船 舶 海 洋 特 集 技 術 論 文 45 海 洋 資 源 調 査 船 への 取 組 み - 当 社 の 建 造 実 績 及 び 新 調 査 船 の 開 発 - Marine Resource Research Vessel -Past, Now, Future- *1 磨 田 徹 *2 植 村 洋 毅 Toru Togita Youki Uemura 平 成 19 年 に 施 行 された 海 洋 基 本 法 では, 国 土 の 四 方 を 海 に 囲 まれた 我 が 国 にとって, 海 洋 に 眠 る 鉱 物 資 源 エネルギー 資 源 などの 海 洋 資 源 を 利 用 していくことが, 重 要 な 課 題 と 位 置 づけ られている. 当 社 では, 海 洋 資 源 調 査 に 供 する 地 質 調 査 船, 物 理 探 査 船, 海 洋 研 究 船, 漁 業 調 査 船 などの 数 多 くの 建 造 実 績 を 有 しており, 現 在,( 独 ) 石 油 天 然 ガス 金 属 鉱 物 資 源 機 構 (JOGMEC) 向 に 最 新 の 海 洋 資 源 調 査 船 を 建 造 中 である. 本 稿 では, 海 洋 資 源 調 査 船 に 求 めら れる 技 術 要 件, 当 社 の 実 績 及 び 建 造 中 の 新 海 洋 資 源 調 査 船 の 概 要 を 紹 介 する. 1. はじめに 一 般 に, 日 本 は 資 源 小 国 と 言 われている.しかし, 世 界 6 位 の 面 積 を 誇 る 日 本 の 領 海 及 び 排 他 的 経 済 水 域 (EEZ) 内 には, 海 底 熱 水 鉱 床,コバルトリッチクラストのような 鉱 物 資 源 及 びガスハイド レートのようなエネルギー 資 源 の 賦 存 が 確 認 されており, 今 後 の 実 用 化 開 発 が 期 待 されている. このような 状 況 の 中, 平 成 19 年 7 月 に 施 行 された 海 洋 基 本 法 に 基 づき, 平 成 21 年 3 月 に 経 済 産 業 省 より 発 表 された 海 洋 エネルギー 鉱 物 資 源 開 発 計 画 では, 海 洋 資 源 の 商 業 開 発 までの マイルストーンが 提 示 されており,これから, 海 洋 資 源 量 調 査, 環 境 調 査 及 び 商 業 化 へ 試 験 が 本 格 化 していくことになるが,このような 海 洋 資 源 の 調 査 や 試 験 には,プラットフォームとしての 船 舶,すなわち, 海 洋 資 源 調 査 船 が 必 要 となる. 本 稿 では, 海 洋 資 源 調 査 船 に 求 められる 技 術 要 素, 当 社 でこれまでに 建 造 した 海 洋 資 源 調 査 船 及 び( 独 ) 石 油 天 然 ガス 金 属 鉱 物 資 源 機 構 (JOGMEC) 向 けに 建 造 中 の 新 海 洋 資 源 調 査 船 の 概 要 について 紹 介 する. 2. 海 洋 資 源 調 査 船 に 求 められる 技 術 要 件 海 洋 資 源 の 賦 存 量 調 査 では, 一 般 的 に 次 のような 手 法 が 取 られる. 船 舶 の 船 底 に 装 備 された 超 音 波 探 査 装 置 (3~200kHz)により 海 底 地 形, 海 底 の 反 射 強 度, 海 底 下 の 堆 積 層 の 構 造 を 調 査 する. エアガンなどにより, 超 音 波 探 査 装 置 より 低 い 周 波 数 の 弾 性 波 ( 地 震 波 )を 発 生 させ, 海 底 下 の 構 造 を 探 査 する. 磁 力 計, 重 力 計, 電 磁 気 探 査 装 置 などにより, 海 底 下 の 不 均 一 な 構 造 を 調 査 する. ROV,AUV などを 用 い, 海 底 地 形 及 び 海 底 下 の 堆 積 層 の 構 造 を, 細 密 に 調 査 する. ボーリング,ドレッジなどのサンプリング 装 置 により, 海 底 及 び 海 底 下 より 試 料 を 直 接 採 取 する. *1 下 関 造 船 所 船 舶 海 洋 部 部 長 *2 船 舶 海 洋 事 業 本 部 船 舶 海 洋 技 術 部 主 席 チーム 統 括
46 これらの 調 査 を 精 度 よくかつ 効 率 的 に 実 施 するために, 海 洋 資 源 調 査 船 に 一 般 の 船 舶 とは 異 なる 次 の 要 素 が 求 められる. 船 底 に 装 備 される 超 音 波 探 査 装 置 の 性 能 発 揮 のため, 航 走 時 にプロペラ 及 び 船 体 より 発 生 する 雑 音 を 低 減 するとともに, 船 底 に 装 備 された 送 受 波 器 位 置 に 気 泡 が 潜 り 込 まないよ うにすること. サンプリング 装 置 の 運 用 のため, 荒 天 時 において, 一 定 の 範 囲 内 にとどまることができるこ と. 観 測 装 置 の 運 用 と 採 取 データの 分 析, 保 管 のため, 十 分 な 広 さの 作 業 甲 板 及 び 研 究 室 を 有 すこと. 水 中 に 投 下 する 観 測 装 置 を 運 用 するための 観 測 補 助 設 備 (ウィンチ,A フレームなど)を 有 すること. 水 中 観 測 装 置 の 上 げ 下 ろしを 考 慮 し, 作 業 甲 板 の 海 面 からの 高 さを 抑 えること. 効 率 的 な 低 速 連 続 航 行 が 可 能 であること. 3. 当 社 の 海 洋 資 源 調 査 船 建 造 実 績 当 社 では, 海 洋 資 源 調 査 船 に 求 められる 水 中 放 射 雑 音 低 減 技 術, 耐 航 性 能 操 船 性 能 の 検 討 評 価 技 術, 観 測 装 置 及 び 観 測 補 助 装 置 の 配 置 検 討 調 整 能 力 を 有 しており,これまでに, 数 多 くの 海 洋 資 源 調 査 船 を 建 造 してきた. 表 1に 主 な 建 造 実 績 を 示 す.この 中 で,エポックメイキン グとなった 船 舶 をいくつか 紹 介 する. 表 1 当 社 の 海 洋 資 源 調 査 船 建 造 実 績 表 船 名 船 主 主 寸 法 総 トン 数 船 種 竣 工 ( 竣 工 当 時 の 名 称 で 表 記 ) (m) (m) (m) (*は 排 水 トン 数 ) 白 鳳 丸 農 商 務 省 生 物 資 源 / 海 洋 調 査 船 1922 39.62 7.54 4.19 322 淡 青 丸 東 京 大 学 海 洋 研 究 船 1963 35.00 7.40 3.70 258 白 鳳 丸 東 京 大 学 海 洋 研 究 船 1966 86.00 14.80 7.30 3 255 白 嶺 丸 金 属 鉱 業 事 業 団 地 質 調 査 船 1974 77.00 13.40 5.30 1 822 開 洋 丸 石 油 資 源 開 発 ( 株 ) 物 理 探 査 船 1976 68.00 12.00 4.60 995 S.A.AGULHAS 南 アフリカ 共 和 国 南 極 支 援 兼 調 査 船 1978 101.00 18.00 7.50 5 353 T.W.NELSON モービル 石 油 ( 株 ) 物 理 探 査 船 1978 77.00 14.00 7.45 2 570 ふたみ 防 衛 庁 海 洋 観 測 艦 1979 90.00 15.00 7.60 2 000 (*) 陽 光 丸 水 産 庁 生 物 資 源 調 査 船 1979 43.00 9.20 4.35 499 第 2 白 嶺 丸 金 属 鉱 業 事 業 団 地 質 調 査 船 1980 80.50 13.80 8.00 2 050 MOBILSEARCH モービル 石 油 ( 株 ) 物 理 探 査 船 1982 89.00 15.40 7.95 3 400 淡 青 丸 東 京 大 学 海 洋 研 究 船 1982 43.00 9.20 4.35 495 しらふじ 丸 水 産 庁 生 物 資 源 調 査 船 1983 31.00 6.90 2.95 138 天 鷹 丸 水 産 庁 生 物 資 源 調 査 船 1985 51.00 10.40 6.45 603 白 鳳 丸 東 京 大 学 海 洋 研 究 船 1989 90.00 16.20 8.90 3 987 蒼 鷹 丸 水 産 庁 生 物 資 源 調 査 船 1994 67.00 11.40 7.10 890 たか 丸 水 産 庁 生 物 資 源 調 査 船 1995 29.50 5.20 2.00 60 白 山 丸 石 川 県 生 物 資 源 調 査 船 1996 35.00 7.20 3.05 167 みらい 海 洋 科 学 技 術 センター 海 洋 地 球 研 究 船 1997 116.00 19.00 13.20 8 600 JOSE OLAYA BARANDRA Instituto del Mar del Peru 生 物 資 源 調 査 船 1998 35.00 8.30 3.70 365 にちなん 防 衛 庁 海 洋 観 測 艦 1999 111.00 17.00 9.00 3 300 (*) ちきゅう ( 独 ) 海 洋 研 究 開 発 機 構 海 底 深 部 探 査 船 2005 210.00 38.00 16.20 57 087 耕 洋 丸 水 産 大 学 校 生 物 資 源 調 査 船 2007 77.50 13.60 5.90 2 352 勢 水 丸 三 重 大 学 生 物 資 源 調 査 船 2009 42.50 8.60 3.75 318 (1) 白 鳳 丸 (1922 年 竣 工 ): 農 商 務 省 向 けに 建 造 された 日 本 最 初 の 調 査 船 である. 耐 氷 構 造,デ ィーゼル 機 関 推 進, 油 圧 操 舵, 交 流 電 源 の 採 用 など, 当 時 の 最 新 技 術 を 導 入 した 画 期 的 な 船 であった.
(2) 白 嶺 丸 (1974 年 竣 工 ): 海 洋 開 発 の 基 礎 としての 地 質 調 査 を 効 率 よく 実 施 する 船 として 建 造 された. 低 速 時 の 操 船 性 向 上 のため,CPP 主 機 関 のコンビネータ 制 御, 大 面 積 舵 及 びバウス ラスタの 採 用, 船 底 に 装 備 される 音 響 観 測 機 器 の 性 能 発 揮 のために, 他 船 における 送 受 波 器 の 最 適 装 備 位 置 の 実 験, 動 揺 の 少 ない 船 型 の 採 用 など, 各 種 の 工 夫 が 施 された.2000 年 に 売 船 され,Teknik Perdana と 船 名 を 変 えて, 現 在 も 海 洋 資 源 調 査 に 活 躍 中 である. (3) 第 2 白 嶺 丸 (1980 年 竣 工 ):マンガン 団 塊 探 査 船 として 建 造 され,その 後,コバルトリッチクラス ト, 熱 水 鉱 床 などの 鉱 物 資 源 調 査 及 び 大 陸 棚 延 伸 調 査 の 際 は, 海 底 着 座 型 ボーリングマシン により, 有 益 な 海 底 コアサンプルを 数 多 く 採 取 した. 調 査 観 測 対 象 の 変 化 観 測 機 器 の 進 化 に 伴 い,マルチナロービーム 音 響 測 深 装 置,パラメトリック 地 層 探 査 装 置, 流 向 流 速 計 などの 音 響 測 深 装 置 や 海 中 に 吊 り 下 げた 観 測 装 置 へ 船 体 動 揺 を 伝 えないためのヒーブコンペンセータ などを 追 加 装 備 するなど, 調 査 能 力 のグレードアップを 図 り, 今 日 に 至 っている( 図 1). (4) MOBIL SEARCH(1982 年 竣 工 ): 我 が 国 で 唯 一, 国 内 建 造 された 物 理 探 査 船 である 開 洋 丸 の 実 績 を 評 価 され, 世 界 石 油 メジャー 向 けとして 建 造 された 物 理 探 査 船. 当 時 では 珍 しいサイ リスタレオナード 制 御 のエアガンコンプレッサ 及 び 船 上 で 取 得 分 析 したデータを 衛 星 通 信 に て 陸 上 へ 送 信 する 装 置 を 搭 載 した. 現 在 も,Polar Search と 船 名 を 変 え, 石 油 資 源 調 査 に 活 躍 している. (5) 白 鳳 丸 (1989 年 竣 工 ): 建 造 より 20 年 以 上 経 過 した 今 も, 世 界 を 代 表 する 海 洋 研 究 船 の 一 つ. 推 進 プラントは, 推 進 効 率 と 低 速 域 での 静 粛 性 を 両 立 させるための, 通 常 航 海 時 はディー ゼル 推 進, 低 速 観 測 時 は 電 気 推 進 のハイブリッド 推 進 方 式 を 採 用.また, 船 速 16kt で,マル チナロービーム 音 響 測 深 装 置 にて 水 深 10000m 海 域 を 観 測 する. ( 当 時 の 常 識 は,マルチナ ロービーム 音 響 測 深 装 置 での 観 測 船 速 は 10kt) 命 題 を 実 現 するために,キャビテーションが 発 生 しないプロペラの 設 計, 主 機 関 の 二 重 防 振, 水 線 下 への 制 振 材 の 塗 布, 溶 接 ビードの 除 去 など, 徹 底 した 水 中 放 射 雑 音 低 減 対 策 が 採 られた. 観 測 ウィンチ, 動 揺 緩 衝 装 置,ドライラボ, ウェットラボのほか,クリーンルーム,RI 研 究 室 などの 研 究 室 も 完 備 しており, 最 近 では, 鰻 の 産 卵 場 所 の 特 定 などの 生 物 資 源 の 研 究 にも 成 果 を 挙 げている( 図 2). 47 図 1 第 2 白 嶺 丸 図 2 白 鳳 丸 (1989 年 竣 工 ) 図 3 みらい 図 4 ちきゅう
(6) みらい(1997 年 改 造 ): 原 子 力 船 むつ を 改 造 した 世 界 最 大 級 の 調 査 船. 白 鳳 丸 で 成 果 を 挙 げた 水 中 放 射 雑 音 低 減 対 策 は 本 船 でも,ほぼ 同 様 に 採 用 されている.8600 トンの 大 きな 船 体 が 生 み 出 す 高 い 耐 航 性 と 耐 氷 構 造 を 活 かし, 他 の 調 査 船 では 実 施 できない 極 域 及 び 荒 天 下 での 観 測 が 可 能 となっている.2003~2004 年 には, 南 半 球 を 一 周 し, 連 続 しての 海 洋 観 測 を 実 施 (1つの 船 で 連 続 観 測 したのは 世 界 初 )するなど, 世 界 的 な 研 究 成 果 を 挙 げている ( 図 3). (7) ちきゅう(2005 年 竣 工 ): 統 合 国 際 深 海 掘 削 計 画 (IODP)において 中 心 的 な 活 躍 をしている 地 球 深 部 探 査 船. 水 深 2500m( 将 来 は 4000m)の 海 域 において, 海 底 下 7000m までの 掘 削 サ ンプリングを 可 能 とするため, 科 学 掘 削 船 としては, 世 界 で 始 めてのライザー 掘 削 方 式 を 採 用 し ている. 掘 削 作 業 だけでなく, 採 取 したコアサンプルの 分 析 を 行 うための 研 究 設 備 も 完 備 され ている.また, 長 期 にわたる 掘 削 作 業 の 乗 組 員 研 究 員 の 洋 上 での 交 代 のため, 日 本 の 調 査 船 としては 珍 しくヘリポートを 有 している( 図 4). 48 4. 新 海 洋 資 源 調 査 船 の 開 発 平 成 21 年 3 月 の 海 洋 エネルギー 鉱 物 資 源 開 発 計 画 に 則 り, 経 済 産 業 省 は, 海 底 熱 水 鉱 床,コバルトリッチクラスト 鉱 床 など 海 底 鉱 物 資 源 やメタンハイドレートなどの 探 査, 開 発 を 促 進 す るため, 最 新 の 大 型 調 査 機 器 を 導 入 したサンプリング 調 査,リモートセンシングなどによる 賦 存 量 調 査 及 び 海 洋 環 境 基 礎 調 査 が 効 率 的 かつ 安 全 に 実 施 できる, 新 海 洋 資 源 調 査 船 の 建 造 を 決 定 した. 新 海 洋 資 源 調 査 船 は, 安 全 性 と 地 球 環 境 に 配 慮 した 新 海 洋 資 源 調 査 試 験 船 を 基 本 コン セプトとし, 次 のような 要 求 項 目 が 掲 げられた. (1) 創 造 性 のある 資 源 調 査, 技 術 試 験 を 可 能 とするため, 国 内 初 搭 載 となる 船 上 設 置 型 ボーリン グマシン 及 び 新 規 開 発 となる 海 底 着 座 型 ボーリングマシン,パワーグラブ,などを 効 率 的 に 運 用 する 設 備 を 有 すること.その 際, 要 求 される 定 点 保 持 能 力 は, 表 2のとおりとする. 表 2 新 海 洋 資 源 調 査 船 の 定 点 保 持 能 力 潮 流 5kt ( 船 首 より) 5kt ( 全 方 位 ) 最 大 風 速 15 m/s 有 義 波 高 3 m 位 置 保 持 精 度 水 深 の 3 % 又 は 30 m 水 深 の 3 % 又 は 50 m (2) 船 底 に 装 備 されるマルチビーム 音 響 測 深 装 置,サブボトムプロファイラなどの 音 響 観 測 装 置 による 調 査 を 可 能 とするため, 水 中 放 射 雑 音 は 船 速 10kt にて 63dB re.1μpa Hz(at 12kHz) 以 下 であること. (3) 安 全 性 信 頼 性 に 考 慮 した 設 計 とすること. (4) 各 種 観 測 装 置 の 持 込 みに 対 応 できること. (5) ライフルサイクルコストの 低 減 を 図 ること. (6) 地 球 環 境 に 考 慮 すること. 新 海 洋 資 源 調 査 船 の 設 計 建 造 は,( 独 ) 石 油 天 然 ガス 金 属 鉱 物 資 源 機 構 (JOGMEC)より 一 般 公 募 に 出 され, 平 成 21 年 8 月 の 技 術 公 募, 技 術 審 査 を 経 て, 当 社 が 設 計 建 造 を 担 当 すること となった.JOGMEC からの 要 求 項 目 及 び 当 社 からの 提 案 に 基 づき 打 合 せを 重 ね, 新 海 洋 資 源 調 査 船 には, 次 のような 仕 様 を 織 り 込 むこととなった. (1) 海 底 着 座 型 ボーリングマシンやパワーグラブなどの 吊 り 下 げ 型 の 観 測 装 置 の 安 全 な 運 用 のた め, 船 尾 に 大 型 の A フレームを 設 け, 船 尾 端 の 水 面 よりの 高 さを3m に 抑 える.また, 船 上 設 置 型 ボーリングマシンの 運 用 のため, 船 体 中 央 部 に 開 口 部 (ムーンプール)を 設 ける.なお, 吊 り 下 げ 型 観 測 装 置 を,ムーンプールからも 運 用 できるよう,ムーンプールの 大 きさは,7.5m 7.5m とするとともに, 観 測 ウィンチからのケーブルは, 船 尾 (A フレーム)と 中 央 部 (ムーンプー
ル),いずれにも 導 けるようなシーブ 配 置 とする. さらに, 船 体 動 揺 時 も, 吊 り 下 げ 型 の 観 測 装 置 を, 安 全 に 揚 げ 降 ろしするため,ムーンプー ル 上 部 内 部 には, 取 り 外 し 式 ハンドリングタワー,ガイドレール 付 の 把 持 装 置 を 設 ける. 要 求 さ れた 定 点 保 持 能 力 を 実 現 するため, 船 尾 にアジマス 推 進 器 (3200kW) 2 基, 船 首 部 に 昇 降 旋 回 式 バウスラスタ(820kW) 1 基 及 びトンネル 式 バウスラスタ(790kW) 2 基 を 装 備 し, 自 動 船 位 保 持 装 置 (DPS)により 総 合 制 御 することとした. (2) 強 力 な 推 進 器 による 雑 音 やムーンプールによる 配 置 的 制 約 で, 静 粛 性 との 両 立 が 困 難 であ ることは 否 めないが, 高 い 定 点 保 持 能 力 とムーンプールを 有 しながら, 大 水 深 対 応 のマルチビ ーム 音 響 測 深 装 置 やサブボトムプロファイラを 運 用 する 船 舶 は, 世 界 でも 例 がない. 本 船 で は,プロペラ 形 状 の 最 適 化, 発 電 機 の2 重 防 振, 機 関 室 その 他 の 外 板 への 制 振 材 の 採 用, 気 泡 が 船 体 に 回 り 込 みにくい 船 体 形 状 の 設 計 などの 水 中 放 射 雑 音 対 策 を 織 り 込 むことにより, 水 中 放 射 雑 音 の 要 求 値 を 満 たすことができる 見 通 しである. (3) 調 査 業 務 の 安 全 性 確 保 のため,MODU コード( 移 動 式 海 底 資 源 掘 削 船 構 造 設 備 規 則 ) 及 び 日 本 海 事 協 会 (NK) 自 動 船 位 保 持 設 備 B 級 を 取 得 する.また, 推 進 プラントの 信 頼 性 確 保 のた め, 主 発 電 機 4 台 と 推 進 電 動 機 2 台 による 電 気 推 進 を 採 用 し,1つの 装 置 の 故 障 が 運 航 障 害 に 直 結 しない 仕 様 とした. (4) ムーンプールより 後 部 の 作 業 甲 板 は 木 甲 板 とし, 可 搬 式 機 材 を 固 定 するための 埋 め 込 みボ ルト 穴 を 配 置 した. 観 測 装 置 を 海 中 に 投 入 又 は 曳 航 するために,10 台 の 電 動 観 測 ウィンチを 装 備 する.10 台 のうち,No.1~5ウィンチは, 船 体 動 揺 を 吸 収 するオートヒーブコンペンセート 機 能 付 となっている.380 m2を 超 える 研 究 室 には, 機 器 固 定 用 ボルト 穴,ケーブルホール, 船 内 LAN による 情 報 提 供 など 可 搬 式 研 究 機 材 への 対 応 も 考 慮 されている. (5) ライフサイクルコスト 低 減 のため, 発 電 機 関 の 台 数 制 御 による 燃 料 費 の 削 減, 調 査 装 置 の 追 加 換 装 が 容 易 となる 仕 様 などを 織 り 込 んだ. (6) NOx 二 次 規 制 の 先 行 適 用,バラスト 水 処 理 装 置 の 採 用,グレイウォーター 貯 蔵 機 能 の 採 用 な ど, 地 球 環 境 に 優 しい 仕 様 とした. 新 海 洋 資 源 調 査 船 の 主 仕 様 を 表 3に 示 す. 49 表 3 新 資 源 海 洋 調 査 船 の 主 仕 様 全 長 118.3 m 幅 19.0 m 深 さ 9.2m 総 トン 数 約 6 100t 航 海 速 力 15.5kt 航 続 距 離 約 9 000 海 里 最 大 搭 載 人 員 70 人 ( 乗 組 員 34 人, 調 査 員 など 36 人 ) 5. まとめ 新 海 洋 資 源 調 査 船 は, 平 成 23 年 3 月 に 進 水 し, 平 成 24 年 より, 実 海 域 での 資 源 調 査 が 開 始 さ れる. 本 船 の 建 造 により, 我 が 国 の 海 洋 資 源 開 発 は, 現 在 の 調 査 探 査 の 段 階 から, 本 格 的 な 資 源 量 把 握 の 時 代 へと 移 行 することになり, 最 終 的 には 商 業 生 産 への 道 を 開 くことに 通 じると 期 待 さ れている. 当 社 では,これまでに 培 った 調 査 船 の 設 計 建 造 技 術 を 活 かし, 今 後 も 海 洋 資 源 の 調 査 開 発,ひいては, 我 が 国 のエネルギー, 鉱 物 資 源 の 安 定 供 給 への 道 に 寄 与 していきたい.