Microsoft Word - kanri-text.doc

Similar documents
<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6


は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

Microsoft Word )40期決算公開用.doc


Q IFRSの特徴について教えてください

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

<4D F736F F F696E74202D2082C882E982D982C DD8ED88EE688F882CC82B582AD82DD C668DDA9770>

Microsoft Word sozei-sample1.doc

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt


定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

(参考資料)国際会計基準(IFRS)の2012年3月期からの任意適用について

 

法 人 等 に 対 する 課 税 際 課 税 原 則 の 帰 属 主 義 への 見 直 しのポイント 総 合 主 義 から 帰 属 主 義 への 移 行 法 人 及 び 非 居 住 者 ( 法 人 等 )に 対 する 課 税 原 則 について 従 来 のいわゆる 総 合 主 義 を 改 め OECD

第316回取締役会議案

企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について③・資本連結実務指針(その2)

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一


32 農事組合法人法人用パンフ_24.2一部改正)

第4回税制調査会 総4-1

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

1 ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 の 事 業 税 の 課 税 について ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 は 収 入 金 額 を 課 税 標 準 として 収 入 割 の 申 告 となります ( 法 72 条 の2 72 条 の 12 第 2 号 ) ガス 供 給 業 とその 他 の 事

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

<95BD90AC E93788C888E5A82CC8A FEE95F18CF68A4A97702E786C73>


Microsoft Word ETF・日経400ベア決算短信.doc

連結計算書

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

平成24年度 業務概況書

<4D F736F F D2091E F18CB48D C481698E7B90DD8F9590AC89DB816A2E646F63>

(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

スライド 1

第1章 財務諸表

1_2013BS(0414)

< F2D E633368D86816A89EF8C768E9696B18EE688B5>

第1章 財務諸表

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

PowerPoint プレゼンテーション

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

養 老 保 険 の 減 額 払 済 保 険 への 変 更 1. 設 例 会 社 が 役 員 を 被 保 険 者 とし 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 のいずれも 会 社 を 受 取 人 とする 養 老 保 険 に 加 入 してい る 場 合 を 解 説 します 資 金 繰 りの 都

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

Microsoft Word - 19年度(行個)答申第94号.doc

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

科 売 上 原 価 売 上 総 利 益 損 益 計 算 書 ( 自 平 成 26 年 4 月 1 日 至 平 成 27 年 3 月 31 日 ) 目 売 上 高 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 営 業 利 益 営 業 外 収 益 受 取 保 険 金 受 取 支 援 金 補 助 金 収 入 保


第1章 財務諸表

TOBに 応 じた 株 主 の 会 計 税 務 処 理 1.みなし 配 当 の 課 税 関 係 上 場 会 社 が 株 式 公 開 買 付 で 自 己 株 式 を 取 得 する 場 合 は 市 場 取 引 で 取 得 するケースと 相 違 して 原 則 として 株 主 にみなし 配 当 課 税 と

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

スライド 1

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

スライド 1

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

Speed突破!Premium問題集 基本書サンプル

Microsoft Word - ①AMC決算公告(大会社).doc

募集新株予約権(有償ストック・オプション)の発行に関するお知らせ

損 益 計 算 書 ( 平 成 25 年 10 月 1 日 から 平 成 26 年 9 月 30 日 まで) ( 単 位 : 千 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 304,971 営 業 費 用 566,243 営 業 総 損 失 261,271 営 業 外 収 益 受 取 利 息 3,545

事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 事 業 税 は 都 道 府 県 が 所 得 ( 利 益 )に 対 して 課 税 します 1. 個 人 事 業 税 業 種 区 分 税 率 ( 標 準 税 率 ) 第 1 種 事 業 ( 物 品 販 売 業 製 造 業 金 銭 貸 付 業 飲 食 店 業 不 動

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

<4D F736F F D DE096B EF8C7689F E836A E836D815B E C A2E646F63>

平成22年度

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

<重要な会計方針及び注記>

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

6-1 第 6 章 ストック オプション 会 計 設 例 1 基 本 的 処 理 Check! 1. 費 用 の 計 上 ( 1 年 度 ) 2. 費 用 の 計 上 ( 2 年 度 )- 権 利 不 確 定 による 失 効 見 積 数 の 変 動 - 3. 費 用 の 計 上 ( 3 年 度 )-

(1) 貸 借 対 照 表 ( 平 成 26 年 11 月 30 日 現 在 ) ( 単 位 : 千 円 ) 資 産 の 部 負 債 の 部 科 目 金 額 科 目 金 額 流 動 資 産 4,623,985 流 動 負 債 3,859,994 現 金 及 び 預 金 31,763 支 払 手 形

第 41 期

<4D F736F F D E91E6318E6C94BC8AFA925A904D D838A815B8BA693AF8E9497BF2E646F63>

Taro13-01_表紙目次.jtd

連 結 損 益 計 算 書 売 上 高 及 びその 他 の 営 業 収 入 営 業 費 用 売 上 原 価 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 研 究 開 発 費 営 業 費 用 合 計 営 業 利 益 営 業 外 収 益 ( 費 用 ) 受 取 利 息 支 払 利 息 営 業 外 収 益 (

第1章 簿記の一巡

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

Microsoft Word - 通達(参考).doc

第2回 制度設計専門会合 事務局提出資料

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

目 次 貸 借 対 照 表 1 損 益 計 算 書 2 キャッシュ フロー 計 算 書 3 利 益 の 処 分 に 関 する 書 類 4 国 立 大 学 法 人 等 業 務 実 施 コスト 計 算 書 5 注 記 事 項 6 附 属 明 細 書 別 紙

文化政策情報システムの運用等

< E95FB8CF689638AE98BC689FC90B390A CC8CA992BC82B582C982C282A282C E90E096BE8E9E8E9197BF2E786477>

(Microsoft Word - 02 \215s\220\ \214o\214\261\216\322\203C\203x\203\223\203g\201i\226\257\226@\201j.doc)

(2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 該 当 事 項 はありません (3) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 作 成 に 係 る 会 計 処 理 の 原 則 手 続 表 示 方 法 等 の 変 更 当

1. 前 払 式 支 払 手 段 サーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 に 関 する 利 用 者 保 護 等 発 行 者 があらかじめ 利 用 者 から 資 金 を 受 け 取 り 財 サービスを 受 ける 際 の 支 払 手 段 として 前 払 式 支 払 手 段 が 発 行 される 場 合

(別紙3)保険会社向けの総合的な監督指針の一部を改正する(案)

「経営者保証に関するガイドライン」に基づく保証債務の整理に係る課税関係の整理

第一部【証券情報】

目 次 ルール1 決 算 書 には2 人 の 主 役 がいる! (1) 貸 借 対 照 表 (BS) P4 (2) 損 益 計 算 書 (PL) P5 ルール2 BSには3つの 家 と6つの 部 屋! (1)BSの3つの 家 と6つの 部 屋 P6 (2) 資 産 ( 流 動 資 産 固 定 資 産

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

添 付 資 料 の 目 次 1.サマリー 情 報 (その 他 )に 関 する 事 項... 2 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動... 2 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用.


Microsoft Word 消費税HP(案)

PowerPoint プレゼンテーション

< 現 在 の 我 が 国 D&O 保 険 の 基 本 的 な 設 計 (イメージ)> < 一 般 的 な 補 償 の 範 囲 の 概 要 > 請 求 の 形 態 会 社 の 役 員 会 社 による 請 求 に 対 する 損 免 責 事 由 の 場 合 に 害 賠 償 請 求 は 補 償 されず(

< DD8ED891CE8FC6955C2E786C73>

4 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 若 しくはその 委 任 を 受 けた 者 又 は 監 査 委 員 の 監 査 に 応 じなければ ならない ( 状 況 報 告 ) 第 7 条 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 が 必 要 と 認 めるときは 交 付 金 事 業 の 遂 行 の

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 23 年 4 月 1 日 至 平 成 24 年 3 月 31 日 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 包 括 信 用 購 入 あっせん 収 益 13,520,219 融 資 収 益 4,434,360 受 託 収 益 1,234,189 キャッシュプリカ 収 益

Transcription:

第 2 節 事 業 部 の 業 績 評 価 1. 業 績 評 価 の 対 象 (A) 事 業 部 の 業 績 評 価 には, 事 業 部 長 の 業 績 評 価 と 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 があり, 両 者 を 区 別 する 点 に 注 意 す ること 評 価 対 象 業 績 比 較 方 法 業 績 評 価 の 概 念 事 業 部 長 事 業 部 長 が, 事 業 部 ごとに 設 定 された 予 算 をどの 程 度 達 成 できたかで 評 価 する 管 理 可 能 性 を 重 視 する 事 業 部 自 体 事 業 部 が, 他 事 業 部 や 他 企 業 と 比 較 して,どれほど 全 社 業 績 の 向 上 に 貢 献 したかで 評 価 する 追 跡 可 能 性 を 重 視 する 2. 投 資 利 益 率 (ROI)と 残 余 利 益 (RI) (A) 投 資 センターとしての 事 業 部 には, 包 括 的 な 意 思 決 定 権 限 が 委 譲 されている ここで, 投 資 額 を 大 きくす れば 利 益 額 が 大 きくなるのは 当 然 であり, 投 資 額 を 無 視 した 利 益 額 の 業 績 評 価 尺 度 では 不 十 分 である 投 資 額 を 考 慮 した 業 績 評 価 尺 度 としては, 投 資 利 益 率 (ROI)と 残 余 利 益 (RI)がある (1) 投 資 利 益 率 (Return On Investment:ROI ROI) 1 計 算 式 投 資 利 益 率 = 利 益 投 資 額 100 2 メリットとデメリット メリット デメリット 売 上 高 利 益 率 資 本 回 転 率 に 分 解 することで 原 因 分 析 が 可 能 収 益 性 を%で 示 すので, 企 業 内 部 における 他 の 事 業 部 や 外 部 の 他 企 業 とも 規 模 に 関 係 なく 比 較 できる 事 業 部 長 の 行 動 が 利 益 額 の 増 大 よりも 利 益 率 の 増 大 に 向 かう 全 社 的 な 利 害 に 反 してしまう 恐 れがある (= 事 業 部 の 利 益 率 の 増 大 がかえって 全 社 利 益 を 減 少 させる) (2) 残 余 利 益 (Residual Income:RI RI) 1 計 算 式 残 余 利 益 = 利 益 - 投 資 額 資 本 コスト 率 - 361 -

2 メリットとデメリット メリット 背 後 にある 投 資 額 を 考 慮 しつつ, 利 益 額 の 増 大 といった 全 社 的 利 益 との 整 合 性 も 保 てる デメリット 利 益 額 で 評 価 するため, 規 模 の 異 なる 事 業 部 間 の 比 較 が 困 難 である 3. 事 業 部 長 の 業 績 評 価 (A) (1) 事 業 部 長 の 業 績 評 価 尺 度 事 業 部 長 の 業 績 評 価 は, 事 業 部 長 の 目 標 整 合 性 を 確 保 するための 動 機 付 けを 目 的 として 行 われる そして, 事 業 部 長 を 適 切 に 動 機 付 けるためには 管 理 可 能 な 尺 度 を 用 いることが 重 要 である そのため, 投 資 センター としての 事 業 部 長 の 業 績 評 価 指 標 の 計 算 には, 管 理 可 能 利 益 と 管 理 可 能 投 資 額 を 用 いるのが 適 切 である 1 管 理 可 能 投 下 資 本 利 益 率 (Return On Investment:ROI ROI) 管 理 可 能 投 下 資 本 利 益 率 = 管 理 可 能 利 益 管 理 可 能 投 資 額 100 2 管 理 可 能 残 余 利 益 (Residual Income:RI RI) 管 理 可 能 残 余 利 益 = 管 理 可 能 利 益 - 管 理 可 能 投 資 額 資 本 コスト 率 (2) ROIかRI RIか 事 業 部 長 の 業 績 は, 予 算 と 実 績 を 比 較 し, 事 業 部 長 が 予 算 をどの 程 度 達 成 できたかで 評 価 する この 際 に, 事 業 部 長 の 業 績 評 価 指 標 をROIによって 評 価 すると, 事 業 部 長 はROIの 増 大 に 関 心 が 向 いてしまい, 全 社 的 利 害 に 反 する 行 動 ( 部 分 最 適 化 )を 誘 発 するおそれがある よって, 事 業 部 長 の 業 績 評 価 指 標 としては RIのほうが 優 れているといえる - 362 -

具 体 例 現 状 新 規 投 資 案 合 計 利 益 100 万 円 50 万 円 150 万 円 投 資 額 500 万 円 400 万 円 900 万 円 ROI 20% 12.5% 16.7% RI 50 万 円 10 万 円 60 万 円 資 本 コスト 率 10%で 計 算 している 上 記 の 新 規 投 資 案 は, 資 本 コストを 回 収 して, 全 社 的 な 業 績 向 上 に 貢 献 する 投 資 案 である しかし, 事 業 部 長 の 業 績 評 価 指 標 にROIを 用 いる 場 合,ROIが 悪 化 するため, 事 業 部 長 は 新 規 投 資 案 は 採 用 せず, 全 社 的 な 意 思 決 定 と 反 する 行 動 をする 一 方, 事 業 部 長 の 業 績 評 価 指 標 にRIを 用 いる 場 合,RIが 増 加 するため, 事 業 部 長 は 新 規 投 資 案 を 採 用 し, 全 社 的 な 意 思 決 定 と 整 合 的 な 行 動 となる 4. 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 (A) (1) 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 尺 度 事 業 部 の 業 績 評 価 は,トップマネジメント トップマネジメントに 対 して 意 思 決 定 に 役 立 つ 事 業 部 の 収 益 性 情 報 を 提 供 するため に 行 われる そして, 事 業 部 の 収 益 性 を 正 確 に 把 握 するためには, 追 跡 可 能 性 が 重 要 である そのため, 投 資 センターとしての 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 指 標 の 計 算 には, 事 業 部 利 益 と 事 業 部 投 資 額 を 用 いるのが 適 切 で ある 1 投 下 資 本 利 益 率 (Return On Investment:ROI ROI) 事 業 部 投 下 資 本 利 益 率 = 事 業 部 利 益 事 業 部 投 資 額 100 2 残 余 利 益 (Residual Income:RI RI) 事 業 部 残 余 利 益 = 事 業 部 利 益 - 事 業 部 投 資 額 資 本 コスト 率 (2) ROIかRI RIか 事 業 部 自 体 の 業 績 は, 当 該 事 業 部 が 他 事 業 部 や 他 企 業 と 比 較 して,どれほど 全 社 業 績 の 向 上 に 貢 献 したか で 評 価 する この 際 に, 事 業 部 長 の 業 績 評 価 を 行 うわけではないから, 部 分 最 適 化 行 動 のおそれを 考 慮 する 必 要 性 はなく,むしろ 投 資 規 模 の 相 違 に 関 係 なく 比 較 することができるかが 重 要 である よって, 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 指 標 としてはROIのほうが 優 れているといえる - 363 -

<まとめ まとめ> 比 較 事 項 事 業 部 長 の 業 績 評 価 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 業 績 評 価 の 目 的 事 業 部 長 の 目 標 整 合 性 を 確 保 するた めの 動 機 付 け トップマネジメントの 意 思 決 定 に 役 立 つ 事 業 部 の 収 益 性 情 報 の 提 供 業 績 評 価 の 概 念 管 理 可 能 性 追 跡 可 能 性 業 績 比 較 方 法 予 算 と 実 績 の 比 較 他 事 業 部 や 他 企 業 との 比 較 ( ) 業 績 評 価 指 標 ROI: 部 分 最 適 化 のおそれ 有 り R I: 部 分 最 適 化 のおそれ 無 し ROI: 比 較 が 容 易 R I: 比 較 が 困 難 目 標 投 下 資 本 利 益 率 や 全 社 的 資 本 コスト 率 と 比 較 することもある 補 足 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 においても 残 余 利 益 (RI RI)を 用 いるべきとする 見 解 (B) 投 下 資 本 利 益 率 (ROI)による 評 価 は, 資 本 コスト 率 に 影 響 を 受 けないが, 残 余 利 益 (RI)による 評 価 は 資 本 コスト 率 に 影 響 を 受 ける よって, 資 本 コストのレベルに 応 じた 評 価 が 可 能 となるため, 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 においても 残 余 利 益 (RI)を 用 いるべきといわれる 補 足 多 角 化 企 業 における 業 績 評 価 に 全 社 的 な 加 重 平 均 資 本 コスト 率 を 適 用 する 問 題 点 (B) リスクレベルの 異 なる 事 業 部 の 業 績 評 価 に, 全 社 的 な 加 重 平 均 資 本 コスト 率 を 一 律 に 適 用 すると,リスク レベルの 相 違 を 無 視 した 誤 った 意 思 決 定 を 行 ってしまうという 問 題 がある すなわち,リスクレベルが 異 な る 事 業 部 では, 対 面 業 界 のリスクを 考 慮 した 場 合, 当 然 に 資 本 コスト 率 が 異 なるものであるが, 全 社 的 な 加 重 平 均 資 本 コスト 率 が 切 捨 率 として 機 能 するため, 本 来 投 資 すべきでない 案 を 採 用 してしまったり, 本 来 投 資 すべき 案 を 棄 却 してしまったりする 補 足 複 数 業 績 基 準 (C) ROIやRIといった 財 務 指 標 による 単 一 の 業 績 基 準 によって 評 価 する 場 合, 事 業 部 長 が 短 期 的 に 自 らの 業 績 をよく 見 せようとする 近 視 眼 的 行 動 を 誘 発 する 可 能 性 がある これを 排 除 するためには,BSCを 導 入 し, 財 務 の 視 点 以 外 の 視 点 でも 評 価 する 複 数 業 績 基 準 によるべきともいわれる 参 考 実 務 でのROI ROIの 利 用 企 業 実 務 においては, 事 業 部 長 の 業 績 評 価 指 標 としてROIを 用 いることが 多 い その 理 由 は 以 下 のとお りである 1 残 余 利 益 と 比 較 してROIの 方 が 資 本 コストを 必 要 とせず, 計 算 が 容 易 である 2 ROIが 投 資 決 定 の 基 準 だけでなく, 事 業 部 長 が 与 えられた 資 本 をどれだけ 有 効 に 運 用 したかを 示 す 業 績 測 定 値 として 機 能 する 3 実 際 の 投 資 決 定 が 事 業 部 で 行 われることはあまり 多 くない - 364 -

例 題 2 事 業 部 の 業 績 評 価 1 重 要 度 A 難 易 度 A 以 下 の 資 料 に 基 づき, 各 問 に 答 えなさい 1. 甲 事 業 部 の 損 益 計 算 書 ( 単 位 : 円 ) 2. 甲 事 業 部 の 総 投 資 額 :2,000,000 円 ( 内,576,000 円 は 甲 事 業 部 長 にとって 管 理 不 能 である ) 3. 資 本 コスト 率 は 10%である 問 1 事 業 部 長 の 業 績 評 価 指 標 として 適 切 なROIとRIを 求 めなさい 問 2 事 業 部 自 体 の 業 績 評 価 指 標 として 適 切 なROIとRIを 求 めなさい 解 答 解 説 問 1 (1) 管 理 可 能 投 下 資 本 利 益 率 (ROI) 管 理 可 能 投 資 額 :2,000,000 円 -576,000 円 =1,424,000 円 管 理 可 能 投 下 資 本 利 益 率 :356,000 円 1,424,000 円 =25% (2) 管 理 可 能 残 余 利 益 (RI) 356,000 円 -1,424,000 円 10%=213,600 円 問 2 (1) 事 業 部 投 下 資 本 利 益 率 (ROI) 260,000 円 2,000,000 円 =13% (2) 事 業 部 残 余 利 益 (RI) 260,000 円 -2,000,000 円 10%=60,000 円 - 365 -

5. 本 社 費 共 通 費 の 配 賦 (A) (1) 本 社 費 共 通 費 の 配 賦 の 是 非 伝 統 的 な 管 理 会 計 理 論 においては, 以 下 の 理 由 により, 事 業 部 に 本 社 費 共 通 費 を 配 賦 するべきではない とされてきた 配 賦 すべき でない 理 由 1 本 社 費 共 通 費 は 事 業 部 長 にとって 管 理 不 能 である 2 事 業 部 にとって 追 跡 不 能 であり, 配 賦 計 算 に 恣 意 性 が 介 入 するおそれがある しかし, 実 務 においては 本 社 費 共 通 費 を 事 業 部 に 配 賦 するのが 一 般 的 である その 理 由 は 以 下 のとおり である 配 賦 すべき とする 理 由 1 独 立 の 会 社 に 近 づけることができ, 同 業 他 社 との 業 績 比 較 を 可 能 にする 2 本 社 費 に 関 して 事 業 部 から 牽 制 が 働 き,これらの 支 出 が 抑 制 される 3 事 業 部 長 に 対 し, 本 社 費 も 回 収 しなければならないコストであると 認 識 させる ただし, 本 社 費 等 を 配 賦 する 場 合 であっても, 本 社 費 等 の 配 賦 によって 各 事 業 部 や 事 業 部 長 の 責 任 が 不 明 確 になることや, 業 績 評 価 に 曖 昧 さや 不 公 正 さが 混 入 することは 避 けなければならない そのためには, 本 社 費 等 を 費 目 ごとあるいは 同 質 的 な 費 目 群 ごとに 細 かく 配 賦 する 等 の 活 動 基 準 原 価 計 算 (ABC ABC)の 思 考 を 導 入 し,より 正 確 に 本 社 費 等 を 各 事 業 部 に 帰 属 させることが 合 理 的 な 利 益 管 理 を 遂 行 する 上 で 重 要 となる (2) 本 社 費 共 通 費 の 配 賦 方 法 本 社 費 共 通 費 の 配 賦 方 法 としては, 一 括 配 賦 法 と 個 別 配 賦 法 が 考 えられる 方 法 内 容 計 算 の 合 理 性 一 括 配 賦 法 本 社 費 等 を 一 括 して, 売 上 高 や 従 業 員 数 などの 単 一 の 基 準 で 配 賦 す る 方 法 低 い 個 別 配 賦 法 本 社 費 等 を 費 目 ごとあるいは 同 質 的 な 費 目 群 ごとに 細 かく 配 賦 す る 方 法 高 い 参 考 実 務 における 本 社 費 の 配 賦 方 法 ABCの 利 用 等 によって, 本 社 費 共 通 費 をより 高 い 精 度 で 配 賦 すれば, 配 賦 額 はより 合 理 的 となる し かし, 規 模 が 小 さく 収 益 性 の 低 い 事 業 部 にもサービスの 利 用 に 応 じた 費 用 が 集 計 されてしまい, 当 該 事 業 部 の 負 担 が 大 きくなってしまう そのため, 合 理 性 を 追 求 するよりも, 政 策 的 な 配 慮 によって 売 上 高 や 利 益 額 といった 負 担 能 力 によって 配 賦 することがある 例 題 3 事 業 部 の 業 績 評 価 2 重 要 度 A 難 易 度 A 当 社 は 事 業 部 制 を 採 用 しており, 事 業 部 Xと 事 業 部 Yを 有 している 事 業 部 Xでは 製 品 Aを, 事 業 部 Yで は 製 品 Bの 製 造 販 売 を 行 っている 以 下 の 資 料 に 基 づき, 各 問 に 答 えなさい なお, 計 算 上 端 数 が 生 じた 場 合 には 金 額 の 場 合 は 円 未 満 を,%の 場 合 には 小 数 点 以 下 第 2 位 を 四 捨 五 入 すること - 366 -

1. 各 製 品 に 関 する 資 料 製 品 A 製 品 B 単 位 当 たり 販 売 価 格 2,000 円 / 個 1,000 円 / 個 単 位 当 たり 変 動 製 造 原 価 600 円 / 個 400 円 / 個 単 位 当 たり 変 動 販 売 費 100 円 / 個 100 円 / 個 販 売 数 量 4,000 個 6,000 個 2. 固 定 費 に 関 する 資 料 (1) 製 品 Aの 個 別 固 定 費 が, 製 造 原 価 2,000,000 円, 販 管 費 1,000,000 円 発 生 する (2) 製 品 Bの 個 別 固 定 費 が, 製 造 原 価 1,000,000 円, 販 管 費 500,000 円 発 生 する (3) 事 業 部 XとYに 共 通 して, 固 定 製 造 原 価 が 1,500,000 円, 販 管 費 が 1,792,000 円 発 生 する (4) 共 通 固 定 費 は, 製 造 原 価 については 販 売 数 量 で, 販 管 費 については 売 上 高 に 基 づき 各 事 業 部 に 配 賦 す ることとする (5) 個 別 固 定 費 は, 製 造 原 価 では 80%が, 販 管 費 では 60%が 各 事 業 部 長 にとって 管 理 可 能 である 3.その 他 のデータ (1) 各 事 業 部 の 投 下 資 本 は 事 業 部 Xが 20,000,000 円, 事 業 部 Yでは 12,000,000 円 であり,このうち 70% が 各 事 業 部 長 にとって 管 理 可 能 である (2) 当 社 の 資 本 コストは 10%である (3) 法 人 税 については 無 視 してよい 問 1 事 業 部 別 損 益 計 算 書 を 作 成 しなさい ただし, 限 界 利 益, 管 理 可 能 営 業 利 益, 事 業 部 貢 献 利 益, 事 業 部 純 利 益 の4つの 利 益 概 念 を 含 めること ここでいう 事 業 部 純 利 益 とは 共 通 費 配 賦 後 の 利 益 である 問 2 各 事 業 部 についてROI, 及 びRIを 求 めなさい ここでいうROIとは 事 業 部 長 の 管 理 可 能 性 に 即 した 投 資 利 益 率 であり,RIとは 事 業 部 への 追 跡 可 能 性 に 即 した 残 余 利 益 である 問 3 問 1では 事 業 部 Yについて 事 業 部 純 利 益 がマイナスとなっているが, 事 業 部 Yを 廃 止 するべきか 否 か, 答 えなさい 解 答 解 説 問 1 事 業 部 X 事 業 部 Y 合 計 Ⅰ 売 上 高 8,000,000 6,000,000 14,000,000 Ⅱ 変 動 製 造 原 価 2,400,000 2,400,000 4,800,000 変 動 製 造 マージン 5,600,000 3,600,000 9,200,000 Ⅲ 変 動 販 売 費 400,000 600,000 1,000,000 限 界 利 益 5,200,000 3,000,000 8,200,000 Ⅳ 管 理 可 能 個 別 固 定 費 2,200,000 1,100,000 3,300,000 管 理 可 能 営 業 利 益 3,000,000 1,900,000 4,900,000 Ⅴ 管 理 不 能 個 別 固 定 費 800,000 400,000 1,200,000 事 業 部 貢 献 利 益 2,200,000 1,500,000 3,700,000 Ⅵ 共 通 固 定 費 1,624,000 1,668,000 3,292,000 事 業 部 純 利 益 576,000-168,000 408,000-367 -

(1) 管 理 可 能 個 別 固 定 費 事 業 部 X:2,000,000 円 80%+1,000,000 円 60%=2,200,000 円 事 業 部 Y:1,000,000 円 80%+500,000 円 60%=1,100,000 円 (2) 管 理 不 能 個 別 固 定 費 事 業 部 X:2,000,000 円 (1-80%)+1,000,000 円 (1-60%)=800,000 円 事 業 部 Y:1,000,000 円 (1-80%)+500,000 円 (1-60%)=400,000 円 (3) 共 通 固 定 費 配 賦 額 1 共 通 製 造 固 定 費 事 業 部 X:1,500,000 円 (4,000 個 +6,000 個 ) 4,000 個 =600,000 円 事 業 部 Y:1,500,000 円 (4,000 個 +6,000 個 ) 6,000 個 =900,000 円 2 共 通 販 管 費 事 業 部 X:1,792,000 円 (8,000,000 円 +6,000,000 円 ) 8,000,000 円 =1,024,000 円 事 業 部 Y:1,792,000 円 (8,000,000 円 +6,000,000 円 ) 6,000,000 円 =768,000 円 3 合 計 事 業 部 X:600,000 円 +1,024,000 円 =1,624,000 円 事 業 部 Y:900,000 円 +768,000 円 =1,668,000 円 問 2 (1) 管 理 可 能 投 資 額 事 業 部 X:20,000,000 円 70%=14,000,000 円 事 業 部 Y:12,000,000 円 70%=8,400,000 円 (2) ROI( 管 理 可 能 投 下 資 本 利 益 率 ) 事 業 部 X:3,000,000 円 14,000,000 円 21.43% 事 業 部 Y:1,900,000 円 8,400,000 円 22.62% (3) RI( 残 余 利 益 ) 事 業 部 X:2,200,000 円 -20,000,000 円 10%=200,000 円 事 業 部 Y:1,500,000 円 -12,000,000 円 10%=300,000 円 問 3 残 余 利 益 がプラスであり, 全 社 的 利 益 の 獲 得 に 貢 献 しているため, 当 該 事 業 部 を 廃 止 するべきではない 別 解 事 業 部 貢 献 利 益 がプラスであり, 全 社 的 利 益 の 獲 得 に 貢 献 しているため, 当 該 事 業 部 を 廃 止 するべきでな い 本 問 においては 資 本 コスト 率 と 投 資 額 が 与 えられており, 事 業 部 を 投 資 センターとして 事 業 部 を 評 価 する ことが 求 められていると 解 釈 できる しかし, 資 本 コスト 率 や 投 資 額 が 与 えられておらず, 事 業 部 を 利 益 センターとして 評 価 するのであれば, 事 業 部 Yについては, 事 業 部 貢 献 利 益 がプラスである 以 上, 共 通 固 定 費 を 回 収 して 全 社 的 利 益 を 獲 得 するた めに 貢 献 していると 考 えられるため, 別 解 のような 記 述 も 考 えられる なお,どちらの 解 答 で 記 述 するべきかは, 事 業 部 をどのような 責 任 センターとして 捉 えているかで 判 断 す ること - 368 -

第 3 節 内 部 振 替 価 格 1. 内 部 振 替 価 格 の 意 義 設 定 目 的 (A) (1) 意 義 各 事 業 部 の 活 動 は 完 全 に 独 立 しているわけではなく, 相 互 に 依 存 関 係 にあり,ある 事 業 部 間 で 振 替 取 引 が 行 われることがある この 際 に, 供 給 事 業 部 から 受 入 事 業 部 へ 引 き 渡 す 価 格 を 内 部 振 替 価 格 という (2) 設 定 目 的 内 部 振 替 価 格 の 設 定 目 的 は 以 下 の2つである 業 績 評 価 意 思 決 定 内 部 振 替 価 格 は, 供 給 事 業 部 では 売 上 高 となり, 受 入 事 業 部 では 仕 入 原 価 となり, それぞれ 事 業 部 利 益 の 計 算 を 構 成 するため, 利 益 センターとしての 各 事 業 部 の 業 績 を 適 切 に 評 価 するために 内 部 振 替 価 格 が 必 要 となる 振 替 品 に 関 する 各 事 業 部 ( 特 に 受 入 事 業 部 )の 意 思 決 定 が, 全 社 的 な 意 思 決 定 と 矛 盾 しないように, 計 算 価 格 としての 内 部 振 替 価 格 が 必 要 となる 2. 内 部 振 替 価 格 の 種 類 (A) (1) 決 定 基 準 内 部 振 替 価 格 の 決 定 基 準 は, 大 きく 分 けて 市 価 基 準 と 原 価 基 準 に 分 けることができ,それぞれについて 様 々な 種 類 がある 決 定 基 準 内 部 振 替 価 格 市 価 基 準 単 純 市 価 基 準 市 価 市 価 差 引 基 準 市 価 - 内 部 振 替 では 不 要 となる 販 売 諸 経 費 全 部 原 価 基 準 単 位 当 たり 総 原 価 単 一 全 部 原 価 加 算 基 準 単 位 当 たり 総 原 価 + 利 益 原 価 基 準 価 格 基 準 差 額 原 価 基 準 単 位 当 たり 差 額 原 価 差 額 原 価 加 算 基 準 単 位 当 たり 差 額 原 価 + 利 益 二 重 価 格 基 準 両 事 業 部 で 異 なる 振 替 価 格 を 適 用 する 差 額 原 価 基 準 は, 変 動 費 基 準 や 限 界 原 価 基 準 とも 呼 ばれる 原 価 加 算 基 準 は 協 定 価 格 基 準 とも 呼 ばれる - 369 -

(2) 設 定 目 的 と 決 定 基 準 の 関 係 内 部 振 替 価 格 の 設 定 目 的 と 望 ましい 決 定 基 準 の 関 係 をまとめると 以 下 のようになる 決 定 基 準 業 績 評 価 遊 休 生 産 能 力 無 し 意 思 決 定 遊 休 生 産 能 力 有 り 市 価 基 準 差 額 原 価 基 準 全 部 原 価 基 準 差 額 原 価 加 算 基 準 全 部 原 価 加 算 基 準 二 重 価 格 基 準 3. 市 価 基 準 の 適 用 (A) 市 価 基 準 は, 外 部 競 争 市 場 が 存 在 し,その 市 価 が 利 用 できる 場 合 には, 業 績 測 定 のためにも 意 思 決 定 のた めにも 最 良 の 振 替 価 格 であるといわれる (1) 業 績 評 価 の 観 点 市 価 基 準 によった 場 合, 内 部 振 替 をした 場 合 と 外 部 取 引 をした 場 合 で,どちらも 同 様 の 利 益 額 が 得 られる すなわち, 各 事 業 部 の 業 績 を 独 立 企 業 のように 評 価 できるのである (2) 意 思 決 定 の 観 点 市 価 基 準 が 意 思 決 定 に 役 立 つためには, 供 給 事 業 部 に 遊 休 生 産 能 力 がないことが 前 提 となる 遊 休 生 産 能 力 がない 場 合, 市 価 が 振 替 品 の 価 値 ( 機 会 原 価 )を 示 すためである 一 方, 遊 休 生 産 能 力 がある 場 合 には, 市 価 が 振 替 品 の 価 値 ( 機 会 原 価 )を 示 さず,この 場 合 には 差 額 原 価 基 準 が 適 切 な 基 準 となる - 370 -

具 体 例 供 給 事 業 部 に 遊 休 生 産 能 力 がない( 完 全 操 業 状 態 ) 場 合 1. 甲 事 業 部 では 部 品 Xを 生 産 能 力 の 限 界 まで 生 産 しており, 乙 事 業 部 にも 外 部 にも 販 売 することができる 部 品 X1 個 当 たりの 市 価 は@120 円 であり, 単 位 あたり 変 動 費 は@50 円 である 2. 乙 事 業 部 では 製 品 Yを 個 別 受 注 生 産 している 製 品 Yは 部 品 Xを 加 工 することで 生 産 される 部 品 Xを 製 品 Yにするための 単 位 当 たり 変 動 費 は@50 円 である 3. 現 在, 乙 事 業 部 には 製 品 Yの 追 加 注 文 が 入 ったところである < 製 品 Yの 追 加 注 文 の 販 売 価 格 が@140 円 である 場 合 > 甲 事 業 部 乙 事 業 部 ( 供 給 ) ( 受 入 ) 全 社 外 部 売 上 高 -@120 円 +@140 円 +@ 20 円 内 部 売 上 高 +@120 円 内 部 仕 入 高 +@120 円 変 動 費 +@ 50 円 +@ 50 円 利 益 ±0 円 -@ 30 円 -@ 30 円 意 思 決 定 追 加 注 文 を 受 注 した 場 合, 乙 事 業 部 は 損 失 を 被 ることから, 追 加 注 文 を 受 注 しないという 意 思 決 定 を 行 う これにより, 部 品 Xは 乙 事 業 部 に 振 り 替 えられずに 外 部 に 販 売 されることになる このように, 市 価 基 準 によれば, 市 価 が 部 品 Xの 価 値 を 適 切 に 示 し, 機 会 原 価 ( 外 部 に 販 売 した 場 合 )を 反 映 している ため, 全 社 的 に 望 ましい 意 思 決 定 を 行 うことができる < 製 品 Yの 追 加 注 文 の 販 売 価 格 が@200 円 である 場 合 > 甲 事 業 部 乙 事 業 部 ( 供 給 ) ( 受 入 ) 全 社 外 部 売 上 高 -@120 円 +@200 円 +@ 80 円 内 部 売 上 高 +@120 円 内 部 仕 入 高 +@120 円 変 動 費 +@ 50 円 +@ 50 円 利 益 ±0 円 +@ 30 円 +@ 30 円 意 思 決 定 追 加 注 文 を 受 注 した 場 合, 乙 事 業 部 は 利 益 を 得 ることから, 追 加 注 文 を 受 注 するという 意 思 決 定 を 行 う これにより, 部 品 Xは 外 部 販 売 されずに 乙 事 業 部 に 振 り 替 えられることになる このように, 市 価 基 準 によれば, 市 価 が 部 品 Xの 価 値 を 適 切 に 示 し, 機 会 原 価 ( 外 部 に 販 売 した 場 合 )を 反 映 しているため, 全 社 的 に 望 ましい 意 思 決 定 を 行 うことができる 業 績 評 価 各 事 業 部 の 業 績 は 独 立 の 会 社 と 同 様 に 評 価 されることになる - 371 -

具 体 例 供 給 事 業 部 に 遊 休 生 産 能 力 がある( 不 完 全 操 業 状 態 ) 場 合 1. 甲 事 業 部 では 部 品 Xを 生 産 しており, 乙 事 業 部 にも 外 部 にも 販 売 することができる 部 品 X1 個 当 たり の 市 価 は@120 円 であり, 単 位 あたり 変 動 費 は@50 円 である なお, 甲 事 業 部 には 十 分 な 遊 休 生 産 能 力 が ある 2. 乙 事 業 部 では 製 品 Yを 個 別 受 注 生 産 している 製 品 Yは 部 品 Xを 加 工 することで 生 産 される 部 品 Xを 製 品 Yにするための 単 位 当 たり 変 動 費 は@50 円 である 3. 現 在, 乙 事 業 部 には 製 品 Yを@140 円 で 購 入 したいとの 追 加 注 文 が 入 ったところである < 部 品 Xを 市 価 で 振 り 替 える 場 合 > 甲 事 業 部 乙 事 業 部 ( 供 給 ) ( 受 入 ) 全 社 外 部 売 上 高 +@140 円 +@140 円 内 部 売 上 高 +@120 円 内 部 仕 入 高 +@120 円 変 動 費 +@ 50 円 +@ 50 円 +@100 円 利 益 +@ 70 円 -@ 30 円 +@ 40 円 意 思 決 定 追 加 注 文 を 受 注 した 場 合, 乙 事 業 部 は 損 失 を 被 ることから, 追 加 注 文 を 受 注 しないという 意 思 決 定 を 行 う これにより, 部 品 Xはそもそも 追 加 で 生 産 されないことになる しかし, 全 社 的 には 利 益 が 増 加 する 取 引 であり, 遊 休 生 産 能 力 がある 場 合 には, 市 価 が 部 品 Xの 価 値 を 適 切 に 示 さず, 全 社 的 に 望 まし い 意 思 決 定 を 行 うことができない この 場 合, 部 品 Xの 価 値 を 適 切 に 示 すのは 差 額 原 価 である 補 足 市 価 基 準 の 前 提 条 件 (C) 市 価 基 準 が 有 効 に 機 能 するためには, 各 事 業 部 が 取 引 相 手 を 自 由 に 選 べる 忌 避 権 を 有 している 必 要 がある また, 市 価 の 決 定 について 関 係 事 業 部 の 納 得 を 得 る 必 要 もある - 372 -

例 題 4 内 部 振 替 価 格 ~ 市 価 基 準 ~ 重 要 度 A 難 易 度 B 当 社 では,2つの 事 業 部 ( 事 業 部 P, 事 業 部 Q)を 用 いて, 製 品 xの 製 造 販 売 を 行 っている 事 業 部 Pで は, 部 品 xを 製 造 しており,これを 外 部 販 売 するか,もしくは 事 業 部 Qに 販 売 している 事 業 部 Qでは, 事 業 部 Pで 製 造 した 部 品 xを 振 り 替 え 製 品 xを 製 造 している よって, 以 下 の 資 料 に 基 づき, 各 問 に 答 えなさ い 1. 事 業 部 Pおよび 部 品 xに 関 する 資 料 (1) 部 品 xの 変 動 製 造 原 価 は 1,000 円 / 個 である (2) 固 定 製 造 原 価 が 3,000,000 円 発 生 している なお, 当 期 の 基 準 操 業 度 は 部 品 x10,000 個 である (3) 部 品 xの 販 売 には 100 円 / 個 の 変 動 販 売 費 が 発 生 する なお, 内 部 振 替 取 引 をする 際 にも 変 動 販 売 費 は 発 生 するものとする また, 固 定 販 管 費 が 1,500,000 円 発 生 している (4) 部 品 xの 市 場 価 格 は 2,000 円 / 個 である (5) 事 業 部 Pの 生 産 能 力 は 部 品 x10,000 個 である 2. 事 業 部 Qおよび 製 品 xに 関 する 資 料 (1) 製 品 x1 個 を 製 造 するには, 部 品 x2 個 を 必 要 とする (2) 部 品 xを 除 く, 製 品 xの 変 動 製 造 原 価 は 2,500 円 / 個 である (3) 固 定 製 造 原 価 が 4,800,000 円 発 生 している (4) 製 品 xの 販 売 には200 円 / 個 の 変 動 販 売 費 が 発 生 する また, 固 定 販 管 費 が1,200,000 円 発 生 している (5) 製 品 xの 販 売 数 量 は 3,000 個 である (6) 製 品 xの 市 場 価 格 は 10,000 円 / 個 である (7) 事 業 部 Qの 生 産 能 力 は 製 品 x5,000 個 である 問 1 内 部 振 替 価 格 を 市 価 基 準 によって 設 定 する 場 合, 両 事 業 部 の 営 業 利 益 を 算 定 しなさい 問 2 仮 に, 変 動 販 売 費 が 内 部 振 替 取 引 の 際 には 生 じない 場 合, 市 価 差 引 基 準 によって 両 事 業 部 の 営 業 利 益 を 算 定 しなさい 問 3 上 記 資 料 に 加 え,A 社 から 製 品 xを 8,000 円 / 個 で 2,000 個 購 入 したい という 申 し 出 がある 場 合 に,これを 受 けた 場 合 の 各 事 業 部 の 利 益 増 加 額 および 全 社 的 な 利 益 増 加 額 を 計 算 しなさい ただし, 変 動 販 売 費 はA 社 に 対 しても 200 円 / 個 発 生 する なお, 内 部 振 替 価 格 は 市 価 基 準 を 用 いることとする 解 答 解 説 問 1 事 業 部 別 P/L( 単 位 : 円 ) 事 業 部 P 事 業 部 Q 合 計 外 部 売 上 高 8,000,000 30,000,000 38,000,000 内 部 売 上 高 12,000,000 内 部 仕 入 高 12,000,000 変 動 費 11,000,000 8,100,000 19,100,000 限 界 利 益 9,000,000 9,900,000 18,900,000 固 定 費 4,500,000 6,000,000 10,500,000 営 業 利 益 4,500,000 3,900,000 8,400,000-373 -

(1) 各 事 業 部 の 外 部 内 部 販 売 数 量 について 内 部 販 売 外 部 販 売 事 業 部 P 部 品 6,000 個 部 品 4,000 個 事 業 部 Q 製 品 3,000 個 (2) 事 業 部 P 1 外 部 売 上 高 :@2,000 円 / 個 4,000 個 =8,000,000 円 2 内 部 売 上 高 :@2,000 円 / 個 6,000 個 =12,000,000 円 3 変 動 費 :(@1,000 円 / 個 +@100 円 / 個 ) 10,000 個 =11,000,000 円 4 固 定 費 :3,000,000 円 +1,500,000 円 =4,500,000 円 (3) 事 業 部 Q 1 外 部 売 上 高 :@10,000 円 / 個 3,000 個 =30,000,000 円 2 変 動 費 :(@2,500 円 / 個 +@200 円 / 個 ) 3,000 個 =8,100,000 円 3 固 定 費 :4,800,000 円 +1,200,000 円 =6,000,000 円 問 2 事 業 部 別 P/L( 単 位 : 円 ) 事 業 部 P 事 業 部 Q 合 計 外 部 売 上 高 8,000,000 30,000,000 38,000,000 内 部 売 上 高 11,400,000 内 部 仕 入 高 11,400,000 変 動 費 10,400,000 8,100,000 18,500,000 限 界 利 益 9,000,000 10,500,000 19,500,000 固 定 費 4,500,000 6,000,000 10,500,000 営 業 利 益 4,500,000 4,500,000 9,000,000 (1) 事 業 部 P 1 内 部 売 上 高 :(@2,000 円 / 個 -@100 円 / 個 )6,000 個 =11,400,000 円 2 変 動 費 :(@1,000 円 / 個 +@100 円 / 個 ) 4,000 個 +@1,000 円 / 個 6,000 個 =10,400,000 円 (3) 事 業 部 Q 1 外 部 売 上 高 :@10,000 円 / 個 3,000 個 =30,000,000 円 2 変 動 費 :(@2,500 円 / 個 +@200 円 / 個 ) 3,000 個 =8,100,000 円 3 固 定 費 :4,800,000 円 +1,200,000 円 =6,000,000 円 問 3 増 分 P/L( 単 位 : 円 ) 事 業 部 P 事 業 部 Q 合 計 外 部 売 上 高 -8,000,000 +16,000,000 +8,000,000 内 部 売 上 高 +8,000,000 内 部 仕 入 高 +8,000,000 変 動 費 ±0 +5,400,000 +5,400,000 限 界 利 益 ±0 +2,600,000 +2,600,000 (1) 各 事 業 部 の 外 部 内 部 販 売 数 量 について 内 部 販 売 外 部 販 売 事 業 部 P +4,000 個 -4,000 個 事 業 部 Q +2,000 個 (A 社 ) - 374 -

(2) 事 業 部 P 1 外 部 売 上 高 の 減 少 額 :@2,000 円 / 個 4,000 個 =8,000,000 円 2 内 部 売 上 高 の 増 加 額 :@2,000 円 / 個 4,000 個 =8,000,000 円 (3) 事 業 部 Q 1 外 部 売 上 高 の 増 加 額 :@8,000 円 / 個 2,000 個 =16,000,000 円 2 変 動 費 の 増 加 額 :(@2,500 円 / 個 +@200 円 / 個 ) 2,000 個 =5,400,000 円 4. 原 価 基 準 の 適 用 (A) 内 部 振 替 価 格 は 市 価 基 準 によるのが 望 ましい しかし, 以 下 の 理 由 により 原 価 基 準 を 用 いる 場 合 も 考 えら れる 1 供 給 事 業 部 に 遊 休 生 産 能 力 がある 2 市 価 が 入 手 できない,ないし 市 価 を 入 手 するのにコストがかかりすぎる 具 体 例 供 給 事 業 部 に 遊 休 生 産 能 力 がある( 不 完 全 操 業 状 態 ) 場 合 1. 甲 事 業 部 では 部 品 Xを 生 産 しており, 乙 事 業 部 にも 外 部 にも 販 売 することができる 部 品 X 単 位 あたり 標 準 変 動 費 は@50 円, 単 位 当 たり 標 準 固 定 費 は@50 円 である なお, 甲 事 業 部 には 十 分 な 遊 休 生 産 能 力 がある 2. 乙 事 業 部 では 製 品 Yを 個 別 受 注 生 産 している 製 品 Yは 部 品 Xを 加 工 することで 生 産 される 部 品 Xを 製 品 Yにするための 単 位 当 たり 変 動 費 は@50 円 である 3. 現 在, 乙 事 業 部 には 製 品 Yを@140 円 で 購 入 したいとの 追 加 注 文 が 入 ったところである < 部 品 Xを 差 額 原 価 で 振 り 替 える 場 合 > 甲 事 業 部 乙 事 業 部 ( 供 給 ) ( 受 入 ) 全 社 外 部 売 上 高 +@140 円 +@140 円 内 部 売 上 高 +@ 50 円 内 部 仕 入 高 +@ 50 円 変 動 費 +@ 50 円 +@ 50 円 +@100 円 貢 献 利 益 ±0 円 +@ 40 円 +@ 40 円 意 思 決 定 追 加 注 文 を 受 注 した 場 合, 乙 事 業 部 は 利 益 を 得 ることから, 追 加 注 文 を 受 注 するという 意 思 決 定 を 行 う これにより, 部 品 Xは 乙 事 業 部 に 振 り 替 えられることになる このように, 遊 休 生 産 能 力 がある 場 合 には, 差 額 原 価 が 部 品 Xの 価 値 を 適 切 に 示 しているため, 全 社 的 に 望 ましい 意 思 決 定 を 行 うことがで きる 業 績 評 価 供 給 事 業 部 の 貢 献 利 益 がゼロとなり, 追 加 注 文 により 生 じる 利 益 はすべて 乙 事 業 部 に 帰 属 してしま う - 375 -

< 部 品 Xを 全 部 原 価 で 振 り 替 える 場 合 > 甲 事 業 部 乙 事 業 部 ( 供 給 ) ( 受 入 ) 全 社 外 部 売 上 高 +@140 円 +@140 円 内 部 売 上 高 +@100 円 内 部 仕 入 高 +@100 円 変 動 費 +@ 50 円 +@ 50 円 +@100 円 固 定 費 +@ 50 円 利 益 ±0 円 -@ 10 円 +@ 40 円 操 業 度 が 増 加 しても 全 社 的 に 固 定 費 は 増 加 しない 意 思 決 定 追 加 注 文 を 受 注 した 場 合, 乙 事 業 部 は 損 失 を 被 ることから, 追 加 注 文 を 受 注 しないという 意 思 決 定 を 行 う これにより, 部 品 Xはそもそも 生 産 されないことになる しかし, 全 社 的 には 利 益 が 増 加 する 取 引 であり, 全 部 原 価 基 準 によった 場 合, 意 思 決 定 を 誤 ってしまう 可 能 性 がある 業 績 評 価 供 給 事 業 部 の 利 益 がゼロとなり, 甲 事 業 部 は 単 なる 原 価 センターとしての 存 在 になってしまう < 部 品 Xを 差 額 原 価 加 算 基 準 で 振 り 替 える 場 合 > 甲 事 業 部 乙 事 業 部 ( 供 給 ) ( 受 入 ) 全 社 外 部 売 上 高 +@140 円 +@140 円 内 部 売 上 高 +@ 70 円 内 部 仕 入 高 +@ 70 円 変 動 費 +@ 50 円 +@ 50 円 +@100 円 貢 献 利 益 +@ 20 円 +@ 20 円 +@ 40 円 全 社 的 な 利 益 の 増 加 額 を 変 動 費 を 基 準 に 各 事 業 部 に 配 分 している 業 績 評 価 両 事 業 部 に 利 益 が 生 じ, 利 益 センターとして 評 価 が 可 能 となる 補 足 原 価 基 準 において, 実 際 原 価 と 標 準 原 価 のどちらを 用 いるべきか (B) 実 際 原 価 を 用 いる 場 合, 受 入 事 業 部 において 管 理 不 能 な 供 給 事 業 部 の 不 能 率 等 が, 受 入 事 業 部 の 業 績 に 混 入 してしまう よって, 一 般 的 には 標 準 原 価 を 用 いるべきであるといわれる 補 足 原 価 基 準 において, 標 準 原 価 を 用 いることにより 生 じる 問 題 (C) 標 準 原 価 を 用 いる 場 合, 供 給 事 業 部 の 予 算 生 産 量 を 実 際 生 産 量 が 下 回 れば 不 利 な 操 業 度 差 異 が 発 生 する 当 該 操 業 度 差 異 は 供 給 事 業 部 の 実 際 営 業 利 益 にマイナスの 影 響 を 与 えるが, 実 際 生 産 量 が 予 定 生 産 量 を 下 回 る 主 たる 原 因 は 受 入 事 業 部 にあることが 多 く, 操 業 度 差 異 を 受 入 事 業 部 に 配 分 する 等 の 工 夫 が 必 要 となる - 376 -

例 題 5 内 部 振 替 価 格 ~ 原 価 基 準 ~ 重 要 度 A 難 易 度 A 当 社 では,2つの 事 業 部 ( 事 業 部 P, 事 業 部 Q)を 用 いて, 製 品 xの 製 造 販 売 を 行 っている 事 業 部 Pで は, 部 品 xを 製 造 しており,これを 事 業 部 Qに 販 売 している 事 業 部 Qでは, 事 業 部 Pで 製 造 した 部 品 xを 振 り 替 え 製 品 xを 製 造 している よって, 以 下 の 資 料 に 基 づき, 各 問 に 答 えなさい 1. 事 業 部 Pおよび 部 品 xに 関 する 資 料 (1) 部 品 xの 標 準 変 動 製 造 原 価 は 1,000 円 / 個, 標 準 固 定 製 造 原 価 は 500 円 / 個 である (2) 事 業 部 Pの 生 産 能 力 は 部 品 x10,000 個 である 当 期 の 基 準 操 業 度 は 部 品 x6,000 個 である 2. 事 業 部 Qおよび 製 品 xに 関 する 資 料 (1) 製 品 x1 個 を 製 造 するには, 部 品 x2 個 を 必 要 とする (2) 部 品 xを 除 く, 製 品 xの 標 準 変 動 製 造 原 価 は 2,500 円 / 個 である (3) 固 定 製 造 原 価 が 4,800,000 円 発 生 している (4) 製 品 xの 販 売 には200 円 / 個 の 変 動 販 売 費 が 発 生 する また, 固 定 販 管 費 が1,200,000 円 発 生 している (5) 製 品 xの 販 売 数 量 は 3,000 個 である (6) 製 品 xの 市 場 価 格 は 10,000 円 / 個 である (7) 事 業 部 Qの 生 産 能 力 は 製 品 x5,000 個 である 問 1 内 部 振 替 価 格 を 差 額 原 価 基 準 によって 設 定 する 場 合, 両 事 業 部 の 営 業 利 益 を 算 定 しなさい 問 2 内 部 振 替 価 格 を 全 部 原 価 基 準 によって 設 定 する 場 合, 両 事 業 部 の 営 業 利 益 を 算 定 しなさい 問 3 上 記 資 料 に 加 え,A 社 から 製 品 xを 6,000 円 / 個 で 2,000 個 購 入 したい という 申 し 出 がある 場 合 に,これを 受 けた 場 合 の 各 事 業 部 の 利 益 増 加 額 および 全 社 的 な 利 益 増 加 額 を 計 算 しなさい ただし, 変 動 販 売 費 はA 社 に 対 しても@200 円 / 個 発 生 する なお, 内 部 振 替 価 格 は 差 額 原 価 基 準 を 用 いることとす る 解 答 解 説 問 1 事 業 部 別 P/L( 単 位 : 円 ) 事 業 部 P 事 業 部 Q 合 計 外 部 売 上 高 30,000,000 30,000,000 内 部 売 上 高 6,000,000 内 部 仕 入 高 6,000,000 変 動 費 6,000,000 8,100,000 14,100,000 限 界 利 益 0 15,900,000 15,900,000 固 定 費 3,000,000 6,000,000 9,000,000 営 業 利 益 -3,000,000 9,900,000 6,900,000 (1) 各 事 業 部 の 外 部 内 部 販 売 数 量 について 内 部 販 売 外 部 販 売 事 業 部 P 部 品 6,000 個 事 業 部 Q 製 品 3,000 個 (2) 事 業 部 P 1 内 部 売 上 高 :@1,000 円 / 個 6,000 個 =6,000,000 円 - 377 -

2 変 動 費 :@1,000 円 / 個 6,000 個 =6,000,000 円 3 固 定 費 :@500 円 / 個 6,000 個 =3,000,000 円 (3) 事 業 部 Q 1 外 部 売 上 高 :@10,000 円 / 個 3,000 個 =30,000,000 円 2 変 動 費 :(@2,500 円 / 個 +@200 円 / 個 ) 3,000 個 =8,100,000 円 3 固 定 費 :4,800,000 円 +1,200,000 円 =6,000,000 円 問 2 事 業 部 別 P/L( 単 位 : 円 ) 事 業 部 P 事 業 部 Q 合 計 外 部 売 上 高 30,000,000 30,000,000 内 部 売 上 高 9,000,000 内 部 仕 入 高 9,000,000 変 動 費 6,000,000 8,100,000 14,100,000 限 界 利 益 3,000,000 12,900,000 15,900,000 固 定 費 3,000,000 6,000,000 9,000,000 営 業 利 益 0 6,900,000 6,900,000 (1) 事 業 部 P 1 内 部 売 上 高 :(@1,000 円 / 個 +@500 円 / 個 ) 6,000 個 =9,000,000 円 2 変 動 費 :@1,000 円 / 個 6,000 個 =6,000,000 円 3 固 定 費 :@500 円 / 個 6,000 個 =3,000,000 円 (3) 事 業 部 Q 1 外 部 売 上 高 :@10,000 円 / 個 3,000 個 =30,000,000 円 2 変 動 費 :(@2,500 円 / 個 +@200 円 / 個 ) 3,000 個 =8,100,000 円 3 固 定 費 :4,800,000 円 +1,200,000 円 =6,000,000 円 問 3 増 分 P/L( 単 位 : 円 ) 事 業 部 P 事 業 部 Q 合 計 外 部 売 上 高 +12,000,000 +12,000,000 内 部 売 上 高 +4,000,000 内 部 仕 入 高 + 4,000,000 変 動 費 +4,000,000 + 5,400,000 + 9,400,000 限 界 利 益 0 + 2,600,000 + 2,600,000 (1) 各 事 業 部 の 外 部 内 部 販 売 数 量 について 内 部 販 売 外 部 販 売 事 業 部 P +4,000 個 事 業 部 Q +2,000 個 (2) 事 業 部 P 1 内 部 売 上 高 の 増 加 額 :@1,000 円 / 個 4,000 個 =4,000,000 円 2 変 動 費 の 増 加 額 :@1,000 円 / 個 4,000 個 =4,000,000 円 (3) 事 業 部 Q 1 外 部 売 上 高 の 増 加 額 :@6,000 円 / 個 2,000 個 =12,000,000 円 2 変 動 費 の 増 加 額 :(@2,500 円 / 個 +@200 円 / 個 ) 2,000 個 =5,400,000 円 - 378 -

5. 二 重 価 格 基 準 の 適 用 (C) 供 給 事 業 部 では, 業 績 評 価 目 的 で 差 額 原 価 加 算 基 準 により 振 替 価 格 を 決 定 し, 受 入 事 業 部 では 意 思 決 定 目 的 で 差 額 原 価 基 準 で 受 入 れる 方 法 である この 方 法 は,1 内 部 利 益 を 除 去 しないと 全 社 的 利 益 が 計 算 されない 2 事 業 部 の 利 益 が 大 きく 表 示 され るので 事 業 部 長 の 利 益 に 対 する 動 機 付 けが 働 かない,という 欠 点 がある 6. 内 部 振 替 価 格 と 各 事 業 部 制 の 関 係 (C) (1) 製 品 別 事 業 部 制 ( 部 品 の 供 給 事 業 部, 最 終 製 品 の 販 売 事 業 部 等 ) 製 品 別 事 業 部 制 の 場 合, 通 常 は 市 場 価 格 が 存 在 するため 市 価 基 準 が 適 用 可 能 である ただし, 場 合 によっ ては 原 価 基 準 が 適 用 される (2) 職 能 別 事 業 部 制 ( 製 造 部 門, 販 売 部 門 ) 職 能 別 事 業 部 制 においては, 通 常, 製 造 部 門 などは 市 場 価 格 が 存 在 せず, 原 価 基 準 によらざるを 得 ない しかし, 以 下 のような 目 的 から 製 造 部 門 をプロフィット プロフィット センター センターとして 評 価 することがあり,この 場 合 には 原 価 加 算 基 準 に 基 づく 合 成 市 価 による 必 要 がある 1 職 能 的 に 専 門 化 した 製 造 事 業 部 長 に, 企 業 活 動 の 主 目 的 は 利 益 獲 得 であることを 認 識 させる 2 製 造 事 業 部 にも 販 売 事 業 部 と 同 様 に 利 益 獲 得 に 貢 献 している 以 上, 利 益 貢 献 度 をもって 評 価 する のが 適 正 な 評 価 となる 7. 内 部 振 替 価 格 の 決 定 方 式 (C) 内 部 振 替 価 格 の 決 定 方 式 には 以 下 の2つが 考 えられる 方 式 内 容 備 考 本 部 ( 本 社 )が 中 央 集 権 的 に 内 部 振 替 価 格 を 決 全 社 的 な 整 合 性 確 保 や 外 部 本 部 決 定 方 式 定 する 市 場 が 存 在 しない 場 合 に 有 効 全 体 最 適 のためには 本 部 に 分 権 的 交 渉 方 式 各 事 業 部 間 で 交 渉 して 振 替 価 格 を 決 定 する よる 調 整 が 必 要 な 場 合 もあり - 379 -

第 4 節 日 本 における 事 業 部 制 の 特 徴 1. 我 が 国 における 事 業 部 制 の 展 開 (C) 我 が 国 の 事 業 部 制 は 本 社 のコントロールが 強 く, 各 事 業 部 にあまり 権 限 を 委 譲 しておらず, 実 質 的 に 利 益 センターとして 位 置 づけられていた そこで, 投 資 額 についても 責 任 を 持 たせる 制 度 として, 社 内 金 利 制 度 や 社 内 資 本 金 制 度 が 考 案 された その 後, 株 主 重 視 の 経 営 というアメリカン スタンダードの 流 入 によって, カンパニー 制 や 純 粋 持 株 会 社 といった 組 織 形 態 を 導 入 するに 至 っている 事 業 部 制 の 種 類 特 徴 作 成 される 財 務 諸 表 事 業 部 制 利 益 センター 事 業 部 P/L (1) 社 内 金 利 制 度 金 利 を 課 している 金 利 を 控 除 した 残 余 利 益 方 式 の 事 業 部 P/L (2) 社 内 資 本 金 制 度 金 利, 配 当 金, 税 金 の 支 払 い (1)+B/S (3) カンパニー 制 複 数 の 事 業 部 を 統 合 (2)+C/F (4) 純 粋 持 株 会 社 会 社 外 部 公 表 用 財 務 諸 表 (1) 社 内 金 利 制 度 (A) 事 業 部 で 使 われた 資 本 に 対 する 金 利 意 識 を 植 えつけるため, 使 用 した 資 本 に 対 して 一 定 の 利 子 ( 社 内 金 利 ) を 課 し,この 社 内 金 利 を 事 業 部 利 益 から 控 除 した 額 をもって 業 績 評 価 の 基 準 とする 制 度 である 補 足 1 通 常, 資 本 については 本 部 で 一 括 調 達 し, 各 事 業 部 の 要 求 に 応 じて 配 分 する 2 金 利 節 約 意 識 を 高 めるとともに, 事 業 部 における 資 本 の 効 率 的 運 用 を 促 進 する 3 残 余 利 益 方 式 の 損 益 計 算 書 の 作 成 (2) 社 内 資 本 金 制 度 (A) 資 本 金 を 設 定 し, 社 内 金 利 を 課 すだけでなく, 本 社 への 配 当 や 税 金 の 支 払 いも 行 う また, 利 益 留 保 も 認 め,より 独 立 会 社 に 擬 制 して 運 営 することを 狙 った 制 度 である 補 足 1 利 益 留 保 を 認 めることで, 累 積 損 益 情 報 を 明 示 させ, 長 期 利 益 責 任 を 持 たせている 2 残 余 利 益 方 式 の 損 益 計 算 書 の 作 成 のみならず, 事 業 部 ごとに 貸 借 対 照 表 も 作 成 - 380 -

(3) カンパニー 制 (B) 企 業 内 に 製 品 別 あるいは 顧 客 別 といった 特 定 の 市 場 に 対 する 大 幅 な 権 限 責 任 を 有 する 独 立 性 の 高 い 事 業 単 位 (カンパニー)を 設 ける 制 度 である 補 足 1 複 数 の 事 業 部 を 統 合 して, 集 約 的 な 部 門 を 設 置 2 内 部 的 な 分 社 化 (4) 純 粋 持 株 会 社 (B) 自 らは 事 業 を 営 まずに, 他 の 会 社 を 支 配 するためにその 会 社 の 株 式 を 保 有 することのみを 目 的 とする 会 社 である カンパニー 制 との 違 いは, 複 数 の 事 業 部 を 統 合 する 組 織 が, 擬 似 会 社 か 法 的 に 認 められた 会 社 かの 違 いとなる - 381 -

2.その 他 の 組 織 単 位 (B) (1) SBU( 戦 略 的 事 業 単 位 ) ある 事 業 についての 戦 略 策 定 の 権 限 を 委 譲 された 組 織 単 位 であり, 全 社 的 な 資 源 配 分 を 重 複 することなく 行 うことを 目 的 とするもの 具 体 的 には, 単 一 の 事 業 部 あるいは 複 数 の 事 業 部,さらには 事 業 部 内 の 単 一 の 製 品 あるいは 複 数 の 製 品 に 対 して 設 定 し, 業 績 評 価 よりも 計 画 時 の 資 源 配 分 に 利 用 されるものである (2) ミニ プロフィット プロフィット センター センター(Micro Profit Center:MPC MPC) 1 意 義 小 集 団 活 動 をベースに, 各 組 織 単 位 をプロフィット プロフィット センター センターとして 管 理 しようとする 制 度 である 小 さいもので 数 名 程 度 のユニットやグループが 対 象 とされるが,QCサークル 等 とは 異 なり, 公 式 的 な 組 織 ( 事 業 部, 部, 課, 係, 班 など)を 対 象 としている なお, 代 表 的 なものに,ラインカンパニー 制 やアメーバ 組 織 がある 2 目 的 MPCの 長 には, 損 益 に 対 する 責 任 を 負 わせるとともに,それに 応 じた 権 限 が 与 えられ, 知 恵 を 絞 り 工 夫 を 重 ねていくことが 求 められる これにより, 組 織 全 体 の 学 習 能 力 を 高 めることができる 3 ラインカンパニー 制 従 来,コスト センターとして 位 置 づけられていた 工 場 内 の 製 造 ラインをプロフィット プロフィット センター センターとみ なして 事 業 運 営 を 行 う 方 法 である ラインカンパニーの 責 任 者 に 対 して,コストだけでなく 利 益 獲 得 につ いても 動 機 付 けることができる また, 各 工 程 の 内 部 を 製 品 別 に 再 編 成 することで, 工 程 間 のコンフリク トも 防 ぐことができる - 382 -

4 アメーバ 組 織 係 や 班 に 相 当 する 平 均 10 名 の 組 織 をアメーバと 呼 ばれる 独 立 採 算 のプロフィット プロフィット センター センターとする アメーバは 他 のアメーバと 取 引 するだけでなく, 社 外 の 企 業 とも 取 引 をするため, 市 場 情 報 を 取 り 込 みな がらあたかも 中 小 企 業 であるかのようにスピーディー スピーディーな 経 営 を 行 う なお,アメーバ 組 織 における 管 理 会 計 システムは, 会 計 知 識 のない 者 でも 簡 単 に 理 解 できる 時 間 当 たり 採 算 が 使 われている 補 足 時 間 当 たり 採 算 (C) 製 造 部 門 の 時 間 あたり 採 算 計 算 式 内 容 1 総 出 荷 = 社 外 出 荷 + 社 内 売 社 外 売 上 と 社 内 売 上 2 総 生 産 = 総 出 荷 - 社 内 買 1- 前 工 程 費 3 差 引 売 上 高 = 総 生 産 - 経 費 2- 自 工 程 費 4 時 間 当 たり 採 算 = 差 引 売 上 高 総 時 間 1h 当 たり 利 益 製 造 部 門 においては,モノの 流 れに 応 じて 費 用 や 収 益 が 計 算 される すなわち,アメーバ 内 に 他 のアメ ーバから 部 品 を 引 き 取 った 場 合 には, 引 き 取 った 時 点 で 費 用 が 計 上 される これにより,アメーバの 従 業 員 は 在 庫 圧 縮, 生 産 性, 品 質 といったトレードオフ 関 係 にある 複 数 の 要 素 の 最 適 化 を 目 指 すようになる 営 業 部 門 の 時 間 あたり 採 算 計 算 式 内 容 1 総 収 益 = 売 上 金 額 口 銭 率 手 数 料 収 入 2 差 引 収 益 = 総 収 益 - 経 費 利 益 3 差 引 収 益 総 時 間 1h 当 たり 利 益 営 業 部 門 は 手 数 料 収 入 を 稼 ぐのみという 考 え 方 から, 口 銭 率 を 使 用 している どちらの 計 算 方 式 によっても 経 費 が 差 し 引 かれている この 経 費 には 人 件 費 が 含 まれていないが, 時 間 あ たり 人 件 費 と 時 間 当 たり 採 算 を 比 較 することで, 自 部 門 が 人 件 費 以 上 の 成 果 を 上 げているか 評 価 できる - 383 -