FinTechをめぐる 金 融 規 制 の 動 向 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について 2016 年 7 月 19 日 EY Japan FSO Thought Leadership 新 日 本 有 限 責 任 監 査 法 人 金 融 アドバイザリー 部 シニアマネージャー 安 達 知 可 良 Summary 2015 年 12 月 22 日 に 金 融 庁 のワーキング グループが 公 表 した 報 告 書 に 基 づき 銀 行 法 等 改 正 案 が 通 常 国 会 に 提 出 され 2016 年 5 月 25 日 に 成 立 しました 改 正 法 により 銀 行 によるFinTechベンチャー 企 業 への 出 資 の 容 易 化 や 仮 想 通 貨 交 換 業 者 への 規 制 の 適 用 など FinTechに 係 る 法 制 の 環 境 整 備 が 一 歩 前 進 することとなります 改 正 法 は2017 年 4 月 の 施 行 が 見 込 まれており ベンチャー 企 業 を 活 用 した 金 融 機 関 のイノベーション 促 進 により サービス 品 質 および 利 用 者 の 利 便 性 の 向 上 に 寄 与 することが 期 待 されています Ⅰ. はじめに 金 融 とITを 融 合 させた 新 しいサービス いわゆる FinTech が 世 界 的 に 注 目 されて います FinTechを 提 供 するITベンチャー 企 業 が これまでになかった 新 しい サービスを 提 供 することにより 利 用 者 の 利 便 性 が 向 上 するなどの 成 果 が 世 界 各 国 から 聞 かれるようになりました 日 本 においても 1~2 年 のうちにその 動 きが 活 発 化 していますが 一 方 で 銀 行 が ベンチャー 企 業 を 活 用 する 場 合 の 制 約 が 存 在 するなど FinTechを 十 分 に 活 用 できる 環 境 ではないことが 指 摘 されていました これを 受 け 金 融 庁 はそのギャップの 解 消 に 向 けた 対 応 を 進 めてきた 経 緯 があります 本 稿 では 日 本 におけるFinTechベンチャーの 状 況 を 整 理 した 上 今 年 5 月 25 日 に 成 立 した 改 正 法 の 概 要 の 説 明 に 加 え その 留 意 点 についても 触 れたいと 思 います 改 正 法 の 施 行 に 先 立 ち 検 討 の 一 助 になれば 幸 甚 です
Ⅱ. 日 本 における FinTech の 動 向 金 融 (Finance)と 技 術 (Technology)を 掛 け 合 わせた 造 語 である FinTech この 動 きは 欧 米 を 中 心 とした 海 外 から 広 がり 今 日 では 日 本 でも 広 く 知 られるところと なりました 主 にITベンチャー 企 業 によって 提 供 されるIT 技 術 を 駆 使 した 新 しい サービスを 指 す 場 合 が 多 く この 結 果 として 新 たな 市 場 や 顧 客 層 の 創 出 といった イノベーションを 起 こしている 事 例 も 多 く 見 受 けられます 一 方 で 伝 統 的 金 融 機 関 にとっては 既 存 業 務 を 脅 かしかねないとの 危 惧 から こうしたベンチャー 企 業 を Disrupter ( 破 壊 者 )と 呼 び 警 戒 するケースも 少 なくありません 日 本 においても 近 年 その 動 きが 活 発 化 してきており 例 えばPFMソフト( 個 人 資 産 管 理 いわゆる 家 計 簿 ソフト)を 銀 行 口 座 と 連 携 させ 統 合 的 に 残 高 管 理 できる サービスや クラウドファンディングなどの 小 口 融 資 ロボアドバイザーを 活 用 した 投 資 助 言 サービスなど 新 たな 市 場 を 開 拓 したベンチャー 企 業 も 登 場 しています また ビットコインなどの 仮 想 通 貨 取 引 所 を 運 営 するベンチャー 企 業 も 日 本 国 内 には 多 数 存 在 していることに 加 え 今 年 4 月 には 仮 想 通 貨 の 技 術 要 素 であるブロック チェーンに 関 する 二 つのコンソーシアム 1 が 組 織 されるなど 日 本 独 自 の 動 きも 見 られる 状 況 となっています 一 方 銀 行 における 他 業 禁 止 規 制 がITベンチャー 企 業 の 技 術 を 取 り 込 む 制 約 と なっている 点 などについて 現 行 法 の 改 正 を 望 む 声 も 多 くなっていました こうした 動 きを 受 け 金 融 庁 では 各 方 面 の 利 害 関 係 者 や 有 識 者 との 討 議 を 重 ね 銀 行 法 をはじめとする 一 部 の 法 令 などを 改 正 することとなりました Ⅲ. 銀 行 法 等 の 改 正 までの 経 緯 金 融 庁 は 2014 年 10 月 に 決 済 業 務 等 の 高 度 化 に 関 するスタディ グループ ( 以 下 決 済 高 度 化 SG )を 立 ち 上 げて ITの 急 速 な 発 展 などによる 決 済 高 度 化 の 要 請 への 対 応 の 検 討 を 始 めました 2015 年 4 月 28 日 には 決 済 高 度 化 SGの 中 間 整 理 を 公 表 し その 後 次 の 二 つのワーキング グループ(WG)を 立 ち 上 げて 個 別 に 課 題 を 検 討 していくことになります 1. 決 済 業 務 等 の 高 度 化 に 関 するWG 決 済 高 度 化 SGの 中 間 整 理 で 整 理 された 課 題 2 に 加 え 仮 想 通 貨 も 含 め 今 後 の 具 体 的 な 行 動 計 画 と 将 来 的 な 方 向 性 などを 審 議 2. 金 融 グループを 巡 る 制 度 の 在 り 方 に 関 するWG ITイノベーションの 促 進 に 向 けた 取 組 み 強 化 のほか グローバル ローカルな 経 済 金 融 環 境 の 変 化 への 対 応 などを 踏 まえ 金 融 グループの 制 度 の 在 り 方 について 審 議 両 WGとも 同 年 12 月 22 日 までに 報 告 書 が 取 りまとめられ これに 基 づく 形 で 銀 行 法 等 の 改 正 案 ( 情 報 通 信 技 術 の 進 展 等 の 環 境 変 化 に 対 応 するための 銀 行 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 案 )の 作 成 が 進 められました 翌 年 3 月 4 日 には 通 常 国 会 に 提 出 され 5 月 25 日 に 可 決 に 至 りました 改 正 法 は2017 年 4 月 に 施 行 される 見 込 みです 1 日 本 ブロックチェーン 協 会 (JBA) および ブロックチェーン 推 進 協 会 (BCCC) の2 組 織 2 主 に リテール 分 野 を 中 心 としたイノベーションの 進 展 企 業 の 成 長 を 支 える 決 済 サービスの 高 度 化 決 済 インフラの 改 革 の3つの 分 野 を 中 心 に 横 断 的 事 項 である 決 済 システムの 安 定 性 と 情 報 セキュリティ イノベーションの 促 進 と 利 用 者 保 護 の 確 保 の 観 点 も 含 め 今 後 さらに 検 討 を 進 めていく 必 要 のある 課 題 ( 決 済 業 務 等 の 高 度 化 に 関 するワーキング グループ 報 告 の はじめに より 抜 粋 ) 2 FinTech をめぐる 金 融 規 制 の 動 向 : 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について
Ⅳ. 主 な 銀 行 法 等 の 改 正 内 容 銀 行 法 等 の 改 正 は 金 融 グループを 巡 る 環 境 変 化 ITの 急 速 な 進 展 等 を 踏 まえた 制 度 面 での 手 当 てを 行 う ことを 目 的 として 下 表 にある 対 応 を 行 うこととしています 1 2 対 応 策 金 融 グループにおける 経 営 管 理 の 充 実 共 通 重 複 業 務 の 集 約 等 を 通 じた 金 融 仲 介 機 能 の 強 化 概 要 持 株 会 社 等 が 果 たすべき 機 能 の 明 確 化 グループ 内 の 共 通 重 複 業 務 の 集 約 等 を 容 易 化 3 ITの 進 展 に 伴 う 技 術 革 新 へ の 対 応 4 仮 想 通 貨 への 対 応 金 融 関 連 IT 企 業 等 への 出 資 の 容 易 化 および 決 済 関 連 事 務 などの 受 託 の 容 易 化 プリペイドカードの 表 示 義 務 履 行 方 法 の 合 理 化 および 発 行 者 の 苦 情 処 理 体 制 の 整 備 仮 想 通 貨 交 換 業 者 の 登 録 制 の 導 入 マネロン テロ 資 金 供 与 対 策 規 制 利 用 者 保 護 のためのルール 整 備 以 下 では 特 に FinTech と 直 接 的 に 関 連 のある ITの 進 展 に 伴 う 技 術 革 新 への 対 応 と 仮 想 通 貨 への 対 応 について 概 説 します 1. ITの 進 展 に 伴 う 技 術 革 新 への 対 応 今 回 の 改 正 では 金 融 機 関 によるIT 企 業 等 への 出 資 を 容 易 にすることが 一 つの 焦 点 となっています これを 実 現 させるため 以 下 のように 改 正 されています (1) 銀 行 による 他 業 禁 止 規 制 の 緩 和 金 融 機 関 によるIT 企 業 等 への 出 資 を 容 易 にするため 銀 行 (または 銀 行 持 株 会 社 )の 子 会 社 の 範 囲 等 を 定 める 条 項 に 次 の 条 文 が 追 加 されました ( 改 正 後 銀 行 法 [ 以 下 同 じ] 第 16 条 の2 第 1 項 第 12 号 の3 第 52 条 の23 第 1 項 第 11 号 の3) 前 各 号 に 掲 げる 会 社 のほか 情 報 通 信 技 術 その 他 の 技 術 を 活 用 した 当 該 銀 行 の 営 む 銀 行 業 の 高 度 化 若 しくは 当 該 銀 行 の 利 用 者 の 利 便 の 向 上 に 資 する 業 務 又 はこれに 資 すると 見 込 まれる 業 務 を 営 む 会 社 上 記 より 銀 行 業 の 高 度 化 または 銀 行 の 利 用 者 の 利 便 の 向 上 に 資 する 業 務 を 営 む 会 社 を 銀 行 や 銀 行 持 株 会 社 の 子 会 社 とすることが 可 能 となり ます また これに 資 すると 見 込 まれる 業 務 を 営 む とあり 出 資 が 成 功 した 際 には 金 融 関 連 業 務 を 行 っていることが 想 定 されるものの 出 資 段 階 では その 成 功 の 見 込 みが 不 明 確 な 場 合 でも 出 資 が 認 められる 可 能 性 がある ことが 読 み 取 れます また 子 会 社 化 する 際 には 下 記 の 通 り 内 閣 総 理 大 臣 の 認 可 を 受 けること を 前 提 としています( 銀 行 法 第 16 条 の2 第 10 項 第 52 条 の23 第 9 項 ) FinTech をめぐる 金 融 規 制 の 動 向 : 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について 3
銀 行 は 当 該 銀 行 又 はその 子 会 社 が 合 算 してその 基 準 議 決 権 数 を 超 える 議 決 権 を 保 有 している 子 会 社 対 象 会 社 ( 当 該 銀 行 の 子 会 社 および 第 1 項 第 12 号 の3に 掲 げる 会 社 を 除 く )が 同 号 に 掲 げる 会 社 となったことを 知 ったときは 引 き 続 きその 基 準 議 決 権 数 を 超 える 議 決 権 を 保 有 すること について 内 閣 総 理 大 臣 の 認 可 を 受 けた 場 合 を 除 き これを 知 った 日 から 1 年 を 経 過 する 日 までに 当 該 同 号 に 掲 げる 会 社 が 当 該 銀 行 又 はその 子 会 社 が 合 算 してその 基 準 議 決 権 数 を 超 える 議 決 権 を 保 有 する 会 社 で なくなるよう 所 要 の 措 置 を 講 じなければならない 他 業 禁 止 の 規 制 により IT 企 業 等 への 出 資 は 銀 行 は5%まで 銀 行 持 株 会 社 は15%までに 制 限 されていますが 施 行 後 については 認 可 を 受 けた 場 合 に 限 りこの 上 限 がなくなります ただし 改 正 法 には 認 可 の 基 準 について の 明 確 な 記 載 はなく 今 後 改 正 される 施 行 規 則 や 監 督 指 針 等 に 具 体 的 な 指 針 が 定 められると 見 込 まれています なお 認 可 における 判 断 指 針 については 銀 行 業 との 親 近 性 の 程 度 に 留 意 しつつ 他 業 禁 止 の 趣 旨 等 に 照 らした 上 下 記 事 項 を 確 認 していく スタンスであることを 金 融 庁 は 示 しています 3 グループの 財 務 の 健 全 性 に 悪 影 響 を 与 えないか 銀 行 本 体 へのリスク 波 及 の 程 度 が 高 くないと 見 込 まれるかどうか 優 越 的 地 位 の 濫 用 や 利 益 相 反 の 弊 害 のおそれがないか 出 資 がグループの 金 融 サービスの 向 上 に 資 する 適 正 なものと 見 込 まれるか (2) 収 入 依 存 度 規 制 の 緩 和 決 済 関 連 事 務 等 の 受 託 を 容 易 にするために 今 回 の 改 正 により 下 記 の 修 正 が 加 えられています( 銀 行 法 第 16 条 の2 第 11 項 第 52 条 の23 第 10 項 )... 第 1 項 第 11 号 又 は 第 7 項 の 場 合 において 会 社 が 銀 行 等 又 は 銀 行 の 営 む... 業 務 のために 従 属 業 務 を 営 んでいるかどうかの 基 準 は 当 該 従 属 業 務 を... 営 む 会 社 の 当 該 銀 行 等 又 は 当 該 銀 行 からの 当 該 従 属 業 務 に 係 る 収 入 の... 額 の 当 該 従 属 業 務 に 係 る 総 収 入 の 額 に 占 める 割 合 等 を 勘 案 して内 閣 総 理 大 臣 が 定 める ( 傍 点 部 が 改 正 法 での 修 正 箇 所 ) 銀 行 法 では 銀 行 業 務 をサポートする 業 務 を 従 属 業 務 と 定 義 しています 具 体 的 な 対 象 業 務 は 銀 行 法 施 行 規 則 ( 第 17 条 の3 第 1 項 )に 列 挙 されて いますが 決 済 関 連 のIT 業 務 も 従 属 業 務 に 当 たるとされています 監 督 指 針 では 銀 行 の 従 属 業 務 を 営 む 子 会 社 等 は その 総 収 入 のうち 当 該 銀 行 からの 割 合 を50% 以 上 4 とするよう 求 めています しかしながら IT 投 資 の 戦 略 的 な 実 施 に 際 し 複 数 の 金 融 グループ 間 の 連 携 協 同 が 強 く 求 められる 業 務 5 については 従 前 の 収 入 依 存 度 を 引 き 下 げることが 見 込 まれています 3 2016 年 4 月 28 日 の 国 会 答 弁 における 金 融 庁 総 務 企 画 局 長 による 発 言 4 従 属 業 務 を 営 む 会 社 が 親 銀 行 グループを 含 む 複 数 の 銀 行 グループから 業 務 を 受 託 する 場 合 は グループからの 合 計 が 総 収 入 の90% 以 上 となることとしている ( 金 融 グループを 巡 る 制 度 の 在 り 方 に 関 するワーキング グループ 報 告 ) 5 金 融 グループを 巡 る 制 度 の 在 り 方 に 関 するワーキング グループ 報 告 では 銀 行 のシステム 管 理 やATM 保 守 が 例 示 されている 4 FinTech をめぐる 金 融 規 制 の 動 向 : 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について
2. 仮 想 通 貨 への 対 応 について 日 本 では 仮 想 通 貨 に 係 る 明 確 な 規 制 がない 状 態 でしたが 仮 想 通 貨 交 換 所 の 破 綻 による 顧 客 資 産 の 消 失 問 題 6 G7エルマウ サミットでの 首 脳 宣 言 7 およびFATF( 金 融 活 動 作 業 部 会 )のガイダンス 8 などを 踏 まえ 資 金 決 済 に 関 する 法 律 ( 以 下 資 金 決 済 法 )に 仮 想 通 貨 に 係 る 条 項 が 加 筆 され 利 用 者 保 護 のためのルールが 整 備 されました 併 せて 仮 想 通 貨 を 悪 用 したマネー ロンダリングやテロ 資 金 供 与 への 対 策 として 犯 罪 による 収 益 の 移 転 防 止 に 関 する 法 律 ( 以 下 犯 収 法 )が 改 正 されました (1) 登 録 制 となる 仮 想 通 貨 交 換 業 者 仮 想 通 貨 交 換 業 者 は 登 録 制 となり 金 融 庁 の 監 督 下 に 置 かれることとなり ます 施 行 後 仮 想 通 貨 交 換 業 者 は 金 融 庁 への 報 告 または 資 料 の 提 出 が 命 じられる 可 能 性 があるほか 立 入 検 査 が 求 められる 可 能 性 もあります なお 業 務 を 委 託 している 場 合 は その 委 託 先 も 立 入 検 査 の 対 象 となり 得 ます (2) 仮 想 通 貨 および 仮 想 通 貨 交 換 業 の 定 義 資 金 決 済 法 の 改 正 により 第 2 条 に 新 設 された 第 5 項 および 第 6 項 において 仮 想 通 貨 が 法 的 に 定 義 されました 仮 想 通 貨 の 要 件 1 2 物 品 の 購 入 借 受 や 役 務 提 供 を 受 ける 場 合 に 代 価 の 弁 済 として 不 特 定 の 者 に 対 して 使 用 することができ かつ 不 特 定 の 相 手 に 対 し 購 入 売 却 することができるもの 財 産 的 価 値 ( 電 子 的 方 法 により 記 録 されているもの)であり 電 子 情 報 処 理 組 織 を 用 いて 移 転 することができるもの 3 不 特 定 の 相 手 に 対 し 相 互 に 交 換 することができるもの 4 通 貨 建 資 産 ( 本 邦 通 貨 や 外 国 通 貨 をもって 表 示 され または 本 邦 通 貨 や 外 国 通 貨 をもって 債 務 の 履 行 払 戻 しなどが 行 われる 資 産 ) ではないもの 上 記 1および3により 転 々 流 通 性 が 求 められると 判 断 されることから 電 子 マネーやポイントなどが 対 象 ではないことや 上 記 4により 預 金 通 貨 など が 対 象 にならないことなど 仮 想 通 貨 の 範 囲 が 一 定 程 度 明 確 になりました また 同 条 第 7 項 で 規 制 対 象 となる 仮 想 通 貨 交 換 業 の 行 為 要 件 に ついても 定 義 されました 6 2014 年 3 月 ビットコイン 交 換 所 を 運 営 するMTGOX(マウントゴックス)で 顧 客 分 の75 万 ビット コインを 含 む85 万 ビットコイン( 当 時 の 時 価 で 約 115 億 円 )が 消 失 した 事 件 同 社 は 当 初 ハッキングに よるものと 主 張 していたが その 後 の 捜 査 により 内 部 不 正 である 可 能 性 が 疑 われている 7 我 々は 仮 想 通 貨 およびその 他 の 新 たな 支 払 手 段 の 適 切 な 規 制 を 含 め すべての 金 融 の 流 れの 透 明 性 拡 大 を 確 保 するために 更 なる 行 動 をとる (2015 年 6 月 8 日 ) 8 各 国 は 仮 想 通 貨 と 法 定 通 貨 を 交 換 する 交 換 所 に 対 し 登 録 免 許 制 を 課 すとともに 顧 客 の 本 人 確 認 義 務 等 のマネロン テロ 資 金 供 与 規 制 を 課 すべきである (2015 年 6 月 26 日 ) FinTech をめぐる 金 融 規 制 の 動 向 : 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について 5
仮 想 通 貨 交 換 業 に 該 当 する 行 為 要 件 1 仮 想 通 貨 の 売 買 または 他 の 仮 想 通 貨 との 交 換 2 1の 行 為 の 媒 介 取 次 ぎまたは 代 理 3 1および2の 行 為 に 関 して 利 用 者 の 金 銭 または 仮 想 通 貨 の 管 理 上 記 1は いわゆる 仮 想 通 貨 販 売 所 や 仮 想 通 貨 取 引 所 などの 利 用 者 に 仮 想 通 貨 を 売 買 する 業 務 形 態 に 相 当 し 上 記 2は 仮 想 通 貨 の 売 り 注 文 と 買 い 注 文 をマッチングするサービスに 相 当 するものと 考 えられます (3) 仮 想 通 貨 交 換 業 者 の 行 為 規 制 仮 想 通 貨 交 換 業 者 には 次 のような 行 為 規 制 が 義 務 付 けられることに なります( 改 正 後 資 金 決 済 法 第 63 条 の8~ 第 68 条 の14) 仮 想 通 貨 交 換 業 者 の 行 為 規 制 1 情 報 の 安 全 管 理 措 置 情 報 漏 えい 滅 失 毀 損 (きそん)の 防 止 等 の 措 置 2 委 託 先 に 対 する 指 導 ( 第 三 者 に 業 務 を 委 託 した 場 合 ) 3 4 利 用 者 の 保 護 等 に 関 する 措 置 仮 想 通 貨 と 法 定 通 貨 との 誤 認 防 止 のための 説 明 手 数 料 など 契 約 内 容 に 係 る 情 報 提 供 利 用 者 の 財 産 の 管 理 利 用 者 分 と 自 己 分 の 金 銭 / 仮 想 通 貨 の 分 別 管 理 公 認 会 計 士 または 監 査 法 人 による 定 期 的 な 監 査 5 金 融 ADR 措 置 6 帳 簿 書 類 の 作 成 保 存 7 事 業 年 度 ごとの 報 告 書 の 作 成 内 閣 総 理 大 臣 への 提 出 仮 想 通 貨 交 換 業 者 に 関 する 報 告 書 利 用 者 の 金 銭 の 額 / 仮 想 通 貨 の 量 に 関 する 報 告 書 改 正 法 施 行 後 仮 想 通 貨 交 換 業 者 は 業 務 に 係 る 情 報 の 安 全 管 理 や 財 産 の( 自 己 分 と 利 用 者 分 の 明 確 な) 分 別 管 理 などが 求 められるほか 公 認 会 計 士 または 監 査 法 人 による 定 期 的 な 監 査 が 求 められることになります ただし これらの 詳 しい 規 制 内 容 については 今 後 内 閣 府 令 で 定 められる こととなっています 6 FinTech をめぐる 金 融 規 制 の 動 向 : 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について
(4)マネーロンダリング テロ 資 金 供 与 への 対 策 アンチ マネーロンダリング テロ 資 金 供 与 への 対 策 として 犯 収 法 における 特 定 事 業 者 の 一 つとして 仮 想 通 貨 交 換 業 者 が 加 わることになりました ( 改 正 後 犯 収 法 [ 以 下 同 じ] 第 2 条 第 2 項 第 31 号 ) 犯 収 法 における 特 定 事 業 者 に 対 して 求 める 要 件 は 次 の 通 りです( 犯 収 法 第 4 条 第 6 条 第 7 条 第 8 条 第 10 条 ) 1 取 引 時 確 認 義 務 犯 収 法 上 の 特 定 事 業 者 に 求 められる 要 件 2 確 認 記 録 の 作 成 保 存 義 務 3 取 引 記 録 の 作 成 保 存 義 務 4 疑 わしい 取 引 の 当 局 への 届 出 義 務 5 取 引 時 確 認 等 を 的 確 に 行 うための 措 置 (5) 法 改 正 による 銀 行 への 影 響 銀 行 法 の 業 務 範 囲 規 制 もあるため 政 府 としては 銀 行 が 仮 想 通 貨 を 取 り 扱 うことはできないとするスタンスであると 言 われています 9 また 今 回 の 法 改 正 は 仮 想 通 貨 と 法 定 通 貨 との 交 換 業 者 に 対 する 登 録 制 と マネーロンダリング テロ 資 金 供 与 規 制 を 導 入 することが 焦 点 であり 仮 想 通 貨 を 用 いた 取 引 に 係 る 規 制 については 継 続 的 に 検 討 するスタンス であることも 政 府 は 明 確 にしています 10 従 って 銀 行 における 仮 想 通 貨 の 取 り 扱 いや 仮 想 通 貨 を 用 いた 取 引 に 係 る 規 制 などについて 引 き 続 き 検 討 されると 思 われます 9 政 府 は 銀 行 などは 仮 想 通 貨 を 扱 えない などと 答 えた ( 中 略 ) 銀 行 は 取 り 扱 うことができる 業 務 範 囲 が 銀 行 法 により 定 まっていて それ 以 外 の 業 務 を 行 うことができない 仮 想 通 貨 は 貨 幣 に なるわけではないので 今 後 も 引 き 続 き 銀 行 は 仮 想 通 貨 を 取 り 扱 いできない つまり 仮 想 通 貨 の 売 買 の 仲 介 や 仮 想 通 貨 と 本 来 の 通 貨 との 交 換 仮 想 通 貨 を 預 かる 口 座 の 開 設 などができない ( 日 経 電 子 版 2016 年 3 月 7 日 の 記 事 仮 想 通 貨 は 本 物 の 貨 幣 になるか より) 10 今 回 の 法 案 では ( 中 略 ) 早 急 に 仮 想 通 貨 と 法 定 通 貨 との 交 換 業 者 に 対 する 登 録 制 と マネロンと テロ 資 金 供 与 規 制 を 導 入 するということにしつつ ( 中 略 ) 仮 想 通 貨 を 用 いた 取 引 というものを 法 令 上 どのように 規 制 するのかということにつきましては これは 今 しばらく 時 間 をいただいて 今 後 とも 継 続 して 検 討 させていただきます (2016 年 4 月 28 日 の 国 会 答 弁 における 麻 生 金 融 担 当 大 臣 による 発 言 ) FinTech をめぐる 金 融 規 制 の 動 向 : 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について 7
Ⅴ. 今 後 の 見 通 し 1. 改 正 法 施 行 までの 流 れ 改 正 法 は2017 年 4 月 の 施 行 が 見 込 まれています 例 年 の 法 改 正 スケジュールを 踏 まえると 次 のようなタイムテーブルで 動 くことが 想 定 されます 想 定 時 期 2016 年 秋 ~ 冬 2016-2017 年 冬 ~ 春 想 定 されるイベント 政 令 ( 銀 行 法 施 行 令 等 )の 改 正 案 公 表 内 閣 府 令 ( 銀 行 法 施 行 規 則 等 )の 改 正 案 公 表 両 改 正 案 のパブリックコメントの 募 集 政 令 内 閣 府 令 の 確 定 公 布 監 督 指 針 検 査 マニュアルの 改 正 案 公 表 両 改 正 案 のパブリックコメントの 募 集 監 督 指 針 検 査 マニュアルの 確 定 公 布 2017 年 4 月 頃 施 行 2. 改 正 法 の 適 用 に 向 けた 準 備 改 正 法 では 下 記 のような 具 体 的 要 件 を 法 律 レベルで 明 記 しない 例 が 見 受 けら れます 銀 行 によるIT 企 業 等 の 子 会 社 化 が 認 められる 要 件 仮 想 通 貨 交 換 業 者 の 行 為 規 制 の 要 件 こうした 要 件 への 対 応 には 今 後 公 表 されることが 想 定 される 内 閣 府 令 や 監 督 指 針 の 改 正 案 を 参 考 に 検 討 することが 重 要 ですが 改 正 案 の 公 表 から 施 行 開 始 までの 期 間 が 限 られています 中 でも 仮 想 通 貨 交 換 業 者 は2017 年 4 月 より 行 為 規 制 の 適 用 開 始 が 想 定 され ますが 体 制 整 備 に 時 間 を 要 する 企 業 もあるかもしれません 早 期 に 現 状 把 握 を 行 い 計 画 的 に 対 応 していくことが 望 まれます また IT 企 業 へ 出 資 する 場 合 の 認 可 を 取 得 するには 改 正 された 内 閣 府 令 を 把 握 することに 加 え 個 別 案 件 ごとに 膨 大 な 資 料 作 成 を 行 った 上 金 融 庁 との 交 渉 が 求 められると 想 定 されます こうした 対 応 は 画 一 的 ではないため 認 可 申 請 の 実 務 に 精 通 した 人 材 を 確 保 するなど 計 画 的 な 体 制 を 整 備 しておくことが 肝 要 となります 3. 金 融 庁 におけるその 他 のFinTech 関 連 の 対 応 状 況 以 上 の 通 り FinTechの 推 進 に 向 けた 制 度 面 の 措 置 が 着 々と 進 められている 一 方 で 金 融 庁 は 実 務 面 についても 下 記 のような 会 議 体 を 設 置 し 引 き 続 き 討 議 を 重 ねています (1) フィンテック ベンチャーに 関 する 有 識 者 会 議 金 融 庁 では 欧 米 などに 比 べて 国 内 での 先 進 的 なFinTechベンチャー 企 業 やベンチャーキャピタルの 登 場 が 実 現 できていない といった 課 題 認 識 の 下 FinTechベンチャー 企 業 の 登 場 成 長 が 進 むための 環 境 (エコ システム)を 整 備 することを 目 的 とした 会 議 体 として フィンテック ベンチャーに 関 する 有 識 者 会 議 を 今 年 4 月 27 日 に 設 置 しました 本 稿 執 筆 時 点 (2016 年 6 月 末 )において 金 融 機 関 ベンチャー 企 業 大 学 教 授 などの 委 員 が 参 加 した 会 議 が2 回 開 催 されています 8 FinTech をめぐる 金 融 規 制 の 動 向 : 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について
(2) 決 済 高 度 化 官 民 推 進 会 議 今 年 の6 月 2 日 に 公 表 された 日 本 再 興 計 画 2016 において フィンテック による 金 融 革 新 の 推 進 として 金 融 高 度 化 を 促 進 するための 施 策 が 明 記 されました この 施 策 は 決 済 業 務 等 の 高 度 化 に 関 するWG で 取 り 決 めた アクションプランの 実 現 が 鍵 になるため 決 済 系 に 係 る 金 融 機 関 や 大 手 IT ベンダーや 大 学 教 授 などを 委 員 とした 決 済 高 度 化 官 民 推 進 会 議 を6 月 3 日 に 設 置 し その 実 施 状 況 をフォローアップしています How we see it 2017 年 4 月 には 改 正 銀 行 法 等 の 改 正 が 施 行 される 見 込 みであり それまでに 政 令 内 閣 府 令 なども 改 正 されることが 想 定 されています 銀 行 法 の 改 正 により 銀 行 や 銀 行 持 株 会 社 は これまでよりIT 企 業 への 出 資 が 容 易 になりますが 基 準 議 決 権 数 を 超 える 議 決 権 を 取 得 保 有 する 場 合 は 当 局 の 認 可 が 求 められることに 留 意 が 必 要 です 資 金 決 済 法 の 改 正 により 仮 想 通 貨 交 換 業 者 が 登 録 制 となり 金 融 庁 の 監 督 下 に 置 かれることになります 行 為 規 制 も 要 求 されるため 施 行 までに 規 制 に 耐 え 得 る 態 勢 整 備 を 行 うことが 望 まれます 新 日 本 有 限 責 任 監 査 法 人 金 融 アドバイザリー 部 シニアマネージャー 安 達 知 可 良 公 認 情 報 システム 監 査 人 (CISA) 公 認 情 報 セキュリティマネージャー(CISM) ITコーディネータ(ITC) 金 融 機 関 および 金 融 機 関 にサービス 提 供 するIT 企 業 に 対 する 金 融 検 査 マニュアルやFISC(( 公 財 ) 金 融 情 報 システムセンター)の 各 種 ガイドラインを ベンチマークとしたシステム 監 査 SOCR(Service Organization Control Reporting: 受 託 業 務 に 係 る 内 部 統 制 の 保 証 報 告 書 )などの 保 証 業 務 の 対 応 経 験 多 数 現 在 EY JapanのFinTech 推 進 室 のメンバーとして FinTechベンチャー 金 融 機 関 双 方 に 対 するサービス 展 開 を 支 援 している FinTech をめぐる 金 融 規 制 の 動 向 : 銀 行 法 等 の 改 正 の 概 要 とその 対 策 について 9
お 問 合 わせ 先 新 日 本 有 限 責 任 監 査 法 人 金 融 部 Tel: 03 3503 1088 E-mail: RAAT@shinnihon.or.jp 本 資 料 は 2016 年 6 月 30 日 現 在 の 情 報 に 基 づき 作 成 いたしました 最 新 の 状 況 につきましては 当 法 人 の 貴 社 担 当 者 または 上 記 窓 口 までお 気 軽 にお 問 い 合 わせください EY Assurance Tax Transactions Advisory EYについて EYは アシュアランス 税 務 トランザクションおよびアドバイザリーなどの 分 野 における 世 界 的 なリーダーです 私 たちの 深 い 洞 察 と 高 品 質 なサービスは 世 界 中 の 資 本 市 場 や 経 済 活 動 に 信 頼 をもたらします 私 たちはさまざまなステークホルダーの 期 待 に 応 えるチーム を 率 いるリーダーを 生 み 出 していきます そうすることで 構 成 員 クライアント そして 地 域 社 会 のために より 良 い 社 会 の 構 築 に 貢 献 し ます EYとは アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドのグローバルネットワークであり 単 体 もしくは 複 数 のメンバーファームを 指 し 各 メンバー ファームは 法 的 に 独 立 した 組 織 です アーンスト アンド ヤング グローバル リミテッドは 英 国 の 保 証 有 限 責 任 会 社 であり 顧 客 サービスは 提 供 してい ません 詳 しくは ey.com をご 覧 ください EY FSO( 日 本 エリア)について EYフィナンシャル サービス オフィス(FSO)は 競 争 激 化 と 規 制 強 化 の 流 れの 中 で 様 々な 要 望 に 応 えることが 求 められている 銀 行 業 証 券 業 保 険 業 アセットマネジメントなどの 金 融 サービス 業 に 特 化 するため それぞれの 業 務 に 精 通 した 職 業 的 専 門 家 をグローバルに 有 しています また 各 業 界 の 規 制 動 向 を 予 測 し 潜 在 的 な 課 題 に 対 する 見 解 を 提 示 するため 業 種 別 にグローバル ナレッジ センター を 設 け 規 制 動 向 の 収 集 や 業 界 分 析 を 行 っています EY FSO( 日 本 エリア)は グローバルネットワークと 連 携 して 金 融 サービス 業 に 精 通 した 職 業 的 専 門 家 が 一 貫 して 高 品 質 なサービスを 提 供 しています 2016 Ernst & Young ShinNihon LLC. All Rights Reserved. ED None 本 書 は 一 般 的 な 参 考 情 報 の 提 供 のみを 目 的 に 作 成 されており 会 計 税 務 およびその 他 の 専 門 的 なアドバイスを 行 うものではありません 新 日 本 有 限 責 任 監 査 法 人 および 他 のEYメンバーファームは 皆 様 が 本 書 を 利 用 したことにより 被 ったいかなる 損 害 についても 一 切 の 責 任 を 負 いません 具 体 的 なアドバイスが 必 要 な 場 合 は 個 別 に 専 門 家 に ご 相 談 ください