占 める 島 内 々 で 行 われていたトリップのみを 対 象 に,トリップ 間 の 平 均 や 分 布 状 況 を 65 歳 未 0% 20% 40% 60% 80% 00% 65 歳 未 満 87% 3% 86% 4% 島 内 々 島 内 外 外 内 外 々 図 7 島 内 々のトリップ 数 の 比 率 -67-
岡 山 : % 40 35 30 25 20 5 0 5 0 34.0 28.4 23.7 25. 22.3 20. 平 均 トリップ 間 65 歳 未 満 :3.5 分 :6.6 分 65 歳 未 満 9.0 0.0 3.7 3.3 4.2 6.2 5 分 未 満 5-0 分 0-5 分 5-20 分 20-25 分 25-30 分 30 分 以 上 図 8 島 内 々でのトリップ 間 の 分 布 3.8 6.2 0% 0% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 00% C.2% E.2% F.4% 65 歳 未 満 ( 島 内 々) A.38% B.0% D.4% G.34% H.6% 65 歳 未 満 (その 他 ) ( 島 内 々) A.3% (その 他 ) B.5% E.3% A.24% B.5% C.6% D.0% F.2% G.28% E.% A.4% B.5% C.7% D.9% F.5% G.35% C.30% E.5% F.5% D.3% G.35% 図 9 トリップ 目 的 の 構 成 比 H.% H.4% H.4% A. 通 勤 通 学 B. 買 い 物 C. 通 院 D. 習 事 娯 楽 E. 食 事 交 際 F. 送 迎 付 添 G. 帰 宅 H.その 他 満 と 以 上 とに 分 けて 分 析 した この 図 を 見 ると,65 歳 未 満 以 上 とも 5~0 分 のトリップが 最 も 多 く,5 分 未 満 のトリップが 70% 以 上 も 占 めている このように, 島 民 のトリ ップの 多 くは5 分 未 満 の 比 較 的 短 いものであるこ とがわかる 平 均 トリップ 間 を 見 ると,65 歳 未 満 では 3.5 分, では 6.6 分 と の 方 が 少 し 長 く, 分 布 状 況 も 25 分 以 上 のトリップ の 比 率 は の 方 がわずかだが 多 くなって いる また, 島 内 々 以 外 のトリップ 間 について,65 歳 未 満 以 上 に 分 けてそれぞれの 平 均 を 求 めた その 結 果, のトリップは 47 トリップと 数 が 少 なかったため, 多 少 精 度 に 気 をつける 必 要 があるが,65 歳 未 満 では 86.9 分, では 8.2 分 となっていた なお, 一 般 の 都 市 では 住 宅 地 が 都 心 から 離 れて いる 場 合 が 多 く 通 勤 通 学 の 間 が 長 くなる 傾 向 があるため, 平 均 トリップ 間 のみでは 比 較 でき ないが, 都 市 計 画 中 央 情 報 センター の 報 告 によ れば, 三 大 都 市 圏 で 約 30 分, 地 方 都 市 で 約 22 分 であり, 島 内 トリップだけを 見 れば も 未 満 も 都 市 部 に 比 べトリップ 間 は 短 い これは, 島 民 が 島 内 という 限 られた 空 間 を 移 動 しているた めと 考 えられる 一 方 それに 比 べ 島 内 々 以 外 のト リップでは 当 然 ではあるが 3 倍 近 くも 長 い 4.4 トリップ 目 的 図 9 は,トリップ 目 的 について 65 歳 未 満 とそ れ 以 上 とに 分 けて 見 たものである なおこの 図 で は, 島 民 が 島 外 に 出 かけるのは, 島 内 では 行 えな い 理 由 があるものと 考 え, 島 内 々 と その 他 ( 島 内 外, 島 外 内, 島 外 々) に 分 けて 示 した この 図 によれば, 全 般 的 に 帰 宅 目 的 のトリ ップが, 最 も 少 ない 65 歳 未 満 (その 他 ) にお いても 28%と, 何 れも 比 較 的 高 い 比 率 を 示 してい る 65 歳 未 満 では 島 内 々, その 他 とも 通 勤 通 学 がそれぞれ 38%,24%と 比 率 が 高 い しか し, 島 内 々に 比 べその 他 では 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 の 比 率 が 大 きくなっている では, 定 職 を 持 たない 人 が 多 いためか, 島 内 々, その 他 の 何 れにおいても 通 勤 通 学 の 比 率 が 65 歳 未 満 のそれよりも 低 くなって いる それに 伴 い, の 島 内 々 では 65 歳 未 満 のそれに 比 べ 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 の 比 率 が 大 きく, 特 に 通 院 ではその 比 率 は 7%と 大 きくはないものの,65 歳 未 満 の 2%の 3 倍 にもなっていることがわかる また, その 他 については, では 47 トリップとデータ 数 が 少 なく 多 少 分 析 精 度 に 不 安 が 残 るものの, 上 記 のような 通 院 に 関 する 傾 向 は 非 常 に 強 く, 30%が 通 院 目 的 でのトリップとなっており 帰 -68-
パーソントリップ 調 査 による 島 内 在 住 者 の 交 通 行 動 実 態 分 析 宅 に 次 いで 2 番 目 の 比 率 になっている このように, のトリップでは 通 勤 通 学 の 比 率 が 少 ないこととともに, 通 院 の 比 率 が 多 いことがひとつの 特 徴 となっている 都 市 部 のパーソントリップ 調 査 におけるトリッ プ 目 的 の 分 析 では, 本 研 究 のように 特 別 に 通 院 に 着 目 するようなものは 見 られないが, 都 市 計 画 中 央 情 報 センター の 報 告 によれば, 三 大 都 市 圏 や 地 方 都 市 圏 でも 帰 宅 目 的 の 比 率 は 約 40%, 通 勤 通 学 では 約 23%と,65 歳 未 満 の 島 内 々 の 通 勤 通 学 の 方 が 都 市 部 のものより 少 し 比 率 が 大 きくなっているが,これらの 目 的 では 概 ね 同 様 の 傾 向 が 見 られるものと 考 えられる 4.5 利 用 交 通 手 段 ここでは, 利 用 交 通 機 関 について 分 析 すること とした 図 7 で 示 したように, 島 民 のトリップの 85% 以 上 が 島 内 々 であった また, 島 内 から 島 外 島 外 から 島 内 のトリップでは 必 ず フェ リー や 高 速 艇 を 利 用 しており,そのトリッ プを 代 表 する 交 通 機 関 が フェリー や 高 速 艇 になってしまうものが 多 くなる 可 能 性 が 高 い ま た, 交 通 行 動 の 分 析 という 観 点 から 考 えれば, 島 内 での 利 用 手 段 と 島 外 での 手 段 を 分 けて 分 析 する 方 が 良 い 場 合 もあろう そのため,この 場 合 はト リップ 単 位 のみの 分 析 ではなく 別 の 分 析 方 法 が 必 要 であると 考 えられる また, 本 研 究 の 最 終 的 な 目 的 は 主 として 島 民, 特 に 高 齢 者 の 島 内 でのモビ リティの 確 保 に 関 する 基 礎 的 データの 収 集 にある 以 上 のことから,ここでは 島 内 々 で 行 われた トリップのみを 対 象 に,その 際 利 用 された 主 な 交 通 手 段 について 調 べることとした また, 先 に 述 べたように 島 内 には 路 線 バスやコ ミュニティバスも 存 在 するものの,そのサービス 水 準 は 必 ずしも 高 くはなく, 移 動 の 多 くを 自 動 車 に 頼 っているものと 考 えられる そこでここでは, E.79% F.4% 0% 0% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 00% B.7% 65 歳 未 満 ( 免 許 有 り) A.8% C.2% ( 免 許 有 り) 65 歳 未 満 ( 免 許 無 し) 図 0 島 内 々トリップの 利 用 交 通 手 段 の 構 成 比 自 動 車 を 自 ら 運 転 できる 免 許 を 持 っているもの と, 運 転 できない 免 許 を 持 たない ものとに 分 けて 分 析 することとした 図 0 は, 以 上 のような 分 析 結 果 を 示 したもので ある この 図 を 見 るとまず, 運 転 免 許 を 持 つもの では,65 歳 未 満 以 上 とも 自 動 車 ( 自 ら 運 転 ) の 比 率 が 最 も 多 く, 島 内 での 移 動 が 大 きく 自 動 車 に 依 存 していることがわかる 特 に,65 歳 未 満 で はその 比 率 は 約 8 割 も 占 めており, 移 動 を 自 動 車 に 頼 っている 傾 向 が 非 常 に 強 い 一 方, ではその 比 率 は 56%にとどまっているものの 半 数 を 超 えている A.9% B.% E.56% G.4% C.% F.7% A.23% B.26% C.3% F.38% G.% ( 免 許 無 し) A.46% B.2% D.5% F.3% H.2% C.3% A. 徒 歩 B. 自 転 車 C.オートバイ 原 動 機 付 き 自 転 車 D.バス E. 自 動 車 ( 自 ら 運 転 ) F. 自 動 車 ( 他 人 運 転 ) G.タクシー ハイヤー 運 転 代 行 H.その 他 先 と 同 様 な 文 献 により,これらの 値 を 都 市 部 と 比 較 すると, 自 ら 運 転 しないものや 自 動 車 免 許 を 持 たないものを 含 めた 自 動 車 の 利 用 率 は, 三 大 都 市 圏 で 30%~35%, 地 方 都 市 でも 50% 程 度 とな っていた 先 の 自 ら 運 転 しているものに 限 った 大 崎 上 島 の 自 動 車 の 利 用 率 とこれらとを 直 接 比 較 す ることはできないが, 大 崎 上 島 の 自 動 車 依 存 率 は 都 市 部 に 比 べても 高 くなっているものと 考 えられる なお, では 65 未 満 に 比 べ 徒 歩 や 自 転 車 の 比 率 が 高 くなっている 一 般 に, 高 齢 になると 車 の 運 転 が 困 難 となる 本 研 究 の 分 析 対 象 である 大 崎 上 島 においても,75 歳 を 過 ぎると 60% 近 くの 人 が,80 歳 を 越 えると 90% 以 上 の 人 が 運 転 が 困 難 となると 考 えており 6),こうしたこと が, で 徒 歩 や 自 転 車 の 比 率 を 高 -69-
岡 山 : めている 可 能 性 もある 次 に, 運 転 免 許 を 持 たないもの を 見 ると, 65 歳 未 満 では 徒 歩 自 転 車 があわせて 49% とほぼ 半 分 を 占 めているが, 最 も 比 率 の 高 いのは 自 動 車 ( 他 人 の 運 転 ) の 38%となっている これと 比 較 して, では 徒 歩 が 46%と 最 も 多 く, 徒 歩 だけで 半 分 近 くを 占 めている ま た, 他 ではほとんど 見 られなかった バス が 5% もありひとつの 特 徴 となっている また,65 歳 未 満 で 最 も 比 率 の 高 かった 自 動 車 ( 他 人 の 運 転 ) は 3%と 65 歳 未 満 の 半 分 程 度 の 比 率 と 少 なくな っている これは, 一 人 暮 らしの 人 が 増 加 してお り, 車 で 連 れていってもらうよう 頼 める 人 がいな い 人 も 増 加 しているためと 考 えられる 5. 交 通 目 的 に 着 目 した 高 齢 者 の 交 通 行 動 分 析 以 上 のように, 高 齢 者 とそれ 以 外 とではトリッ プの 特 性 に 違 いが 見 られた 以 下 では, 島 内 で 行 われたトリップのみを 対 象 に,トリップ 目 的 ごと の 所 要 間, 出 発 刻, 利 用 交 通 手 段 などについ て 分 析 することで, 高 齢 者 の 交 通 行 動 の 特 性 につ いてさらに 詳 細 に 分 析 することとした なお,こ れらの 分 析 では,すべて 65 歳 未 満 および 以 上 に 分 けて 分 析 を 進 めるが,トリップ 目 的 ごとに 分 けた データをさらに 分 割 して 分 析 を 行 うことになるた め,いくつかの 分 析 結 果 では 多 少 精 度 に 注 意 する 必 要 があることを 先 に 述 べておく 意 になっている これは,65 歳 未 満 と の 間 やトリップ 目 的 間 では,トリップ 間 に 大 き な 差 はないが, 特 定 のトリップ 目 的 では,65 歳 未 満 と 以 上 とでトリップ 間 に 差 がある 可 能 性 が 高 いことを 意 味 している そこで 図 では,トリップ 目 的 ごとに 年 齢 別 平 均 トリップ 間 を 計 算 しそれぞれを 比 較 した これを 見 ると,65 歳 未 満 と 以 上 で 平 均 トリップ 間 に 大 きな 差 が 見 られるのは, 買 い 物 通 院 習 い 事 娯 楽 食 事 交 際 となっている ま ず, 買 い 物 通 院 では, の 方 が 未 満 に 比 べて 両 方 とも 0 分 以 上 もトリップ 間 が 長 くなっている 一 方, 習 い 事 娯 楽 食 事 交 際 ではこれとは 逆 に は 65 未 満 に 比 べ 約 0 分 ほど 短 くなっている 買 い 物 は 日 常 生 活 になくてはならない 交 通 行 動 であり, 通 院 も 特 に 高 齢 者 にとっては 非 常 に 重 要 なものである これらの 交 通 行 動 において の 高 齢 者 の 方 がトリップ 間 が 長 いということは 問 題 であり, 今 後 の 大 崎 上 島 のモビリティの 整 備 を 考 えたとき に 対 処 すべき 問 題 の 一 つとなろう 表 2 トリップ 間 の 分 散 分 析 要 因 F 値 ( 自 由 度 ) 年 齢 (65 歳 未 満, 以 上 ) 0.57 (, 29) トリップ 目 的 ( 通 勤 通 学 など 8 項 目 ).88 (7, 29) 年 齢 トリップ 目 的 ( 交 互 作 用 ) 3.35** (7, 29) 注 )**は 有 意 水 準 %で 有 意 を 意 味 する 5. トリップ 目 的 ごとのトリップ 間 まずここでは,トリップ 間 がトリップ 目 的 や 年 齢 (65 歳 未 満 と 以 上 )により 異 なるかどうかを 分 散 分 析 により 分 析 した その 結 果 を 示 したのが 表 2 である この 表 より, 年 齢 や トリップ 目 的 の 主 効 果 のF 値 は 何 れも 統 計 的 に 有 意 になっ ていないが,2 つの 交 互 作 用 は 有 意 水 準 %で 有 30 25 20 分 5 0 5 0 26.9 5.3 6.0 3.2.6 26.5 9.4 0.4 5.0 通 勤 通 学 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 食 事 交 際 送 迎 付 添 帰 宅 その 他 4.8 図 目 的 別 の 平 均 トリップ 間 65 歳 未 満 2.8 6.2 5.2 3.6 0.9.5-70-
パーソントリップ 調 査 による 島 内 在 住 者 の 交 通 行 動 実 態 分 析 5.2 間 帯 別 にみたトリップ 目 的 7) ここでは,クロス 集 計 表 の 残 差 分 析 により, 出 発 刻 別 のトリップ 目 的 について 65 歳 未 満 と それ 以 上 との 違 いを 分 析 した 表 3 は 高 齢 者 とそ れ 以 外, 出 発 刻,トリップ 目 的 の 3 次 元 クロス 表 における 標 準 化 残 差 の 値 を 示 している 標 準 化 残 差 はそのセルの 期 待 頻 度 と 実 際 の 頻 度 と の 格 差 の 大 きさを 表 し, 標 準 正 規 分 布 に 従 うもの と 考 えられる そこで 表 では 標 準 正 規 分 布 の 片 側 検 定 の 有 意 水 準 5% 点 である.65 よりも 大 きな 標 準 化 残 差 を 持 つセルにはハッチングを 施 した こ のようなセルは, 当 該 目 的 のトリップでその 刻 を 出 発 刻 とするトリップの 頻 度 が 統 計 的 に 突 出 して 多 いことを 意 味 しており, 交 通 行 動 を 分 析 す るに 際 に 有 用 な 知 見 となりうる なお, 標 準 化 残 差 の 値 が 統 計 的 に 小 さなセルについても 考 察 が 必 要 であると 考 えられるが, 残 差 が 小 さな 値 にな っているセルは 比 較 的 多 く, 結 果 として 分 析 結 果 をわかりにくくする 可 能 性 があると 考 えられる 他, これらは 交 通 行 動 の 特 性 として 自 明 なものも 少 な くなく, 残 差 の 大 きいセルの 裏 返 しの 考 察 になる 場 合 も 見 られたことなどから, 特 に 有 用 性 が 認 め られたもののみを 考 察 対 象 にすることとした 表 3 を 見 るとまず,65 歳 未 満 では 図 9 の 分 析 で 比 率 の 大 きかった 通 勤 通 学 が,7 以 前 か ら 9 にその 頻 度 が 突 出 していることがわかる しかしながら,こうした 傾 向 は の 高 齢 者 には 見 られない 一 方, のひとつの 特 徴 となっていた 通 院 については,7 以 前 から 0 に 頻 度 が 突 出 しており, 高 齢 者 の 通 院 目 的 のトリップ の 多 くが 午 前 中 に 行 われていることがわかる 表 3 65 歳 未 満 以 上 別 による 間 帯 別 トリップ 目 的 の 残 差 分 析 間 帯 通 勤 通 学 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 食 事 交 際 送 迎 付 添 帰 宅 その 他 7 以 前 0.82-4.0 -.78 -.03 0.30.33-6.39 -.0 8 6.93-5.33 -.32-0.86-2.49 -.69-9.00-2.44 9 2.37 0.32-0.04 0.59-0.50 3.3-5.50-0.22 0 -.33 2.7.52.68-0.84 0.0-3.82-0.98-3.7 3.4-0.46 -.5 0.06-0.3 -.52 3.29 2-3.32 0.08 -.78-0.46 6.6 -.92.57.27 3 0.4.9.03 0.87.89 0.6-2.66.27 4 -.0 4.30 -.47-0.78 -.23-0.34 -.9.70 5-2.87 3.54 -.35 -.7-0.24-0.78 0.58.28 6-2.83 0.7-0.48 0.26 -.39 0.96 2.76 0.53 7-7.39 0.9 -.74 -.63 -.64 -.28.65-2.36 8-5.49 0.07 0.2-0.4-0.38-0.67 9.20-2.65 9 以 降 -5.84-3.03-0.4 2.02 2.69-0.2 6.38-0.67 間 帯 通 勤 通 学 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 食 事 交 際 送 迎 付 添 帰 宅 その 他 7 以 前 -0.97 -.6 2.55 0.70 0.64.6-2.43 0.3 8 -.58-2.7 9.02 0.53 0.04 -.27-3.48-0.7 9-0.52.96 2.98 3.99 0.85 2.63-0.55 2.05 0-0.46 6.36 4.93.34.0 0.54.29.65 -.59 2.2 0.88 0.39-0.55 3.53 3.20 0.98 2-2.2-0.5 0.73 0.25-0.58 0.57 4.06-0.5 3 -.76-0.5-0.70.38-0.58-0.76-0.88 2.63 4-0.9.75-0.58-0.73-0.48-0.63 0.87 2.47 5 -.09 3..35 0.82-0.44 2.9 0.67-0.82 6 -.60.27-0.66 0.38-0.55 0.70-0.8 0.96 7-3.5 -.29 -.00-0.46-0.83 -.08.24-0.88 8-2.4 -.40-0.76 0.08-0.64-0.83-0.78 -.8 9 以 降 -2.42 -.4-0.77-0.97-0.64-0.83.66 6.45 注 ) 数 値 はすべて 標 準 化 残 差,また, 標 準 化 残 差 が.65 を 越 えているものにはハッチングをした -7-
岡 山 : また, 買 い 物 目 的 のトリップは 65 歳 未 満 も も, 午 前 中 の 0 および, 午 後 の 4 および 5 とほぼ 同 様 な 間 帯 に 行 われていることがわかる これとは 異 なり, 帰 宅 送 迎 付 添 目 的 の トリップでは, 高 齢 者 とそれ 以 外 で 異 なった 間 帯 でトリップが 行 われている 帰 宅 については,65 歳 未 満 では 6 以 降 に 頻 度 が 集 中 しており,これらは 仕 事 などからの 帰 宅 であるものと 思 われる では, 2 に 突 出 した 傾 向 が 見 られ,これらは 買 い 物 や 通 院 からの 帰 宅 であるものと 考 えられ る 次 に, 送 迎 付 添 についてみると,65 歳 未 満 以 上 とも 9 に 頻 度 が 突 出 している これ に 加 えて, では や 5 でもこ うした 傾 向 がみられる さらに,65 歳 未 満 では 9 以 降 に 習 い 事 娯 楽 の 頻 度 が 多 くなってい るが, の 高 齢 者 では 仕 事 を 持 たないため か, 午 前 中 の 9 に 習 い 事 娯 楽 に 出 かけ るためのトリップが 見 られる 5.3 トリップ 順 位 とトリップ 目 的 次 にここでは, 日 の 交 通 行 動 を 概 観 するため, 日 における 何 番 目 のトリップ( 以 下,トリップ 順 位 と 呼 ぶ )でどのような 目 的 で 交 通 行 動 を 起 こ しているかも 重 要 と 考 え,トリップ 順 位 とその 目 的 についても 表 3 と 同 様 の 方 法 で 分 析 した 表 4 は, 表 3 と 同 様, 高 齢 者 とそれ 以 外,トリ ップの 順 位,トリップ 目 的 の 3 次 元 クロス 集 計 表 の 標 準 化 残 差 の 値 を 示 したものである この 表 でも 先 と 同 様,.65 よりも 大 きな 標 準 化 残 差 を 持 つセルにはハッチングを 施 した この 表 によれば,65 歳 未 満 では 表 3 の 分 析 で 7 以 前 から 9 で 頻 度 が 突 出 していた 通 勤 通 学 が, 日 の 最 初 のトリップで 突 出 して いる 一 方, において 第 トリップで 頻 度 が 突 出 しているのは, 表 3 の 分 析 で 午 前 中 に 突 出 した 頻 度 が 見 られた 通 院 習 い 事 娯 楽 と なっている なお, 習 い 事 娯 楽 では 第 4トリ ップの 標 準 化 残 差 も 大 きな 値 を 示 している 一 方, 表 3 の 分 析 で 高 齢 者 とそれ 以 外 の 両 者 で 出 発 間 帯 に 同 様 な 傾 向 が 見 られた 買 い 物 目 的 のトリップでは,トリップ 順 位 においては 65 歳 未 満 では 明 確 な 傾 向 が 見 られず, では 第 3 トリップで 標 準 化 残 差 が 大 きくなっている これは, 買 い 物 が 通 勤 や 通 院, 習 い 事 などに 比 べ 間 的 制 約 が 小 さいため,これら 間 制 約 が 強 表 4 65 歳 未 満 以 上 別 によるトリップ 順 位 別 トリップ 目 的 の 残 差 分 析 65 歳 未 満 通 勤 通 学 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 食 事 交 際 送 迎 付 添 帰 宅 その 他 第 トリップ 3.70 -.0-0.5.33-2.35 0.48-2.75-2.20 第 2 トリップ -6.95 0.4-0.83 -.86 2.78 -.85 9.65-2.8 第 3 トリップ -2.82 0.84-2.55-0.89 0.3.60.03 4.3 第 4 トリップ -2.86-0.43 -.93 -.09 0.60 -.2 3.79 0.64 第 5 トリップ -.92 0.25-0.56 0.24 -.00-0.02.68 0.60 第 6 トリップ -.58-0.80-0.98 -.20-0.74 -.06 3.03-0.07 通 勤 通 学 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 食 事 交 際 送 迎 付 添 帰 宅 その 他 第 トリップ -2.00.39 0.4 3.72.06 2.0-5.7 0.68 第 2 トリップ -4.55-0.88 0.43 -.34-0.30 0.6 5.37-0.95 第 3 トリップ -2.00.74 -.00.23-0.76 -.08 -.09 5.26 第 4 トリップ -2.44 0.63-0.75 2.33-0.57-0.8 2.90 0.67 第 5 トリップ -.07 0.02-0.52-0.63-0.39 3.03.59-0.77 第 6 トリップ -.24-0.73-0.38-0.47-0.29 2.0 2.25.9 注 ) 数 値 はすべて 標 準 化 残 差,また, 標 準 化 残 差 が.65 を 越 えているものにはハッチングをした -72-
パーソントリップ 調 査 による 島 内 在 住 者 の 交 通 行 動 実 態 分 析 い 活 動 の 合 間, 特 に では 第 3 トリップ, すなわち,その 日 の 2 度 目 の 外 出 と 思 われるトリ ップで 買 い 物 を 行 っているためと 思 われる 帰 宅 トリップでは, 高 齢 者 とそれ 以 外 では 出 発 間 帯 には 違 いが 見 られたが,トリップの 順 位 では,65 歳 未 満 の 第 5 トリップを 除 いて 偶 数 の 順 位 で 突 出 した 頻 度 が 見 られ,ほぼ 同 様 の 傾 向 が 確 認 できる このように 偶 数 の 順 位 で 頻 度 が 多 い のは, 自 宅 を 何 らかの 目 的 で 出 発 しその 目 的 を 済 ませた 後 は,その 度 ごとに 自 宅 に 戻 る 傾 向 が 強 く, 複 数 の 目 的 地 を 巡 回 するような 行 動 が 少 ないため と 思 われる 5.4 トリップ 目 的 ごとの 利 用 交 通 手 段 次 に,65 歳 未 満 以 上 別 にトリップ 目 的 ごとの 利 用 交 通 手 段 について 分 析 した 分 析 方 法 は 表 3 および 表 4 と 同 様, 年 齢,トリップ 目 的 利 用 交 通 手 段 の 3 次 元 クロス 集 計 表 の 標 準 化 残 差 を 求 め た 表 5 はその 結 果 を 示 したもので, 標 準 化 残 差 が.65 以 上 のセルにはハッチングを 施 している 表 5 を 見 ると,65 歳 未 満 ではあまり 顕 著 な 傾 向 は 見 られず, 通 勤 通 学 における 自 動 車 ( 自 ら 運 転 ) および 習 い 事 娯 楽 の 自 動 車 ( 他 人 の 運 転 ), 通 院 の 自 動 車 ( 他 人 の 運 転 ) タクシー 運 転 代 行 程 度 である 一 方, ではかなり 異 なった 傾 向 が 見 ら れる まず, 通 勤 通 学 では 自 動 車 ( 自 ら 運 転 ) の 値 が -5.42 と 非 常 に 小 さく,65 歳 未 満 と 大 きく 異 なる 傾 向 を 示 している また, 買 い 物 お よび 習 い 事 娯 楽 では 徒 歩 や 自 転 車 の 利 用 が 多 くなっている 図 の 分 析 で 買 い 物 目 的 のトリップ 間 が 長 くなっていたのは,この ように 徒 歩 や 自 転 車 によるものが 多 いた めと 考 えられる また, 同 様 にトリップ 間 が 長 かった 通 院 では バス の 利 用 が 際 だって 多 いことがわかる これらの 結 果 から, 通 院 目 的 の トリップ 間 を 短 くし, 高 齢 者 がより 通 院 し やすくなるためには,バスの 運 行 を 工 夫 しその 利 便 性 を 高 める 必 要 があるものと 考 えられる なお, バス については 買 い 物 や 食 事 交 際 目 的 のトリップでの 利 用 も 多 い 6. 大 崎 上 島 島 民 の 交 通 行 動 実 態 のまとめ 本 研 究 では, 大 崎 上 島 の 島 民 を 対 象 に 行 ったパ 表 5 65 歳 未 満 以 上 別 によるトリップ 目 的 別 交 通 手 段 の 残 差 分 析 65 歳 未 満 通 勤 通 学 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 食 事 交 際 送 迎 付 添 帰 宅 その 他 徒 歩 -.26-2.36-0.88 -.3-0.72-0.66-0.8-0.37 自 転 車 0.82-0.6 -.3 -.09-0.39 -.63-0.26-0.99 オートバイ 原 付 き.27-2.02-0.99-0.64 0.2 -.22.56-0.58 バス -0.70 -.00-0.49-0.68-0.46-0.60 -.80-0.86 自 動 車 ( 自 ら 運 転 ) 3.49 0.89 -.8 -.06 0.60 0.99 0.53 -.2 自 動 車 ( 他 人 運 転 ) -.9 0.2.69 2.7.37-0.75 -. 0.56 タクシー 運 転 代 行 -.64-0.90.8-0.6-0.42-0.55 -.63.80 その 他 -0.7-0.60-0.30-0.4-0.28-0.36 0.75-0.52 通 勤 通 学 買 い 物 通 院 習 事 娯 楽 食 事 交 際 送 迎 付 添 帰 宅 その 他 徒 歩.9 4.35.90 2.82 0.69-0.93 3.74 6.29 自 転 車 -2.07 3.76 0.8 2.3-0.64 2.80.57.38 オートバイ 原 付 き -0.74-0.79-0.39-0.54-0.37.6-0.73 0.79 バス -0.7 2.6 25.76-0.27 5.30-0.24 0.70 2.63 自 動 車 ( 自 ら 運 転 ) -5.42-0.63 0.8.32 -.77 -.43-2.35 -.42 自 動 車 ( 他 人 運 転 ) -.73-0.67 2.24.8-0.65 0.34.85 5.49 タクシー 運 転 代 行 -0.64-0.35-0.7-0.24-0.7 8.45 2.48-0.30 その 他 -0.43-0.24-0.2-0.6-0. -0.4.9-0.20 注 ) 数 値 はすべて 標 準 化 残 差,また, 標 準 化 残 差 が.65 を 越 えているものにはハッチングをした -73-
岡 山 : ーソントリップ 調 査 の 結 果 をもとに, 島 民, 主 と して 高 齢 者 の 交 通 行 動 の 特 性 について 考 察 した この 結 果,トリップ 数 は,65 歳 未 満 では 2.9ト リップ, では 3. トリップであり, 都 市 部 に 比 べ 若 干 多 くなる 傾 向 があった またこれら は 何 れも 85% 以 上 が 島 内 々で 行 われているもの であった トリップの 出 発 刻 の 間 分 布 では, 65 歳 未 満 では 8,7 にピークが 見 られ たが, の 高 齢 者 では 0 にピークが あったものの,7 前 後 のピークが 見 られなかっ た トリップ 目 的 を 見 たところ,65 歳 未 満 では 通 勤 通 学 帰 宅 の 比 率 が 多 くなっていたが, 島 内 々 以 外 のトリップでは 通 院 買 い 物 習 い 事 娯 楽 の 比 率 も 高 くなっていた で は 通 勤 通 学 の 比 率 が 少 なく, 買 い 物 習 い 事 娯 楽 通 院 の 比 率 が 65 歳 未 満 に 比 べ 多 くなっていた この 内 通 院 目 的 のトリップは, 島 内 々でも 多 くなっていたが, 島 内 々 以 外 でも 比 率 が 特 に 多 く 30%にもなっていた 利 用 交 通 手 段 では, 都 市 部 などに 比 べ 自 動 車 の 利 用 率 が 高 くなっていることがわかった その 一 方 で, の 高 齢 者 が 徒 歩 や 自 転 車 バス などを 利 用 している 実 態 が 示 された また, 島 内 々のトリップを 対 象 にその 目 的 ごと に, 行 われる 間 帯 やトリップ 長 ( 間 ), 利 用 交 通 機 関 などの 違 いを 見 た その 結 果, 買 い 物 目 的 のトリップは,65 歳 未 満, 以 上 ともに 0, および 4,5 に 行 われていたもの の, 利 用 交 通 機 関 には 違 いが 見 られ,65 歳 未 満 で は 自 動 車 が 利 用 され, では 徒 歩 自 転 車 バス などが 利 用 されていた このた めか, の 買 い 物 のトリップ 間 は 65 歳 未 満 に 比 べ 長 くなっていた で 比 較 的 比 率 の 多 かった 通 院 目 的 のトリップは,その において 7 ~0 に 行 われており, バス の 利 用 が 顕 著 であっ た また, 買 い 物 目 的 と 同 様,65 歳 未 満 より もトリップ 間 が 長 くなっていた 次 に, 習 い 事 娯 楽 は 65 歳 未 満 では 9 以 降 に 行 われているのに 対 し, では 9 と 違 いが 見 られた 利 用 している 交 通 機 関 につ いても 違 いが 見 られ,65 歳 未 満 では 他 人 が 運 転 する 車 であったが, では 徒 歩 自 転 車 が 多 く 買 い 物 目 的 と 同 様 な 傾 向 が 見 ら れた しかしながら, 買 い 物 目 的 とは 異 なり, トリップ 間 は 65 歳 未 満 に 比 して 短 くなってい た 大 崎 上 島 の 島 民, 特 に 高 齢 者 を 対 象 に 島 内 にお けるモビリティの 向 上 を 考 える 際,たとえば,ト リップ 間 の 長 いものを 短 くすることが 一 つの 方 策 として 考 えられる 上 記 の 結 果 から, の 買 い 物 通 院 目 的 のトリップが 65 歳 未 満 のそれらよりも 長 くなっていた これらの 目 的 の トリップでは, 徒 歩 自 転 車 バス の 利 用 が 顕 著 であった したがって, 徒 歩 自 転 車 を バス などに 転 換 する 方 法 や バス そのもの の 利 便 性 をさらに 向 上 させるなど, 通 院 や 買 い 物 などの 移 動 に 便 利 になるようなサービスを 考 案 す ることなどが 望 まれよう なお, におけ るこれらの 目 的 のトリップは 主 として 7 ~ で 行 われており,これらの 間 帯 でのモビリテ ィの 向 上 が 求 められるものと 言 えよう また, 島 外 へのトリップでは, では 通 院 目 的 のものが 多 く,これに 対 する 対 策 も 今 後 重 要 となってくるものと 考 えられる 以 上 のように, 本 研 究 により 大 崎 上 島 島 民, 主 として 高 齢 者 の 交 通 行 動 についていくつかの 知 見 を 得 ることができた また,こうした 基 礎 的 な 知 見 であっても, 上 記 のような 島 内 のモビリティの 向 上 に 関 する 提 言 や 具 体 的 な 問 題 点 を 示 すことも できた -74-
パーソントリップ 調 査 による 島 内 在 住 者 の 交 通 行 動 実 態 分 析 7.おわりに 本 研 究 では, 都 市 部 で 一 般 に 行 われているパー ソントリップ 調 査 を 大 崎 上 島 島 民 を 対 象 に 実 施 し た 本 調 査 は 回 収 されたデータは 722 票 と, 数 と しては 交 通 行 動 の 特 性 を 知 ることはできるものの, 交 通 実 態 を 量 的 に 把 握 したり, 本 研 究 ではできな かった 職 種 別 など 個 人 属 性 による 交 通 行 動 の 違 い を 分 析 したりするにはもう 少 しデータが 必 要 とな ろう しかも, の 回 収 率 は 低 く, 特 に 高 齢 者 のデータ 収 集 には 問 題 を 残 した このような 問 題 点 もあったが, 本 調 査 で 得 られ たデータからでも, 島 民 の 交 通 行 動 の 特 性 や 先 に 述 べたような 今 後 の 島 内 の 交 通 政 策 への 提 言 とな るような 知 見 も 得 られた 今 後 は 役 場 などとも 協 力 し, 調 査 員 も 増 やすな ど 大 規 模 な 調 査 を 行 いたいと 考 えているが, 回 収 率 を 上 げ 量 的 にも 充 分 なデータを 得 るとともに, 特 に 高 齢 者 の 回 収 率 の 向 上 に 留 意 をする 必 要 があ る また,パーソントリップ 調 査 だけではなく, アクティビティダイアリー 調 査 も 組 み 合 わせるこ とにより, 島 民 の 生 活 スタイルと 交 通 行 動 との 関 連 も 調 査 分 析 していきたい 加 えて, 本 研 究 で はあまり 分 析 できなかった 島 外 への 交 通 行 動 につ 2) 西 井 佐 々 木 今 尾 :PT 付 帯 調 査 としてのア クティビティダイアリー 調 査 - 高 齢 者 の 活 動 交 通 実 態 把 握 -, 土 木 学 会 論 文 集,Ⅳ-55 号,pp.3~38,2000 年. 3) たとえば, 竹 内 本 多 青 島 磯 部 : 交 通 工 学, 鹿 島 出 版 会,pp.49~63,2000 年 新 谷 洋 二 編 著 : 都 市 交 通 計 画, 技 報 堂 出 版, pp.44~57,2003 年. 4) 都 市 計 画 中 央 情 報 センター: 都 市 における 人 の 動 き- 平 成 年 全 国 都 市 パーソントリップ 調 査 集 計 結 果 から-, 都 市 計 画 情 報 リンク 集 ホームページ (http://www.ibs.or.jp/cityplanning-info/). 5) 竹 内 本 多 青 島 磯 部 : 交 通 工 学, 鹿 島 出 版 会,p.70,2000 年 6) 岡 山 正 人 : 過 疎 高 齢 化 地 域 に 住 む 高 齢 者 を 対 象 としたモビリティと 生 活 満 足 度 に 関 する 意 識 構 造 分 析 - 大 崎 上 島 を 事 例 として-, 都 市 計 画 論 文 集,No.43-3,pp.90~906,2008 年. 7) B.S.エヴェリット: 質 的 データ 解 析, 新 曜 社, pp.49~50,980 年. いても, 今 後 は 分 析 対 象 としていく 必 要 がある 参 考 文 献 ) たとえば, 森 山, 藤 原, 杉 恵 : 高 齢 化 社 会 における 過 疎 集 落 に 交 通 サービス 水 準 と 生 活 の 質 の 関 連 性 分 析, 土 木 計 画 学 研 究 論 文 集,Vol.9 No.4, pp.725~732,2002 年 9 月. 著 者 紹 介 岡 山 正 人 ( 正 会 員 ) 広 島 商 船 高 等 専 門 学 校 流 通 情 報 工 学 科 教 授 ( 725-023 広 島 県 豊 田 郡 大 崎 上 島 町 東 野 4272-), 昭 和 36 年 生 まれ, 昭 和 62 年 3 月 神 戸 商 船 大 学 大 学 院 商 船 学 研 究 科 修 士 課 程 ( 輸 送 科 学 専 攻 ) 修 了, 広 島 商 船 高 等 専 門 学 校 航 海 学 科 助 手 を 経 て 現 職, 博 士 ( 工 学 ), 土 木 学 会, 交 通 工 学 研 究 会, 日 本 都 市 計 画 学 会 など 学 会 員 E-mail:okayama@hiroshima-cmt.ac.jp 岡 山 正 人 : 島 に 住 む 高 齢 者 を 対 象 としたモビ リティと 生 活 満 足 度 に 関 する 意 識 構 造 分 析, 土 木 計 画 学 研 究 講 演 集,No.34(CD-ROM), 2006 年 -75-
岡 山 : An Analysis of Travel Behavior of People Living in a Island Based on a Person Trip Survey Case Study of the Osaki-Kamijima Island Masato OKAYAMA ABSTRACT: Many of the islands in Japan have suffered from depopulation and population ageing and have problems about transportation in these islands. Especially, securing mobility for elderly people has been one of big problems of transportation in these islands. However, they don't have fundamental data to analyze behavior of the people in the islands and to plan measures for these problems. In this study, a person trip survey were carried out to the people in the Osaki-Kamijima Island, which is located in the middle of the Seto Inland Sea, and the data obtained from this survey are analyzed to reveal some characteristics of travel behavior of the people, in particular elderly people. As the results from the analyses, the number of trips, travel purpose, transportation used by the people and so on were revealed. KEYWORDS : person trip survey, travel behavior, depopulation, population aging -76-