Materials and Structures Laboratory, Tokyo Tech. No.35 October 1 2015 Materials & Structures Laboratory News Letter CONTENTS 応 セラ 研 ナウ: 物 質 科 学 と 量 子 古 典 境 界 1 研 究 の 展 望 : 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 を 用 いた 耐 衝 撃 性 の 向 上 技 術 2 研 究 の 周 辺 : 新 物 質 の 薄 膜 合 成 3 トピックス: 4 ウェブにおけるモーメント 伝 達 効 率 の 低 い 梁 端 接 合 部 の 変 形 能 力 評 価 磁 気 フラストレーション 系 に 現 れる 負 の 熱 膨 張 応 用 セラミックス 研 究 所 学 術 賞 受 賞 者 : 5 最 も 普 及 している 鋼 材 ダンパーの 真 の 制 振 効 果 に 関 する 研 究 および 設 計 指 針 への 反 映 エントロピー 弾 性 を 示 す 酸 化 物 ガラス 平 成 27 年 度 学 術 賞 受 賞 ワークショップ 国 際 会 議 人 事 異 動 6 共 同 利 用 共 同 研 究 拠 点 先 端 無 機 材 料 拠 点 応 用 セラミックス 研 究 所 東 京 工 業 大 学
応 セラ 研 ナウ 物 質 科 学 と 量 子 古 典 境 界 准 教 授 中 村 一 隆 すべての 物 質 はミクロな 対 象 物 である 原 子 で 構 成 さ れている 原 子 の 状 態 や 運 動 は 量 子 力 学 で 記 述 され 粒 子 性 と 波 動 性 を 持 っている したがってマクロな 物 質 の 状 態 や 運 動 も 量 子 力 学 で 記 述 されるべきであるが わ れわれが 日 常 接 するマクロな 物 質 では 量 子 力 学 特 有 の 特 性 は 失 わ れ そ の 運 動 は 古 典 力 学 で 記 述 さ れ る こ こ でいう 量 子 力 学 に 特 有 な 特 性 とは 複 数 の 固 有 状 態 が 物 質 系 を 対 象 とすることで 外 界 の 熱 効 果 の 制 御 や 相 互 作 用 の 強 さの 違 う 系 における 量 子 コヒーレンスの 計 測 が 可 能 と な り そ の 結 果 を 基 に デ コ ヒー レン ス 過 程 の 解 明 ひいては 量 子 世 界 と 古 典 世 界 の 境 界 を 明 らかにす ることが 出 来 ると 考 えている また 短 時 間 ではあるがマ クロな 物 質 系 に 存 在 する 量 子 コヒーレンスを 用 いた 物 質 科 学 の 研 究 といった 新 しい 展 開 も 期 待 される 共 存 す る 状 態 ( 重 ね 合 わ せ 状 態 )を 持 つ こ と で 量 子 コ ヒ ー レ ン ス と よ ば れ て い る そ れ で は 量 子 力 学 的 な 特 性 は いつ どうやって 失 われて 古 典 力 学 的 な 性 質 にか わ る の だ ろ う か?こ の 疑 問 は 量 子 古 典 境 界 として 知 ら れるもので 量 子 力 学 で 未 解 決 の 問 題 のひとつである われわれのグループでは 2010 年 からJST-CRESTの アト 秒 制 御 の 凝 縮 系 コヒーレント 制 御 ( 代 表 : 分 子 科 学 研 究 所 大 森 賢 治 教 授 )の 研 究 グループとして バルク 固 体 における 量 子 コヒーレンスの 探 索 と 計 測 技 術 開 発 の 課 題 名 で 物 質 科 学 としての 量 子 古 典 境 界 問 題 に 関 する 研 究 を 行 っている 固 体 内 部 における 量 子 コヒーレ ンスは 非 常 に 短 い 時 間 内 に 失 われると 想 像 される そ のため アト 秒 の 精 度 で 遅 延 時 間 を 制 御 したフェムト 秒 光 パルス 列 を 用 い 物 質 内 部 における 量 子 状 態 のラム ゼー 干 渉 実 験 から 量 子 コヒーレンスの 時 間 変 化 を 計 測 して い る 半 導 体 で あ る G a A s 単 結 晶 で は フ ェ ムト 秒 光 パ ルス で 生 成 し た 電 子 フ ォノ ン 結 合 状 態 に お け る 量 子 コヒーレンスが 室 温 でも 約 45フェムト 秒 の 間 物 質 内 に 保 持 さ れ る こ と を 見 出 し た 現 在 試 料 温 度 を 極 低 温 に することによって 量 子 コヒーレンス 保 持 時 間 を 制 御 する とともに 量 子 コヒーレンスが 時 間 的 に 失 われていく 過 程 ( デ コ ヒ ー レ ン ス 過 程 )の 関 数 型 を 求 め よ う とし て い る また 分 子 科 学 研 究 所 との 共 同 研 究 では 固 体 として の 相 互 作 用 が 比 較 的 弱 い 分 子 性 結 晶 を 用 いて その 電 子 振 動 系 における 量 子 コヒーレンスの 計 測 と 光 を 使 っ た 量 子 コヒーレンスの 制 御 の 研 究 を 進 めている 図 1 図 2 実 験 装 置 と 測 定 の 様 子 フェムト 秒 光 パルス 列 を 用 いたラムゼー 干 渉 の 概 念 図 01
研 究 の 展 望 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 を 用 いた 耐 衝 撃 性 の 向 上 技 術 准 教 授 篠 原 保 二, 研 究 員 南 正 樹 コンクリート 構 造 物 に 高 速 飛 翔 体 が 衝 突 すると 衝 撃 力 によって 直 接 的 な 損 傷 破 壊 が 生 じるだけでなく 破 壊 されたコンクリート 塊 や 飛 翔 体 が 数 100m/s 以 上 の 高 速 度 で 飛 散 し 人 命 や 構 造 物 に 対 して 二 次 的 被 害 を も た ら す こ と が 報 告 さ れ て い る 従 って 安 全 な コ ン ク 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 を 耐 衝 撃 性 が 高 い 建 築 構 造 材 として 適 用 するためには より 多 い 種 類 の 繊 維 及 びその 特 性 とセメント 複 合 材 料 との 損 傷 メカニズムに つ い て ま だ 検 討 す る 必 要 が あ る が 近 い 未 来 に 実 現 で きると 考 えられる リート 構 造 物 を 設 計 するためには 飛 翔 体 の 高 速 衝 突 による 損 傷 を 低 減 する 必 要 がある コンクリートは 引 張 に 弱 く 飛 翔 体 の 衝 突 によって 容 易 にひび 割 れが 発 生 進 展 し そ の 裏 面 に も 大 き な 損 傷 ( 裏 面 剥 離 )が 生 じ る ことが 知 られており 耐 衝 撃 性 を 向 上 させるためには 大 き な コ ン ク リ ート 部 材 厚 が 要 求 さ れ る し か し 最 近 では 短 繊 維 を 混 入 し 引 張 変 形 性 能 を 高 めた 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 のひび 割 れ 抑 制 及 び 高 エネルギー 吸 図 1 高 性 能 AE 減 水 剤 及 び 増 粘 剤 の 添 加 による 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 の 流 動 性 ( 施 工 性 ) 収 能 力 に 期 待 して 耐 衝 撃 性 構 造 材 料 として 適 用 するこ とが 検 討 されている 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 の 耐 衝 撃 性 を 向 上 させる た め に は 多 量 の 繊 維 を セ メ ント 複 合 材 料 マトリッ ク ス に 満 遍 なく 分 散 させることが 重 要 である 繊 維 の 分 散 性 を 高 め る 技 術 に 関 して は 1 繊 維 の 表 面 を 有 機 剤 の 液 体 で 処 理 し 繊 維 の 流 動 性 を 改 質 ( 繊 維 自 体 の 改 善 ) 2 低 水 -セメント 比 において 高 性 能 AE 減 水 剤 及 び 増 粘 剤 を 使 用 ( 分 散 性 の 改 善 )す る こ と で 繊 維 混 入 率 3 % 程 度 ま で の 繊 維 補 強 セ メ ント 複 合 材 料 に お い て も プ レ ー ンと 同 等 の 流 動 性 ( 施 工 性 )が 確 保 で き る( 図 1 ) これらの 技 術 を 用 いて 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 の 繊 維 混 入 率 を 高 めることによって 繊 維 補 強 なしプレー 図 2 繊 維 混 入 率 による 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 のプ レーンに 対 する 裏 面 剥 離 限 界 厚 さの 低 減 効 果 ン 試 験 体 と 比 較 し 耐 衝 撃 性 に 対 する 部 材 の 必 要 厚 さ を 低 減 できることが 明 らかになった 図 2は 建 物 内 部 の 人 命 に 最 も 関 係 のある 部 材 の 裏 面 剥 離 限 界 厚 さと 飛 翔 体 の 衝 突 速 度 の 関 係 であるが 繊 維 混 入 率 を3%とする と 部 材 厚 さをプレーンより 約 44% 低 減 することが 出 来 る 図 3 の 写 真 よ り 繊 維 補 強 セ メ ント 複 合 材 料 は プ レ ー ンと 異 な り よ り 高 速 な 飛 翔 体 の 衝 突 に お い て も 混 入 繊 維 が ひび 割 れの 成 長 拡 幅 を 抑 制 し 微 細 なひび 割 れ に 分 散 さ せ る こ と に よ って 耐 衝 撃 性 能 が 向 上 し 裏 面 剥 離 を 防 止 していることがわかる 図 3 高 速 飛 翔 体 の 衝 突 に 対 する 繊 維 補 強 セメント 複 合 材 料 のひび 割 れ 性 状 (プレーンとの 比 較 ) 02
研 究 の 周 辺 新 物 質 の 薄 膜 合 成 准 教 授 平 松 秀 典 筆 者 は パ ルス レ ー ザ ー 堆 積 法 ( 写 真 1 )を 用 い て さ まざまな 新 物 質 の 薄 膜 合 成 に 取 り 組 んでいる この 手 法 では 真 空 中 に 設 置 したターゲットと 呼 ばれる 直 径 1 cmほどのバルク 体 試 料 に 集 光 したパルスレーザーを 照 射 してターゲット 物 質 を 蒸 発 させ 対 向 位 置 に 置 いて ある1 cm 角 程 度 の 大 きさの 基 板 上 に 100 nm(ナノメー トル, 10 9 m) 程 度 の 厚 さの 薄 膜 を 形 成 させる 再 現 性 よ く 系 統 的 な 実 験 を 行 っていくには プルームと 呼 ばれ る 蒸 発 させた 粒 子 群 をいかに 制 御 するかが 鍵 となるこ とから 薄 膜 合 成 実 験 中 のプルームを 見 極 める 鋭 い 観 によっては 表 面 を 再 度 鏡 面 研 磨 してから 再 利 用 する 今 回 のこの 原 稿 執 筆 を 機 に 改 めて 思 ったことは 薄 膜 合 成 装 置 などの 真 空 設 備 の 維 持 管 理 だけでなく 単 結 晶 基 板 の 大 量 購 入 など 実 にお 金 のかかる 研 究 テーマに 取 り 組 ん で い る 他 の 研 究 者 が で き な い よ う な 実 験 を や らせてもらっていることは 一 人 の 研 究 者 として 大 変 あ り が た く 誇 ら し い こ と だ と 思 って い る い ま ま で の そ してこれからの 研 究 成 果 のうちひとつでも 多 く 実 際 に 使 わ れ る 新 材 料 として 社 会 に 貢 献 で き る も の が 見 つ けられるよう これからも 研 究 に 勤 しむ 所 存 である 察 能 力 が 実 験 者 に 求 め ら れ る( 写 真 2 ) こ れ が ほ ぼ 人 的 要 素 な く 合 成 パ ラ メ ー タ を 指 定 で き る ス パ ッ タ リ ン グや 分 子 線 エピタキシーなどの 手 法 と 決 定 的 に 異 なる 点 で あ る さ ら に 薄 膜 の も と と な る タ ー ゲ ット は 目 的 とする 薄 膜 と 同 組 成 の 多 結 晶 体 とすることが 多 いため 薄 膜 合 成 法 を 習 得 するだけでなく 粉 体 を 扱 ったバルク 合 成 能 力 も 求 められる それではなぜこのように 複 雑 な 手 法 を 基 軸 として 研 究 を 行 っているかというと 他 の 薄 膜 合 成 手 法 と 比 較 して 物 質 の 種 類 を 変 えて 実 験 でき るスピードが 圧 倒 的 にはやいからである すなわち 新 物 質 を 思 い つ い た ら すぐ に タ ー ゲ ット を 合 成 し タ イム 写 真 1 パルスレーザー 堆 積 法 / 分 子 線 エピタキシー 装 置 ラグなく 即 座 に 薄 膜 合 成 実 験 をどんどん 試 すことがで きる これまでその 特 徴 を 生 かして 酸 化 物 硫 化 物 酸 カ ル コ ゲ ナ イド セ レ ン 化 物 酸 ヒ 化 物 ヒ 化 物 な ど 複 雑 な 化 学 組 成 を 有 するさまざまな 新 物 質 の 薄 膜 化 とそれ らを 使 ったデバイス 化 を 行 ってきた 筆 者 だけでなく 指 導 を 担 当 する 学 生 やポスドクの 使 用 する 単 結 晶 基 板 の 年 間 総 数 は そのときのテーマ 設 定 にも 依 存 するが 新 品 で 2 0 0 枚 を 優 に 超 え る 値 段 交 渉 を 行 い 出 来 る だ け 単 価 を 下 げ て 購 入 して い る が そ れ で も 単 結 晶 基 板 は 非 常 に 高 価 な 消 耗 品 である そのため 一 度 だけ 実 験 写 真 2 レンズで 集 光 したパルスレーザー 光 をターゲットに 照 射 している 様 子 明 るく 光 っている 蒸 発 成 分 がプルーム と 呼 ばれる に 使 う の で は な く 実 験 後 は 薄 膜 を 酸 で 溶 か して 場 合 03
トピックス ウェブにおけるモーメント 伝 達 効 率 の 低 い 梁 端 接 合 部 の 変 形 能 力 評 価 教 授 山 田 哲 柱 を 角 形 鋼 管 とした 柱 梁 接 合 部 では 梁 ウェブから 柱 へのモーメント 伝 達 は 柱 ス キンプレートを 介 して 行 われるが( 図 1) 柱 スキンプレートが 面 外 に 変 形 することか ら 特 に 柱 板 厚 が 薄 い 場 合 にはスキンプレートの 面 外 剛 性 および 耐 力 が 不 足 し 梁 ウェブにおけるモーメント 伝 達 効 率 が 低 下 する 本 研 究 では( 独 ) 建 築 研 究 所 と 共 同 で 梁 をSN490 柱 をBCR295とした 角 形 鋼 管 柱 -H 形 鋼 梁 接 合 部 について 特 にウェ ブにおけるモーメント 伝 達 効 率 が 低 く 接 合 部 係 数 が 低 くなり 保 有 耐 力 接 合 の 条 件 図 1 梁 端 部 における 応 力 伝 達 の 模 式 図 を 満 足 しないような 場 合 に 実 際 にはどの 程 度 の 塑 性 変 形 能 力 があるのかを 明 らか にするため これまであまり 行 われてこなかったウェブにおけるモーメント 伝 達 効 率 が 低 い 接 合 部 試 験 体 を 対 象 とした 繰 り 返 し 載 荷 実 験 を 行 い 接 合 部 係 数 と 破 断 に よって 決 まる 塑 性 変 形 能 力 の 関 係 や ウェブのモーメント 伝 達 効 率 が 低 い 場 合 の 接 合 部 耐 力 に 関 する 検 討 を 行 った 図 2に 実 験 結 果 ( 荷 重 - 変 形 関 係 )の 一 例 を 示 す 研 究 成 果 は 建 築 基 準 法 の 公 的 解 説 書 である 2015 年 版 建 築 物 の 構 造 関 係 技 術 基 準 図 2 荷 重 - 変 形 関 係 の 一 例 解 説 書 に 反 映 され これまで 曖 昧 であったモーメント 伝 達 効 率 の 低 い 梁 端 接 合 部 の 評 価 の 確 立 に 役 立 てられた 磁 気 フラストレーション 系 に 現 れる 負 の 熱 膨 張 教 授 川 路 均 正 三 角 形 の 頂 点 に 位 置 する3 個 の 磁 気 スピンが 反 強 磁 性 相 互 作 用 で 結 合 された 系 で は 2 個 の ス ピ ン を 安 定 に な る よ う に 反 平 行 に 並 べ る と 残 っ た1 個 の ス ピ ン は ど ち ら を 向 い て も 同 じ エ ネ ル ギ ー を 持 ち 単 一 の 規 則 構 造 を 取 る こ と が 困 難 で す 一 方 熱 力 学 第 三 法 則 は 温 度 を 下 げ 最 終 的 に 絶 対 零 度 に な る と 何 ら か の 規 則 構 造 三 角 格 子 での 磁 気 フラストレーション を 取 る こ と を 要 請 し ま す こ の よ う な 系 は フ ラ ストレ ー シ ョン 系 と 呼 ば れ 相 互 作 用 の 微 妙 な バ ラ ン ス に よ って 絶 対 零 度 ま で ゆ ら い だ 状 態 を 保 つ 場 合 遠 い ス ピ ン 間 の 相 互 作 用 により 規 則 化 する 場 合 電 子 軌 道 との 相 互 作 用 により 規 則 化 する 場 合 結 晶 格 子 と 相 互 作 用 して 規 則 化 する 場 合 などの 多 様 な 興 味 深 い 現 象 を 示 します 古 くから 二 次 元 三 角 格 子 の 研 究 が 盛 んでしたが 近 年 三 次 元 的 構 造 を 持 つパイロク ロア 格 子 での 磁 気 フラストレーションについての 研 究 が 進 んできています パイロクア 格 子 でのスピンアイス 状 態 私 達 の 研 究 室 で は こ れ ら の 化 合 物 に つ い て 特 に 結 晶 格 子 と ス ピ ンと の 相 互 作 用 の 効 果 に つ い て 精 密 な 熱 膨 張 測 定 に よ り 研 究 を 行 って い ま す 例 え ば フ ラ スト レーションの 効 果 で 氷 の 水 素 配 置 に 似 た スピンアイス 状 態 をとるHo 2 Ti 2 O 7 や Dy 2 Ti 2 O 7 では 前 者 はスピンアイス 状 態 の 形 成 に 伴 い 正 の 熱 膨 張 を 示 すのに 対 し て 後 者 は 負 の 熱 膨 張 を 示 す こ と を 見 出 し ま し た 現 時 点 で 機 構 は 不 明 で す が 他 の 複 数 の フ ラ ストレ ー シ ョン 系 で も 負 の 熱 膨 張 を 観 測 して お り そ の 機 構 に つ い て 詳 細 に 検 討 したいと 考 えています 04
応 用 セラミックス 研 究 所 学 術 賞 受 賞 者 社 会 貢 献 部 門 : 最 も 普 及 している 鋼 材 ダンパーの 真 の 制 振 効 果 に 関 する 研 究 および 設 計 指 針 への 反 映 長 崎 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 システム 科 学 部 門 教 授 玉 井 宏 章 本 研 究 では, 安 価 で 最 も 普 及 している 鋼 材 ダンパーの 設 計 法 や 効 果 の 評 価 法, および 鋼 材 ダンパーを 用 いた 鋼 構 造 骨 組 の 制 振 設 計 法 を 検 討 した. 鋼 材 ダンパー であるせん 断 パネルは, 板 材 (パネル)のせん 断 降 伏 により 地 震 エネルギーの 吸 収 を 行 うもので, 壁 型 や 間 柱 型 のものがある.パネルのせん 断 塑 性 変 形 とエネル ギー 吸 収 が, 設 計 で 目 標 とするせん 断 変 形 角 まで 座 屈 することなく 行 なえるよう に,パ ネ ル の 補 強 ス チ フ ナ の 数 や 厚 さ の 算 定 方 法 を 提 示 し た.ダ ン パ ー は そ れ 以 外 の 部 材 と 比 べ 塑 性 変 形 角 振 幅 が 大 きく,また, 繰 り 返 し 回 数 も 多 い.そのため 地 震 時 の 損 傷 を 適 切 に 評 価 できる 累 積 損 傷 度 に 着 目 し, 疲 労 関 係 式 を 求 めて 設 計 資 料 を 整 備 して, 累 積 損 傷 度 を 求 め る 方 法 を 提 案 し た.そ の 妥 当 性 を, 非 定 常 振 幅 疲 労 試 験 を 行 って 確 認 した.また, 提 案 する 設 計 手 順 で 設 計 した 建 物 例 につ い て,こ の 累 積 損 傷 度 を 用 い た 評 価 を 行 い, 地 震 時 お け る 必 要 量 が 保 有 量 を 十 分 上 回 って い る こ と を 示 し た. 共 同 研 究 成 果 の 内 容 は,ダ ン パ ー 形 状 設 計 法, 制 振 構 造 設 計 法, 塑 性 変 形 性 能 評 価 法, 接 合 方 法 等, 広 範 に わ た って い る.こ れ ら の 成 果 は 日 本 建 築 学 会 制 振 構 造 設 計 指 針 へ 反 映 された. 今 後, 設 計 指 針 を 基 に 安 価 で 信 頼 性 の 高 い 鋼 材 ダンパーがさらに 普 及 すれば, 建 物 の 耐 震 性 が 著 しく 向 上 して, 地 震 による 社 会 経 済 的 な 被 害 が 軽 減 できると 考 えられる. 図 1 鋼 製 ダンパーの 代 表 例 (せん 断 パネル) 研 究 業 績 部 門 : エントロピー 弾 性 を 示 す 酸 化 物 ガラス 旭 硝 子 ( 株 ) 中 央 研 究 所 ガラス 材 料 技 術 ファンクション 主 席 研 究 員 稲 葉 誠 二 本 研 究 で は ゴ ム に 類 似 し た 構 造 を 有 す る 酸 化 物 ガ ラ ス 混 合 ア ル カ リメ タリ ン 酸 塩 ガラス を 発 見 した このガラスは 室 温 では 一 般 のガラスと 同 様 に 硬 くて 割 れやすいが 235 付 近 に 加 熱 すると ゴムに 見 られるエントロピー 弾 性 によって 大 きく 伸 び 縮 みすることが 分 かった これまでの 酸 化 物 ガラスでは 見 出 されてい ない 全 く 新 しい 特 性 であり 室 温 では 硬 くて 割 れやすいガラスも 内 部 構 造 をうま く 工 夫 すれば 高 温 でゴムのように 伸 び 縮 みする 特 性 を 発 現 できる 材 料 であるこ とを 世 界 で 初 めて 実 証 した 今 後 組 成 開 発 や 構 造 解 析 がさらに 進 むことで 常 温 付 近 や 数 百 以 上 の 高 温 域 で ゴム 状 態 を 示 す 透 明 酸 化 物 ガラスが 見 出 され る か も し れ な い そ の よ う な ガ ラ ス が で き れ ば 例 え ば 窓 ガ ラ スや ス マ ートフ ォン のカバーガラスが 割 れる 心 配 がなくなったり 有 機 高 分 子 のように 自 由 に 曲 げら れ る ディス プ レ ー の 基 材 として 用 い る こ と が で き る か も し れ な い ま た 建 築 用 や 高 温 溶 解 炉 などの 床 下 材 に 用 いることで 防 振 材 やエネルギー 吸 収 材 としての 応 用 も 可 能 性 として 挙 げられる 今 回 の 研 究 が 契 機 となって より 優 れた 特 性 のゴム 状 ガラスの 実 現 とその 科 学 の 進 展 が 期 待 される 図 熱 処 理 により 長 さ 方 向 へ 巨 大 収 縮 するガラス 05
平 成 27 年 度 応 用 セラミックス 研 究 所 学 術 賞 応 用 セラミックス 研 究 所 では 平 成 17 年 度 より 応 用 セラミックス 研 究 所 長 賞 を 実 施 して 参 りましたが 平 成 26 年 度 より 賞 の 名 称 を 応 用 セラミックス 研 究 所 学 術 賞 に 改 め 引 き 続 き 共 同 利 用 研 究 の 奨 励 と 助 成 を 行 っています 平 成 27 年 度 は2 名 が 選 ばれ 7 月 15 日 に 授 賞 式 が 行 われました 長 崎 大 学 工 学 部 教 授 玉 井 宏 章 受 賞 者 旭 硝 子 ( 株 ) 中 央 研 究 所 主 席 研 究 員 稲 葉 誠 二 受 賞 部 門 社 会 貢 献 部 門 研 究 業 績 部 門 受 賞 内 容 最 も 普 及 している 鋼 材 ダンパーの 真 の 制 振 効 果 に 関 する 研 究 および 設 計 指 針 への 反 映 エントロピー 弾 性 を 示 す 酸 化 物 ガラス 受 賞 左 か ら 稲 葉 誠 二 氏 若 井 史 博 所 長 玉 井 宏 章 氏 受 賞 者 受 賞 名 受 賞 年 月 日 認 定 団 体 受 賞 内 容 伊 藤 満 平 成 27 年 度 科 学 技 術 分 野 の 文 部 科 学 大 臣 表 彰 平 成 27 年 4 月 ( 表 彰 式 ) 文 部 科 学 省 機 能 性 酸 化 物 新 材 料 の 創 出 に 関 する 研 究 神 谷 利 夫 2015 SID Special Recognition Awards 平 成 27 年 4 月 29 日 米 国 ディスプレイ 学 会 ディスプレイ 技 術 分 野 において 顕 著 な 業 績 の あった 研 究 者 細 野 秀 雄 井 上 春 成 賞 平 成 27 年 6 月 4 日 科 学 技 術 振 興 機 構 酸 化 物 半 導 体 In-Ga-Zn-Oスパッタリングター ゲットの 開 発 安 井 伸 太 郎 NIMS Conference 2015 Young Scientist Poster Award 平 成 27 年 7 月 ( 表 彰 式 ) 物 質 材 料 研 究 機 構 Origin of Giant Piezoelectricity Measured by Time-resolved SXRD with Electric Field 吉 敷 祥 一 第 37 回 コンクリート 工 学 講 演 会 年 次 論 文 奨 励 賞 平 成 27 年 7 月 16 日 日 本 コンクリート 工 学 会 無 機 電 子 機 能 物 質 の 創 製 と 応 用 に 関 する 研 究 松 田 和 浩 平 成 27 年 度 東 工 大 挑 戦 的 研 究 賞 平 成 27 年 8 月 19 日 東 京 工 業 大 学 木 質 高 層 建 築 を 実 現 普 及 させる 効 率 的 な 制 振 設 計 法 の 開 発 ワークショップ 国 際 会 議 開 催 日 開 催 名 開 催 場 所 対 応 教 員 主 催 等 平 成 27 年 9 月 23 日 ~9 月 25 日 セキュアマテリアル 概 念 に 基 づいた 次 世 代 ファインセラミッ クスに 関 するワークショップ( 共 同 利 用 研 究 ) グランドホテル 六 甲 スカイヴィラ 若 井 史 博 平 成 27 年 9 月 25 日 超 高 速 衝 突 に 伴 う 材 料 挙 動 とその 診 断 技 術 に 関 する 国 際 ワークショップ( 共 同 利 用 研 究 ) 東 京 工 業 大 学 すずかけ 台 キャンパス すずかけホール 阿 藤 敏 行 平 成 27 年 10 月 19 日 ~10 月 21 日 The 9th International Conference on the Science and Technologyfor Advanced Ceramics (STAC-9) つくば 国 際 会 議 場 (エポカルつくば) 物 質 材 料 研 究 機 構 応 用 セラミックス 研 究 所 人 事 異 動 ( 平 成 27 年 4 月 ~) 異 動 日 氏 名 区 分 新 所 属 旧 所 属 平 成 27 年 6 月 1 日 松 下 伸 広 配 置 換 大 学 院 理 工 学 研 究 科 物 質 科 学 専 攻 准 教 授 セラミックス 解 析 部 門 准 教 授 平 成 27 年 6 月 1 日 勝 又 健 一 退 職 東 京 理 科 大 学 総 合 研 究 院 光 触 媒 研 究 推 進 拠 点 嘱 託 准 教 授 セラミックス 解 析 部 門 特 任 講 師 06
応 用 セラミックス 研 究 所 ニュースレター 通 巻 第 35 号 発 行 日 編 集 発 行 平 成 27 年 10 月 1 日 東 京 工 業 大 学 応 用 セラミックス 研 究 所 共 同 利 用 研 究 支 援 室 問 い 合 わせ 東 京 工 業 大 学 応 用 セラミックス 研 究 所 226-8503 横 浜 市 緑 区 長 津 田 町 4259 R3-27 TEL.045-924-5968 FAX.045-924-5978 電 子 メール kenkyushien@msl.titech.ac.jp ホームページ http://www.msl.titech.ac.jp 応 セラ 研 教 員 室 J1 棟 J2 棟 J3 棟 G5 棟 R3 棟 R3D 棟 S8 棟