欧州4大プロサッカーリーグと比較した際の日本サッカー界の経営課題



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預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

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容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

スポーツビジネスの現状について

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

m07 北見工業大学 様式①


文化政策情報システムの運用等


2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

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公表表紙

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

Microsoft Word 運営方針(本編)

No.7 アメリカ 合 衆 国 小 規 模 事 例 (そ4) 助 金 も 財 源 になっている しかし 小 規 模 事 業 体 では 連 邦 政 府 から 基 金 はもちろん 市 から 補 助 金 もまったくない が 実 状 である すなわち 給 人 口 が25 人 から100 人 規 模 小 規

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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東京都立産業技術高等専門学校

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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スライド 1

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

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18 国立高等専門学校機構

第7章

Microsoft Word - 目次.doc

Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

Microsoft Word 印刷ver 本編最終no1(黒字化) .doc

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

JAL Xxxxxxxx Xxxxxxxx

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別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

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平成24年度 業務概況書

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

Taro-H19退職金(修正版).jtd

新 市 建 設 計 画 の 変 更 に 係 る 新 旧 対 照 表 ページ 変 更 後 変 更 前 表 紙 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 平 成 27 年 3 月 変 更 安 中 市 6 2. 計 画 策 定 の 方 針 (3) 計

70 愛媛大学

●幼児教育振興法案

1 変更の許可等(都市計画法第35条の2)

Taro13-公示.jtd

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

別紙3

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

1 はじめに 計 画 の 目 的 国 は 平 成 18 年 度 に 住 生 活 基 本 法 を 制 定 し 住 まいに 関 する 基 本 的 な 計 画 となる 住 生 活 基 本 計 画 ( 全 国 計 画 )を 策 定 し 住 宅 セーフティネットの 確 保 や 住 生 活 の 質 の 向 上

人事行政の運営状況の報告について

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病

 

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,600 円 185,800 円 222,900 円 261,900 円

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

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一般競争入札について

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

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道 内 シ ル バ ー 人 材 セ ン タ ー の 現 状 に つ い て は 契 約 金 額 に お い て は 請 負 契 約 で は 減 少 し た も の の シ ル バ ー 派 遣 事 業 の 大 幅 な 伸 び に よ り 5 年 ぶ り に 前 年 実 績 を 上 回 っ た が 会

第 2 節 関 連 計 画 1. 国 の 方 針 計 画 国 が 示 している 一 般 廃 棄 物 の 減 量 化 等 に 関 する 目 標 値 を 以 下 に 示 します (1) 廃 棄 物 の 減 量 その 他 その 適 正 な 処 理 に 関 する 施 策 の 総 合 的 かつ 計 画 的 な

Microsoft PowerPoint - 総合型DB資料_県版基金説明用.pptx

表紙

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Microsoft Word - H25普通会計決算状況 .docx

資料8(第2回水害WG)

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

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Microsoft Word - 公表資料(H22).doc

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

事 業 概 要 利 用 時 間 休 館 日 使 用 方 法 使 用 料 施 設 を 取 り 巻 く 状 況 や 課 題 < 松 山 駅 前 駐 輪 場 > JR 松 山 駅 を 利 用 する 人 の 自 転 車 原 付 を 収 容 する 施 設 として 設 置 され 有 料 駐 輪 場 の 利 用

も た ら そ う と す る 効 標 標 名 標 設 定 考 え 方 単 位 4 年 度 実 績 5 年 度 見 込 6 年 度 計 画 7 年 度 計 画 8 年 度 計 画 法 規 定 に 基 づく 選 挙 事 務 ため 標 というような は 困 難 である 事 業 実 施 妥 当 性 活 動

安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

目 次 第 1 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 1. 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 2. 施 行 者 の 名 称 1 第 2 施 行 地 区 1 1. 施 行 地 区 の 位 置 1 2. 施 行 地 区 位 置 図 1 3. 施 行 地 区 の 区 域 1 4

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

スライド 1

平成16年度

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 が 無 い た め 記 載 し て お り ま せ ん 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 ( 参 考 ) 区 分 民 間 給 与 A 公 務 員 給 与 B 較 差 A - B 勧 告 ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 国 の 改

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

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・モニター広告運営事業仕様書

2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

Ⅰ. は じ め に 27 年 か ら の 不 況 の 影 響 で 不 動 産 競 売 物 件 が 増 加 し て い る 29 年 9 月 は 全 国 で 8 件 を 超 え た ( 前 年 同 月 は 約 6 件 ) ま た 不 動 産 競 売 の 情 報 が イ ン タ ー ネ ッ ト で 公

佐渡市都市計画区域の見直し

Microsoft Word - 07②-2 補足説明資料1.docx

●電力自由化推進法案

2016年夏のボーナス見通し

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

第2章 施設の実態(用途別)

Taro-01 議案概要.jtd

平成22年度

Transcription:

KPMG Insight Vol. 15 / Nov. 2015 1 欧 州 4 大 プロサッカーリーグと 比 較 した 際 の 日 本 サッカー 界 の 経 営 課 題 室 長 パートナー 大 塚 敏 弘 スポーツ 科 学 修 士 得 田 進 介 日 本 プロサッカーリーグ 以 下 J リーグ というとイングランド プレミア リーグ ドイツ ブンデスリーガ スペイン リーガエスパニョーラ イタリア セリエ A 以 下 欧 州 4 大 プロサッカーリーグ というの 市 場 規 模 を 比 較 す ると 欧 州 4 大 プロサッカーリーグの 規 模 は 非 常 に 大 きく 現 状 では J リーグ と 大 きな 差 が 生 じています このような 差 が 生 じる 1 つの 要 因 として 主 にスタジアムへの 投 資 が 考 えられ ブンデスリーガとプレミアリーグがその 代 表 例 であると 言 えます ブンデスリー ガは 2006 年 W 杯 開 催 を 契 機 にスタジアムの 新 設 や 改 修 を 行 い プレミアリー グでは 老 朽 化 していたスタジアムを 改 修 することで 観 戦 しやすいスタジアムへ と 生 まれ 変 わることができました サポーターが 観 戦 するうえで 快 適 な 空 間 を 作 っただけではなく サッカー 観 戦 以 外 のエンターテインメントと 融 合 することで 両 リーグの 観 客 動 員 数 が 飛 躍 的 に 増 加 したため クラブ 経 営 は 好 循 環 に 乗 り 財 政 基 盤 が 安 定 したことからク ラブ 規 模 をさらに 大 きくすることができるようになりました 現 在 J リーグでもサッカー 専 用 スタジアムかつ 複 合 スタジアムを 増 やしてい く 機 運 が 高 まってきており 今 後 の 動 向 が 期 待 されています なお 本 文 中 の 意 見 に 関 する 部 分 は 筆 者 の 私 見 であることを あらかじめお 断 りいたします おおつか 大 としひろ 塚 敏 弘 室 長 パートナー ポイント J 1リーグと 欧 州 4 大 プロサッカーリーグでは 営 業 収 入 規 模 と 観 客 動 員 に ついて 大 きな 差 が 生 じている 営 業 収 入 項 目 で 最 も 差 が 大 きいのは 放 映 権 料 であり 欧 州 4 大 プロサッ カーリーグでは 近 年 高 騰 傾 向 にある 放 映 権 料 が 高 騰 しているのは 魅 力 的 な 試 合 が 多 く 観 戦 ニーズが 高 まっているためであり 観 客 動 員 の 多 寡 が 大 きな 要 因 であると 考 えられる J 1リーグの 試 合 はリーグ 全 体 で 平 均 するとスタジアムの 半 分 程 度 が 空 席 と なってしまっているが ブンデスリーガやプレミアリーグではいずれの 試 合 もほぼ 満 員 である 観 客 動 員 に 大 きな 影 響 を 与 えるのはスタジアムであり そのスタジアムの 設 計 ホスピタリティ 周 辺 施 設 の 充 実 度 合 で 集 客 力 に 差 が 生 じると 考 え られる と く だ 得 しんすけ 田 進 介 スポーツ 科 学 修 士

2 KPMG Insight Vol. 15 / Nov. 2015 Ⅰ 営 業 収 入 の 比 較 まずは 欧 州 4 大 プロサッカーリーグとJ1リーグの 営 業 収 入 に ついて 比 較 分 析 をします 直 近 5 年 間 の 営 業 収 入 推 移 をJ1リーグ プレミアリーグ ブ ンデスリーガで 比 較 しました リーガエスパニョーラとセリエ Aは 財 務 数 値 を 公 開 していないため 今 回 は 考 慮 外 としていま す プレミアリーグとブンデスリーガでは 営 業 収 入 が 毎 期 増 加 傾 向 にありますが J1リーグでは 微 増 減 を 繰 り 返 し 概 ね 横 ば いとなっています このことからJ1リーグとプレミアリーグや ブンデスリーガの 差 は 広 がる 一 方 で 現 在 では 営 業 収 入 の 差 が 約 5 倍 にも 広 がってしまっています 図 表 1 参 照 円 換 算 に ついては 為 替 による 影 響 を 無 視 するためユーロ 相 場 の 直 近 5 年 間 平 均 で 算 定 しています 欧 州 4 大 プロサッカーリーグの 収 入 規 模 拡 大 の 主 な 要 因 は 放 映 権 料 の 高 騰 と 観 客 動 員 数 の 増 加 であると 言 えます 欧 州 4 大 図 表 1 営 業 収 入 推 移 3,500 3,000 営 2,500 業 収 2,000 入 億 1,500 円 1,000 500 0 2009 2010 2011 2012 2013 J1リーグ プレミアリーグ ブンデスリーガ 出 典 : J クラブ 個 別 経 営 情 報 開 示 資 料 J.LEAGUE DATA Siteおよび Annual Review of Football Finance および BUNDESLIGA REPORTを 基 に 作 成 図 表 2 2014 年 シーズンの1 試 合 平 均 観 客 動 員 数 比 較 J1リーグ セリエA リーガエスパニョーラ プレミアリーグ プロサッカーリーグのなかでもプレミアリーグとブンデスリー ガは 特 に 放 映 権 料 が 近 年 において 高 騰 傾 向 にあることから 営 業 収 入 で1 2 位 を 争 う 市 場 規 模 となっているだけでなく 観 客 動 員 においてもトップクラスとなっています 観 客 動 員 数 が 増 える すなわち 観 戦 のニーズが 高 まらなければ 放 映 権 料 も 高 騰 しないため 欧 州 4 大 プロサッカーリーグとJ1リーグとの 営 業 収 入 の 差 は 観 客 動 員 にあると 考 えられます 図 表 2 参 照 Ⅱ 観 客 動 員 の 比 較 次 に 観 客 動 員 について 比 較 分 析 します 観 客 動 員 数 だけでは 各 スタジアムのキャパシティごとに 観 客 動 員 を 詳 細 に 分 析 することができないため 2014 年 シーズ ンの 観 客 動 員 率 も 使 って 分 析 していきます 観 客 動 員 率 とは スタジアムがどれほど 観 客 で 埋 まっているかを 示 す 指 標 です 観 客 動 員 率 が 高 いとサポーターの 大 歓 声 による 迫 力 を 体 感 で きることに 加 えて 観 戦 チケットの 品 薄 感 から 観 戦 ニーズがよ り 高 まり 観 客 動 員 率 を 高 い 水 準 で 維 持 することができると 考 え られます 欧 州 4 大 プロサッカーリーグのなかで1 試 合 平 均 観 客 動 員 数 が 最 も 多 いブンデスリーガの1 試 合 平 均 観 客 動 員 率 を 見 ると ほとんどのクラブで90%を 超 えており リーグ 全 体 の 平 均 は 92.1%と 非 常 に 高 い 水 準 で ブンデスリーガではいずれの 試 合 もほぼ 満 員 となっています 特 にボルシア ドルトムントの ホームスタジアムであるジグナル イドゥナ パルクのキャ パシティは8 万 人 を 超 えているにもかかわらず1 試 合 平 均 観 客 動 員 率 が99.7%となっており ブンデスリーガで 最 大 キャパシ ティのスタジアムが 最 も 観 客 を 集 めていることになります 図 表 3 参 照 図 表 3 ブンデスリーガ 所 属 クラブの 観 客 動 員 率 2014 年 シーズン 100% 90% 180% 試 合 70% 平 均 60% 観 50% 客 動 40% 員 率 30% 20% 10% 0% ブンデスリーガ 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 観 客 動 員 数 人 出 典 :J.League Data Site 年 度 別 入 場 者 数 推 移 および weltfussball.de を 基 に 作 成 出 典 :weltfussball.de を 基 に 作 成

KPMG Insight Vol. 15 / Nov. 2015 3 2014 年 シーズンのJ1リーグで1 試 合 平 均 観 客 動 員 率 が 最 も 高 いのは 川 崎 Fの80.5%で その 次 に 高 かったのは 仙 台 の 77.0%でしたが 両 クラブともにスタジアムのキャパシティは 2 万 人 前 後 となっており キャパシティが 小 さいスタジアムの 部 類 に 入 っていると 言 えます 一 方 でスタジアムのキャパシ ティが 大 きい 部 類 に 入 る4 万 人 超 のクラブの 場 合 には 観 客 動 員 率 は 浦 和 レッズとアルビレックス 新 潟 を 除 くと30% ~ 50% となっておりスタジアムの 半 分 以 上 が 埋 まっていない 状 況 です 図 表 4 参 照 図 表 4 J1リーグ 所 属 クラブの 観 客 動 員 率 2014 年 シーズン 100% 90% 1 試 80% 合 70% 平 均 60% 観 50% 客 動 40% 員 30% 率 20% 10% 0% 以 上 から キャパシティが2 万 人 程 度 のスタジアムでは 観 客 動 員 率 こそ 比 較 的 高 くなっていますが スタジアムのキャパシ ティが 小 さいため 入 場 料 収 入 も 小 さくなっている 傾 向 にあると 考 えられます キャパシティが4 万 人 超 のスタジアムでは 観 客 動 員 率 は 低 く キャパシティの 割 に 入 場 料 収 入 も 伸 び 悩 んで いる 傾 向 があると 言 えます Ⅲ 観 客 動 員 とスタジアムの 関 連 では 観 客 動 員 は 何 に 起 因 しているのでしょうか サッカー ファンの 絶 対 数 もあるのでしょうが その 他 の 主 な 要 因 の1つ にスタジアムの 観 客 席 からピッチまでの 距 離 が 関 係 していると 言 われています 陸 上 トラックのある 陸 上 競 技 場 ではサッカー 専 用 スタジアムの 倍 以 上 ピッチまでの 距 離 が 遠 く 観 客 席 で の 臨 場 感 に 大 きな 違 いがあります 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 出 典 :J.League Data Site 年 度 別 入 場 者 数 推 移 および 各 クラブ 公 式 HPを 基 に 作 成 2014 年 シーズンのブンデスリーガでは1クラブを 除 いてすべ てのスタジアムがサッカー 専 用 となっています 観 客 動 員 率 が 高 い 水 準 にあるブンデスリーガにおいて 平 均 を 大 きく 下 回 っ ているのが 陸 上 トラックのある 陸 上 競 技 場 を 使 っている 唯 一 の クラブであるヘルタ ベルリンであり 1 試 合 平 均 観 客 動 員 率 が67.5%となっています 図 表 3 参 照 このことから 観 客 動 員 数 観 客 動 員 率 ともにトップレベルのブンデスリーガでさえ ス タ ジ ア ム キ ャ パ シ テ ィ 人 観 客 席 からピッチまでの 距 離 が 遠 くなってしまう 陸 上 トラック のある 陸 上 競 技 場 であると 必 然 的 に 観 客 動 員 率 が 低 くなるた め サッカー 専 用 スタジアムであるか 否 かが 観 客 動 員 に 大 きな 影 響 を 与 えていることは 明 らかであると 言 えます セリエ Aでは 観 客 動 員 が 近 年 伸 び 悩 んでおり リーグ 全 体 の 平 均 観 客 動 員 率 は55.5%でJ1リーグと 同 様 に 低 い 水 準 となっ ています これは セリエ A 所 属 クラブの 多 くが 陸 上 トラッ クのある 陸 上 競 技 場 を 使 用 していることが1つの 要 因 になって いると 言 えます 一 方 で 2011 年 に 新 設 したユヴェントスの ユヴェントススタジアムだけ1 試 合 平 均 観 客 動 員 率 が90%と 高 い 水 準 になっています 図 表 5 参 照 このスタジアムでは 以 前 使 っていたスタジアムからダウンサイジングしたことと 相 まって 観 客 動 員 率 が 大 きく 上 昇 しただけでなく サッカー 専 用 スタジアムであるため 観 客 動 員 数 も 大 きく 増 加 しました 加 え て 観 客 動 員 数 増 加 の 要 因 についてはサッカー 専 用 スタジア ム 特 有 の 臨 場 感 だけでなく イタリア 初 のクラブ 所 有 のスタジ アムとなったことから 隣 接 地 にショッピングモールやグッズ ショップをクラブの 裁 量 で 自 由 に 建 設 誘 致 できるようになっ たことも 起 因 していると 考 えられます J1リーグにおいても 平 均 観 客 動 員 率 を 比 較 するとサッカー 専 用 スタジアムでは61.3% 陸 上 トラックのある 陸 上 競 技 場 は 54.3%となっており サッカー 専 用 スタジアムの 方 が 高 くなっ ていることから 今 後 増 やしていくべきなのはサッカー 専 用 ス タジアムであると 言 えます ただし 単 にサッカー 専 用 スタジ アムを 増 やせば 良 いのではなく 上 述 したように 観 客 動 員 率 を 高 めることで 観 戦 ニーズを 高 めていかなければなりません J1 リーグの1 試 合 平 均 観 客 動 員 数 は20,000 人 から 多 くても40,000 人 であり 現 在 半 数 のスタジアムがオーバースペックとなっ てることから 新 設 するときには 適 切 なキャパシティや 建 設 コ ストを 十 分 に 考 慮 して 建 設 計 画 を 策 定 していく 必 要 があると 考 えられます また 欧 米 のスタジアムには 当 然 のようにある VIPシートやビジネスラウンジの 設 置 や 商 業 施 設 等 とコラボ 図 表 5 セリエA 所 属 クラブの 観 客 動 員 率 2014 年 シーズン 100% 90% 180% 試 合 70% 平 均 60% 観 50% 客 動 40% 員 率 30% 20% 10% 0% 出 典 :weltfussball.de を 基 に 作 成

4 KPMG Insight Vol. 15 / Nov. 2015 レーションさせた 複 合 スタジアムとすることでさらに 観 客 動 員 を 増 やすことができると 考 えられるため これからはサッカー 専 用 かつ 複 合 スタジアムを 目 指 していくべきです よる 経 済 効 果 を 適 切 に 算 定 し 自 治 体 に 対 して 説 得 力 のある ものを 提 示 する 必 要 があります その 際 に 専 門 家 の 知 識 を 用 いることでさらに 説 得 力 が 増 すものとなると 考 えられます Ⅳ スタジアムビジネス もう1つ 観 客 動 員 の 要 素 と 考 えられるのはスタジアムの 管 理 運 営 です 2014 年 シーズンのJ1リーグ 所 属 クラブのなかでホー ムスタジアムの 管 理 運 営 を 行 う 指 定 管 理 者 となっているのは4 クラブのみです 図 表 6 参 照 指 定 管 理 者 制 度 とは 公 の 施 設 の 管 理 に 民 間 のノウハウを 活 用 しつつ 住 民 サービスの 向 上 を 図 るとともに 経 費 等 の 削 減 を 図 ることを 目 的 として 導 入 された 制 度 です Jクラブが 管 理 運 営 者 となることで スタジアム 運 用 の 自 由 度 が 高 まり サービスを 向 上 させることが 可 能 となり 利 益 を 増 加 させることができると 考 えられます たとえば 鹿 島 アン トラーズはスタジアム 内 にフィットネスジム 施 設 や 整 骨 院 を 作 ることで 新 たなビジネスを 展 開 することだけでなく チーム トレーナーのアイドルタイムを 削 減 するよう 工 夫 を 凝 らしてい ます その 結 果 試 合 の 観 客 動 員 が 増 えることに 加 えて 試 合 の 無 い 日 にでも 地 域 住 民 がスタジアムを 訪 れるようになり ニーズに 合 った 魅 力 的 なスタジアムを 作 ることができるように なります また 自 治 体 にとっても 民 間 のノウハウを 用 いるこ とでコスト 削 減 が 可 能 となり 財 政 の 改 善 に 繋 がると 言 えます このことから スタジアムでの 収 入 を 増 加 させることやコスト を 削 減 するための 経 営 努 力 に 対 するインセンティブを 強 く 持 っ ているJクラブがスタジアムの 管 理 運 営 することで Jクラブ 地 域 住 民 地 方 自 治 体 の3 者 が 相 互 に 恩 恵 を 受 けられることが 期 待 できると 考 えられます Jクラブがホームスタジアムを 管 理 運 営 することで 新 たに 利 益 を 得 ることができるビジネスチャンスが 増 えたと 言 え その ことが 地 域 活 性 化 の 一 役 を 担 うと 言 えます Jクラブの 当 面 の 課 題 は クラブがサッカー 専 用 スタジアム を 使 用 し 管 理 運 営 について 自 クラブで 行 えるようにすること であると 考 えられます そのためにも Jクラブがスタジアムの 管 理 運 営 することに 図 表 6 J1リーグ 指 定 管 理 者 となっているクラブ 一 覧 2015 年 9 月 現 在 クラブ 名 スタジアム 名 所 有 者 管 理 者 / 運 営 者 運 営 形 態 鹿 島 アントラーズ 茨 城 県 立 カシマサッカースタジアム 茨 城 県 株 式 会 社 鹿 島 アントラーズ エフ シー 指 定 管 理 者 横 浜 F マリノス 日 産 スタジアム 横 浜 市 横 浜 マリノス 株 式 会 社 他 指 定 管 理 者 共 同 事 業 体 の1つ アルビレックス 新 潟 デンカビッグスワンスタジアム 新 潟 県 株 式 会 社 アルビレックス 新 潟 他 指 定 管 理 者 共 同 事 業 体 の1つ モンテディオ 山 形 NDソフトスタジアム 山 形 山 形 県 株 式 会 社 モンテディオ 山 形 指 定 管 理 者 出 典 : 各 クラブ 公 式 HP を 基 に 作 成

KPMG Insight Vol. 15 / Nov. 2015 5 の 概 要 KPMG ジャパンは 一 般 事 業 会 社 で 培 った 知 見 や 経 験 を 活 用 し スポーツ 業 界 に 属 するチーム 団 体 が 強 固 な 経 営 お よび 財 務 基 盤 を 構 築 し 勝 利 し 続 ける 組 織 作 りの 支 援 を 行 うため 内 に スポーツアドバイ ザリー 室 を 設 置 しました は スポーツに 関 連 するチームや 団 体 が 攻 めのマネジメントを 行 う 一 助 となるべく 一 般 企 業 で 培 った 経 営 や 財 務 管 理 の 知 見 を 活 用 し 経 営 課 題 の 分 析 中 長 期 計 画 の 策 定 予 算 管 理 および 財 務 の 透 明 性 等 に 資 するアドバイスを 提 供 しま す スポーツ 業 界 を 熟 知 したきめ 細 やかなサービスを 提 供 するとともに KPMG ジャパンのグループ 会 社 の 知 見 やス キルも 活 用 しながら スポーツ 関 連 チームや 団 体 を 包 括 的 に 支 援 してまいります 主 なサービス 経 営 課 題 の 分 析 業 績 評 価 項 目 指 標 に 関 する 各 種 調 査 データ 収 集 に 係 る 支 援 目 標 値 設 定 および 分 析 手 法 に 係 る 開 発 支 援 経 営 管 理 に 係 るアドバイザリー 中 長 期 計 画 支 援 予 算 管 理 支 援 経 営 戦 略 経 営 目 標 と 整 合 した 予 算 数 値 設 定 支 援 差 異 原 因 分 析 組 織 目 標 達 成 のための 具 体 的 施 策 設 定 支 援 財 務 管 理 資 金 出 納 管 理 : 各 種 資 金 表 の 作 成 と 実 績 比 較 を 通 じた 資 金 管 理 体 制 構 築 固 定 資 産 管 理 : 設 備 投 資 の 意 思 決 定 段 階 における 採 算 性 計 算 維 持 更 新 にかかる 経 済 性 分 析 支 援 等 内 部 統 制 構 築 支 援 情 報 システムに 係 るアドバイザリー ガバナンス 強 化 およびコンプライアンス 支 援 バックナンバー スポーツビジネスの 現 状 について KPMG Insight Vol.12/May 2015 欧 州 サッカーリーグドイツ ブンデスリーガの 財 政 健 全 性 について KPMG Insight Vol.13/July 2015 J リーグの 現 状 分 析 KPMG Insight Vol.14/Sep 2015 本 稿 に 関 するご 質 問 等 は 以 下 の 担 当 者 までお 願 いいたし ます TEL: 03-3548-5155 代 表 番 号 室 長 パートナー 大 塚 敏 弘 toshihiro.otsuka@jp.kpmg.com スポーツ 科 学 修 士 得 田 進 介 shinsuke.tokuda@jp.kpmg.com

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