今 月 のトピックス No.251-1(216 年 3 月 17 日 ) (21 年 =1) 95Q2 98Q2 14 実 質 実 効 為 替 レート( 右 目 盛 ) 12 1 8 製 造 業 の 海 外 生 産 シフトと 輸 出 の 高 付 加 価 値 化 1.リーマンショック 以 降 の 日 本 の 輸 出 の 弱 さの 背 景 には 構 造 的 要 因 日 本 の 輸 出 を 数 量 ベースでみると リーマンショック 直 後 は 世 界 貿 易 の 大 きな 落 ち 込 みが 影 響 し リスク 回 避 の 円 高 も 日 本 の 輸 出 を 下 押 しした( 図 表 1-1) この 円 高 は212 年 末 以 降 に 解 消 されたが 日 本 の 輸 出 はその 後 も 振 るわず 近 年 停 滞 が 指 摘 される 世 界 貿 易 と 比 べても 伸 びの 弱 さが 目 立 つ( 図 表 1-2) 円 安 によって 価 格 競 争 力 が 改 善 し 輸 出 数 量 が 増 加 するには 販 売 価 格 が 低 下 する 必 要 がある 輸 出 物 価 をドル 建 て 中 心 の 契 約 通 貨 建 てでみた 場 合 価 格 が 十 分 低 下 しておらず 企 業 が 輸 出 数 量 の 増 加 よりも 利 益 率 の 拡 大 を 重 視 したとの 指 摘 もある しかし 現 地 通 貨 建 てに 換 算 するため 円 建 て 輸 出 物 価 に 名 目 実 効 為 替 レートを 乗 じると 過 去 の 円 安 局 面 と 遜 色 なく 低 下 している( 図 表 1-3) ここで 輸 出 のトレンド 線 を 引 き ここからの 乖 離 をみると 今 回 の 円 安 局 面 では 実 績 がトレンド 線 の 下 振 れから 上 振 れに 転 じており 現 地 通 貨 建 ての 輸 出 価 格 低 下 による 輸 出 数 量 の 押 し 上 げ 効 果 が 生 じ た 可 能 性 がある ただし 輸 出 が 減 少 トレンドとなったため その 効 果 は 実 績 では 相 殺 されている すなわち 輸 出 減 少 の 要 因 は 世 界 経 済 がリーマンショック 後 の 落 ち 込 みから 回 復 したにも 関 わらず 日 本 の 輸 出 トレンドが 減 少 に 転 じたことに 求 めることが 適 当 と 考 えられる( 図 表 1-4) 本 稿 では 日 本 の 輸 出 の 弱 さの 背 景 として 指 摘 されている 要 因 のうち トレンドが 減 少 傾 向 となった 背 景 として 考 えられる 構 造 的 要 因 に 注 目 し 非 価 格 競 争 力 の 低 下 と 製 造 業 の 海 外 生 産 シフト について 検 証 を 行 う( 図 表 1-5) 図 表 1-1 (21 年 =1) 12Q3 15Q4 16 6 8 輸 出 数 量 指 数 < 網 掛 け 部 分 は 円 安 局 面 > 4 6 199 91 92 93 94 95 96 97 98 99 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 15 ( 備 考 )1. 財 務 省 日 本 銀 行 2. 季 節 調 整 値 ( 輸 出 数 量 は 日 本 政 策 投 資 銀 行 試 算 実 質 実 効 為 替 レートは 日 本 銀 行 試 算 ) ( 四 半 期 ) 2 1-1 -2 図 表 1-2 ( 前 年 比 %) 3 図 表 1-4 (21 年 =1) 95Q2 14 98Q2 12 トレンド 線 1 8 6 4 実 績 -トレンド 線 2 ( 右 目 盛 ) < 網 掛 け 部 分 は 円 安 局 面 > -2 円 安 世 界 の 輸 出 と 日 本 の 輸 出 日 本 の 輸 出 -3 2 2 4 6 8 1 12 14 ( 暦 年 ) ( 備 考 )1.IMF 日 本 銀 行 2. 実 質 ベース 3.DBJ Monthly Overview(215 年 12 月 号 ) 輸 出 数 量 指 数 のトレンド 5Q1 7Q2 199 95 5 1 15 ( 四 半 期 ) ( 備 考 )1. 財 務 省 日 本 銀 行 2. 季 節 調 整 値 (DBJ 試 算 ) 3.トレンド 線 はHodrick-Prescottフィルターにより 平 滑 化 輸 出 数 量 指 数 と 実 質 実 効 為 替 レート 世 界 の 輸 出 (pt) 12Q3 15 実 績 15Q4 1 5-5 -1-15 5Q1 7Q2 円 安 図 表 1-3 (21 年 =1) 95Q2 12 98Q2 11 1 世 界 共 通 日 本 特 有 図 表 1-5 現 地 通 貨 換 算 した 輸 出 物 価 海 外 設 備 投 資 需 要 の 弱 さ 現 地 価 格 の 据 え 置 き ( 数 量 の 増 加 よりも 利 益 率 の 拡 大 を 重 視 ) 1 非 価 格 競 争 力 の 低 下 2 製 造 業 の 海 外 生 産 シフト 5Q1 7Q2 日 本 の 輸 出 の 弱 さの 背 景 円 安 12Q3 15Q4-11.1% 9 (-25.%) -9.7% -17.7% < 網 掛 け 部 分 は 円 安 局 面 > (-17.2%) (-28.9%) 8 199 95 5 1( 四 半 期 ) 15 ( 備 考 )1. 日 本 銀 行 2. 円 建 て 輸 出 物 価 に 名 目 実 効 為 替 レートを かけて 算 出 3.カッコ 内 は 為 替 レートの 変 化 率 4.DBJ Monthly Overview(214 年 6 月 号 ) 14 12 1 妥 当 性 日 本 は 世 界 に 比 して 弱 い 過 去 と 遜 色 ない 引 き 下 げ 本 稿 で 検 証
今 月 のトピックス No.251-2(216 年 3 月 17 日 ) 2. 日 本 は 機 械 類 輸 送 用 機 器 類 に 比 較 優 位 性 日 本 の 輸 出 構 成 比 の 約 9 割 を 占 める 工 業 関 連 製 品 (5~8 類 )を 対 象 に RCA( 顕 示 比 較 優 位 ) 指 数 による 比 較 を 行 う( 図 表 2-1) RCA 指 数 は 比 較 優 位 が 現 実 の 貿 易 構 造 に 反 映 されると 仮 定 し 輸 出 に 占 める 構 成 比 の 高 さから 比 較 優 位 の 程 度 を 測 定 するものである 世 界 平 均 が1となり 数 値 が 高 い ほど より 比 較 優 位 性 があることを 示 す なお RCA 指 数 は 国 内 の 産 業 間 での 比 較 優 位 をみるもの であり 他 国 の 産 業 と 比 較 しての 優 位 性 ( 絶 対 優 位 )を 意 味 するものではないことには 注 意 が 必 要 で ある 図 表 2-2により 業 種 別 にみると 日 本 のRCA 指 数 が 高 い 分 類 は 輸 出 の 約 6%を 占 める 7. 機 械 類 及 び 輸 送 用 機 器 類 である 従 来 から 他 の 品 目 よりもRCA 指 数 は 高 く かつ 上 昇 しており 比 較 優 位 性 があり その 傾 向 も 強 まっている また 日 本 と 同 様 の 工 業 国 であるドイツでは 機 械 類 輸 送 用 機 器 類 と 化 学 工 業 製 品 のRCA 指 数 が 同 程 度 高 くなっており 比 較 優 位 が 認 められる ここで 注 目 したいのは アジア 新 興 国 の 台 頭 である 中 国 では 7. 機 械 類 及 び 輸 送 用 機 械 NIEs ASEANでは 5. 化 学 工 業 生 産 品 のRCA 指 数 の 上 昇 が 目 立 っており アジア 新 興 国 が 先 進 国 が 得 意 としていた 工 業 分 野 においても 比 較 優 位 を 高 めるような 競 争 力 を 備 えてきたことを 示 している 図 表 2-1 標 準 国 際 貿 易 商 品 分 類 (SITC)と 日 本 の 輸 出 構 成 (214 年 ) 類 内 容 構 成 比 食 料 品 及 び 動 物.6% 1 飲 料 及 びたばこ.1% 2 食 用 に 適 しない 原 材 料 ( 鉱 物 性 燃 料 を 除 く) 1.6% 3 鉱 物 性 燃 料 潤 滑 油 等 2.4% 4 動 物 性 又 は 植 物 性 の 加 工 油 脂 等.% ( 備 考 ) 国 連 類 内 容 構 成 比 5 化 学 工 業 生 産 品 1.% 6 原 材 料 別 製 品 12.8% 7 機 械 類 及 び 輸 送 用 機 器 類 58.2% 8 雑 製 品 8.4% 9 特 殊 取 扱 品 5.9% 5~8 類 の 合 計 89.4% 図 表 2-2 RCA( 顕 示 比 較 優 位 ) 指 数 ( 指 数 ) 2. 1.8 日 本 7. 機 械 類 及 び 輸 送 用 機 器 類 ( 指 数 ) 1.4 米 国 1.6 1.4 1. 6. 原 材 料 別 製 品 1..8.8 5. 化 学 工 業 生 産 品.6 8. 雑 製 品.6 2~4 年 21~14 年 2~4 年 21~14 年 ( 指 数 ) ドイツ 1.6 1.4 1..8.6 2~4 年 21~14 年 ( 指 数 ) 中 国 ( 指 数 ) 3. 1.4 NIEs ASEAN RCA 指 数 の 定 義 2.4 1.8.6 1..8 RCA 指 数 = その 国 の 当 該 財 輸 出 額 その 国 の 総 輸 出 額 世 界 の 当 該 財 輸 出 額 世 界 の 総 輸 出 額. 2~4 年 21~14 年.6 2~4 年 21~14 年 ( 備 考 ) 国 連 Comtrade
今 月 のトピックス No.251- (216 年 3 月 17 日 ) 3. 輸 出 の 高 付 加 価 値 指 数 は 上 昇 グローバル 市 場 における 競 争 力 について 日 本 企 業 に 尋 ねたアンケート 調 査 では 7 割 以 上 の 企 業 がグ ローバル 市 場 において 平 均 以 上 の 競 争 力 を 有 するとしたが 現 状 で2 割 余 り 先 行 きについては14% の 企 業 が 競 争 力 低 下 を 回 答 した( 図 表 3-1) アジア 新 興 国 の 人 件 費 上 昇 により 日 本 の 輸 出 について の 価 格 競 争 力 はやや 劣 勢 を 挽 回 するとの 見 方 もある 中 新 興 国 の 技 術 水 準 の 向 上 等 を 背 景 とした 非 価 格 競 争 力 の 低 下 が 意 識 されている 可 能 性 も 考 えられる 非 価 格 競 争 力 は 品 質 やデザインといった 多 様 な 要 素 から 構 成 されるため これを 定 量 化 することは 容 易 ではない そこで 本 稿 では 輸 出 財 の 付 加 価 値 が 高 く 低 価 格 に 頼 らずに 競 争 力 を 維 持 している 状 態 を 非 価 格 競 争 力 がある 状 態 と 考 え 輸 出 の 高 付 加 価 値 化 に 注 目 して 議 論 を 進 める 高 付 加 価 値 化 は 価 格 の 一 部 に 反 映 される 21 年 以 降 の 輸 出 は 輸 出 価 格 の 上 昇 により 金 額 と 数 量 の 乖 離 が 拡 がっている これを 品 質 変 化 を 除 いた 物 価 指 標 を 用 いて 分 解 すると 円 安 等 の 影 響 による 単 純 な 価 格 上 昇 がある 一 方 高 付 加 価 値 化 による 実 質 輸 出 押 し 上 げの 効 果 が 小 さくない( 図 表 3-2) 同 じ 考 え 方 により 2 年 以 降 の 高 付 加 価 値 化 指 数 を 計 算 すると 傾 向 的 な 上 昇 が 確 認 できる( 図 表 3-3) ただし こうした 輸 出 全 体 の 高 付 加 価 値 化 は 個 々の 品 目 ベースでの 高 付 加 価 値 化 だけでなく 構 成 品 目 の 変 化 によっても 生 じる 生 産 拠 点 の 海 外 移 転 により 海 外 生 産 比 率 は 傾 向 的 に 上 昇 しているが ( 図 表 3-4) 例 えば 円 高 等 によって 低 付 加 価 値 品 に 偏 って 輸 出 が 減 少 した 場 合 輸 出 に 占 める 高 付 加 価 値 品 の 割 合 が 高 まり 高 付 加 価 値 化 指 数 は 上 昇 する ただし このとき 高 付 加 価 値 品 が 一 段 と 高 付 加 価 値 化 したとは 限 らず 経 済 に 前 向 きな 変 化 が 生 じたと 評 価 することはできない 図 表 3-1 グローバル 市 場 における 競 争 力 に 関 する 日 本 企 業 の 認 識 競 争 力 の 現 状 評 価 (n=212) 非 常 に 高 い 競 争 力 を 有 している.5% 高 い 競 争 力 を 有 している 28.8% 平 均 的 な 競 争 力 を 有 している 44.8% 競 争 力 が 弱 くなっている 22.6% (21 年 =1) 12 115 11 15 1 図 表 3-2 輸 出 金 額 と 輸 出 数 量 の 乖 離 ( 要 因 分 解 ) 円 安 等 による 輸 出 価 格 上 昇 輸 出 金 額 実 質 輸 出 競 争 力 を 失 っている 3.3% 3 年 後 の 競 争 力 の 見 通 し(n=29) 95 9 輸 出 数 量 現 状 より 高 い 競 争 力 を 有 している 46.4% 85 高 付 加 価 値 化 現 状 と 同 様 の 競 争 力 を 有 している 39.2% 現 状 より 競 争 力 が 低 くなっている 恐 れがある 14.4% ( 備 考 ) 日 本 経 済 団 体 連 合 会 214 年 度 日 本 の 国 際 競 争 力 調 査 8 21 11 12 13 14 15 ( 備 考 )1. 財 務 省 内 閣 府 2. 財 のみ(サービスを 除 く) ( 暦 年 ) 3. 実 質 輸 出 は 輸 出 金 額 を 輸 出 デフレーターで 実 質 化 16 図 表 3-3 高 付 加 価 値 化 指 数 (2 年 第 1 四 半 期 =1) 高 付 加 価 値 化 指 数 ( 輸 出 価 格 指 数 / 輸 出 物 価 指 数 ) 25 図 表 3-4 海 外 生 産 比 率 14 2 12 高 付 加 価 値 化 1 15 8 2 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 15 ( 四 半 期 ) ( 備 考 )1. 財 務 省 日 本 銀 行 2. 季 節 調 整 値 (DBJ 試 算 ) 1 2 2 4 6 8 1 12 14 ( 年 度 ) ( 備 考 )1. 内 閣 府 2.15 年 度 は 実 績 見 込 み 3. 海 外 生 産 比 率 = 海 外 現 地 生 産 高 /( 国 内 生 産 高 + 海 外 生 産 高 )
今 月 のトピックス No.251- (216 年 3 月 17 日 ) 4. 高 付 加 価 値 品 輸 出 におけるアジア 新 興 国 の 台 頭 中 国 やNIEs ASEANといったアジア 新 興 国 の 台 頭 など 輸 出 における 勢 力 図 がどう 変 わってきたかをみ るために 輸 出 財 を 付 加 価 値 水 準 別 に 分 類 し 各 水 準 別 に 各 国 地 域 の 輸 出 が 世 界 総 輸 出 に 占 めるシェ アを 試 算 し 1 年 ごとにその 動 きをみる( 図 表 4-1 4-2) 試 算 の 結 果 が 図 表 4-3であり 横 軸 が 付 加 価 値 水 準 を 示 し V1からV5へいくほど 付 加 価 値 が 高 い 財 となる 日 本 は 世 界 総 輸 出 に 占 めるシェアが5 段 階 すべてで 趨 勢 的 に 低 下 している 次 に 勢 力 図 の 変 化 をみると 中 国 やNIEs ASEANといったアジア 新 興 国 が V1やV2の 低 付 加 価 値 品 でのシェアを 高 めるとともに 199 年 代 前 半 にはほとんど 輸 出 していなかった 高 付 加 価 値 品 (V4 V 5)のシェアを 徐 々に 高 め 日 本 に 迫 っていることがわかる 一 方 先 進 国 では アジア 新 興 国 の 台 頭 を 受 ける 中 で 低 付 加 価 値 品 を 中 心 にシェア 傾 向 的 に 低 下 しており 高 付 加 価 値 分 野 では 先 進 国 アジア 新 興 国 の 輸 出 シェアが 均 一 化 してきたことが 確 認 できる ただし その 中 でも 日 本 は 米 国 や ドイツに 比 べて 中 低 付 加 価 値 分 野 での 低 下 幅 が 大 きい 図 表 3-3で 確 認 したように 日 本 の 高 付 加 価 値 化 指 数 が 上 昇 している 背 景 には 品 目 ベースでの 高 付 加 価 値 化 と 構 成 比 の 変 化 が 考 えられるが 低 付 加 価 値 品 において 大 きくシェアが 低 下 した 点 を 踏 まえる と 低 付 加 価 値 品 の 輸 出 減 少 による 構 成 比 の 変 化 による 影 響 は 相 応 に 大 きいと 考 えられる 図 表 4-1 付 加 価 値 水 準 別 分 類 手 順 図 表 4-2 品 目 例 手 順 概 要 付 加 価 値 水 準 品 目 1 SITC(rev.2)-5 桁 の 個 別 品 目 (i)ごとに ハイテク 先 進 国 の 輸 出 が 世 界 全 体 の 当 該 貿 易 にしめるシェアA(i)を 計 算 (21~14 年 ) V1 タンカー オートバイ V2 建 設 掘 削 機 械 向 け 部 品 精 錬 銅 低 2 3 世 界 銀 行 の 分 類 を 用 いてローテク 低 開 発 31ヵ 国 を 定 義 し 同 様 にB(i)を 用 いる 比 較 優 位 の 考 え 方 に 基 づき 付 加 価 値 水 準 Z(i)を 定 義 Z(i)=A(i)/ハイテク 先 進 国 のシェア -B(i)/ローテク 低 開 発 国 のシェア Z(i)が 高 いほど 付 加 価 値 が 高 いことを 意 味 する 4 Z(i)の 値 順 に 財 を 並 べ 輸 出 額 ベースで5 段 階 に 分 類 ( 備 考 )1.ハイテク 先 進 国 は IMD-World Competitiveness Yearbook 215を 参 考 に 米 国 日 本 ドイツ スイス 韓 国 で 定 義 2. 堀 雅 博 (29) アジアの 発 展 と 日 本 経 済 外 需 動 向 為 替 レートと 日 本 の 競 争 力 内 閣 府 経 済 社 会 総 合 研 究 所 に 基 づく V3 集 積 回 路 ダイオード V4 V5 電 気 回 路 部 品 (スイッチ 継 電 器 ) パワーショベル(エキスカベーター) 電 気 コンデンサー 乗 用 車 ( 除 くバス) 光 学 機 器 関 連 (レーザー レンズ 等 ) 自 動 車 等 向 け 内 燃 機 関 の 動 力 部 品 ( 備 考 )1. 国 連 Comtrade 2. 各 品 目 は 21~14 年 の 輸 出 額 上 位 1 品 目 より 付 加 価 値 高 6 4 2 図 表 4-3 世 界 総 輸 出 に 占 める 各 国 地 域 シェア( 付 加 価 値 水 準 別 ) 1199~94 年 22~4 年 321~14 年 (2 年 前 ) (1 年 前 ) ( 現 在 ) 6 6 47 45 43 48 46 53 52 55 55 54 52 5.8 8.5 58 17.5 59 9.6 56 58 7.5 18.2 8.1 6.7 8.8 8.9 12.6 11.7 4 8.7 16.7 4 8.1 1.6 12.8 13.6 5.1 11. 15.2 12.4 12.7 9.5 15.9 1.5 11.6 12.3 1.4 13.4 11.3 14.5 12.7 8.5 9.1 2 8.8 1.8 1.9 15.1 2 7.6 5.2 8.5 2. 5.9 1.6 2.5 28. 16.2 6.1 5.4 2.5 3.7 1.4 1.1 1.6 5.5 3.2 15.9 11.7 7.6 1.6 11.8 15.3 9.8 5.2 8.9 8.6 3.9 1.9 4.7 5.3 6.6 V1 V2 V3 V4 V5 V1 V2 V3 V4 V5 V1 V2 V3 V4 V5 低 付 加 価 値 高 低 付 加 価 値 高 低 付 加 価 値 高 その 他 ドイツ 米 国 NIEs ASEAN 中 国 日 本 ( 備 考 )1. 国 連 Comtrade 2.6% 以 上 の 部 分 は その 他
今 月 のトピックス No.251- (216 年 3 月 17 日 ) 5. 輸 出 の 伸 び 悩 みの 背 景 には 海 外 生 産 シフトの 進 行 続 いて 同 じ 付 加 価 値 水 準 別 に 輸 出 金 額 の 時 系 列 変 化 をみると 日 本 の 輸 出 は 堅 調 に 拡 大 を 続 ける 他 の 国 地 域 に 大 きく 差 をつけられている 低 付 加 価 値 品 がほとんど 増 加 していないほか 得 意 とする 高 付 加 価 値 品 の 増 加 ペースも 同 じ 先 進 国 である 米 国 やドイツを 大 きく 下 回 る この 背 景 を 探 るために 国 地 域 間 の 貿 易 額 の 変 化 をみると 全 ての 国 地 域 が 世 界 の 工 場 として 急 速 に 経 済 発 展 を 遂 げた 中 国 への 輸 出 を 最 も 伸 ばしている( 図 表 5-2) また それに 次 ぐのがNIEs ASEAN 向 けとなっており アジア 向 けの 貿 易 が 各 国 のエンジンになったことがわかる 日 本 も 同 様 にアジア 向 け 輸 出 が 牽 引 役 となっているものの その 伸 びは 他 国 に 比 して 低 い この 一 因 が 製 造 業 の 海 外 生 産 シフトである 従 来 から 海 外 生 産 シフトは 進 行 していたものの リーマン ショック 以 降 の 急 激 な 円 高 により 価 格 競 争 力 が 低 下 したことが 拍 車 をかけた 仮 に 現 地 法 人 の 売 上 高 を 加 算 して 輸 出 の 伸 びを 試 算 すると 他 国 に 比 べて 遜 色 はない リーマンショック 後 に 輸 出 のトレンドが 減 少 傾 向 に 転 じた 背 景 には 海 外 生 産 シフトの 進 行 がある 可 能 性 が 高 い また 高 付 加 価 値 化 についても 見 かけ 上 は 高 付 加 価 値 化 が 続 いているものの 低 付 加 価 値 品 の 海 外 生 産 シフトによる 構 成 比 要 因 の 影 響 があり 高 付 加 価 値 品 の 輸 出 の 伸 びが 弱 いことから アジア 新 興 国 が 台 頭 する 中 で 非 価 格 競 争 力 を 保 ちきれていないと 考 えられる 2, ( 億 ト ル) 図 表 5-1 世 界 各 国 の 輸 出 額 ( 付 加 価 値 水 準 別 ) ( 左 :199~1994 年 の 平 均 中 央 :2~24 年 の 平 均 右 :21~214 年 の 平 均 ) V5 高 15, 1, V4 V3 付 加 価 値 5, V2 日 本 中 国 NIEs ASEAN 米 国 ドイツ ( 備 考 )1. 国 連 Comtrade 2. 付 加 価 値 水 準 指 数 は 付 加 価 値 (5 段 階 ) 構 成 比 として 作 成 輸 出 財 が 全 て 最 も 付 加 価 値 の 高 いV5であれば 付 加 価 値 水 準 指 数 は5 全 てV1であれば1となる V1 低 (1 億 ドル) 214 年 の 輸 出 額 仕 向 地 日 本 中 国 米 国 ドイツ NIEs ASEAN 日 本 126 131 19 154 図 表 5-2 日 米 欧 アジアの 貿 易 (214 年 ) 日 本 25 年 からの 増 減 率 仕 向 地 日 本 中 国 米 国 ドイツ +58 +196-4 +2 現 地 法 人 の 売 上 高 を 加 算 した 場 合 NIEs ASEAN +27 +67 輸 出 主 体 中 国 149 397 73 356 米 国 67 124 49 122 輸 出 主 体 中 国 +78 +143 +124 +31 米 国 +21 +196 +44 +58 ドイツ 23 99 128 5 ドイツ +37 +277 +48 +15 NIEs ASEAN 148 291 192 34 NIEs ASEAN +56 +155 +44 +3 ( 増 減 率 :1 位 :2 位 ) ( 備 考 )1. 国 連 Comtrade 経 済 産 業 省 日 本 銀 行 2. 現 地 法 人 売 り 上 げ 高 は213 年 度 日 本 からの 仕 入 額 は 除 く
今 月 のトピックス No.251- (216 年 3 月 17 日 ) 6. 一 部 にとどまる 国 内 回 帰 の 動 き 日 本 の 輸 出 に 大 きな 影 響 を 及 ぼす 海 外 生 産 シフトではあるが 13 年 に 円 安 へ 転 じてからは 海 外 生 産 比 率 の 上 昇 ペースがやや 鈍 化 した( 図 表 3-4) 近 年 中 国 などアジア 新 興 国 における 人 件 費 の 上 昇 が 著 しいことに 加 え 円 安 は 国 内 生 産 のコスト 競 争 力 を 高 めた ここで 注 目 されたのが 海 外 生 産 を 国 内 へ 移 管 する 国 内 回 帰 である 果 たして 国 内 回 帰 は 起 こったのだろうか 国 内 回 帰 とは 円 安 を 引 き 金 に 国 内 海 外 の 生 産 体 制 のバランスを 変 更 し 国 内 生 産 能 力 を 強 化 する 企 業 行 動 とする このうち 1 海 外 生 産 の 国 内 移 管 に 本 来 出 て 行 くはずが 出 て 行 かなかった2 海 外 シフトの 先 送 りを 加 えて 狭 義 の 国 内 回 帰 とする また 企 業 は 常 に 国 内 か 海 外 かを 選 択 している という 認 識 のもとで 3 国 内 での 能 力 増 強 を 加 えたものを 広 義 の 国 内 回 帰 とする( 図 表 6-1) 15 年 6 月 にDBJが 実 施 したアンケート 調 査 では 海 外 生 産 の 一 部 を 国 内 に 移 管 と 海 外 移 管 を 見 送 り 国 内 生 産 継 続 を 合 わせた 狭 義 の 国 内 回 帰 を14 年 度 に 既 に 実 施 した 企 業 は 約 7%にとどまっ た また 15 年 度 の 実 施 予 定 を 含 め この2 年 間 で 狭 義 の 国 内 回 帰 を 実 施 する 企 業 は 約 1%となる 加 えて 海 外 移 管 を 見 送 り 国 内 生 産 継 続 は 海 外 向 け( 現 地 生 産 を 見 送 り 輸 出 で 対 応 を 続 ける 例 ) が 多 く 海 外 生 産 の 一 部 を 国 内 に 移 管 する 企 業 は 国 内 向 け( 逆 輸 入 品 を 国 内 生 産 に 切 り 替 える 例 )が 多 い 先 行 きの 市 場 拡 大 がもっぱら 海 外 で 見 込 まれる 以 上 海 外 からの 生 産 移 管 は 限 定 的 であ り 円 高 などの 環 境 変 化 で 一 旦 見 送 られた 海 外 移 管 の 動 きが 再 燃 する 可 能 性 が 高 いと 考 えられる ( 図 表 6-2) このように 国 内 回 帰 が 一 部 にとどまるのは 国 内 回 帰 に 伴 う 収 益 改 善 のハードルが 高 いためと 考 え られる 海 外 拠 点 縮 小 や 国 内 拠 点 整 備 はコストを 伴 うことに 加 えて 216 年 に 入 ってやや 円 高 に 振 れ るなど 円 安 の 持 続 性 への 懸 念 が 残 る また 国 内 で 広 がる 人 手 不 足 感 も 汎 用 品 への 量 産 化 を 行 う 企 業 の 国 内 回 帰 には 大 きな 障 害 となっているとみられる 図 表 6-1 国 内 回 帰 の 概 念 整 理 国 内 の 稼 働 率 を 上 げる ( 生 産 能 力 に 変 化 はない) 国 内 回 帰 ( 国 内 海 外 の 生 産 能 力 バランスを 変 更 ) 狭 義 の 国 内 回 帰 ( 海 外 から 国 内 への 生 産 移 管 ) 1 海 外 生 産 の 一 部 (or 全 部 )をやめて 国 内 へ 移 管 ( 国 内 の 遊 休 設 備 を 再 稼 働 国 内 ライン 新 設 など) 2 海 外 シフトの 先 送 り ( 本 来 海 外 へ 出 て 行 くはずだった 生 産 能 力 が 国 内 にとどまる) 広 義 の 国 内 回 帰 ( 海 外 からの 生 産 移 管 を 伴 わないものも 含 む) 3 国 内 での 能 力 増 強 を 選 択 ( 企 業 は 常 に 国 内 か 海 外 かの 選 択 に 直 面 ) ( 備 考 )1. 日 本 政 策 投 資 銀 行 により 作 成 2.DBJ Monthly Overview(215 年 9 月 号 ) 国 内 回 帰 の 有 無 図 表 6-2 狭 義 の 国 内 回 帰 (DBJアンケート) 12 1 8 ( 有 効 回 答 者 数 比 %) 1. 2.8 1と2の 両 方 2 海 外 に 生 産 を 移 管 予 定 だったが 製 品 の 国 内 生 産 を 継 続 製 品 の 仕 向 地 25 25 5 国 内 向 け 海 外 向 け 同 程 度 貿 易 への 影 響 輸 入 の 増 加 が 先 送 り 輸 出 の 減 少 が 先 送 り 6 4 2.8.5 2.3 1.8 3.8 4.3 6.1 1 海 外 生 産 の 一 部 を 国 内 に 移 管 製 品 の 仕 向 地 13. 34.8 52.2 国 内 向 け 海 外 向 け 貿 易 への 影 響 輸 入 の 減 少 輸 出 の 増 加 14 年 度 実 績 15 年 度 計 画 合 計 同 程 度 ( 備 考 )1. 日 本 政 策 投 資 銀 行 2. DBJ Monthly Overview(215 年 9 月 号 )
今 月 のトピックス No.251- (216 年 3 月 17 日 ) 7. 品 目 ベースでの 高 付 加 価 値 化 が 重 要 海 外 生 産 シフトの 流 れは 円 安 の 進 行 によってやや 鈍 化 したとはいえ 不 透 明 な 為 替 の 将 来 見 通 し 生 産 拠 点 の 移 転 コスト 国 内 で 広 がる 人 手 不 足 感 が 逆 風 となり 企 業 が 国 内 回 帰 を 選 択 する 流 れは 一 部 にとどまるため 海 外 生 産 シフトによる 輸 出 への 下 押 し 圧 力 は 今 後 も 継 続 するとみられる 輸 出 全 体 でみた 高 付 加 価 値 化 ( 価 格 上 昇 )も 低 付 加 価 値 品 の 海 外 生 産 シフトによる 側 面 が 強 いと 推 察 される ただし 可 能 な 限 り 細 かい 品 目 でみた 場 合 でも 世 界 の 輸 出 シェアの 上 位 に 位 置 している 品 目 等 では 価 格 が 世 界 の 平 均 以 上 に 上 昇 し かつ 他 の 上 位 国 とも 遜 色 がないため 品 目 ベースでの 高 付 加 価 値 化 も 一 部 では 進 行 している アジア 新 興 国 との 競 争 に 打 ち 勝 つには このような 品 目 ベー スでの 高 付 加 価 値 化 をさらに 進 めることが 重 要 となる( 図 表 7-1) また 海 外 生 産 シフトによって 日 本 の 輸 出 額 は 減 少 しているが より 広 く 経 常 収 支 の 視 点 からみれば 現 地 法 人 からの 所 得 受 け 取 り 等 に 姿 を 変 えたことになる 213 年 以 降 円 安 進 行 による 円 換 算 時 の 押 し 上 げも 手 伝 って 所 得 収 支 の 黒 字 幅 は 拡 大 し 15 年 の 経 常 黒 字 は リーマンショック 前 の 年 率 2 兆 円 近 い 水 準 に 復 している( 図 表 7-2) 輸 出 だけでなく 高 付 加 価 値 分 野 への 広 がりが 見 込 まれる 海 外 事 業 においても 高 付 加 価 値 化 を 進 めて 収 益 力 を 高 め 海 外 で 稼 ぐ 力 を 総 合 的 に 高 めることも 重 要 とな る( 図 表 7-3) ( 輸 出 価 格 25 年 の 世 界 平 均 =1) 4 35 3 25 2 15 1 5-5 図 表 7-1 日 本 が 高 付 加 価 値 化 を 進 める 品 目 例 ( 当 該 品 目 世 界 輸 出 シェア 上 位 3ヵ 国 V4 V5) 3 位 韓 国 25 214 25 214 25 214 25 214 機 械 式 ショベル 光 学 機 器 部 品 2 位 米 国 ( 備 考 )1. 国 連 Comtrade 2.グラフ 中 の 順 位 は214 年 時 点 3 位 香 港 電 気 コンデンサー 世 界 平 均 日 本 3 位 米 国 2 位 米 国 1 位 中 国 1 位 ドイツ 3 位 中 国 世 界 輸 出 シェアの 日 本 の 順 位 1 位 1 位 2 位 1 位 1 位 2 位 2 位 2 位 自 動 車 等 の 内 燃 機 関 向 け 動 力 部 品 図 表 7-2 経 常 収 支 ( 兆 円 ) 4 資 本 移 転 等 収 支 第 二 次 所 得 収 支 第 一 次 所 得 収 支 サービス 収 支 3 貿 易 収 支 経 常 収 支 2 1-1 -2 2 2 4 6 8 1 12 14 ( 備 考 ) 日 本 銀 行 ( 暦 年 ) 海 外 生 産 シフト 進 行 前 日 本 日 本 企 業 日 本 企 業 輸 出 を 通 じたつながり 図 表 7-3 日 本 と 海 外 の 結 びつきの 変 化 日 本 海 外 生 産 シフトの 進 行 輸 出 額 の 伸 びは 小 幅 にとどまる 構 成 比 要 因 による 高 付 加 価 値 化 現 在 今 後 の 強 化 が 重 要 現 地 法 人 からの 所 得 受 け 取 り 等 より 高 付 加 価 値 な 財 を 輸 出 アジア 新 興 国 欧 米 ほか アジア 新 興 国 日 本 企 業 経 済 成 長 内 製 化 高 付 加 価 値 品 の 輸 出 も 可 能 に 日 本 企 業 欧 米 ほか 高 付 加 価 値 品 は 先 進 国 が 中 心 ( 備 考 ) 日 本 政 策 投 資 銀 行 により 作 成 アジア 新 興 国 が 高 付 加 価 値 品 に 参 入 産 業 調 査 部 経 済 調 査 室 石 川 尊 規
今 月 のトピックス No.251-8(216 年 3 月 17 日 ) 本 資 料 は 著 作 物 であり 著 作 権 法 に 基 づき 保 護 されています 著 作 権 法 の 定 めに 従 い 引 用 す る 際 は 必 ず 出 所 : 日 本 政 策 投 資 銀 行 と 明 記 して 下 さい 本 資 料 の 全 文 または 一 部 を 転 載 複 製 する 際 は 著 作 権 者 の 許 諾 が 必 要 ですので 当 行 までご 連 絡 下 さい お 問 い 合 わせ 先 株 式 会 社 日 本 政 策 投 資 銀 行 産 業 調 査 部 Tel: 3-3244-184 E-mail: report@dbj.jp