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Transcription:

軽 減 税 率 制 度 を 始 めとする 税 制 改 革 の 諸 課 題 平 成 28 年 度 税 制 改 正 の 概 要 財 政 金 融 委 員 会 調 査 室 渡 邉 将 史 1.はじめに 安 倍 総 理 は 平 成 27 年 9 月 の 記 者 会 見 で 誰 もがチャンスを 保 障 され 自 己 の 能 力 を 最 大 限 に 発 揮 できる 一 億 総 活 躍 社 会 を 創 り 上 げることを 表 明 した これは 希 望 を 生 み 出 す 強 い 経 済 を 確 立 し 夢 を 紡 ぐ 子 育 て 支 援 安 心 につながる 社 会 保 障 を 構 築 すると いう 新 三 本 の 矢 により 少 子 高 齢 化 に 歯 止 めを 掛 け 50 年 後 も 人 口 1 億 人 を 維 持 する というものであり 三 本 の 矢 1 から 成 るそれまで 約 3 年 間 の 経 済 政 策 を 一 層 強 化 したも のである 本 稿 では 28 年 度 税 制 改 正 の 柱 を 安 心 につながる 社 会 保 障 実 現 のための 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 実 施 の 一 環 である 消 費 税 の 軽 減 税 率 制 度 の 導 入 希 望 を 生 み 出 す 強 い 経 2 済 を 確 立 するための 法 人 税 改 革 の2 本 と 捉 え 28 年 度 与 党 税 制 改 正 大 綱 及 び 政 府 税 制 改 正 大 綱 3 に 基 づき 改 正 の 概 要 と 今 後 の 課 題 を 紹 介 する 2. 改 正 の 概 要 (1) 消 費 税 の 軽 減 税 率 制 度 ア 導 入 の 経 緯 平 成 24 年 6 月 の 民 主 党 自 由 民 主 党 及 び 公 明 党 による 三 党 合 意 に 基 づく 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 の 枠 組 みの 下 同 年 8 月 に 税 制 抜 本 改 革 法 4 が 成 立 した 同 法 第 7 条 第 1 号 において 消 費 課 税 については 低 所 得 者 に 配 慮 する 観 点 から 1 総 合 合 算 制 度 2 給 付 付 き 税 額 控 除 3 複 数 税 率 の 導 入 について 総 合 的 に 検 討 することとされている 政 権 交 代 を 経 て 与 党 となった 自 民 党 及 び 公 明 党 は これまで 与 党 税 制 協 議 会 に 調 査 委 員 会 や 検 討 委 員 会 を 設 置 するなど 軽 減 税 率 の 導 入 を 目 指 し 議 論 を 積 み 重 ねてきた 1 大 胆 な 金 融 政 策 機 動 的 な 財 政 政 策 民 間 投 資 を 喚 起 する 成 長 戦 略 2 平 成 28 年 度 税 制 改 正 大 綱 ( 平 成 27 年 12 月 16 日 自 由 民 主 党 公 明 党 ) 3 平 成 28 年 度 税 制 改 正 の 大 綱 ( 平 成 27 年 12 月 24 日 閣 議 決 定 ) 4 社 会 保 障 の 安 定 財 源 の 確 保 等 を 図 る 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 を 行 うための 消 費 税 法 の 一 部 を 改 正 する 等 の 法 律 ( 平 成 24 年 8 月 22 日 法 律 第 68 号 ) 第 7 条 第 1 号 イ~ハの 概 要 は 以 下 のとおり( 下 線 部 筆 者 記 入 ) 一 消 費 課 税 については 消 費 税 率 の 引 上 げを 踏 まえて 次 に 定 めるとおり 検 討 すること イ 低 所 得 者 に 配 慮 する 観 点 から 番 号 制 度 の 本 格 的 な 稼 動 及 び 定 着 を 前 提 に 関 連 する 社 会 保 障 制 度 の 見 直 し 及 び 所 得 控 除 の 抜 本 的 な 整 理 と 併 せて 総 合 合 算 制 度 給 付 付 き 税 額 控 除 等 の 施 策 の 導 入 について 所 得 の 把 握 資 産 の 把 握 の 問 題 執 行 面 での 対 応 の 可 能 性 等 を 含 め 様 々な 角 度 から 総 合 的 に 検 討 する ロ 低 所 得 者 に 配 慮 する 観 点 から 複 数 税 率 の 導 入 について 財 源 の 問 題 対 象 範 囲 の 限 定 中 小 事 業 者 の 事 務 負 担 等 を 含 め 様 々な 角 度 から 総 合 的 に 検 討 する ハ イ 及 びロの 検 討 の 結 果 に 基 づき 導 入 する 施 策 の 実 現 までの 間 の 暫 定 的 及 び 臨 時 的 な 措 置 として 社 会 保 障 の 機 能 強 化 との 関 係 も 踏 まえつつ 対 象 範 囲 基 準 となる 所 得 の 考 え 方 財 源 の 問 題 執 行 面 での 対 応 の 可 能 性 等 について 検 討 を 行 い 簡 素 な 給 付 措 置 を 実 施 する 18 立 法 と 調 査 2016.2 No. 374( 参 議 院 事 務 局 企 画 調 整 室 編 集 発 行 )

軽 減 税 率 制 度 の 導 入 をめぐる 主 な 経 緯 は 図 表 1のとおりである 与 党 における 検 討 段 階 では 対 象 品 目 の 線 引 き 必 要 となる 財 源 の 確 保 制 度 導 入 時 期 の 考 え 方 等 について 様 々な 課 題 や 与 党 内 における 意 見 の 相 違 点 が 明 らかになった また 財 務 省 から 与 党 に 対 しては マイナンバーカードを 活 用 し 消 費 者 に 消 費 税 相 当 額 の 一 部 を 還 付 するとい う 日 本 型 軽 減 税 率 制 度 案 が 示 されたが 個 人 情 報 の 流 出 の 懸 念 などの 問 題 点 が 指 摘 され 同 案 は 撤 回 された このように 政 府 与 党 内 での 議 論 が 分 かれる 中 今 回 の 制 度 導 入 決 定 に 際 しては 安 倍 総 理 の 意 向 が 強 く 反 映 されたとの 指 摘 も 多 い 安 倍 総 理 は 27 年 10 月 14 日 軽 減 税 率 制 度 の 導 入 時 期 について 消 費 税 率 が 10%に 引 き 上 げられる 29 年 4 月 からとするよう 検 討 を 指 示 した 与 党 は 10 月 27 日 財 源 につ いて 予 定 していた 総 合 合 算 制 度 を 見 送 ることによる 4,000 億 円 を 充 てることに 合 意 した 対 象 品 目 の 線 引 きについて 自 民 党 は 生 鮮 食 品 までとするなど 導 入 当 初 は 品 目 を 絞 り 確 実 に 実 行 できる 体 制 で 行 うべきと 主 張 していた 一 方 公 明 党 は 痛 税 感 を 緩 和 するという 目 的 から 加 工 食 品 を 含 めるなど 対 象 範 囲 を 幅 広 く 設 定 すべきと 主 張 したため 与 党 間 で 意 見 に 隔 たりが 残 り 与 党 税 制 協 議 会 における 協 議 は 難 航 した その 後 与 党 の 幹 事 長 を 加 えた 協 議 与 党 党 首 会 談 などを 経 て 12 月 12 日 対 象 品 目 を 酒 類 及 び 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 とする 軽 減 税 率 制 度 についての 大 枠 が 与 党 幹 事 長 間 で 合 意 された この 大 枠 に 沿 って 与 党 が 税 制 改 正 大 綱 をまとめる 中 新 聞 の 定 期 購 読 料 が 対 象 品 目 に 追 加 され 12 月 16 日 に 与 党 税 制 改 正 大 綱 が 正 式 決 定 された 図 表 1 軽 減 税 率 制 度 導 入 をめぐる 主 な 経 緯 年 月 日 主 な 経 緯 H24.6.15 社 会 保 障 税 一 体 改 革 に 関 する 三 党 合 意 ( 民 主 党 自 由 民 主 党 公 明 党 ) H24.8.10 税 制 抜 本 改 革 法 成 立 H24.12.26 第 二 次 安 倍 内 閣 発 足 H25.1.24 平 成 25 年 度 与 党 税 制 改 正 大 綱 消 費 税 率 の10% 引 き 上 げ 時 に 軽 減 税 率 制 度 を 導 入 することをめざす H25.2.20 与 党 税 制 協 議 会 軽 減 税 率 制 度 調 査 委 員 会 初 会 合 ( 全 11 回 開 催 ) H25.11.12 与 党 税 制 協 議 会 軽 減 税 率 制 度 調 査 委 員 会 軽 減 税 率 についての 議 論 の 中 間 報 告 公 表 平 成 26 年 度 与 党 税 制 改 正 大 綱 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 の 原 点 に 立 って 必 要 な 財 源 を 確 保 しつつ H25.12.12 関 係 事 業 者 を 含 む 国 民 の 理 解 を 得 た 上 で 税 率 10% 時 に 導 入 する H26.4.1 消 費 税 率 8%への 引 上 げ 実 施 H26.6.5 与 党 税 制 協 議 会 消 費 税 の 軽 減 税 率 に 関 する 検 討 について 対 象 品 目 線 引 きの8 案 を 公 表 H26.10.8 与 党 税 制 協 議 会 消 費 税 の 軽 減 税 率 に 関 する 検 討 について 関 係 団 体 ヒアリング 概 要 を 公 表 H26.11.18 安 倍 総 理 が 消 費 税 率 10%への 引 上 げ 時 期 延 期 を 表 明 (H27.10.1 H29.4.1) H26.12.24 第 三 次 安 倍 内 閣 発 足 平 成 27 年 度 与 党 税 制 改 正 大 綱 平 成 29 年 度 からの 導 入 を 目 指 して 対 象 品 目 区 分 経 理 安 定 財 源 等 H26.12.30 について 早 急 に 具 体 的 な 検 討 を 進 める H27.2.9 与 党 税 制 協 議 会 消 費 税 軽 減 税 率 制 度 検 討 委 員 会 初 会 合 ( 全 14 回 開 催 ) H27.9.10 財 務 省 が 日 本 型 軽 減 税 率 制 度 ( 案 ) を 与 党 税 制 協 議 会 に 提 示 H27.10.14 安 倍 総 理 が 消 費 税 10%と 同 時 の 軽 減 税 率 制 度 導 入 検 討 を 指 示 H27.10.27 与 党 が 総 合 合 算 制 度 見 送 りによる4,000 億 円 の 財 源 確 保 に 合 意 H27.11.19 与 党 幹 事 長 協 議 開 始 H27.12.8 安 倍 自 民 党 総 裁 山 口 公 明 党 代 表 会 談 H27.12.12 与 党 が 軽 減 税 率 制 度 についての 大 枠 決 定 対 象 品 目 酒 類 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 で 合 意 H27.12.15 平 成 28 年 度 与 党 税 制 改 正 大 綱 ( 案 )において 対 象 品 目 に 新 聞 を 追 加 H27.12.16 平 成 28 年 度 与 党 税 制 改 正 大 綱 決 定 H27.12.24 平 成 28 年 度 税 制 改 正 の 大 綱 閣 議 決 定 ( 出 所 ) 新 聞 報 道 等 に 基 づき 作 成 19

イ 軽 減 税 率 制 度 の 概 要 (ア) 対 象 品 目 軽 減 税 率 制 度 の 概 要 は 図 表 2のとおりであり 対 象 品 目 は 飲 食 料 品 ( 酒 類 及 び 外 食 を 除 く) 及 び 新 聞 ( 定 期 購 読 料 )とされた 飲 食 料 品 における 外 食 の 定 義 につい ては 食 品 衛 生 法 上 の 飲 食 店 営 業 その 他 のその 場 で 飲 食 させるサービスの 提 供 ( 食 事 の 提 供 )を 行 う 事 業 を 営 む 者 が テーブル 椅 子 その 他 のその 場 で 飲 食 させるための 設 備 ( 飲 食 設 備 )を 設 置 した 場 所 で 行 う 食 事 の 提 供 その 他 これに 類 するものと されている( 図 表 3) 図 表 2 軽 減 税 率 制 度 ( 案 )の 概 要 対 象 品 目 飲 食 料 品 ( 酒 類 及 び 外 食 を 除 く) 新 聞 ( 定 期 購 読 契 約 が 締 結 された 週 2 回 以 上 発 行 されるもの) 税 率 軽 減 税 率 8%( 国 分 :6.24% 地 方 分 1.76%) 標 準 税 率 10%( 国 分 :7.8% 地 方 分 2.2%) インボイス 制 度 ( 適 格 請 求 書 等 保 存 方 式 )の 導 入 ( 平 成 33 年 4 月 ~) 登 録 を 受 けた 課 税 事 業 者 に 対 し 適 格 請 求 書 の 交 付 保 存 を 義 務 付 ける( 同 請 求 書 の 交 付 は 課 税 事 業 者 のみ 可 能 ) 同 請 求 書 及 び 帳 簿 の 保 存 を 仕 入 税 額 控 除 の 要 件 とする( 免 税 事 業 者 からの 仕 入 れは 仕 入 税 額 控 除 不 可 ) 税 額 計 算 の 方 法 は 1 適 格 請 求 書 に 記 載 された 税 額 の 積 上 げ 計 算 2 取 引 総 額 からの 割 戻 し 計 算 の 選 択 制 とする インボイス 制 度 導 入 前 の 経 過 措 置 ( 平 成 29 年 4 月 ~ 平 成 33 年 3 月 ) 現 行 の 請 求 書 等 保 存 方 式 を 維 持 しつつ 区 分 経 理 に 対 応 するため 区 分 記 載 請 求 書 等 保 存 方 式 を 導 入 する 売 上 げ 又 は 仕 入 れを 税 率 ごとに 区 分 することが 困 難 な 事 業 者 に 対 し 売 上 税 額 又 は 仕 入 税 額 の 計 算 の 特 例 を 設 ける インボイス 制 度 導 入 後 の 経 過 措 置 ( 平 成 33 年 4 月 ~ 平 成 39 年 3 月 ) 免 税 事 業 者 からの 仕 入 れについて 平 成 33 年 4 月 から3 年 間 は80% その 後 の3 年 間 は50%の 仕 入 税 額 控 除 を 可 能 とする ( 出 所 ) 財 務 省 資 料 に 基 づき 作 成 図 表 3 外 食 の 定 義 ( 案 ) 軽 減 税 率 ( 外 食 に 当 たらない) 標 準 税 率 ( 外 食 に 当 たる) (テイクアウト 出 前 宅 配 ) ( 店 内 飲 食 イートイン) 1 飲 食 設 備 を 設 置 した 場 所 で 行 う ものではないもの 牛 丼 屋 ハンバーガー 店 のテイクアウト 牛 丼 屋 ハンバーガー 店 での 店 内 飲 食 そば 屋 の 出 前 そば 屋 での 店 内 飲 食 ピザ 屋 の 宅 配 ピザ 屋 での 店 内 飲 食 屋 台 での 軽 食 ( 飲 食 設 備 がない 場 合 ) フードコートでの 飲 食 寿 司 屋 のお 土 産 寿 司 屋 での 店 内 飲 食 2 食 事 の 提 供 に 当 たらないもの コンビニの 弁 当 惣 菜 コンビニのイートインコーナーでの 飲 食 を 前 提 (イートインコーナーがある 場 合 でも 持 ち 帰 に 提 供 される 飲 食 料 品 ( 例 :トレイに 載 せて 座 席 に 運 り 可 能 な 状 態 で 販 売 される 場 合 は 軽 減 ) ばれる 食 品 返 却 の 必 要 がある 食 器 で 提 供 される 食 品 ) ケータリング 出 張 料 理 ( 出 所 ) 財 務 省 資 料 に 基 づき 作 成 20

(イ)インボイス 制 度 ( 適 格 請 求 書 等 保 存 方 式 )の 導 入 ( 平 成 33 年 4 月 ~)( 図 表 4) 軽 減 税 率 が 導 入 されている 欧 州 に 倣 い 平 成 33 年 4 月 からインボイス 制 度 が 導 入 さ れる 登 録 を 受 けた 課 税 事 業 者 ( 売 り 手 )に 対 しては 事 業 者 から 求 められた 場 合 の 適 格 請 求 書 の 交 付 写 しの 保 存 を 義 務 付 けるとともに 偽 りの 交 付 をした 場 合 の 罰 則 を 設 ける 適 格 請 求 書 の 記 載 事 項 については 現 行 方 式 5 と 比 べ 1 軽 減 税 率 の 対 象 品 目 である 旨 2 税 率 ごとに 合 計 した 対 価 の 額 3 登 録 番 号 4 消 費 税 額 の4 点 が 追 加 される また 買 い 手 に 対 しては 請 求 書 等 及 び 帳 簿 の 保 存 を 仕 入 税 額 控 除 の 要 件 とする 同 請 求 書 等 は 課 税 事 業 者 のみ 交 付 可 能 となるため 免 税 事 業 者 からの 仕 入 れについ ては 仕 入 税 額 控 除 ができなくなる 税 額 計 算 の 方 法 については 適 格 請 求 書 に 記 載 された 税 額 の 積 上 げ 計 算 又 は 税 率 ごとの 取 引 総 額 からの 割 戻 し 計 算 の 選 択 制 となる 図 表 4 区 分 経 理 の 方 法 の 比 較 ( 現 行 ) 請 求 書 等 保 存 方 式 ( 平 成 29 年 4 月 ~) 区 分 記 載 請 求 書 等 保 存 方 式 ( 平 成 33 年 4 月 ~) 適 格 請 求 書 等 保 存 方 式 (インボイス 制 度 ) ( 出 所 ) 財 務 省 資 料 を 一 部 加 工 (ウ)インボイス 制 度 導 入 前 の 経 過 措 置 ( 平 成 29 年 4 月 ~ 平 成 33 年 3 月 ) 現 行 の 請 求 書 等 保 存 方 式 は 消 費 税 率 が5%に 引 き 上 げられた 平 成 9 年 4 月 か ら 開 始 された この 方 式 では 帳 簿 の 保 存 に 加 え 取 引 の 相 手 方 ( 第 三 者 )が 発 行 し 5 現 行 方 式 の 記 載 事 項 は 1 請 求 書 発 行 者 の 氏 名 又 は 名 称 2 取 引 年 月 日 3 取 引 の 内 容 4 対 価 の 額 5 請 求 書 受 領 者 の 氏 名 又 は 名 称 の5 点 である 21

た 請 求 書 等 という 客 観 的 な 証 拠 書 類 の 保 存 を 仕 入 税 額 控 除 の 要 件 としている 今 回 の 改 正 では 請 求 書 等 と 帳 簿 の 保 存 という 我 が 国 の 取 引 慣 行 や 区 分 経 理 の 変 化 に 対 応 するため 軽 減 税 率 制 度 が 導 入 される 平 成 29 年 4 月 からインボイス 制 度 導 入 ま での4 年 間 区 分 記 載 請 求 書 等 保 存 方 式 が 導 入 される 具 体 的 には 売 り 手 が 発 行 する 請 求 書 等 の 記 載 事 項 に 1 軽 減 税 率 の 対 象 品 目 であ る 旨 2 税 率 ごとに 合 計 した 対 価 の 額 の2 点 を 加 える 同 請 求 書 等 は 免 税 事 業 者 も 交 付 可 能 となる 現 行 どおり 売 り 手 には3 同 請 求 書 等 の 交 付 写 しの 保 存 義 務 を 課 さ ず 4 偽 りの 請 求 書 等 の 交 付 に 対 する 罰 則 も 設 けない また 買 い 手 は 請 求 書 の 保 存 を 仕 入 税 額 控 除 の 要 件 とし 免 税 事 業 者 からの 仕 入 れ も 仕 入 税 額 控 除 を 可 能 とする なお 上 記 1 2については 買 い 手 が 事 実 に 基 づき 追 記 することを 認 める 売 上 げ 又 は 仕 入 れを 税 率 ごとに 区 分 することが 困 難 な 事 業 者 に 対 しては 売 上 税 額 又 は 仕 入 税 額 の 計 算 の 特 例 が 設 けられる (エ)インボイス 制 度 導 入 後 の 経 過 措 置 ( 平 成 33 年 4 月 ~ 平 成 39 年 3 月 ) インボイス 制 度 において 課 税 売 上 高 が 1,000 万 円 以 下 の 免 税 事 業 者 はインボイス を 発 行 できない そのため 制 度 導 入 後 は 免 税 事 業 者 からの 仕 入 れは 仕 入 税 額 控 除 が できず 免 税 事 業 者 が 取 引 から 排 除 されるおそれがある 今 回 の 改 正 では 免 税 事 業 者 からの 仕 入 れについて インボイス 制 度 が 導 入 される 平 成 33 年 4 月 から 36 年 3 月 までの3 年 間 は 80% その 後 36 年 4 月 から 39 年 3 月 までの3 年 間 は 50%の 仕 入 税 額 控 除 を 認 める 特 例 が 設 けられる (オ) 安 定 財 源 の 確 保 軽 減 税 率 制 度 の 導 入 に 当 たっては 財 政 健 全 化 目 標 を 堅 持 し 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 の 原 点 に 立 って 安 定 的 な 恒 久 財 源 を 確 保 する 必 要 があることから 平 成 28 年 度 税 制 改 正 法 案 に 以 下 の 旨 が 明 記 される 1 平 成 28 年 度 末 までに 歳 入 及 び 歳 出 における 法 制 上 の 措 置 等 を 講 ずることによ り 安 定 的 な 恒 久 財 源 を 確 保 する 2 平 成 30 年 度 の 経 済 財 政 再 生 計 画 の 中 間 評 価 等 を 踏 まえ 税 制 の 構 造 改 革 や 社 会 保 障 制 度 改 革 等 の 歳 入 歳 出 の 在 り 方 について 検 討 し 必 要 な 措 置 を 講 ず る (カ) 軽 減 税 率 制 度 の 円 滑 な 導 入 運 用 のための 検 証 取 組 軽 減 税 率 制 度 の 導 入 運 用 に 当 たり 混 乱 が 生 じないよう 政 府 与 党 が 一 体 となっ て 万 全 の 準 備 を 進 めることとし 平 成 28 年 度 税 制 改 正 法 案 に 以 下 の 旨 が 明 記 される 1 政 府 与 党 に 必 要 な 体 制 を 整 備 するとともに 事 業 者 の 準 備 状 況 等 を 検 証 し 必 要 に 応 じ 軽 減 税 率 制 度 の 円 滑 な 導 入 運 用 のための 必 要 な 措 置 を 講 ずる 2 軽 減 税 率 制 度 導 入 後 3 年 以 内 を 目 途 に インボイス 制 度 導 入 に 係 る 事 業 者 の 準 備 状 況 及 び 事 業 者 取 引 への 影 響 の 可 能 性 軽 減 税 率 制 度 導 入 による 簡 易 課 税 制 度 への 影 響 経 過 措 置 の 適 用 状 況 などを 検 証 し 必 要 と 認 められるときは その 結 果 に 基 づいて 法 制 上 の 措 置 その 他 必 要 な 措 置 を 講 ずる 22

(2) 法 人 課 税 安 倍 内 閣 は デフレ 脱 却 と 経 済 再 生 を 最 重 要 政 策 課 題 とし 税 制 面 では 平 成 27 年 度 に 法 人 税 改 革 に 着 手 した この 法 人 税 改 革 は 法 人 課 税 をより 広 く 負 担 を 分 かち 合 う 構 造 へ 改 革 し 稼 ぐ 力 のある 企 業 等 の 税 負 担 を 軽 減 することで 企 業 に 対 し 収 益 力 拡 大 に 向 けた 前 向 きな 投 資 継 続 的 積 極 的 な 賃 上 げが 可 能 な 体 質 への 転 換 を 促 そうとするものである 27 年 度 税 制 改 正 では 欧 米 各 国 が 行 ってきた 課 税 ベースを 拡 大 しつつ 税 率 を 引 き 下 げ る という 考 え 方 に 沿 って 法 人 実 効 税 率 6 (26 年 度 34.62%)の 20% 台 への 引 下 げに 向 けた 改 革 が 行 われた 具 体 的 には 欠 損 金 繰 越 控 除 の 段 階 的 見 直 し 受 取 配 当 等 益 金 不 算 入 の 見 直 し 法 人 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 の 見 直 し 及 び 租 税 特 別 措 置 の 見 直 しにより 財 源 を 確 保 した 上 で 法 人 実 効 税 率 を 27 年 度 に 32.11%( 2.51%)とし 28 年 度 に 31.33%( 3.29%)まで 引 き 下 げることとした 28 年 度 においてもその 改 革 は 更 に 推 進 される 今 回 の 改 正 では 法 人 税 の 課 税 ベースの 拡 大 等 により 財 源 を 確 保 した 上 で 法 人 税 率 を 更 に 引 き 下 げるなど 法 人 実 効 税 率 の 20% 台 への 引 下 げが 実 現 する なお 今 回 の 法 人 税 改 革 による 国 地 方 を 合 わせた 増 減 収 見 込 額 は 28 年 度 が 60 億 円 29 年 度 が 50 億 円 30 年 度 が 80 億 円 となり おおむね 税 収 中 立 が 図 られている( 図 表 5) 図 表 5 法 人 税 改 革 による 増 減 収 見 込 額 ( 国 地 方 ) ( 対 28 年 度 改 正 前 単 位 : 億 円 ) 法 人 税 ( 国 税 ) 28 年 度 29 年 度 30 年 度 法 人 事 業 税 ( 地 方 税 ) 28 年 度 29 年 度 30 年 度 法 人 税 の 税 率 引 下 げ 2,390 2,390 3,340 所 得 割 の 税 率 引 下 げ 3,940 3,940 3,940 課 税 ベースの 拡 大 等 による 財 源 確 保 2,370 2,380 3,300 課 税 ベースの 拡 大 等 による 財 源 確 保 3,900 3,900 3,900 生 産 性 向 上 設 備 投 資 促 進 税 制 の 見 直 し 720 2,410 2,410 外 形 標 準 課 税 の 拡 大 3,900 3,900 3,900 その 他 の 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し 240 240 240 地 方 計 (B) 40 40 40 減 価 償 却 の 見 直 し 650 650 650 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 なる 見 直 し 760 920 - 国 計 (A) 20 10 40 国 地 方 計 (A+B) 60 50 80 ( 出 所 ) 平 成 28 年 度 税 制 改 正 の 大 綱 ( 平 成 27 年 12 月 24 日 閣 議 決 定 )に 基 づき 作 成 ア 法 人 実 効 税 率 の 引 下 げ 今 回 の 改 正 では 後 述 する 課 税 ベースの 拡 大 等 により 財 源 を 確 保 した 上 で 法 人 税 率 及 び 法 人 事 業 税 所 得 割 の 税 率 を 更 に 引 き 下 げることとしている これにより 法 人 実 効 税 率 は 平 成 28 年 度 29.97% 30 年 度 29.74%まで 下 がり 政 府 が 目 標 としていた 20% 台 を 改 革 2 年 目 にして 実 現 することとなる( 図 表 6) 図 表 6 法 人 実 効 税 率 の 引 下 げ( 平 成 28 年 度 改 正 ) 26 年 度 27 年 度 28 29 年 度 30 年 度 法 人 税 率 25.5% 23.9% 23.4% 23.2% 法 人 事 業 税 所 得 割 ( 標 準 税 率 ) 7.2% 6.0% 3.6% 3.6% 国 地 方 の 法 人 実 効 税 率 34.62% 32.11% 29.97% 29.74% 対 26 年 度 - 2.51% 4.65% 4.88% ( 出 所 ) 財 務 省 資 料 に 基 づき 作 成 6 法 人 税 ( 国 税 )の 計 算 において 法 人 事 業 税 ( 地 方 税 )が 損 金 算 入 されることを 調 整 した 上 で 法 人 税 法 人 事 業 税 及 び 法 人 住 民 税 ( 地 方 税 )の 表 面 上 の 税 率 を 合 計 したもの 23

イ 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し 租 税 特 別 措 置 については 特 定 の 政 策 目 的 を 実 現 するために 有 効 な 政 策 手 法 となる 一 方 税 負 担 の 歪 みを 生 じさせる 面 があるため 真 に 必 要 なものに 限 定 していくこととさ れている 今 回 の 改 正 では 平 成 28 年 3 月 末 で 期 限 切 れとなる 減 収 措 置 17 項 目 のうち 3 項 目 については 廃 止 され 14 項 目 については 縮 減 を 伴 う 見 直 しが 行 われる 例 えば 26 年 度 改 正 で 創 設 された 生 産 性 向 上 設 備 投 資 促 進 税 制 については 期 限 どおり 27 年 度 末 に 縮 減 7 されるとともに 企 業 の 投 資 判 断 の 前 倒 しを 促 すよう 28 年 度 末 に 廃 止 することが 明 確 化 される ウ 減 価 償 却 の 見 直 し 法 人 税 法 では 減 価 償 却 費 として 損 金 経 理 した 金 額 のうち 法 人 が 選 択 した 償 却 方 法 により 法 定 耐 用 年 数 に 応 じて 計 算 した 償 却 限 度 額 に 達 するまでの 金 額 を 損 金 算 入 するこ とが 認 められている 現 行 の 償 却 方 法 について 建 物 は 定 額 法 機 械 装 置 等 は 定 額 法 と 定 率 法 の 選 択 制 などとなっている 今 回 の 改 正 では 建 物 と 一 体 的 に 整 備 される 建 物 附 属 設 備 や 建 物 同 様 に 長 期 安 定 的 に 使 用 される 構 築 物 について 償 却 方 法 が 定 額 法 に 一 本 化 される エ 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 なる 見 直 し( 大 法 人 ) 平 成 27 年 度 改 正 においては 欠 損 金 の 繰 越 控 除 制 度 が 課 税 ベースを 大 きく 侵 食 してい る 状 況 を 改 善 するとともに 企 業 の 稼 ぐ 力 を 高 めるインセンティブとするため 欠 損 金 繰 越 控 除 の 控 除 限 度 の 段 階 的 引 下 げ 等 が 行 われた 今 回 の 改 正 では 改 正 による 法 人 税 改 革 の 加 速 化 に 伴 う 企 業 経 営 への 影 響 を 平 準 化 す る 観 点 から 図 表 7のとおり 更 なる 見 直 しが 行 われる 図 表 7 欠 損 金 繰 越 控 除 の 見 直 し ( 参 考 )26 年 度 27 年 度 28 年 度 29 年 度 30 年 度 以 降 控 除 限 度 の 27 改 正 所 得 金 額 65% 所 得 金 額 50% 所 得 金 額 80% 段 階 的 引 下 げ 28 改 正 所 得 金 額 65% 所 得 金 額 60% 所 得 金 額 55% 所 得 金 額 50% 27 改 正 9 年 10 年 繰 越 期 間 の 延 長 9 年 28 改 正 9 年 9 年 10 年 ( 出 所 ) 財 務 省 資 料 に 基 づき 作 成 オ 法 人 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 の 更 なる 拡 大 ( 大 法 人 ) 今 回 の 法 人 実 効 税 率 の 引 下 げにおいては 平 成 27 年 度 改 正 に 続 き 地 方 法 人 課 税 の 見 直 しも 行 われる 27 年 度 改 正 では 企 業 が 稼 ぐ 力 を 高 めるインセンティブとなるよう 大 法 人 の 法 人 事 業 税 のうち 外 形 標 準 課 税 (26 年 度 全 体 の 2/8 )を 27 年 度 全 体 の 3/8 28 年 度 全 体 の 4/8 に 拡 大 された 7 先 端 設 備 生 産 ラインやオペレーションの 改 善 に 資 する 設 備 について 現 行 機 械 装 置 などは 平 成 27 年 度 末 までは 即 時 償 却 又 は5% 税 額 控 除 の 選 択 制 であるが その 後 28 年 度 末 までは 50% 特 別 償 却 又 は4% 税 額 控 除 となる 24

今 回 の 改 正 では 地 域 で 雇 用 を 支 える 中 堅 企 業 への 影 響 に 十 分 配 慮 8 した 上 で 28 年 度 に 全 体 の 5/8 へと 更 に 拡 大 される これに 伴 い 所 得 割 の 税 率 は 27 年 度 6.0%か ら 28 年 度 3.6%になる( 図 表 8) 図 表 8 法 人 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 の 拡 大 (3) 個 人 所 得 課 税 資 産 課 税 ア スイッチOTC 医 薬 品 控 除 の 創 設 ( 医 療 費 控 除 の 特 例 ) 国 民 自 らが 自 己 の 健 康 管 理 を 進 めるセルフメディケーションを 推 進 するため スイッ チOTC 医 薬 品 9 の 年 間 購 入 額 が 12,000 円 を 超 える 場 合 において その 超 える 部 分 の 金 額 をその 年 分 の 総 所 得 金 額 から 控 除 ( 限 度 額 :88,000 円 )することができる 医 療 費 控 除 の 特 例 が 創 設 される 本 特 例 は 平 成 29 年 1 月 1 日 から 33 年 12 月 31 日 までの 同 医 薬 品 の 購 入 に 限 られる 適 切 な 健 康 管 理 の 下 で 医 療 用 医 薬 品 からの 代 替 を 進 める 観 点 から 適 用 対 象 となるの は 健 康 の 維 持 増 進 及 び 疾 病 の 予 防 への 取 組 として 検 診 予 防 接 種 等 を 受 けている 個 人 となる なお 本 特 例 と 現 行 の 医 療 費 控 除 制 度 との 併 用 はできない イ 通 勤 手 当 の 非 課 税 限 度 額 の 引 上 げ 地 方 創 生 の 推 進 に 係 る 税 制 上 の 支 援 措 置 の 一 つとして 新 幹 線 を 利 用 した 地 方 から 大 都 市 圏 への 通 勤 など 近 年 における 通 勤 手 当 の 実 態 等 を 踏 まえ 平 成 28 年 1 月 から 通 勤 手 当 の 非 課 税 上 限 枠 が 月 10 万 円 から 15 万 円 に 引 き 上 げられる ウ 三 世 代 同 居 に 対 応 した 住 宅 リフォームに 係 る 税 額 控 除 制 度 の 導 入 出 産 子 育 ての 不 安 や 負 担 を 軽 減 することが 課 題 となっていることを 踏 まえ 世 代 間 の 助 け 合 いによる 子 育 てを 支 援 する 観 点 から 三 世 代 同 居 に 対 応 した 住 宅 リフォームに 関 し 借 入 金 を 利 用 してリフォームを 行 った 場 合 や 自 己 資 金 でリフォームを 行 った 場 合 の 税 額 控 除 制 度 が 導 入 される エ 結 婚 子 育 て 資 金 の 一 括 贈 与 に 係 る 贈 与 税 の 非 課 税 措 置 の 拡 充 本 制 度 は 少 子 化 対 策 に 資 するため 父 母 や 祖 父 母 の 資 産 を 早 期 に 移 転 することを 通 じて 若 年 層 の 経 済 的 不 安 を 解 消 し 結 婚 出 産 育 児 を 後 押 しすることを 目 的 として 27 8 軽 減 措 置 として 付 加 価 値 額 30 億 円 以 下 の 中 堅 企 業 の 負 担 増 分 を 平 成 28 年 度 は 3/4 29 年 度 は 2/4 30 年 度 は 1/4 それぞれ 軽 減 する 等 の 措 置 が 講 じられる 9 要 指 導 医 薬 品 及 び 一 般 用 医 薬 品 のうち 医 師 の 処 方 箋 が 必 要 な 医 療 用 医 薬 品 から 転 用 (スイッチ)された 医 薬 品 のこと OTCは Over The Counter の 略 で カウンター 越 しに 薬 剤 師 等 から 対 面 販 売 で 購 入 すること を 意 味 している 25

年 度 改 正 において 創 設 された これは 直 系 尊 属 が 子 孫 等 名 義 の 口 座 等 に 資 金 を 一 括 贈 与 する 場 合 一 定 の 要 件 の 下 1,000 万 円 までを 非 課 税 とするものである 今 回 の 改 正 では 非 課 税 となる 結 婚 子 育 て 資 金 の 対 象 範 囲 に 不 妊 治 療 の 薬 代 が 追 加 される (4) 国 際 課 税 ア BEPS 10 プロジェクト 関 係 平 成 27 年 11 月 のG20 アンタルヤ サミットにおいて 同 プロジェクトの 成 果 が 報 告 さ れ 各 国 における 実 施 面 での 取 組 の 重 要 性 が 確 認 された 今 後 は 同 プロジェクトの 勧 告 を 踏 まえ 各 国 において 必 要 な 国 内 法 の 整 備 を 段 階 的 に 実 施 していくこととなっている 今 回 の 改 正 では 多 国 籍 企 業 のグローバルな 活 動 納 税 実 態 を 把 握 するため 各 国 が 協 調 して 情 報 収 集 共 有 する 枠 組 みとなる 多 国 籍 企 業 情 報 の 報 告 等 に 係 る 制 度 が 整 備 される イ 日 台 民 間 租 税 取 決 めに 係 る 国 内 法 の 整 備 日 本 にとって 台 湾 は 租 税 条 約 を 締 結 していない 国 地 域 の 中 で 最 大 の 直 接 投 資 相 手 で ある 租 税 条 約 の 締 結 については 両 経 済 界 が 強 い 期 待 を 抱 いているが 台 湾 関 係 におけ る 日 本 の 基 本 的 立 場 は 非 政 府 間 の 実 務 関 係 として 維 持 するというものであり 国 家 間 の 国 際 約 束 である 租 税 条 約 の 締 結 ができない 今 回 の 改 正 では 租 税 条 約 に 相 当 する 枠 組 みを 構 築 するため 公 益 財 団 法 人 交 流 協 会 ( 日 本 側 )と 亜 東 関 係 協 会 ( 台 湾 側 )との 間 で 取 り 結 んだ 日 台 民 間 租 税 取 決 め 11 の 内 容 を 日 本 国 内 で 実 施 するための 国 内 法 が 整 備 される (5)その 他 ア クレジットカードによる 国 税 納 付 制 度 12 の 創 設 国 税 について 納 付 手 段 の 多 様 化 を 図 る 観 点 から インターネット 上 でクレジットカ ードにより 納 付 できる 制 度 が 創 設 される なお 本 改 正 は 納 税 者 が 平 成 29 年 1 月 4 日 以 後 クレジットカード 会 社 に 国 税 の 納 付 を 委 託 する 場 合 に 適 用 される イ 加 算 税 制 度 の 見 直 し 現 行 の 加 算 税 率 は 無 申 告 又 は 仮 装 隠 蔽 が 行 われた 回 数 にかかわらず 一 律 であるた め 意 図 的 に 無 申 告 等 を 繰 り 返 す 者 に 対 する 牽 制 効 果 は 限 定 的 である 10 BEPS(Base Erosion and Profit Shifting 税 源 浸 食 と 利 益 移 転 )プロジェクトとは 多 国 籍 企 業 が 国 際 的 な 税 制 の 隙 間 や 抜 け 穴 を 利 用 した 節 税 対 策 により 課 税 逃 れを 行 うことがないよう 国 際 課 税 ルールを 世 界 経 済 企 業 行 動 の 実 態 に 即 したものとするとともに 各 国 政 府 グローバル 企 業 の 透 明 性 を 高 めるために 国 際 課 税 ルール 全 体 を 見 直 すプロジェクトである 平 成 27 年 度 改 正 においては 国 境 を 越 えた 役 務 の 提 供 に 対 する 消 費 税 の 課 税 の 見 直 し 外 国 子 会 社 配 当 益 金 不 算 入 制 度 の 適 正 化 等 を 行 った 11 この 取 決 めは 投 資 所 得 に 対 する 課 税 の 軽 減 租 税 に 関 する 情 報 交 換 などに 関 する 日 台 間 の 枠 組 みを 定 めて いる 平 成 25 年 12 月 から 両 協 会 間 で 協 議 が 重 ねられ 27 年 11 月 26 日 に 署 名 された 租 税 条 約 に 相 当 する ものであるが 日 本 では 国 際 約 束 として 法 的 効 力 がない 12 マイナンバー 制 度 の 活 用 等 による 年 金 保 険 料 税 に 係 る 利 便 性 向 上 等 に 関 するアクションプログラム( 報 告 書 )において 国 税 のクレジットカード 納 付 導 入 の 方 向 性 が 示 されている 26

そのため 今 回 の 改 正 では 悪 質 な 行 為 を 防 止 し 当 初 申 告 のコンプライアンスを 高 める 観 点 から 過 去 5 年 以 内 に 無 申 告 加 算 税 又 は 重 加 算 税 を 賦 課 された 者 が 再 び 無 申 告 又 は 仮 装 隠 蔽 に 基 づく 修 正 申 告 書 の 提 出 等 を 行 った 場 合 について 加 算 税 を 10% 加 重 する 措 置 が 導 入 される 以 上 が 今 回 の 改 正 の 主 な 概 要 である 平 成 28 年 度 税 制 改 正 ( 内 国 税 関 係 )による 増 減 収 額 については 初 年 度 (28 年 度 )310 億 円 の 減 収 平 年 度 160 億 円 の 減 収 と 見 込 まれ ている( 図 表 9) 図 表 9 平 成 28 年 度 の 税 制 改 正 ( 内 国 税 関 係 )による 増 減 収 見 込 額 ( 単 位 : 億 円 ) 改 正 事 項 平 年 度 初 年 度 1. 個 人 所 得 課 税 40 0 1スイッチOTC 薬 控 除 ( 医 療 費 控 除 の 特 例 )の 創 設 30-2 既 存 住 宅 の 三 世 代 同 居 改 修 工 事 に 係 る 特 例 の 創 設 10 0 2. 法 人 課 税 60 270 1 法 人 税 率 の 引 下 げ 3,340 1,550 2 生 産 性 向 上 設 備 投 資 促 進 税 制 の 見 直 し 2,410 570 3その 他 の 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し 240 140 4 減 価 償 却 の 見 直 し 650 570 5 地 方 創 生 応 援 税 制 ( 企 業 版 ふるさと 納 税 )の 創 設 20-3. 消 費 課 税 60 40 1 外 国 人 旅 行 者 向 け 消 費 税 免 税 制 度 の 見 直 し 70 50 2 高 額 資 産 を 取 得 した 場 合 における 消 費 税 の 特 例 措 置 の 見 直 し 10 10 合 計 160 310 ( 出 所 ) 平 成 28 年 度 税 制 改 正 の 大 綱 ( 平 成 27 年 12 月 24 日 閣 議 決 定 )に 基 づき 作 成 3. 今 後 の 課 題 (1) 消 費 税 の 軽 減 税 率 制 度 ア 対 象 品 目 の 線 引 き 対 象 品 目 を 幅 広 く 設 定 した 場 合 消 費 者 の 痛 税 感 を 緩 和 する 効 果 は 期 待 できるが 消 費 税 収 が 減 少 するため 財 政 健 全 化 や 社 会 保 障 の 充 実 安 定 化 に 影 響 が 及 ぶことが 懸 念 される 一 方 対 象 品 目 を 限 定 した 場 合 は 消 費 者 にとって 分 かりやすく 納 得 できるも のとならず 税 負 担 軽 減 の 効 果 が 薄 れてしまう こうした 対 象 品 目 の 線 引 きをめぐる 悪 循 環 については 与 党 における 検 討 段 階 13 から 指 摘 されていた 飲 食 料 品 については 今 回 の 改 正 で 酒 類 及 び 外 食 を 除 くとされ 外 食 の 定 義 は 食 品 衛 生 法 上 の 飲 食 店 営 業 等 を 営 む 事 業 者 が 一 定 の 飲 食 設 備 のある 場 所 において 行 う 食 事 の 提 供 等 とされている しかし 軽 減 対 象 の 飲 食 料 品 と 外 食 の 線 引 きは 困 難 を 極 める 飛 行 機 の 機 内 食 や 弁 当 の 移 動 販 売 などのグレーゾーン 事 例 が1,200から1,300にも 及 ぶと 13 与 党 税 制 協 議 会 は 平 成 26 年 6 月 国 民 の 議 論 の 材 料 とするため 考 え 得 る8パターン(1 全 ての 飲 食 料 品 2 酒 類 以 外 の 飲 食 料 品 3 酒 類 外 食 以 外 の 飲 食 料 品 4 酒 類 外 食 菓 子 類 以 外 の 飲 食 料 品 5 酒 類 外 食 菓 子 類 飲 料 以 外 の 飲 食 料 品 6 生 鮮 食 品 7 米 みそ しょうゆ 8 精 米 )を 提 示 した( 下 線 部 筆 者 記 入 ) 平 成 27 年 5 月 からは 下 線 の3パターンに 絞 り 検 討 が 重 ねられた 27

の 報 道 もある 14 また 玩 具 付 き 菓 子 紅 茶 とティーポットのセットなど 飲 食 料 品 と 飲 食 料 品 以 外 が 一 体 となった 商 品 についても 取 扱 いは 明 確 となっていない 15 今 後 もこ のような 線 引 きに 対 する 疑 問 が 生 ずることが 予 想 される 曖 昧 な 事 例 については 消 費 者 や 事 業 者 が 混 乱 しないよう 政 府 は 速 やかに 基 準 等 を 示 す 必 要 があるだろう また 今 回 新 聞 が 軽 減 税 率 の 対 象 となっているが 今 後 は 飲 食 料 品 以 外 の 生 活 必 需 品 に 対 する 価 値 観 の 違 いも 問 題 となろう 複 数 税 率 が 導 入 されている 欧 州 諸 国 において も 新 聞 は 軽 減 対 象 となっている 欧 州 では 活 字 文 化 は 単 なる 消 費 財 ではなく 思 索 のための 食 料 という 考 え 方 があるとの 主 張 もある この 主 張 に 沿 えば 書 籍 等 も 対 象 に 含 まれるべきものとなる 生 活 していく 上 での 基 礎 が 衣 食 住 にあると 考 える 者 にとっては 被 服 費 や 水 道 ガス 電 気 料 も 軽 減 対 象 にすべきという 意 見 になろう 対 象 品 目 以 外 の 業 界 が 対 象 化 を 求 め 陳 情 を 過 熱 させることも 懸 念 される 欧 州 では ミー トゥー( 私 も) 症 候 群 という 言 葉 もあると 言 われる 我 が 国 においても 税 制 改 正 時 に 陳 情 合 戦 が 繰 り 広 げられ 議 論 が 停 滞 し 混 乱 するおそれがある 16 異 なる 価 値 観 や 利 害 関 係 を 持 つ 人 々の 意 見 を 調 整 しつつ 国 民 の 納 得 が 得 られるような 方 向 性 を 示 すことは 大 変 な 困 難 を 伴 うことが 予 想 される イ 財 源 の 問 題 軽 減 税 率 制 度 導 入 に 関 しては 酒 類 及 び 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 で 年 間 約 1 兆 200 億 円 新 聞 で 約 200 億 円 の 消 費 税 の 減 収 が 見 込 まれている 政 府 は 消 費 税 率 10% 段 階 におけ る 社 会 保 障 の 充 実 策 の 一 つとして 予 定 していた 総 合 合 算 制 度 17 を 取 りやめ その 財 源 を 充 てることとしている しかし 低 所 得 者 対 策 である 総 合 合 算 制 度 の 財 源 を 高 所 得 者 にも 恩 恵 が 及 ぶ 軽 減 税 率 制 度 に 充 てることに 批 判 も 多 い 総 合 合 算 制 度 の 財 源 を 用 いても なお 6,000 億 円 程 度 の 財 源 が 不 足 している 軽 減 税 率 制 度 の 導 入 に 必 要 な 財 源 については 財 政 健 全 化 目 標 を 堅 持 するとともに 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 の 原 点 に 立 って 安 定 的 な 恒 久 財 源 を 確 保 する との 観 点 から 28 年 度 改 正 法 において 平 成 28 年 度 末 までに 歳 入 及 び 歳 出 における 法 制 上 の 措 置 等 を 講 ずる 旨 を 規 定 することとされている この 点 については 問 題 の 先 送 りであり 具 体 的 な 財 源 案 を 先 に 示 すべきとの 指 摘 がある 安 倍 総 理 は 第 2 次 安 倍 内 閣 発 足 以 降 3 年 間 の 税 収 が 上 振 れていることから その 上 14 産 経 新 聞 ( 平 28.1.7) 15 飲 食 料 品 と 飲 食 料 品 以 外 の 資 産 が 一 体 となっている 資 産 ( 一 体 商 品 )については 一 定 金 額 以 下 の 少 額 の 資 産 であって 主 たる 部 分 が 飲 食 料 品 から 構 成 されているものに 限 り 全 体 を 飲 食 料 品 として 軽 減 税 率 の 対 象 とするとされている 一 定 金 額 については 1 万 円 との 報 道 があるが 正 式 には 決 まっていない 16 平 成 27 年 12 日 9 日 に 公 表 された 民 間 税 調 2016 年 度 税 制 改 革 大 綱 では 軽 減 税 率 の 採 用 は その 適 用 基 準 を 巡 る 様 々なトラブルを 誘 発 することに 加 え 不 公 正 な 業 界 要 望 を 生 み 出 し 税 で 票 を 買 う 従 来 型 の 政 治 に 戻 ることを 意 味 し 税 収 面 その 他 の 弊 害 も 考 慮 すれば 政 治 的 にも 理 論 的 にも 採 用 すべきではない とされている <http://minkan-zei-cho.jp/wp-content/uploads/84e456ba74d60cc120ebbd5a13db9ed5.pdf> ( 平 28.1.18 最 終 アクセス) 17 制 度 単 位 でなく 家 計 全 体 をトータルに 捉 え 医 療 介 護 保 育 等 に 関 する 自 己 負 担 の 合 計 額 に 上 限 を 設 定 す る 制 度 であるとされている 消 費 税 率 が 10%に 引 き 上 げられ 増 収 分 が 満 年 度 化 した 際 に 社 会 保 障 の 充 実 に 向 けられる 約 2.8 兆 円 のうち 4,000 億 円 を 財 源 として 導 入 することが 予 定 されていた 第 185 回 国 会 衆 議 院 厚 生 労 働 委 員 会 議 録 第 7 号 7 8 頁 ( 平 25.11.6) 28

振 れ 分 を 軽 減 税 率 制 度 導 入 の 財 源 に 充 てることを 検 討 する 考 えを 示 した 18 しかし 税 収 の 上 振 れについては 経 済 状 況 によって 下 振 れすることもあり 安 定 的 な 恒 久 財 源 と は 言 えないとする 政 府 統 一 見 解 が 出 された 19 政 府 統 一 見 解 では 現 時 点 で 具 体 的 な 措 置 内 容 が 念 頭 にあるわけではないこと 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 における 2.8 兆 円 程 度 の 社 会 保 障 の 充 実 に 必 要 な 財 源 は 確 保 する 考 えも 同 時 に 示 された なお アベノミクス による 経 済 の 底 上 げに 伴 う 税 収 増 をどう 考 えていくかについては 経 済 財 政 諮 問 会 議 に おいて 議 論 していくこととなった 軽 減 税 率 対 象 品 目 の 範 囲 を 拡 大 すれば 失 われる 消 費 税 収 は 大 きくなる 対 象 品 目 の 選 定 に 際 しては 欧 州 の 事 例 が 参 考 にされることが 多 い 既 に 制 度 を 導 入 している 国 々 における 問 題 点 等 を 検 証 し 我 が 国 で 採 用 可 能 な 点 があるか 検 討 する 必 要 があるだろう その 際 は 我 が 国 が 世 界 のどの 国 もこれまで 経 験 したことのない 高 齢 社 会 を 迎 えている という 特 別 な 事 情 を 考 慮 し 対 象 品 目 の 範 囲 と 財 源 問 題 を 併 せて 十 分 検 討 すべきである ウ 低 所 得 者 対 策 としての 効 果 軽 減 税 率 制 度 の 課 題 としては 世 帯 年 収 が 高 いほど 負 担 軽 減 額 は 大 きくなることが 明 らかとなっており 高 所 得 者 ほど 受 ける 恩 恵 が 大 きくなることも 問 題 とされている 財 務 省 によれば 世 帯 年 収 が200 万 円 未 満 の 場 合 の 年 間 負 担 軽 減 額 は8,372 円 であるのに 対 し 1,500 万 円 以 上 の 場 合 は17,762 円 であり その 差 は2 倍 以 上 となっている また 財 務 省 の 別 の 試 算 によれば 2 人 以 上 世 帯 の 消 費 税 負 担 軽 減 額 は 合 計 4,598 億 円 であり そ の 内 訳 は 年 収 550 万 円 未 満 の 世 帯 が50.1%(2,302 億 円 ) 同 550 万 円 以 上 の 世 帯 が49.9% (2,296 億 円 )となっている このように 負 担 割 合 で 比 較 した 場 合 は 逆 進 性 の 緩 和 に 一 定 の 効 果 が 期 待 できるが 負 担 軽 減 額 で 比 較 した 場 合 は 高 所 得 者 に 有 利 であることが 示 されている( 図 表 10) 図 表 10 軽 減 税 率 導 入 による 年 間 負 担 軽 減 額 ( 財 務 省 試 算 ) 軽 減 対 象 : 酒 類 及 び 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 年 間 収 入 階 級 ( 万 円 ) ~200 200~ 250~ 300~ 350~ 400~ 450~ 500~ 550~ 250 300 350 400 450 500 550 600 年 間 負 担 軽 減 額 ( 円 ) 8,372 11,102 11,742 11,999 12,302 12,598 12,685 12,553 12,480 導 入 後 消 費 税 負 担 額 ( 円 ) 107,089 167,535 183,002 190,289 205,000 223,063 236,000 234,875 245,395 年 間 収 入 階 級 ( 万 円 ) 600~ 650~ 700~ 750~ 800~ 900~ 1,000~ 1,250~ 650 700 750 800 900 1,000 1,250 1,500 1,500~ 年 間 負 担 軽 減 額 ( 円 ) 12,989 13,428 13,740 14,065 14,661 14,773 15,731 16,749 17,762 導 入 後 消 費 税 負 担 額 ( 円 ) 254,911 285,957 279,976 314,019 314,820 329,661 376,977 437,293 486,775 軽 減 対 象 : 酒 類 及 び 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 新 聞 年 間 収 入 階 級 ( 万 円 ) ~200 200~ 250~ 300~ 350~ 400~ 450~ 500~ 550~ 250 300 350 400 450 500 550 600 年 間 負 担 軽 減 額 ( 円 ) 8,894 11,681 12,355 12,647 12,945 13,198 13,299 13,155 13,048 導 入 後 消 費 税 負 担 額 ( 円 ) 106,567 166,956 182,389 189,641 204,357 222,463 235,386 234,273 244,827 年 間 収 入 階 級 ( 万 円 ) 600~ 650~ 700~ 750~ 800~ 900~ 1,000~ 1,250~ 650 700 750 800 900 1,000 1,250 1,500 1,500~ 年 間 負 担 軽 減 額 ( 円 ) 13,565 14,079 14,339 14,679 15,336 15,440 16,414 17,491 18,533 導 入 後 消 費 税 負 担 額 ( 円 ) 254,335 285,306 279,378 313,405 314,145 328,994 376,294 436,550 486,003 ( 出 所 ) 財 務 省 資 料 に 基 づき 作 成 18 第 190 回 国 会 衆 議 院 予 算 委 員 会 議 録 ( 平 28.1.12) 19 政 府 統 一 見 解 は 平 成 28 年 1 月 12 日 の 衆 議 院 予 算 委 員 会 理 事 会 に 提 出 された 29

このほかにも 日 本 総 合 研 究 所 の 試 算 20 では 2 人 以 上 の 勤 労 者 世 帯 における 年 収 別 の 軽 減 税 率 導 入 の 影 響 は 年 収 300 万 円 の 場 合 は 年 間 11,040 円 の 負 担 軽 減 同 1,000 万 円 では16,440 円 とされている さらに 第 一 生 命 経 済 研 究 所 によれば 世 帯 主 の 年 収 階 層 別 の 軽 減 税 率 導 入 の 影 響 は 年 収 200 万 円 未 満 の 場 合 は 年 間 9,000 円 の 負 担 軽 減 同 1,500 万 円 以 上 では19,000 円 と 試 算 21 されている( 図 表 11) 図 表 11 軽 減 税 率 導 入 による 年 間 負 担 軽 減 額 ( 財 務 省 以 外 の 試 算 まとめ) 日 本 総 合 研 究 所 試 算 ( 軽 減 対 象 : 酒 類 及 び 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 新 聞 ) 2 人 以 上 の 勤 労 者 世 帯 引 退 夫 婦 一 人 暮 らし 勤 労 者 世 帯 無 職 高 齢 者 年 収 ( 万 円 ) 300 500 700 1,000 250 300 500 150 年 間 可 処 分 所 得 ( 万 円 ) 287 401 522 698 220 253 366 129 年 間 負 担 軽 減 額 ( 円 ) 11,040 12,600 14,400 16,440 12,720 5,640 6,240 6,840 可 処 分 所 得 に 占 める 割 合 0.38% 0.31% 0.28% 0.24% 0.58% 0.22% 0.17% 0.53% 第 一 生 命 経 済 研 究 所 試 算 ( 軽 減 対 象 : 酒 類 及 び 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 ) 世 帯 主 の 年 収 ( 万 円 ) ~200 200~ 250~ 300~ 350~ 400~ 450~ 500~ 550~ 250 300 350 400 450 500 550 600 年 間 負 担 軽 減 額 ( 円 ) 9,000 11,000 11,000 12,000 12,000 12,000 13,000 13,000 13,000 軽 減 対 象 品 目 消 費 支 出 割 合 30.7% 25.9% 25.8% 24.0% 23.1% 21.9% 21.5% 20.9% 20.5% 世 帯 主 の 年 収 ( 万 円 ) 600~ 650~ 700~ 750~ 800~ 900~ 1,000~ 1,250~ 650 700 750 800 900 1,000 1,250 1,500 1,500~ 年 間 負 担 軽 減 額 ( 円 ) 13,000 14,000 14,000 14,000 15,000 15,000 16,000 17,000 19,000 軽 減 対 象 品 目 消 費 支 出 割 合 19.3% 19.3% 19.4% 17.5% 17.9% 17.8% 17.1% 15.5% 15.1% ( 参 考 ) 民 間 税 制 調 査 会 試 算 ( 軽 減 対 象 : 酒 類 を 除 く 飲 食 料 品 ) 世 帯 主 の 年 収 ( 万 円 ) 200 300 400 500 600 700 800 1,000 1,500 年 間 負 担 軽 減 額 ( 円 ) 7,738 9,552 12,614 15,715 18,632 22,550 27,250 29,392 34,492 年 間 負 担 軽 減 率 0.4% 0.3% 0.3% 0.3% 0.3% 0.3% 0.3% 0.3% 0.3% ( 出 所 ) 日 本 総 合 研 究 所 第 一 生 命 経 済 研 究 所 及 び 民 間 税 制 調 査 会 資 料 に 基 づき 作 成 軽 減 税 率 に 批 判 的 な 立 場 から 給 付 付 き 税 額 控 除 を 推 す 声 も 多 い これは 低 所 得 者 に 係 る 消 費 税 負 担 額 を 所 得 税 の 体 系 の 中 で 税 額 控 除 し 控 除 し 切 れない 場 合 は 給 付 を するという 制 度 であり 既 に 導 入 をしている 国 もある 給 付 付 き 税 額 控 除 は 支 援 が 必 要 な 低 所 得 者 に 対 しきめ 細 かく 対 応 できるというメリ ットがある しかし 軽 減 税 率 に 比 べて 導 入 国 が 少 ないこと 等 から 制 度 に 対 する 国 民 の 実 感 が 湧 かないとの 意 見 もある また 制 度 導 入 の 前 提 として 納 税 者 の 所 得 や 資 産 の 確 実 な 捕 捉 ができなければ 諸 外 国 のような 不 正 受 給 過 剰 給 付 の 可 能 性 が 残 ってしま う 平 成 28 年 1 月 から 本 格 運 用 がスタートしたマイナンバー 制 度 については 税 務 調 査 や 社 会 保 障 制 度 の 資 力 調 査 で 預 金 情 報 を 効 率 的 に 利 用 することを 目 的 として 30 年 から 預 金 口 座 へ 付 番 できるよう 制 度 改 正 された しかし 預 金 口 座 への 付 番 は 義 務 ではなく 任 意 であることから 所 得 捕 捉 が 十 分 とは 言 えず また 膨 大 な 数 の 個 人 預 金 口 座 全 てにマ 20 日 本 総 合 研 究 所 <https://www.jri.co.jp/medialibrary/file/report/research/pdf/8589.pdf>( 平 28.1.18 最 終 アクセス) 21 第 一 生 命 経 済 研 究 所 <http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2015/naga20151210keigen.pdf> ( 平 28.1.18 最 終 アクセス) 30

イナンバーを 付 番 するための 労 力 時 間 は 計 り 知 れない 将 来 的 にマイナンバー 制 度 が 定 着 し 納 税 者 の 所 得 預 金 口 座 土 地 住 宅 などの 資 産 情 報 等 が 正 確 に 漏 れなく 捕 捉 できるようになれば 税 制 と 社 会 保 障 制 度 の 両 面 において 適 正 な 低 所 得 者 対 策 となり 得 るだろう エ 事 務 負 担 の 増 加 軽 減 税 率 導 入 に 伴 い 事 業 者 には 数 多 くの 新 たな 事 務 負 担 が 生 じる 商 品 管 理 を 中 心 とした 業 務 実 務 については 先 に 述 べたように 明 確 な 線 引 きの 公 表 などの 対 応 や 関 係 政 省 令 の 速 やかな 決 定 が 求 められる 軽 減 税 率 に 対 応 したレジの 買 換 え 改 修 や 会 計 システム 等 の 改 修 も 必 要 となる 政 府 は 費 用 の 工 面 が 困 難 な 中 小 零 細 企 業 に 対 する 財 政 支 援 のため 平 成 27 年 度 予 備 費 を 活 用 し 複 数 税 率 対 応 レジの 導 入 支 援 や 電 子 商 取 引 システムの 改 修 支 援 等 を 行 う 予 算 として996 億 円 を 措 置 している また 中 小 企 業 団 体 等 と 連 携 して 軽 減 税 率 制 度 の 周 知 や 中 小 企 業 からの 相 談 対 応 等 を 各 地 で 実 施 するため 27 年 度 補 正 予 算 に170 億 円 が 計 上 されている 納 税 事 務 についても 区 分 経 理 に 基 づく 税 額 計 算 が 必 要 となるため 事 業 者 の 負 担 は 増 加 する 納 税 に 関 する 事 務 負 担 については 以 下 に 述 べる オ インボイス 制 度 の 導 入 と 益 税 問 題 ( 図 表 12) 消 費 税 の 実 質 的 な 負 担 者 は 消 費 者 だが 納 税 義 務 者 は 事 業 者 である 消 費 者 が 事 業 者 に 支 払 った 消 費 税 の 一 部 が 納 税 されず 事 業 者 の 手 元 に 残 ることを 益 税 という 消 費 税 の 納 税 については 中 小 企 業 への 事 務 負 担 軽 減 策 として 事 業 者 免 税 点 制 度 22 と 簡 易 課 税 制 度 23 が 特 例 措 置 として 設 けられており 益 税 発 生 の 原 因 となっている 財 務 省 は 益 税 の 額 を 定 量 的 に 計 算 することは 困 難 としつつも 機 械 的 試 算 として 事 業 者 免 税 点 制 度 の 廃 止 で3,500 億 円 簡 易 課 税 制 度 の 廃 止 で1,500 億 円 計 5,000 億 円 程 度 の 増 収 になると 見 込 んでいる 24 この 推 計 は 消 費 税 率 5% 時 のものであるため 10% 時 には 更 に 増 加 すると 想 定 される インボイス 制 度 導 入 はこうした 益 税 問 題 の 解 消 に 効 果 があるとされている しかし 今 回 の 改 正 において 軽 減 税 率 制 度 導 入 からインボイス 制 度 導 入 までの 経 過 措 置 として 設 けられた 区 分 記 載 請 求 書 等 保 存 方 式 における 税 額 計 算 の 特 例 によって 新 たな 益 税 が 発 生 する 可 能 性 がある まず 売 上 税 額 計 算 については 連 続 した10 日 間 の 売 上 実 績 を 基 に 軽 減 税 率 対 象 品 目 の 比 率 を 設 定 する みなし 計 算 の 特 例 が 設 けられる 仮 に この10 日 間 の 飲 食 料 品 売 上 割 合 が 高 ければ 納 税 額 が 実 態 と 乖 離 する 可 能 性 は 高 い この 特 例 は 課 税 売 上 高 が 5,000 万 円 以 下 の 中 小 事 業 者 については 軽 減 税 率 制 度 の 導 入 から4 年 間 選 択 することが でき 大 企 業 についても1 年 間 に 限 って 選 択 が 認 められることとなっている 22 基 準 期 間 ( 前 々 年 又 は 前 々 事 業 年 度 )の 課 税 売 上 高 が 1,000 万 円 以 下 の 事 業 者 は 納 税 義 務 が 免 除 される 財 務 省 によれば 免 税 事 業 者 数 は 個 人 事 業 者 約 435 万 者 法 人 約 77 万 社 の 計 約 513 万 +αと 推 計 されている 23 基 準 期 間 ( 前 々 年 又 は 前 々 事 業 年 度 )の 課 税 売 上 高 が 5,000 万 円 以 下 の 事 業 者 は 売 上 げに 係 る 税 額 にみな し 仕 入 率 を 乗 じた 金 額 を 仕 入 税 額 とすることができる 国 税 庁 統 計 年 報 書 ( 平 成 25 年 度 版 )によれば 簡 易 課 税 適 用 事 業 者 数 は 個 人 事 業 者 約 69 万 者 法 人 約 54 万 社 の 計 約 123 万 とされている 24 第 186 回 国 会 参 議 院 決 算 委 員 会 会 議 録 第 6 号 7 頁 ( 平 26.4.28) 31

次 に 仕 入 税 額 計 算 については 仕 入 れの 一 定 割 合 を 軽 減 税 率 対 象 品 目 の 仕 入 れとし て 税 額 を 計 算 する 特 例 等 が 設 けられる これにより 軽 減 税 率 の 導 入 から1 年 間 に 限 り 企 業 規 模 を 問 わず 簡 易 課 税 制 度 の 適 用 を 受 けることができることとなる この 簡 易 課 税 制 度 適 用 に 際 しては 現 在 は 課 税 期 間 の 開 始 前 に 選 択 することとなっているが 事 後 選 択 も 可 能 となる また 事 業 者 免 税 点 制 度 も 存 続 する 見 込 みとなっている 免 税 事 業 者 からの 仕 入 税 額 控 除 は 軽 減 税 率 制 度 導 入 からインボイス 制 度 導 入 までの4 年 間 も 現 行 どおり 認 められ ることとなった インボイス 制 度 導 入 後 についても 前 述 のとおり 特 例 が 設 けられ 3 年 間 は80% その 後 の3 年 間 は50%の 仕 入 税 額 控 除 が 可 能 となる 益 税 問 題 の 解 消 に 効 果 のあるインボイス 制 度 を 導 入 した 後 も 益 税 発 生 につながる 特 例 を6 年 間 残 すことにつ いては 矛 盾 を 指 摘 する 声 もある 益 税 問 題 は 消 費 税 は 全 て 社 会 保 障 財 源 に 充 てられるという 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 の 意 義 にも 関 わる 重 要 な 問 題 である インボイス 導 入 により 事 業 者 の 事 務 負 担 の 増 加 が 懸 念 される 一 方 で 益 税 問 題 の 是 正 ができなければ インボイス 導 入 効 果 が 低 減 する 上 消 費 税 に 対 する 国 民 の 信 頼 は 得 られないだろう 税 額 計 算 の 方 法 税 額 計 算 の 特 例 売 上 税 額 仕 入 税 額 図 表 12 益 税 が 発 生 する 原 因 となると 思 われる 特 例 措 置 等 の 流 れ 現 行 制 度 税 込 価 格 からの 割 戻 し 計 算 中 小 企 業 - 大 企 業 - 中 小 企 業 免 税 事 業 者 からの 仕 入 税 額 控 除 簡 易 課 税 制 度 ( 事 前 選 択 ) 大 企 業 - 可 能 平 成 29 年 4 月 平 成 30 年 4 月 平 成 33 年 4 月 平 成 36 年 4 月 平 成 39 年 4 月 区 分 記 載 請 求 書 等 保 存 方 式 税 込 価 格 からの 割 戻 し 計 算 軽 減 税 率 対 象 売 上 の みなし 計 算 (4 年 間 ) 軽 減 税 率 対 象 売 上 の - みなし 計 算 (1 年 間 ) 簡 易 課 税 制 度 簡 易 課 税 制 度 への 影 響 検 証 事 後 選 択 (1 年 間 ) 簡 易 課 税 制 度 - 事 後 選 択 (1 年 間 ) 特 例 80% 控 除 可 能 ( 注 1) 図 表 中 中 小 企 業 は 課 税 売 上 高 5,000 万 円 以 下 の 事 業 者 大 企 業 は 同 5,000 万 円 超 えの 事 業 者 とした ( 注 2) 益 税 が 発 生 する 原 因 となると 思 われる 特 例 措 置 等 に 網 掛 けを 施 した ( 出 所 ) 財 務 省 資 料 に 基 づき 作 成 可 能? インボイス 方 式 ( 適 格 請 求 書 等 保 存 方 式 ) 適 格 請 求 書 の 税 額 の 積 上 げ 計 算 取 引 総 額 からの 割 戻 し 計 算 - - - 特 例 50% 控 除 可 能 選 択 制 不 可 能 (2) 法 人 課 税 ア 法 人 実 効 税 率 の 引 下 げの 効 果 国 際 的 な 法 人 税 率 の 引 下 げ 競 争 が 加 速 する 中 我 が 国 が 改 革 2 年 目 にして 法 人 実 効 税 率 を 20% 台 に 引 き 下 げることについては 評 価 する 声 も 多 い 復 興 特 別 法 人 税 の1 年 前 倒 し 廃 止 や 平 成 27 年 度 改 正 による 法 人 実 効 税 率 引 下 げにも かかわらず 現 在 企 業 の 内 部 留 保 は 350 兆 円 を 超 え 手 元 資 金 が 増 えているものの 設 備 投 資 は 伸 び 悩 んでいる 状 況 にある 足 下 では 賃 上 げに 向 けた 動 きも 見 えてきている が 労 働 分 配 率 は 低 下 している 32

安 倍 総 理 は 27 年 11 月 に 行 われた 経 済 界 との 官 民 対 話 において 3 年 連 続 での 賃 上 げを 要 請 した これは 企 業 が 今 回 の 減 税 分 を 原 資 に 賃 上 げや 設 備 投 資 拡 大 に 踏 み 切 るよう 求 めたものである 日 本 経 団 連 25 は 安 倍 総 理 からの 要 請 を 受 け 27 年 を 上 回 る 賃 金 引 上 げを 期 待 して 会 員 企 業 に 呼 びかける 方 針 を 示 した 27 年 の 民 間 主 要 企 業 における 賃 上 げ 率 は 円 安 原 料 安 を 追 い 風 に 企 業 業 績 が 好 調 と なったこともあり 2.38%と 17 年 ぶりの 高 水 準 を 記 録 した 26 しかし 業 種 によって 賃 上 げ 率 には 格 差 があり 各 企 業 が 今 後 どこまで 賃 上 げに 対 応 できるかは 不 透 明 である また 中 国 景 気 の 減 速 を 受 け 先 行 きの 不 透 明 感 は 強 まっているとも 言 える 政 府 や 日 本 経 団 連 の 賃 上 げ 要 請 には 法 的 拘 束 力 がないため 今 後 の 実 効 性 が 問 われる また これに 関 連 して 今 回 の 法 人 事 業 税 における 外 形 標 準 課 税 の 更 なる 拡 大 は 賃 金 を 増 加 させた 企 業 への 課 税 を 強 化 することとなるため 企 業 が 雇 用 を 増 加 させ 賃 上 げ をする 要 因 とならず 矛 盾 しているとの 批 判 もある イ 法 人 実 効 税 率 20% 台 への 引 下 げ 達 成 後 の 具 体 的 道 筋 政 府 は 日 本 再 興 戦 略 改 訂 2014 において 日 本 の 立 地 競 争 力 を 強 化 するとともに 我 が 国 企 業 の 競 争 力 を 高 めることを 掲 げている その 一 環 として 法 人 実 効 税 率 につい ては 国 際 的 に 遜 色 ない 水 準 に 引 き 下 げることを 目 指 すとしているが 27 今 回 20% 台 に 引 き 下 げる 改 正 を 行 った 後 の 具 体 的 な 道 筋 は 明 確 にされていない 平 成 27 年 現 在 での 法 人 実 効 税 率 は G7 平 均 が 29.95% G20 平 均 が 27.71% TP P 交 渉 参 加 国 平 均 が 26.68%となっている 28 日 本 経 団 連 からは 法 人 実 効 税 率 の 引 き 下 げに 不 断 に 取 り 組 み 将 来 的 にOECD 諸 国 平 均 また 競 合 するアジア 近 隣 諸 国 並 み の 25%へと 引 き 下 げるべき との 提 言 もされている 29 しかし 20% 台 達 成 後 も 更 なる 引 下 げを 行 うのか 否 かも 含 め 政 府 が 考 える 今 後 の 法 人 税 改 革 の 在 り 方 は 具 体 的 には 明 らかとなっていない 政 府 が 今 後 どのように 検 討 を 進 めていくのか 注 目 される ウ 代 替 財 源 の 確 保 等 財 源 なき 減 税 を 行 うことは 現 下 の 厳 しい 財 政 事 情 や 企 業 部 門 の 内 部 留 保 の 状 況 等 に 鑑 み 国 民 の 理 解 を 得 られない このため 税 率 引 下 げに 当 たっては 課 税 ベースの 拡 大 等 による 財 源 確 保 が 必 要 となるが 課 題 も 多 い 特 に 租 税 特 別 措 置 については 我 が 国 経 済 の 成 長 過 程 を 通 じて 相 応 の 役 割 を 果 たし てきたとの 評 価 がある 一 方 で 適 用 を 受 けている 企 業 の 実 態 が 不 明 であり 補 助 金 に 比 べ 不 透 明 との 批 判 もあった こうしたことから 平 成 22 年 に 租 特 透 明 化 法 30 が 成 立 し 適 用 実 態 を 把 握 するための 調 査 及 びその 結 果 の 国 会 への 報 告 が 義 務 付 けられ 租 税 特 別 措 置 の 適 用 実 態 調 査 の 結 果 に 関 する 報 告 書 が 国 会 に 提 出 されるようになった 31 報 25 一 般 社 団 法 人 日 本 経 済 団 体 連 合 会 ( 会 長 : 榊 原 定 征 ( 東 レ 相 談 役 最 高 顧 問 )) 26 厚 生 労 働 省 平 成 27 年 民 間 主 要 企 業 春 季 賃 上 げ 要 求 妥 結 状 況 27 日 本 再 興 戦 略 改 訂 2014( 平 成 26 年 6 月 24 日 閣 議 決 定 ) 28 財 務 省 資 料 に 基 づく G20 はEUを 除 く 19 か 国 の 平 均 TPP 交 渉 参 加 国 は 平 成 27 年 10 月 現 在 計 12 か 国 29 平 成 28 年 度 税 制 改 正 に 関 する 提 言 (2015 年 9 月 8 日 一 般 社 団 法 人 日 本 経 済 団 体 連 合 会 ) 30 租 税 特 別 措 置 の 適 用 状 況 の 透 明 化 等 に 関 する 法 律 ( 平 成 22 年 3 月 31 日 法 律 第 8 号 ) 31 平 成 23 年 度 適 用 実 態 調 査 が 平 成 25 年 3 月 に 国 会 に 提 出 されて 以 降 平 成 24 年 度 ( 平 成 26 年 2 月 ) 平 成 25 年 度 ( 平 成 27 年 2 月 )と 毎 年 提 出 されている 33

告 書 では 特 別 措 置 ごとの 適 用 企 業 数 適 用 額 総 額 高 額 適 用 上 位 10 位 の 企 業 について 企 業 名 は 伏 せられているもののその 適 用 額 等 が 報 告 されている 租 税 特 別 措 置 については 毎 年 度 適 用 期 限 が 到 来 する 措 置 を 中 心 に 廃 止 を 含 めた ゼロベースでの 見 直 しが 行 われている しかし 船 舶 の 特 別 償 却 等 のように 50 年 以 上 の 長 期 間 にわたり 存 続 している 措 置 もあり 制 定 されると 既 得 権 化 し 必 要 性 について 十 分 検 討 されず 存 続 しているとの 批 判 もある 今 後 同 報 告 書 の 更 なる 活 用 に 向 け 例 え ば 各 企 業 等 の 適 用 額 の 経 年 変 化 を 追 跡 しやすくするため 報 告 書 記 載 の 法 人 コードを 毎 年 度 変 わるコードから 年 度 によって 変 わらないコードとし 同 一 企 業 への 適 用 状 況 を 時 系 列 で 比 較 できるようにするなどの 改 善 も 重 要 となる 安 倍 総 理 は 経 済 の 好 循 環 を 実 現 するため 租 税 特 別 措 置 による 法 人 税 減 税 を 積 極 的 に 活 用 してきたが 減 税 を 実 施 する 以 上 国 民 の 理 解 が 得 られるよう 適 用 実 態 や 効 果 等 について 徹 底 した 検 証 が 求 められる 4.おわりに 本 稿 では 平 成 28 年 度 税 制 改 正 について 消 費 税 の 軽 減 税 率 制 度 法 人 税 改 革 と 大 きく 2つに 分 け 改 正 の 概 要 と 今 後 の 課 題 を 紹 介 した 今 夏 に 参 議 院 議 員 通 常 選 挙 を 控 えてい ることから 今 回 の 税 制 改 正 は 経 済 活 性 化 が 重 視 され 減 税 色 が 強 いとの 評 価 も 多 い 29 年 度 の 税 制 改 正 は 所 得 税 改 革 が 主 なテーマになるとの 見 通 しがある 政 府 は 骨 太 方 針 2015 において 所 得 税 改 革 の3つの 基 本 方 針 を 掲 げており 32 政 府 税 制 調 査 会 において 見 直 しに 向 けた 検 討 が 重 ねられている 改 革 の 柱 とされている 配 偶 者 控 除 については5つ の 見 直 し 案 が 提 起 されているが いずれの 案 を 選 択 しても 世 帯 によって 所 得 税 の 負 担 増 が 生 ずるとされており 慎 重 な 議 論 が 求 められる 我 が 国 は 急 激 な 高 齢 化 の 進 展 により 社 会 保 障 給 付 費 が 増 大 するとともに 出 生 率 の 低 下 による 少 子 化 が 同 時 に 進 行 する 少 子 高 齢 化 人 口 減 少 社 会 となっている 国 及 び 地 方 の 長 期 債 務 残 高 は 26 年 度 末 に 1,000 兆 円 を 突 破 し 28 年 度 末 には 対 GDP 比 205%となる 1,062 兆 円 に 達 する 見 込 みとなっている このような 状 況 下 において 社 会 保 障 制 度 を 維 持 し 財 政 を 再 建 していくためには 税 や 保 険 料 などの 国 民 負 担 増 は 避 けられないだろう 国 民 に 対 し 新 たな 税 負 担 を 求 める 議 論 となった 際 国 民 の 納 得 をスムーズに 得 るために は 税 の3 原 則 である 公 平 中 立 簡 素 とりわけ 公 平 な 税 制 の 構 築 が 必 要 であろ う 政 府 及 び 与 党 には あるべき 税 制 の 構 築 について 国 民 の 納 得 が 得 られるよう 議 論 を 深 めるとともに 社 会 保 障 などの 歳 出 面 と 併 せて 一 体 的 に 検 討 することが 求 められている (わたなべ まさふみ) 32 経 済 財 政 運 営 と 改 革 の 基 本 方 針 2015~ 経 済 再 生 なくして 財 政 健 全 化 なし~ ( 平 成 27 年 6 月 30 日 閣 議 決 定 )においては 1 低 所 得 若 年 層 子 育 て 世 代 の 活 力 維 持 と 格 差 の 固 定 化 防 止 のための 見 直 し 2 働 き 方 稼 ぎ 方 への 中 立 性 公 平 性 の 確 保 3 世 代 間 世 代 内 の 公 平 の 確 保 等 が 個 人 所 得 課 税 改 革 の 基 本 方 針 とされ ている 34