原油安の物価への影響と金融政策への示唆



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3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

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セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

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経 済 分 析 レポート 1 月 8 日 全 12 頁 原 油 安 の 物 価 への 影 響 と 金 融 政 策 への 示 唆 厳 格 な インフレ 目 標 がはらむ 危 険 エコノミック インテリジェンス チーム エコノミスト 久 後 翔 太 郎 [ 要 約 ] 本 稿 では 原 油 価 格 の 下 落 がコア CPI に 与 える 影 響 を 説 明 したうえで 原 油 価 格 の 動 向 と 金 融 政 策 の 関 係 について 考 察 した 原 油 価 格 は 主 にエネルギー 価 格 を 通 じてコア CPI に 影 響 を 与 えるが エネルギー 価 格 の 内 訳 を 細 かく 見 ると 燃 料 費 調 整 制 度 により 原 油 価 格 の 下 落 からややラグを 伴 ってコア CPI を 押 し 下 げる また 原 油 価 格 の 動 向 が 金 融 政 策 運 営 に 与 える 影 響 としては 下 落 した 場 合 と 上 昇 した 場 合 の 双 方 で 緩 和 的 な 金 融 政 策 が 採 られる 可 能 性 が 示 唆 される 原 油 価 格 とリンクした 追 加 緩 和 は 以 下 の 2 点 において 極 めて 危 険 である 第 一 に 原 油 価 格 は 極 めてボラタイルであることから このような 指 標 に 金 融 政 策 がリンクされている との 憶 測 が 生 まれると 先 行 きの 金 融 緩 和 引 き 締 めの 観 測 に 不 透 明 感 が 強 まり 市 場 を 不 安 定 化 させる 要 因 となりかねない 第 二 に 日 本 銀 行 自 身 が 認 めるように 原 油 価 格 の 下 落 は 中 長 期 的 には 実 体 経 済 にとってプラスの 現 象 であるにも 関 わらず 金 融 緩 和 を 行 ったということは 将 来 的 に 実 体 経 済 を 加 熱 させすぎる 可 能 性 をはらむ このこと は 将 来 的 には 一 層 強 力 な 金 融 引 き 締 めを 必 要 とするため 実 体 経 済 をも 不 安 定 化 させ かねない 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは 投 資 勧 誘 を 意 図 して 提 供 するものではありません このレポートの 掲 載 情 報 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 源 から 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 を 保 証 する ものではありません また 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 大 和 総 研 の 親 会 社 である 大 和 総 研 ホールディングスと 大 和 証 券 は 大 和 証 券 グループ 本 社 を 親 会 社 とする 大 和 証 券 グループの 会 社 です 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 無 断 での 複 製 転 載 転 送 等 はご 遠 慮 ください

2 / 12 続 落 する 原 油 価 格 が CPI を 押 し 下 げる 公 算 足 下 で 原 油 価 格 の 下 落 が 止 まらない 代 表 的 な 原 油 価 格 指 標 である ドバイ 原 油 のスポット 価 格 は 2014 年 のピークを 付 けた 6 月 から 約 50%も 下 落 し 世 界 経 済 に 混 乱 をもたらしている( 図 表 1) エネルギー 資 源 の 多 くを 輸 入 に 頼 っている 日 本 にとっては 原 油 価 格 の 下 落 は 投 入 コス トの 低 下 を 通 じて 企 業 収 益 の 改 善 に 繋 がるため 本 来 歓 迎 すべき 事 態 である 一 方 で 2%のイ ンフレ 目 標 達 成 を 目 指 す 日 本 銀 行 にとっては 原 油 価 格 の 下 落 は 物 価 の 押 し 下 げに 作 用 するた め インフレ 目 標 の 達 成 を 後 ずれさせるリスクとなりかねない 加 えて 現 在 の 日 本 銀 行 の 金 融 政 策 運 営 に 見 られるような 厳 格 な インフレ 目 標 にのっとれば 原 油 価 格 の 下 落 は 追 加 緩 和 の 観 測 を 生 みかねず 市 場 の 期 待 形 成 をボラタイルにしてしまうリスクをもはらむ そこで 本 稿 では 原 油 価 格 の 下 落 が 物 価 に 与 える 影 響 を 整 理 したうえで 原 油 価 格 が 下 落 し ている 状 況 での 金 融 政 策 運 営 について 論 じたい 図 表 1:ドバイスポット 価 格 (ドル/バレル) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 ( 年 ) ( 出 所 )Bloombergより 大 和 総 研 作 成 原 油 価 格 が CPI に 与 える 影 響 の 整 理 初 めに 原 油 価 格 の 下 落 がどのような 経 路 を 通 じて CPI を 押 し 下 げるかを 検 証 する ややテ クニカルな 内 容 を 含 むが 詳 細 に 議 論 することで 原 油 価 格 下 落 の 影 響 の 度 合 いや 継 続 期 間 に ついて 解 説 したい 原 油 価 格 の 下 落 が 物 価 に 与 える 影 響 を 大 きく 分 けると 1CPI の 内 訳 項 目 である エネルギー 物 価 の 下 落 2 投 入 価 格 の 下 落 を 通 じた 企 業 収 益 や 需 給 ギャップの 改 善 による 物 価 の 押 し 上 げ という 2 つに 分 類 することができる このうち 2に 関 しては 中 長 期 的 には 物 価 を 押 し 上 げる 要 因 に 作 用 するが 短 期 的 には 決 定 的 な 影 響 を 与 えるほどのインパクトを 持 たないため 当 面 の 金 融 政 策 について 考 察 するという 本 稿 の 趣 旨 に 照 らして 分 析 の 対 象 とはしない エネルギー 物 価 にはさらに 5 つの 内 訳 が 存 在 しているが 1 これらのうちウェイトの 大 きい 電 気 代 と ガ ソリン に 対 して 原 油 価 格 の 下 落 が 与 えるインパクトを 試 算 したい 1 電 気 代 都 市 ガス 代 プロパンガス 灯 油 ガソリンの 5 つ

3 / 12 電 気 代 への 影 響 初 めに 電 気 代 への 影 響 を 整 理 しよう 原 油 価 格 の 変 動 は 電 気 料 金 のうち 燃 料 費 調 整 単 価 を 変 動 させることで 物 価 に 影 響 を 与 える 概 要 を 述 べると 貿 易 統 計 における 各 資 源 ( 原 油 LNG 石 炭 )の 輸 入 単 価 に 各 電 力 会 社 で 設 定 されている 係 数 をかけ 合 わせる( 図 表 3)ことで 平 均 燃 料 価 格 が 決 定 され これとあらかじめ 設 定 されている 基 準 燃 料 価 格 との 差 が 燃 料 費 調 整 単 価 として 月 々の 電 気 料 金 に 加 算 ( 減 算 )される ここで 重 要 な 特 徴 として 計 算 に 用 い られる 輸 入 単 価 は 3 ヶ 月 前 の 3 ヶ 月 後 方 平 均 値 が 用 いられることが 挙 げられる このため 原 油 価 格 の 変 動 は 3 ヶ 月 後 から 徐 々にその 影 響 を 顕 在 化 させることになる よって 2014 年 10 月 以 降 に 原 油 価 格 が 急 速 に 下 落 した 影 響 は CPI の 電 気 代 には 以 降 に 表 れるとみられる 図 表 2: 資 源 別 の 輸 入 単 価 の 推 移 図 表 3: 平 均 燃 料 価 格 算 出 のための 各 係 数 (2010 年 =100) 200 180 160 140 120 100 80 60 40 09 10 11 12 13 14 原 油 及 び 粗 油 LNG 石 炭 ( 出 所 ) 財 務 省 統 計 より 大 和 総 研 作 成 ( 年 ) 原 油 LNG 石 炭 北 海 道 電 力 0.47 0.00 0.79 東 北 電 力 0.12 0.27 0.74 東 京 電 力 0.20 0.44 0.25 中 部 電 力 0.03 0.48 0.43 北 陸 電 力 0.23 0.00 1.14 関 西 電 力 0.23 0.30 0.50 中 国 電 力 0.15 0.13 0.98 四 国 電 力 0.21 0.05 1.06 九 州 電 力 0.15 0.26 0.72 ( 出 所 ) 各 社 ホームページより 大 和 総 研 作 成 電 気 料 金 は 原 油 価 格 だけでなく LNG 価 格 や 石 炭 価 格 の 影 響 も 受 ける そこで 次 に LNG 価 格 の 動 向 が 電 気 代 に 与 える 影 響 を 見 てみよう 原 油 に 関 してはすべての 電 力 会 社 が 平 均 燃 料 価 格 の 算 出 に 用 いている 一 方 で LNG 価 格 に 関 しては 一 部 の 電 力 会 社 では 算 出 に 用 いておらず これ らの 地 域 では 基 本 的 には LNG 価 格 の 変 動 は 電 気 料 金 に 影 響 しない しかし 関 東 地 方 や 中 部 地 方 関 西 地 方 といった CPI のウェイトの 大 きい 地 域 では 総 じて LNG 価 格 の 係 数 が 大 きいことか ら 先 行 きの 電 気 代 を 考 えるうえで LNG 価 格 の 動 向 は 注 目 に 値 する LNG 価 格 の 一 部 は 原 油 価 格 に 連 動 して 価 格 が 決 定 される 特 徴 を 持 つ このため 急 速 な 円 安 が 進 んだことで 足 下 では 上 向 きの 動 きとなっている LNG 価 格 に 関 しても 原 油 価 格 に 引 きずられる 形 で 低 下 へ 向 かうとみ ている 以 上 のような 関 係 を 考 慮 したうえで 2 つのシナリオを 用 意 し 原 油 価 格 の 動 向 が 電 気 代 を 通 じて CPI( 生 鮮 食 品 を 除 く 総 合 以 下 コア CPI)に 与 える 影 響 を 試 算 しよう 1 つは 原 油 価 格 横 ば いシナリオ もう 一 つは 原 油 価 格 上 昇 シナリオである 前 者 では 原 油 価 格 が 足 下 から 横 ばい で 推 移 したと 想 定 し 後 者 では 2 月 以 降 原 油 価 格 が 急 速 に 上 昇 に 転 じ 6 月 に 80 ドルに 到 達 するケースを 想 定 した このように 原 油 価 格 を 外 生 的 に 定 めたうえで 原 油 と LNG の 輸 入 単 価 を 試 算 したものが 図 表 4 である 2 2 石 炭 に 関 しては 足 下 の 水 準 で 横 ばいと 置 いた また LNG と 原 油 価 格 の 時 差 相 関 を 取 ると 4 ヶ 月 目 に 最 大 とな ることから LNG 価 格 は 原 油 価 格 に 4 ヶ 月 遅 れて 連 動 すると 仮 定 した

4 / 12 図 表 4: 原 油 価 格 と LNG 価 格 ( 左 図 : 原 油 価 格 横 ばいシナリオ 右 図 : 原 油 価 格 上 昇 シナリオ) (2010 年 =100) 200 前 提 (2010 年 =100) 200 前 提 180 180 160 160 140 140 120 120 100 100 80 123456789101112123456789101112123456789101112 2013 2014 2015 原 油 価 格 LNG 価 格 ( 月 ) ( 年 ) 80 123456789101112123456789101112123456789101112 2013 2014 2015 原 油 価 格 LNG 価 格 ( 月 ) ( 年 ) ( 出 所 ) 財 務 省 統 計 より 大 和 総 研 作 成 ( 出 所 ) 財 務 省 統 計 より 大 和 総 研 作 成 このような 前 提 のもと 電 気 代 のコア CPI への 寄 与 を 試 算 したものが 図 表 5 である 足 下 の 水 準 で 原 油 価 格 が 推 移 した 場 合 度 に 入 ったころから 電 気 代 はマイナスに 寄 与 する 公 算 である 一 方 原 油 価 格 上 昇 シナリオにおいても の 後 半 までマイナス 寄 与 の 拡 大 が 続 く 公 算 であり 足 下 の 原 油 安 はラグを 伴 って 電 気 代 を 下 押 しする 見 込 みだ 図 表 5: 電 気 代 がコア CPI に 与 える 影 響 (コアCPIへの 寄 与 度 %pt) 0.5 シミュレーション 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0-0.1-0.2-0.3 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 ( 月 ) 2014 2015 2016 ( 年 ) 原 油 価 格 横 ばいシナリオ ( 注 ) 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 除 く ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 より 大 和 総 研 作 成 原 油 価 格 上 昇 シナリオ ガソリン への 影 響 次 に ガソリン 価 格 変 動 の CPI への 影 響 度 合 いについて 考 えたい ガソリンの 影 響 は 電 気 代 ほど 複 雑 ではない 図 表 6 に 示 した 通 り CPI のガソリンはドバイ 原 油 価 格 にドル 円 レートを 乗 じたもの(すなわち 円 換 算 した 原 油 価 格 )に 連 動 する 足 下 での 原 油 価 格 の 下 落 ペースは 円 安 によるドル 円 レートの 減 価 ペースを 上 回 っているため 円 建 ての 原 油 価 格 は 急 速 に 下 落 して いる このような 関 係 を 考 慮 すると ガソリンについては 電 気 代 とは 違 い 原 油 価 格 の 下 落 が 1 ヶ 月 程 度 のラグを 置 いて 物 価 を 押 し 下 げることになる

5 / 12 図 表 6:CPI(ガソリン)と 円 建 ての 原 油 価 格 (2010 年 =100) (2010 年 =100) 230 150 210 140 190 170 130 150 120 130 110 110 100 90 70 90 50 80 08 09 10 11 12 13 14 15 ( 年 ) ドバイ 原 油 価 格 ドル 円 (1ヶ 月 先 行 ) CPI(ガソリン)( 右 軸 ) ( 注 )CPIは 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 除 く ( 出 所 )Bloomberg 日 本 銀 行 総 務 省 統 計 より 大 和 総 研 作 成 次 に 上 記 の 2 つのシナリオをもとにガソリン 価 格 がコア CPI を 押 し 下 げる 影 響 を 試 算 する と 2014 年 12 月 以 降 コア CPI に 対 するマイナス 寄 与 が 急 速 に 拡 大 する 見 込 みである 原 油 価 格 が 上 昇 に 転 じなければ 最 大 で 0.5%pt 程 度 CPI を 押 し 下 げる 可 能 性 があり 他 の 項 目 次 第 ではコア CPI がマイナスに 転 じる 可 能 性 も 排 除 できないだろう 一 方 で 現 在 の 原 油 価 格 の 低 い 水 準 によりハードルが 下 がる 結 果 原 油 価 格 上 昇 シナリオでは 度 末 にかけて +0.4% pt 程 度 物 価 を 押 し 上 げる 方 向 へ 作 用 することになる このため 原 油 価 格 の 動 向 に 応 じて コ ア CPI は 上 振 れ 下 振 れの 双 方 のリスクに 警 戒 が 必 要 だ 図 表 7:ガソリン 価 格 がコア CPI に 与 える 影 響 (コアCPIへの 寄 与 度 %pt) 0.6 シミュレーション 0.4 0.2 0.0-0.2-0.4-0.6-0.8 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 ( 月 ) 2014 2015 2016 ( 年 ) 原 油 価 格 横 ばいシナリオ ( 注 ) 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 除 く ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 より 大 和 総 研 作 成 原 油 価 格 上 昇 シナリオ

6 / 12 原 油 価 格 の 下 落 がコア CPI に 与 える 影 響 のまとめ 以 上 のような 関 係 を 考 慮 したうえで エネルギー 価 格 の 下 落 がコア CPI へ 与 える 影 響 を 試 算 したのが 図 表 8 である 3 足 下 ですでにマイナスとなっている ガソリン によるマイナス 寄 与 が 拡 大 することに 加 えて 電 気 代 がタイムラグを 伴 って 度 以 降 マイナス 寄 与 とな ることで エネルギーによる 下 押 し 圧 力 が 拡 大 する 見 通 しだ 図 表 8:エネルギー 価 格 のコア CPI への 寄 与 度 ( 左 図 : 原 油 価 格 横 ばい 右 図 : 原 油 価 格 上 昇 ) (コアCPIへの 寄 与 度 %pt) 1.0 シミュレーション 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0-0.2-0.4-0.6-0.8-1.0-1.2 123456789101112123456789101112123456789101112123 ( 月 ) 2013 2014 2015 2016 ( 年 ) 電 気 代 都 市 ガス 代 プロパンガス 灯 油 ガソリン エネルギー ( 注 ) 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 除 く ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 より 大 和 総 研 作 成 (コアCPIへの 寄 与 度 %pt) 1.0 シミュレーション 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0-0.2-0.4-0.6-0.8 123456789101112123456789101112123456789101112123 ( 月 ) 2013 2014 2015 2016 ( 年 ) 電 気 代 都 市 ガス 代 プロパンガス 灯 油 ガソリン エネルギー ( 注 ) 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 除 く ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 より 大 和 総 研 作 成 以 上 のように 足 下 での 原 油 価 格 の 下 落 は CPI に 対 して 無 視 できないほどの 影 響 を 与 えるだ ろう このことは 度 後 半 にかけて 2%の 物 価 目 標 達 成 を 目 指 す 日 本 銀 行 にとって 大 き な 障 害 となりかねない 一 方 で 原 油 価 格 の 水 準 が 切 り 下 がったことで 原 油 価 格 が 上 昇 に 転 じ た 場 合 には 2016 年 に 入 ったころからエネルギー 価 格 が 急 速 に 物 価 を 押 し 上 げる 方 向 へ 作 用 し 物 価 目 標 の 達 成 に 貢 献 する 可 能 性 さえ 残 す 最 も 早 急 に 原 油 価 格 が 上 昇 に 転 じない 限 り 2015 年 度 のコア CPI 上 昇 率 は 低 空 飛 行 を 続 ける 公 算 であり 日 本 銀 行 の 物 価 見 通 しは 早 期 に 修 正 を 迫 られるだろう ただし 冒 頭 で 強 調 したように エネルギーの 純 輸 入 国 である 日 本 にとって また 同 様 の 経 済 構 造 を 持 つ 日 本 の 主 要 貿 易 相 手 国 にとって 原 油 価 格 の 下 落 は 歓 迎 すべき 事 態 であり 中 長 期 的 には 需 給 ギャップの 改 善 を 通 じて 物 価 を 押 し 上 げる 方 向 に 作 用 するはずだ また 足 下 で 悪 化 傾 向 にある 消 費 者 マインドにとっても 原 油 価 格 の 下 落 はポジティブな 要 因 であるだろう このため エネルギー 価 格 の 物 価 への 下 押 しにより 短 期 的 に 消 費 者 物 価 指 数 が 伸 び 悩 んだと しても デフレへの 逆 戻 り や 日 銀 は 追 加 緩 和 で 対 応 すべき などと 過 度 に 騒 ぎ 立 てる 必 要 はないと 考 える 3 推 計 に 際 し プロパンガス は 直 近 の 水 準 から 横 ばいで 推 移 灯 油 は 原 油 の 輸 入 単 価 に 都 市 ガス 代 は LNG の 輸 入 単 価 にそれぞれ 連 動 すると 仮 定 した

7 / 12 今 後 の 金 融 政 策 運 営 への 影 響 最 後 に 原 油 価 格 下 落 に 伴 うコア CPI の 低 下 懸 念 が 今 後 の 金 融 政 策 運 営 に 与 える 影 響 を 考 察 したい 黒 田 総 裁 の 金 融 政 策 運 営 の 特 徴 今 後 の 金 融 政 策 の 展 望 を 考 えるに 当 たり これまでの 黒 田 総 裁 の 金 融 政 策 の 運 営 手 法 の 特 徴 についてまとめたい 大 きな 特 徴 としては 1 一 貫 して 強 気 の 景 気 物 価 見 通 し 2サプライ ズ 緩 和 3 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わない という 3 点 が 挙 げられる これら 3 つの 背 景 を 推 測 す ることで 今 後 の 金 融 政 策 運 営 へのインプリケーションを 探 りたい 1 強 気 の 景 気 物 価 見 通 し 第 一 の 特 徴 としては 強 気 の 景 気 物 価 見 通 しが 挙 げられる この 意 図 は 明 快 で 日 本 銀 行 自 身 が 強 気 の 姿 勢 を 示 すことにより 期 待 へ 働 きかける 効 果 を 通 じて 設 備 投 資 や 賃 金 に 好 循 環 を 生 み 出 すことにある 期 待 へ 働 きかける 効 果 に 頼 る 現 在 の 金 融 政 策 では 経 済 状 況 に 関 わらず 日 本 銀 行 は 強 気 の 姿 勢 を 示 す 必 要 がある ただし 実 体 経 済 と 日 本 銀 行 の 見 解 にかい 離 が 生 じている 場 合 には このような 姿 勢 は チープトーク とみなされかねず 日 本 銀 行 の アナウンスメントに 対 する 信 認 を 失 うリスクを 伴 う このようなリスクを 冒 してでも 日 本 銀 行 が 強 気 の 見 通 しを 立 てる 背 景 には 各 国 のインフレ 目 標 導 入 の 経 緯 があると 考 えられる すなわち 90 年 代 初 頭 にかけてインフレ 目 標 を 採 用 する 中 央 銀 行 が 増 えたが 導 入 当 初 はインフレ 目 標 という 制 度 自 体 に 懐 疑 的 な 見 解 が 多 く 多 くの 中 央 銀 行 は 導 入 当 初 厳 格 なインフレ 目 標 を 採 用 することで このような 懐 疑 的 な 見 解 を 払 し ょくしてきた その 後 インフレ 目 標 という 制 度 への 信 認 が 高 まった 段 階 で 厳 格 な インフ レ 目 標 からより 景 気 動 向 への 対 応 を 重 視 する フレキシブル なインフレ 目 標 へと 徐 々に 制 度 を 変 革 させていった 日 本 銀 行 のインフレ 目 標 が 現 在 のインフレ 目 標 の 主 流 である フレキシブルなインフレ 目 標 ではなく 厳 格 なインフレ 目 標 であると 感 じさせる 背 景 には このような 歴 史 的 な 経 験 がある すなわち 現 在 の 日 本 銀 行 の 最 優 先 事 項 は インフレ 目 標 への 信 認 を 高 めることであり この ためにやれることは 何 でもやっているのだろう ただし 90 年 代 初 頭 の 中 央 銀 行 がインフレフ ァイティングの 手 段 としてインフレ 目 標 を 導 入 した 際 には 利 上 げというインフレに 対 する 強 力 なツールを 持 っていたのに 対 し ゼロ 金 利 制 約 に 直 面 した 状 況 でデフレファイティングとし てインフレ 目 標 を 導 入 した 日 本 銀 行 には 強 力 なツールがない 日 本 銀 行 執 行 部 は 量 的 質 的 金 融 緩 和 にその 役 割 を 期 待 したのだろうが 円 安 を 通 じた 影 響 以 外 には 物 価 に 対 する 目 立 った 影 響 は 見 られない( 図 表 9) まして 円 安 による 投 入 価 格 上 昇 への 懸 念 が 高 まるなか 一 層 の 円 安 を 導 くことは 困 難 となりつつある 円 高 の 修 正 局 面 では 政 府 日 銀 ともに 円 安 を 実 現 するこ とで 利 害 が 一 致 していたが 円 安 の 進 行 に 伴 い 為 替 に 関 して 政 府 と 日 銀 の 利 害 に 若 干 の 齟 齬 が 見 られるため 今 後 の 金 融 政 策 運 営 では 円 安 というツールに 過 大 な 期 待 をかけることは 難 し い

8 / 12 図 表 9: 企 業 物 価 ( 消 費 財 ) ( 前 年 比 %) 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0-1.0-2.0-3.0-4.0 10 11 12 13 14 耐 久 消 費 財 国 内 品 耐 久 消 費 財 輸 入 品 ( 契 約 通 貨 建 ) 非 耐 久 消 費 財 国 内 品 非 耐 久 消 費 財 輸 入 品 ( 契 約 通 貨 建 ) 為 替 要 因 消 費 財 ( 注 ) 為 替 レート 要 因 は 契 約 通 貨 建 て 輸 出 物 価 ( 総 平 均 )により 算 出 ( 出 所 ) 日 本 銀 行 統 計 より 大 和 総 研 作 成 ( 年 ) 2サプライズ 緩 和 現 在 の 日 本 銀 行 の 金 融 政 策 運 営 のもう 一 つの 特 徴 としては サプライズ 緩 和 が 挙 げられる 黒 田 総 裁 が 就 任 して 以 降 の 2 度 の 緩 和 (2013 年 4 月 2014 年 10 月 )では 事 前 の 市 場 予 想 を 大 きく 上 回 る 規 模 の 国 債 やリスク 資 産 を 購 入 することで 株 価 や 為 替 を 大 きく 変 動 させることに 成 功 した さらに 2 度 目 の 緩 和 に 関 しては 多 くのマーケット 参 加 者 が 事 前 に 予 想 していなか ったタイミングで 動 いたことで 金 融 市 場 を 大 きく 反 応 させることとなった 2014 年 10 月 の 追 加 緩 和 をマーケットが 想 定 していなかった 背 景 には 1 つ 目 の 特 徴 として 挙 げた 1 強 気 の 景 気 物 価 見 通 し が 大 きく 関 連 している 2014 年 10 月 の 追 加 緩 和 に 至 るまで の 日 本 銀 行 のアナウンスメントを 見 ると 原 油 価 格 の 下 落 は 中 長 期 的 には 日 本 経 済 にとってプ ラスであるというアナウンスメントを 繰 り 返 し 強 気 の 経 済 物 価 見 通 しを 貫 いていた この ため マーケットでは 2014 年 10 月 の 追 加 緩 和 を 想 定 していなかった しかし ふたを 開 けて みると 日 本 銀 行 は 強 気 の 見 通 しを 維 持 したまま 原 油 価 格 下 落 が 物 価 を 下 押 しすることで デ フレマインドの 転 換 が 遅 延 するリスク に 対 応 することを 理 由 に 追 加 緩 和 を 決 定 し 裏 をかか れた 市 場 は 大 きく 反 応 した 3 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わない 最 後 の 特 徴 としては 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わず 追 加 緩 和 の 後 はしばらくの 期 間 静 観 する 姿 勢 を 表 明 している これは リーマン ショックの 後 の 金 融 市 場 の 混 乱 に 際 し 度 重 なる 外 生 ショックへの 対 応 が 後 手 に 回 ったとの 考 えから 来 ている 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わないという 方 針 も 他 の 2 つの 方 針 と 密 接 に 関 係 している 経 済 見 通 しを 大 幅 に 下 方 修 正 する 中 追 加 緩 和 を 行 わないことは インフレ 目 標 制 度 への 信 認 を 失 うこ とに 繋 がりかねないことから 日 本 銀 行 としては 選 択 しにくい このため 1の 強 気 の 景 気 物 価 見 通 しは 戦 力 の 逐 次 投 入 を 行 わないための 条 件 となる また 逐 次 投 入 を 行 わないとアナ ウンスし 追 加 緩 和 への 期 待 値 を 下 げることで サプライズ 緩 和 の 効 果 を 大 きく 見 せる 効 果 も 有 する

9 / 12 このように 現 在 の 日 本 銀 行 による 金 融 政 策 の 特 徴 である 1 強 気 の 景 気 物 価 見 通 し 2 サプライズ 緩 和 3 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わないという 3 つの 方 針 はそれぞれ 相 互 に 深 く 関 係 し ている 特 に 1 強 気 の 景 気 物 価 見 通 しは 他 の 2 つの 方 針 の 前 提 となる 方 針 であるため 極 めて 重 要 であるといえる 原 油 価 格 と 金 融 政 策 の 動 向 上 記 のような 方 針 を 念 頭 に 置 きつつ 原 油 価 格 と 金 融 政 策 の 動 向 について 考 察 しよう 2014 年 10 月 末 の 追 加 緩 和 の 決 定 理 由 が 原 油 価 格 下 落 に 伴 う 物 価 の 低 下 懸 念 であったことから 今 後 の 追 加 緩 和 の 動 向 についても 原 油 価 格 の 動 きが 大 きく 影 響 してくるとの 見 方 が 広 がりつつあ る 実 際 追 加 緩 和 以 降 も 原 油 価 格 は 水 準 を 切 り 下 げており 前 回 の 追 加 緩 和 のロジックに 従 えばいずれ 追 加 緩 和 が 必 要 となるだろう ただし 原 油 価 格 とリンクした 追 加 緩 和 は 以 下 の 2 点 において 極 めて 危 険 である 第 一 に 原 油 価 格 は 極 めてボラタイルであることから このよう な 指 標 に 金 融 政 策 がリンクされているとの 憶 測 が 生 まれると 先 行 きの 金 融 緩 和 引 き 締 めの 観 測 に 不 透 明 感 が 強 まり 市 場 を 不 安 定 化 させる 要 因 となりかねない 第 二 に 日 本 銀 行 自 身 が 認 めるように 原 油 価 格 の 下 落 は 中 長 期 的 には 実 体 経 済 にとってプラスの 現 象 であるにも 関 わらず 金 融 緩 和 を 行 ったということは 将 来 的 に 実 体 経 済 を 加 熱 させすぎる 可 能 性 をはらむ このことは 将 来 的 には 一 層 強 力 な 金 融 引 き 締 めを 必 要 とするため 実 体 経 済 をも 不 安 定 化 さ せかねない 今 後 の 金 融 政 策 運 営 ~ 原 油 価 格 が 上 がらないケース 仮 に 原 油 価 格 が 急 速 に 上 昇 しない 場 合 エネルギー 価 格 はマイナス 寄 与 を 続 ける 公 算 であり このことは 度 の 後 半 にかけて 2%のインフレ 目 標 の 達 成 を 目 指 す 日 本 銀 行 にとって 大 きな 障 害 となる このような 状 況 のなか 日 本 銀 行 が 採 りうるいくつかの 選 択 肢 を 検 討 したい 選 択 肢 1: 強 気 の 景 気 物 価 見 通 し 維 持 + 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わない 初 めに 考 えられる 選 択 肢 としては 現 状 の 強 気 の 経 済 物 価 見 通 しを 維 持 したまま 現 行 の 金 融 政 策 運 営 を 継 続 するというものである これはまさに 現 在 の 日 本 銀 行 の 金 融 政 策 運 営 の 方 針 そのものである この 場 合 エネルギー 価 格 が 大 きな 下 押 し 圧 力 となる 中 コア CPI を 押 し 上 げる 要 因 を 明 示 する 必 要 がある 相 次 ぐ 食 料 品 の 値 上 げなどは 物 価 の 押 し 上 げ 要 因 となることが 期 待 されるが エネルギー 価 格 の 下 押 し 圧 力 をはねのけてまでコア CPI を 2%へ 押 し 上 げるほどのインパクトは ない このため 上 記 のシナリオを 維 持 する 場 合 には 需 給 ギャップの 大 幅 な 改 善 が 物 価 を 押 し 上 げることを 説 明 する 必 要 が 出 てくるだろう ただし こうした 方 針 を 貫 くことにはリスクも 伴 う 需 給 ギャップの 改 善 が 想 定 通 りに 行 か なかった 場 合 追 加 緩 和 が 遅 れ 政 策 が 後 手 に 回 ってしまったとの 評 価 を 受 けかねない 実 際

10 / 12 現 在 の 民 間 見 通 しは 実 質 GDP 成 長 率 は 徐 々に 減 速 していく 姿 を 想 定 しており このような 見 通 しが 実 現 した 場 合 には 需 給 ギャップの 改 善 ペースは 緩 慢 であり 追 加 緩 和 への 圧 力 が 高 まる だろう 図 表 10: 実 質 GDP 成 長 率 の 見 通 し ( 前 期 比 年 率 %) 8 6 4 2 0-2 -4-6 -8 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ 12 13 14 15 16 実 績 値 ESPフォーキャストによる 見 通 し ( 注 )シャドーは 上 位 8 機 関 と 下 位 8 機 関 の 範 囲 ( 出 所 ) 内 閣 府 日 本 経 済 研 究 センターより 大 和 総 研 作 成 ( 四 半 期 ) ( 年 ) 選 択 肢 2: 強 気 の 景 気 見 通 し 維 持 +サプライズ 緩 和 + 物 価 目 標 達 成 期 限 の 延 長 このようなリスクを 回 避 する 方 法 としては 上 記 の 選 択 肢 2が 挙 げられる 原 油 価 格 による 物 価 への 下 押 し 圧 力 を 理 由 に 1 年 間 物 価 目 標 達 成 期 限 を 延 長 する 一 方 原 油 価 格 の 下 落 が 実 体 経 済 にとっては 良 い 影 響 を 与 えることを 強 調 し 強 気 の 景 気 見 通 しを 堅 持 する これにより 期 待 へ 働 きかける 効 果 を 維 持 する 一 方 で 物 価 の 下 落 懸 念 に 対 応 した 追 加 緩 和 を 行 い 物 価 目 標 を 1 年 後 ずれさせて 達 成 することに 確 実 にコミットすることで インフレ 目 標 への 信 認 の 低 下 を 抑 える 意 図 を 持 つ サプライズ 緩 和 を 行 った 場 合 には 金 融 緩 和 の 効 果 を 大 きく 見 せることが 重 要 である そこ でカギとなるのが タイミング と 内 容 である タイミングについて 検 討 すると 追 加 緩 和 以 降 に 実 施 されたアンケートによると 次 回 の 金 融 緩 和 の 予 想 として 4 月 7 月 10 月 との 回 答 が 多 い これらの 月 には 展 望 レポート( 及 びその 中 間 評 価 )の 発 表 があるためである 市 場 とのコミュニケーションを 図 る 上 でも 展 望 レ ポートによる 見 通 し 改 訂 のタイミングで 金 融 緩 和 に 動 きやすく 実 際 2014 年 10 月 の 追 加 緩 和 も 展 望 レポート 発 表 と 同 時 に 行 われた ただし 同 じく 展 望 レポートの 中 間 評 価 の 発 表 がある 1 月 を 予 想 する 機 関 はない 前 回 の 追 加 緩 和 のロジックに 従 えば 原 油 価 格 が 一 層 下 落 し ていることを 理 由 とし 追 加 緩 和 に 動 くと 考 えるのが 自 然 であるが 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わな いという 方 針 と 矛 盾 することから 追 加 緩 和 を 想 定 していないと 考 えられる 最 も 予 測 者 の 少 ない 1 月 に 追 加 緩 和 に 動 いた 場 合 には 2014 年 10 月 と 同 様 に 市 場 の 裏 をかく 形 となり 大 きなサプライズの 効 果 を 生 むというメリットがある 一 方 で これまでの 運 営 方 針 である 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わない という 方 針 への 信 認 は 失 われるデメリットがある 戦 力

11 / 12 の 逐 次 投 入 は 行 わない という 方 針 が 有 する 追 加 緩 和 への 期 待 値 を 下 げサプライズの 効 果 を 大 きく 見 せる 役 割 を 失 うことから 一 層 の 追 加 緩 和 が 必 要 になった 場 合 には タイミング を 外 すことよってサプライズを 演 出 することは 困 難 となる 他 方 時 期 が 後 ろになるほど 追 加 緩 和 を 予 想 する 機 関 が 多 いことからサプライズの 効 果 は 小 さくなるものの 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わない という 方 針 は 保 たれることになる このように 追 加 緩 和 のタイミングは サプライズ 緩 和 の 効 果 というメリットと 戦 力 の 逐 次 投 入 は 行 わないという 方 針 への 信 認 の 低 下 というデメ リットの 比 較 衡 量 によって 決 定 されるだろう 図 表 11: 次 回 の 金 融 緩 和 の 実 施 時 期 (%) 35 30 25 20 15 10 5 0 年 月 2015 1 2 月 3 月 4 月 8 日 4 月 30 日 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 年 月 回 2015 10 1 目 年 月 回 2015 10 2 目 年 月 2015 11 12 月 2016 年 1 月 以 降 追 加 緩 和 な し ( 注 ) 調 査 機 関 数 は33 ( 出 所 )Bloombergより 大 和 総 研 作 成 次 に 問 題 となるのが 追 加 緩 和 の 内 容 をどう 見 るかという 点 である Bloomberg のアンケートに よると 追 加 緩 和 の 内 容 としては 長 期 国 債 やリスク 資 産 の 増 額 を 挙 げる 機 関 が 多 い ただし マネタリーベース 拡 大 のための 主 力 材 料 である 長 期 国 債 はすでに 日 本 銀 行 の 買 入 額 が 極 めて 大 きくなっており 市 場 予 想 を 上 回 る 買 入 を 行 うことは 困 難 になりつつある リスク 資 産 につい ては 買 入 余 地 は 依 然 あると 見 られるが 買 入 額 の 増 加 幅 は 小 さいことから 追 加 緩 和 の 規 模 を 通 じたサプライズは 起 こしにくくなっている 一 方 同 アンケートを 注 意 深 く 見 ると 追 加 緩 和 の 手 段 として 超 過 準 備 への 付 利 の 引 き 下 げ を 予 測 している 機 関 は 少 ない 超 過 準 備 への 付 利 は 短 期 金 融 市 場 の 機 能 不 全 を 防 ぐことに 加 え オペの 札 割 れを 回 避 する 目 的 で 導 入 されている 超 過 準 備 への 付 利 をゼロにすると 金 融 機 関 は 超 過 準 備 を 保 有 するインセンティブが 低 下 するが このことはマネタリーベースの 拡 大 を 阻 害 する 要 因 となるため 追 加 緩 和 の 手 段 として 付 利 の 引 き 下 げを 予 測 する 機 関 は 少 ない ただ し 足 下 でマイナス 金 利 が 定 着 しつつある 中 付 利 に 若 干 の 引 き 下 げ 余 地 がうまれている こ のため 従 来 のように 規 模 や タイミング を 通 じてサプライズを 生 むことに 限 界 が 近 づ きつつある 状 況 では 付 利 の 引 き 下 げという 手 段 を 通 じたサプライズに 走 る 可 能 性 も 否 定 できないだろう

12 / 12 図 表 12: 追 加 緩 和 の 手 段 に 関 するアンケート 図 表 13:3 ヶ 月 物 TB 利 回 りの 推 移 ( 回 答 機 関 数 ) 18 (%) 0.15 16 14 12 0.10 10 8 6 17 16 17 14 0.05 4 2 0 マ ネ タ リ ー ベ ー ス 増 額 長 期 国 債 増 額 ETF 増 額 J-REIT 増 額 7 付 利 の 引 き 下 げ 8 そ の 他 0.00-0.05-0.10 14/1 14/2 14/3 14/4 14/5 14/6 14/7 14/8 14/9 14/10 14/11 14/12 15/1 ( 注 ) 複 数 回 答 可 ( 出 所 )Bloombergより 大 和 総 研 作 成 ( 出 所 )Bloombergより 大 和 総 研 作 成 ( 年 / 月 ) 今 後 の 金 融 政 策 運 営 ~ 原 油 価 格 が 上 昇 するケース 次 に 原 油 価 格 が 上 昇 するケースについて 考 えてみよう シミュレーションで 示 したように 足 下 の 水 準 が 低 くなっている 分 原 油 価 格 が 上 昇 に 転 じた 場 合 に 物 価 への 押 し 上 げ 寄 与 は 大 きくなりやすい このため 原 油 価 格 が 上 昇 に 転 じた 場 合 には コア CPI 上 昇 率 が 一 時 的 に 2% にタッチする 可 能 性 は 十 分 にあり 得 るだろう この 場 合 現 在 のような 厳 格 なインフレ 目 標 に 従 えば 物 価 上 昇 懸 念 へ 対 応 するため 金 融 引 き 締 めが 必 要 となる ただし すでに 述 べたように 原 油 価 格 の 上 昇 は 実 体 経 済 にとってマ イナス 要 因 であることから 本 来 このような 政 策 はあるべき 政 策 とは 真 逆 の 政 策 となってしま う このような 事 態 を 回 避 するために 筆 者 は 日 本 銀 行 は 2%のインフレ 目 標 への 信 認 が 確 立 され たことを 理 由 に インフレ 目 標 の 運 営 を フレキシブル なものへと 変 更 するとみている こ のため 原 油 価 格 の 下 落 が 追 加 緩 和 の 引 き 上 げとなったこととは 対 照 的 に 原 油 価 格 上 昇 時 に は 引 締 めやテーパリングを 行 わないものと 考 えられる まとめ 本 稿 では 初 めに 原 油 価 格 の 下 落 がコア CPI に 与 える 影 響 を 説 明 したうえで 原 油 価 格 の 動 向 と 金 融 政 策 の 関 係 について 考 察 した 原 油 価 格 は 主 にエネルギー 価 格 を 通 じてコア CPI に 影 響 を 与 えるが エネルギー 価 格 の 内 訳 を 細 かく 見 ると 燃 料 費 調 整 制 度 により 原 油 価 格 の 下 落 か らややラグを 伴 ってコア CPI を 押 し 下 げる また 原 油 価 格 の 動 向 が 金 融 政 策 運 営 に 与 える 影 響 としては 下 落 した 場 合 と 上 昇 した 場 合 の 双 方 で 緩 和 的 な 金 融 政 策 が 採 られる 可 能 性 が 示 唆 される