平 成 20 年 3 月 福 岡 県
はじめに 本 県 の 野 生 鳥 獣 による 農 林 水 産 被 害 金 額 を 加 害 鳥 獣 別 割 合 でみると イノシシが34% カ ラス 類 が24% シカが14%となっており この3 大 鳥 獣 で70%を 越 えています しかし 3 鳥 獣 とも 前 年 比 では 減 少 し 被 害 対 策 等 が 各 地 の 研 修 会 などで 伝 えられ 地 域 で 対 策 がと られはじめていることがうかがえます しかしここ1~2 年 県 内 各 地 で 急 激 に 被 害 報 告 が 増 加 しているのが サルです 被 害 金 額 では 前 年 比 で150% 3 年 前 に 比 べると280%になっています 原 因 は サルの 習 性 等 がわからず 対 策 がとれない 知 能 が 高 く 防 護 対 策 がとりづらい 霊 長 類 のため 捕 獲 対 策 に 抵 抗 感 がある などが 考 えられます 本 資 料 では サルの 習 性 被 害 防 止 対 策 をできるだけわかりやすく 編 集 しました 地 域 一 体 となってサルの 被 害 防 止 に 取 り 組 む 資 料 として 利 用 していだだければ 幸 いです 1. 群 れで 行 動 サルは 基 本 的 に 群 れで 行 動 少 ないと 数 匹 多 くて70 匹 くらい 群 れはおもにメスとその 子 供 を 中 心 に 構 成 される オスは4~5 歳 になると 生 ま れた 群 れを 離 れ 別 の 群 れに 入 ったり オス 同 士 の 少 数 グループや1 匹 での 生 活 を 行 う (いわゆる ハナレザル ) 群 れの 個 体 数 が 多 くなると 分 裂 する 群 れで 活 動 するため 集 団 で 農 作 物 を 襲 い 被 害 が 甚 大 となる 1 匹 で 畑 を 荒 らすサルが 現 れたら いずれ 集 団 でやってくると 思 った 方 がよい 2. 繁 殖 交 尾 期 は 年 に1 回 で10 月 ~ 翌 1 月 出 産 期 は 春 から 夏 ( 妊 娠 期 間 は170~180 日 ) 1 回 の 出 産 で 赤 ん 坊 は1 頭 初 産 は 通 常 7~8 歳 だが エサが 豊 富 な 場 合 4~5 歳 20 歳 ごろまでは ほぼ 隔 年 で 出 産 エサが 豊 富 な 場 合 毎 年 出 産 するサルも 少 なくない 赤 ん 坊 の 死 亡 率 は30~50% 程 度 エサが 豊 富 な 場 合 20% 以 下 3. 生 活 パターン 習 性 明 るい 時 間 帯 だけ 活 発 に 活 動 し 夜 間 は 活 動 しない 危 険 な 時 は 高 いところへ 逃 げる 本 来 は 森 林 から 離 れないが 人 慣 れすると 林 縁 から 離 れた 農 地 にも 出 没
一 定 の 行 動 範 囲 があって その 中 を 周 期 的 にエサを 求 めて 巡 回 行 動 域 面 積 は 20ha~3,000ha 程 度 4. 食 性 植 物 が 主 食 キノコ 類 や 昆 虫 など 動 物 質 も 食 べる 雑 食 性 しかし 肉 や 魚 は 食 べ ないとされる 栄 養 がよく 効 率 的 にたく さん 食 べることができる 植 物 を 好 む 集 落 に 出 るサルは 少 しず つ 食 べられるものを 覚 え 食 べる 種 類 を 増 やしていく 冬 場 山 のサルは 冬 芽 や 樹 皮 を 採 食 早 朝 と 夕 方 が 採 食 のピーク (サルが 好 む 農 作 物 ) 5. 弱 み 臆 病 で 慣 れるのに 時 間 がかかる 融 通 がきかない 本 来 森 に 生 息 するため 人 里 へ 出 ることは 怖 い 本 来 人 間 を 怖 がっている ( 人 慣 れする 前 ) 本 来 人 里 は 怖 いため すぐには 森 へ 逃 げられないほ 場 をつくる
あなたの 集 落 が サルのエサ 場 としていかに 魅 力 のないものにするかが 大 切 です そのために 集 落 で 話 し 合 い できることからはじめるようにしてください 1. 農 地 や 集 落 の 環 境 を 改 善 しよう 収 穫 が 終 了 し 人 にとって 価 値 のなくな った 収 穫 残 さ 気 象 災 害 等 で 収 穫 をあ きらめた 農 作 物 摘 果 された 未 成 熟 野 菜 等 をほ 場 に 廃 棄 することは 餌 付 と 同 じ 行 為 で サルをおびき 寄 せる 原 因 と なるので 改 善 が 必 要 です また 早 期 水 稲 の 稲 刈 り 後 の 遅 れ 穂 もエサ 源 とな ります 誰 も 収 穫 しないカキ クリ ビワ 等 果 樹 もサルの 貴 重 なエサ 源 となります サル 被 害 から 守 るためには 集 落 で 点 検 し 処 分 を 検 討 しましょう
サルが 森 へ 逃 走 しやすい ような 畑 の 中 の 足 場 やモ ノ ほ 場 の 横 の 高 い 樹 木 などは 除 去 し サルが 逃 走 しにくい 設 計 にほ 場 周 辺 をつくりかえましょ う 引 用 文 献 みんなで 防 ごう 農 林 産 物 の 猿 害 奈 良 県 2.サルに 強 い 畑 へ 変 化 させよう 網 近 くに 植 えた 野 菜 や 果 物 類 は 畑 の 外 側 に 成 らせると 網 越 しにとられます 植 え る 方 向 をかえたり 外 側 にトウガラシ コンニャク 等 サルが 食 べない 作 物 を 植 え るちょっとした 作 業 で エサ 場 としての 価 値 が 下 がります 引 用 文 献 みんなで 防 ごう 農 林 産 物 の 猿 害 奈 良 県 野 菜 の 栽 培 は サルが 引 っ 張 っても 抜 けにくい 基 本 がしっかりした 栽 培 をおこな いましょう 果 樹 の 栽 培 は 低 段 で 仕 立 て サルの 侵 入 や 逃 走 の 経 路 とならないようにしまし ょう
3. 自 分 で 作 れる 防 止 柵 で 侵 入 を 防 ぐ え ん ら く く ん 猿 落 君 1ほ 場 の 周 囲 にトラロープを 巡 ら せ 70 ~ 100cm 間 隔 で 鉄 筋 ペグ を 打 ち 込 んで 地 面 に 固 定 する 2トラロープにそって2 m 間 隔 で 支 柱 用 鉄 パイプを 地 下 30cm ほど 打 ち 込 み パイプにダンポールを2 本 ずつさす 3フックバンドを 用 いて 支 柱 用 鉄 パ イプに 地 上 30cm の 高 さで 横 バー を 固 定 する 4ダンポールの 先 端 にビニルテープ と 配 線 バンドでテグス 網 を 固 定 す る 5テグス 網 の 下 端 を 配 線 バンドでト ラロープに 固 定 する サルの 学 習 にあわせて 柵 の 機 能 を 生 長 させる 進 化 形 引 用 文 献 みんなで 防 ごう 農 林 産 物 の 猿 害 奈 良 県 4. 追 い 払 いによる 対 策 集 落 でサルを 見 かけるとまず 追 い 払 うことが 大 切 です 自 分 に 必 要 のない 作 物 だから という 理 由 で そのままにしておくと サルはどんどん 人 慣 れをしてい き 集 落 のエサ 場 としての 価 値 が 高 まり 後 に 被 害 が 拡 大 していきます 追 い 払 い 方 法 おおげさな 動 作 声 ロケット 花 火 威 嚇 銃 (エアガン) モンキードッグ(サル 追 い 犬 ) 電 波 発 信 機 利 用 等
モンキードッグとはサル 追 い 犬 のことです 平 成 17 年 に 長 野 県 大 町 市 が 全 国 で 初 めて 犬 によるサルの 追 い 払 いを 開 始 しま した 農 家 で 飼 われていた 普 通 の 雑 種 犬 を 訓 練 所 に 半 年 程 度 預 けてサルを 追 うよ うにしつけをおこないます 普 段 は 農 家 の 飼 い 犬 でつながれていますが サルが 出 没 するときのみ 放 してサルの 追 い 払 いを 行 わせます 開 始 から3 年 が 経 過 し 効 果 が 高 いことから 全 国 的 に 広 がり 始 めています 適 正 なしつけ 及 び 訓 練 がなされ 鳥 獣 被 害 を 防 止 するための 追 い 払 いに 使 役 する 場 合 等 を 除 き 原 則 犬 の 放 し 飼 いは 禁 止 されています 長 野 県 大 町 市 で 現 在 活 躍 して いるモンキードッグ 電 波 発 信 機 を 利 用 した 追 い 払 いとは 電 波 発 信 機 を 被 害 を 発 生 させているサルの 群 れに 装 着 して 群 れの 位 置 を 探 索 し 農 地 や 人 家 への 接 近 を 予 測 して 人 が 先 回 りをしてサルを 追 う 方 法 です 5. 捕 獲 による 対 策 サル 対 策 は 人 間 とサルの 住 み 分 けを 前 提 とし 人 の 生 活 圏 でのサルの 採 食 機 会 を 減 らし 人 間 に 対 する 警 戒 心 や 恐 怖 心 を 高 めることが 必 要 で 農 地 や 集 落 内 がニホンザ ルの 行 動 域 にならないよう 追 い 払 い 等 によって 学 習 させる 必 要 があります しかしながら 追 い 払 いや 防 除 対 策 を 講 じてもなお 被 害 を 軽 減 できず 農 耕 地 あるい は 市 街 地 に 強 く 依 存 する 個 体 がある 場 合 には 捕 獲 を 検 討 することになります 捕 獲 にあたっては 有 害 個 体 を 特 定 して 捕 獲 することが 重 要 で 安 易 な 捕 獲 を 行 うと 群 れが 分 裂 し 被 害 がさらに 拡 大 する 恐 れがあるので 注 意 が 必 要 です なお 捕 獲 にあたっては 鳥 獣 の 保 護 及 び 狩 猟 の 適 正 化 に 関 する 法 律 の 許 可 が 必 要 となります 代 表 的 な 被 害 防 止 対 策 を 紹 介 しましたが 他 にもあります いろいろな 対 策 技 術 を 組 み 合 わせて 集 落 全 体 でできることから 始 め 被 害 が 出 た 時 は 再 度 レベルア ップさせるという 考 え 方 が 大 切 です
1. 農 作 物 野 生 鳥 獣 被 害 対 策 アドバイザー 登 録 制 度 野 生 鳥 獣 による 農 作 物 被 害 の 防 除 に 関 する 専 門 家 を 農 林 水 産 省 が 登 録 し 地 域 の 要 請 に 応 じて 紹 介 する 制 度 です その 専 門 家 を 農 作 物 野 生 鳥 獣 被 害 対 策 アドバ イザー とし 平 成 19 年 7 月 現 在 118 名 が 登 録 しています サルの 専 門 家 も 多 数 いますので 研 修 会 を 開 く 時 に 本 制 度 を 積 極 的 に 活 用 しまし ょう 農 林 水 産 省 アドバイザー 登 録 制 度 HPアドレス http://www.maff.go.jp/soshiki/seisan/cyoju/adbai/index.html 2. 鳥 獣 害 防 止 総 合 対 策 事 業 の 活 用 1 平 成 19 年 12 月 14 日 鳥 獣 による 農 林 水 産 業 等 に 係 る 被 害 の 防 止 のための 特 別 措 置 に 関 する 法 律 ( 鳥 獣 被 害 防 止 特 措 法 )が 成 立 しました 2この 法 律 では 市 町 村 等 の 地 域 が 主 体 的 に 対 策 に 取 り 組 むことができるよう 鳥 獣 害 防 止 計 画 を 策 定 した 市 町 村 に 対 して 被 害 防 止 対 策 を 推 進 するための 必 要 な 措 置 が 講 じられることとなります 3このため 国 は 平 成 20 年 度 から28 億 円 の 予 算 で 個 体 数 管 理 ( 箱 ワナの 設 置 有 害 鳥 獣 捕 獲 体 制 の 整 備 等 ) 被 害 防 除 ( 追 い 払 い 対 策 防 護 柵 の 設 置 等 ) 生 息 環 境 管 理 ( 緩 衝 帯 の 設 置 等 ) 等 の 対 策 が 可 能 な 鳥 獣 害 防 止 総 合 対 策 事 業 を 実 施 する 予 定 です この 資 料 に 関 する 問 い 合 わせ 先 農 政 部 農 業 技 術 課 食 の 安 全 係 tel 092-643-3518 fax 092-643-3516 引 用 文 献 本 資 料 を 作 成 するにあたり 次 の 資 料 を 参 照 しました 山 の 畑 をサルから 守 る みんなで 防 ごう 農 林 産 物 の 猿 害 奈 良 県 野 生 鳥 獣 被 害 防 止 マニュアル 生 態 と 被 害 防 止 対 策 ( 基 礎 編 ) 農 林 水 産 省 鳥 獣 被 害 防 止 対 策 の 手 引 き 嶺 南 地 域 有 害 鳥 獣 対 策 協 議 会 福 井 県 嶺 南 振 興 局