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Transcription:

序 章 2015 年 の 東 アジア - 厳 しさを 増 す 戦 略 環 境 -

1 東 アジアに 迫 るイスラム 過 激 派 拡 散 の 脅 威 国 際 社 会 は 今 日 イラク レバントのイスラム 国 (ISIL)に 代 表 さ れるイスラム 過 激 派 の 拡 散 の 脅 威 に 直 面 している 地 上 戦 を 担 うイラク 軍 の 能 力 構 築 が 進 んでいない 上 に シリア 領 内 に 有 力 なパートナーが 存 在 しない 現 状 では 米 国 主 導 の 有 志 連 合 による 空 爆 だけで ISIL を 打 倒 することは 難 しい ISIL を 弱 体 化 させるには イラクの 宗 派 間 対 立 を 解 消 し シリア 内 戦 を 終 結 させて ISIL の 台 頭 をもたらした 根 本 的 な 要 因 を 除 去 する 必 要 がある イラクの 宗 派 間 対 立 もシリア 内 戦 も 収 束 す る 兆 しがないため 結 果 的 に ISIL の 生 き 残 りに 好 都 合 な 状 況 が 現 出 している そうした 中 2015 年 9 月 30 日 からロシア 軍 がシリア 領 内 で 空 爆 を 開 始 し 欧 米 諸 国 に 向 けて 対 ISIL 大 連 合 を 呼 びかけるとともに ウクライナ 危 機 により 悪 化 したロシアの 戦 略 環 境 を 立 て 直 そうとした ロシアによるシリアへの 軍 事 介 入 は ソ 連 軍 によるアフガニスタン 侵 攻 以 来 36 年 ぶりの 本 格 的 な 国 外 軍 事 展 開 となった 東 アジアも ISIL の 脅 威 によって 脅 かされている 日 本 を 含 む 東 アジ ア 諸 国 は 中 東 に 渡 航 した 自 国 民 や 在 外 公 館 などが ISIL のテロで 被 害 を 被 ったほか 中 国 をはじめ 東 アジア 諸 国 からも ISIL に 外 国 人 戦 闘 員 として 参 加 する 者 が 出 ている 2014 年 にウェブ 上 で 公 開 された ISIL の 将 来 地 図 とされるものは 中 国 の 新 疆 ウイグル 自 治 区 をも 領 土 に 含 んでいる この ISIL の 野 心 は 中 国 にとって 脅 威 となり 得 るが 今 のと ころ 中 国 は ISIL との 戦 いに 介 入 しない 立 場 を 取 っている 2 核 ミサイル 能 力 の 向 上 を 図 る 北 朝 鮮 北 朝 鮮 は 2016 年 1 月 6 日 に 水 爆 実 験 に 成 功 したと 発 表 し 2 月 7 日 に は 人 工 衛 星 と 称 する 弾 道 ミサイルを 発 射 するなど 核 ミサイル 能 力 の 向 上 を 図 る 姿 勢 を 強 めている ミサイルへの 核 弾 頭 搭 載 能 力 につい ては 依 然 として 不 明 な 部 分 も 多 いものの 核 兵 器 についてはすでに 小 型 2

序 章 -2015 年 の 東 アジア 化 弾 頭 化 の 実 現 に 至 っている 可 能 性 がある これを 踏 まえ 北 朝 鮮 が 潜 水 艦 技 術 と 水 中 発 射 能 力 を 向 上 させ 将 来 的 に 核 弾 頭 搭 載 可 能 な 潜 水 艦 発 射 弾 道 ミサイル(SLBM)システムの 配 備 に 至 れば 既 存 の 地 上 移 動 式 発 射 型 ミサイルの 能 力 向 上 と 併 せて 北 朝 鮮 の 核 戦 力 の 残 存 性 が 一 層 高 まる 危 険 性 がある 北 朝 鮮 は 慢 性 的 な 財 政 難 と 燃 料 不 足 などが 解 消 されない 中 並 進 路 線 に 基 づく 核 ミサイル 能 力 向 上 と 同 時 に 通 常 戦 力 においては 特 殊 作 戦 能 力 などの 非 対 称 的 能 力 向 上 を 中 心 に 軍 事 力 強 化 に 注 力 していくものと 考 えられる 北 朝 鮮 の 内 政 に 関 しては 労 働 党 による 唯 一 的 領 導 体 系 が 堅 持 される 一 方 実 際 には 金 正 恩 国 防 第 1 委 員 長 を 中 心 とした 粛 清 による 恐 怖 政 治 と 独 裁 体 制 が 強 化 されつつある 北 朝 鮮 と 主 要 諸 国 との 関 係 には 改 善 がみられず 同 国 は 国 際 社 会 から 孤 立 の 一 途 をたどっている 米 国 に 対 しては 核 ミサイルによって 抑 止 力 を 強 化 するとともに それを 外 交 カードとして 米 国 の 対 北 朝 鮮 敵 視 政 策 を 止 めさせることを 基 本 戦 略 として 堅 持 しつつ 外 交 的 には 強 硬 な 発 言 を 繰 り 返 している 韓 国 との 関 係 では 徐 々に 限 定 的 接 触 を 進 展 させようとする 動 きを 見 せ 強 硬 姿 勢 の 中 に 若 干 の 柔 軟 性 も 見 られた が 北 朝 鮮 が 水 爆 実 験 に 成 功 したと 発 表 した 後 南 北 関 係 も 再 び 冷 却 化 に 向 かっている 韓 国 は 米 韓 同 盟 を 基 礎 として 北 朝 鮮 のさまざまな 脅 威 の 抑 止 に 努 めているが 北 朝 鮮 の 核 ミサイル 能 力 の 向 上 に 対 応 して 弾 道 ミサイルなど 韓 国 独 自 の 打 撃 防 御 手 段 の 強 化 を 図 っている 3 南 シナ 海 をめぐる 中 国 の 対 外 拡 大 戦 略 中 国 の 対 外 戦 略 は 多 少 の 振 幅 を 交 えながらも 徐 々に 対 外 強 硬 的 に 変 化 してきている 中 国 は 南 シナ 海 における 地 形 の 埋 め 立 てや 尖 閣 諸 島 周 辺 海 域 における 海 警 局 公 船 を 使 った 日 本 への 圧 力 を 継 続 させてい るほか アジアインフラ 投 資 銀 行 (AIIB)の 設 立 や 一 帯 一 路 構 想 を 進 めて 中 国 が 影 響 を 及 ぼし 得 る 経 済 圏 の 拡 大 を 目 指 し また 抗 日 戦 争 勝 利 70 周 年 記 念 の 軍 事 パレードを 実 施 して 人 民 解 放 軍 の 近 代 化 を 内 3

外 に 示 した 対 外 的 な 拡 大 戦 略 は 2 年 ぶりに 発 表 された 国 防 白 書 中 国 の 軍 事 戦 略 にも 反 映 され 白 書 では 従 来 の 積 極 防 御 戦 略 方 針 の 軍 事 戦 略 方 針 とともに 海 軍 の 近 海 防 御 と 遠 海 護 衛 の 融 合 との 方 針 が ひときわ 目 を 引 いた 2015 年 12 月 31 日 には 人 民 解 放 軍 の 大 規 模 な 改 革 方 針 が 示 され 習 近 平 中 国 共 産 党 総 書 記 ( 国 家 主 席 中 央 軍 事 委 員 会 主 席 )の 軍 に 対 する 統 制 力 は 一 層 強 化 されるものとみられる 南 シナ 海 において 中 国 が 一 方 的 かつ 大 規 模 に 現 状 変 更 を 試 みている 事 態 に 対 して 米 国 は 10 月 に 米 海 軍 のイージス 駆 逐 艦 にスビ 礁 から 12 海 里 以 内 を 航 行 させる 航 行 の 自 由 作 戦 を 実 施 したほか 日 豪 両 国 は 中 国 に 対 して 深 刻 な 懸 念 を 一 致 して 表 明 するなど 中 国 の 台 頭 が 地 域 秩 序 にもたらすリスクに 対 して 足 並 みを 揃 えて 戦 略 的 メッセージを 発 信 することに 成 功 している 他 方 東 南 アジア 諸 国 連 合 (ASEAN)は 米 国 の 関 与 の 強 化 という 外 的 要 因 に 加 え ASEAN 内 部 の 意 見 対 立 とい う 内 的 要 因 により 南 シナ 海 問 題 に 関 わる 有 効 な 政 治 主 体 としての 存 在 意 義 が 揺 らいでいる 4 困 難 に 直 面 するオバマ 政 権 の 対 中 政 策 バラク オバマ 政 権 は 緊 迫 した 状 況 が 続 いているウクライナやアフ ガニスタン シリア 情 勢 への 対 応 を 迫 られているものの アジア 太 平 洋 へのリバランスという 政 策 方 針 を 維 持 し その 実 現 に 向 けて 継 続 的 に 取 り 組 んでいる ウクライナやシリアで 対 外 的 な 強 硬 姿 勢 を 強 めるロシア の 動 向 さらには 中 東 における ISIL による 勢 力 の 伸 長 といった 展 開 が 2014 年 版 4 年 毎 の 国 防 計 画 の 見 直 し (QDR)に 示 された 戦 略 の 変 更 を 迫 る 可 能 性 がある 米 国 の 対 中 政 策 には 中 国 が 国 際 ルールや 規 範 を 順 守 しながら 国 際 問 題 の 解 決 に 向 けて 積 極 的 な 役 割 を 担 うように 促 すことと 米 国 の 国 益 に そぐわない 行 動 を 中 国 がとらないように 抑 止 することの 2 つの 課 題 があ る オバマ 政 権 にとって グローバル 経 済 の 安 定 的 成 長 や 気 候 変 動 への 4

序 章 -2015 年 の 東 アジア 対 応 大 量 破 壊 兵 器 の 不 拡 散 などの 協 調 的 な 分 野 においてこれらの 目 標 を 達 成 していくことに 大 きな 問 題 はないが サイバー 攻 撃 による 米 国 企 業 の 機 密 情 報 の 窃 取 や 南 シナ 海 における 中 国 の 行 動 など 競 争 的 対 立 的 な 分 野 においてこれらの 問 題 をどのように 解 決 していくのか 対 中 政 策 のあり 方 をめぐってオバマ 政 権 は 困 難 に 直 面 している 5 新 たな 対 応 を 迫 られる 日 本 の 安 全 保 障 政 策 2015 年 は 日 本 の 安 全 保 障 政 策 の 歴 史 に 残 る 年 となった サイバー 空 間 とならび 宇 宙 空 間 は 新 たな 安 全 保 障 上 の 争 点 として 注 目 を 集 める ようになったため 2015 年 1 月 に 新 しい 宇 宙 基 本 計 画 が 策 定 され 宇 宙 安 全 保 障 が 重 点 課 題 として 位 置 付 けられた また 4 月 27 日 には 1997 年 以 来 18 年 ぶりに 新 たな 日 米 防 衛 協 力 のための 指 針 が 策 定 され 拡 大 抑 止 の 信 頼 性 を 強 化 して 日 米 同 盟 と 米 韓 同 盟 の 連 携 を 強 化 し 3 カ 国 が 2 つの 線 ではなく 面 として 核 ミサイルを 含 む 北 朝 鮮 の 脅 威 に 対 する 抑 止 力 を 強 化 していくことなどが 重 要 な 政 策 課 題 となった さらに 9 月 19 日 に 国 会 で 成 立 した 平 和 安 全 法 案 は グレーゾーン を 含 む 日 本 の 安 全 保 障 の 強 化 と 国 際 社 会 の 平 和 と 安 全 のための 国 際 社 会 との 協 力 の 強 化 という 2 つの 目 的 の 達 成 に 寄 与 すると 考 えられ その ために 自 衛 隊 法 をはじめとする 10 本 の 法 律 が 改 正 され これまで 国 際 平 和 協 力 に 関 する 恒 久 法 ないし 一 般 法 と 呼 ばれてきたものに 相 当 する 国 際 平 和 支 援 法 が 新 たに 立 法 された これは 2014 年 7 月 1 日 になされた これまでの 憲 法 解 釈 と 論 理 的 な 整 合 性 を 保 つ 形 で 限 定 的 な 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 認 めた 閣 議 決 定 に 基 づいて 整 備 された 法 制 であり 日 本 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 が 一 層 厳 しさを 増 している 中 国 民 の 平 和 と 安 全 を 追 求 していくための 手 段 を これまでより 一 段 も 二 段 もアップグレード していくための 法 的 な 整 備 であると 評 価 される 序 章 担 当 : 兵 頭 慎 治 5

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