在 宅 生 活 ハンドブック No.16 終 了 後 の 筋 力 トレーニング 別 府 重 度 障 害 者 セ ン タ ー ( 理 学 療 法 部 門 2014)
も く じ はじめに 1 Ⅰ 筋 力 トレーニングの 基 礎 知 識 1 1. 筋 肉 筋 力 とは 1 (1) 筋 肉 の 構 造 (2) 筋 力 とは Ⅱ 頸 髄 損 傷 者 の 筋 力 トレーニング 3 1. 筋 力 トレーニングの 必 要 性 3 2. 頸 髄 損 傷 者 の 各 動 作 と 筋 力 の 関 係 3 3. 筋 力 トレーニングのポイント 7 (1) 筋 力 増 強 のメカニズム (2) 筋 力 トレーニングの 目 安 Ⅲ 筋 力 トレーニングの 実 践 10 1. 重 錘 バ ン ド を 使 用 し た ト レ ー ニ ン グ 10 2.ゴ ム バ ン ド を 使 用 し た ト レ ー ニ ン グ 13 3. 道 具 を 使 わ な い ト レ ー ニ ン グ 16 4. そ の 他 の 道 具 を 使 用 し た ト レ ー ニ ン グ 19
はじめに 私 たちの 身 体 は 筋 肉 を 収 縮 することで 手 足 を 動 かしていますが 運 動 不 足 や 加 齢 による 体 力 の 低 下 に 伴 い 筋 力 の 低 下 が 起 こります 当 センターでは 理 学 療 法 や 作 業 療 法 スポーツ 訓 練 等 で 運 動 や 筋 力 トレーニングを 定 期 的 に 行 っていますが センター 終 了 後 にトレーニングを 継 続 することができないために 筋 力 低 下 が 起 こって しまう 場 合 もあります 筋 力 を 強 化 することは ADL 動 作 の 獲 得 や 維 持 のために 大 変 重 要 です ここでは 筋 力 トレーニングについての 基 本 的 な 知 識 とご 自 宅 等 で 継 続 できるトレ ーニングの 方 法 を 紹 介 します Ⅰ 筋 力 トレーニングの 基 礎 知 識 1. 筋 肉 筋 力 とは (1) 筋 肉 の 構 造 人 間 の 体 には 大 小 400 個 の 筋 肉 とおおよそ200 個 の 骨 があります 体 は 骨 で 支 えられ その 骨 を 筋 肉 が 動 かしています 筋 肉 は 脳 から 命 令 が 伝 達 されて 動 きます 骨 と 筋 肉 は 腱 を 介 して 繋 がっ ているため 脳 からの 命 令 により 筋 肉 が 収 縮 すると 骨 が 動 かされ 関 節 の 角 度 が 変 わります 筋 肉 は1 本 1 本 が 糸 のような 形 状 をした 筋 繊 維 の 束 で 構 成 されています この 筋 繊 維 が 太 ければ 太 いほど より 強 い 力 を 発 揮 することができます - 1 -
筋 繊 維 は その 特 徴 により3 種 類 に 分 けることができます 1. 白 筋 繊 維 ( 速 筋 FG 繊 維 ): 強 く 速 い 収 縮 力 をもつが 疲 れやすい 最 大 筋 力 最 大 筋 パワーに 大 きく 関 係 する 2. 赤 筋 繊 維 ( 遅 筋 SO 繊 維 ): 収 縮 速 度 は 遅 く 力 は 少 ない 筋 持 久 力 に 大 きく 関 係 する 3.FOG 繊 維 : 白 筋 と 赤 筋 の 中 間 的 機 能 特 性 をもつ これら3 種 類 の 筋 繊 維 が 組 み 合 わさって 筋 肉 を 構 成 しています 3 種 類 の 繊 維 の 配 合 比 率 は 体 の 部 位 によって 異 なりますが 体 全 体 の 種 類 別 の 割 合 は 個 人 差 があり トレーニングによって 配 合 比 率 を 変 化 させることはできませ ん しかし トレーニングの 仕 方 によって 白 筋 だけ 赤 筋 だけを 鍛 えることは 可 能 です 一 般 的 にパワーや 瞬 発 力 をつけたいときには 白 筋 を 鍛 え 筋 持 久 力 をつけたいときには 赤 筋 を 鍛 えることが 効 果 的 とされています 赤 筋 ( 遅 筋 ) 赤 筋 の 太 さアップ 筋 持 久 力 アップ 白 筋 の 太 さアップ 瞬 発 力 アップ (2) 筋 力 とは 筋 力 とは 筋 肉 を 収 縮 させる 力 のことです 一 般 的 に 筋 力 と 表 現 されま すが 筋 力 は3 種 類 に 分 類 できます 1. 最 大 筋 力 : 発 揮 できる 最 大 の 筋 力 (その 人 にとって 1 度 しか 持 ち 上 げることのできない 重 さ) 2. 筋 持 久 力 : 一 定 の 力 を 何 度 も 繰 り 返 し 動 かし 長 時 間 発 揮 できる 筋 力 3. 最 大 筋 パワー: 瞬 時 に 爆 発 的 な 力 を 発 揮 する 能 力 筋 力 スピード みなさんが 動 作 を 行 う 上 ではどの 種 類 の 筋 力 の 要 素 も 必 要 となりますが 3 種 類 の 筋 力 はそれぞれ 鍛 え 方 が 異 なります(P.9 参 照 ) どれかの 種 類 が 他 と 比 較 して 弱 い 傾 向 にある 場 合 もあるため 3 種 類 の 筋 力 を 理 解 し それ ぞれを 効 率 的 に 増 強 していくことが 重 要 です - 2 -
Ⅱ 頸 髄 損 傷 者 の 筋 力 トレーニング 1. 筋 力 トレーニングの 必 要 性 頸 髄 損 傷 者 は 損 傷 部 位 以 下 の 神 経 域 に 麻 痺 による 筋 力 低 下 が 起 こりま す 当 センターでは 麻 痺 していない 限 られた 部 分 の 筋 力 ( 残 存 筋 力 )を 最 大 限 に 生 かして 生 活 の 動 作 を 行 う 訓 練 を 行 っています 動 作 の 獲 得 には 残 存 筋 力 をトレーニングによって 増 強 させる 必 要 があります 筋 肉 には 関 節 を 保 護 し 正 しい 位 置 に 固 定 する 役 割 もあります 頸 髄 損 傷 者 は 動 作 を 獲 得 した 後 もひとつひとつの 動 作 に 大 変 な 労 力 を 要 するため 動 作 を 繰 り 返 しても 疲 労 せず 安 全 に 動 作 をするための 筋 力 をつけていく 必 要 があります 長 期 間 の 臥 床 や 運 動 不 足 により 筋 力 の 低 下 が 起 こります 体 の 部 位 年 齢 や 性 別 体 格 などの 個 人 差 もありますが 完 全 な 安 静 によって 筋 力 は1 日 で 全 体 の3% 1 週 間 で15~20% 低 下 するといわれています 安 静 により 特 に 赤 筋 の 割 合 が 著 しく 減 少 します センターを 終 了 した 後 運 動 不 足 等 による 筋 力 低 下 から 今 までできていた 生 活 の 動 作 が 難 しくなる 場 合 もあります 終 了 後 も 筋 力 トレーニングを 継 続 し て 行 い 動 作 に 必 要 な 筋 力 を 維 持 していきましょう 2. 頸 髄 損 傷 者 の 各 動 作 と 筋 力 の 関 係 ここでは 頸 髄 損 傷 者 の 各 動 作 にどの 筋 肉 が 関 係 しているかを 紹 介 します 動 作 の 直 接 的 な 原 動 力 になっている 筋 力 の 他 に 体 の 固 定 力 やバランスを 保 つために 使 われている 筋 力 もあります 動 作 に 必 要 な 筋 肉 を 知 ることは どの 部 分 の 筋 力 トレーニングが 必 要 かを 判 断 することに 役 立 ちます さらに 動 作 と 筋 肉 を 結 び 付 けてイメージすることが できれば 動 作 時 にもその 筋 肉 を 意 識 して 使 うことができるようになります 各 筋 力 の 具 体 的 なトレーニング 方 法 は P.10からの 筋 力 トレーニングの 実 践 を 参 考 にしてください - 3 -
1 車 椅 子 駆 動 さ ん か く き ん 三 角 筋 じょうわん 上 腕 に と う き ん 二 頭 筋 肘 を 伸 ばす 筋 力 が 残 存 してい る 場 合 は 肘 伸 展 が 主 な 原 動 力 となります 肘 を 伸 ばす 筋 力 が 残 存 していない 場 合 は 肘 を 曲 げる 力 や 肩 の 力 が 主 な 原 動 力 となります 2 座 位 バランス けい 頸 部 筋 座 位 をとるとき 頸 部 の 筋 肉 は バランスの 保 持 役 として 常 に 働 いています 肩 関 節 を 中 心 とし た 上 肢 全 体 の 筋 力 も 重 心 の バランスを 保 つために 必 要 とな ります 3 プッシュアップ 動 作 そ う ぼ う き ん 僧 帽 筋 肘 を 伸 ばす 力 が 弱 い 方 (C5 C6レベル)は 腕 全 体 を 一 本 の 棒 の ようにしたまま 肘 関 節 を 伸 ばし 肩 甲 骨 の 動 きで 臀 部 を 浮 かせた り 移 動 させたりします 臀 部 を 浮 かせる 動 作 では 肩 甲 骨 を 下 向 きに 動 かす 僧 帽 筋 の 力 が 重 要 となります - 4 -
さ ん か く き ん ぜ ん ぶ せん い 三 角 筋 前 部 繊 維 ぜ ん き ょ き ん 前 鋸 筋 こうはいきん 広 背 筋 臀 部 を 浮 かせた 状 態 からさらに 高 く 臀 部 を 上 げるには 頸 部 を 前 方 へ 振 り 肩 甲 骨 を 床 面 方 向 に 突 き 出 す 動 きが 必 要 となります この 動 作 には 肩 甲 骨 を 突 き 出 す 前 鋸 筋 プッシュアップした 状 態 でバランスをとるための 三 角 筋 と 大 胸 筋 骨 盤 を 上 に 持 ち 上 げる 広 背 筋 それぞれの 力 が 重 要 です 4 前 屈 からの 起 き 上 がり じょうわんさ ん と う き ん 上 腕 三 頭 筋 さ ん か く き ん ぜ ん ぶ せ ん い 三 角 筋 前 部 繊 維 だいきょうきん 大 胸 筋 前 屈 位 からの 起 き 上 がりには 肘 を 伸 ばす 筋 力 ( 上 腕 三 頭 筋 )が 残 存 している 場 合 は 容 易 に 行 えますが 肘 を 伸 ばす 筋 力 が 残 存 していない 場 合 は 腕 を 内 側 に 寄 せ 体 に 近 づける 筋 肉 ( 大 胸 筋 三 角 筋 )が 重 要 です 動 作 の 獲 得 には 筋 力 を 発 揮 するタイミ ングも 重 要 です - 5 -
5 足 あげ 動 作 さ ん か く き ん 三 角 筋 じょうわん に と う き ん 上 腕 二 頭 筋 手 首 の 筋 肉 膝 下 に 手 を 入 れて 手 首 を 引 っ 掛 けて 足 を 持 ち 上 げるため 手 首 を 固 定 する 手 首 の 筋 力 ( 橈 尺 側 手 根 伸 筋 橈 尺 側 手 根 屈 筋 ) 持 ち 上 げるための 肘 屈 曲 ( 上 腕 二 頭 筋 ) 肩 の 力 ( 三 角 筋 )が 重 要 で す また 持 ち 上 げる 側 と 反 対 の 腕 を 車 いすの 押 し 手 などに 引 っ 掛 けて 上 体 を 支 えるため 左 右 両 側 の 筋 力 が 必 要 で す 6 寝 返 り 動 作 だいきょうきん 大 胸 筋 さ ん か く き ん 三 角 筋 ぜ ん き ょ き ん 前 鋸 筋 寝 返 る 側 と 反 対 の 上 肢 を 振 り 肩 甲 骨 を 外 側 へ 突 き 出 し その 勢 いを 体 に 伝 えることで 寝 返 ることができます 肩 甲 骨 を 突 き 出 す 前 鋸 筋 腕 を 振 るための 三 角 筋 大 胸 筋 が 重 要 です さらに 寝 返 る 側 の 上 肢 も 三 角 筋 大 胸 筋 を 使 って 固 定 しておくと 寝 返 り 方 向 に 向 いた 力 が 逃 げないため 効 率 よく 寝 返 ることができます - 6 -
3. 筋 力 トレーニングのポイント (1) 筋 力 増 強 のメカニズム 筋 繊 維 が 太 くなり 筋 肉 が 大 きくなることを 筋 肥 大 といいます 筋 肉 はトレ ーニングによってダメージを 受 け その 回 復 には2~3 日 かかります 人 間 の 筋 肉 では 受 けたダメージを 回 復 するだけでなく それを 通 り 越 して 一 時 的 に もとの 状 態 より 強 くなるといった 反 応 が 起 こります これを 超 回 復 といいます 超 回 復 の 時 期 を 狙 って 再 びトレーニングを 行 うことで 筋 肉 は 肥 大 していき ます しかし 短 期 間 のトレーニングで 筋 肥 大 は 起 こりません トレーニングの はじめではミクロレベルで 肥 大 が 起 こり 確 実 な 太 さの 変 化 は1カ 月 を 過 ぎて からといわれています それが 積 み 重 なり1~3カ 月 後 にはより 確 実 な 変 化 が 確 認 できますので 地 道 に 継 続 していくことが 重 要 です 超 回 復 の 前 にトレーニングを 再 開 してしまうと オーバーワークになり 現 状 よりも 筋 力 が 低 下 してしまう 恐 れや トレーニングによる 疲 労 が 取 れない 状 況 に 陥 ってしまい 怪 我 の 原 因 にもなるため 注 意 が 必 要 です 筋 肉 にダメージ を 与 えるようなハードなトレーニングをしたときは 2~3 日 休 んでトレーニン グを 再 開 することが 効 果 的 です ただし 違 う 筋 肉 を 鍛 える 場 合 は 毎 日 トレー ニングをしても 問 題 ありません また 筋 力 トレーニング 後 にきちんと 栄 養 をとることも 大 切 です 筋 肉 をつ くるための 栄 養 素 であるたんぱく 質 を 摂 取 することで 効 果 的 な 筋 肥 大 を 助 ける 働 きをしてくれます トレーニング 効 果 トレーニング 超 回 復 期 回 復 疲 労 筋 繊 維 損 傷 栄 養 休 息 休 息 2~3 日 - 7 -
(2) 筋 力 トレーニングの 目 安 筋 力 トレーニングを 行 う 際 は 以 下 の 目 安 を 知 っておく 必 要 があります ト レーニングには 効 果 的 な 強 度 ( 重 さ) 回 数 セット 数 頻 度 があり それを 守 ってトレーニングを 行 うことで 効 率 的 に 筋 力 の 増 強 ができます 1 トレーニングの 強 度 最 大 筋 力 を 増 強 するためには 1 本 1 本 の 筋 繊 維 を 太 くする 必 要 があり ます 筋 繊 維 を 太 くするには 最 大 筋 力 の 60~80%の 重 さでトレーニン グをすることが 効 果 的 といわれています トレーニングを 行 う 部 位 や 方 向 によって 異 なりますが 例 えば1 回 しか 動 かすことのできない 重 さが 10k gの 場 合 トレーニングは6kg~8kgで 行 うとよいことになります その 他 にも 自 覚 的 運 動 強 度 (RPE:Rate of Perceived Exertion) を 用 いる 方 法 もあります これは 本 人 が 感 じる 運 動 の 強 さ をスケールに 当 てはめて 評 価 するものです 4(ややきつい) ~ 7( 非 常 にきつい) の 間 の 負 荷 量 でトレーニングをすることが 効 果 的 です トレーニングが 進 み 同 じ 負 荷 量 が 3( 普 通 ) 以 下 と 感 じたら 負 荷 を 上 げていきます 7( 非 常 にきつい) 以 上 のトレーニングは 負 荷 量 が 多 くオーバーワークとなる ため 負 荷 量 を 落 とします 0: 何 も 感 じない 0.5 最 高 に 楽 1: 非 常 に 楽 2: 楽 である 3: 普 通 効 果 が 少 ないため 負 荷 を 上 げたほうがよい 4:ややきつい 5~6:きつい トレーニングに 適 した 強 度 7~9: 非 常 にきつい 10: 最 高 にきつい 11: 限 界 オーバーワークの 危 険 が あるため 負 荷 を 下 げたほ うがよい - 8 -
2 期 待 する 効 果 と 負 荷 量 回 数 の 関 係 3 種 類 の 筋 力 ( 最 大 筋 力 筋 持 久 力 最 大 筋 パワー)は 増 強 させる ために 適 したトレーニング 時 の 負 荷 量 と 回 数 がそれぞれ 異 なります 筋 力 のどの 要 素 を 鍛 えたいか 目 的 をもってトレーニングを 選 択 しましょう 最 大 筋 パワー 最 大 筋 力 筋 持 久 力 ( 筋 肥 大 ) 負 荷 強 度 最 大 筋 力 の 最 大 筋 力 に 近 い 負 荷 軽 い 負 荷 ( 最 大 筋 60%~80% 70%~100% 力 の 60% 以 下 反 復 回 数 多 く(6~15 回 ) 少 なめ(1~3 回 ) 多 く(20~50 回 ) セット 間 休 憩 短 く(1 分 以 内 ) 長 く(3 分 以 上 ) 短 く(1 分 以 内 ) セット 数 3~5セット 3~5セット 2~3セット 3 アウターマッスルとインナーマッスル 筋 肉 はアウターマッスル( 外 から 見 える 筋 肉 )とインナーマッスル( 体 の 内 側 にある 筋 肉 )に 大 別 されます この 二 つはそれぞれに 特 徴 があ るため バランスよく 鍛 えていくことが 重 要 です アウターマッスル インナーマッスル 体 の 表 層 についていて 外 から 見 体 の 内 側 の 骨 や 内 臓 に 近 いところ える 触 れることができる にある 体 を 動 かすとき 力 を 発 揮 するとき 関 節 の 動 きを 微 調 整 し 姿 勢 保 持 のメインパワーとなる 筋 肉 やバランスをとるアウターマッスルの 瞬 発 力 が 強 い 補 助 役 となる 筋 肉 意 識 的 に 動 かせる 持 久 力 が 強 い 意 識 して 動 かすことが 困 難 意 識 的 に 動 かせるアウターマッスルは 負 荷 がかけやすく トレーニン グ 効 果 も 現 れやすいため 多 くの 筋 力 トレーニングの 方 法 があります インナーマッスルは 自 分 の 意 思 では 動 かすことが 困 難 であるため トレーニング 方 法 が 限 られています (P15 参 照 )また インナーマッス ルを 鍛 えるためのトレーニングも 負 荷 量 が 大 きければ アウターマッス ルを 使 った 運 動 となってしまうため 負 荷 量 の 設 定 には 注 意 が 必 要 で す - 9 -
Ⅲ 筋 力 トレーニングの 実 践 1. 重 錘 バンドを 使 用 したトレーニング 頸 髄 損 傷 者 の 多 くの 方 は ダンベルを 握 って 行 うトレーニングの 代 わりに 手 首 に 重 錘 バンドを 巻 きつけて 上 肢 のトレーニングを 行 います 負 荷 量 にもより ますが 重 錘 バンドを 使 用 したトレーニングではアウターマッスルの 強 化 が 期 待 できます 重 錘 バンドは 定 量 の 負 荷 でトレーニングをすることができるため 適 切 な 負 荷 量 を 設 定 しやすく トレーニング 効 果 を 実 感 しやすい 道 具 のひとつです 筋 肥 大 を 目 的 とした 場 合 は ゆっくりと4 秒 間 かけて 最 終 可 動 域 まで 動 かし また4 秒 間 かけて 開 始 の 姿 勢 まで 戻 すように1 回 の 運 動 を 行 います フォーム を 正 確 に 行 える 軽 い 負 荷 からはじめ 徐 々に 最 大 筋 力 の 60%~80%となるよ うに 重 くしていき 10 回 を3~5セット セット 間 の 休 憩 は1 分 間 程 度 にして 行 い ます 無 理 をせず 10 回 1セットがどのくらいの 自 覚 的 運 動 強 度 であるかを 確 認 して 行 います 力 を 入 れているときは 息 を 吐 くようにして 行 うことが 重 要 で す 筋 持 久 力 の 向 上 を 目 的 とした 場 合 は 2 秒 間 で 最 終 可 動 域 まで 動 かし ま た2 秒 間 で 開 始 の 姿 勢 まで 戻 すように1 回 の 運 動 を 行 います 20 回 が 楽 にで きる 程 度 の 重 さからはじめ 30 回 を2~3セット セット 間 の 休 憩 は1 分 未 満 に して 行 います 呼 吸 を 止 めずに 力 を 入 れるときは 息 を 吐 くようにして 行 うことが 重 要 です 肩 屈 曲 三 角 筋 前 部 棘 上 筋 烏 口 腕 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 プッシュアップ 前 屈 位 からの 起 き 上 がり 足 上 げ 動 作 寝 返 り 動 作 腕 を 真 下 に 下 げた 状 態 から 体 の 正 面 までまっすぐに 上 げます 肘 はなるべく 伸 ばして 手 の 平 が 下 を 向 くように します - 10 -
肩 伸 展 三 角 筋 後 部 広 背 筋 大 円 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 プッシュアップ 肩 外 転 三 角 筋 中 部 棘 上 筋 腕 を 真 下 に 下 げた 状 態 から 後 ろに 引 き 上 げます 肘 や 首 はなるべく 力 を 抜 いて 行 います 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 プッシュアップ 足 上 げ 動 作 肘 屈 曲 上 腕 二 頭 筋 上 腕 筋 腕 橈 骨 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 足 上 げ 動 作 腕 を 下 げた 状 態 から 真 横 に 肩 の 高 さまで 上 げます 肘 は なるべく 伸 ばした 状 態 で 手 の 平 が 下 を 向 くようにします 腕 を 下 げた 状 態 から 肘 を 曲 げます なるべく 肘 頭 の 位 置 を 動 かさないように 固 定 して 行 います - 11 -
肘 伸 展 上 腕 三 頭 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 プッシュアップ 腕 をあげて 肘 を 伸 ばします なるべく 肘 頭 の 位 置 を 動 かさ ないように 固 定 して 行 います 肩 伸 展 肩 甲 骨 内 転 僧 帽 筋 菱 形 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 プッシュアップ 前 屈 した 体 と 頭 が 同 じ 高 さとなるようにベッドの 高 さを 合 わ せて 行 います 腕 を 下 に 垂 らした 状 態 から 背 中 の 方 向 に 向 かって 腕 を 引 き 上 げます - 12 -
2.ゴムバンドを 使 用 したトレーニング ゴムバンドは 伸 縮 自 在 で 様 々な 箇 所 の 筋 力 トレーニングに 活 用 でき る 道 具 のひとつです 伸 縮 性 の 異 なるゴムを 使 うことやバンドの 長 さを 調 整 することで 負 荷 量 の 調 節 も 簡 単 に 行 うことができます 重 たい 負 荷 量 のトレーニングではアウターマッスルの 強 化 適 度 に 軽 い 負 荷 量 のトレ ーニングではインナーマッスルの 強 化 が 期 待 できます 筋 肥 大 を 目 的 とした 場 合 は10 回 を3~5セット 筋 持 久 力 向 上 を 目 的 としたときは30 回 を2~3セット 行 い 自 覚 的 運 動 強 度 で4(ややきつい) ~7( 非 常 にきつい)となるようなゴムの 伸 縮 性 バンドの 長 さを 設 定 して トレーニングを 行 いましょう ゴムバンドはスポーツ 用 品 店 や100 円 ショップなどで 購 入 できます 使 用 する 種 目 や 負 荷 によって 選 んでトレーニングを 行 いましょう 肩 屈 曲 三 角 筋 前 部 棘 上 筋 烏 口 腕 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 プッシュアップ 前 屈 位 からの 起 き 上 がり 足 上 げ 動 作 寝 返 り 動 作 車 椅 子 のグリップ 部 分 にゴムバンドを 引 っ 掛 けて 肘 を 伸 ばしていきながら 前 方 向 に 引 っ 張 ります まっすぐ 前 へ 引 っ 張 る 他 に 上 下 方 向 に 引 っ 張 ることで 筋 肉 の 全 域 を 鍛 えることが 出 来 ます - 13 -
肩 外 転 三 角 筋 中 部 使 用 する 動 作 プッシュアップ 車 椅 子 駆 動 車 椅 子 の 前 方 フレーム 部 にゴムバンドを 引 っ 掛 け 肩 を 外 側 に 開 きます 肘 はなるべく 伸 ばした 状 態 で 手 の 平 が 下 を 向 くようにします 肩 伸 展 三 角 筋 後 部 広 背 筋 大 円 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 プッシュアップ 肘 屈 曲 上 腕 二 頭 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 足 上 げ 動 作 ベッド 柵 に 引 っ 掛 けたゴムバンドを 手 首 に 通 し 腕 を 後 ろに 引 きます 肩 内 転 三 角 筋 前 部 大 胸 筋 使 用 する 動 作 車 椅 子 駆 動 プッシュアップ 前 屈 位 からの 起 き 上 がり 寝 返 り 動 作 ゴムバンドを 自 身 の 肘 の 高 さよりも 低 い 位 置 となるよう にベッド 柵 に 引 っ 掛 けます 手 の 平 を 上 に 向 けて 手 首 部 分 にチューブを 掛 けて 肘 を 曲 げます ベッド 柵 に 引 っ 掛 けたゴムバンドを 手 首 に 通 し 肘 を 曲 げながら 腕 を 胸 に 引 き 付 けるように 肩 を 内 側 へ 動 かしま す - 14 -
上 肢 のインナーマッスルのトレーニング 上 肢 のインナーマッスルは 肩 関 節 内 部 の 骨 の 位 置 関 係 を 整 える 役 割 があるため 弱 化 していると 肩 の 痛 みや 怪 我 にも 繋 がります また 肩 の 回 旋 運 動 をスムーズに 動 かすためにとても 重 要 です インナーマ ッスルを 鍛 えたい 場 合 は 軽 めの 負 荷 で 行 うことがポイントです 肩 外 旋 棘 下 筋 小 円 筋 肩 内 旋 肩 甲 下 筋 ゴムバンドに 両 手 首 を 通 し 外 側 へ 引 っ 張 ります 肘 は 固 定 して 外 に 開 かないようにします 30 回 連 続 して 行 った ところで 疲 労 感 がくる 程 度 が 適 量 です ベッド 柵 や 壁 に 固 定 したゴムバンドに 手 を 通 し 内 側 へ 引 っ 張 ります 肘 は 固 定 して 外 に 開 かないようにします 3 0 回 連 続 して 行 ったところで 疲 労 感 がくる 程 度 が 適 量 で す - 15 -
2. 道 具 を 使 わない 筋 力 トレーニング 道 具 を 使 わなくても 筋 力 トレーニングはできます ある 動 きとその 反 対 の 作 用 の 動 きをする 筋 力 を 同 時 に 収 縮 することで 動 静 止 性 収 縮 を 利 用 した 筋 力 トレーニングができます 1 上 肢 肩 外 転 肩 内 転 手 背 屈 胸 の 前 で 両 方 の 手 の 平 を 合 わせて 内 側 へ 力 を 入 れます 一 番 力 が 入 った 状 態 で5 秒 間 キープするのを10 回 行 います 手 掌 屈 肘 屈 曲 胸 の 前 で 手 の 平 と 手 の 甲 を 合 わせます 手 の 平 側 は 平 を 上 に 上 げるように 手 の 甲 側 は 甲 を 下 へ 向 けるように 力 を 入 れ ます 一 番 力 の 入 った 状 態 で5 秒 間 キープするのを10 回 行 います 肘 伸 展 片 方 の 肘 を 曲 げ 肘 頭 よりも 手 関 節 側 に 反 対 の 手 を 位 置 さ せます 肘 を 曲 げた 側 は 肘 を 伸 ばすように 反 対 は 肘 を 曲 げ るように 力 を 入 れます 一 番 力 が 入 った 状 態 で5 秒 間 キープ するのを10 回 行 います - 16 -
2 体 幹 下 肢 股 伸 展 大 殿 筋 体 幹 伸 展 脊 柱 起 立 筋 膝 屈 曲 ハムストリングス 体 幹 屈 曲 回 旋 腹 直 筋 内 外 腹 斜 筋 マットやベッドで 仰 向 けになり 膝 を 曲 げます そこからお 尻 に 力 を 入 れて 床 から 離 すようにして 引 き 上 げます 5 秒 間 キープするのを10 回 行 います 体 幹 屈 曲 腹 直 筋 内 外 腹 斜 筋 股 屈 曲 腸 骨 筋 大 腰 筋 膝 伸 展 大 腿 四 頭 筋 マットやベッドで 仰 向 けになり 膝 を 曲 げます そこからお へそを 覗 きこむようにして 首 を 上 げます お 腹 に 力 の 入 った 状 態 で5 秒 間 キープするのを10 回 行 います 体 を 左 右 に 捻 りながら 行 うと 腹 筋 の 色 々な 箇 所 を 鍛 えることができま す マットやベッドで 仰 向 けになり 膝 を 曲 げます そこから 足 を 床 から 離 し 膝 を 胸 につけるように 曲 げていきます 一 番 お 腹 に 力 が 入 るところで 止 めて5 秒 間 キープし ゆっくりと 元 の 位 置 まで 戻 していきます 10 回 行 います - 17 -
股 伸 展 大 殿 筋 大 腿 二 頭 筋 ハムストリングス マットやベッドで 仰 向 けになり 膝 下 に 台 を 置 おいてお 尻 を 持 ち 上 げます ベッドでは 足 側 のギャッジアップを 使 用 して 台 の 代 わりにします 膝 が 伸 び 膝 とお 腹 がな るべく 同 じ 高 さとなるように 行 い 5 秒 間 キープするのを 10 回 行 います 膝 伸 展 大 腿 四 頭 筋 マットやベッドで 仰 向 けになり 膝 下 に 台 を 置 いて 膝 を 伸 ばします ベッドでは 足 側 のギャッジアップをして 台 の 代 わりにします 膝 を 伸 ばしたところで5 秒 間 キープする のを10 回 行 います - 18 -
3. その 他 の 道 具 を 使 用 した 筋 力 トレーニング 生 活 の 中 の 動 作 や 身 近 なものを 利 用 しても 筋 力 トレーニングはできま す 広 い 場 所 や 特 別 な 道 具 を 用 意 する 必 要 がないトレーニングは 手 軽 に 行 え 継 続 しやすいことが 特 徴 です ここではそのようなトレーニングの 例 をいくつか 挙 げます 自 分 自 身 で トレーニングの 方 法 を 考 えて 実 施 する 場 合 は どの 筋 肉 に 効 果 がある か トレーニング 方 法 に 危 険 が 伴 わないか 等 を 理 学 療 法 士 など 専 門 家 に 相 談 してください スクワット 大 殿 筋 大 腿 四 頭 筋 腹 筋 群 背 筋 群 立 位 バーやベッド 柵 を 使 用 し ゆっくり 立 ち 上 がり ゆ っくり 座 ります 手 指 の 運 動 手 指 の 屈 筋 群 手 指 の 神 筋 群 車 椅 子 駆 動 三 角 筋 上 腕 二 頭 筋 上 腕 三 頭 筋 やわらかいソフトテニスボールやスポンジを 潰 すよう に 握 ったり 離 したりをくり 返 します 車 椅 子 でさまざまな 路 面 の 道 やスロープを 駆 動 する ことで 筋 力 トレーニングになります 重 錘 を 車 椅 子 の クロスバーに 巻 きつける 等 車 椅 子 の 質 量 を 重 くする ことによりトレーニングの 負 荷 が 大 きくなります - 19 -
参 考 文 献 頸 髄 損 傷 者 のための 自 己 管 理 支 援 ハンドブック 国 立 別 府 重 度 障 害 者 センター 頸 髄 損 傷 者 自 己 管 理 支 援 委 員 会 編 集 中 央 法 規 初 心 者 TV http://houhou.in/contents/6810 セラバンド&セラチューブエクササイズマニュアル 株 式 会 社 D&M 新 徒 手 筋 力 検 査 法 第 8 版 協 同 医 書 出 版 社 - 20 -
国 立 障 害 者 リハビリテーションセンター 自 立 支 援 局 別 府 重 度 障 害 者 セ ン タ ー ( 支 援 マニュアル 作 成 委 員 会 編 ) 874-0904 大 分 県 別 府 市 南 荘 園 町 2 組 電 話 :0977-21-0181 HP:http://www.rehab.go.jp/beppu/ 初 版 平 成 27 年 3 月 発 行