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別紙3

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

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Transcription:

配 偶 者 控 除 と 課 税 ベースの 侵 食 田 代 昌 孝 中 央 大 学 経 済 学 部 序 章 今 日 財 政 赤 字 を 多 く 抱 える 日 本 において 経 済 成 長 とそれに 伴 う 税 収 の 増 加 は 財 政 の 最 重 要 課 題 といえる 課 税 ベースを 所 得 から 消 費 に 求 める 改 革 案 は 頻 繁 に 議 論 されるところであるが 消 費 税 率 の 引 き 上 げがなかなか 難 しい 現 在 において 所 得 税 の 課 税 ベース 拡 大 は 比 較 的 容 易 に 行 わ れている 具 体 的 には 平 成 18 年 における 課 税 最 低 限 の 引 き 下 げがその 第 一 歩 であり 今 後 政 府 が 改 革 す べき 問 題 はやはり 所 得 控 除 ではないかと 思 える 所 得 控 除 は 租 税 優 遇 措 置 として 低 所 得 者 層 に 配 慮 した 租 税 政 策 と 考 えられてきたが 実 際 に 各 世 帯 のライルスタイルが 変 化 した 現 在 では む しろ 高 所 得 者 層 優 遇 の 措 置 となってしまっている したがって 本 来 の 機 能 を 失 った 所 得 控 除 は 早 い 段 階 での 整 理 縮 小 が 必 要 となろう なかでも 妻 の 家 事 消 費 に 対 する 優 遇 措 置 として 認 めら れた 配 偶 者 控 除 と 配 偶 者 特 別 控 除 には 問 題 が 多 い 具 体 的 に 配 偶 者 控 除 の 問 題 点 として 水 平 的 公 平 性 を 損 なう 垂 直 的 公 平 性 を 損 なう 配 偶 者 控 除 の 適 用 状 況 既 婚 女 性 の 労 働 供 給 を 阻 害 する 等 が 挙 げられる 1 が 本 論 文 では 配 偶 者 控 除 を 認 めることによる 課 税 ベースの 侵 食 を 論 ずる 日 本 の 経 済 政 策 として 成 長 促 進 税 制 の 構 築 は 必 要 であり 配 偶 者 控 除 と 課 税 ベースの 侵 食 に 関 する 研 究 はこれを 念 頭 において 議 論 されているよう に 思 われる 本 論 文 の 構 成 として 第 Ⅰ 章 では 平 成 元 年 度 以 降 の 配 偶 者 控 除 制 度 の 歴 史 的 推 移 を 述 べる 平 成 元 年 度 以 降 に 注 目 した 理 由 は 平 成 元 年 度 は 消 費 税 の 導 入 された 年 でもあり これと 並 行 する ような 形 で 所 得 税 の 減 税 が 行 われたが その 減 税 が 主 に 様 々な 控 除 金 額 を 拡 大 する 方 向 で 進 めら れたからである 2 第 Ⅱ 章 では 配 偶 者 控 除 を 中 心 とした 所 得 控 除 に 関 する 先 行 研 究 を 概 観 する 第 Ⅲ 章 では 本 分 析 で 行 う 実 証 モデルを 説 明 する 第 Ⅳ 章 では 分 析 で 利 用 したデータの 説 明 を 行 う 第 Ⅴ 章 では 実 証 分 析 の 結 果 について 述 べる 終 章 では 全 体 のまとめと 政 策 的 提 言 をした 後 に 今 後 の 研 究 課 題 を 述 べる 1 飛 田 [2002] 16-20 頁 2 森 信 [2002] 73 頁 - 213 -

実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第 五 集 第 Ⅰ 章 配 偶 者 控 除 制 度 の 歴 史 的 推 移 少 子 高 齢 化 社 会 あるいは 現 在 わが 国 が 抱 える 財 政 赤 字 から 政 府 に 対 して 何 らかの 税 収 増 が 求 められている 所 得 税 を 通 じて 財 源 徴 収 を 政 府 が 行 う 場 合 その 税 収 は 課 税 ベースに 税 率 を 掛 けたもので 求 められる したがって 税 収 中 立 もしくは 税 収 の 増 加 を 前 提 とした 場 合 課 税 ベー スの 侵 食 が 行 われるとその 分 を 相 殺 するだけの 税 率 の 引 き 上 げが 必 要 となる 表 1 平 成 元 年 度 以 降 の 所 得 税 率 の 推 移 元 年 度 7 年 度 11 年 度 19 年 度 % 万 円 % 万 円 % 万 円 % 万 円 10(~ 300) 10(~ 330) 10(~ 330) 5(~ 195) 20(~ 600) 20(~ 900) 20(~ 900) 10(~ 330) 税 率 30(~1,000) 30(~1,800) 30(~1,800) 20(~ 695) 40(~2,000) 40(~3,000) 37(1,800~) 23(~ 900) 50(2,000~) 50(3,000~) 33(~1,800) 40(1,800~) 出 所 : 財 務 省 ホームページ 平 成 元 年 度 以 降 における 日 本 の 所 得 税 制 の 推 移 について 述 べてみると 平 成 元 年 度 には 基 礎 控 除 配 偶 者 控 除 扶 養 控 除 の 金 額 がそれぞれ 33 万 円 から 35 万 円 へと 増 加 しており 控 除 の 拡 大 が 見 られるが なかでも 配 偶 者 特 別 控 除 は 16.5 万 円 から 35 万 円 へと2 倍 以 上 も 増 えている 所 得 税 の 税 率 に 関 しては 最 高 税 率 が 60%から 50%へと 引 き 下 げられた それ 以 降 各 種 控 除 金 額 は 一 定 のままであったが 平 成 7 年 度 になると 基 礎 控 除 と 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 扶 養 控 除 等 の 見 直 しが 行 われ 35 万 円 から 38 万 円 と 増 加 している また 所 得 税 率 についても 表 1からこれまで 10%の 適 用 税 率 が 300 万 円 までから 330 万 円 まで 20%の 適 用 税 率 が 600 万 円 までから 900 万 円 まで 30%の 適 用 税 率 が 1,000 万 円 までから 1,800 万 円 ま で 40%の 適 用 税 率 が 2,000 万 円 までから 3,000 万 円 まで 50%が 2,000 万 円 超 から 3,000 万 円 超 までに 引 き 上 げられた このような 税 制 改 革 は 活 力 のある 福 祉 社 会 を 作 るために 中 堅 所 得 者 層 に 配 慮 して 行 われたものである 平 成 11 年 度 になると 景 気 対 策 の 一 環 として 最 高 税 率 の 引 き 下 げが 行 われた 近 年 では グロー バル 化 が 急 速 に 進 んだこと また 安 定 した 社 会 保 障 財 源 の 確 保 を 考 慮 して 平 成 19 年 度 にはかな りの 所 得 税 の 増 税 が 行 われた 3 このような 所 得 税 の 増 税 は 家 計 にどのような 負 担 をもたらすであ ろうか 3 川 上 [2008] 48-51 頁 - 214 -

出 所 : 表 1 と 同 じ 図 1 所 得 税 の 実 効 税 率 の 国 際 比 較 ( 夫 婦 子 2 人 の 給 与 所 得 者 ) 実 際 日 本 の 所 得 税 の 実 効 税 率 を 国 際 比 較 した 場 合 おおよそ 年 間 所 得 2,000 万 円 未 満 の 家 計 で 考 えれば 日 本 の 所 得 税 の 実 効 税 率 はアメリカ イギリス ドイツ フランスの 先 進 主 要 四 カ 国 に 比 べてかなり 低 いことが 図 1から 分 かる 特 に 日 本 の 場 合 年 間 所 得 1,000 万 円 未 満 の 世 帯 における 所 得 税 の 負 担 は5% 未 満 であり つまり 大 部 分 の 家 計 で 所 得 が 多 い 割 には 税 を 少 しし か 納 めていないことになる 4 日 本 において 大 部 分 の 家 計 で 所 得 が 多 い 割 に 税 を 負 担 しなくても 良 い 理 由 は 何 であろうか 表 1から 平 成 元 年 度 以 降 の 所 得 税 率 の 推 移 について 考 えてみると 平 成 元 年 から7 年 度 にかけて 変 化 しておらず 平 成 7 年 度 に 税 制 改 正 が 行 われたが 税 率 変 更 で 恩 恵 が 及 ぶ 所 得 階 層 の 範 囲 は 限 られているのが 分 かる 出 所 : 表 1 と 同 じ 図 2 所 得 税 の 課 税 最 低 限 の 推 移 ( 夫 婦 子 2 人 の 給 与 所 得 者 ) 4 森 信 [2002] 4-9 頁 - 215 -

実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第 五 集 その 一 方 で 課 税 ベースについて 考 えてみると これまで 課 税 最 低 限 すなわち 給 与 所 得 控 除 基 礎 控 除 配 偶 者 控 除 扶 養 控 除 特 定 扶 養 控 除 社 会 保 険 料 控 除 の 合 計 となる 控 除 額 を 政 府 は かなり 認 めてきたことが 図 2から 分 かる 具 体 的 には 基 礎 控 除 や 特 定 扶 養 控 除 社 会 保 険 料 控 除 の 拡 充 が 平 成 5 年 度 以 降 で 頻 繁 に 行 われている また 図 2には 示 していないが 平 成 7 年 度 においては 基 礎 控 除 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 扶 養 控 除 特 別 扶 養 控 除 老 人 扶 養 控 除 等 の 金 額 が 35 万 円 から 38 万 円 へと 増 えている し たがって 国 際 的 にみて 日 本 の 家 計 の 所 得 税 負 担 が 低 いのは 様 々な 控 除 の 存 在 により 課 税 ベー スが 侵 食 されているためであると 考 えられる 実 際 海 外 の 所 得 税 率 について 考 えれば 平 成 18 年 までアメリカの 最 低 税 率 は 日 本 と 同 じ 10% であり イギリスでは 最 低 税 率 と 最 高 税 率 が 日 本 と 全 く 同 じ 10%と 40%である 図 1を 見 ても 分 かるように イギリスは 国 際 的 にもかなり 低 い 所 得 水 準 から 税 を 負 担 しており アメリカでは 中 位 の 所 得 階 層 の 負 担 が 日 本 に 比 べて 重 い 日 本 で 低 中 所 得 階 層 に 属 する 家 計 の 所 得 税 負 担 が 軽 い のは やはり 所 得 税 率 によるものではなく 様 々な 租 税 優 遇 措 置 すなわち 控 除 の 拡 充 にあると 言 えよう 5 日 本 は 平 成 元 年 度 以 降 から 消 費 税 が 導 入 されており その 一 方 で 所 得 税 の 減 税 が 行 われてきた この 背 景 には 生 涯 を 通 じて 若 年 層 壮 年 層 老 年 層 との 間 でバランスのとれた 課 税 を 求 めた 税 調 の 考 えがある また 景 気 対 策 として 恒 久 的 な 所 得 税 減 税 の 必 要 性 から 控 除 の 拡 充 を 行 った 側 面 もある 問 題 は 日 本 の 所 得 税 改 革 の 特 徴 が 税 率 の 変 更 ではなく 様 々な 控 除 の 拡 充 に 重 点 を 置 いたとこ ろにある 一 般 的 に 所 得 税 の 改 革 を 行 う 場 合 課 税 ベースの 変 更 よりむしろ 税 率 の 変 更 を 中 心 として 行 った 方 が 効 率 性 は 保 たれると 考 えられる なぜなら あくまで 税 率 変 更 が 労 働 供 給 に 影 響 を 及 ぼすモデルを 前 提 にした 場 合 所 得 税 の 増 税 を 税 率 の 引 き 上 げで 行 うと 勤 労 意 欲 を 阻 害 するが 所 得 税 率 を 誰 しもが 一 定 として 課 税 ベース の 拡 大 すなわち 控 除 の 整 理 や 縮 小 を 中 心 とした 政 策 はそれほど 勤 労 意 欲 を 阻 害 する 効 果 はない からである このことから 考 えても 日 本 の 景 気 対 策 としての 所 得 税 減 税 を 控 除 の 拡 大 中 心 で 行 われたことには 問 題 がある 6 では 控 除 を 拡 大 させる 政 府 の 理 由 は 何 であろうか 課 税 最 低 限 に 含 まれる 控 除 について 考 え てみると 給 与 所 得 控 除 は 業 種 間 の 所 得 捕 捉 率 の 格 差 があることを 考 慮 したものである 基 礎 控 除 は 個 人 が 生 活 する 最 低 限 の 消 費 を 考 慮 したものであり 扶 養 控 除 は 子 供 の 養 育 を 社 会 保 険 料 控 除 は 老 後 の 生 活 を 配 慮 したものとなっている 問 題 は 配 偶 者 控 除 であるが これは 妻 の 内 助 の 功 すなわち 主 婦 の 家 事 労 働 について 何 らかの 評 価 を 与 えようというものである これが 過 大 評 価 され 平 成 6 年 度 までは 妻 が 働 いていないと いうだけで その 家 計 は 配 偶 者 控 除 と 配 偶 者 特 別 控 除 を 合 わせて 70 万 円 の 控 除 が 認 められており 平 成 7 年 度 以 降 にはこの 控 除 額 が 76 万 円 と 増 えている 5 蜂 屋 [2003] 105-115 頁 ; 森 信 [2002] 3-73 頁 6 森 信 [2002] 73 頁 - 216 -

ところが 景 気 低 迷 から 所 得 が 少 なく 結 婚 できない 単 身 者 世 帯 が 増 えてきたことにより 配 偶 者 控 除 や 配 偶 者 特 別 控 除 を 受 けるのが 裕 福 な 家 計 であるという 批 判 が 多 くなる 7 と 平 成 16 年 度 には 配 偶 者 特 別 控 除 が 廃 止 となった その 結 果 図 2の 課 税 最 低 限 が 325 万 円 へと 大 きく 引 き 下 げられている 実 際 このような 配 偶 者 控 除 や 配 偶 者 特 別 控 除 を 受 けている 世 帯 はどのような 所 得 の 世 帯 であ ろうか 比 較 的 所 得 の 低 い 世 帯 でこれらの 控 除 を 受 けていないとすれば それは 高 所 得 者 層 優 遇 であり 垂 直 的 公 平 の 観 点 からも 問 題 があるといえよう 平 成 6 年 度 と8 年 度 の 家 計 における 金 融 選 択 に 関 する 調 査 では 配 偶 者 の 就 業 状 況 について 現 在 働 いて 収 入 を 得 ていらっしゃいますか という 質 問 をしている この 質 問 に 対 して 働 いていない と 回 答 した 世 帯 を 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 とここでは 定 義 した 図 3は 配 偶 者 控 除 あ りの 世 帯 となしの 世 帯 の 数 を 所 得 階 層 別 にまとめたものである 出 所 : 郵 政 研 究 所 家 計 における 金 融 資 産 選 択 に 関 する 調 査 ( 平 成 6 年 度 ) の 個 票 データより 作 成 図 3 平 成 6 年 度 配 偶 者 控 除 のある 世 帯 とない 世 帯 の 数 図 3を 見 ると 所 得 900 万 円 以 下 1,500 万 円 以 下 2,000 万 円 以 下 の 世 帯 で 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 がなしの 世 帯 を 上 回 っているのがわかる すなわち 高 所 得 者 層 では 配 偶 者 控 除 を 受 けてい る 世 帯 が 多 い したがって 配 偶 者 控 除 は 課 税 ベースを 侵 食 するだけでなく 高 所 得 者 層 優 遇 であ ると 考 えられる さらに 所 得 300 万 円 以 下 と 400 万 円 以 下 では 配 偶 者 控 除 なしの 世 帯 が 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 を 非 常 に 多 く 上 回 っていた 平 成 元 年 度 税 制 改 正 は 消 費 税 導 入 と 所 得 税 減 税 とりわけ 所 得 控 除 7 たとえば 飛 田 [2003] 124-130 頁 - 217 -

実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第 五 集 の 拡 大 というタックスミックス 型 で 行 われた 訳 であるが その 中 身 は 消 費 税 負 担 の 逆 進 性 という 形 だけではなくて 低 中 所 得 者 層 が 所 得 控 除 の 恩 恵 を 受 けられないという 形 でここに 負 担 を 求 め るものとなっている 平 成 6 年 度 と 同 じような 作 業 を 平 成 8 年 度 においても 行 った 前 章 でも 述 べたが 平 成 7 年 度 に 大 幅 な 所 得 税 減 税 の 景 気 対 策 が 行 われている この 税 制 改 革 の 影 響 は 平 成 8 年 度 の 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 となし 世 帯 の 数 にどのような 影 響 を 及 ぼしているであろうか 出 所 : 郵 政 研 究 所 家 計 における 金 融 資 産 選 択 に 関 する 調 査 ( 平 成 8 年 度 ) の 個 票 データより 作 成 図 4 平 成 8 年 度 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 となし 世 帯 の 数 図 4を 見 ると 所 得 1,500 万 円 以 下 で 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 がなしの 世 帯 を 上 回 っているだけ で それ 以 外 の 所 得 階 層 では 配 偶 者 控 除 なしの 世 帯 がありの 世 帯 を 上 回 っている 特 に 所 得 300 万 円 以 下 の 世 帯 では 配 偶 者 控 除 なしの 世 帯 がありの 世 帯 を 大 きく 上 回 っている つまり 低 所 得 階 層 を 中 心 として 女 性 の 社 会 進 出 が 進 んでいることが 伺 える これは 世 帯 主 で ある 夫 の 低 所 得 を 妻 が 補 うような 形 で 働 いているものと 考 えられる このように 配 偶 者 控 除 を 受 けている 世 帯 は 主 に 高 所 得 者 層 に 多 く 垂 直 的 公 平 を 考 えれば 配 偶 者 控 除 には 問 題 が 多 い 8 では 課 税 ベースの 侵 食 という 点 では 配 偶 者 控 除 はどのように 評 価 されるであろうか 次 の 章 では 租 税 優 遇 措 置 として 主 に 所 得 控 除 に 注 目 しながら それにより 課 税 ベースの 侵 食 に 関 する 研 究 がどのように 行 われてきたかを 概 観 する その 上 で 本 論 文 で 配 偶 者 控 除 に 着 目 する 理 由 を 述 べる 8 森 信 [2002] 38 頁 ; 蜂 屋 [2003] 128-134 頁 - 218 -

第 Ⅱ 章 先 行 研 究 所 得 控 除 の 問 題 として 頻 繁 に 議 論 されるのは 配 偶 者 控 除 扶 養 控 除 社 会 保 険 料 控 除 等 であ る これらの 租 税 優 遇 措 置 は 高 所 得 者 層 優 遇 という 点 で 共 通 しており 今 後 は 整 理 縮 小 の 方 向 に 向 かうであろう アメリカでも Pechman [1977] や Simons [1938] は 伝 統 的 な 所 得 税 を 研 究 して いる 経 済 学 者 であるが 彼 等 も 控 除 が 多 数 存 在 することで 高 所 得 者 層 はかなり 恩 恵 を 受 けている が 低 所 得 者 層 では 恩 恵 を 全 く 受 けていないことから 課 税 ベースの 拡 大 をすべきとの 見 解 を 示 し ている 9 日 本 の 場 合 課 税 ベースの 侵 食 額 を 推 計 する 作 業 は 所 得 税 負 担 の 水 平 的 公 平 すなわちクロヨ ン 問 題 を 議 論 するときに 行 われている 石 [1981] 林 [1996b] 大 田 坪 内 辻 [2003] 等 は 集 計 データを 利 用 して 業 種 間 の 所 得 捕 捉 率 の 格 差 を 分 析 している それに 対 して 個 票 データを 利 用 して 集 計 データによるバイアスを 取 り 除 いた 水 平 的 公 平 に 関 する 研 究 としては 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984] の 分 析 がある 10 本 分 析 でも 個 票 データを 利 用 しており 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984] のモデルと 分 析 手 法 を 引 用 している ただ 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984] の 研 究 では 業 種 間 における 税 負 担 の 違 い を 議 論 しているのに 対 して ここでは 所 得 控 除 による 税 負 担 の 違 いに 注 目 している とりわけ 所 得 控 除 の1つとして 考 えられる 配 偶 者 控 除 に 注 目 した これまで 妻 の 家 事 労 働 に 認 められる 配 偶 者 控 除 と 配 偶 者 特 別 控 除 は 批 判 されることが 非 常 に 多 かった 林 [1996a] は 片 稼 ぎの 給 与 所 得 者 の 場 合 本 人 の 基 礎 控 除 以 上 に 配 偶 者 に 対 して 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 があるのを 問 題 としながら 配 偶 者 控 除 と 配 偶 者 特 別 控 除 を 全 体 で 消 失 控 除 にすれば 個 人 単 位 の 課 税 を 維 持 しつつ 世 帯 構 成 に 配 慮 した 税 体 系 を 構 築 できると 述 べている 11 大 田 [1997] は 包 括 的 所 得 課 税 に 基 づいた 上 で 専 業 主 婦 の 帰 属 所 得 を 課 税 対 象 にするためにも 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 は 廃 止 すべきであると 述 べている また 改 革 の 具 体 案 として 共 働 き 世 帯 に 対 して 家 事 サービス 等 の 経 費 控 除 を 認 めるような 政 策 を 大 田 [1997] は 提 案 している 12 配 偶 者 控 除 に 対 する 批 判 は 他 にも 女 性 の 労 働 供 給 に 対 する 阻 害 がある 飛 田 [2002] は 就 業 関 数 の 推 定 結 果 から 配 偶 者 控 除 は 女 性 の 労 働 供 給 を 阻 害 しているという 見 解 を 示 している その 上 で 配 偶 者 控 除 や 配 偶 者 特 別 控 除 の 廃 止 による 税 収 増 は 全 額 を 少 子 化 子 育 て 支 援 ( 保 育 所 の 整 備 低 年 齢 児 0~2 歳 保 育 の 無 料 化 児 童 手 当 の 拡 充 )に 充 てるべきという 政 策 案 を 飛 田 [2002] は 提 案 している 13 実 際 配 偶 者 控 除 と 配 偶 者 特 別 控 除 が 廃 止 された 場 合 所 得 税 増 税 額 はどのくらいになるのか を 吉 井 古 頭 [2005] は 試 算 しており 夫 婦 世 帯 と 独 身 世 帯 の 税 額 が 等 しくなるものの 増 税 額 は 9 Pechman, J.A.[1977], pp.83-92.;simons, H.C.[1938], pp.114-115. 10 石 [1981] 74-81 頁 ; 林 [1996b] 95-102 頁 ; 大 田 坪 内 辻 [2003] 22-25 頁 ; 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984] 22-23 頁 11 林 [1996a] 171-177 頁 12 大 田 [1997] 11-13 頁 13 飛 田 [2002] 16-33 頁 このような 配 偶 者 控 除 が 存 在 する 根 拠 としては 担 税 力 自 営 業 とのバランス 内 助 の 功 が 考 えられる 詳 細 は 飛 田 [2002] 14-16 頁 - 219 -

実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第 五 集 夫 婦 世 帯 の 方 が 大 きくなっているという 見 解 を 示 している 14 このように 配 偶 者 控 除 を 批 判 する 先 行 研 究 は 多 いが これを 認 めることによる 課 税 ベースの 侵 食 について 述 べたものは 少 ない 配 偶 者 控 除 は 所 得 控 除 の1つとして 存 在 するが これまで 所 得 控 除 と 課 税 ベースの 侵 食 に 関 する 分 析 は 田 近 古 谷 [2000] 森 信 前 川 [2001] 森 信 [2002] 望 月 野 村 深 江 [2004] 吉 井 古 頭 [2005] 等 を 中 心 に 行 われてきた 森 信 前 川 [2001] は 国 民 所 得 統 計 や 税 務 統 計 を 使 って 時 系 列 で 課 税 ベースを 推 計 した 結 果 課 税 最 低 限 の 中 でも 給 与 所 得 控 除 による 侵 食 は 1994 年 以 降 徐 々に 増 加 していることの 見 解 を 示 している これは 日 本 の 課 税 最 低 限 が 高 いことの 問 題 点 を 指 摘 しているものであり 他 の 先 行 研 究 の 見 解 と 大 きな 違 いはない ただ この 研 究 で 興 味 深 いのは 女 性 の 社 会 進 出 あるいは 少 子 化 問 題 から 配 偶 者 控 除 や 配 偶 者 特 別 控 除 あるいは 扶 養 控 除 を 受 けている 世 帯 が 時 系 列 で 減 っている 点 に 注 目 していことであ る そのため 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 及 び 扶 養 控 除 による 課 税 ベースの 侵 食 は 時 系 列 で 徐 々に 減 ってきていると 森 信 前 川 [2001] は 結 論 づけている 15 平 成 7 年 度 の 税 制 改 正 で 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 扶 養 控 除 の 金 額 はそれぞれ 35 万 円 から 38 万 円 に 増 加 しているにもかかわらず これらの 控 除 による 侵 食 が 社 会 環 境 の 変 化 で 減 少 したと いう 森 信 前 川 [2001] の 見 解 は 非 常 に 斬 新 である 今 後 の 少 子 問 題 の 対 策 と 配 偶 者 控 除 の 存 在 意 義 について 新 ためて 考 え 直 すきっかけとなる 研 究 成 果 であったと 思 う 16 田 近 古 谷 [2000] でも 国 税 庁 の 税 務 統 計 から 見 た 民 間 給 与 の 実 態 (1997 年 度 ) を 利 用 して 控 除 の 実 態 を 推 計 している この 研 究 でも 森 前 川 [2001] と 同 じように 給 与 所 得 控 除 と 社 会 保 険 料 控 除 の 規 模 の 大 きいこと 高 所 得 者 層 優 遇 で 扶 養 控 除 が 認 められていること 等 を 指 摘 している 森 信 前 川 [2001] では 社 会 保 険 料 控 除 の 規 模 の 大 きさを 具 体 的 に 推 計 していなかったが 田 近 古 谷 [2000] の 研 究 では 社 会 保 険 料 控 除 率 も 推 計 している その 結 果 社 会 保 険 料 控 除 の 規 模 の 大 きさを 特 に 問 題 視 しており 税 と 社 会 保 障 を 一 体 にするためにも 社 会 保 険 料 控 除 の 課 税 の 侵 食 を 認 めるべきではないと 田 近 古 谷 [2000] は 述 べている 17 国 際 比 較 の 研 究 に 関 して 森 信 [2002] では 日 本 のデータとして 1997 年 度 の 国 民 経 済 計 算 年 報 国 税 庁 統 計 年 報 書 税 務 統 計 からみた 申 告 所 得 税 の 実 態 税 務 統 計 からみた 民 間 給 与 の 実 態 等 を 利 用 し アメリカのデータは 1996 年 度 の National Income and Product Acocount of the United States,Statistics of Income の 統 計 資 料 を 利 用 して アメリカの 課 税 ベースは 53.2%である のに 対 して わが 国 のそれは 27.4%しかないという 分 析 結 果 を 出 している この 差 額 の 原 因 として 森 信 [2002] は 所 得 控 除 が 大 きいとしており 日 本 では 基 礎 控 除 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 扶 養 控 除 合 計 で 12.7%の 侵 食 が 見 られるが アメリカでは 8.1%しか 侵 14 吉 井 古 頭 [2005] 133-141 頁 15 森 信 前 川 [2001] 110-122 頁 16 ちなみに 森 信 前 川 [2001]の 分 析 では 1980 年 以 降 社 会 保 障 の 拠 出 と 給 付 が 毎 年 増 加 していることか ら 社 会 保 険 料 控 除 の 見 直 しも 必 要 であると 主 張 している 詳 細 は 森 信 前 川 [2001] 119-120 頁 にある 17 田 近 古 谷 [2000] 136-142 頁 - 220 -

食 されていないという 見 解 を 示 している 18 蜂 屋 [2003] は 控 除 の 中 で 最 も 減 収 規 模 が 大 きいのは 給 与 所 得 控 除 で 8.8 兆 円 次 いで 社 会 保 険 料 控 除 の 5.0 兆 円 扶 養 控 除 の 2.7 兆 円 という 試 算 をしている ここでは 配 偶 者 控 除 による 減 収 は 1.2 兆 円 でそれほど 大 きくはない 19 さらに 言 えば 望 月 野 村 深 江 [2004a][2004b] では 従 来 では 難 しいと 考 えられていたキャピ タルゲイン ロスを 含 めて 課 税 ベースをマクロ 推 計 している また 所 得 控 除 についてもこの 研 究 では 工 夫 が 加 えられていて 所 得 控 除 を 経 費 的 な 部 分 と 人 的 な 部 分 とに 分 けて 推 計 が 行 われて いる 20 このように 所 得 控 除 と 課 税 ベースの 侵 食 に 関 する 研 究 は 盛 んに 行 われているが 問 題 はこれら の 分 析 が 集 計 データに 基 づいて 侵 食 額 を 推 計 している 点 であり 個 票 データに 基 づいたものより 幾 分 バイアスがあるものとなっている それ 以 外 にも 個 票 データを 利 用 することの 利 点 として 1. 租 税 関 数 の 推 定 が 行 えること 2. 世 帯 全 体 で 分 布 関 数 を 作 成 し それに 基 づいて 負 担 比 率 を 計 測 できるということが 考 えられる 本 分 析 では 各 世 帯 の 給 与 所 得 から 様 々な 所 得 控 除 を 差 し 引 き 課 税 所 得 を 求 め 税 額 を 計 算 する 作 業 を 行 っている このような 各 世 帯 の 税 額 を 推 計 する 作 業 は 橋 本 [1994] で 行 っている 橋 本 [1994] は 国 税 庁 統 計 年 報 書 のデータを 利 用 して 給 与 収 入 から 給 与 所 得 控 除 を 差 し 引 いて 給 与 所 得 金 額 を 算 出 し 基 礎 控 除 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 扶 養 控 除 の 人 的 控 除 と 社 会 保 険 料 控 除 の 合 計 額 の 所 得 控 除 を 差 し 引 いて 課 税 所 得 を 求 めて 税 率 表 を 適 用 している その 結 果 所 得 税 と 住 民 税 の 税 率 構 造 は 夫 婦 子 供 2 人 の 標 準 世 帯 の 場 合 給 与 収 入 が 増 えるに つれて 税 負 担 額 が 増 加 するような 曲 線 が 描 けるが 配 偶 者 特 別 控 除 の 存 在 により 給 与 収 入 1200 万 円 の 世 帯 で 税 負 担 額 がジャンプすることを 橋 本 [1994] は 分 析 から 明 らかにしている また 橋 本 [1994]の 研 究 では 1993 年 の 税 制 改 正 による 税 率 構 造 の 変 化 を 推 計 したことで 中 堅 所 得 階 層 の 税 負 担 が 軽 減 された 点 も 示 した 21 ただ 橋 本 [1994] の 研 究 では 租 税 関 数 の 推 定 を 行 っていないことから 控 除 の 存 在 で 定 量 的 にど の 程 度 中 堅 所 得 階 層 の 税 負 担 が 緩 和 されているのかを 確 かめることが 出 来 ない 実 際 租 税 関 数 を 推 定 するためには 各 世 帯 の 個 票 データが 必 要 であり それに 基 づき 各 世 帯 の 税 負 担 額 を 推 計 し なければならない 18 森 信 [2002] 25-72 頁 19 蜂 屋 [2003] 98-99 頁 20 望 月 野 村 深 江 [2004a] 23-25 頁 ; 望 月 野 村 深 江 [2004a] 198-211 頁 21 橋 本 [1994] 113-116 頁 - 221 -

実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第 五 集 第 Ⅲ 章 実 証 モデル 本 論 文 では 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984] のモデルを 参 考 にして 配 偶 者 控 除 による 課 税 ベー スの 侵 食 を 分 析 する 22 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984] のモデルでは 業 種 間 の 捕 捉 率 の 格 差 につ いて 議 論 していたが ここでは 配 偶 者 控 除 のあり 世 帯 となしの 世 帯 とで 区 別 して 課 税 ベースの 侵 食 を 議 論 する 配 偶 者 控 除 を 受 けた 世 帯 全 体 の 所 得 階 層 分 布 を(1) 式 のような 密 度 関 数 で 定 義 し よう Y i = y F( ) (1) ( : 配 偶 者 控 除 を 受 けている 世 帯 y: 所 得 F( ): 密 度 関 数 ) さらに 配 偶 者 控 除 が 認 められるとき 各 世 帯 の 所 得 水 準 で 負 担 する 税 額 は(2) 式 のような 租 税 関 数 で 表 わされる i T = T ( y i ) (2) (T : 配 偶 者 控 除 が 設 けた 後 の 税 額 ) 配 偶 者 控 除 を 受 けた 世 帯 全 体 の 租 税 負 担 額 は(3) 式 となる B = i T ( y ) F( ) (3) 各 世 帯 が 配 偶 者 控 除 を 全 く 認 められないとした 場 合 各 世 帯 が 本 来 支 払 う 税 額 は(4) 式 で 与 えら れる B * = Ⅰ T ( y i ) F( ) (4) (T I : 配 偶 者 控 除 を 設 ける 前 の 税 額 ) 配 偶 者 控 除 を 設 ける 前 と 設 けた 後 の 税 負 担 額 の 比 率 は(5) 式 となる 以 降 (5) 式 を 負 担 比 率 と 呼 ぶ L B = B * = T ( y T ( y Ⅰ i i ) F( ) ) F( ) (5) この 負 担 比 率 が1に 近 づけば 近 づくほど 配 偶 者 控 除 による 課 税 ベースの 侵 食 が 少 なくなるこ とを 意 味 する 22 以 降 (1)から(5) 式 は 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984]のものを 引 用 している もっとも 考 えている の 世 帯 は 配 偶 者 控 除 のある なしで 区 別 している - 222 -

第 Ⅳ 章 データの 説 明 データは 郵 政 研 究 所 の 家 計 における 金 融 資 産 選 択 に 関 する 調 査 ( 平 成 6 8 年 度 ) のミクロ データを 利 用 する この 調 査 は 全 国 の 世 帯 主 が 20 歳 以 上 の 世 帯 ( 単 身 者 世 帯 を 含 む) 標 本 数 は 6,000 世 帯 標 本 抽 出 法 は 層 化 多 段 無 作 為 抽 出 法 で 行 われている 調 査 期 間 は 平 成 6 年 度 が 平 成 6 年 11 月 21 日 から 28 日 であり 3,924 サンプル( 回 収 率 65.4%) 平 成 8 年 度 は 平 成 8 年 11 月 22 日 から 12 月 6 日 3,695 サンプル( 回 収 率 61.6%)となっている したがって 各 世 帯 が 報 告 している 所 得 の 金 額 はそれぞれ 前 年 度 の 税 制 に 影 響 を 受 けているものと 思 われる 本 分 析 では 平 成 6 年 度 と8 年 度 で 配 偶 者 控 除 を 受 けている 世 帯 それぞれ 1,203 世 帯 と 766 世 帯 を 分 析 対 象 としている ここでは 分 析 対 象 となる 世 帯 すべての 課 税 所 得 を 計 算 し 税 率 を 適 用 する 作 業 を 行 った 配 偶 者 控 除 のある なしの 区 別 は 前 章 でも 述 べたように 妻 の 就 業 に 関 して の 質 問 で 働 いていない と 回 答 した 世 帯 を 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 と 定 義 している 各 世 帯 の 所 得 に 対 する 質 問 内 容 は 以 下 のようなものである お 宅 ( 同 居 して 生 計 をともにして いる 方 すべてを 含 みます )の 収 入 についてお 伺 いします この1 年 間 のお 宅 の 税 込 み 収 入 はいく らでしたか 回 答 者 は 種 類 別 ( 給 与 収 入 事 業 収 益 家 賃 利 子 配 当 等 の 資 産 から 得 られる 収 入 公 的 年 金 受 給 額 その 他 ) 稼 得 者 別 ( 世 帯 主 配 偶 者 世 帯 主 配 偶 者 の 両 親 世 帯 主 配 偶 者 の 子 供 やその 家 族 等 )に 収 入 金 額 を 答 えるようになっている 23 平 成 6 年 度 の 分 析 で 利 用 し たデータの 記 述 統 計 量 は 表 2に 示 してある 表 2 平 成 6 年 度 サンプル 全 体 の 記 述 統 計 量 最 小 値 最 大 値 平 均 値 標 準 偏 差 変 動 係 数 世 帯 主 の 所 得 10 4,600 625.12 373.18 0.597 配 偶 者 控 除 前 の 税 総 額 0 1,893 106.02 125.81 1.187 配 偶 者 控 除 後 の 税 総 額 0 1,875 98.04 123.62 1.261 サンプル 数 は 1,203 である 出 所 : 郵 政 研 究 所 家 計 における 金 融 資 産 選 択 に 関 する 調 査 ( 平 成 6 年 度 ) の 個 票 データより 推 定 配 偶 者 控 除 が 認 められることで 税 額 の 最 大 と 最 小 の 差 は 小 さくなっているが 平 均 値 も 小 さ くなることで 変 動 係 数 の 大 きさは 配 偶 者 控 除 前 より 大 きくなっている これは 図 3でも 示 したよ うに 高 所 得 者 層 で 広 く 配 偶 者 控 除 の 恩 恵 を 受 けていることから 高 所 得 者 層 で 支 払 う 税 額 が 少 な くなり その 分 だけ 平 均 値 が 小 さくなったことが 原 因 ではないかと 思 われる 平 成 7 年 度 の 税 制 改 正 では 配 偶 者 控 除 の 金 額 が 35 万 円 から 38 万 円 へと 増 えたが この 影 響 は 23 実 際 回 答 者 は 所 得 ではなく 収 入 を 答 えている 可 能 性 が 高 い したがって 後 の 分 析 で 租 税 関 数 により 税 負 担 率 を 推 定 しているが この 数 値 が 先 行 研 究 のものより 高 くなっている 今 後 はサラリーマン 世 帯 に 対 しては 給 与 所 得 控 除 等 も 考 えて 計 算 を 行 わなければならない これについては 今 後 の 研 究 課 題 とするが もっとも 事 業 者 世 帯 と 農 業 者 世 帯 に 関 しては 回 答 した 数 値 の 大 きさから 考 えて 売 上 ではなく 所 得 を 答 え ているものと 推 測 される - 223 -

実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第 五 集 税 額 の 格 差 にどのような 影 響 を 及 ぼすであろうか 表 3には 平 成 8 年 度 の 分 析 に 利 用 した 記 述 統 計 量 がまとめてある 表 3 平 成 8 年 度 サンプル 全 体 の 記 述 統 計 量 最 小 値 最 大 値 平 均 値 標 準 偏 差 変 動 係 数 世 帯 主 の 所 得 23 5,490 618.49 416.41 0.673 配 偶 者 控 除 前 の 税 総 額 0 2,123 92.55 129.69 1.401 配 偶 者 控 除 後 の 税 総 額 0 2,104 85.51 127.93 1.496 サンプル 数 は 766 である 出 所 : 郵 政 研 究 所 家 計 における 金 融 資 産 選 択 に 関 する 調 査 ( 平 成 8 年 度 ) の 個 票 データより 推 定 表 3から 配 偶 者 控 除 の 控 除 前 と 後 に 関 係 なく 平 成 6 年 度 に 比 べて 平 成 8 年 度 では 税 額 の 変 動 係 数 は 大 きくなっており 平 成 7 年 度 の 税 制 改 正 の 影 響 を 受 けているものと 思 われる ただ 税 額 の 変 動 係 数 が 大 きくなったと 言 ってもそれは 税 額 の 格 差 を 論 じているにすぎない そのため 平 成 8 年 度 において 配 偶 者 控 除 による 課 税 ベースの 侵 食 が 進 んだということについては ここだ けの 分 析 からではいえない なぜなら 配 偶 者 控 除 による 課 税 ベースの 侵 食 は 前 章 で 説 明 したモデルからも 分 かるように 配 偶 者 控 除 を 受 けている 世 帯 の 負 担 比 率 を 計 測 しなければならないからである また 税 負 担 の 変 化 が 数 値 的 に 把 握 できなければ 配 偶 者 控 除 により 税 負 担 がいかに 変 化 したかを 具 体 的 に 把 握 することは 出 来 ない 租 税 関 数 を 推 定 する 作 業 や 負 担 比 率 を 計 測 する 作 業 はいずれも 個 票 データ を 利 用 する 必 要 性 がある 次 の 章 では 実 証 分 析 の 結 果 を 踏 まえながら 平 成 7 年 度 の 税 制 改 正 で 配 偶 者 控 除 が 増 えたことによる 影 響 とそれに 伴 って 課 税 ベースの 侵 食 がいかに 変 化 したかを 論 じる 第 Ⅴ 章 実 証 分 析 の 結 果 平 成 6 年 度 の 個 票 データを 利 用 して 租 税 関 数 を 推 定 した 結 果 は 以 下 のようなものである 平 成 6 年 度 配 偶 者 控 除 前 所 得 税 額 =-97.59+0.326 世 帯 主 の 所 得 [-53.39] [129.73] RR=0.933 相 関 係 数 は 0.966 サンプル 数 は1,203 ここで 配 偶 者 控 除 前 所 得 税 額 とは 前 章 で 説 明 した 各 世 帯 の 所 得 から 基 礎 控 除 のみを 差 し 引 き 税 率 を 適 用 している さらに 配 偶 者 控 除 後 所 得 税 額 は 各 世 帯 の 所 得 から 基 礎 控 除 と 配 偶 者 控 除 を 差 し 引 き 税 率 を 適 用 している - 224 -

平 成 元 年 度 から6 年 度 まで 基 礎 控 除 と 配 偶 者 控 除 はいずれも 35 万 円 であった この 場 合 配 偶 者 控 除 前 の 税 負 担 は 0.326 となっている 配 偶 者 控 除 後 所 得 税 総 額 =-101.24+0.319 世 帯 主 の 所 得 [-53.52] [122.67] RR=0.926 相 関 係 数 は 0.962 サンプル 数 は 1,203 各 世 帯 に 配 偶 者 控 除 が 認 められると 税 負 担 は 0.326 から 0.319 となっている 図 3でも 示 し たが 配 偶 者 控 除 は 高 所 得 者 層 を 中 心 に 認 められていた したがって 配 偶 者 控 除 による 税 負 担 の 0.326から 0.319への 低 下 は 主 に 高 所 得 者 層 を 中 心 に 恩 恵 を 受 けているものと 思 われる 次 に 平 成 8 年 度 の 実 証 分 析 の 結 果 を 見 ていこう 平 成 8 年 度 配 偶 者 控 除 前 所 得 税 総 額 =-90.72+0.296 世 帯 主 の 所 得 [-35.08] [85.41] RR=0.906 相 関 係 数 は 0.951 サンプル 数 は766 平 成 7 年 度 の 税 制 改 正 で 基 礎 控 除 と 配 偶 者 控 除 の 金 額 が 35 万 円 から 38 万 円 へと 増 えた これにより 平 成 6 年 度 の 推 定 結 果 と 比 べても 平 成 8 年 度 では 配 偶 者 控 除 前 の 税 負 担 が 0.296 と 軽 くなっている 配 偶 者 控 除 後 所 得 税 総 額 =-94.56+0.291 世 帯 主 の 所 得 [-35.77] [82.10] RR=0.898 相 関 係 数 は 0.948 サンプル 数 は766 問 題 は 平 成 6 年 度 に 比 べて 配 偶 者 控 除 を 受 ける 前 と 後 での 税 負 担 の 軽 減 効 果 が 平 成 8 年 度 で 弱 くなっていることである 平 成 6 年 度 では 配 偶 者 控 除 により 税 負 担 の 軽 減 効 果 が 0.326 から 0.319 であったが 平 成 8 年 度 ではこれが 0.296 から 0.291 のみにとどまった 図 4で 示 したように 平 成 8 年 度 において 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 がなしの 世 帯 を 上 回 っていた のは 所 得 階 層 1,500 万 円 以 下 のみ 世 帯 であった したがって 平 成 8 年 度 では 高 所 得 者 層 にお いて 配 偶 者 控 除 の 恩 恵 を 受 けた 世 帯 が 少 なかったことが 配 偶 者 控 除 による 税 負 担 の 軽 減 効 果 が 弱 まった 原 因 と 考 えられる 租 税 関 数 を 推 定 する 作 業 から 分 かることは 平 成 7 年 度 において 配 偶 者 控 除 の 金 額 が 増 えたが これの 恩 恵 を 受 けた 世 帯 が 高 所 得 者 層 で 減 ったので 配 偶 者 控 除 による 税 負 担 の 軽 減 効 果 は 平 成 6 年 度 より 平 成 8 年 度 の 方 が 弱 かったということである 次 に 配 偶 者 控 除 による 課 税 ベースの 侵 食 について 負 担 比 率 の 計 測 結 果 から 論 じよう - 225 -

実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第 五 集 出 所 : 図 3と 同 じ 図 5 平 成 6 年 度 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 となしの 世 帯 の 所 得 分 布 負 担 比 率 を 考 える 上 で 重 要 なのは 密 度 関 数 の 形 状 である 図 5には 平 成 6 年 度 の 配 偶 者 控 除 あ りの 世 帯 となしの 世 帯 の 所 得 分 布 をまとめてある 図 5から 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 の 所 得 分 布 が なしの 世 帯 の 所 得 分 布 より 右 に 偏 っているのが 分 かる 出 所 : 図 4と 同 じ 図 6 平 成 8 年 度 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 となしの 世 帯 の 所 得 分 布 - 226 -

同 じように 図 6には 平 成 8 年 度 の 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 となしの 世 帯 の 所 得 分 布 をまとめて ある ここでも 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 の 所 得 分 布 がなしの 世 帯 の 所 得 分 布 より 右 に 偏 っているが 所 得 500 万 円 以 下 の 世 帯 においては 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 の 所 得 分 布 がなしの 世 帯 の 所 得 分 布 よ り 上 にある このような 配 偶 者 控 除 ありの 世 帯 の 所 得 分 布 となしの 世 帯 の 所 得 分 布 を 考 慮 に 入 れながら 平 成 6 年 度 と8 年 度 で 負 担 比 率 の 比 較 を 行 う その 結 果 負 担 比 率 が 平 成 6 年 度 の 分 析 では 0.912 であり 平 成 7 年 度 の 税 制 改 正 が 行 われた 後 の 平 成 8 年 度 の 分 析 では 負 担 比 率 が 0.909 と 平 成 6 年 度 に 比 べて 値 が 小 さくなった このことから 個 票 データを 利 用 して 負 担 比 率 を 計 測 すると 平 成 7 年 度 の 税 制 改 正 により 課 税 ベースの 侵 食 は 進 んだものと 思 われる 森 信 前 川 [2001] の 研 究 では 集 計 データから 配 偶 者 控 除 のある 世 帯 が 減 っていることで 課 税 ベースの 侵 食 が 減 っているという 見 解 を 示 していた 24 本 分 析 では 配 偶 者 控 除 により 課 税 ベースの 侵 食 が 進 むという 結 果 が 得 られたが これは 森 信 前 川 [2001] の 研 究 において 課 税 ベースの 侵 食 が 配 偶 者 控 除 のある 世 帯 の 時 系 列 的 な 変 化 に 依 存 しているのに 対 して ここでは 配 偶 者 控 除 のある 世 帯 を 最 初 にコントロールしているので 異 なる 分 析 結 果 が 得 られたのではないかと 思 う 終 章 近 年 では 成 長 重 視 の 税 制 改 革 が 主 に 提 案 されている 具 体 的 には 所 得 税 の 総 合 課 税 から 分 離 課 税 とりわけ 日 本 型 の 二 元 的 所 得 税 導 入 等 が 注 目 されており それと 並 行 するような 形 で 消 費 税 率 の 引 き 上 げも 議 論 されている 重 要 なのは 少 子 高 齢 化 社 会 を 念 頭 に 入 れた 社 会 保 障 財 源 を 確 保 することであり そのためには 増 税 あるいは 少 なくても 税 収 中 立 が 求 められるであろう 二 元 的 所 得 税 の 導 入 は 経 済 成 長 に 好 影 響 と 税 収 の 増 加 をもたらすが その 一 方 で 重 課 な 勤 労 所 得 から 低 課 な 資 本 所 得 への 移 転 も 考 えられる そのため 税 収 減 の 効 果 を 出 来 るだけ 少 なくする ためには 経 済 成 長 だけでなく 所 得 控 除 の 整 理 や 縮 小 による 課 税 ベースの 拡 大 も 必 要 とされる 本 論 文 では 所 得 控 除 のなかでも 配 偶 者 控 除 に 注 目 して 課 税 ベースの 侵 食 を 分 析 した 配 偶 者 控 除 に 注 目 した 理 由 は この 控 除 が 水 平 的 公 平 のみならず 垂 直 的 公 平 からも 批 判 が 多 く なおか つ 女 性 の 労 働 供 給 の 阻 害 という 問 題 点 を 含 んでいながら 配 偶 者 控 除 と 課 税 ベースの 侵 食 の 関 係 についての 議 論 はあまり 行 われていなかったためである これまでの 課 税 ベースの 侵 食 に 関 する 研 究 は 水 平 的 公 平 の 議 論 に 重 点 を 置 いてきた ところが 最 近 では 水 平 的 公 平 ではなく 垂 直 的 公 平 に 着 目 しながら 所 得 控 除 と 課 税 ベースの 侵 食 がいかに 関 連 しているかの 研 究 も 行 われている これらの 研 究 は 主 に 集 計 データからマクロでの 課 税 ベースを 推 計 するものであり 個 票 データ 24 森 信 前 川 [2001] 110-122 頁 - 227 -

実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第 五 集 を 利 用 していない 課 税 ベースの 侵 食 に 関 する 研 究 で 個 票 データを 利 用 することの 利 点 として 1. 集 計 データのバイアスの 除 去 できる 2. 租 税 関 数 の 推 定 を 可 能 にする 3. 所 得 分 布 関 数 を 作 成 して 負 担 比 率 の 計 測 を 可 能 にすること 等 が 挙 げられる 本 分 析 では 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984] のモデルを 引 用 して 負 担 比 率 を 計 測 している し たがって 本 間 井 堀 跡 田 村 山 [1984] の 水 平 的 公 平 の 議 論 ではなく 垂 直 的 公 平 に 着 目 しなが ら 配 偶 者 控 除 による 課 税 ベースの 侵 食 を 分 析 した ここでは 平 成 6 年 度 と8 年 度 で 配 偶 者 控 除 のある 世 帯 それぞれ 1,203 世 帯 と 766 世 帯 を 対 象 にして これらの 世 帯 すべての 課 税 所 得 を 計 算 し 税 率 を 適 用 するという 作 業 を 最 初 に 行 っている このようにして 加 工 した 個 票 データから 平 成 6 年 度 と8 年 度 で 配 偶 者 控 除 を 考 慮 に 入 れながら 租 税 関 数 を 推 定 した 推 定 の 結 果 平 成 7 年 度 において 配 偶 者 控 除 が 増 額 されるという 税 制 改 正 が 行 われながら 平 成 6 年 度 に 比 べると 平 成 8 年 度 では 配 偶 者 控 除 による 税 負 担 の 軽 減 効 果 が 弱 まっていることが 確 認 された これは 平 成 8 年 度 では 高 所 得 者 層 において 配 偶 者 控 除 の 恩 恵 を 受 けた 世 帯 が 少 なかっ たことが 原 因 ではないかと 考 えられる 次 に 同 じ 世 帯 を 対 象 にして 平 成 6 年 度 と8 年 度 の 個 票 データから 所 得 分 布 を 作 成 し 負 担 比 率 を 計 測 してみた この 結 果 負 担 比 率 は 平 成 6 年 度 で 0.912 平 成 8 年 度 で 0.909 であった したがって 平 成 7 年 度 の 税 制 改 正 により 配 偶 者 控 除 による 課 税 ベースの 侵 食 が 進 んだものと 考 えられる このことから 垂 直 的 公 平 水 平 的 公 平 あるいは 女 性 の 労 働 供 給 の 面 だけではなく 課 税 ベース の 侵 食 から 考 えても 配 偶 者 控 除 は 整 理 縮 小 すべきであると 判 断 される もっとも 本 分 析 では 基 礎 控 除 と 配 偶 者 控 除 のみを 考 慮 に 入 れて 分 析 を 行 っている したがって 今 後 は 給 与 所 得 控 除 や 配 偶 者 特 別 控 除 扶 養 控 除 や 社 会 保 険 料 控 除 等 も 含 めながら 分 析 を 行 わなければならない こ れに 関 しては 今 後 の 研 究 課 題 とする - 228 -

参 考 文 献 石 弘 光 [1981] 課 税 所 得 捕 捉 率 の 業 種 間 格 差 季 刊 現 代 経 済 第 42 号 72-83 頁 大 田 弘 子 [1997] 女 性 と 税 制 - 配 偶 者 控 除 等 の 検 証 - Japan Tax Reserch Institue, 第 13 巻 76 号 9-13 頁 大 田 弘 子 坪 内 浩 辻 健 彦 [2003] 所 得 税 における 水 平 的 公 平 性 について 内 閣 府 景 気 判 断 政 策 分 析 ディ スカッション ペーパー 1-27 頁 川 上 尚 喜 編 著 [2008] 図 説 日 本 の 税 制 ( 平 成 20 年 度 版 ) 財 経 詳 報 社 2-239 頁 田 近 栄 治 古 谷 泉 生 [2000] 日 本 の 所 得 税 - 現 状 と 理 論 - フィナンシャルレビュー 第 47 号 129-161 頁 飛 田 英 子 [2002] 配 偶 者 控 除 の 在 り 方 と 少 子 化 子 育 て 対 策 - 望 まれる 一 体 的 視 点 からの 見 直 し- Japan Research Review 7-34 頁 [2003] 第 5 章 経 済 社 会 構 造 の 変 化 と 税 制 ライフスタイルに 中 立 な 税 体 系 湯 元 健 治 編 著 税 制 改 革 のグランドデザイン 生 産 性 出 版 124-147 頁 橋 本 恭 之 [1994] 個 人 所 得 課 税 の 改 革 と 具 体 的 シミュレーション 税 経 通 信 第 49 巻 第 15 号 112-120 頁 蜂 屋 勝 弘 [2003] 第 4 章 税 の 空 洞 化 論 をただす 広 く 薄 い 税 負 担 は 本 当 に 必 要 か 湯 元 健 治 編 著 税 制 改 革 のグランドデザイン 生 産 性 出 版 96-121 頁 林 宏 昭 [1996a] 所 得 税 の 控 除 制 度 と 課 税 単 位 のあり 方 について 総 合 税 制 研 究 第 4 号 156-178 頁 [1996b] 租 税 政 策 の 計 量 分 析 - 家 計 間 地 域 間 の 負 担 配 分 日 本 評 論 社 95-102 頁 本 間 正 明 井 堀 利 宏 跡 田 直 澄 村 山 淳 喜 [1984] 所 得 税 負 担 の 業 種 間 格 差 の 実 態 -ミクロ 的 アプローチ- 季 刊 現 代 経 済 第 59 号 14-25 頁 望 月 正 光 野 村 容 康 深 江 康 志 [2004a] マクロ 統 計 による 所 得 課 税 ベースの 推 計 ( 上 )( 下 ) 証 券 経 済 研 究 第 45 号 19-31 頁 [2004b] マクロ 統 計 による 所 得 課 税 ベースの 推 計 ( 上 )( 下 ) 証 券 経 済 研 究 第 46 号 197-212 頁 森 信 茂 樹 前 川 聡 子 [2001] わが 国 所 得 課 税 ベースのマクロ 推 計 フィナンシャルレビュー 第 35 号 103-122 頁 森 信 茂 樹 [2002] わが 国 所 得 課 税 ベースの 研 究 日 本 租 税 研 究 協 会 1-82 頁 吉 井 一 洋 古 頭 尚 志 [2005] 個 人 所 得 課 税 の 見 直 し- 政 府 税 調 資 料 等 による 個 人 所 得 課 税 の 試 算 - 税 経 通 信 第 855 号 129-148 頁 Pechman, J.A.[1977]Federal Tax Policy, 3d ed. Brookings Institution. Pechman, J.A.and G.V.Engelhardt[1990] The Income Tax Treatment of the Family:An International Perspective, Natinal Tax Journal, Vol.43, No.1, pp.1-22. Munnell, A.H.[1980] The Couple versus the Individual under the Federal Personal Income Tax, in Aaron, H.J.and M.J.Boskin,eds., The Economics of Taxation, The Brookings Institution, pp.247-278. Simons, H.C.[1938]Personal Income Taxation:The Difinition of Income as a Problem of Fiscal Policy, University of Chicago Press. 参 考 資 料 財 務 省 ホームページ; http://www.mof.go.p/ouhou/syuzei/syuzei.htm 郵 政 研 究 所 家 計 における 金 融 資 産 選 択 に 関 する 調 査 ( 平 成 6 8 年 度 ) の 個 票 データ - 229 -