みずほインサイト 政 策 2015 年 11 月 27 日 地 方 圏 での 戦 略 型 企 業 誘 致 地 場 産 業 と 連 携 した 誘 致 による 自 立 的 発 展 が 有 効 政 策 調 査 部 主 任 研 究 員 上 村 未 緒 03-3591-1336 mio.uemura@mizuho-ri.co.jp 地 方 創 生 の 一 環 として 推 進 される 雇 用 創 出 の 代 表 的 な 手 法 に 企 業 誘 致 がある 地 域 経 済 の 持 続 的 な 発 展 に 繋 がるような 企 業 誘 致 には 自 治 体 の 主 体 的 戦 略 的 な 取 り 組 みが 重 要 である しかし これまで 行 われてきた 企 業 誘 致 は 地 方 圏 の 産 業 競 争 力 の 再 生 に 至 らないことも 多 く 戦 略 型 企 業 誘 致 の 実 施 は 自 治 体 にとって 容 易 ではない 過 去 の 経 験 を 踏 まえると 自 治 体 には 地 域 資 源 の 特 性 の 把 握 地 場 産 業 との 連 携 を 生 むような 誘 致 ターゲットの 設 定 進 出 企 業 の 競 争 力 強 化 に 向 けた 継 続 的 なフォローが 求 められる 1. 地 方 創 生 の 一 環 として 推 進 される 地 方 圏 での 企 業 誘 致 地 方 創 生 を 看 板 政 策 の 一 つに 掲 げる 安 倍 政 権 は 2060 年 に1 億 人 程 度 の 人 口 の 維 持 を 目 標 とする まち ひと しごと 創 生 長 期 ビジョン と ビジョンの 実 現 に 向 けた 施 策 を 体 系 的 に 示 した まち ひと しごと 創 生 総 合 戦 略 を 昨 年 末 に 公 表 した 同 時 に 国 は 自 治 体 に 対 し 地 方 人 口 ビジョン と 今 後 5 年 間 の 施 策 を 集 めた 地 方 版 総 合 戦 略 の2015 年 度 末 までの 策 定 を 求 めた この 期 限 について は 2016 年 度 の 予 算 編 成 との 関 連 で2015 年 10 月 末 までが 望 ましいとされたことから 1 10 月 末 時 点 で38 都 道 府 県 および728 市 区 町 村 で 地 方 人 口 ビジョン と 地 方 版 総 合 戦 略 の 策 定 作 業 が 終 了 した 残 る1,022の 自 治 体 の 大 半 も 年 度 内 に 戦 略 の 策 定 を 終 える 見 込 みである( 図 表 1) 地 方 創 生 関 連 2014 年 11 月 12 月 す 法 創 ま 創 ま る の 生 ち 生 ち 法 一 法 長 律 部 ひ 期 ひ 地 と と を ビ 域 改 し ジ し 正 再 ご ョ ご 生 と ン と 図 表 1 地 方 創 生 関 連 スケジュール 2015 年 2016 年 2 月 4 月 9 月 10 月 11 月 12 月 3 月 創 ま ( 三 先 地 生 ち 百 行 方 総 合 ひ 億 型 人 と 円 交 口 戦 ) 付 ビ 略 し 配 金 分 ジ ご 決 ョ と 定 ン 平 平 平 平 平 予 成 成 成 成 成 算 二 二 二 二 二 関 補 十 十 十 政 十 十 連 正 六 七 八 府 八 成 八 予 年 年 概 年 案 ( 年 立 ( 年 算 度 度 算 度 度 度 予 予 成 成 予 要 予 定 予 ) 定 予 ) 立 立 算 求 算 算 算 ( 資 料 ) まち ひと しごと 創 生 長 期 ビジョン (2014 年 12 月 27 日 閣 議 決 定 )などより みずほ 総 合 研 究 所 作 成 地 方 版 総 合 戦 略 総 合 戦 略 の 実 施 2017 年 3 月 成 果 検 証 1
これまでに 策 定 された 地 方 人 口 ビジョン と 地 方 版 総 合 戦 略 をみると 総 じて 2060 年 に1 億 人 程 度 の 人 口 を 維 持 するという 国 の 方 針 を 踏 まえた 内 容 となっている すなわち 長 期 的 に 各 自 治 体 の 人 口 流 出 に 歯 止 めがかかるという 未 来 像 が 地 方 人 口 ビジョン で 描 かれ それを 実 現 するため の 施 策 体 系 が 地 方 版 総 合 戦 略 で 示 されている 人 口 流 出 を 食 い 止 めるための 施 策 として 鍵 を 握 るのは 雇 用 の 創 出 である 雇 用 創 出 策 には 様 々なも のがあるが 本 稿 では 代 表 的 な 手 法 である 企 業 誘 致 に 焦 点 を 当 てる これまでも 地 域 産 業 振 興 地 域 活 性 化 の 文 脈 で 企 業 誘 致 は 行 われてきたが 残 念 ながら 地 域 経 済 の 持 続 的 な 発 展 につながるような 成 功 事 例 は 多 くない 企 業 誘 致 の 成 功 のためには 自 治 体 による 主 体 的 かつ 戦 略 的 な 誘 致 への 取 り 組 みが 重 要 であると 指 摘 されることが 多 い(ここでは 戦 略 型 企 業 誘 致 と 呼 ぶことにする) 2 本 稿 では これまでに 地 方 圏 で 実 施 されてきた 企 業 誘 致 を 振 り 返 り 今 後 自 治 体 が 取 り 組 むべき 戦 略 型 企 業 誘 致 のあり 方 について 考 察 する 2. 企 業 誘 致 の 視 点 からみた 地 域 産 業 政 策 の 変 遷 まず 本 節 では これまでの 地 域 産 業 政 策 のうち 企 業 誘 致 に 関 連 する 政 策 の 変 遷 を 振 り 返 る 3 日 本 では 戦 後 から 現 在 に 至 るまで 地 域 の 産 業 振 興 を 図 るための 産 業 立 地 政 策 が 講 じられてきた( 図 表 2) 1950 年 代 までの 戦 後 復 興 期 には 海 上 輸 送 に 関 するインフラが 整 った 臨 海 部 への 工 場 集 積 が 強 力 に 推 進 され 四 大 工 業 地 帯 ( 京 浜 中 京 阪 神 北 九 州 )への 人 口 や 産 業 の 過 度 な 集 中 が 起 こった 年 1959 工 業 等 制 限 法 (2002 年 廃 止 ) 60 太 平 洋 ベルト 地 帯 構 想 62 図 表 2 地 域 産 業 立 地 政 策 の 変 遷 主 要 な 法 律 の 制 定 や 計 画 の 策 定 全 国 総 合 開 発 計 画 新 産 業 都 市 建 設 促 進 法 (2001 年 廃 止 ) 64 工 業 整 備 特 別 地 域 整 備 促 進 法 (2001 年 廃 止 ) 69 新 全 国 総 合 開 発 計 画 72 工 業 再 配 置 促 進 法 (2006 年 廃 止 ) 73 工 場 立 地 法 77 第 三 次 全 国 総 合 開 発 計 画 高 度 技 術 工 業 集 積 地 域 開 発 促 進 法 [テクノポリス 法 ] 83 (1998 年 に 新 事 業 創 出 促 進 法 に 統 合 ) 87 第 四 次 全 国 総 合 開 発 計 画 88 地 域 産 業 の 高 度 化 に 寄 与 する 特 定 事 業 の 集 積 の 促 進 に 関 する 法 律 [ 頭 脳 立 地 法 ] (1998 年 に 新 事 業 創 出 促 進 法 に 統 合 ) 地 方 拠 点 都 市 地 域 の 整 備 及 び 産 業 業 務 施 設 の 再 配 置 の 促 進 に 関 する 92 法 律 [ 地 方 拠 点 法 ] 特 定 産 業 集 積 の 活 性 化 に 関 する 臨 時 措 置 法 [ 地 域 産 業 集 積 活 性 化 法 ] 97 (2007 年 廃 止 ) 第 五 次 全 国 総 合 開 発 計 画 98 新 事 業 創 出 促 進 法 (2005 年 に 中 小 企 業 新 事 業 活 動 促 進 法 に 統 合 ) 2001 産 業 クラスター 計 画 2005 中 小 企 業 新 事 業 活 動 促 進 法 企 業 立 地 の 促 進 等 による 地 域 における 産 業 集 積 の 形 成 及 び 活 性 化 に 2007 関 する 法 律 [ 企 業 立 地 促 進 法 ] ( 資 料 ) 松 原 宏 特 集 産 業 立 地 政 策 の 経 済 地 理 学 によせて ( 日 本 地 理 学 会 E-journal GEO 2014,Vol.9(2)) 等 より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 2
そのため 1960 年 代 からは 工 場 の 地 方 分 散 が 促 進 されるようになった 1972 年 には 工 業 再 配 置 促 進 法 が 制 定 され 産 業 集 積 の 高 い 地 域 から 低 い 地 域 への 工 場 の 再 配 置 が 図 られた こうした 政 策 によ って 人 口 や 所 得 の 地 域 間 格 差 に 縮 小 がみられるようになるなど 一 定 の 成 果 が 上 がったとされてい る 高 度 成 長 が 終 わり 安 定 成 長 期 に 入 った1980 年 代 には 地 域 経 済 の 発 展 を 通 じた 経 済 成 長 の 底 上 げが 重 視 されるようになり 地 方 の 位 置 付 けを 単 なる 製 造 拠 点 から 研 究 所 などの 知 的 生 産 拠 点 へと 転 換 さ せることを 狙 った 政 策 が 講 じられた 具 体 的 には ハイテク 産 業 の 集 積 を 促 す テクノポリス 法 (1983 年 )や 研 究 所 ソフトウェア 開 発 部 門 といった 産 業 の 頭 脳 となる 分 野 の 集 積 を 目 指 す 頭 脳 立 地 法 (1988 年 )が 制 定 されたほか 産 業 団 地 等 の ハコモノ の 造 成 を 中 心 とする 政 策 が 実 施 された しかしながら ハイテク 産 業 の 立 地 は 地 方 の 中 核 都 市 に 集 中 する 傾 向 がみられ 地 理 的 な 広 がりを 持 ったハイテク 産 業 の 地 方 移 転 が 実 現 するには 至 らなかった バブルが 崩 壊 した 後 の1990 年 代 は 産 業 構 造 の 変 化 やグローバル 化 の 進 展 に 伴 いアジアを 中 心 とす る 海 外 市 場 の 魅 力 が 相 対 的 に 高 まったことに 加 え 企 業 の 都 心 近 接 性 選 好 などもあり 地 方 での 工 場 立 地 の 割 合 が 低 下 した( 図 表 3) そこで 1997 年 には 地 域 産 業 集 積 活 性 化 法 が 制 定 され 地 域 の 既 存 産 業 の 活 性 化 を 通 じた 空 洞 化 の 防 止 が 図 られるようになった さらに 2000 年 代 からは 企 業 誘 致 促 進 政 策 が 地 域 の 自 立 を 促 すものへと 変 化 していった 2007 年 に 制 定 された 企 業 立 地 促 進 法 は 地 域 による 自 らの 強 みや 特 徴 を 踏 まえた 産 業 集 積 の 形 成 を 支 援 す ることを 目 的 としている こうした 政 策 の 変 化 の 背 景 には 1998 年 に 策 定 された 第 五 次 全 国 総 合 開 発 計 画 において 国 土 行 政 に 関 する 基 本 姿 勢 が 従 前 の 機 能 分 散 の 推 進 から 地 域 の 産 業 再 生 や 自 立 の 促 進 へと 大 きく 転 換 したことがある 図 表 3 工 場 立 地 件 数 の 推 移 70 65 60 55 50 45 40 (%) 地 方 圏 35 大 都 市 圏 30 1975 80 85 90 95 2000 05 10 ( 年 ) ( 注 ) 1. 全 国 の 工 場 立 地 件 数 に 占 める 地 域 ごとの 工 場 立 地 件 数 の 割 合 ( 水 力 発 電 所 地 熱 発 電 所 を 除 く 電 気 業 を 含 む) 2. 大 都 市 圏 は 関 東 地 域 東 海 地 域 近 畿 地 域 地 方 圏 は 大 都 市 圏 以 外 の 地 域 ( 資 料 ) 経 済 産 業 省 工 場 立 地 動 向 調 査 より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 3
3.これまでの 企 業 誘 致 の 帰 結 このように 2000 年 代 以 降 は 地 域 による 主 体 的 な 企 業 誘 致 の 取 り 組 みを 国 が 側 面 支 援 する 政 策 がと られてきた しかし 今 般 の 地 方 創 生 では まず 国 が 大 都 市 圏 から 地 方 圏 への 人 口 の 分 散 を 図 る 観 点 から 大 都 市 圏 の 居 住 者 の 地 方 への 移 住 や 地 域 の 観 光 産 業 の 振 興 企 業 の 本 社 機 能 の 地 方 への 移 転 促 進 といった 基 本 的 な 方 向 性 を 打 ち 出 し 自 治 体 側 ではこうした 国 の 方 針 に 沿 った 誘 致 計 画 を 作 ろ うとする 流 れが 形 成 されている 国 に 追 従 する 形 でのこのような 企 業 誘 致 は 必 ずしも 戦 略 型 企 業 誘 致 とはならない 可 能 性 がある そこで 戦 略 型 企 業 誘 致 のあり 方 について 考 えるために これ までに 実 施 されてきた 企 業 誘 致 を 結 果 的 にうまくいったのかどうかという 視 点 からいくつかに 類 型 化 し それぞれの 帰 結 とその 要 因 について 示 すこととしたい まず 地 域 の 持 続 的 な 経 済 成 長 につながらず 成 功 しなかった 企 業 誘 致 としては 1 企 業 誘 致 が ほとんど 進 まないパターンと 2 企 業 の 誘 致 には 至 ったが その 後 企 業 が 撤 退 するパターンの 大 きく 二 つがある 1は 1980 年 代 に 盛 んに 行 われたハイテク 産 業 の 誘 致 でみられたもので 例 えば 自 治 体 が 政 府 の 補 助 事 業 に 合 わせてハコモノを 整 備 したものの ビルのテナントはまばらで 人 も 集 まらない といったケースが 散 見 された 2は 企 業 の 生 産 拠 点 等 の 誘 致 には 成 功 したものの その 後 の 業 況 悪 化 等 を 受 けて 当 該 企 業 が 生 産 拠 点 の 集 約 再 配 置 を 行 い 撤 退 してしまうパターンである こうした 結 果 を 招 くに 至 った 要 因 はもちろんケース バイ ケースであろうが 例 えば1について は 地 域 の 特 性 とは 無 関 係 に 国 の 方 針 に 沿 った 誘 致 がなされたり 企 業 の 望 む 立 地 環 境 が 自 治 体 によ って 十 分 に 把 握 されていなかったりしたためと 指 摘 されることが 多 い 2については いったんは 誘 致 に 至 っているので 誘 致 実 現 に 向 けた 対 象 企 業 の 絞 り 込 みや 企 業 ニーズの 把 握 調 査 といった 自 治 体 による 事 前 の 働 きかけはそれなりに 企 業 を 惹 きつけるものであったはずである しかし 既 存 の 地 場 産 業 と 進 出 企 業 との 連 携 促 進 や 進 出 企 業 の 継 続 的 な 成 長 を 促 すフォローなど 撤 退 を 予 防 するよ うな 誘 致 後 の 自 治 体 の 努 力 が 十 分 ではなかったと 考 えられる 一 方 で 地 道 な 誘 致 が 奏 功 して 一 定 の 企 業 集 積 が 形 成 され 持 続 的 な 地 域 経 済 の 発 展 につながるな ど 成 功 した ケースもある 例 えば 東 北 地 方 有 数 の 工 業 集 積 地 である 岩 手 県 北 上 市 は 企 業 誘 致 がうまくいった 代 表 的 な 例 として 取 り 上 げられることが 多 い 北 上 市 では 1950 年 代 後 半 から 土 地 の 有 効 活 用 と 市 民 の 働 く 場 の 確 保 のために 工 業 都 市 化 が 目 指 され 市 が 独 自 に 工 業 団 地 の 用 地 買 収 造 成 企 業 誘 致 を 展 開 した 4 その 結 果 次 第 に 工 業 団 地 の 整 備 が 進 むとともに 企 業 誘 致 によって 機 械 工 業 を 中 心 とする 産 業 集 積 が 形 成 されていった 1980 年 代 には テクノポリス 法 の 活 用 などにより 高 度 技 術 産 業 の 集 積 が 進 められた ある 程 度 産 業 集 積 が 形 成 されてからは 既 存 の 集 積 企 業 と 関 連 す る 周 辺 産 業 の 拠 点 化 も 図 られるようになった 現 在 北 上 市 には8つの 工 業 団 地 が 存 在 するほか 工 業 団 地 で 使 用 製 造 される 原 材 料 製 品 を 円 滑 に 流 通 させるための 拠 点 ( 北 上 流 通 基 地 )や 企 業 の 研 究 開 発 営 業 本 社 機 能 等 の 立 地 を 目 的 とした 集 積 地 ( 北 上 産 業 業 務 団 地 )が 造 成 されるなど 工 業 分 野 の 川 上 から 川 下 までを 広 くターゲット 化 した 誘 致 が 進 められている このような 北 上 市 における 企 業 誘 致 の 歴 史 を 既 述 の 成 功 しなかった パターンと 対 比 させてみ 4
ると 同 市 による 誘 致 が 成 功 した 要 因 として(a) 市 が 自 主 的 に 目 標 を 明 確 化 して 独 自 性 のある 誘 致 策 を 展 開 したこと (b) 集 積 が 進 むにつれて 既 存 の 産 業 集 積 を 質 的 に 発 展 させる 方 向 に 誘 致 政 策 を 変 化 させてきたこと (c) 電 子 デバイスや 自 動 車 産 業 用 機 械 といった 機 械 工 業 の 製 造 部 門 を 中 心 とし つつ 物 流 部 門 研 究 開 発 部 門 といった 幅 広 い 機 能 の 集 積 が 意 識 されたこと (d) 立 地 企 業 の 技 術 の 高 度 化 やイノベーション 創 出 の 支 援 等 企 業 の 発 展 に 向 けたきめ 細 かなフォローを 継 続 したことなど が 浮 かび 上 がる 4.これからの 戦 略 型 企 業 誘 致 のあり 方 以 上 述 べてきた 企 業 誘 致 の 代 表 的 パターンを 参 考 に 今 後 の 戦 略 型 企 業 誘 致 のあり 方 を 考 える と 大 事 なポイントを3 点 ほど 指 摘 できる 第 一 に 自 治 体 は 誘 致 計 画 を 立 てるにあたり 地 域 の 既 存 の 産 業 集 積 や 労 働 力 といった 地 域 資 源 の 特 性 をしっかりと 把 握 する 必 要 がある 第 二 に 誘 致 し た 企 業 による 地 域 経 済 への 貢 献 を 期 待 するならば 既 存 の 地 域 資 源 を 有 効 活 用 するという 観 点 から 地 場 産 業 との 連 携 を 生 むような 産 業 分 野 や 機 能 を 誘 致 ターゲットとして 設 定 することが 大 切 である そして 第 三 に 誘 致 した 後 も 自 治 体 は 進 出 企 業 に 対 するきめ 細 かなフォローを 行 うなど その 競 争 力 の 継 続 的 な 向 上 を 支 援 することが 重 要 である 第 二 の 点 については 単 に 誘 致 する 産 業 分 野 を 絞 り 込 む だけではなく 当 該 産 業 と 有 機 的 な 関 連 をもつと 考 えられる 業 種 や 機 能 にも 誘 致 対 象 を 広 げていく 発 想 が 重 要 である 国 家 戦 略 特 区 5 に 指 定 された 兵 庫 県 養 父 市 は こうした 視 点 に 立 った 戦 略 的 企 業 誘 致 に 取 り 組 んでいる 好 事 例 と 言 える 同 市 は 中 山 間 地 に 位 置 し 農 業 を 基 幹 産 業 としているが 少 子 高 齢 化 によって 担 い 手 の 減 少 に 直 面 して いる そこで 同 市 では 農 作 物 の 生 産 のみならず 農 業 の 周 辺 産 業 として 加 工 販 売 事 業 を 行 う 地 域 外 の 企 業 も 積 極 的 に 誘 致 するなど いわゆる 農 業 の6 次 産 業 化 による 地 域 経 済 の 発 展 を 目 指 してい る 以 上 自 治 体 が 戦 略 型 企 業 誘 致 を 実 施 する 際 の 具 体 的 なポイントについてみてきた 最 後 に 企 業 誘 致 においては 自 治 体 が 戦 略 性 を 持 って 取 り 組 むことが 成 功 の 大 前 提 であるものの 実 際 に は 自 治 体 による 独 力 での 対 応 が 難 しい 面 もあるため 国 による 適 切 な 支 援 も 重 要 であることを 指 摘 し ておきたい 戦 略 型 企 業 誘 致 には 自 治 体 による 地 域 経 済 産 業 に 関 する 正 確 な 現 状 分 析 や 長 期 的 な 将 来 展 望 が 欠 かせない しかし 実 際 には 現 状 分 析 にはそれなりの 手 間 がかかるうえに 一 般 的 に 長 期 的 な 視 点 で 先 々のリスクを 見 据 えた 行 動 をとることは 難 しいため どうしても 短 期 的 な 効 果 が 見 込 まれる 政 策 ( 例 えば 国 による 補 助 金 や 交 付 金 が 充 てられる 事 業 や 一 時 的 に 雇 用 が 増 えるといった 直 接 的 な 効 果 が 出 やすい 事 業 )が 優 先 されやすいと 考 えられる 戦 略 型 企 業 誘 致 の 実 行 を 定 着 させ るためには 自 治 体 が 陥 りがちなこうした 行 動 を 適 正 化 するような 国 による 側 面 支 援 が 必 要 とされる のである その 一 つの 試 みとして 国 は 各 自 治 体 が 現 状 分 析 を 深 められるように 比 較 的 簡 単 な 操 作 で 人 口 や 産 業 に 関 連 したデータを 分 析 できるツールとして 地 域 経 済 分 析 システム(RESAS) の 提 供 を 始 めており 自 治 体 における 積 極 的 な 活 用 が 期 待 されているところである 地 方 創 生 の 一 環 として 進 められようとしている 今 日 の 企 業 誘 致 においては あくまでも 自 治 体 の 主 5
体 的 な 取 り 組 みを 基 本 としつつ 国 が 必 要 な 支 援 を 講 じることによって それぞれの 地 域 にふさわし い 戦 略 型 企 業 誘 致 の 実 行 が 進 み 地 域 の 自 立 につながっていくことが 望 まれる 1 2016 年 度 から 地 方 創 生 のための 新 型 交 付 金 が 新 設 されることが 決 まっている この 交 付 金 の 具 体 的 な 内 容 や 規 模 等 につい ては 各 自 治 体 が 策 定 した 地 方 人 口 ビジョン や 地 方 版 総 合 戦 略 の 内 容 も 参 考 にしつつ 2016 年 度 予 算 編 成 のタイミング に 合 わせて 2015 年 末 までに 制 度 設 計 される 見 込 みとなっている 2 例 えば 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 地 域 雇 用 創 出 の 新 潮 流 (2007 年 4 月 )などを 参 照 3 廣 瀬 信 己 企 業 立 地 と 地 域 経 済 の 活 性 化 ( 国 立 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 レファレンス 2008 年 8 月 号 ) 三 橋 浩 志 地 域 産 業 政 策 における 地 域 概 念 の 変 化 -クラスター 政 策 を 中 心 に- ( 高 崎 経 済 大 学 地 域 政 策 学 会 地 域 政 策 研 究 第 9 巻 2007 年 2 月 )を 参 考 にした 4 北 上 市 北 上 市 工 業 振 興 計 画 (2011 年 3 月 ) 北 上 市 工 業 団 地 ホームページを 参 考 にした 5 国 家 戦 略 特 区 とは 大 胆 な 規 制 制 度 改 革 による 日 本 経 済 の 再 興 を 目 的 に 2012 年 末 に 創 設 された 特 区 制 度 である 地 域 を 区 切 って 規 制 改 革 や 税 制 優 遇 金 融 支 援 が 行 われる 養 父 市 は 中 山 間 地 の 農 業 改 革 特 区 として 2014 年 に 指 定 された 当 レポートは 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 商 品 の 勧 誘 を 目 的 としたものではありません 本 資 料 は 当 社 が 信 頼 できると 判 断 した 各 種 データに 基 づき 作 成 されておりますが その 正 確 性 確 実 性 を 保 証 するものではありません また 本 資 料 に 記 載 された 内 容 は 予 告 なしに 変 更 されることもあります 6