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1 京都産業大学植物ゲノム科学研究センター 要旨 アブラナ科作物においては 近年細胞質雄性不稔を利用した F 1 品種が急速に普及している 従来 アブラナ科の F 1 育種にはオグラ型細胞質が用いられてきたが それ以外の雄性不稔細胞質を見出そうとする試みが世界的に進められ 新たに DCGMS 型細胞質や野生種が持つミトコンドリアの orf108 遺伝子が発見され 詳しく研究された それらの研究の過程で 雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の複雑な対応の存在が明らかになってきた そこで オグラ型の orf138 遺伝子 DCGMS 型の orf463 遺伝子および野生種の orf108 遺伝子に焦点を当て これらと稔性回復遺伝子の関係についての最近の研究をレビューした キーワード : アブラナ科植物 細胞質雄性不稔 稔性回復遺伝子 F 1 育種 ミトコンドリアゲ ノム 1. はじめに 作物の育種方法のうち 異なる品種 系統間の雑種が示す雑種強勢を利用する雑種強勢育種法 (F 1 育種法 ) は 単位面積あたりの作物生産高の向上および品質の均一化に極めて大きい効果を発揮する このため 古くから多くの作物でこの F 1 育種法が適用されてきた F 1 育種法は本来 雑種強勢が顕著に現れる他殖性作物で利用されてきたが それだけでなく 近年は自殖性作物においても利用が図られている 世界の三大穀物のうちトウモロコシは前者の典型的な例にあたり 自殖性のイネとコムギは後者の例であり 特に中国におけるイネの著しい生産量の増加は F 1 育種によるところが大きい F 1 育種法を効率的かつ安定的に実施するためには 交雑親のうち 母本 ( 種子親 ) となる系統の自家受精を確実に防ぐ必要があるが そのための最も有効な方法が細胞質雄性不稔の利用である たとえば 他殖性作物のうちアブラナ科の作物 とりわけハクサイ キャベツ ダイコンなどの野菜における F 1 育種では 従来自家不和合性の利用による F 1 採種が行われてきた しかし自家不和合性が環境の影響を受けて 安定して発現しない場合があるため 最近細胞質

2 雄性不稔の利用への急速な転換が認められている これは 自家不和合性の場合には 母本植物は正常な花粉を生産するが 母本における花粉と花柱の間の生化学的な応答によって受精が妨げられる現象が利用されるのに対して 雄性不稔の場合は 機能を持つ花粉そのものが生産されないという遺伝的特性を利用するため 確実に自家受精を防ぐことができるという特徴の違いによる アブラナ科作物の F 1 育種に利用される雄性不稔細胞質のうち代表的なものは オグラ型細胞質と呼ばれる この細胞質は Ogura(1968) によって鹿児島県下の雄性不稔のダイコンで発見された このオグラ型細胞質はダイコンとBrassica 属作物との属間交雑によって Brassica 属に導入され 同属に含まれるセイヨウナタネ (Brassica napus) やキャベツ ブロッコリー ( 共に Brassica oleracea) など 世界的に重要な作物で広く利用されている しかしながら ダイコンのうちヨーロッパのハツカダイコンおよび漬物材料としてのダイコンの栽培が盛んな韓国のダイコンは オグラ型雄性不稔細胞質に対する稔性回復遺伝子を持つため この細胞質を F 1 育種に利用することは困難である またアブラナ科作物の育種において 育種素材を特定の細胞質に集中的に依存することの危険性が懸念される これらのことから オグラ型細胞質以外の雄性不稔細胞質を探索する試みが世界各地で行われ その結果として ダイコンにおいて新しく DCGMS 型雄性不稔細胞質が見出された (Kim et al., 2007) その一方で カラシナ タカナが属する Brassica juncea に雄性不稔を誘起する細胞質がアブラナ科の野生植物から導入され 雄性不稔の原因遺伝子が orf108 と同定された (Prakash et al., 1990; Kumar et al., 2012) このように アブラナ科植物においては 今までにいくつかの雄性不稔細胞質が発見されると共に それらに対する稔性回復遺伝子も単離されつつある 稔性回復遺伝子とは 雄性不稔遺伝子の発現をおさえて 花粉稔性を回復させる遺伝子である この遺伝子は セイヨウナタネ カラシナのように子実の油を利用する作物の F 1 育種においては不可欠な遺伝子である 本稿では これら雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の対応関係の複雑性を ⅰ) オグラ型雄性不稔の原因遺伝子である orf138 と稔性回復遺伝子 (orf687) ⅱ) クロダイコンが持つ雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子 ならびにⅲ) アブラナ科の野生種が持つorf108 とこれに対する稔性回復遺伝子 の 3 つに焦点を当てて論考する 2. ダイコンのオグラ型雄性不稔に対する稔性回復遺伝子 オグラ型の雄性不稔の原因遺伝子はミトコンドリアに存在する orf138 であるが (Bonhomme et al., 1992) この orf138 に対する稔性回復遺伝子が 2003 年に 3 つのグループによってほぼ同 時に同定された Koizuka et al. (2003) は この稔性回復遺伝子を orf687 と呼び この遺伝

3 子が核ゲノムに存在する Pentatricopeptide Repeat(PPR) タンパク質遺伝子であることを明らかにした この orf687 は orf138 の発現を 翻訳以降の段階で抑制している 彼らは この orf687 を同定する過程で PPR タンパク質の 118 番目のアミノ酸の差が稔性回復遺伝子として機能するか否かを決定していることを見出した ( 今井ら, 2002) このアミノ酸の差をもたらす塩基配列変異は orf687 遺伝子の PCR 産物を制限酵素 Ssp Ⅰで切断することによって検出できる すなわち 図 1 に示すように 稔性回復機能を持つ品種 早梅花 に存在する Ssp Ⅰ 切断サイトが 稔性回復遺伝子を持たない MS 源助 および 打木源助 には存在しない そこで我々は このような PCR-RFLP を指標にして ダイコンの栽培品種および我国に自生するハマダイコンにおける稔性回復遺伝子の分布を広く調査した 調査の結果 まず我国のハマダイコンにおいては orf138 を持つ個体の割合は 42% であるのに対して 稔性回復遺伝子を持つ個体は約 92% に達し ハマダイコンにはオグラ型雄性不稔に対する稔性回復遺伝子が高頻度で分布することが明らかになった (Yasumoto et al., 2008) しかしその一方で 上述の PCR-RFLP の結果 稔性回復機能を持つ orf687 を有するハマダイコンは 全体の 13% 程度で 大部分の個体が orf687 に関しては 稔性回復機能を持たない遺伝子型であることが判明した (Yasumoto et al., 2008) このため ハマダイコンが持つ稔性回復遺伝子を探索し 遺伝学的に解析したところ orf687 とは別の機能を持つ稔性回復遺伝子が存在することが推定された 我々はこの orf687 とは異なる稔性回復遺伝子を Rft と呼んで この Rft がorf138 の mrna のプロセシングに関与して 稔性を回復することを発見した その上で この Rft に対する DNA マーカーを開発した (Yasumoto et al., 2009) さらに 近年育成された我国の栽培品種について orf687 の PCR-RFLP パターンと実際の花粉稔性の対応を調査したところ orf687 は稔性回復機能を有する遺伝子型であると推定されるにもかかわらず 実際の表現型は不稔となる品種が見出された ( 2017) このような例は 最近 Wang et al. (2017) も報告している 彼らの解析の結果 不稔系統は orf687 のプロモーター領域の塩基配列が稔性回復系統と異なっており そのためorf687 が発現していないことが明らかになった (Wang et al., 2017) そこで我々が見出した品種について 葉から抽出したタンパク質を用いて ORF687 に関する western 解析を行ったところ 不稔性を示す品種においても ORF687 タンパク質の存在が認められた このことは 今井ら (2002) Wang et al. (2017) のいずれとも異なる遺伝的原因によって orf687 が稔性回復機能を失っている品種が存在することを示している このような観察を背景として ダイコンの栽培品種について orf687 の RFLP パターンと花粉稔性の対応を改めて調査した そのうちの代表的なパターンを図 1 に示した 調査した F 1 品種のうち 万緑 は雄性不稔の原因遺伝子である orf138 を持ち 稔性回復遺伝子 orf687 には 打木源助 と同様に 早梅花 が持つ Ssp Ⅰ 切断サイトを欠いている この品種は 実際に

4 MS 打木源助源助緑-万-orf138 不可不可可不-+-++++-雄性不稔性を示すため 今井ら (2002) が見出したアミノ酸置換によって ORF687 が稔性回復機能を失っていると考えられる これに対して 同様に F 1 品種で orf138 を持つ 太平 と 紅甘味 はどちらも orf687 の Ssp Ⅰ 切断サイトをホモに有するにもかかわらず 太平 は可稔 紅甘味 は雄性不稔と 異なる表現型を示した ( 図 1) このうち 紅甘味 が 先に述べたように ORF687 タンパク質が 葉で検出されるにもかかわらず不稔性を示す品種である これら 2 つの品種は 上述のとおり orf138 を持つ F 1 品種である このため 細胞質雄性不稔性を利用した F 1 育種で育成された品種であると仮定することができる それであれば 両品種の母本 ( 種子親 ) は雄性不稔を示すはずである その場合 母本はorf687 内の Ssp Ⅰ 切断サイト以外の塩基配列変異によって 稔性回復機能を失っているものと考えられる さらに 紅甘味 が雄性不稔を示したことから 紅甘味 の花粉親は稔性回復機能を持たないと考えられる すなわち 紅甘味 の両親は共に Ssp Ⅰ 切断サイト以外の塩基配列変異によって稔性回復機能をなくしているものと推定される 以上のように オグラ型雄性不稔の原因遺伝子であるorf138 に対して 稔性回復遺伝子 (orf687) が同定されたものの ハマダイコンでは これとは別の稔性回復遺伝子が高頻度に存在することが明らかになった さらに orf687 に関しても 今までに明らかにされている稔性回復機能を決定する遺伝的メカニズムとは異なる遺伝的変異によって 稔性回復機能の有無が決まるケースが存在することが推定された このため orf138 とこれに対する稔性回復遺伝子の対応については 今後さらに詳細に調査する必要が残されている +a 花粉稔性 b 稔性回復遺伝子 c M 図 1 ダイコン品種 系統の花粉稔性と orf687 の PCR-RFLP a: orf138 の + と-は orf138 がある (+) かない (-) かを示す. b: 花粉稔性の不は不稔を, 可は可稔を示す. c: 稔性回復遺伝子の + と-は 遺伝子がある (+) か ない (-) かを示す. M: 分子量マーカー 早梅花太平紅甘味+

5 3. クロダイコンにおける雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子 細胞質雄性不稔を F 1 育種に利用するためには 実用的な栽培品種の多くがその雄性不稔に対する稔性回復遺伝子を持っていないことが条件になる 先述のオグラ型細胞質に対しては ヨーロッパのハツカダイコンならびに中国および韓国のダイコン品種に稔性回復遺伝子が存在することが観察された (Yamagishi, 1998) とりわけ 韓国の多くの品種は稔性回復遺伝子を持つため 同国でのオグラ型細胞質の利用を妨げていた (Kim et al., 2007) このような背景から 韓国では 世界各地のダイコンについて オグラ型細胞質にかわる雄性不稔細胞質の探索が行われてきた その結果 ウズベキスタンから導入されたダイコンの 1 品種が雄性不稔を示すことが見出され DCGMS 型雄性不稔と命名された (Kim et al., 2007) この雄性不稔を示す細胞質のミトコンドリアゲノムの全塩基配列が決定され それに基づいて DCGMS 型雄性不稔の原因遺伝子が orf463 として同定された (Park et al., 2013) しかしこの遺伝子が 世界のダイコンの品種 系統にどのように分布するかの調査はなされてこなかった その一方で 我々は栽培ダイコンのいくつかの品種についてミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定して 品種間で構造および塩基配列を比較してきた その過程で クロダイコン のミトコンドリアに orf463 が存在することが明らかになった ( 寺地, 2017;Yamagishi and Terachi, 2017) そこで orf463 が クロダイコン と呼ばれる栽培ダイコンのグループに共通して存在することを確かめるとともに 実際にクロダイコンの細胞質が雄性不稔を誘起するか否かを交配実験によって確認した その結果 クロダイコンに含まれる 4 品種はいずれも orf463 を持っていた これら 4 品種はすべて正常な花粉稔性を示す そこでこれらの品種を母本として オグラ型雄性不稔の維持系統である 打木源助 と交雑したところ F 1 世代または F 2 世代において 実際に雄性不稔を示す個体が出現した ( ら, 2018;Yamagishi et al., 2019) これらのことから クロダイコンという品種群に含まれる品種は共通して オグラ型とは異なる雄性不稔遺伝子 orf463 とそれに対する稔性回復遺伝子を有することが明らかになった これに対して オグラ型細胞質を持ち雄性不稔性を示す MS 源助 を母本として クロダイコンの 4 品種を交雑した結果 すべての組合せで 交雑の F 1 世代に可稔個体が認められた ( 表 1) この F 1 世代における可稔個体と不稔個体の出現パターンから 4 品種のうち Russia Black Long はオグラ型の orf138 に対する稔性回復遺伝子をホモで持つのに対して 他の 3 品種はヘテロで持つものと推定された ( 表 1) これと先に述べたorf463 に対する稔性回復遺伝子について推定される遺伝子型をあわせると ( 表 2) クロダイコンの 4 品種はいずれも 2 つの雄性不稔 (DCGMS 型 オグラ型 ) に対する稔性回復遺伝子を兼ね備えており かつそれぞれの稔性回復遺伝子の遺伝子型の組合せが多様であることが示唆された このように 1 つの品種が異なる雄性不稔に対する稔性回復遺伝子を同時に保有していることは ダイコンにおけ

6 る雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の対応の複雑性を示すもう 1 つの例である 今後 これら 2 つの雄性不稔遺伝子に対する稔性回復遺伝子を同定し それぞれの機能を明らかにすること が必要である 表 1 オグラ型細胞質を持つ MS 源助 とクロダイコンの 4 品種との交雑 F 1 における花粉稔性 クロダイコン品種 ( 花粉親 ) 可稔 F 1 不稔 計 Russia Black Long 6 0 6 Lång Svart 7 2 9 Rund Svart 2 10 12 黒ダイコンA 2 6 8 表 2 ダイコンの雄性不稔遺伝子 (orf138,orf463) に対するクロダイコンの稔性回復遺伝子の遺伝子型 クロダイコン品種 orf463 に対する orf138 に対する稔性回復遺伝子稔性回復遺伝子 Russia Black Long ヘテロ ホモ Lång Svart ホモ ヘテロ Rund Svart ヘテロ ヘテロ Kurodaikon A ヘテロ ヘテロ 4. 雄性不稔遺伝子 orf108 の分布と変異 世界的に重要な油料作物 野菜 香辛料作物を含む Brassica 属においては ダイコンから導入されたオグラ型細胞質だけでなく 他の雄性不稔細胞質の導入と実用化が盛んに試みられてきた (Yamagishi and Bhat, 2014) そのうち セイヨウナタネ(B. napus) と並んで重要な油料作物であるB. juncea について インドのグループがアブラナ科野生種の細胞質を導入することによって雄性不稔化に成功している まず Prakash et al. (1990) は Brassica oxyrrhina の細胞質を導入したB. juncea が雄性不稔性を示すことを見出した その後 Diplotaxis catholica Diplotaxis erucoides Moricandia arvensis 等の Brassica とは異なる属の野生種の細胞質も B. juncea に雄性不稔を誘起することが明らかになり さらに興味深いことに これらの種はいずれも雄性不稔の原因遺伝子としてミトコンドリアの atp1 遺伝子の上流に orf108 を有していることが発見された (Kumar et al., 2012)( 表 3) これは 共通の雄性不稔遺伝子が種および属を越えて アブラナ科の植物に広く分布していることを示す新しい発見である このため この遺伝子がどのようにして生じ 種または属によって どのように消失したりあるいは保存されているかを確認することは 植物におけるミトコンドリアゲノムの消長ならびにアブラナ科植物の進化と類縁関係を研究する上で 有効な指針を与えることが期待される このような観点から 我々は Brassica 属と近縁で Brassica 属作物の育種素材として有用で

7 あると考えられている Sinapis 属の 5 種植物 (S. alba S. arvensis S. flexuosa S. pubescens および S. turgida) について orf108 の分布を調査した その結果 S. arvensis と S. turgida が orf108 を有することが明らかになった (Mukai et al., 2019)( 表 3) そこで この 2 種が持つ orf108 の塩基配列を決定したところ 上記の B. oxyrrhina や M. arvensis が持つ orf108 とは異 なる塩基配列を共通して持つことが見出された (Mukai et al., 2019) これらの 2 種の細胞質 が Brassica 属作物に実際に雄性不稔を誘起するか否かは 今後調査する必要がある ところで この orf108 とこれに対する稔性回復遺伝子の対応については 複雑な関係が示 されている すなわち M. arvensis が持つ稔性回復遺伝子は それ自身の細胞質だけでなく D. berthautii D. catholica D. erucoides の細胞質による雄性不稔に対して回復遺伝子として有 効に機能するのに対して B. oxyrrhina の細胞質による雄性不稔は回復しないことが発見され た (Naresh et al., 2016)( 表 3) 詳しい調査の結果 M. arvensis の稔性回復遺伝子は orf108 の 16 番目の塩基の位置で orf108 mrna をプロセシングし B. oxyrrhina 以外の種はそのサイ トに M. arvensis と同一の塩基を持つことが明らかになった これに対して B. oxyrrhina の稔 性回復遺伝子は orf108 の 192 番目の塩基の位置で orf108 mrna をプロセシングして可稔化す るが この位置には orf108 を有する植物種間で塩基配列変異は認められなかった (Naresh et al., 2016)( 表 3) このことは B. oxyrrhina の稔性回復遺伝子は 全ての種が持つ orf108 の mrna のプロセシングに有効であり 稔性を回復する可能性があることを示唆している さ らに 我々が発見した S. arvensis S. turgida の orf108 は M. arvensis の稔性回復遺伝子お よび B. oxyrrhina の稔性回復遺伝子による mrna のプロセシングがどちらも機能し得る塩基 配列を持っていたが ( 表 3) これら 2 種の orf108 は 自身が持つ稔性回復遺伝子によって B. oxyrrhina と同様に 192 番目の塩基の位置でプロセシングされることが推定された (Mukai et al., 2019) 表 3 orf108 を持つアブラナ科野生種とそれらにおける orf108 の塩基配列変異 野生種 M. arvensis の 16 番目の 192 番目の稔性回復遺伝子 a 塩基塩基の効果 Brassica oxyrrhina - G A Diplotaxis berthautii + T A Diplotaxis catholica + ND b ND b Diplotaxis erucoides + T A Moricandia arvensis + T A Sinapis arvensis ND b T A Sinapis trugida ND b T A a; + = M. arvensis の稔性回復遺伝子が有効, - = M. arvensis の稔性回復遺伝子が無効, b; ND = 未調査 以上のように orf108 はアブラナ科の属を越えて広く保存されている一方で 遺伝子内の塩 基配列変異によって 稔性回復遺伝子との対応が複雑に分化している この orf108 と稔性回復 遺伝子の関係をさらに詳しく調べることは 植物におけるミトコンドリアの遺伝子と核ゲノム

8 に存在する遺伝子の相互関係の進化を理解する上で 有用な知見を提供する可能性がある その一方で 実際のBrassica 属作物 とりわけ子実を利用する油料作物において orf108 による雄性不稔性を利用しようとする場合には 稔性回復遺伝子の種類とその効果について十分に留意する必要がある 5. おわりに 以上アブラナ科植物における雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の対応について orf138 orf463 およびorf108 を例として見てきた 現在までに アブラナ科においては これら以外にも雄性不稔の原因遺伝子が多数同定されている (Yamagishi and Bhat, 2014) が 上記の 3 遺伝子に限っても それらと稔性回復遺伝子との関係が極めて複雑であることが容易に理解される まず orf138 と orf463 は ダイコンという同一作物種内の細胞質変異として存在するが このうち orf138 に対する稔性回復遺伝子には 異なる分子生物学的機能を持つものが 2 つ以上存在する また orf463 を持つクロダイコンは この遺伝子に対する稔性回復遺伝子を持つと同時に 自身の細胞質にはない orf138 に対する稔性回復遺伝子も兼ね備えて有している 一方 orf108 は 一見類縁関係が密接でないアブラナ科野生種に広く保存されて分布しているものの これらの種におけるorf108 の保存のメカニズムは全く明らかになっていない さらにorf108 の塩基配列には種間変異が存在し その変異によって 有効な稔性回復遺伝子が異なることが明らかになった 現在までのところ これら 3 つの雄性不稔遺伝子については 共通した特徴は見出されていない また稔性回復遺伝子についても オグラ型の orf138 に対する orf687 以外は いまだに同定されていない 今後特に稔性回復遺伝子の研究が進み 雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の関係がより深く解明されることが望まれる なお参考資料として 植物ゲノム科学研究センターにおける平成 30 年度の研究発表 ( 論文 学会発表等 ) をリストにして末尾に掲載する また先端科学技術研究所所報第 17 号 (2018) には 植物ゲノム科学研究センターにおける研究業績 として 平成 25 年度から平成 29 年度までの研究発表を掲載した 引用文献 1) Bonhomme, S., Budar, F., Lancelin, D., Small, I., Defrance, M. C., Pelletier, G. 1992. Sequence and transcript analysis of the Nco2.5 Ogura - specific fragment correlated with cytoplasmic male sterility in Brassica cybrids. Mol. Gen. Genet. 235: 340-348.

9 2) 今井りつ子, 肥塚信也, 藤本英也, 早川孝彦, 木村雄輔, 河野淳子, 酒井隆子, 今井順.2002. コセナ CMS に対する稔性回復遺伝子 rfk1 の同定.(3)rfk1 対立遺伝子と稔性回復の関係. 育種学研究 4( 別 2): 184. 3) Kim, S., Lim, H., Park S., Cho, K., Sung, S., Oh, D., Kim, K., 2007. Identification of a novel mitochondrial genome type and development of molecular markers for cytoplasm classification in radish (Raphanus sativus L.). Theor. Appl. Genet. 115: 1137-1145. 4) Koizuka, N., Imai, R., Fujimoto, H., Hayakawa, T., Kimura, Y., Kohno Murase, J., Sakai, T., Kawasaki, S., Imamura, J. 2003. Genetic characterization of a pentatricopeptide repeat protein gene, orf687, that restores fertility in the cytoplasmic male - sterile Kosena radish. Plant J. 34: 407-415. 5) Kumar, P., Vasupalli N., Srinivasan R., Bhat S. R. 2012. An evolutionarily conserved mitochondrial orf108 is associated with cytoplasmic male sterility in different alloplasmic lines of Brassica juncea and induces male sterility in transgenic Arabidopsis thaliana. Plant Mol. Biol. 32: 879-890. 6) Mukai, A., Jikuya, M., Tsujimura, M., Terachi, T., Yamagishi, H. 2019. Complete mitochondrial genome sequence of Brassica oxyrrhina and comparative analysis of the region containing orf108, a male sterility gene for mustard (Brassica juncea), among B. oxyrrhina, Diplotaxis erucoides and Sinapis species. Plant Breeding. 138 (DOI)-10. 1111/pbr. 12710. 7) Naresh, V., Singh, S.K., Watts, A., Kumar, P., Kumar, V., Sambasiva Rao, K. R. S., Bhat, S. R. 2016. Mutations in the mitochondrial orf108 render Moricandia arvensis restorer ineffective in restoring male fertility to Brassica oxyrrhina-based cytoplasmic male sterile line of B. juncea. Mol. Breeding. 36: 67 8) Ogura, H. 1968. Studies on the new male-sterility in Japanese radish, with special reference to the utilization of this sterility towards the practical raising of hybrid seeds. Mem. Fac. Agric. Kagoshima Univ. 6: 39-78. 9) Park, J. K., Lee, Y., Lee, J., Choi, B., Kim, S., Yang, T. 2013. Complete mitochondrial genome sequence and identification of a candidate gene responsible for cytoplasmic male sterility in radish (Raphanus sativus L.) containing DCGMS cytoplasm. Theor. Appl. Genet. 126: 1763-1774. 10)Prakash, S., Chopra, V. L. 1990. Male sterility caused by cytoplasm of Brassica oxyrrhina in B. campestris and B. juncea. Theor. Appl. Genet. 79: 285-287. 11)Yamagishi, H., 1998. Distribution and allelism of restorer genes for Ogura cytoplasmic male sterility in wild and cultivated radishes. Genes & Genetic Systems. 73: 79-83. 12).2017. 核と細胞質のゲノム情報を活用した新しいバイオ技術の開発. 京都産業大学先端科学技術研究所所報.16: 73-81. 13)Yamagishi, H., Bhat, S. R. 2014. Cytoplasmic male sterility in Brassicaceae crops. Breed. Sci.64: 38-47. 14), 田中義行, 椎葉栞, 橋本絢子, 福永明日美, 寺地徹.2018. クロダイコンの細胞質による雄性不稔の誘起. 育種学研究.20( 別 2): 38. 15), 寺地徹.2017. 黒ダイコンは DCGMS 細胞質の orf463 を持つ. 育種学研究.19( 別 2): 82. 16)Yamagishi, H., Terachi, T. 2017. Cytoplasmic male sterility and mitochondrial genome variations in radish. In. Nishio, T., Kitashiba, H. (eds). The Radish Genome: 93-108. (Springer International Publishing) 17)Yamagishi, H., Tanaka, Y., Shiiba, S., Hashimoto, A., Fukunaga, A., Terachi, T. 2019. Mitochondrial orf463 causing male sterility in radish is possessed by cultivars belonging to the Niger group. Euphytica 215: 109. 18)Yasumoto, K., Matsumoto, Y., Terachi, T., Yamagishi, H., Restricted distribution of orf687 as the pollen fertility restorer gene for Ogura male sterility in Japanese wild radish. Breed. Sci. 58: 177-182. 19)Yasumoto, K., Terachi, T., Yamagishi, H. 2009. A novel Rf gene controlling fertility restoration of Ogura male sterility by RNA processing of orf138 found in Japanese wild radish and its STS markers. Genome 52: 495-504. 20)Wang, Z. W., Wang, C. D., Cai, Q. Z., Mei, S. Y., Gao, L., Zhou, Y., Wang, T. 2017. Identification of

10 promoter exchange at a male fertility restorer locus for cytoplasmic male sterility in radish (Raphanus sativus L.). Mol. Breeding. 37: 82-87. ( 参考資料 ) 植物ゲノム科学研究センターにおける平成 30 年度の研究発表 1. 論文雑誌 Mucin-type glycosylation as a regulatory factor of amyloid precursor protein processing Naosuke Nakamura, and Akira Kurosaka J. Biochem. 2019 Mar 1; 165(3): 205-208 Multichromosomal structure of the onion mitochondrial genome and a transcript analysis Mai Tsujimura, Takakazu Kaneko, Tomoaki Sakamoto, Seisuke Kimura, Masayoshi Shigyo, Hiroshi Yamagishi, and Toru Terachi Mitochondrion. Accept (30-May-2018) In press Complete mitochondrial genome sequence of Brassica oxyrrhina and comparative analysis of the region containing orf108, a male sterility gene for mustard (Brassica juncea), among B. oxyrrhina, Diplotaxis erucoides and Sinapis species Akihito Mukai, Megumi Jikuya, Mai Tsujimura, Toru Terachi and Hiroshi Yamagishi Plant Breeding. 138 (DOI)-10. 1111/pbr. 12710. 2. 図書 Cytoplasmic Genome. In: The Allium Genomes. Mai Tsujimura and Toru Terachi 2018: 89-98 edited by M. Shigyo, A. Khar and M. Abdelrahman. Springer International Publishing, Cham. 3. 学会発表 児玉慧太, 辻村真衣, 橋本絢子, 高橋亮, 齊藤猛雄, : 花粉稔性回復遺伝子を持つナスにおける PPR タンパク質遺伝子の発現. 日本育種学会第 134 回講演会, 岡山市, 2018.9.22-23

11 児島和志, 植村香織, 中元海里, 寺地徹 : 葉緑体形質転換ベクターに自律複製能を付与 する 葉緑体 DNA 断片の探索. 日本育種学会第 134 回講演会, 岡山市,2018.9.22-23 田中惠美, 寺地徹, 村井耕二 : 花成遅延を誘発する細胞質置換コムギ系統において春化 で発現上昇する新規ミトコンドリア遺伝子の探索. 日本育種学会第 134 回講演会, 岡山市, 2018.9.22-23 植村香織, 高見常明, 加藤裕介, 坂本亘, 寺地徹 : 分割された葉緑体ゲノムを持つ葉 緑体形質転換タバコの特徴づけと転写 翻訳物の解析. 日本育種学会第 134 回講演会, 岡 山市,2018.9.22-23, 田中義行, 椎葉栞, 橋本絢子, 福永明日美, 寺地徹 : クロダイコンの細胞質 による雄性不稔の誘起. 日本育種学会第 134 回講演会, 岡山市,2018.9.22-23 山下健太, 辻村真衣, 上ノ山華織, 木村成介, 寺地徹 : 表現型が異なる Aegilops mutica 細胞質置換コムギ 2 系統の葉緑体ゲノムの比較解析. 日本育種学会第 134 回講演 会, 岡山市,2018.9.22-23 中村直介, 辻本優季, 中山喜明, 小西守周, 黒坂光 : 脊椎動物特異的ポリペプチド GalNAc 転移酵素遺伝子を二重に欠失した変異体の表現型解析. 第 41 回日本分子生物学会 年会, 横浜,2018.11.28 Kaori Uemura, Toru Terachi:Characterization of transplastomic tobacco plants generated by a new transformation vector that is autonomously replicable in the chloroplast. International Symposium on Photosynthesis and Chloroplast Biogenesis, 倉敷, 2018.11.8

12 Complex relationships between male sterile cytoplasms and fertility restorer genes in Brassicaceae plants. Hiroshi YAMAGISHI Abstract In Brassicaceae crops, F 1 hybrid varieties produced by utilization of cytoplasmic male sterility have been distributed worldwide. The most widely used male sterile cytoplasm is that of Ogura. But recently other types of male sterile cytoplasm were discovered and studied in detail. The examples of the newly found male sterile cytoplasms are DCGMS cytoplasm and the cytoplasms of wild species that contain orf108 in their mitochondrial genomes. It has been clarified by the recent studies that the relationships between the male sterile cytoplasms and their fertility restorer genes are unexpectedly complicated. In this article, studies of the relationships are reviewed, being focused on orf138 of Ogura, orf463 of DCGMS, and orf108. Keywords: Brassicaceae plants, Cytoplasmic male sterility, Fertility restorer gene, F 1 breeding, Mitochondrial genome