新 健 康 フロンティア 戦 略 賢 人 会 議 働 き 盛 りと 高 齢 者 の 健 康 安 心 分 科 会 提 出 資 料 国 立 保 健 医 療 科 学 院 口 腔 保 健 部 花 田 信 弘
1. 口 腔 の 保 健 医 療 および 介 護 の 現 状 分 析 平 成 17 年 に 行 われた 歯 科 疾 患 実 態 調 査 では 80 歳 で 自 分 の 歯 を20 歯 以 上 有 する 人 の 割 合 が2 割 を 超 え 8020 達 成 の 可 能 性 が 見 えてきた しかしながら 歯 を 失 った ことのある 高 齢 者 の 総 数 は 増 えており 咀 嚼 障 害 が 現 在 の 高 齢 者 にとって 大 きな 問 題 となっている 平 成 16 年 に 行 われた 国 民 健 康 栄 養 調 査 では 歯 の 数 と 咀 嚼 ( 何 でも 噛 んで 食 べることができる)の 調 査 結 果 が 示 されており 適 正 な 咀 嚼 の 面 においても 生 涯 に わたる 歯 の 維 持 が 必 要 である( 別 紙 資 料 参 照 )
2. 口 腔 と 全 身 の 健 康 の 分 析 第 一 回 会 議 資 料 ( 宮 崎 秀 夫 ら 新 潟 大 学 )をはじ め 厚 生 労 働 科 学 研 究 地 域 住 民 の 口 腔 保 健 と 全 身 的 な 健 康 状 態 の 関 係 についての 総 合 研 究 ( 小 林 修 平 ら 人 間 総 合 科 学 大 学 ) 等 の 結 果 (スライド 資 料 ) 及 び8020 推 進 財 団 による 文 献 調 査 報 告 書 の 結 果 (スライド 資 料 )から 口 腔 と 全 身 疾 患 との 関 連 性 について 報 告 されている
厚 生 労 働 科 学 研 究 地 域 住 民 の 口 腔 保 健 と 全 身 的 な 健 康 状 態 の 関 係 についての 総 合 研 究 等 の 結 果 ( 概 要 ) 第 一 回 会 議 資 料 ( 宮 崎 秀 夫 ら 新 潟 大 学 )の 他 に 口 腔 と 全 身 の 健 康 に 関 する 下 記 の 研 究 結 果 が 報 告 さ れた( 平 成 19 年 1 月 13 日 小 林 修 平 班 シンポジウム 抄 録 集 から 抜 粋 ) 若 井 建 志 ら( 名 古 屋 大 学 )による 歯 科 医 師 調 査 結 果 歯 の 数 と 栄 養 との 関 連 : 喪 失 歯 数 が 多 い 群 ほど 蛋 白 質 脂 質 カルシウム 鉄 カリウム カ ロテン ビタミンA C E 食 物 繊 維 の 摂 取 量 は 少 なかった 逆 に 炭 水 化 物 については 喪 失 歯 数 が 多 い 群 ほど 摂 取 量 が 多 い 傾 向 が 認 められた( 表 1) 歯 の 数 と 死 亡 との 関 連 : 平 均 ± 標 準 偏 差 2.4±1.1 年 の 追 跡 期 間 に252 名 の 死 亡 が 同 定 された 喪 失 歯 数 が5 本 以 上 の 群 で5 本 未 満 群 よりも 有 意 に 高 い 約 1.6 1.8の 死 亡 率 比 が 認 められ 交 絡 要 因 の 調 整 による 死 亡 率 比 の 変 化 は 小 さかった( 表 2) 井 上 修 二 ら( 共 立 女 子 大 学 )による 肥 満 糖 尿 病 と 歯 周 病 の 調 査 結 果 糖 尿 病 患 者 652 例 肥 満 者 228 例 正 常 者 168 例 を 対 象 とした 多 施 設 共 同 疫 学 調 査 研 究 で 糖 尿 病 患 者 肥 満 者 に 歯 周 病 の 頻 度 が 高 いこと 齲 歯 未 処 置 の 歯 数 が 多 いこと 現 在 歯 数 が 少 ないこと 年 代 によって 咀 嚼 能 の 低 下 がみられることが 明 らかになった また 糖 尿 病 患 者 ではHbA1cが 高 値 であると 歯 周 病 の 重 症 度 が 増 すことも 明 らかになった 糖 尿 病 患 者 を 歯 周 病 治 療 ( 介 入 )23 例 非 治 療 ( 非 介 入 )31 例 に 分 けて3ヶ 月 の 集 中 治 療 を 行 い 治 療 群 では 高 感 度 CRPが 改 善 し HbA1cも 低 下 した 非 治 療 群 は 変 化 がなかった 従 って 歯 周 病 治 療 は 糖 尿 病 患 者 の 血 糖 コントロールを 改 善 する 可 能 性 があることが 示 唆 された 糖 尿 病 治 療 介 入 により 歯 周 病 の 改 善 傾 向 がみられたが 症 例 を 増 やして 研 究 を 継 続 中 である
厚 生 労 働 科 学 研 究 (1/13/07シンポジウム): 歯 科 医 師 自 身 の 調 査 から( 名 大 若 井 建 志 らの 報 告 ) ( 平 成 19 年 1 月 13 日 小 林 修 平 班 シンポジウム 抄 録 集 から 抜 粋 ) 表 1 喪 失 歯 数 群 別 の 推 定 栄 養 素 摂 取 量 平 均 値 (1 日 あたり n = 19,371) a 喪 失 歯 数 栄 養 素 0-4 5-14 15-24 25-28 Trend p (n = 15,797)(n = 2,196) (n = 667) (n = 711) 蛋 白 質 (g) 73.6 72.4 72.3 71.6 < 0.001 脂 質 (g) 55.5 54.6 53.9 53.5 < 0.001 炭 水 化 物 (g) 255.8 257.0 259.5 266.2 < 0.001 カルシウム (mg) 604 585 581 565 < 0.001 鉄 (mg) 10.6 10.3 10.1 10.2 < 0.001 カリウム (mg) 2,955 2,940 2,921 2,838 0.009 ビタミンA (IU) 2,887 2,803 2,705 2,634 < 0.001 レチノール (μg) 431 430 418 412 0.21 カロテン (μg) 2,549 2,406 2,300 2,212 < 0.001 ビタミンC (mg) 143 137 133 127 < 0.001 ビタミンE (mg) 8.78 8.58 8.39 8.30 < 0.001 食 物 繊 維 (g) 14.4 14.0 13.6 13.7 < 0.001 a) 共 分 散 分 析 により 性 年 齢 喫 煙 習 慣 エネルギー 摂 取 量 を 調 整
厚 生 労 働 科 学 研 究 (1/13/07シンポジウム): 歯 科 医 師 自 身 の 調 査 から( 名 大 若 井 建 志 らの 報 告 ) ( 平 成 19 年 1 月 13 日 小 林 修 平 班 シンポジウム 抄 録 集 から 抜 粋 ) 表 2 喪 失 歯 数 群 別 の 死 亡 率 比 (n = 20,959) 0-4 n 16,954 観 察 人 年 41,611 死 亡 者 数 88 死 亡 率 比 1 a 1.00 喪 失 歯 数 5-14 15-28 2,423 5,673 62 1,582 3,740 102 1.62 1.80 (95% 信 頼 区 間 ) (1.13-2.32) (1.25-2.60) 死 亡 率 比 2 b 1.00 1.64 1.70 (95% 信 頼 区 間 ) (1.13-2.40) (1.14-2.52) 死 亡 率 比 3 c 1.00 1.66 1.70 (95% 信 頼 区 間 ) (1.12-2.44) (1.13-2.56) a) 性 年 齢 を 調 整 b) 性 年 齢 喫 煙 習 慣 飲 酒 習 慣 BMI 精 神 的 健 康 度 激 しい 運 動 睡 眠 時 間 を 調 整 c) 性 年 齢 喫 煙 習 慣 飲 酒 習 慣 BMI 精 神 的 健 康 度 激 しい 運 動 睡 眠 時 間 糖 尿 病 既 往 高 脂 血 症 既 往 収 縮 期 血 圧 を 調 整 Trend p 0.002 0.010 0.012
8020 推 進 財 団 による 文 献 調 査 報 告 書 口 腔 と 全 身 の 研 究 の 結 果 口 腔 と 全 身 の 研 究 は 世 界 中 で 行 われているので 文 献 調 査 を 行 い 総 合 評 価 を 行 った 口 腔 と 全 身 の 健 康 状 態 に 関 する 文 献 調 査 報 告 書 平 成 17 年 報 告 歯 周 病 と 循 環 器 疾 患 歯 周 病 と 低 体 重 児 出 産 口 腔 の 健 康 とQOL 平 成 18 年 報 告 口 腔 の 健 康 とADL 歯 周 病 と 糖 尿 病 歯 周 病 と 骨 粗 鬆 症 財 団 法 人 8020 推 進 財 団 ホームページに 掲 載 http://www.8020zaidan.or.jp/pdf/jigyo/koukuu_zensin_1.pdf http://www.8020zaidan.or.jp/pdf/jigyo/koukuu_zensin_2.pdf
3. 口 腔 の 保 健 医 療 および 介 護 の 課 題 歯 の 失 ったことのある 高 齢 者 の 総 数 は 現 在 も 増 えてお り 咀 嚼 障 害 が 高 齢 者 にとって 大 きな 問 題 となっている ことから 歯 科 疾 患 特 にう 蝕 ( 青 年 期 )と 歯 周 疾 患 ( 中 壮 年 )を 減 少 させる 対 策 が 青 年 中 壮 年 の 幅 広 い 年 齢 層 に 対 して 必 要 である 高 齢 者 の 適 正 な 口 腔 機 能 ( 咀 嚼 栄 養 摂 取 等 )の 維 持 及 び 健 康 づくりを 推 進 する 観 点 から 歯 を 失 ったことの ある 者 ( 特 に 高 齢 者 )に 対 する 総 合 的 な 口 腔 機 能 ( 咀 嚼 機 能 ( 義 歯 ) 等 )の 維 持 向 上 対 策 が 必 要 である
4. 具 体 的 対 策 1. 口 腔 機 能 の 維 持 向 上 にかかる 幅 広 い 年 齢 層 での 研 究 等 の 推 進 (1) 口 腔 機 能 の 維 持 及 び 回 復 のための 治 療 技 術 リハビリ 等 の 研 究 開 発 の 推 進 (2) 歯 科 疾 患 (う 蝕 歯 周 疾 患 歯 の 欠 損 ( 義 歯 ) 等 )に 係 る 健 康 診 断 等 のスクリーニング 技 術 方 法 の 研 究 開 発 の 推 進 (3) 歯 科 疾 患 口 腔 機 能 低 下 等 に 対 する 予 防 技 術 等 の 研 究 開 発 の 推 進 (4)がん 患 者 等 に 対 する 口 腔 ケア 等 の 有 効 性 治 療 ケア 技 術 の 研 究 開 発 2. 口 腔 機 能 及 び 歯 科 疾 患 対 策 のマンパワーの 育 成 (1) 口 腔 ケア 及 び 口 腔 機 能 の 回 復 技 術 等 に 関 する 専 門 家 の 育 成 (2) 在 宅 医 療 に 携 わる 歯 科 医 師 歯 科 衛 生 士 等 の 育 成 (3) 健 康 診 断 等 のスクリーニングに 係 る 人 材 の 育 成 (4)がん 患 者 等 に 対 する 口 腔 ケア 等 の 周 辺 医 療 を 行 う 歯 科 医 師 歯 科 衛 生 士 等 の 育 成 3. 歯 科 疾 患 口 腔 機 能 に 係 る 保 健 医 療 及 び 介 護 体 制 等 の 整 備 (1) 歯 科 疾 患 口 腔 機 能 に 係 るスクリーニングのための 制 度 等 の 拡 充 (2) 在 宅 医 療 を 含 む 総 合 的 な 歯 科 保 健 医 療 等 のサービス 提 供 体 制 の 構 築 (3) 医 師 歯 科 医 師 薬 剤 師 管 理 栄 養 士 ケアコーディネータ 等 が 連 携 した 保 健 医 療 介 護 体 制 の 確 立
資 料 アレディア ゾメタ 投 与 による 顎 の 病 変 ( 骨 壊 死 )に 関 するご 注 意 2006 年 7 月 製 造 販 売 ノバルティスファーマ 株 式 会 社 東 京 都 港 区 西 麻 布 4-17-30 提 携 日 本 化 薬 株 式 会 社 東 京 都 千 代 田 区 富 士 見 町 一 丁 目 11 番 2 号 アレディア ゾメタ 投 与 による 顎 の 病 変 ( 骨 壊 死 )に 関 するご 注 意 謹 啓 時 下 ますますご 清 祥 の 段 お 慶 び 申 し 上 げます 平 素 は 弊 社 製 品 につきまして 格 別 のご 高 配 を 賜 り 厚 くお 礼 申 し 上 げます また 日 頃 先 生 方 には 安 全 性 情 報 の 収 集 にご 協 力 いただき 誠 にありがとうございます さて 2002 年 12 月 海 外 においてゾメタを 投 与 された 患 者 の 顎 骨 壊 死 が 報 告 されて 以 降 アレディアやゾメタを 投 与 された 患 者 の 顎 の 病 変 ( 主 に 顎 骨 壊 死 )の 報 告 が 集 積 されております また 2006 年 6 月 顎 骨 壊 死 の 発 現 頻 度 リスク 因 子 の 同 定 病 態 などを 解 明 するために 実 施 された 海 外 での 大 規 模 レトロスペクティブ 調 査 の 結 果 が 報 告 されました ( 国 内 では 現 在 までにゾメタでの 報 告 はありませんが アレディア を 投 与 された 患 者 において 顎 骨 壊 死 が2006 年 2 月 時 点 で13 例 報 告 されております ) 弊 社 では 2005 年 6 月 に アレディア 注 15mg 注 30mg/ゾメタ 注 射 液 4mg 適 正 使 用 のお 願 い を 作 成 し アレディア 及 びゾメタを 処 方 いただいている 先 生 方 に 顎 の 病 変 への 注 意 をお 願 いさせていただきました このたび 情 報 を 更 新 し 上 記 調 査 の 結 果 等 を 次 頁 から 記 載 させていただきました ご 確 認 いただければ 幸 いに 存 じます また 今 後 も 引 き 続 き アレディア 及 びゾメタの 投 与 に 際 しましては 下 記 の 点 にご 留 意 下 さいますようお 願 いいたします また 顎 の 病 変 が 認 められた 場 合 には 弊 社 MRに 速 やかにご 連 絡 いただきますよう 併 せてお 願 い 申 し 上 げます 謹 白 投 与 前 患 者 さんの 口 腔 内 の 状 態 を 注 意 深 く 観 察 して 下 さい 歯 科 治 療 が 必 要 な 場 合 には 投 与 開 始 前 に 終 了 させて 下 さい 投 与 中 患 者 さんの 口 腔 内 の 状 態 を 注 意 深 く 観 察 して 下 さい 患 者 さんに 口 腔 内 を 清 潔 に 保 つようにご 指 導 下 さい 抜 歯 等 の 侵 襲 的 歯 科 治 療 はできるだけ 避 けて 下 さい 顎 の 痛 み 腫 脹 歯 肉 感 染 等 の 顎 の 症 状 があらわれた 場 合 には 口 腔 外 科 等 の 専 門 医 の 診 察 を 受 けるようご 指 示 下 さい
06/12/19 17:48 会 誌 8020 原 稿 ( 刷 り 上 がりイメージ).jtd トピックス 8020 実 現 への 展 望 ~ 8020 達 成 者 初 の2 割 超 えを 見 据 えて~ ( 厚 労 省 平 成 17 年 歯 科 疾 患 実 態 調 査 / 平 成 16 年 国 民 健 康 栄 養 調 査 の 結 果 から) 安 藤 雄 一 ( 国 立 保 健 医 療 科 学 院 口 腔 保 健 部 口 腔 保 健 情 報 室 長 ) 前 文 ( 要 約 文 ) 平 成 17 年 に 行 われた 歯 科 疾 患 実 態 調 査 では80 歳 で 自 分 の 歯 を20 歯 以 上 有 する 人 の 割 合 が2 割 を 超 え 80 20 達 成 の 可 能 性 が 少 しずつ 見 えてきました しかしながら 人 口 の 高 齢 化 により 歯 が 残 っていない 高 齢 者 の 数 は 増 えており 咀 嚼 障 害 が 現 在 の 高 齢 者 にとって 大 きな 問 題 となっている 実 態 が 改 めて 浮 き 彫 りになりました 1. 8020 の 実 態 ( 平 成 17 年 歯 科 疾 患 実 態 調 査 の 結 果 から) (1) 歯 の 喪 失 状 態 は 改 善 図 1 は 平 成 17 年 11 月 に 行 われた 厚 労 省 による 図 1. 自 分 の 歯 ( 現 在 歯 )を24/20 歯 以 上 有 する 人 の 割 合 ( 歯 科 疾 患 実 態 調 査 2005 年 ) 歯 科 疾 患 実 態 調 査 から 24 歯 以 上 および 20 歯 100% 20 歯 以 上 以 上 の 歯 ( 現 在 歯 )を 有 する 人 の 割 合 を 年 齢 階 級 80% 24 歯 以 上 別 に 示 したグラフです 55 ~ 64 歳 で 24 歯 以 上 を 60% 有 する 人 (60-24)は 60% 75 ~ 84 歳 で 20 歯 以 上 を 有 する 人 (80-20)は 25%で 健 康 日 本 21 の 40% 目 標 値 ( 図 1)を 上 回 っていました 20% 図 2 は 過 去 30 年 間 (1975 ~ 2005 年 )における 0% 自 分 の 歯 を 20 歯 以 上 有 する 人 の 割 合 の 推 移 を 15-24 25-34 35-44 45-54 55-64 65-74 75-84 85- 示 したものです 8020 運 動 が 開 始 された 1980 年 齢 階 級 注 健 康 日 本 21における 歯 の 喪 失 に 関 する 目 標 値 年 代 末 では 80-20 の 高 齢 者 は1 割 程 度 でしたが 1 80 歳 における20 歯 以 上 の 自 分 の 歯 を 有 する 者 の 割 合 を20% 以 上 にする(80-20) 2 60 歳 における24 歯 以 上 の 自 分 の 歯 を 有 する 者 の 割 合 を50% 以 上 にする(60-24) 最 新 調 査 (2005 年 )では 2.5 倍 まで 増 加 しています 図 3 は 歯 が1 本 もない 人 ( 無 歯 顎 者 )の 割 合 の 推 移 を 示 したもので 減 少 傾 向 にあることがわかり ます ことに 60 歳 前 後 (55 ~ 64 歳 )に 着 目 すると 今 から 30 年 前 (1975 年 )の 60 歳 で 無 歯 顎 者 が 5 人 に 1 人 の 割 合 でいましたが 今 (2005 年 )では 50 人 に 1 人 程 度 まで 減 っています 100% 80% 60% 40% 20% 図 2. 自 分 の 歯 ( 現 在 歯 )を20 歯 以 上 有 する 人 の 割 合 の 推 移 ( 歯 科 疾 患 実 態 調 査 1975~2005 年 ) 40-44 歳 45-49 歳 50-54 歳 55-59 歳 60-64 歳 65-69 歳 70-74 歳 75-79 歳 80 歳 - 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 図 3. 自 分 の 歯 が1 本 もない 人 ( 無 歯 顎 者 )の 割 合 の 推 移 ( 歯 科 疾 患 実 態 調 査 1975~2005 年 ) 45-49 歳 50-54 歳 55-59 歳 60-64 歳 65-69 歳 70-74 歳 75-79 歳 80 歳 - 0% 1975 1981 1987 1993 1999 2005 調 査 年 0% 1975 1981 1987 1993 1999 2005 調 査 年 -1-
06/12/19 17:48 会 誌 8020 原 稿 ( 刷 り 上 がりイメージ).jtd 図 4 は 一 人 平 均 現 在 歯 数 ( 自 分 の 歯 の 数 の 平 均 値 )と 歯 科 医 師 数 の 推 移 (1957 ~ 2005 年 )を 示 したグラフです 一 人 平 均 現 在 歯 数 と 歯 科 医 師 数 の 増 加 時 期 は 重 なり 歯 の 喪 失 状 態 の 改 善 に 歯 科 医 療 が 貢 献 してきたことが 読 み 取 れます 1) 30 25 20 現 在 15 歯 数 10 5 0 図 4. 一 人 平 均 現 在 歯 数 #1 と 歯 科 医 師 密 度 #2 の 推 移 1957 年 1963 年 1969 年 1975 年 1981 年 1987 年 1993 年 1999 年 2005 年 80 70 60 50 40 30 20 10 0 歯 科 医 数 ( 対 人 口 十 万 人 ) 歯 科 医 密 度 35-44 歳 45-54 歳 55-64 歳 65-74 歳 75 歳 - (2) 歯 のない 高 齢 者 は 増 えている #1 歯 科 疾 患 実 態 調 査 1957~2005 年 #2 歯 科 医 師 数 は 医 師 歯 科 医 師 薬 剤 師 調 査 人 口 データは 国 勢 調 査 または 人 口 推 計 を 用 い 人 口 10 万 人 あたりの 歯 科 医 師 数 を 算 出 以 上 は 率 ( 割 合 )や 平 均 値 でみた 推 移 ですが 人 数 でみると 様 相 は 異 なります 御 存 じのように 高 齢 者 の 数 が 増 えてきたためです 図 5 は 歯 科 疾 患 実 態 調 査 の 結 果 と 同 年 の 人 口 統 計 データを 利 用 して 8020 達 成 者 数 と 非 達 成 者 数 の 推 計 値 を 算 出 し その 推 移 (1975 ~ 2005)を 示 したものです 2005 年 の 80-20 の 人 数 は 30 年 前 (1975 年 )に 比 べて 13 倍 に 増 えていますが 非 達 成 者 も 3 倍 に 増 えています 無 歯 顎 者 については 図 6 に 示 すように それほど 減 っておらず 図 3 で 示 した 率 ( 割 合 )のグラ フとは 様 相 が 異 なっています 歯 が 残 っている 高 齢 者 は 増 加 していますが 人 口 の 高 齢 化 により 歯 の 残 っていない 高 齢 者 の 数 も 増 え ているのです 推 計 人 数 ( 万 ) 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 図 5. 8020 の 達 成 者 数 と 非 達 成 者 数 の 推 計 値 # (75 歳 以 上 1975~2005 年 ) 8020 達 成 者 数 8020 非 達 成 者 数 1975 年 1981 年 1987 年 1993 年 1999 年 2005 年 歯 科 疾 患 実 態 調 査 の 調 査 年 # 推 計 値 は 歯 科 疾 患 実 態 調 査 の 各 調 査 年 における75 歳 以 上 の 高 齢 者 で 自 分 の 歯 を20 歯 以 上 / 未 満 有 している 割 合 に 同 じ 年 齢 層 の 人 口 を 乗 じて 算 出 した ( 万 ) 800 図 6. 自 分 の 歯 が1 本 もない 人 数 ( 無 歯 顎 者 数 )の 推 計 値 #(1975 ~2005 年 ) 15-19 歳 700 20-24 歳 25-29 歳 600 30-34 歳 35-39 歳 無 500 40-44 歳 歯 45-49 歳 顎 400 50-54 歳 者 300 55-59 歳 数 60-64 歳 200 65-69 歳 70-74 歳 100 75-79 歳 80 歳 - 0 1975 年 1981 年 1987 年 1993 年 1999 年 2005 年 歯 実 調 の 調 査 年 # 推 計 値 は 歯 科 疾 患 実 態 調 査 の 各 調 査 年 における 各 年 齢 階 級 における 自 分 の 歯 が1 本 も ないの 割 合 に 同 じ 年 齢 層 の 人 口 を 乗 じて 算 出 した (3) 歯 の 喪 失 の 進 み 方 と 地 域 差 歯 の 喪 失 に 関 するデータをみるうえでの 注 意 点 の 1 つとして 変 化 が 生 じるのに 非 常 に 時 間 を 要 す る 点 を 挙 げることができます 図 4 で 示 した 一 人 平 均 現 在 歯 数 の 推 移 をよく 見 ると 1987 ~ 2005 年 における 各 調 査 年 の 80 歳 高 齢 者 (75 歳 以 上 )の 30 年 前 (1957 ~ 1975 年 の 45 ~ 54 歳 )における 一 人 平 均 現 在 歯 数 は 20 本 強 であり かなり 早 い 時 点 で 多 くの 歯 が 喪 失 していたことがわかります( 図 7) 2005 年 の 歯 科 疾 患 実 態 調 査 では 歯 の 喪 失 状 況 に 地 域 差 が 認 められました( 図 8)が かなり 前 に 存 在 していた 歯 科 医 療 アクセスの 地 域 差 が 影 響 していた 可 能 性 が 考 えられ 必 ずしも 現 状 の 歯 科 医 療 が 反 映 した 結 果 とは 言 い 難 い 面 もありますので 結 果 の 解 釈 には 注 意 が 必 要 と 思 われます 歯 科 疾 患 実 態 調 査 はある1 時 点 を 調 べた 横 断 ( 断 面 ) 調 査 であり 過 去 の 状 況 を 知 ることはできないためです -2-
06/12/19 17:48 会 誌 8020 原 稿 ( 刷 り 上 がりイメージ).jtd 100% 80% 60% 40% 20% 図 8. 地 域 別 にみた 自 分 の 歯 を20 歯 以 上 有 してい る 人 の 割 合 ( 歯 科 疾 患 実 態 調 査 2005 年 ) 13 大 都 市 市 (15 万 -) 市 (5-15 万 ) 市 (-5 万 )+ 町 村 0% 45-54 55-64 65-74 75- 年 齢 階 級 2. 8020 と 機 能 ( 平 成 16 年 国 民 健 康 栄 養 調 査 の 結 果 から) 国 民 健 康 栄 養 調 査 ( 旧 国 民 栄 養 調 査 )は 国 の 健 康 施 策 の 重 要 な 基 礎 資 料 として 毎 年 実 施 されて きましたが 2004 年 調 査 3) から 歯 の 健 康 に 関 す る 調 査 が 5 年 に 1 回 の 間 隔 で 実 施 されるようにな り 歯 科 保 健 の 面 でも 歯 科 疾 患 実 態 調 査 と 並 ぶ 重 要 な 情 報 源 となりました この 調 査 は 歯 科 疾 患 実 態 調 査 とは 異 なり 口 腔 診 査 ではなく 質 問 紙 により 歯 の 数 ( 現 在 歯 数 ) 咀 嚼 の 状 況 歯 科 保 健 行 動 などが 調 査 されています 図 9 は 歯 科 疾 患 実 態 調 査 と 国 民 健 康 栄 養 調 査 における 60-24 と 80-20 の 割 合 ( 智 歯 を 除 く) を 比 較 したものですが それほど 大 きな 違 いは 認 め られず 質 問 紙 であっても 現 在 歯 数 の 把 握 が 十 分 可 能 であったことを 示 しています 図 10 は 咀 嚼 の 状 況 を 年 齢 階 級 別 に 示 したもので す ものを 噛 むことに 何 らかの 不 自 由 を 訴 える 人 は 高 齢 層 になるほど 多 く 70 歳 以 上 では 半 数 近 く にのぼっています これは 高 齢 者 の 適 正 な 栄 養 摂 取 3) の 面 からみて 由 々しき 問 題 といえます さらに 各 年 齢 階 級 別 に 現 在 歯 数 との 関 連 をみる と どの 年 齢 階 級 でも 現 在 歯 数 との 関 連 は 強 く 20 歯 未 満 でものが 十 分 に 噛 めない 人 の 割 合 が 高 いこ とが 示 されています( 図 11) このような 関 係 は 歯 科 の 関 係 者 では 既 に 当 然 のことと 捉 えられてきた 感 がありますが 多 くの 保 健 関 係 職 が 注 目 する 国 民 健 康 栄 養 調 査 で 明 ら かな 結 果 が 得 られたことは 今 後 の8020 運 動 の 推 進 にとって 非 常 に 大 きな 意 義 を 持 つと 考 えら れます 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 100% 80% 60% 40% 20% 0% 100% 何 で 80% も か る ん 60% で の 食 割 べ 40% 合 る こ と 20% が で き 0% 図 9.2つの 全 国 調 査 における 歯 の 喪 失 状 況 #1 の 比 較 歯 科 疾 患 実 態 調 査 (2005) 国 民 健 康 栄 養 調 査 (2004) 60-24 #2 80-20 #3 (55-64 歳 ) (75-84 歳 ) #1 智 歯 ( 親 知 らず 8 番 )は 歯 ( 現 在 歯 )の 数 から 除 かれている #2 55-64 歳 における24 歯 以 上 の 自 分 の 歯 を 有 する 人 の 割 合 #3 75-84 歳 における20 歯 以 上 の 自 分 の 歯 を 有 する 人 の 割 合 図 10. 咀 嚼 の 状 況 ( 国 民 健 康 栄 養 調 査 2004 年 ) 質 問 : かんで 食 べるときの 状 態 につ いて 当 てはまる 番 号 を1つ 選 んで 印 をつけてください 1. 何 でもかんで 食 べることができる 2. 一 部 かめない 食 べ 物 がある 3.かめない 食 べ 物 が 多 い 4.かんで 食 べることはできない 15-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70- 年 齢 階 級 図 11. 咀 嚼 の 状 況 ( 何 でもかんで 食 べることができる の 割 合 )と 歯 の 数 ( 現 在 歯 数 )の 関 連 ( 国 民 健 康 栄 養 調 査 2004 年 ) 0 歯 1~9 歯 10~19 歯 20~27 歯 28 歯 以 上 40-49 50-59 60-69 70- 年 齢 階 級 注 質 問 は 図 10と 同 様 -3-
06/12/19 17:48 会 誌 8020 原 稿 ( 刷 り 上 がりイメージ).jtd 3. 8020 の 将 来 予 測 ( 永 久 歯 の 抜 歯 原 因 調 査 の 活 用 ) 8020 は 実 現 可 能 なのか? また 実 現 するとしたらいつ 頃 なのか? といった 質 問 はよく 耳 に します これについては 様 々な 面 から 検 討 する 必 要 がありますが 今 まで 紹 介 してきたように 実 際 に 歯 の 喪 失 が 改 善 してきたことから 少 なくとも 8020 運 動 が 提 唱 された 当 初 に 比 べると 実 現 可 能 性 は 高 まっているといえます そこで 可 能 という 前 提 に 立 ち 達 成 時 期 を 予 測 してみました そのために は いま 現 在 の 歯 の 喪 失 状 況 がわかっている 必 要 があり 具 体 的 には 現 在 どのくらいの 歯 が 1 残 っ ているのか 2 失 われているのか という2 種 類 の 情 報 が 必 要 です 歯 科 疾 患 実 態 調 査 は1を 知 る うえでは 有 用 ですが 2について 十 分 な 情 報 を 得 ることはできません これを 得 る 情 報 源 として いわ ゆる 抜 歯 原 因 調 査 が 有 用 で 一 定 期 間 中 における 歯 科 医 院 での 抜 歯 症 例 に 関 する 情 報 を 得 ることができ ます 8020 推 進 財 団 では 2005 年 2 月 に 全 国 永 久 歯 抜 歯 原 因 調 査 4) を 実 施 し 2005 年 2 月 1 ~ 7 日 の 間 に 調 査 に 協 力 していただいた 2,001 軒 の 抜 歯 科 診 療 所 で 抜 歯 された 歯 について 歯 数 調 査 を 行 っています 図 12 は 年 齢 階 級 別 にみた 抜 歯 数 と 原 因 の 内 訳 を 示 したものです この 結 果 を 用 いると 1 年 間 で 全 国 で 何 本 抜 歯 されたかという 推 計 を 行 うことができますので 歯 科 疾 患 実 態 調 査 における 歯 の 喪 失 の 現 状 値 と 組 み 合 わせると 一 人 平 均 現 在 歯 数 の 将 来 予 測 値 を 算 出 することが 可 能 となります 4) 図 13 は 歯 科 疾 患 実 態 調 査 の 最 新 データ(2005 年 )に 抜 歯 原 因 調 査 の 結 果 を 外 挿 して 算 出 した 一 人 平 均 現 在 歯 数 の 将 来 予 測 値 です これによる と 2035 ~ 2040 年 頃 には 80 歳 前 後 の 年 齢 層 の 一 人 平 均 現 在 歯 数 が 約 20 本 となることが 示 されています この 予 測 は 粗 い 推 計 なので 更 に 検 討 が 必 要 であるのはいうまでもありませんが 少 な くとも 将 来 的 な 見 通 しを 明 確 にするために も この 種 の 予 測 を 行 い 議 論 を 喚 起 する 必 要 性 は 高 いと 筆 者 自 身 は 考 えています 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 図 12. 抜 歯 の 主 原 因 別 にみた 各 年 齢 階 級 の 抜 歯 数 (8020 推 進 財 団 永 久 歯 の 抜 歯 原 因 調 査 2005 年 ) -14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 -85 一 人 平 均 現 在 歯 数 30 25 20 15 10 5 0 年 齢 階 級 図 13. 一 人 平 均 現 在 歯 数 の 将 来 予 測 値 (60 歳 以 上 ) #1 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 年 無 効 その 他 矯 正 破 折 歯 周 病 う 蝕 60-64 歳 65-69 歳 70-74 歳 75-79 歳 80-84 歳 85 歳 以 上 #1 一 人 平 均 現 在 歯 数 ( 歯 の 数 の 平 均 値 )の 将 来 予 測 値 は 歯 科 疾 患 実 態 調 査 (2005 年 )の 一 人 平 均 現 在 歯 数 データと8020 推 進 財 団 永 久 歯 の 抜 歯 原 因 調 査 から 推 計 された 年 間 平 均 喪 失 歯 数 を 用 いて 算 出 した 4) 文 献 1) 安 藤 雄 一. 歯 の 寿 命 延 伸 に 歯 科 医 療 は 貢 献 したか?. ヘルスサイエンス ヘルスケア 2005;5:50-55. (http://www.fihs.org/health5/art7.pdf) 2) 健 康 栄 養 情 報 研 究 会 編. 厚 生 労 働 省 平 成 16 年 国 民 健 康 栄 養 調 査 報 告. 東 京 : 第 一 出 版 ; 2006. 3) 熊 谷 修. 高 齢 者 の 栄 養 問 題 とその 解 決 策 その 科 学 的 背 景. 臨 床 栄 養 2006:109:618-624. 4) 安 藤 雄 一 相 田 潤 森 田 学 青 山 旬 増 井 峰 夫. 永 久 歯 の 抜 歯 原 因 調 査 報 告 書 東 京 :80 20 推 進 財 団 ; 2005.(http://shoroku.niph.go.jp/kosyu/2005/200554030005.pdf) -4-