平 成 20 年 度 特 許 庁 請 負 事 業 平 成 20 年 度 我 が 国 における 産 業 財 産 権 等 の 出 願 動 向 等 に 関 する 調 査 報 告 書 平 成 21 年 3 月 財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所
要 約 Ⅰ. 序 論 我 が 国 においては 国 際 競 争 力 を 強 化 し 経 済 を 活 性 化 するために 知 的 財 産 推 進 計 画 を 策 定 し 知 的 財 産 に 関 する 施 策 を 実 施 しているところである 企 業 においても 近 年 の 知 的 財 産 に 関 する 政 策 の 展 開 に 伴 い 自 らの 知 的 財 産 の 保 護 や 活 用 等 に 係 る 活 動 を 強 化 し つつある そして 我 が 国 の 知 的 財 産 に 関 する 政 策 を 企 画 立 案 していくにあたっては 統 計 的 な 分 析 に 基 づいた 共 通 認 識 を 持 って 議 論 を 深 めていくことが 重 要 だと 思 われる このような 状 況 を 踏 まえて 本 調 査 では 近 年 多 くの 業 界 において 活 発 に 行 われている 企 業 再 編 と 特 許 出 願 や 研 究 開 発 投 資 との 関 係 特 許 出 願 数 の 予 測 を 可 能 とするための 安 定 的 な 特 許 生 産 関 数 の 有 無 特 許 の 実 体 審 査 における 不 確 実 性 と 企 業 の 出 願 行 動 への 影 響 意 匠 権 と 企 業 価 値 との 関 係 特 許 の 利 用 構 造 と 研 究 開 発 の 収 益 性 プロパテント 制 度 改 正 とイノベーション パテントプレミアムの 計 測 といった 計 8 つの 実 証 分 析 を 行 った これ らの 調 査 は 従 来 十 分 な 分 析 が 行 われていないものであり 新 たな 分 析 対 象 やデータを 利 用 することによって より 深 い 議 論 の 可 能 性 を 見 出 しているといえる そして 今 後 のさ らなる 我 が 国 の 知 的 財 産 活 動 の 理 解 につながるものだと 考 えられる さらに これらの 分 析 にも 使 用 されており 知 的 財 産 活 動 を 調 査 する 我 が 国 唯 一 の 統 計 調 査 である 知 的 財 産 活 動 調 査 について 本 報 告 書 における 分 析 結 果 を 踏 まえつつ 一 層 のデータ 精 度 向 上 のため 全 体 推 計 手 法 や 業 種 分 類 の 見 直 しの 他 調 査 の 見 直 しも 検 討 した これらの 研 究 は 我 が 国 における 知 的 財 産 政 策 の 企 画 立 案 の 基 礎 資 料 として また 企 業 等 における 知 的 財 産 戦 略 策 定 の 基 礎 資 料 として 活 用 されることが 望 まれる さらに 本 調 査 では 知 的 財 産 活 動 調 査 の 全 体 推 計 手 法 業 種 区 分 調 査 票 の 見 直 しの 検 討 も 行 われ たが これにより データソースカバリッジと 推 計 の 精 度 が 向 上 し 今 後 の 研 究 の 信 頼 性 も 一 層 向 上 していくものと 期 待 される ( 長 岡 貞 男 ) Ⅱ. 我 が 国 企 業 の 知 的 財 産 活 動 に 関 する 分 析 1. 持 株 会 社 制 移 行 による 企 業 グループ 内 組 織 構 造 の 変 化 と 特 許 出 願 行 動 等 に 対 する 効 果 近 年 持 株 会 社 を 利 用 した 企 業 再 編 が 比 較 的 多 く 行 われている 1997 年 に 純 粋 持 株 会 社 ⅰ
が 独 禁 法 上 解 禁 になり 1999 年 に 商 法 改 正 とともに 株 式 交 換 制 度 と 株 式 移 転 制 度 が 導 入 2001 年 の 商 法 改 正 によって 会 社 分 割 制 度 が 導 入 2002 年 からは 連 結 納 税 制 度 も 導 入 された このような 純 粋 持 株 会 社 に 拘 わる 制 度 変 更 が 今 日 の 持 株 会 社 の 増 大 の 1 つの 背 景 にあると 考 えられる 本 章 では 持 株 会 社 制 移 行 といった 企 業 再 編 によって 企 業 グループ 全 体 として 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 がどのように 変 化 したのかを 明 らかにした 主 な 結 果 は 以 下 の 通 りである 第 1 に 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 事 業 活 動 の 多 くを 親 会 社 で ある 持 株 会 社 ではなく 子 会 社 関 連 会 社 である 事 業 会 社 に 移 管 していることが 確 認 され た 同 時 に 研 究 開 発 活 動 の 多 くも 親 会 社 である 持 株 会 社 ではなく 子 会 社 関 連 会 社 で ある 事 業 会 社 に 移 管 していることも 確 認 された 第 2 に 厳 密 な 計 量 分 析 の 結 果 によれば 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 請 求 項 数 が 多 いような 質 の 高 い 発 明 のみに 絞 って 特 許 を 出 願 する 傾 向 が 高 くなっていることが 明 らかと なった したがって 発 明 の 質 で 選 別 し 出 願 しているといった 点 で 企 業 グループ 全 体 とし ての 知 的 財 産 管 理 がより 効 率 的 になったことが 明 らかとなった また 持 株 会 社 制 に 移 行 することで 企 業 グループ 全 体 として 事 業 資 産 の 整 理 統 合 を 行 い 企 業 が 保 有 する 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めていることが 確 認 された したがって 企 業 が 保 有 する 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めるという 点 で 知 的 財 産 管 理 がより 効 率 的 になっていることが 示 唆 される ( 西 村 陽 一 郎 ) 2. 企 業 間 の 合 併 が 研 究 開 発 活 動 に 及 ぼす 影 響 医 薬 品 産 業 を 事 例 とする 分 析 本 章 では 医 薬 品 産 業 における 合 併 が 当 事 者 企 業 だけでなく 競 合 他 社 も 含 めた 産 業 全 体 の 研 究 開 発 活 動 にどのような 影 響 を 及 ぼすのかを 実 証 的 に 分 析 した 分 析 にあたり Jaffe (1986,1989) 流 の 技 術 距 離 計 測 方 法 を 援 用 し 薬 効 領 域 別 の 売 上 高 データを 用 いて 合 併 企 業 との 事 前 の 競 争 の 体 を 測 る 市 場 距 離 変 数 を 作 成 した 推 計 結 果 では 医 薬 品 産 業 で の 合 併 は 合 併 前 段 階 での 当 事 者 企 業 との 競 争 の 程 度 が 近 い 企 業 ほど 研 究 開 発 投 資 を 増 加 させる 効 果 があることが 明 らかとなった この 結 果 は 合 併 という 現 象 が 当 事 者 企 業 だ けでなく 市 場 距 離 の 近 い 競 合 他 社 の 研 究 開 発 投 資 の 意 志 決 定 にも 強 く 影 響 を 与 えている ことを 示 唆 している 合 併 が 行 われた 場 合 とかく 合 併 した 企 業 のみに 注 目 が 集 まり 競 合 他 社 の 動 向 が 顧 みられることは 少 ない 本 研 究 の 結 果 は 合 併 の 是 非 を 検 討 する 場 合 当 事 者 企 業 だけでなく 競 合 他 社 を 含 めたマーケット 全 体 の 動 向 に 注 目 することが 必 要 で あることを 示 唆 していると 言 える 他 方 で 本 研 究 の 結 果 は 先 行 研 究 の 問 題 点 を 指 摘 し ている 過 去 の 合 併 企 業 を 対 象 とした 研 究 では 暗 黙 のうちに 合 併 と 当 事 者 以 外 の 企 業 行 動 は 独 立 である すなわち 合 併 が 競 合 他 社 の 研 究 開 発 投 資 に 影 響 しないことが 仮 定 さ ⅱ
れてきた 本 章 の 結 果 は 少 なくとも 医 薬 品 産 業 においてそのような 仮 定 は 十 分 に 満 たさ れていないことを 示 唆 している ( 大 西 宏 一 郎 永 田 晃 也 ) 3. 特 許 出 願 行 動 及 び 審 査 請 求 行 動 の 分 析 特 許 出 願 数 の 予 測 が 可 能 となるためには 安 定 的 な 特 許 生 産 関 数 の 存 在 が 確 認 されなけ ればならない 多 くの 先 行 研 究 から 実 質 研 究 開 発 費 と 特 許 出 願 数 の 間 には 高 い 相 関 のあ ることが 知 られている しかし 研 究 開 発 費 と 特 許 出 願 数 は 単 純 な 対 応 関 係 にあるのでは なく 多 項 制 の 利 用 の 普 及 イノベーション ラグの 存 在 特 許 性 向 やイノベーション コストの 違 い 研 究 開 発 生 産 性 の 違 いなどが 撹 乱 要 因 となっている 可 能 性 がある そこで 日 本 の 主 要 企 業 101 社 のプーリングデータにより 特 許 生 産 関 数 を 推 計 した 結 果 特 許 出 願 数 と 実 質 研 究 開 発 費 には 安 定 的 な 関 係 が 見 出 されたが クレーム 加 重 特 許 出 願 数 は 研 究 開 発 生 産 性 の 影 響 を 強 く 受 けており 予 測 が 困 難 であることがわかった また 企 業 の 審 査 請 求 行 動 についても 分 析 を 行 った 企 業 の 発 明 の 中 には 十 分 に 時 間 が 経 過 しなければその 事 業 的 価 値 が 判 明 しないものが 相 当 数 存 在 する したがって 出 願 人 に 発 明 の 事 業 的 価 値 を 判 別 させるための 時 間 的 余 裕 を 与 える 審 査 請 求 制 度 は 審 査 コスト の 節 約 を 促 し 発 明 の 不 要 な 権 利 化 を 防 止 するというメリットを 持 っている ただし 審 査 請 求 期 限 が3 年 間 と 有 限 なので 事 業 的 価 値 が 判 明 しないまま 審 査 請 求 されている 特 許 が 存 在 し( 締 切 効 果 ) そのような 特 許 の 中 には 本 来 は 取 り 下 げられていたはずのものが 含 ま れているかもしれない( 過 剰 審 査 請 求 特 許 ) そこで このような 締 切 効 果 の 検 証 や 過 剰 審 査 請 求 特 許 の 推 計 を 行 った その 結 果 頑 健 な 締 切 効 果 が 確 認 され 特 許 出 願 の 21.6%が 過 剰 審 査 請 求 特 許 であることがわかった ( 山 田 節 夫 石 井 康 之 ) 4. 特 許 の 実 体 審 査 と 企 業 の 出 願 行 動 本 章 では 先 ず 特 許 審 査 の 不 確 実 性 の 源 泉 について 考 察 を 行 い それと 整 合 的 な 傾 向 が 見 られるかどうかを 確 認 した 先 ず 特 許 審 査 において 拒 絶 査 定 率 は 出 願 人 と 特 許 庁 の 間 の 公 知 文 献 のサーチ 能 力 や 特 許 性 の 判 断 の 差 が 大 きい 場 合 に 高 くなると 考 えられ こ れらが 大 きいと 考 えられるハイテクの 分 野 で 実 際 に 拒 絶 率 が 高 い 同 様 に 不 服 審 判 請 求 比 率 が 高 い 分 野 も ハイテクの 分 野 が 多 い 他 方 で 不 服 審 判 が 請 求 されたことを 条 件 にそれが 成 立 する 可 能 性 が 高 い 分 野 は 進 歩 性 などにかかる 特 許 庁 内 部 の 判 断 が 安 定 して ⅲ
おり 査 定 の 誤 りが 確 実 に 是 正 されやすい 分 野 であると 考 えられ ローテク 分 野 で 高 い 傾 向 にあることが 観 察 された 付 与 後 異 議 申 し 立 てや 無 効 審 判 は 特 許 権 の 行 使 が 比 較 的 に 行 い 易 い 分 野 で 特 許 庁 の 審 査 がより 困 難 な 分 野 でなされやすいと 考 えられる 現 実 にクロス ライセンスなどによ って 侵 害 訴 訟 が 回 避 されていると 考 えられる 分 野 では 無 効 審 判 比 率 は 低 い 傾 向 にあるこ とも 観 察 された 本 章 では また 拒 絶 査 定 率 不 服 審 判 請 求 成 立 率 及 び 無 効 審 判 請 求 成 立 率 の 時 間 的 な 動 向 を 分 析 した 両 者 の 時 間 的 な 変 化 には 全 体 としてもまた 個 別 技 術 分 野 別 にも 強 い 相 関 があり 1990 年 代 の 半 ば 以 降 審 査 段 階 で 特 許 される 水 準 が 高 まると 同 時 に 審 判 も より 高 い 水 準 でなされてきたことを 確 認 した 最 後 に 特 許 審 査 と 審 判 の 特 許 性 の 水 準 と 安 定 性 が 特 許 出 願 に 及 ぼす 影 響 を 統 計 的 に 分 析 した その 結 果 査 定 審 判 において 特 許 される 水 準 が 高 くなると 特 許 出 願 を 減 少 させ る 効 果 があるが その 不 確 実 性 が 高 まることはそれを 増 大 させる 傾 向 があることを 見 いだ した 以 上 の 結 果 は 多 分 に 予 備 的 な 結 果 であり よりロバストな 知 見 を 得 るためには より 時 間 をかけて 実 証 分 析 を 深 める 必 要 があることを 指 摘 しておきたい ( 長 岡 貞 男 真 保 智 行 ) 5. 意 匠 権 の 開 発 出 願 保 有 及 び 企 業 価 値 への 影 響 に 関 する 探 索 的 調 査 研 究 本 章 では 意 匠 権 の 大 規 模 データを 用 いて 我 が 国 企 業 における 意 匠 (デザイン)に 関 する 様 々な 取 り 組 みについて 探 索 的 事 実 発 見 的 な 成 果 を 得 ることを 目 指 した 調 査 研 究 は 五 つのパートからなる (3) 節 では 意 匠 の 創 作 出 願 利 用 といった 時 間 の 流 れに 沿 って それぞれの 傾 向 を 産 業 別 に 示 した 続 く 三 つの 節 では 意 匠 の 創 作 者 に 焦 点 を 当 て 事 実 発 見 的 な 意 図 を 持 った 分 析 を 行 った (4) 節 では 意 匠 一 件 当 たりの 平 均 創 作 者 数 を 分 析 することで 産 業 や 製 品 の 特 性 と 意 匠 の 開 発 形 態 との 間 にどのような 関 係 性 があるのかを 論 じた (5) 節 の 分 析 では 創 作 者 を 社 内 デザイナー 関 係 会 社 デザイ ナー 社 外 デザイナーの 三 種 類 に 分 類 し 製 品 分 野 企 業 ごとに 社 内 デザイナーと 社 外 デ ザイナーの 選 択 に 違 いがあるのかを 検 討 した (6) 節 では 試 行 的 にプリンターと 携 帯 電 話 を 取 り 上 げ デザイナーと 技 術 者 とのインタラクションの 程 度 を 測 った 一 連 の 分 析 か ら 導 き 出 される 結 論 は 以 下 の 点 に 集 約 される すなわち 意 匠 権 に 期 待 される 効 果 は 業 種 によって 大 きく 異 なり それゆえに 意 匠 の 創 作 出 願 保 有 のいずれにおいても 各 企 業 が 属 する 産 業 や 製 品 分 野 の 技 術 的 特 徴 が 重 要 な 決 定 要 因 になっているということである このことは 意 匠 権 の 出 願 が 企 業 価 値 に 如 何 なる 影 響 を 与 えるかを 検 証 した(7) 節 の 回 ⅳ
帰 分 析 においても 確 認 された 全 産 業 を 対 象 とした 分 析 では 意 匠 権 と 企 業 価 値 との 間 に 有 意 な 関 係 は 検 出 できなかったものの 技 術 とデザインとの 関 連 性 を 考 慮 し サンプルを 分 割 した 分 析 では 次 の 点 が 示 された すなわち 製 品 の 本 質 を 成 す 技 術 と 当 該 製 品 に 係 る 意 匠 との 間 の 技 術 的 関 連 性 が 弱 い 産 業 においては デザイン 開 発 が 技 術 開 発 に 制 約 さ れないため 社 外 のデザイナーを 起 用 することで 純 粋 に 優 れたデザインの 追 求 が 可 能 であ り そうして 生 み 出 されたデザインが 意 匠 権 として 権 利 化 されることで 企 業 価 値 が 高 まる と 示 唆 された 一 方 意 匠 による 差 別 化 が 重 要 だと 思 われる 業 種 においても 技 術 に 裏 付 けされたデザインが 求 められる 業 種 においては より 技 術 に 対 する 理 解 度 が 高 いと 推 測 さ れる 社 内 のデザイナーによる 意 匠 が 企 業 価 値 を 高 めることも 示 された ( 中 村 健 太 松 本 陽 一 ) 6. 特 許 の 利 用 構 造 とそれが 研 究 開 発 の 収 益 性 に 与 える 影 響 から 見 た 特 許 制 度 分 析 特 許 制 度 が 研 究 開 発 に 与 える 影 響 を 分 析 するには 特 許 の 利 用 構 造 の 理 解 が 不 可 欠 であ る たとえば 特 許 権 の 多 くが 自 社 実 施 ではなく 他 社 発 明 のブロッキングのために 利 用 さ れている 場 合 他 社 の 研 究 開 発 の 収 益 を 損 ねる 効 果 は 大 きい したがって 産 業 全 体 で 特 許 制 度 が 研 究 開 発 の 収 益 性 に 与 える 影 響 は 必 ずしもプラスであるとは 限 らない( 囚 人 のジ レンマの 存 在 ) さらに 他 社 に 許 諾 されている 場 合 でもクロスライセンス 契 約 となってお り 排 他 性 が 発 揮 されていない 場 合 も 存 在 する 本 章 では 特 許 の 利 用 構 造 の 差 によって 研 究 開 発 の 収 益 性 がどのように 異 なるかを 検 討 することにより 特 許 制 度 が 研 究 開 発 に 与 える 影 響 の 理 解 に 資 することを 目 的 として 分 析 してきた 主 な 結 論 は 以 下 の 通 りである 第 1に 特 許 の 利 用 率 が 高 い 企 業 ほど 売 上 高 営 業 利 益 率 が 高 いことが 明 らかとなった 第 2に 特 許 の 利 用 率 が 高 い 企 業 の 中 でも 自 社 排 他 実 施 率 が 高 い 企 業 ほど 自 社 の 発 明 技 術 を 実 施 した 事 業 からより 高 い 利 益 を 獲 得 していることが 示 唆 される 第 3に 産 業 別 平 均 クロスライセンス 率 産 業 別 平 均 ブロッキング 特 許 率 が 高 く 同 業 他 社 がお 互 いに 事 業 に 必 要 な 特 許 を 分 散 して 所 有 し 当 該 事 業 を 実 施 できない 特 許 の 藪 のような 状 況 は 発 生 し 当 該 業 界 に 属 している 企 業 の 収 益 性 が 悪 化 している 可 能 性 を 示 唆 する 以 上 のことから 現 在 の 日 本 の 特 許 制 度 は 製 品 開 発 又 は 技 術 開 発 へのインセンティブ 付 けが 適 切 になされているのはもちろんのこと 自 社 の 特 許 発 明 を 自 社 事 業 のために 利 用 しない 限 り 研 究 開 発 の 成 果 の 専 有 可 能 性 を 高 めることはできず 他 社 を 排 除 するために 利 用 しても 自 社 の 利 益 に 結 びつかないといった 発 明 や 技 術 の 事 業 化 へのインセンティブ 付 けも 適 切 に 機 能 していることが 示 唆 される ⅴ
( 長 岡 貞 男 西 村 陽 一 郎 ) 7. プロパテント 制 度 改 正 がハイテク 産 業 のイノベーション 活 動 に 与 える 影 響 分 析 本 章 においては ソフトウェアに 対 する 特 許 権 の 広 がりと 医 薬 品 に 関 する 特 許 期 間 延 長 制 度 を 取 り 上 げて プロパテント 政 策 とイノベーションの 関 係 について 考 察 を 行 った ソ フトウェアや 医 薬 品 といったいわゆるハイテク 産 業 において 特 許 権 による 発 明 の 保 護 は イノベーションに 対 するインセンティブを 高 める 効 果 をもつ ただし その 一 方 で 特 許 権 の 強 化 は 累 積 的 なイノベーションを 行 う 後 続 企 業 におけるモティベーションを 下 げるこ ととなる プロパテント 政 策 とイノベーションの 関 係 を 論 じるためにはこの 両 者 のバラン スについて 研 究 することが 必 要 であるが ここではその 第 1 歩 として 特 許 権 者 に 着 目 し た 分 析 を 行 った まず ソフトウェアに 対 する 特 許 権 の 広 がりとイノベーションの 関 係 については 特 許 を 保 有 は 受 注 ソフト 業 者 によって 構 成 される 下 請 構 造 から 抜 け 出 し 独 立 系 のソフト 企 業 への 転 換 することと 関 係 が 深 いことが 分 かった また このような 関 係 は 90 年 代 後 半 以 降 に 特 許 出 願 を 始 めた 企 業 において 特 に 見 られたので 90 年 代 後 半 から 始 まったソフトウ ェアに 関 する 特 許 制 度 の 改 正 も 影 響 している 可 能 性 がある しかし もうひとつのイノベ ーション 指 標 であるパッケージ 比 率 と 保 有 特 許 に 関 しては 統 計 的 に 有 意 な 関 係 が 見 られな かった ソフトウェア 専 業 企 業 における 特 許 出 願 状 況 と 制 度 改 正 の 間 に 明 確 な 関 係 がある ことは 確 認 できなかった 医 薬 品 等 に 関 する 特 許 延 長 制 度 については その 制 度 の 利 用 状 況 を 確 認 するに 留 まった 制 度 導 入 から 現 在 まで 実 質 特 許 有 効 期 間 を 計 測 すると 10 年 から 12 年 であり そのう ち 約 4 年 が 延 長 登 録 制 度 によって 伸 びた 部 分 であった 実 質 特 許 有 効 期 間 が 3 分 の 1 延 長 されることで 先 発 メーカーの 収 益 機 会 は 大 きく 改 善 されうる また 延 長 期 間 に 関 する 検 証 の 結 果 2000 年 の 制 度 改 正 は 対 象 範 囲 を 2 割 弱 拡 大 したことがわかった 一 方 で 上 限 5 年 に 達 するものが 少 なからず 存 在 することも 確 認 された 現 行 制 度 における 上 限 設 定 とい った 特 許 の 存 続 期 間 に 関 する 問 題 に 対 しては 新 薬 とジェネリック 医 薬 の 適 度 なバランス をどう 考 えるかといったよりマクロな 視 点 から 検 討 することが 必 要 である ( 元 橋 一 之 蟹 雅 代 ) 8. パテントプレミアムの 計 測 による 特 許 制 度 の 経 済 的 評 価 現 代 の 特 許 制 度 には 企 業 の 発 明 に 排 他 的 独 占 権 を 付 与 することでイノベーションの 価 値 を 高 め 研 究 開 発 活 動 を 促 進 させる 産 業 政 策 としての 役 割 が 期 待 されている しかし 排 ⅵ
他 的 独 占 権 の 付 与 がどの 程 度 イノベーションの 価 値 を 高 めているのかという 点 について 明 確 にその 程 度 を 計 測 した 実 証 研 究 は 皆 無 であった Arora, Ceccagnoli and Cohen (2008) は 特 許 権 の 付 与 によりイノベーションの 価 値 が 何 倍 に 高 められているのかを 示 す 乗 数 を パテントプレミアム と 定 義 し これを 計 測 した 本 章 では 先 行 研 究 を 参 考 に して 知 的 財 産 活 動 調 査 を 活 用 し 日 本 におけるパテントプレミアムの 計 測 を 試 みる 計 測 の 結 果 平 均 的 なイノベーションにとって 特 許 は 必 ずしも 有 利 な 専 有 手 段 とは 言 えな いが 特 許 取 得 が 選 択 されたイノベーションの 価 値 は 大 きく 高 められており 特 許 制 度 は 十 分 に 企 業 の 研 究 開 発 活 動 を 刺 激 している 可 能 性 のあることが 示 唆 された ( 山 田 節 夫 石 井 康 之 ) Ⅲ. 知 的 財 産 活 動 調 査 に 関 する 検 討 1. 全 体 推 計 手 法 の 見 直 しについて 知 的 財 産 活 動 調 査 の 母 集 団 は 調 査 の 前 々 年 に 特 許 実 用 新 案 意 匠 商 標 のいずれか について 1 件 以 上 出 願 を 行 った 我 が 国 の 個 人 法 人 大 学 等 公 的 研 究 機 関 である しかし 実 際 に 調 査 に 対 する 回 答 が 得 られるのは その 一 部 に 限 られる したがって 母 集 団 全 体 に おける 知 的 財 産 活 動 を 把 握 するには 有 効 回 答 を 基 にした 拡 大 推 計 が 必 要 である 本 研 究 では 回 収 された 各 企 業 等 に 対 し 推 計 のためのウェイトを 与 える 方 法 として 業 種 および 四 法 の 各 出 願 件 数 階 級 を 補 助 変 数 とした 一 般 化 回 帰 推 計 量 の 採 用 を 検 討 した この 推 計 量 の 利 点 はそれぞれの 企 業 に 対 して 一 つのウェイトが 与 えられるため 推 計 対 象 の 項 目 に 応 じてウェイトを 変 える 必 要 がないという 点 である そしてここで 得 られたウェイトを 用 い れば 四 法 全 てについて 業 種 別 出 願 件 数 を 高 い 精 度 で 推 計 できることを 示 した ( 土 屋 隆 裕 舟 岡 史 雄 ) 2. 知 的 財 産 活 動 調 査 における 調 査 業 種 区 分 の 検 証 知 的 財 産 活 動 も 経 済 活 動 の 一 端 を 担 うものであり 知 的 財 産 活 動 調 査 の 業 種 分 類 につい ては 類 似 した 経 済 活 動 を 体 系 的 に 分 類 した 日 本 標 準 産 業 分 類 と 何 らかの 対 応 を 図 るべきで ある その 際 知 的 財 産 活 動 の 水 準 を 表 す 評 価 指 標 にもとづいて 日 本 標 準 産 業 分 類 の 分 類 項 目 の 統 合 を 行 うことでより 有 用 な 業 種 分 類 が 編 成 できると 考 えられる 他 方 現 行 の 業 種 区 分 については 情 報 通 信 業 で 細 分 化 を 図 る 必 要 があることを 示 唆 する 結 果 を 得 た また 産 業 分 類 の 適 用 単 位 は 事 業 所 であり 知 的 財 産 活 動 調 査 の 調 査 単 位 は 企 業 である ⅶ
業 種 分 類 においては 企 業 単 位 の 各 業 種 が 事 業 所 を 展 開 してどのような 産 業 に 多 角 化 して いるかの 視 点 も 重 要 である さらに 知 的 財 産 活 動 は 企 業 全 体 の 戦 略 的 な 意 思 決 定 の 下 で 行 われていて 企 業 ベースを 超 えて 企 業 グループで 捉 えることが 必 要 であることを 示 す 結 果 も 得 られた ( 舟 岡 史 雄 土 屋 隆 裕 ) 3. 知 的 財 産 活 動 調 査 の 調 査 票 の 見 直 しについて 知 的 財 産 活 動 調 査 は 我 が 国 の 知 的 財 産 政 策 を 企 画 立 案 するにあたっての 基 礎 資 料 を 整 備 するため 我 が 国 企 業 等 の 知 的 財 産 活 動 の 実 態 を 把 握 することを 目 的 に 2002 年 度 から 特 許 庁 が 実 施 している 統 計 調 査 である この 統 計 調 査 は 知 的 財 産 部 門 の 活 動 状 況 産 業 財 産 権 の 利 用 実 施 状 況 など 企 業 等 しか 知 り 得 ない 数 多 くの 研 究 上 非 常 に 有 益 な 情 報 を 提 供 している また こうした 情 報 を 集 計 し 提 供 する 調 査 は 世 界 的 にみても 稀 である 当 該 調 査 は 2008 年 度 で 7 年 目 となるが こうした 統 計 調 査 を 継 続 的 に 実 施 することで 経 年 的 な 企 業 等 の 知 的 財 産 動 向 を 把 握 するだけでなく 知 的 財 産 政 策 の 効 果 を 検 証 するた めのデータを 蓄 積 することができ ますますその 有 用 性 が 高 まっていくことが 予 想 される 知 的 財 産 活 動 調 査 の 調 査 項 目 については 過 去 数 年 間 にわたり 有 識 者 にて 構 成 さ れる 調 査 研 究 委 員 会 により 検 討 が 重 ねられてきた 本 調 査 における 委 員 会 においても 我 が 国 の 知 的 財 産 活 動 の 実 態 をより 正 確 に 把 握 するため また 回 答 負 担 を 軽 減 し 回 収 率 を 向 上 させることで 調 査 自 体 の 精 度 を 高 めるため 改 善 案 を 検 討 した そして 今 回 の 見 直 しでは ライセンスに 関 する 項 目 の 問 題 点 が 議 論 された また 当 該 調 査 の 根 幹 に 関 わる 問 題 提 起 もなされた ⅷ
はじめに 我 が 国 の 企 業 が 国 際 競 争 力 を 高 めていく 上 で 知 的 財 産 の 重 要 性 はますます 高 まりつつ ある 近 年 では 我 が 国 でも 持 株 会 社 化 や M&A といった 企 業 再 編 が 活 発 に 行 われるように なってきており 企 業 の 知 的 財 産 活 動 にも 大 きな 影 響 を 及 ぼしていると 予 想 される また これまでも 知 的 財 産 に 関 する 施 策 が 実 施 されているが その 効 果 を 検 証 していくことも 重 要 であると 思 われる そうした 中 で 専 門 家 による 統 計 データを 用 いた 客 観 的 かつ 厳 密 な 分 析 が 必 要 といえる 知 的 財 産 研 究 所 では これまでも 特 許 制 度 や 市 場 技 術 環 境 の 変 化 が 企 業 の 知 的 財 産 戦 略 に 与 える 影 響 について 日 本 を 代 表 する 経 済 学 者 からなる 委 員 会 を 組 織 し 当 分 野 にお けるパイオニアとして 実 証 的 な 研 究 を 実 施 してきたところである 本 調 査 では これまで 蓄 積 してきた 研 究 の 成 果 を 取 り 入 れつつ 特 許 庁 の 実 施 する 知 的 財 産 活 動 調 査 や 他 のデータベースを 駆 使 して 近 年 多 くの 業 界 において 活 発 に 行 われ ている 企 業 再 編 と 特 許 出 願 や 研 究 開 発 投 資 との 関 係 特 許 出 願 数 の 予 測 を 可 能 とするため の 安 定 的 な 特 許 生 産 関 数 の 有 無 特 許 の 実 体 審 査 における 不 確 実 性 と 企 業 の 出 願 行 動 への 影 響 意 匠 権 と 企 業 価 値 との 関 係 特 許 の 利 用 構 造 と 研 究 開 発 の 収 益 性 プロパテント 制 度 改 正 とイノベーション パテントプレミアムの 計 測 といった 計 8 つの 実 証 分 析 を 行 って いる こうした 研 究 成 果 が 学 術 的 な 貢 献 にとどまらず 我 が 国 の 知 的 財 産 政 策 及 び 企 業 の 知 的 財 産 戦 略 の 策 定 に 活 用 され ひいては 我 が 国 産 業 の 競 争 力 強 化 に 貢 献 することがで きれば 幸 いである 最 後 に 本 調 査 の 遂 行 に 当 たり ご 指 導 ご 協 力 いただいた 委 員 各 位 オブザーバー 各 位 には 深 く 感 謝 する 次 第 である 平 成 21 年 3 月 財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所
平 成 20 年 度 我 が 国 における 産 業 財 産 権 等 の 出 願 動 向 等 に 関 する 調 査 委 員 会 名 簿 委 員 長 長 岡 貞 男 委 員 小 田 切 宏 之 舟 岡 史 雄 元 橋 一 之 永 田 晃 也 山 田 節 夫 石 井 康 之 土 屋 隆 裕 大 西 宏 一 郎 中 村 健 太 西 村 陽 一 郎 真 保 智 行 一 橋 大 学 イノベーション 研 究 センター 教 授 一 橋 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 教 授 信 州 大 学 経 済 学 部 経 済 学 科 教 授 東 京 大 学 工 学 系 研 究 科 教 授 九 州 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 院 准 教 授 専 修 大 学 経 済 学 部 教 授 東 京 理 科 大 学 総 合 科 学 技 術 経 営 研 究 科 教 授 統 計 数 理 研 究 所 准 教 授 文 部 科 学 省 科 学 技 術 政 策 研 究 所 第 2 研 究 グループ 研 究 員 神 戸 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 専 任 講 師 神 奈 川 大 学 経 済 学 部 准 教 授 財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所 研 究 員 山 形 大 学 人 文 学 部 専 任 講 師 オブザーバー 嶋 野 邦 彦 油 科 壮 一 菅 野 智 子 依 田 裕 介 田 内 幸 治 野 仲 松 男 北 代 真 一 島 田 光 子 蟹 雅 代 松 本 陽 一 特 許 庁 総 務 部 企 画 調 査 課 長 特 許 庁 総 務 部 企 画 調 査 課 企 画 班 長 特 許 庁 総 務 部 企 画 調 査 課 技 術 動 向 班 長 特 許 庁 総 務 部 企 画 調 査 課 統 計 係 長 特 許 庁 総 務 部 企 画 調 査 課 技 術 動 向 係 長 特 許 庁 特 許 審 査 第 一 部 調 整 課 企 画 調 査 班 長 特 許 庁 審 査 業 務 部 意 匠 課 企 画 調 査 班 長 経 済 産 業 省 経 済 産 業 政 策 局 調 査 統 計 部 統 計 企 画 室 帝 塚 山 大 学 経 済 学 部 専 任 講 師 神 戸 大 学 経 済 経 営 研 究 所 専 任 講 師 事 務 局 真 保 智 行 西 村 もも 子 岩 井 勇 人 桂 正 憲 財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所 研 究 員 山 形 大 学 人 文 学 部 専 任 講 師 財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所 研 究 員 財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所 統 括 研 究 員 財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所 研 究 第 二 部 長
目 次 要 約 はじめに 委 員 会 名 簿 Ⅰ. 序 論 1 Ⅱ. 我 が 国 企 業 の 知 的 財 産 活 動 に 関 する 分 析 5 1. 持 株 会 社 制 移 行 による 企 業 グループ 内 組 織 構 造 の 変 化 と 特 許 出 願 行 動 等 に 対 する 効 果 5 2. 企 業 間 の 合 併 が 研 究 開 発 活 動 に 及 ぼす 影 響 医 薬 品 産 業 を 事 例 とする 分 析 28 3. 特 許 出 願 行 動 及 び 審 査 請 求 行 動 の 分 析 39 4. 特 許 の 実 体 審 査 と 企 業 の 出 願 行 動 58 5. 意 匠 権 の 開 発 出 願 保 有 及 び 企 業 価 値 への 影 響 に 関 する 探 索 的 調 査 研 究 84 6. 特 許 の 利 用 構 造 とそれが 研 究 開 発 の 収 益 性 に 与 える 影 響 から 見 た 特 許 制 度 分 析 144 7. プロパテント 制 度 改 正 がハイテク 産 業 のイノベーション 活 動 に 与 える 影 響 分 析 158 8. パテントプレミアムの 計 測 による 特 許 制 度 の 経 済 的 評 価 179 Ⅲ. 知 的 財 産 活 動 調 査 に 関 する 検 討 191 1. 全 体 推 計 手 法 の 見 直 しについて 191 2. 知 的 財 産 活 動 調 査 における 調 査 業 種 区 分 の 検 証 205 3. 知 的 財 産 活 動 調 査 の 調 査 票 の 見 直 しについて 211 なお 本 報 告 書 は 委 員 会 での 議 論 を 基 に 各 委 員 と 事 務 局 が 分 担 して 執 筆 している 執 筆 の 分 担 は 以 下 の 通 りである Ⅰ. 長 岡 貞 男 Ⅱ. 1. 西 村 陽 一 郎 2. 大 西 宏 一 郎 永 田 晃 也 3. 山 田 節 夫 石 井 康 之
4. 長 岡 貞 男 真 保 智 行 5. 中 村 健 太 松 本 陽 一 6. 長 岡 貞 男 西 村 陽 一 郎 7. 元 橋 一 之 蟹 雅 代 8. 山 田 節 夫 石 井 康 之 Ⅲ. 1. 土 屋 隆 裕 舟 岡 史 雄 2. 舟 岡 史 雄 土 屋 隆 裕 3. 各 委 員 事 務 局
Ⅰ. 序 論 我 が 国 においては 国 際 競 争 力 を 強 化 し 経 済 を 活 性 化 するために 知 的 財 産 推 進 計 画 を 策 定 し 知 的 財 産 に 関 する 施 策 を 実 施 しているところである 企 業 においても 近 年 の 知 的 財 産 に 関 する 政 策 の 展 開 に 伴 い 自 らの 知 的 財 産 の 保 護 や 活 用 等 に 係 る 活 動 を 強 化 し つつある そして 我 が 国 の 知 的 財 産 に 関 する 政 策 を 企 画 立 案 していくにあたっては 統 計 的 な 分 析 に 基 づいた 共 通 認 識 を 持 って 議 論 を 深 めていくことが 重 要 だと 思 われる このような 状 況 を 踏 まえて 本 調 査 では 近 年 多 くの 業 界 において 活 発 に 行 われている 企 業 再 編 と 特 許 出 願 や 研 究 開 発 投 資 との 関 係 特 許 出 願 数 の 予 測 を 可 能 とするための 安 定 的 な 特 許 生 産 関 数 の 有 無 特 許 の 実 体 審 査 における 不 確 実 性 と 企 業 の 出 願 行 動 への 影 響 意 匠 権 と 企 業 価 値 との 関 係 特 許 の 利 用 構 造 と 研 究 開 発 の 収 益 性 プロパテント 制 度 改 正 とイノベーション パテントプレミアムの 計 測 といった 計 8 つの 実 証 分 析 を 行 った これ らの 調 査 は 従 来 十 分 な 分 析 が 行 われていないものであり 新 たな 分 析 対 象 やデータを 利 用 することによって より 深 い 議 論 の 可 能 性 を 見 出 しているといえる そして 今 後 のさ らなる 我 が 国 の 知 的 財 産 活 動 の 理 解 につながるものだと 考 えられる さらに これらの 分 析 にも 使 用 されており 知 的 財 産 活 動 を 調 査 する 我 が 国 唯 一 の 統 計 調 査 である 知 的 財 産 活 動 調 査 について 本 報 告 書 における 分 析 結 果 を 踏 まえつつ 一 層 のデータ 精 度 向 上 のため 全 体 推 計 手 法 や 業 種 分 類 の 見 直 しの 他 調 査 の 見 直 しも 検 討 した 以 下 では 本 調 査 において 実 施 された 諸 分 析 の 概 要 を 述 べる 第 Ⅱ 部 の 第 1 章 持 株 会 社 制 移 行 による 企 業 グループ 内 組 織 構 造 の 変 化 と 特 許 出 願 行 動 等 に 対 する 効 果 では 近 年 の 持 株 会 社 制 移 行 といった 企 業 再 編 によって 企 業 グループ 全 体 として 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 がどのように 変 化 したのかを 分 析 し た その 結 果 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 事 業 活 動 の 多 くを 親 会 社 である 持 株 会 社 で はなく 子 会 社 関 連 会 社 である 事 業 会 社 に 移 管 していること 及 び 研 究 開 発 活 動 の 多 く も 親 会 社 である 持 株 会 社 ではなく 子 会 社 関 連 会 社 である 事 業 会 社 に 移 管 していること も 確 認 された また 計 量 分 析 の 結 果 からは 発 明 の 質 で 選 別 し 出 願 しているといった 点 で 企 業 グループ 全 体 としての 知 的 財 産 管 理 がより 効 率 的 になったこと 及 び 企 業 が 保 有 す る 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めるという 点 で 知 的 財 産 管 理 がより 効 率 的 になっていることが 示 唆 された 第 2 章 企 業 間 の 合 併 が 研 究 開 発 活 動 に 及 ぼす 影 響 医 薬 品 産 業 を 事 例 とする 分 析 では 医 薬 品 産 業 における 合 併 が 当 事 者 企 業 だけでなく 競 合 他 社 も 含 めた 産 業 全 体 の 研 究 発 活 動 にどのような 影 響 を 及 ぼすのかを 分 析 した その 結 果 合 併 という 現 象 が 当 事 者 企 業 だけでなく 市 場 距 離 の 近 い 競 合 他 社 の 研 究 開 発 投 資 の 意 志 決 定 にも 強 く 影 響 を 与 えていることが 明 らかになった これは 合 併 の 是 非 を 検 討 する 場 合 当 事 者 企 業 だけで -1-
なく 競 合 他 社 を 含 めたマーケット 全 体 の 動 向 に 注 目 することが 必 要 であることを 示 唆 し ていると 言 える また この 結 果 は 合 併 が 競 合 他 社 の 研 究 開 発 投 資 に 影 響 しないという 先 行 研 究 の 暗 黙 の 仮 定 が 少 なくとも 医 薬 品 産 業 においては 十 分 に 満 たされていないこと を 示 唆 している 第 3 章 特 許 出 願 行 動 及 び 審 査 請 求 行 動 の 分 析 では 特 許 出 願 数 の 予 測 を 可 能 とす るために 日 本 の 大 手 企 業 101 社 のプーリングデータにより 特 許 生 産 関 数 を 推 計 した そ の 結 果 特 許 出 願 数 と 実 質 研 究 開 発 費 には 安 定 的 な 関 係 が 見 出 されたが クレーム 加 重 特 許 出 願 数 は 研 究 開 発 生 産 性 の 影 響 を 強 く 受 けており 予 測 が 困 難 であることがわかった また 企 業 の 審 査 請 求 行 動 についても 分 析 を 行 い 頑 健 な 締 切 効 果 が 確 認 され 特 許 出 願 の 21.6%が 過 剰 審 査 請 求 特 許 であることがわかった 第 4 章 特 許 の 実 体 審 査 と 企 業 の 出 願 行 動 では 先 ず 特 許 審 査 の 不 確 実 性 の 源 泉 につ いて 考 察 を 行 い それと 整 合 的 な 傾 向 が 見 られるかどうかを 確 認 した その 結 果 拒 絶 査 定 率 は 出 願 人 と 特 許 庁 の 間 の 公 知 文 献 のサーチ 能 力 や 特 許 性 の 判 断 の 差 が 大 きいと 考 え られるハイテクの 分 野 で 高 いこと 不 服 審 判 が 成 立 されやすい 分 野 は 進 歩 性 などにかか る 特 許 庁 内 部 の 判 断 が 安 定 しており 査 定 の 誤 りが 確 実 に 是 正 されやすいローテク 分 野 で あることが 観 察 された また 特 許 審 査 と 審 判 の 特 許 性 の 水 準 と 安 定 性 が 特 許 出 願 に 及 ぼ す 影 響 を 統 計 的 に 分 析 した その 結 果 査 定 審 判 において 特 許 される 水 準 が 高 くなると 特 許 出 願 を 減 少 させる 効 果 があるが その 不 確 実 性 が 高 まることはそれを 増 大 させる 傾 向 があることが 明 らかになった 第 5 章 意 匠 権 の 開 発 出 願 保 有 及 び 企 業 価 値 への 影 響 に 関 する 探 索 的 調 査 研 究 で は 意 匠 権 の 大 規 模 データを 用 いて 我 が 国 企 業 における 意 匠 (デザイン)に 関 する 様 々 な 取 り 組 みについて 探 索 的 事 実 発 見 的 な 成 果 を 得 ることを 目 指 した そして 意 匠 権 の 出 願 が 企 業 価 値 に 如 何 なる 影 響 を 与 えるかを 検 証 した 全 産 業 を 対 象 とした 分 析 では 意 匠 権 と 企 業 価 値 との 間 に 有 意 な 関 係 は 検 出 できなかったものの 技 術 とデザインとの 関 連 性 を 考 慮 し サンプルを 分 割 した 分 析 では 次 の 点 が 示 された すなわち 製 品 の 本 質 を 成 す 技 術 と 当 該 製 品 に 係 る 意 匠 との 間 の 技 術 的 関 連 性 が 弱 い 産 業 においては デザイ ン 開 発 が 技 術 開 発 に 制 約 されないため 社 外 のデザイナーを 起 用 することで 純 粋 に 優 れた デザインの 追 求 が 可 能 であり そうして 生 み 出 されたデザインが 意 匠 権 として 権 利 化 され ることで 企 業 価 値 が 高 まると 示 唆 された 一 方 意 匠 による 差 別 化 が 重 要 だと 思 われる 業 種 においても 技 術 に 裏 付 けされたデザインが 求 められる 業 種 においては より 技 術 に 対 する 理 解 度 が 高 いと 推 測 される 社 内 のデザイナーによる 意 匠 が 企 業 価 値 を 高 めることも 示 された 第 6 章 特 許 の 利 用 構 造 とそれが 研 究 開 発 の 収 益 性 に 与 える 影 響 から 見 た 特 許 制 度 分 析 では 特 許 の 利 用 構 造 の 差 によって 研 究 開 発 の 収 益 性 がどのように 異 なるかを 分 析 した その 結 果 現 在 の 我 が 国 の 特 許 制 度 は 製 品 開 発 又 は 技 術 開 発 へのインセンティブ 付 けが -2-
適 切 になされているのはもちろんのこと 自 社 の 特 許 発 明 を 自 社 事 業 のために 利 用 しない 限 り 研 究 開 発 の 成 果 の 専 有 可 能 性 を 高 めることはできず 他 社 を 排 除 するために 利 用 し ても 自 社 の 利 益 に 結 びつかないといった 発 明 や 技 術 の 事 業 化 へのインセンティブ 付 けも 適 切 に 機 能 していることが 示 唆 された 第 7 章 プロパテント 制 度 改 正 がハイテク 産 業 のイノベーション 活 動 に 与 える 影 響 分 析 では ソフトウェアに 対 する 特 許 権 の 広 がりと 医 薬 品 等 に 関 する 特 許 期 間 延 長 制 度 を 取 り 上 げて プロパテント 政 策 とイノベーションの 関 係 について 分 析 した まず ソフトウェ アに 対 する 特 許 権 の 広 がりとイノベーションの 関 係 については 特 許 を 保 有 することによ って 受 注 ソフト 業 者 によって 構 成 される 下 請 構 造 から 抜 け 出 し 独 立 系 のソフト 企 業 へ の 転 換 することと 関 係 が 深 いことが 分 かった また このような 関 係 は 90 年 代 後 半 から 始 まったソフトウェアに 関 する 特 許 制 度 の 改 正 も 影 響 している 可 能 性 がある しかし ソフ トウェア 専 業 企 業 における 特 許 出 願 状 況 と 制 度 改 正 の 間 に 明 確 な 関 係 があることは 確 認 で きなかった 医 薬 品 等 に 関 する 特 許 延 長 制 度 については 制 度 導 入 から 現 在 まで 実 質 特 許 有 効 期 間 を 計 測 すると 10 年 から 12 年 であり そのうち 約 4 年 が 延 長 登 録 制 度 によって 伸 びた 部 分 であることが 明 らかになった また 延 長 期 間 に 関 する 検 証 の 結 果 2000 年 の 制 度 改 正 によって 活 用 された 品 目 数 が 2 割 弱 拡 大 したことがわかった 一 方 で 延 長 登 録 期 間 の 上 限 5 年 に 達 するものが 少 なからず 存 在 することも 確 認 された 第 8 章 パテントプレミアムの 計 測 による 特 許 制 度 の 経 済 的 評 価 では 先 行 研 究 を 参 考 にして 知 的 財 産 活 動 調 査 を 活 用 し 我 が 国 におけるパテントプレミアム( 特 許 制 度 の 存 在 よりイノベーションの 価 値 が 何 倍 に 高 められているのか)の 計 測 が 試 みられた そ の 結 果 平 均 的 なイノベーションにとって 特 許 は 必 ずしも 有 利 な 専 有 手 段 とは 言 えないが 特 許 取 得 が 選 択 されたイノベーションの 価 値 は 大 きく 高 められており 特 許 制 度 は 十 分 に 企 業 の 研 究 開 発 活 動 を 刺 激 している 可 能 性 のあることが 示 唆 された 第 Ⅲ 部 では 以 上 の 分 析 でも 利 用 されている 知 的 財 産 活 動 調 査 について より 精 度 の 高 い 分 析 が 可 能 となるよう 第 1 章 において 全 体 推 計 手 法 第 2 章 において 業 種 区 分 第 3 章 において 調 査 票 の 見 直 しを 検 討 した 第 1 章 全 体 推 計 手 法 の 見 直 しについて では 回 収 された 各 企 業 等 に 対 し 推 計 のため のウェイトを 与 える 方 法 として 業 種 および 四 法 の 各 出 願 件 数 階 級 を 補 助 変 数 とした 一 般 化 回 帰 推 計 量 の 採 用 を 検 討 した この 推 計 量 の 利 点 はそれぞれの 企 業 に 対 して 一 つのウェ イトが 与 えられるため 推 計 対 象 の 項 目 に 応 じてウェイトを 変 える 必 要 がないという 点 で あり ここで 得 られたウェイトを 用 いれば 四 法 全 てについて 業 種 別 出 願 件 数 を 高 い 精 度 で 推 計 できることが 明 らかになった 第 2 章 知 的 財 産 活 動 調 査 における 調 査 業 種 区 分 の 検 証 では 知 的 財 産 活 動 調 査 の 業 種 分 類 と 経 済 活 動 を 体 系 的 に 分 類 した 日 本 標 準 産 業 分 類 との 関 係 を 分 析 した その 結 果 -3-
現 行 の 業 種 区 分 については 情 報 通 信 業 等 で 細 分 化 を 図 る 必 要 があること 及 び 知 的 財 産 活 動 は 企 業 全 体 の 戦 略 的 な 意 思 決 定 の 下 で 行 われていて 企 業 ベースを 超 えて 企 業 グルー プで 捉 えることが 必 要 であることが 示 唆 された 第 3 章 知 的 財 産 活 動 調 査 の 調 査 票 の 見 直 しについて では 本 調 査 における 委 員 会 に おいて 我 が 国 の 知 的 財 産 活 動 の 実 態 をより 正 確 に 把 握 するため また 回 答 負 担 を 軽 減 し 回 収 率 を 向 上 させることで 調 査 自 体 の 精 度 を 高 めることを 目 的 に 議 論 が 行 われ その 内 容 をまとめたものである そして 今 回 の 見 直 しでは ライセンスに 関 する 項 目 の 問 題 点 が 議 論 され 当 該 調 査 の 根 幹 に 関 わる 問 題 提 起 もなされた これらの 研 究 は 我 が 国 における 知 的 財 産 政 策 の 企 画 立 案 の 基 礎 資 料 として また 企 業 等 における 知 的 財 産 戦 略 策 定 の 基 礎 資 料 として 活 用 されることが 望 まれる さらに 本 調 査 では 知 的 財 産 活 動 調 査 の 全 体 推 計 手 法 業 種 区 分 調 査 票 の 見 直 しの 検 討 も 行 われ たが これにより データソースカバリッジと 推 計 の 精 度 が 向 上 し 今 後 の 研 究 の 信 頼 性 も 一 層 向 上 していくものと 期 待 される ( 長 岡 貞 男 ) -4-
Ⅱ. 我 が 国 企 業 の 知 的 財 産 活 動 に 関 する 分 析 1. 持 株 会 社 制 移 行 による 企 業 グループ 内 組 織 構 造 の 変 化 と 特 許 出 願 行 動 等 に 対 する 効 果 (1)はじめに 近 年 持 株 会 社 を 利 用 した 企 業 再 編 が 比 較 的 多 く 行 われている 1997 年 に 純 粋 持 株 会 社 が 独 禁 法 上 解 禁 になり 1999 年 に 商 法 改 正 とともに 株 式 交 換 制 度 と 株 式 移 転 制 度 が 導 入 2001 年 の 商 法 改 正 によって 会 社 分 割 制 度 が 導 入 2002 年 からは 連 結 納 税 制 度 も 導 入 された このような 純 粋 持 株 会 社 に 拘 わる 制 度 変 更 が 今 日 の 持 株 会 社 の 増 大 の 1 つの 背 景 にあると 考 えられる 本 稿 では 12001~2007 年 までに 持 株 会 社 制 を 採 用 し 企 業 再 編 した 企 業 3 社 2 持 株 会 社 制 に 移 行 せず 既 存 の 企 業 グループを 維 持 し 続 けた 企 業 3 社 を 比 較 分 析 することで 我 が 国 企 業 の 特 許 出 願 審 査 請 求 について 持 株 会 社 制 移 行 に 伴 う 企 業 グループ 内 の 組 織 構 造 の 変 化 の 影 響 を 企 業 グループ 全 体 の 観 点 から 分 析 する 持 株 会 社 制 への 移 行 による 企 業 再 編 は 企 業 の M&A による 企 業 再 編 と 類 似 する 効 果 を 生 む すなわち 持 株 会 社 制 へのグループ 組 織 再 編 は 企 業 の 事 業 活 動 に 加 え 企 業 のイノ ベーション 活 動 にも 大 きな 影 響 を 及 ぼす 山 内 (2008)に 指 摘 されているように 企 業 のイ ノベーション 活 動 をインプットの 側 面 をもつ 研 究 開 発 活 動 及 びアウトプットの 側 面 をもつ 知 的 財 産 活 動 の 2 つに 分 けた 場 合 持 株 会 社 制 による 企 業 グループの 組 織 再 編 はインプッ トとアウトプットの 両 側 面 に 対 して 影 響 を 及 ぼすと 考 えられる 1 インプットである 研 究 開 発 活 動 の 側 面 で 考 えると 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 持 株 会 社 は 日 常 的 な 業 務 から 解 放 され 全 社 的 な 研 究 開 発 活 動 の 統 括 管 理 をすることが 容 易 となる すなわち 企 業 グ ループ 内 の 重 複 研 究 開 発 投 資 の 削 減 によって 研 究 開 発 費 が 減 少 する 効 果 が 考 えられる アウトプットである 知 的 財 産 活 動 の 側 面 で 考 えると インプットである 研 究 開 発 費 が 先 述 の 理 由 で 減 少 するだけではなく 重 複 特 許 出 願 の 削 減 および 重 複 特 許 権 利 の 削 減 により 国 内 出 願 特 許 保 有 性 向 が 一 時 的 に 減 少 する 効 果 が 考 えられる 一 方 で 持 株 会 社 制 によ り 全 社 的 な 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 の 統 括 管 理 が 容 易 になるので 今 ま で 事 業 化 しようとは 考 えなかった 発 明 や 技 術 の 利 用 可 能 性 が 高 まり 特 許 出 願 や 審 査 請 求 率 が 高 まる 効 果 も 考 えられる したがって 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 企 業 グループ 全 体 における 企 業 活 動 に 与 える 影 響 は 理 論 的 に 明 確 な 結 論 を 得 ることは 非 常 に 困 難 である したがって 本 稿 は 持 株 会 社 制 による 企 業 再 編 の 効 果 を 実 証 的 に 結 論 として 得 ようとす 1 山 内 勇 長 岡 貞 男 企 業 再 編 が 出 願 及 び 研 究 開 発 動 向 に 与 える 影 響 :ケーススタディによる 実 証 分 析 我 が 国 企 業 等 における 産 業 財 産 権 等 の 出 願 行 動 等 に 関 する 調 査 ( 平 成 19 年 度 ) 特 許 庁 2008 年 -5-
るものである 最 後 に 本 研 究 の 意 義 は 以 下 の 通 りである 第 1 に 本 研 究 は 研 究 開 発 戦 略 および 知 的 財 産 戦 略 といった 観 点 から 持 株 会 社 制 といった 企 業 グループの 組 織 再 編 に 対 して 重 要 な 示 唆 を 与 えると 思 われる 第 2 に 企 業 グループ 単 位 といった 視 点 で 研 究 開 発 活 動 および 知 的 財 産 活 動 を 正 確 に 把 握 することは グループ 単 位 の 研 究 開 発 活 動 および 知 的 財 産 活 動 の 実 情 にあわせた 知 的 財 産 政 策 を 策 定 する 際 の 手 がかりにもなりうるだろう 以 下 では (2) 節 において 図 表 により 企 業 グループの 組 織 構 造 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 といった 3 つの 企 業 活 動 が 持 株 会 社 制 へ 移 行 する 前 後 においてどのよう に 変 化 するのかを 概 観 する (3) 節 では 知 的 財 産 活 動 への 効 果 に 着 目 して より 厳 密 な 計 量 分 析 を 行 う (4) 節 では 結 論 を 述 べる (2) 持 株 会 社 制 移 行 前 後 の 変 化 の 図 表 による 概 観 本 節 では 持 株 会 社 制 へ 移 行 したことで 組 織 構 造 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 がどのように 変 化 したのかを 図 表 で 概 観 する 本 稿 では 2001 年 ~2007 年 までに 持 株 会 社 制 度 を 採 用 した 企 業 を 3 社 (A 社 B 社 C 社 ) この 分 析 期 間 に 持 株 会 社 制 へ 移 行 せず に 組 織 構 造 を 維 持 した 競 合 他 社 から 3 社 をベンチマークとしてとりあげ 合 計 6 社 の 日 本 企 業 を 主 に 分 析 する( 図 表 1) 図 表 1 各 社 の 組 織 構 造 の 概 要 分 析 群 A 社 B 社 C 社 組 織 改 編 前 社 内 カンパニー 制 社 内 カンパニー 制 社 内 カンパニー 制 組 織 改 編 後 純 粋 持 株 会 社 制 純 粋 持 株 会 社 制 純 粋 持 株 会 社 制 対 照 群 D 社 E 社 F 社 組 織 改 編 前 事 業 部 制 社 内 カンパニー 制 事 業 部 制 組 織 改 編 後 事 業 部 制 社 内 カンパニー 制 事 業 部 制 ( 出 典 ) 各 社 の 有 価 証 券 報 告 書 ホームページに 基 づいて 筆 者 作 成 -6-
2 (ⅰ) 組 織 構 造 分 析 の 対 象 とした 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 企 業 の 組 織 改 編 前 の 組 織 図 を 示 したのが 図 表 2である 図 表 2からわかるように 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 も 親 会 社 を 中 心 に 行 うことができるような 組 織 となっている 図 表 2 持 株 会 社 制 への 組 織 改 編 以 前 の 組 織 構 造 社 長 親 会 社 カンパニー1( 事 業 部 1) カンパニー2 ( 事 業 部 2) R&D 部 門 IPR 部 門 R&D 部 門 子 関 連 会 社 IPR 部 門 ( 注 )R&D 部 門 とは 研 究 開 発 部 門 IPR 部 門 とは 知 的 財 産 部 門 をさす 図 表 3は A 社 について 持 株 会 社 制 への 移 行 といった 組 織 改 編 後 研 究 開 発 部 門 (R&D 部 門 ) や 知 的 財 産 部 門 (IPR 部 門 )がどのような 組 織 に 変 更 されたのかを 示 したものである A 社 は 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 後 研 究 開 発 機 能 部 門 (R&D 部 門 )を 事 業 会 社 や R&D 専 門 子 会 社 に 移 管 することで 既 存 事 業 に 密 接 不 可 分 な 研 究 開 発 については 事 業 会 社 に 委 託 し 基 礎 研 究 基 盤 研 究 に 拘 わる 研 究 開 発 については 事 業 部 門 から 遠 ざけることで R&D 専 門 子 会 社 に 委 託 しやすいような 組 織 体 制 をしいている また 知 的 財 産 活 動 についてみると 知 的 財 産 機 能 部 門 (IPR 部 門 )を 持 株 会 社 事 業 会 社 IPR 専 門 子 会 社 といった 各 会 社 に 配 置 し 各 知 的 財 産 部 門 がお 互 いに 協 力 連 携 し 企 業 グループ 全 体 の 知 的 財 産 活 動 を 推 進 していることが 伺 える 2 本 節 では 有 価 証 券 報 告 書 各 企 業 のプレスリリースを 参 考 にしたが 文 部 科 学 省 科 学 技 術 学 術 政 策 局 ( 監 修 ) 全 国 試 験 研 究 機 関 名 鑑 も 参 考 にした -7-
図 表 3 組 織 改 編 後 の 組 織 構 造 (A 社 ) 社 長 持 株 会 社 IPR 部 門 社 長 R&D 部 門 事 業 会 社 1 IPR 部 門 R&D 子 会 社 IPR 子 会 社 図 表 4 組 織 改 編 後 の 組 織 構 造 (B 社 3 ) 社 長 持 株 会 社 R&D 部 門 IPR 部 門 社 長 R&D 部 門 IPR 部 門 事 業 会 社 1 図 表 4は B 社 について 持 株 会 社 制 への 移 行 といった 組 織 改 編 後 研 究 開 発 部 門 (R&D 部 門 ) や 知 的 財 産 部 門 (IPR 部 門 )がどのような 組 織 に 変 更 されたのかを 示 したものである B 社 は 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 後 持 株 会 社 に 研 究 開 発 機 能 部 門 (R&D 部 門 )や 知 的 財 産 機 能 部 門 (IPR 部 門 )を 残 しておくのと 同 時 に 事 業 会 社 も 同 2 つの 部 門 を 兼 ね 備 えている( 図 表 4) つまり A 社 と 同 様 に 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 研 究 開 発 機 能 部 門 (R&D 部 門 ) を 事 業 会 社 に 移 管 することで 既 存 事 業 に 密 接 不 可 分 な 研 究 開 発 については 事 業 会 社 に 委 託 し 本 社 である 持 株 会 社 の R&D 部 門 が 事 業 部 門 から 遠 ざかることで 基 礎 研 究 基 盤 研 究 3 B 社 のように 本 社 で 研 究 開 発 活 動 を 行 っている 企 業 を 純 粋 持 株 会 社 と 呼 ぶことについては 様 々な 懸 念 がある しかし 本 稿 では 各 社 のホームページを 見 て 純 粋 持 株 会 社 といった 記 載 がなされていれば 当 該 企 業 を 純 粋 持 株 会 社 である といった 判 断 をした -8-
に 拘 わる 研 究 開 発 を 集 中 的 に 実 施 できる 組 織 体 制 をしいている また 知 的 財 産 活 動 についてみると 持 株 会 社 の 中 に 知 的 財 産 部 門 を 設 けることで 企 業 グループの 知 的 財 産 活 動 を 統 括 する 位 置 づけとなっている すなわち 持 株 会 社 の 中 にあ る 知 的 財 産 部 門 は グループ 全 体 の 知 的 財 産 業 務 の 戦 略 立 案 推 進 を 担 い 知 的 財 産 業 務 の 共 通 的 なインフラを 提 供 していると 考 えられる 図 表 5 組 織 改 編 後 の 組 織 構 造 (C 社 ) 社 長 持 株 会 社 社 長 R&D 部 門 事 業 会 社 1 R&D IPR 子 会 社 IPRについて 委 託 図 表 5は C 社 について 持 株 会 社 制 への 移 行 といった 組 織 改 編 後 研 究 開 発 部 門 (R&D 部 門 ) や 知 的 財 産 部 門 (IPR 部 門 )がどのような 組 織 に 変 更 されたのかを 示 したものである C 社 は 非 常 に 特 徴 的 で A 社 B 社 と 異 なり 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 後 持 株 会 社 に 研 究 開 発 機 能 部 門 (R&D 部 門 )や 知 的 財 産 機 能 部 門 (IPR 部 門 )を 残 さずに 事 業 会 社 や R&D 専 門 子 会 社 IPR 専 門 子 会 社 にそれら 機 能 や 部 門 を 移 管 している( 図 表 5) つまり A 社 B 社 と 同 様 に 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 既 存 事 業 に 密 接 不 可 分 な 研 究 開 発 については 事 業 会 社 の R&D 部 門 に 移 管 しているようである 他 方 A 社 B 社 とは 異 なり 基 礎 研 究 基 盤 研 究 に 拘 わる 研 究 開 発 については 事 業 部 門 から 遠 ざけ R&D 専 門 子 会 社 を 設 けることで 基 礎 研 究 基 盤 研 究 が 実 施 しやすいような 組 織 体 制 をしいている また 知 的 財 産 活 動 についてみると 企 業 グループ 全 体 の 知 的 財 産 活 動 を 独 立 した IPR 専 門 子 会 社 に 業 務 委 託 という 形 で 統 括 管 理 する 組 織 体 制 となっている (ⅱ) 事 業 活 動 図 表 6は 各 企 業 グループに 属 している 企 業 メンバーの 数 を 示 した 図 表 である 図 表 6 から 明 らかであるように 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 企 業 グループとそうでない 企 業 グループ との 間 で 企 業 メンバー 数 の 増 減 傾 向 にさほど 差 異 がない つまり 持 株 会 社 制 へ 移 行 す ることで 企 業 グループ 内 のメンバーをリストラしているとは 言 い 難 いことがわかる -9-
図 表 6 企 業 グループ 別 企 業 メンバー 数 ( 親 会 社 は 除 く) 持 株 会 社 制 への 移 行 A 社 B 社 C 社 D 社 E 社 F 社 t-4 年 51 124 58 109 23 78 t-3 年 50 123 58 113 39 79 t-2 年 48 128 55 113 37 53 t-1 年 48 114 52 104 37 34 t 年 45 106 47 101 36 32 t+1 年 46 104 44 106 30 43 t+2 年 46 105 44 108 33 41 t+3 年 46 110 40 104 31 45 t+4 年 49 106 36 104 28 47 図 表 7 及 び 図 表 8は 持 株 会 社 制 に 移 行 した 日 本 企 業 の 有 形 固 定 資 産 総 資 産 と 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 日 本 企 業 の 有 形 固 定 資 産 総 資 産 を 示 した 図 表 8( 持 株 会 社 制 へ 移 行 しなかった 企 業 のケース)と 比 較 すると 図 表 7( 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 企 業 のケ ース)では 企 業 グループ 全 体 の 有 形 固 定 資 産 総 資 産 は 減 少 せずにむしろ 持 株 会 社 制 移 行 後 有 形 固 定 資 産 総 資 産 で 測 った 事 業 活 動 のレベルが 少 し 増 加 している 傾 向 が 明 ら かである しかし 親 企 業 単 独 を 見 ると 持 株 会 社 制 へ 移 行 と 同 時 に 有 形 固 定 資 産 総 資 産 は 大 幅 に 減 少 していることが 明 らかである( 図 表 7) つまり 有 形 固 定 資 産 総 資 産 の 観 点 か ら 見 て 企 業 グループの 親 企 業 である 持 株 会 社 から 多 くの 事 業 がグループの 企 業 メンバー に 移 管 されたことが 示 唆 される -10-
図 表 7 持 株 会 社 制 に 移 行 した 企 業 の 有 形 固 定 資 産 総 資 産 ( 単 位 : 億 円 有 形 固 定 資 産 ( 左 軸 : 棒 グラフ) 総 資 産 ( 右 軸 : 折 れ 線 グラフ)の 3 社 平 均 値 ) 3,500 3,000 有 形 固 定 資 産 ( 親 企 業 単 独 ) 有 形 固 定 資 産 (グループ) 総 資 産 ( 親 企 業 単 独 ) 総 資 産 (グループ) 14,000 12,000 2,500 10,000 2,000 8,000 1,500 6,000 1,000 4,000 500 2,000 0 t-5 年 t-4 年 t-3 年 t-2 年 t-1 年 t 年 t+1 年 t+2 年 t+3 年 t+4 年 0 ( 注 )t 年 は 持 株 会 社 制 に 移 行 した 基 準 年 ( 出 典 ) 日 経 Financial Quest から 筆 者 作 成 -11-
図 表 8 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 の 有 形 固 定 資 産 総 資 産 ( 単 位 : 億 円 有 形 固 定 資 産 ( 左 軸 : 棒 グラフ) 総 資 産 ( 右 軸 : 折 れ 線 グラフ)の 3 社 平 均 値 ) 8,000 7,000 有 形 固 定 資 産 ( 親 企 業 単 独 ) 有 形 固 定 資 産 (グループ) 総 資 産 ( 親 企 業 単 独 ) 総 資 産 (グループ) 30,000 25,000 6,000 5,000 20,000 4,000 15,000 3,000 10,000 2,000 1,000 5,000 0 t-5 年 t-4 年 t-3 年 t-2 年 t-1 年 t 年 t+1 年 t+2 年 t+3 年 t+4 年 0 ( 出 典 ) 日 経 Financial Quest から 筆 者 作 成 次 に 売 上 高 従 業 員 数 といった 観 点 から 企 業 の 事 業 活 動 を 見 ると 先 ほどと 同 様 の 傾 向 を 見 ることができる( 図 表 9 図 表 10) すなわち 持 株 会 社 制 へ 移 行 しなかった 企 業 の 状 況 と 比 較 する( 図 表 10)と 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 企 業 については 親 企 業 単 独 の 売 上 高 及 び 従 業 員 数 は 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 時 点 において 急 激 に 減 少 する( 図 表 9) つ まり 事 業 活 動 の 多 くを 親 会 社 である 持 株 会 社 ではなく 子 会 社 関 連 会 社 である 事 業 会 社 に 移 管 していることが 示 唆 される -12-
図 表 9 持 株 会 社 制 に 移 行 した 企 業 の 売 上 高 従 業 員 数 ( 単 位 : 億 円 人 3 社 平 均 値 ) 売 上 高 ( 親 企 業 単 独 ) 売 上 高 (グルー プ) 従 業 員 数 ( 親 企 業 単 独 ) 従 業 員 数 (グルー プ) t-5 年 7,133 10,381 12,046 32,296 t-4 年 6,974 10,300 10,681 31,285 t-3 年 7,082 10,562 10,302 31,374 t-2 年 6,675 10,283 9,670 29,994 t-1 年 6,708 10,377 8,990 29,478 t 年 1,970 9,901 417 28,107 t+1 年 302 10,964 350 27,268 t+2 年 396 11,548 343 26,708 t+3 年 393 11,865 339 26,424 t+4 年 454 12,302 364 27,068 ( 注 )t 年 は 持 株 会 社 制 に 移 行 した 基 準 年 図 表 10 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 の 売 上 高 従 業 員 数 ( 単 位 : 億 円 人 3 社 平 均 値 ) 売 上 高 ( 親 企 業 単 独 ) 売 上 高 (グルー プ) 従 業 員 数 ( 親 企 業 単 独 ) 従 業 員 数 (グルー プ) t-5 年 15,351 23,189 22,795 67,371 t-4 年 14,797 22,376 22,068 68,343 t-3 年 16,195 23,799 21,458 70,170 t-2 年 14,459 22,875 20,410 72,309 t-1 年 14,350 23,006 19,349 71,688 t 年 14,040 22,800 16,803 69,438 t+1 年 15,010 24,111 16,465 70,946 t+2 年 16,307 25,778 16,691 73,956 t+3 年 17,634 27,993 16,897 76,049 t+4 年 18,623 29,829 17,207 81,258 (ⅲ) 研 究 開 発 活 動 次 に 研 究 開 発 費 の 動 向 から 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 企 業 の 研 究 開 発 活 動 を 見 てみる 図 表 11は 持 株 会 社 制 に 移 行 した 企 業 の 研 究 開 発 費 (3 社 平 均 値 )を 示 したものであり 図 表 12は 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 の 研 究 開 発 費 (3 社 平 均 値 )を 示 したもので ある -13-
図 表 11 持 株 会 社 制 に 移 行 した 企 業 の 研 究 開 発 費 動 向 ( 単 位 : 億 円 3 社 平 均 値 ) 1,800 1,600 研 究 開 発 費 ( 親 企 業 単 独 ) 研 究 開 発 費 (グループ) 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 t-5 年 t-4 年 t-3 年 t-2 年 t-1 年 t 年 t+1 年 t+2 年 t+3 年 t+4 年 ( 注 )t 年 は 持 株 会 社 制 に 移 行 した 基 準 年 ( 出 典 ): 日 経 Financial Quest から 筆 者 作 成 図 表 12の 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 の 研 究 開 発 費 動 向 (3 社 平 均 値 )と 比 較 す ると 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 時 点 において 研 究 開 発 費 は 半 分 程 度 になっていることが 明 ら かである( 図 表 11) したがって 事 業 活 動 だけではなく 研 究 開 発 活 動 の 多 くも 親 会 社 である 持 株 会 社 ではなく 子 会 社 関 連 会 社 である 事 業 会 社 に 移 管 していることが 示 唆 さ れる -14-
図 表 12 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 の 研 究 開 発 費 動 向 ( 単 位 : 億 円 3 社 平 均 値 ) 6,000 5,000 研 究 開 発 費 ( 親 企 業 単 独 ) 研 究 開 発 費 (グループ) 4,000 3,000 2,000 1,000 0 t-5 年 t-4 年 t-3 年 t-2 年 t-1 年 t 年 t+1 年 t+2 年 t+3 年 t+4 年 ( 出 典 ): 日 経 Financial Quest から 筆 者 作 成 (ⅳ) 知 的 財 産 活 動 最 後 に 出 願 件 数 及 び 出 願 特 許 の 請 求 項 数 (3 社 平 均 値 )の 動 向 から 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 企 業 の 知 的 財 産 活 動 ( 特 許 取 得 の 側 面 )を 見 てみる 図 表 13は 持 株 会 社 制 に 移 行 した 企 業 の 出 願 件 数 および 出 願 特 許 の 請 求 項 数 を 示 したものであり 図 表 14は 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 の 出 願 件 数 および 出 願 特 許 の 請 求 項 数 を 示 したものである 図 表 14の 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 とは 異 なり さきに 見 た 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 と 同 様 に 親 企 業 の 出 願 件 数 は 持 株 会 社 制 へ 移 行 と 同 時 に 大 幅 に 減 少 している( 図 表 13) 他 方 親 企 業 の 請 求 項 数 は 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 よりもわずかに 上 昇 の 程 度 が 大 きい また グループ 全 体 で 見 ると 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 と 比 較 すると 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 時 点 においてより 出 願 件 数 は 減 少 し より 請 求 項 数 は 増 加 していることが 明 らかである( 図 表 13) つまり 持 株 会 社 制 に 移 行 することで 請 求 項 数 が 多 いような 質 の 高 い 発 明 のみに 絞 って 特 許 を 出 願 する 傾 向 が 高 くなり 発 明 の 質 で 選 別 して 出 願 している 点 で 企 業 グループ 全 体 として 知 的 財 産 管 理 が 効 率 的 になったことが 示 唆 される -15-
図 表 13 持 株 会 社 制 に 移 行 した 企 業 の 出 願 件 数 と 請 求 項 数 の 動 向 ( 単 位 : 件 ( 左 軸 棒 グラ フ) 個 ( 右 軸 折 れ 線 グラフ) 3 社 平 均 値 ) 5,000 4,500 4,000 出 願 件 数 ( 親 会 社 単 独 ) 出 願 件 数 (グループ) 平 均 請 求 項 数 ( 親 会 社 単 独 ) 平 均 請 求 項 数 (グループ) 10 9 8 3,500 7 3,000 6 2,500 5 2,000 4 1,500 3 1,000 2 500 1 0 t-4 年 t-3 年 t-2 年 t-1 年 t 年 t+1 年 t+2 年 t+3 年 0 ( 注 )t 年 は 持 株 会 社 制 に 移 行 した 基 準 年 ( 出 典 ): IIP 特 許 データベース から 筆 者 作 成 -16-
図 表 14 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 の 出 願 件 数 と 請 求 項 数 の 動 向 ( 単 位 : 件 ( 左 軸 棒 グラフ) 個 ( 右 軸 折 れ 線 グラフ) 3 社 平 均 値 ) 9,000 8,000 7,000 出 願 件 数 ( 親 会 社 単 独 ) 出 願 件 数 (グループ) 平 均 請 求 項 数 ( 親 会 社 単 独 ) 平 均 請 求 項 数 (グループ) 12 10 6,000 8 5,000 4,000 6 3,000 4 2,000 1,000 2 0 t-4 年 t-3 年 t-2 年 t-1 年 t 年 t+1 年 t+2 年 t+3 年 0 ( 出 典 ): IIP 特 許 データベース から 筆 者 作 成 -17-
図 表 15 審 査 請 求 率 の 推 移 ( 持 株 会 社 制 移 行 会 社 と 持 株 会 社 制 非 移 行 会 社 ) 75% 70% 親 会 社 単 独 ( 持 ) グループ 全 体 ( 持 ) 親 会 社 単 独 ( 非 持 ) グループ 全 体 ( 非 持 ) 65% 60% 55% 50% 45% 40% 35% 30% t-12 年 t-11 年 t-10 年 t-9 年 t-8 年 t-7 年 t-6 年 t-5 年 t-4 年 t-3 年 t-2 年 t-1 年 t 年 t+1 年 t+2 年 ( 注 ) 持 = 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 企 業 非 持 = 持 株 会 社 制 へ 移 行 しなかった 企 業 ここでは 持 株 会 社 移 行 年 である t 年 から 7 年 前 の t-7 年 が 基 準 年 ( 出 典 ) IIP 特 許 データベース から 筆 者 作 成 次 に 審 査 請 求 率 の 動 向 から 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 企 業 の 知 的 財 産 活 動 ( 特 許 利 用 の 側 面 )を 見 てみる 図 表 15は 持 株 会 社 制 に 移 行 した 企 業 と 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかっ た 企 業 の 審 査 請 求 率 を 示 したものである 持 株 会 社 制 に 移 行 しなかった 企 業 とは 異 なり 親 企 業 単 独 の 審 査 請 求 率 および 企 業 グル ープ 全 体 の 審 査 請 求 率 は 高 まる 傾 向 が 明 らかである( 図 表 15) つまり 持 株 会 社 制 に 移 行 することで 企 業 グループ 全 体 として 事 業 資 産 の 整 理 統 合 を 行 い 企 業 が 保 有 する 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めていることが 示 唆 される したがって 企 業 が 保 有 する 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めるという 点 で 知 的 財 産 管 理 が 効 率 的 になっていることが 示 唆 される (3) 計 量 分 析 前 節 において 持 株 会 社 制 移 行 した 企 業 および 持 株 会 社 制 移 行 しなかった 企 業 につき 3 活 動 ( 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 )の 動 向 を 図 表 により 概 観 してきた し かし このような 各 企 業 活 動 は 産 業 全 体 の 市 場 動 向 や 企 業 別 研 究 開 発 活 動 の 動 向 など 様 々 な 要 因 から 影 響 を 受 けるため 持 株 会 社 制 移 行 が 及 ぼす 影 響 をより 正 確 に 抽 出 したとは 言 -18-
い 難 い したがって 3 活 動 の 中 でも 知 的 財 産 活 動 に 着 目 し 企 業 グループ 別 技 術 分 野 別 のパネル 分 析 を 行 うことで より 厳 密 に 持 株 会 社 制 移 行 の 影 響 を 明 らかにする (ⅰ) 推 計 式 および 推 計 モデル 本 稿 では さきにあげた 仮 説 を 検 証 するため 以 下 の 推 計 式 を 考 える つまり 知 的 財 産 活 動 のうち 特 許 を 取 得 する 活 動 および 特 許 を 利 用 しようとする 活 動 の 2 つに 分 けて 考 え 次 のように 特 許 取 得 活 動 の 関 数 をおく 特 許 取 得 活 動 =f( 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 持 株 会 社 制 移 行 ダミー その 他 要 因 ) ここで 特 許 取 得 活 動 を 表 す 変 数 として 量 的 観 点 から 出 願 件 数 質 的 観 点 から 出 願 時 平 均 請 求 項 数 を 考 える さらに 事 業 活 動 として 連 結 従 業 員 数 連 結 売 上 高 連 結 有 形 固 定 資 産 を 利 用 する 研 究 開 発 活 動 として 連 結 研 究 開 発 集 約 度 (= 連 結 研 究 開 発 費 / 連 結 売 上 高 )を 使 う 最 後 に 特 許 取 得 活 動 に 様 々な 要 因 を 影 響 を 及 ぼすコントロールすべ き 変 数 として 企 業 年 齢 産 業 別 売 上 高 成 長 率 出 願 年 ダミーを 利 用 する 4 次 に 特 許 を 利 用 する 活 動 について 推 計 式 は 以 下 の 通 りである 特 許 利 用 活 動 =f( 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 持 株 会 社 制 移 行 ダミー その 他 要 因 ) ここで 特 許 利 用 活 動 として 連 結 審 査 請 求 率 (= 審 査 請 求 件 数 / 特 許 出 願 件 数 )を 考 える さらに 事 業 活 動 として 特 許 取 得 活 動 と 同 様 に 連 結 従 業 員 数 連 結 売 上 高 連 結 有 形 固 定 資 産 を 利 用 する 研 究 開 発 活 動 として 連 結 研 究 開 発 集 約 度 (= 連 結 研 究 開 発 費 / 連 結 売 上 高 )を 使 う 最 後 に 特 許 取 得 活 動 に 様 々な 要 因 を 影 響 を 及 ぼすコントロール すべき 変 数 として 企 業 年 齢 産 業 別 売 上 高 成 長 率 出 願 時 平 均 請 求 項 数 出 願 年 ダミー を 利 用 する また 被 説 明 変 数 として 出 願 件 数 を 使 う 場 合 推 計 モデルとして 負 の2 項 モデル (Negative Binominal Model)を 利 用 する 5 それ 以 外 については 推 計 モデルとしてパネル 分 析 モデルを 利 用 する 4 産 業 別 売 上 高 成 長 率 は 図 表 16 にもあるように 企 業 が 所 属 している 産 業 の 売 上 高 成 長 率 をデータとして 利 用 してい るため 被 説 明 変 数 の 技 術 分 野 との 対 応 関 係 が 厳 密 ではないことには 注 意 する 必 要 がある 5 説 明 変 数 の 多 くはストックデータなので 計 量 分 析 において クラスタリングを 使 った 推 計 方 法 が 望 ましいが 本 稿 ではそのような 手 法 を 利 用 していない -19-
(ⅱ)データ 本 稿 で 用 いるデータ 及 び 変 数 の 説 明 を 図 表 16に 示 した 6 本 稿 では 図 表 で 各 活 動 の 動 向 を 見 た 6 社 につき 1985 年 から 2005 年 までの 特 許 出 願 データおよび 審 査 請 求 データを 用 い 企 業 グループ 技 術 分 野 出 願 年 のパネル 推 計 を 主 に 行 う なお 審 査 請 求 率 を 被 説 明 変 数 としている 特 許 利 用 の 推 計 では 持 株 会 社 制 移 行 時 点 から 審 査 請 求 期 間 である 7 年 前 にずらして 持 株 会 社 制 移 行 ダミーを 作 成 した これにより 持 株 会 社 制 に 移 行 する 以 前 に 出 願 された 特 許 発 明 と 持 株 会 社 制 に 移 行 した 後 に 出 願 された 特 許 発 明 に 対 する 効 果 を 比 較 することが 可 能 となる 図 表 17 図 表 18に 基 本 統 計 量 を 図 表 19 図 表 20に 相 関 係 数 表 を 示 す 図 表 16 変 数 の 説 明 変 数 定 義 出 典 連 結 特 許 出 願 件 数 グループ 全 体 の 特 許 出 願 件 数 IIP-DB(( 財 ) 知 的 財 産 研 究 連 結 出 願 時 請 求 項 数 グループ 全 体 の 特 許 出 願 件 数 IIP-DB(( 財 ) 知 的 財 産 研 究 連 結 審 査 請 求 率 グループ 全 体 の 審 査 請 求 率 IIP-DB(( 財 ) 知 的 財 産 研 究 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) グループ 全 体 の 売 上 高 の 対 数 日 経 Financial Quest 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) グループ 全 体 の 従 業 員 数 の 対 数 日 経 Financial Quest 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 ) グループ 全 体 の 有 形 固 定 資 産 の 対 数 日 経 Financial Quest 連 結 研 究 開 発 集 約 度 連 結 研 究 開 発 費 / 連 結 売 上 高 連 結 研 究 開 発 集 約 度 がなければ 単 独 研 究 開 発 日 経 Financial Quest 集 約 度 を 利 用 持 株 会 社 制 移 行 ダミー 持 株 会 社 制 移 行 前 0 移 行 後 1 各 社 有 価 証 券 報 告 書 ホーム ページ 産 業 別 売 上 高 成 長 率 企 業 が 所 属 している 産 業 の 売 上 高 成 長 率 日 経 Financial Quest 企 業 年 齢 2009 年 現 在 の 企 業 の 年 齢 日 経 Financial Quest 出 願 年 ダミー 出 願 年 ベースのダミー 変 数 IIP-DB(( 財 ) 知 的 財 産 研 究 所 ) 図 表 17 基 本 統 計 量 ( 特 許 取 得 用 推 計 ) 変 数 サンプル 数 平 均 値 標 準 偏 差 最 小 値 最 大 値 連 結 特 許 出 願 件 数 5890 67.15501 243.6457 1 3128 連 結 出 願 時 請 求 項 数 5871 6.105094 4.665935 1 60 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) 5890 14.10297 0.7328727 12.50562 15.23367 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) 5890 10.54198 0.8326349 8.795733 11.66749 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 ) 5890 12.73552 0.6989759 11.28477 13.77647 連 結 研 究 開 発 集 約 度 5890 0.0531746 0.0227735 0.0256249 0.1261055 持 株 会 社 制 移 行 ダミー 5890 0.0903226 0.2866677 0 1 産 業 別 売 上 高 成 長 率 5890 0.0511172 0.1209397-0.1382677 0.5704395 企 業 年 齢 5890 69.79677 8.053625 49 85 6 説 明 変 数 は 被 説 明 変 数 の 1 年 前 のデータを 利 用 している -20-
図 表 18 基 本 統 計 量 ( 特 許 利 用 用 推 計 ) 変 数 サンプル 数 平 均 値 標 準 偏 差 最 小 値 最 大 値 連 結 審 査 請 求 率 5871 0.5741753 0.3358171 0 1 連 結 特 許 出 願 件 数 5871 67.36859 244.0108 1 3128 連 結 出 願 時 請 求 項 数 5871 6.105094 4.665935 1 60 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) 5871 14.10253 0.7329791 12.50562 15.23367 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) 5871 10.5413 0.8328392 8.795733 11.66749 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 ) 5871 12.73545 0.699229 11.28477 13.77647 連 結 研 究 開 発 集 約 度 5871 0.053191 0.0227926 0.0256249 0.1261055 持 株 会 社 制 移 行 ダミー 5871 0.3105093 0.4627415 0 1 産 業 別 売 上 高 成 長 率 5871 0.0512057 0.1211207-0.1382677 0.5704395 企 業 年 齢 5871 69.77806 8.049462 49 85 図 表 19 相 関 係 数 表 ( 特 許 取 得 用 推 計 ) (obs=5890) [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [1] 連 結 特 許 出 願 件 数 1 [2] 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) 0.1356 1 [3] 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) 0.1505 0.9735 1 [4] 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 ) 0.1267 0.9414 0.8805 1 [5] 連 結 研 究 開 発 集 約 度 0.1484 0.3226 0.4207 0.3071 1 [6] 持 株 会 社 制 移 行 ダミー -0.0237-0.1073-0.1247-0.12-0.1658 1 [7] 産 業 別 売 上 高 成 長 率 0.0045 0.0069 0.0281-0.0373 0.148-0.0331 1 [8] 企 業 年 齢 -0.0317 0.119 0.0522 0.0681-0.5676 0.2204-0.0659 1 図 表 20 相 関 係 数 表 ( 特 許 利 用 用 推 計 ) (obs=5871) [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [1] 連 結 審 査 請 求 率 1 [2] 連 結 特 許 出 願 件 数 -0.0656 1 [3] 連 結 出 願 時 請 求 項 数 -0.0629 0.1161 1 [4] 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) -0.1139 0.136 0.2604 1 [5] 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) -0.1326 0.1509 0.2771 0.9735 1 [6] 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 ) -0.1133 0.1269 0.2789 0.9415 0.8806 1 [7] 連 結 研 究 開 発 集 約 度 -0.1935 0.1484 0.2641 0.3226 0.4208 0.3065 1 [8] 持 株 会 社 制 移 行 ダミー 0.0332-0.0293 0.049-0.2203-0.2139-0.2045-0.318 1 [9] 産 業 別 売 上 高 成 長 率 -0.0658 0.0043 0.0111 0.0071 0.0284-0.0372 0.1479-0.1293 1 [10] 企 業 年 齢 0.1565-0.0312 0.0654 0.1186 0.0517 0.0683-0.5673 0.1716-0.0652 1 (ⅲ) 推 計 結 果 図 表 21は 企 業 グループ 全 体 の 特 許 取 得 活 動 に 関 する 推 計 結 果 で 被 説 明 変 数 として 量 的 観 点 から 連 結 出 願 件 数 を 利 用 したものである なお 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) 及 び 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 )はともに 相 関 が 非 常 に 強 いため 各 変 数 を 代 替 的 に 推 計 式 に 含 めて 利 用 した 図 表 21を 見 ると 持 株 会 社 制 移 行 ダミーが 負 で 1% 水 準 で 統 計 的 に 有 意 になってい る つまり 持 株 会 社 制 に 移 行 することで 企 業 グループ 全 体 として 絞 って 特 許 出 願 して いることが 示 唆 される さらに 研 究 開 発 集 約 度 は 正 で 1%~5% 水 準 で 統 計 的 に 有 意 -21-
である これは 研 究 開 発 活 動 が 特 許 出 願 に 正 の 影 響 を 及 ぼしており 特 許 生 産 関 数 に 関 する 先 行 研 究 と 整 合 的 である これら 2 つの 事 実 から 持 株 会 社 制 に 移 行 することで グ ループ 全 体 の 研 究 開 発 活 動 の 統 括 管 理 が 効 率 的 になり より 質 の 高 い 発 明 に 絞 って 出 願 していることが 示 唆 される 図 表 21 推 計 結 果 ( 特 許 取 得 に 関 する 推 計 ; 被 説 明 変 数 = 連 結 出 願 件 数 ) 固 定 効 果 固 定 効 果 固 定 効 果 固 定 効 果 ランダム 効 果 プール (1) (2) (3) (4) (5) (6) 連 結 出 願 件 数 連 結 出 願 件 数 連 結 出 願 件 数 連 結 出 願 件 数 連 結 出 願 件 数 連 結 出 願 件 数 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) -0.0469-0.0468 0.0103 0.5751*** [0.0349] [0.0346] [0.0320] [0.0402] 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) -0.1816*** [0.0338] 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 ) -0.1239*** [0.0337] 連 結 研 究 開 発 集 約 度 1.6843** 2.0942** 1.7504** 1.6792** 1.7990** 17.2071*** [0.8388] [0.8418] [0.8415] [0.7525] [0.8293] [1.6670] 持 株 会 社 制 移 行 ダミー -0.3205*** -0.3459*** -0.3289*** -0.3204*** -0.3083*** -0.072 [0.0402] [0.0403] [0.0401] [0.0395] [0.0403] [0.1043] 産 業 別 売 上 高 成 長 率 0.4297*** 0.4972*** 0.4419*** 0.4298*** 0.3620** -0.1061 [0.1553] [0.1549] [0.1530] [0.1552] [0.1565] [0.3910] 企 業 年 齢 0.0001 0.003 0.0007 0.0002-0.0212*** [0.0044] [0.0045] [0.0044] [0.0042] [0.0050] 定 数 項 -0.0881 0.9422** 0.7291-0.0853-0.8771* -5.7216*** [0.5309] [0.4237] [0.4850] [0.4915] [0.4933] [0.5386] 出 願 年 ダミー YES YES YES YES YES YES サンプル 数 5890 5890 5890 5890 5890 5890 対 数 尤 度 -17366.122-17352.154-17360.183-17366.122-20549.258-26191.966 ( 注 ) 括 弧 内 は 標 準 偏 差 *は10% 有 意 水 準 **は5% 有 意 水 準 ***は1% 有 意 水 準 各 推 計 も 負 の2 項 モデル(Negative Binominal Model)で 推 計 図 表 22は 企 業 グループ 全 体 の 特 許 取 得 活 動 に 関 する 推 計 結 果 で 被 説 明 変 数 として 質 的 観 点 から 連 結 請 求 項 数 を 利 用 したものである 図 表 22を 見 ると 持 株 会 社 制 移 行 ダミーが 正 で 1% 水 準 で 統 計 的 に 有 意 になってい る((1) 式 (2) 式 ) つまり 持 株 会 社 制 に 移 行 することで 企 業 グループ 全 体 として 質 の 高 い 特 許 出 願 がなされていることが 示 唆 される したがって 先 ほどの 量 的 な 観 点 か らの 推 計 結 果 とあわせて 考 えると 持 株 会 社 制 に 移 行 することで 質 の 高 い 発 明 のみに 絞 って 特 許 を 出 願 する 傾 向 が 高 くなり 発 明 の 質 で 選 別 して 出 願 している その 点 で 企 業 グ ループ 全 体 として 知 的 財 産 管 理 が 効 率 的 になったことが 示 唆 される さらに 研 究 開 発 集 約 度 は 正 で 1%~10% 水 準 で 統 計 的 に 有 意 である これは 研 究 開 発 活 動 が 出 願 する 発 明 の 質 に 正 の 影 響 を 及 ぼしており 特 許 生 産 関 数 に 関 する 先 行 研 究 と 整 合 的 である -22-
図 表 22 推 計 結 果 ( 特 許 取 得 に 関 する 推 計 ; 被 説 明 変 数 = 連 結 請 求 項 数 ) 固 定 効 果 ランダム 効 果 プール (1) (2) (3) 連 結 請 求 項 数 連 結 請 求 項 数 連 結 請 求 項 数 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) 3.724*** 1.389*** 0.876*** [0.476] [0.129] [0.081] 連 結 研 究 開 発 集 約 度 11.622* 22.305*** 47.549*** [5.998] [4.320] [3.512] 持 株 会 社 制 移 行 ダミー 1.737*** 1.058*** 0.466* [0.243] [0.233] [0.243] 産 業 別 売 上 高 成 長 率 2.660*** 3.958*** 5.076*** [0.944] [0.934] [1.019] 企 業 年 齢 0.159*** -0.139*** -0.073*** [0.031] [0.018] [0.011] 定 数 項 -59.186*** -11.007*** -9.394*** [5.944] [1.945] [1.181] 出 願 年 ダミー YES YES YES サンプル 数 5871 5871 5871 修 正 済 み 決 定 係 数 ) 0.252 0.2453 0.314 ( 注 ) 括 弧 内 は 標 準 偏 差 *は10% 有 意 水 準 **は5% 有 意 水 準 ***は1% 有 意 水 準 図 表 23 推 計 結 果 ( 特 許 利 用 に 関 する 推 計 ; 被 説 明 変 数 = 連 結 審 査 請 求 率 ) 固 定 効 果 固 定 効 果 固 定 効 果 ランダム 効 果 プール (1) (2) (3) (4) (5) 連 結 審 査 請 求 率 連 結 審 査 請 求 率 連 結 審 査 請 求 率 連 結 審 査 請 求 率 連 結 審 査 請 求 率 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) -0.1880*** -0.074*** -0.055*** [0.0441] [0.011] [0.007] 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) -0.0957** [0.0435] 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 ) -0.0579* [0.0311] 研 究 開 発 集 約 度 1.9505*** 2.4660*** 2.6835*** 1.708*** 0.403 [0.5202] [0.5081] [0.4845] [0.368] [0.311] 持 株 会 社 制 移 行 ダミー 0.0848*** 0.1045*** 0.1026*** 0.097*** 0.062*** [0.0188] [0.0180] [0.0186] [0.014] [0.012] 産 業 別 売 上 高 成 長 率 -0.1553* -0.1911** -0.2040** -0.204** -0.226*** [0.0833] [0.0829] [0.0828] [0.080] [0.084] 企 業 年 齢 -0.0093*** -0.0136*** -0.0135*** 0.019*** 0.015*** [0.0028] [0.0026] [0.0027] [0.002] [0.001] 請 求 項 数 0.0071*** 0.0067*** 0.0068*** 0.006*** 0.005*** [0.0012] [0.0012] [0.0012] [0.001] [0.001] 定 数 項 3.7661*** 2.4146*** 2.1232*** 0.637*** 0.694*** [0.5434] [0.4216] [0.3439] [0.166] [0.102] 出 願 年 ダミー YES YES YES YES YES サンプル 数 5871 5871 5871 5871 5871 修 正 済 み 決 定 係 数 0.0642 0.0619 0.0616 0.0624 0.102 ( 注 ) 括 弧 内 は 標 準 偏 差 *は10% 有 意 水 準 **は5% 有 意 水 準 ***は1% 有 意 水 準 -23-
図 表 23は 企 業 グループ 全 体 の 特 許 利 用 活 動 に 関 する 推 計 結 果 で 被 説 明 変 数 として 連 結 審 査 請 求 率 を 利 用 したものである なお 先 の 特 許 取 得 活 動 と 同 様 に 連 結 売 上 高 ( 対 数 ) 連 結 従 業 員 数 ( 対 数 ) 及 び 連 結 有 形 固 定 資 産 ( 対 数 )はともに 相 関 が 非 常 に 強 いため 各 変 数 を 代 替 的 に 推 計 式 に 含 めて 利 用 した また 本 推 計 における 持 株 会 社 制 移 行 ダミーは 取 り 上 げた 3 社 が 実 際 に 持 株 会 社 制 に 移 行 した 7 年 前 を 基 準 年 とするダミー 変 数 である 図 表 23を 見 ると 持 株 会 社 制 移 行 ダミーが 正 で 1% 水 準 で 統 計 的 に 有 意 になってい る((1) 式 ~(5) 式 ) つまり 持 株 会 社 制 に 移 行 することで 企 業 グループ 全 体 とし て 事 業 資 産 の 整 理 統 合 を 行 い 企 業 が 保 有 する 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めていることが 示 唆 される したがって 企 業 が 保 有 する 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めるという 点 で 知 的 財 産 管 理 が より 効 率 的 になっていることが 示 唆 される また 連 結 請 求 項 数 が 正 で1% 水 準 で 統 計 的 に 有 意 であることから 質 の 高 い 発 明 が 審 査 請 求 されやすいことが 明 らかである( 図 表 23) (4) 結 語 本 稿 では 持 株 会 社 制 移 行 といった 企 業 再 編 によって 企 業 グループ 全 体 として 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 がどのように 変 化 したのかを 明 らかにしてきた 主 な 結 果 は 以 下 の 通 りである 第 1 に 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 事 業 活 動 の 多 くを 親 会 社 である 持 株 会 社 ではな く 子 会 社 関 連 会 社 である 事 業 会 社 に 移 管 していることが 確 認 された 同 時 に 研 究 開 発 活 動 の 多 くも 親 会 社 である 持 株 会 社 ではなく 子 会 社 関 連 会 社 である 事 業 会 社 に 移 管 していることも 確 認 された 第 2 に 厳 密 な 計 量 分 析 の 結 果 によれば 持 株 会 社 制 へ 移 行 することで 請 求 項 数 が 多 いような 質 の 高 い 発 明 のみに 絞 って 特 許 を 出 願 する 傾 向 が 高 くなっていることが 明 らかと なった したがって 発 明 の 質 で 選 別 し 出 願 しているといった 点 で 企 業 グループ 全 体 とし ての 知 的 財 産 管 理 がより 効 率 的 になったことが 明 らかとなった また 持 株 会 社 制 に 移 行 することで 企 業 グループ 全 体 として 事 業 資 産 の 整 理 統 合 を 行 い 企 業 が 保 有 する 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めていることが 確 認 された したがって 企 業 が 保 有 する 技 術 の 利 用 能 力 を 高 めるという 点 で 知 的 財 産 管 理 がより 効 率 的 になっていることが 示 唆 される 本 稿 の 課 題 は 以 下 の 通 りである 第 1 に 持 株 会 社 制 の 各 企 業 活 動 に 対 する 効 果 を 見 極 める 際 の 説 明 変 数 側 の 問 題 である 本 稿 では 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 際 の 組 織 構 造 を 単 なる 0 及 び1でしか 捉 えていない 永 田 (2004)のように 持 株 会 社 制 へ 移 行 したことにより 研 究 開 発 部 門 知 的 財 産 部 門 が 本 社 部 門 の 中 でどのような 位 置 づけに 変 化 したのか( 事 業 部 門 と 比 較 して 独 立 しているか 等 ) または 事 業 部 門 との 連 携 がどのようになったのかとい った 組 織 構 造 のパターン 化 を 行 うことが 持 株 会 社 制 の 各 企 業 活 動 に 対 する 効 果 を 見 極 め -24-
る 上 で 必 要 である 7 第 2 に 持 株 会 社 制 の 各 企 業 活 動 に 対 する 効 果 を 見 極 める 際 の 被 説 明 変 数 側 の 問 題 であ る 本 稿 では 被 説 明 変 数 として 知 的 財 産 活 動 を 示 す 連 結 出 願 件 数 連 結 出 願 時 請 求 項 数 連 結 審 査 請 求 率 といった 成 果 変 数 を 取 り 上 げた しかし 持 株 会 社 制 へ 移 行 したこと で 各 事 業 子 会 社 がどのような 役 割 を 果 たしているのか(たとえば 各 事 業 会 社 の 特 許 保 有 件 数 企 業 グループ 内 の 特 許 ライセンス 取 引 )といった 各 企 業 グループメンバーの 活 動 を 詳 細 に 把 握 することが 不 可 能 であった その 意 味 において 補 論 にて 議 論 されているよう に 知 的 財 産 活 動 調 査 の 有 用 性 が 今 後 期 待 される (5) 補 論 本 論 では 持 株 会 社 制 へ 移 行 した 効 果 を 日 経 Financial Quest や IIP-DB にもとづいて 見 てきた この 補 論 では 知 的 財 産 活 動 調 査 の 有 用 性 を 議 論 する 付 表 1は B 調 査 をベンチマークとして 知 的 財 産 活 動 調 査 における 各 調 査 項 目 ( 売 上 高 従 業 員 数 研 究 費 特 許 出 願 件 数 )の 比 率 を 示 した 後 述 のように グループ 全 体 の 連 結 売 上 高 が 親 企 業 単 独 の 単 独 売 上 高 の 約 200%であ ることを 考 えると( 付 表 2) 知 的 財 産 活 動 調 査 におけるグループ 親 企 業 単 独 が B 調 査 と 比 べて200% 弱 の 値 に 近 いことは 調 査 対 象 の 当 該 親 企 業 が 単 独 売 上 高 ではなく 連 結 売 上 高 を 回 答 していることを 示 唆 する 同 様 に 従 業 員 数 についても グループ 全 体 の 連 結 従 業 員 数 が 親 企 業 単 独 の 単 独 従 業 員 数 の 約 600%であるため 知 的 財 産 活 動 調 査 において 調 査 対 象 の 当 該 親 企 業 の 従 業 員 数 がグループ 全 体 の 従 業 員 数 を 回 答 したパター ンであるような 約 400%となっていることから 明 らかである ただし 研 究 費 や 特 許 出 願 件 数 といった 項 目 については 調 査 対 象 の 当 該 親 企 業 の 回 答 パターンを 付 表 1から 読 み 取 ることは 難 しい しかし 付 表 1の 企 業 グループ 全 体 を 見 ると 90~140%の 間 の 値 をとっている すなわち グループ 全 体 の 親 企 業 は 知 的 財 産 活 動 調 査 において 企 業 グループ 全 体 を 回 答 しているが 企 業 グループのメンバーは 当 該 企 業 自 身 の 状 況 を 回 答 しており 当 該 企 業 自 身 について 二 重 回 答 している 可 能 性 が 高 い 7 永 田 晃 也 知 的 財 産 マネジメント- 戦 略 と 組 織 構 造 中 央 経 済 社 2004 年 -25-
付 表 1 知 的 財 産 活 動 調 査 および 他 のデータソースとの 比 較 親 企 業 単 独 (A 調 査 ) / 親 企 業 単 独 (B 調 査 ) 企 業 グループ 全 体 (A 調 査 )/ 企 業 グループ 全 体 (B 調 査 ) B 調 査 売 上 高 191.23% 126.28% 日 経 Financial Quest 従 業 員 数 400.80% 96.91% 日 経 Financial Quest 研 究 費 133.45% 132.55% 日 経 Financial Quest 特 許 出 願 件 数 138.36% 104.30% IIP-DB ( 注 )A 調 査 とは 知 的 財 産 活 動 調 査 をさす 付 表 2は 各 調 査 において いわゆる 連 単 比 率 がどうなっているのかを 比 較 した 表 である これも 見 てもわかるように 売 上 高 や 従 業 員 数 は B 調 査 と 比 較 して 知 的 財 産 活 動 調 査 のそれらと 比 較 して 低 い 水 準 にとどまっており A 調 査 の 親 企 業 は 企 業 グループ 全 体 の 状 況 を 回 答 している 可 能 性 が 高 い しかし 研 究 費 や 特 許 出 願 件 数 についてはそうではない 傾 向 にある したがって 調 査 項 目 により グループの 親 企 業 の 回 答 パターンに 相 違 があ ることが 明 らかである 付 表 2 データソース 別 連 単 比 率 企 業 グループ 全 体 / 企 業 グループ 全 体 / 親 企 業 単 独 (A 調 査 ) 親 企 業 単 独 (B 調 査 ) B 調 査 売 上 高 146.01% 221.10% 日 経 Financial Quest 従 業 員 数 143.76% 594.53% 日 経 Financial Quest 研 究 従 業 者 数 138.25% x x 研 究 費 140.43% 138.35% 日 経 Financial Quest 知 財 従 業 者 数 125.57% x x 知 財 費 123.14% x x 特 許 出 願 件 数 120.09% 159.29% IIP-DB 審 査 請 求 件 数 124.53% x x 特 許 所 有 件 数 113.59% x x 自 社 実 施 件 数 116.40% x x ( 注 )A 調 査 とは 知 的 財 産 活 動 調 査 をさす 纏 めると 調 査 項 目 の 中 には グループの 親 企 業 がグループ 全 体 の 状 況 を 回 答 しており グループのメンバー 企 業 はその 企 業 自 身 の 状 況 を 回 答 している 可 能 性 が 高 い したがって 企 業 グループ 単 位 での 企 業 活 動 を 行 っている 日 本 企 業 の 場 合 親 企 業 の 状 況 だけではなく 企 業 グループ 支 配 下 の 子 会 社 関 連 会 社 の 状 況 を 見 ることができれば グループ 全 体 内 外 の 事 業 活 動 研 究 開 発 活 動 知 的 財 産 活 動 がどのような 状 況 にあるのかを 多 岐 にわた る 調 査 項 目 を 有 する 知 的 財 産 活 動 調 査 によって 把 握 することが 可 能 となる したがっ て 企 業 グループの 親 企 業 に 加 え 企 業 グループ 支 配 下 の 子 会 社 関 連 会 社 を 調 査 対 象 に している 知 的 財 産 活 動 調 査 は 今 後 さらにその 精 緻 さが 増 せば 非 常 に 有 用 なデータで あると 結 論 づけることができよう -26-