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Transcription:

第 7 章 欧 州 連 合 (EU)の 対 域 外 諸 国 との FTA と 日 EUFTA の 展 望 渡 邊 頼 純 1.EC/EU の 深 化 と 拡 大 EU( 欧 州 連 合 )は 地 域 経 済 統 合 の 最 も 進 化 した 形 態 と 言 える 1952 年 の ECSC( 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 )の 創 設 に 始 まり 1958 年 に 誕 生 した EEC( 欧 州 経 済 共 同 体 )は 関 税 同 盟 と してスタートし 経 済 統 合 のモデルを 世 界 に 提 示 した その 後 1987 年 に 発 効 した 欧 州 単 一 議 定 書 (Single European Act)を 法 的 根 拠 として 1993 年 からは 単 一 市 場 (the Single Market)を 構 築 モノの 貿 易 における 関 税 撤 廃 のみならず 基 準 認 証 の 調 和 や 貿 易 に 対 す る 技 術 的 障 壁 (Technical Barriers to Trade)の 除 去 サービス 貿 易 の 促 進 を 奨 励 した 1993 年 にマーストリヒト 条 約 が 発 効 すると EC( 欧 州 共 同 体 )は 3 本 の 柱 構 造 で EU に 変 容 するプロセスを 開 始 する 3 本 の 柱 とは 1 経 済 通 貨 同 盟 (Economic and Monetary Union=EMU ) 2 共 通 外 交 安 全 保 障 政 策 (Common Foreign and Security Policy=CFSP) 3 司 法 内 務 協 力 (Cooperation in Justice and Home Affairs)の 3 要 素 である この 中 でマーストリヒト 条 約 においては 1の EMU のみが 共 同 体 事 項 と 規 定 され 単 一 市 場 に 加 えて 通 貨 統 合 への 道 筋 も 盛 り 込 まれた その 後 のアムステルダム 条 約 並 びにニース 条 約 は 前 述 の2と3について 共 同 体 事 項 の 範 囲 を 徐 々に 拡 大 し 改 革 条 約 と 呼 ばれる リスボン 条 約 の 発 効 (2009 年 12 月 )を もってこの 3 本 の 柱 構 造 は 消 滅 し 正 式 に EU が 誕 生 することになる 現 在 の EU は 累 次 の 拡 大 を 経 て 1 27 か 国 人 口 約 5 億 人 の 経 済 主 体 となっており GDP の 合 計 は 12.6 兆 ユーロ(2011 年 )で これは 日 本 の 約 3 倍 米 国 の 約 1.2 倍 に 相 当 する 一 人 当 たり GDP は 2.5 万 ユーロ(2011 年 EUROSTAT)でこれは 世 界 的 に 見 ても 最 も 高 い 水 準 にある このように EU はこれまで 深 化 と 拡 大 の 両 局 面 で 地 域 統 合 を 進 めてきたが そ のプロセスの 中 で 域 外 国 との 自 由 貿 易 協 定 (Free Trade Agreement=FTA)は 常 に 重 要 な 役 割 を 演 じてきた 以 下 では EU(ないしは EC)の 対 域 外 FTA 政 策 の 展 開 を 見 ることとする 2.EC/EU の FTA の 類 型 と 戦 略 EC/EU は FTA をどのように 位 置 づけてきたのだろうか 過 去 の 経 緯 を 振 り 返 るとそこに は 以 下 の 3 つのパターンがあることに 気 付 く 1 つは 拡 大 ないしは 新 規 加 盟 を 念 頭 に 置 -119-

いた 周 辺 諸 国 との FTA である これらは 通 常 連 合 条 約 (Association Agreement)と 呼 ば れる 域 外 国 との 国 際 協 定 をベースに 交 渉 締 結 され 新 規 加 盟 への 準 備 段 階 として 位 置 づけられることが 多 い 冷 戦 崩 壊 後 に EC と 中 東 欧 諸 国 との 間 で 締 結 された 欧 州 協 定 (Europe Agreement)もこの 連 合 条 約 のカテゴリーに 入 るもので 欧 州 協 定 の 要 素 の 1 つ として FTA が 規 定 されており これに 従 って 中 東 欧 諸 国 は 加 盟 候 補 国 としての 準 備 を 整 えていった 古 くは 1967 年 発 効 のトルコと EC との 連 合 条 約 もトルコの EC 加 盟 を 理 屈 上 は 想 定 したものであり トルコに EC 加 盟 の 可 能 性 を 提 示 しつつ トルコに 市 場 経 済 へ の 傾 斜 と 人 権 問 題 などでの 西 欧 化 (あるいは 近 代 化 )を 奨 励 する 形 になっている 2 また このカテゴリーの 中 には EFTA( 欧 州 自 由 貿 易 連 合 European Free Trade Association) 諸 国 との FTA も 加 えるべきであろう 早 くも 1973 年 にはスイスとリヒテンシュタイン(こ の 両 国 は 関 税 同 盟 を 形 成 )との FTA ならびにアイスランド ノルウェーとの FTA を 発 効 させている その 後 スイス 以 外 の EFTA 諸 国 とは 1994 年 に 欧 州 経 済 領 域 (European Economic Area=EEA)を 発 効 させている 近 年 には マケドニア(2004 年 ) クロアチア(2005 年 ) アルバニア(2006 年 ) モン テネグロ ボスニア ヘルツェゴビナ(2008 年 ) セルビア(2010 年 )とそれぞれ FTA を 発 効 させている 第 2 のカテゴリーは EU 加 盟 国 の 旧 植 民 地 や 海 外 領 土 との 関 係 強 化 の 手 段 としての FTA である この 中 には チュニジア(1998 年 発 効 ) 南 アフリカ モロッコ(2000 年 発 効 ) エジプト(2004 年 ) アルジェリア(2005 年 発 効 )など 2 国 間 FTA がある さらに 広 域 包 括 的 な 取 り 組 みとして アフリカ カリブ 海 太 平 洋 諸 国 (ACP 諸 国 )との 枠 組 みが 存 在 している これは 従 来 からの ロメ 協 定 (1975 年 以 来 随 時 改 訂 )を 継 承 し 2003 年 4 月 に 発 効 した コトヌ 協 定 ( 途 上 国 77 か 国 を 包 摂 する 経 済 協 力 の 枠 組 み)の 中 で 2020 年 までの FTA 設 立 を 目 指 している 同 協 定 では ACP 諸 国 を 6 つの 地 域 に 分 け 一 部 地 域 (カリブ 海 諸 国 )では 2008 年 にすでに 暫 定 発 効 している 3 従 来 は 2 国 間 ベース(いわゆるバイの FTA)で 行 っていた FTA をより 包 括 的 にいくつか のパートナー 国 を 束 ねて 交 渉 する 傾 向 も 見 られた それが 2006 年 に 開 始 された 欧 州 地 中 海 地 域 (いわゆる EUROMED) 構 想 で これはモロッコ エジプト チュニジア ヨル ダン イスラエル レバノンと 分 野 別 に 交 渉 している これらの 諸 国 のうち シリアとは 1977 年 に イスラエルとは 2000 年 に ヨルダンとは 2002 年 に レバノンとは 2003 年 に それぞれバイの FTA を 発 効 させている また GCC( 湾 岸 協 力 会 議 諸 国 )とはいったん 1990 年 に 交 渉 を 開 始 したものの 中 断 があり 2002 年 に 交 渉 を 再 開 している 第 3 のカテゴリーは 従 来 最 恵 国 待 遇 (Most-Favoured Nation=MFN)ベースで 貿 易 を 行 っ -120-

ていた 域 外 諸 国 特 に 地 理 的 に 遠 方 にある 域 外 国 との FTA である スペインやポルトガルを 介 して 歴 史 的 関 係 が 深 い 中 南 米 諸 国 を 見 ると メキシコとは 2000 年 に チリとは 2003 年 にそれぞれ FTA を 締 結 している また 南 米 南 部 共 同 市 場 (MERCOSUR)とはこれまで 何 度 か 交 渉 を 行 ってきては 頓 挫 していたが 2010 年 5 月 に 交 渉 再 開 したものの 再 び 停 滞 している アンデス 諸 国 とは 2008 年 6 月 に 交 渉 をいったん 休 止 し これら 諸 国 のうちコロンビアおよびペルーとの 個 別 交 渉 を 2009 年 1 月 にスタートさ せている また 中 米 共 同 市 場 とは 2010 年 5 月 に FTA 交 渉 を 終 了 している 北 米 地 域 では カナダとも 2009 年 10 月 に FTA 交 渉 を 開 始 し WTO のドーハ ラウン ド 交 渉 が 終 了 するまでは 着 手 しないとしていた OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構 ) 諸 国 との FTA に 乗 り 出 した 2013 年 に 入 ると アメ リ カ との 大 西 洋 横 断 貿 易 投 資 連 携 協 定 (Trans-Atlantic Trade and Investment Partnership Agreement=TTIP)について 事 前 協 議 を 開 始 するに 至 った さらにアジアに 目 を 転 じると ASEAN( 東 南 アジア 諸 国 連 合 )との FTA 交 渉 を 2007 年 に 開 始 したものの 2009 年 3 月 には 休 止 し シンガポールやマレーシア(2010 年 ) ベト ナム(2012 年 )との 個 別 交 渉 をそれぞれ 開 始 している インドとは 2007 年 6 月 に 交 渉 を 開 始 したが 交 渉 は 停 滞 している この 第 3 のカテゴリーで 最 も 成 功 裏 に 交 渉 が 終 結 した のが 韓 国 との FTA である 2011 年 7 月 に 暫 定 発 効 にこぎつけている 4 EU 韓 国 FTA は 物 品 貿 易 について EU が 最 大 5 年 間 で 韓 国 は 最 長 7 年 以 内 で 全 ての 鉱 工 業 品 の 関 税 を 撤 廃 することを 約 束 している また 非 関 税 障 壁 については 自 動 車 や 電 気 電 子 機 器 の 基 準 や 認 証 制 度 などで 合 意 している 具 体 的 には 自 動 車 分 野 では 韓 国 側 が 国 連 欧 州 経 済 委 員 会 (UNECE)の 基 準 を 受 け 入 れると 共 に 国 際 基 準 との 更 なる 調 和 を 図 ることとなった また この 分 野 では 迅 速 な 紛 争 解 決 手 続 きを 導 入 することも 合 意 されて いる 電 気 電 子 機 器 ならびに 家 電 分 野 では 第 三 者 認 証 や 試 験 によらない 供 給 者 適 合 宣 言 が 導 入 されることとなっている 農 業 分 野 では 韓 国 側 はコメの 除 外 を 勝 ち 取 り 貿 易 額 ベースで 91.3% 相 当 を 10 年 以 内 に 撤 廃 するほか 水 産 品 についても 84.4%を 10 年 以 内 に 撤 廃 する また EU 側 はコメ を 除 く 全 ての 農 産 品 水 産 品 について 5 年 以 内 に 関 税 撤 廃 するとしている これにより EU が 貿 易 額 ベースで 5 年 以 内 に 100%の 関 税 撤 廃 韓 国 側 も 10 年 以 内 で 99.5%の 関 税 撤 廃 と 双 方 向 で 極 めてレベルの 高 い 市 場 アクセスが 達 成 されたことになる 2013 年 4 月 に 交 渉 が 開 始 された 日 本 との FTA(ないしは EPA)もこのカテゴリーに 入 る ものである 以 下 ではこの 日 本 EU 間 の 取 り 組 みについてその 経 緯 を 見 ることとする -121-

3. 日 EUFTA の 位 置 付 け 2008 年 7 月 4 日 日 EU ビジネス ダイアローグ ラウンドテーブル(BDRT) 5 の 佐 々 木 元 (NEC 会 長 ) ジャコブス(UCB 会 長 ) 両 共 同 議 長 による BDRT 提 言 の 両 政 府 首 脳 へ の 手 交 式 が 総 理 官 邸 で 行 われた その 機 会 に 日 EU 経 済 統 合 協 定 (EIA)に 関 する 日 EU 各 タスクフォースの 大 川 三 千 男 ベルジュラン 両 座 長 から EIA についての 合 同 報 告 書 が 提 出 され 両 タスクフォースによる 作 業 について 報 告 が 行 われた こうして 約 1 年 に 及 ぶ EIA についての 検 討 プロセスはとりあえず 収 束 した そもそもの きっかけは 2007 年 6 月 にベルリンで 開 催 された BDRT でこの EIA についてその 実 現 可 能 性 について 調 査 研 究 するためにタスクフォースの 設 立 が 提 言 されたことにその 起 源 がある そもそも 何 故 EIA という 名 称 が 使 われることになったのか 自 由 貿 易 の 枠 組 みを 語 るときにより 一 般 的 な FTA あるいは 日 本 の FTA に 当 たる EPA という 表 現 が 使 われなかっ た 点 にまず 注 目 すべきだろう そこには EU 側 として 自 動 車 を 中 心 に 関 税 を 撤 廃 すること に 抵 抗 する 勢 力 が EU 域 内 に 存 在 し 日 本 の 自 動 車 輸 入 関 税 が 既 にゼロであったことから 10%の 対 外 共 通 関 税 を 輸 入 自 動 車 に 課 している EU としてはそう 易 々と 日 本 との FTA 交 渉 のテーブルに 着 けないとの 事 情 があった GATT 第 24 条 に 従 えば FTA 交 渉 は 実 質 的 に 全 ての 貿 易 (substantially all the trade)について 関 税 撤 廃 を 実 施 する 義 務 がある 自 動 車 だけではなく プラズマ テレビなどでも 日 本 側 は 関 税 ゼロであるのに 対 し EU 側 は 14% と 圧 倒 的 に 高 い 関 税 率 を 維 持 していた このため FTA 交 渉 をするとその 結 果 は 工 業 品 関 税 については 圧 倒 的 に 日 本 に 有 利 な 結 果 になることが 懸 念 されていたわけである そのよう な 背 景 から FTA や EPA といったより 一 般 的 な 表 現 を 避 け 経 済 統 合 協 定 というあまり 馴 染 みのない 表 現 をとることになったのである 以 下 では EIA 検 討 に 至 る 経 緯 について 概 観 する (1) 日 欧 経 済 関 係 の 展 開 : 摩 擦 から 協 調 へ 日 EU 関 係 は 1970 年 代 後 半 から 1990 年 代 初 頭 まで 激 しい 貿 易 摩 擦 を 経 験 した 1973 年 秋 の 石 油 ショックで 世 界 経 済 は 1974-75 年 に 戦 後 初 めてのマイナス 成 長 を 記 録 エネル ギー 供 給 サイドからの 締 め 付 けは 消 費 者 に 省 資 源 省 エネルギー 型 の 耐 久 消 費 財 への 志 向 を 促 した 時 代 は 重 厚 長 大 型 産 業 から 軽 薄 短 小 型 産 業 へのシフトを 求 め 欧 米 諸 国 でも 家 電 から 自 動 車 までエネルギー 効 率 の 優 れた 日 本 製 品 に 人 気 が 集 まるようになる その 結 果 日 本 側 の 大 幅 輸 出 超 過 米 国 や EU の 大 幅 対 日 輸 入 超 過 となり 経 済 問 題 は 政 治 問 題 化 し 貿 易 摩 擦 が 頻 発 した( 表 1 参 照 ) このような 対 立 の 歴 史 に 大 きな 転 換 点 となったのが 1991 年 7 月 にオランダのハーグで -122-

採 択 された 日 EC 共 同 宣 言 であった これは 日 EC 間 で 対 話 と 協 力 を 推 進 していくた めの 初 めての 包 括 的 な 枠 組 みを 提 供 するものであった その 10 年 後 2001 年 12 月 には 日 EU 協 力 のための 行 動 計 画 ( 以 下 行 動 計 画 )が 小 泉 首 相 とプロディ 欧 州 委 員 会 委 員 長 のもとで 採 択 され 2010 年 までの 10 年 間 を 日 欧 協 力 の 10 年 として 政 治 経 済 両 面 を 含 む 幅 広 い 分 野 での 協 力 と 対 話 を 促 進 させることが 合 意 された (2) 再 活 性 化 を 模 索 する 日 欧 関 係 こうして 日 EU 関 係 は 摩 擦 から 協 力 と 対 話 に 大 きく 転 換 し 通 商 紛 争 はすっか り 沈 静 化 する もちろん 通 商 を 巡 る 問 題 が 消 えてなくなったわけではないが 日 EU 間 バ イ 協 議 の 枠 組 みや WTO の 紛 争 解 決 メカニズムを 活 用 することにより 通 商 問 題 が 政 治 化 する 前 に 解 決 を 見 出 すことができるようになった このように 日 EU 関 係 は 成 熟 した 関 係 に 発 展 していったが 他 方 では 問 題 ないことが 問 題 と 言 われるような 状 況 も 生 じ た 貿 易 摩 擦 という 嵐 が 過 ぎ 去 ったあと やっと 順 風 満 帆 で 沖 に 出 たヨットがすっかり 風 の 吹 かない 凪 状 態 に 遭 遇 したようなイメージである 貿 易 不 均 衡 が 主 因 で 日 本 叩 き (ジャパン バッシング)が 横 行 した 1980 年 代 に 対 して 1990 年 代 は 日 本 問 題 (the Japan Problem)が 影 を 潜 めた 一 方 で 中 国 の 台 頭 が 世 界 の 注 目 を 集 めたことで 欧 米 の 関 心 は 日 本 通 過 (ジャパン パッシング)の 傾 向 を 強 めた その 後 バブル 崩 壊 後 の 長 期 的 景 気 後 退 で 日 本 恐 れるに 足 らず (ジャパン ナッシング)という 声 さえ 聞 こえるようになった このような 日 EU 関 係 を 再 活 性 化 しようとする 動 きがまさに 2001 年 12 月 の 行 動 計 画 であり 民 間 レベルの BDRT 発 足 であった そして 現 在 日 EU 双 方 は 2010 年 以 降 の 次 の 10 年 に 向 けて 新 たな 関 係 強 化 の 枠 組 みを 模 索 し 始 めている その 一 つが 本 節 で 取 り 上 げている EIA である では この EIA について 検 討 する 日 欧 双 方 のタスクフォースはどの ような 議 論 をしたのだろうか 4. 日 EUEIA を 巡 る 議 論 (1) 野 心 的 だった 日 本 側 2007 年 6 月 の BDRT の 提 言 を 受 けて 日 本 側 の 動 きは 速 かった 同 年 10 月 には 東 レ 顧 問 の 大 川 座 長 を 筆 頭 に 産 業 界 を 中 心 に 13 名 の 委 員 から 成 る 日 本 側 タスクフォースが 立 ち 上 がり 事 務 局 機 能 はジェトロによって 提 供 されることとなった 筆 者 もこのチームの 末 席 に 加 えて 頂 いたことはたいへん 光 栄 なことだったと 感 じている 日 本 側 は 2008 年 2 月 まで に 5 回 の 会 合 を 開 き 中 間 報 告 をまとめた 同 報 告 は EIA についてその 基 本 的 理 念 を 次 のように 謳 っている -123-

1 日 本 と EU は 自 由 民 主 主 義 法 の 支 配 市 場 経 済 など 共 通 の 価 値 観 を 有 して おり 共 に 開 放 的 な 国 際 経 済 システムの 維 持 強 化 に 貢 献 すべき 重 要 なパートナーで あって 双 方 の 産 業 界 は 大 きな 責 任 を 負 っている 2 日 本 が 欧 米 と また EU がアジアとの 経 済 連 携 強 化 を 打 ち 出 している 今 日 日 EU 経 済 関 係 を 世 界 経 済 への 貢 献 も 視 野 に 入 れつつ より 緊 密 な 次 の 段 階 に 推 し 進 め る 時 期 が 来 たと 確 信 している 3 日 本 EU ともにイノベーションを 軸 に 国 際 競 争 力 の 強 化 を 目 指 しており 日 EU 間 の 経 済 統 合 推 進 は 双 方 の 国 際 競 争 力 向 上 に 資 するものであり アジアをはじめと する 第 三 国 市 場 での 関 係 強 化 に 寄 与 する 4 日 EU/EIA は モノとサービスの 貿 易 における 高 度 な 自 由 化 を WTO ルールに 準 拠 して 達 成 しようとするものであるが それに 留 まらず WTO でカバーされていな い 分 野 での 新 制 度 の 共 同 構 築 などを 通 じて 環 境 対 策 をはじめとするグローバルな 課 題 への 取 り 組 みについても 世 界 のモデルとなるような 貢 献 を 行 うべきである 以 上 のような 考 え 方 に 基 づき 日 EU/EIA の 柱 として 次 の 4 項 目 を 提 示 し 日 EU 両 政 府 当 局 にその 検 討 を 求 めた 1 世 界 最 高 峰 のイノベイティブ 社 会 の 共 同 構 築 : 特 許 制 度 改 革 知 的 財 産 権 保 護 の 執 行 強 化 著 作 権 補 償 金 制 度 の 見 直 しと 適 正 化 イノベーション 促 進 のための 技 術 標 準 化 に 向 けた 協 力 次 世 代 ネットワークに 関 する 協 力 人 的 交 流 の 拡 大 異 分 野 技 術 交 流 における 協 力 等 2 新 次 元 の 環 境 親 和 社 会 の 共 同 構 築 : 環 境 規 制 ならびに 環 境 関 連 ルール 策 定 調 和 に 向 けた 協 力 環 境 親 和 性 物 品 の 関 税 撤 廃 化 学 物 質 の 管 理 における 相 互 協 力 気 候 変 動 環 境 対 策 における 相 互 協 力 等 3 安 全 な 社 会 インフラの 共 同 整 備 : 貿 易 の 安 全 確 保 相 互 承 認 の 対 象 範 囲 拡 大 生 活 用 品 食 品 安 全 についての 規 則 の 共 通 化 および 協 力 電 子 商 取 引 における 個 人 情 報 保 護 等 4 相 互 の 貿 易 投 資 環 境 の 改 善 : 関 税 撤 廃 反 ダンピング 措 置 運 用 の 適 正 化 投 資 交 流 の 更 なる 促 進 EU 域 内 での 安 定 した 法 制 度 環 境 の 実 現 日 EU 間 の 国 境 を 越 えた 事 業 再 編 の 容 易 化 公 正 かつ 自 由 な 競 争 の 促 進 資 本 市 場 インフラの 整 備 租 税 協 定 ならびに 社 会 保 障 協 定 の 締 結 等 このように 日 本 側 タスクフォースは EIA を 構 成 する 要 素 について 極 めて 野 心 的 であり 日 EU 間 の 経 済 関 係 に 存 在 するあらゆる 問 題 を 包 括 的 に EIA の 中 に 盛 り 込 もうとした 上 -124-

記 4 本 柱 の 内 4は 租 税 協 定 や 社 会 保 障 協 定 を 除 けば FTA( 自 由 貿 易 協 定 )や 我 が 国 が 進 めて 来 ている EPA( 経 済 連 携 協 定 )の 範 疇 に 収 まるイッシュ-であるが 1から3までは それを 超 える 共 同 作 業 が 必 要 とされる 分 野 であり まさに 伝 統 的 な FTA や EPA さえ も 超 える 経 済 統 合 協 定 (Economic Integration Agreement =EIA)の 名 に 値 する 内 容 を 提 案 していたといっても 過 言 ではなかった (2)EU 側 タスクフォースの 立 場 全 般 的 に 作 業 が 迅 速 かつ 順 調 であった 日 本 側 に 比 べ 欧 州 側 の 動 きは 初 動 の 段 階 から 遅 れがちであった 2008 年 の 早 い 段 階 で 中 間 報 告 の 素 案 が 出 来 上 がっていた 日 本 側 に 比 べ 欧 州 側 はそもそもタスクフォースのメンバーリストさえ 提 出 できない 状 況 であった 座 長 についてはルノーのベルジュラン 氏 が 就 任 するとの 情 報 に 接 していたもののタスク フォースの 全 体 像 については 2 月 初 旬 になってもはっきりしていなかった そしてこの 座 長 の 人 選 は 既 に EIA の 多 難 な 道 のりを 暗 示 するものであった ベルジュラン 氏 は 欧 州 自 動 車 工 業 会 (ACEA)の 要 職 を 占 める 人 であり ACEA は EU の 10%という 自 動 車 関 税 の 撤 廃 に 強 く 抵 抗 していたからである 自 動 車 のほかにもプラズマ テレビの 14%という 高 関 税 本 来 ITA 対 象 製 品 であるため 関 税 ゼロになるべき 複 合 機 能 プリンターなどへの 関 税 賦 課 等 EU には 保 護 主 義 的 な 関 税 措 置 が 散 見 される 日 本 に 対 する 関 税 撤 廃 はあり 得 ないというのが EU 側 の 立 場 であった 関 税 を 含 めないことの 論 拠 として EU 側 が 主 張 したのは WTO のドーハ 開 発 アジェンダ(い わゆる ドーハ ラウンド )が 重 要 な 局 面 を 迎 えている 中 EU 日 本 という 2 つの 貿 易 大 国 が 多 国 間 の 交 渉 をさておいて 二 国 間 の 関 税 譲 許 を 行 うことはドーハ ラウンドに 悪 影 響 を 及 ぼすという 理 屈 であった 関 税 撤 廃 を 頑 なに 拒 む 一 方 で 3 月 末 にブリュッセルで 開 催 された 日 本 側 タスクフォー スとの 第 1 回 合 同 会 合 に EU 側 が 提 出 したポジションペーパーには 農 産 品 に 関 する 日 本 側 の 輸 入 制 限 の 削 減 サービス 貿 易 拡 大 のための 規 制 緩 和 政 府 調 達 市 場 の 更 なる 開 放 な どドーハ ラウンドと 大 いに 関 係 を 有 するイッシュ-を 盛 り 込 んできた この 合 同 会 合 で 日 本 側 タスクフォースからはこの 矛 盾 を 指 摘 するとともに モノの 分 野 で 日 EU が 進 んで 関 税 撤 廃 を 行 うことはドーハ ラウンドに 対 してもポジティブなインプットになりうると 反 論 したが 議 論 は 平 行 線 を 辿 った (3) 新 たな 協 議 メカニズムを 提 案 した EU 側 EU 側 は EIA の 実 現 可 能 性 を 検 討 することがタスクフォースの 主 たる 任 務 であるはずに -125-

もかかわらず EIA については 明 示 的 な 言 及 を 避 け BETTER REGULATION, BETTER INTEGRATION (より 良 い 規 制 更 なる 統 合 )といったスローガンで 産 業 協 力 や 環 境 協 力 などを 呼 びかけてきた EU 側 は 更 なる 関 係 強 化 のために 閣 僚 級 の 経 済 連 携 評 議 会 (Economic Partnership Council)を 提 案 してきた この 提 案 は 日 EU 両 タスクフォースの 合 同 報 告 書 にも 盛 り 込 まれており かかる 新 たな 閣 僚 級 協 議 体 を 設 置 するかどうかはまさに 両 政 府 当 局 の 交 渉 に 委 ねられることになった (4)タスクフォースの 合 同 報 告 書 以 上 の 議 論 から 明 らかなように 従 来 型 FTA EPA を 超 える EIA を 目 指 す 日 本 と 関 税 撤 廃 という FTA の 大 前 提 を 排 除 した 統 合 を 志 向 する EU 側 とのあいだには 大 きな 認 識 の 相 違 が 存 在 したと 言 わざるを 得 ない その 意 味 で 合 同 報 告 書 を 作 成 するプロセスは たいへん 困 難 なものであったことは 想 像 に 難 くない 最 終 的 には 表 -2 のような 構 成 になったが あくまでも 日 EU 双 方 が 合 意 した 分 野 を 短 中 期 的 な 取 り 組 み 課 題 と 位 置 づけ そこから 議 論 を 始 めることになっている 関 税 問 題 は 長 期 的 課 題 と 位 置 づけられ 日 本 側 が 一 方 的 に 将 来 取 り 上 げる 余 地 があるとの 理 解 を 示 すに 終 わっている 今 後 どのような 形 式 の 統 合 に 向 けた 枠 組 み にするかについては 閣 僚 級 の 協 議 体 で 議 論 するということで いわば 政 治 的 イニシアチブに 丸 投 げ された 形 になった 他 方 で 短 中 期 的 な 課 題 については 拘 束 力 のある ルールを 策 定 していくとあり 民 間 セクター 間 の 協 力 という 拘 束 力 には 必 ずしも 馴 染 まないことをどのように 実 施 して いくのか 細 心 の 注 意 を 払 いながらの 議 論 が 続 けられることになった 5. 動 き 出 した 政 府 間 の 取 り 組 み: スコーピング 作 業 2008 年 7 月 に 共 同 研 究 の 結 果 が 福 田 首 相 ( 当 時 )とバローゾ 欧 州 委 員 会 委 員 長 に 提 出 さ れ その 後 は 政 府 間 の 折 衝 に 委 ねられる 形 となった 2009 年 5 月 の 日 EU 定 期 首 脳 協 議 で は 日 EU 経 済 の 統 合 の 強 化 に 向 けて 日 EU 間 で 短 期 間 で 成 果 の 出 ることが 期 待 され るいくつかの 特 定 の 非 関 税 障 壁 に 焦 点 を 当 てる ことで 意 見 の 一 致 を 見 た この 頃 から 日 本 が 求 める EU の 工 業 品 関 税 撤 廃 と 引 き 換 えに 日 本 の 非 関 税 障 壁 削 減 や 政 府 調 達 市 場 の 開 放 を 要 求 する EU の 姿 勢 が 明 確 になる さらに 2010 年 4 月 の 日 EU 定 期 首 脳 協 議 では 政 府 間 で 合 同 ハイレベル グループ を 設 置 し 日 EU 経 済 関 係 の 包 括 的 な 強 化 統 合 に 向 けた 共 同 検 討 作 業 の 開 始 に 合 意 日 EU 双 方 が 関 心 を 有 する 関 税 非 関 税 分 野 を 含 めた 全 ての 課 題 を 取 扱 い 翌 2011 年 の 首 -126-

脳 協 議 で 次 のステップを 決 定 することとなった その 2011 年 5 月 の 日 EU 定 期 首 脳 協 議 では 以 下 の 3 点 が 合 意 された 1EPA/EIA の 交 渉 のためのプロセス を 開 始 する 2 交 渉 の 範 囲 及 び 野 心 のレベル を 確 定 する スコー ピング 作 業 (scoping exercise)を 可 能 な 限 り 早 期 に 実 施 する 3 欧 州 委 員 会 は 成 功 裡 に 進 められるスコーピングに 基 づき EPA/EIA の 交 渉 に 必 要 な 権 限 (mandate)を 獲 得 するよう 努 力 する このようにして 正 式 交 渉 が 始 まる 前 の 予 備 交 渉 としての 色 彩 が 濃 厚 な ス コーピング 作 業 が 開 始 され 約 1 年 をかけて 特 に 日 本 側 がどこまで 非 関 税 障 壁 や 政 府 調 達 さらには 農 業 市 場 を 開 放 するかを 見 極 める 協 議 が 続 けられることとなった 2012 年 5 月 にはこの スコーピング 作 業 の 成 果 を 欧 州 委 員 会 が 貿 易 に 関 する 外 務 理 事 会 に 報 告 加 盟 国 の 一 部 には 不 満 も 残 るものの 概 ね 満 足 できる 結 果 を 得 たとして 同 年 7 月 18 日 の 欧 州 委 員 会 の 閣 議 において 次 のように 決 定 した 旨 公 表 した 本 日 欧 州 委 員 会 は 加 盟 国 に 対 して 日 本 との 自 由 貿 易 協 定 の 交 渉 開 始 を 求 めることを 決 定 した ( 中 略 ) 今 後 20 年 間 の 成 長 がアジアからもたらされるのであるならば 日 本 を 見 過 ごすことは 我 々の 貿 易 戦 略 の 重 大 な 誤 りとなるだろう ( 中 略 ) 我 々の 議 論 における 優 先 事 項 は 日 本 市 場 における 非 関 税 措 置 への 取 り 組 みであり 例 えば 自 動 車 分 野 及 び 日 本 の 政 府 調 達 市 場 へ 欧 州 企 業 を 参 入 させることである ( 中 略 ) 日 本 との 自 由 貿 易 協 定 は EU 経 済 を 0.8% 押 し 上 げ 日 本 への 輸 出 を 32.7% 増 加 させうるものであり ( 中 略 ) EU 域 内 に 追 加 的 に 42 万 人 の 雇 用 を 創 出 させることが 予 想 される (2012 年 7 月 18 日 欧 州 委 員 会 プレス リリースから 抜 粋 ) こうして 欧 州 委 員 会 は 正 式 に 交 渉 権 限 を 求 める 手 続 きを 開 始 2012 年 11 月 の 貿 易 に 関 する 外 務 理 事 会 でこの 権 限 が 認 められるに 至 る かくして いよいよ 2013 年 から 日 本 との FTA 交 渉 が 正 式 に 開 始 される 運 びとなった このプロセスには EU の 政 策 決 定 の 中 で 民 主 主 義 的 なコントロールを 担 う 欧 州 議 会 の 関 与 も 看 過 できない 欧 州 議 会 の 権 限 はマーストリヒト 条 約 以 降 累 次 の EU 設 立 条 約 の 中 で 強 化 されてきているが FTA のような 通 商 協 定 についても 加 盟 各 国 の 議 会 での 批 准 に 加 えて 欧 州 議 会 の 承 認 が 必 要 とされている 欧 州 議 会 には 国 際 貿 易 委 員 会 ( 議 長 はポル トガル 選 出 のモレーノ 議 員 )があり この 委 員 会 も 調 査 団 を 日 本 に 送 り 事 前 調 査 を 行 っ ている また 2012 年 9 月 19 日 にはブリュッセルの 欧 州 議 会 において EU 日 本 FTA に 関 するワークショップ を 開 催 し 推 進 派 を 代 表 する 形 で 筆 者 を また 反 対 派 を 代 表 す る 形 でケルン 経 済 研 究 所 のマティアス 経 済 調 査 部 長 を 登 壇 させて 議 論 させると 共 に 関 係 諸 団 体 からの 意 見 聴 取 を 行 った その 後 ストラスブールで 開 催 された 2012 年 10 月 の 欧 州 議 会 本 会 議 で 同 議 会 として EU と 日 本 との FTA 交 渉 を 支 持 する 旨 決 議 し 日 本 側 関 係 者 を -127-

ほっとさせた 6. 日 EUFTA 正 式 交 渉 開 始 とその 展 望 以 上 の 経 緯 を 受 けて 2013 年 3 月 には 日 EU 首 脳 会 談 を 電 話 で 行 い 交 渉 開 始 を 決 定 同 年 4 月 には 第 1 回 交 渉 会 合 をブリュッセルで 行 った BDRT における 話 し 合 いで EIA が 提 案 されたのが 2007 年 6 月 のことであるから 交 渉 開 始 までに 実 に 6 年 余 りをかけたこと になる それだけ EU 側 の 抵 抗 が 強 かったということであろうが それでも 世 界 の GDP の 約 25%を 占 め 日 本 の 約 3 倍 に 相 当 する 経 済 規 模 の EU との FTA が 交 渉 されることの 意 義 は 大 きい しかも 日 本 にとって EU は 総 輸 出 入 額 の 10.5%を 占 める 主 要 貿 易 相 手 で 中 国 (20.6%) アメリカ(11.9%)に 次 いで 3 番 目 である EU はアメリカと 並 び 国 際 社 会 の 重 要 な 一 角 を 形 成 しており 民 主 主 義 法 の 支 配 基 本 的 人 権 市 場 経 済 といった 普 遍 的 価 値 を 日 本 とも 十 全 に 共 有 している アメリカと EU が TTIP に 着 手 し 日 本 が TPP でアメリカとともにアジア 太 平 洋 地 域 でのレベルの 高 い 自 由 貿 易 圏 を 形 成 しようとしている 時 に 日 本 が EU と FTA を 構 築 できれば 日 米 日 EU 米 EU と 地 域 間 の FTA がアジア 米 州 欧 州 の 各 地 域 をつなぐ 形 でできることになる こ れは 特 に WTO のドーハ ラウンドが 停 滞 している 最 中 にあっては 重 要 な 含 蓄 を 持 ってい る なぜなら これまでの 二 国 間 の FTA とは 異 なり これらの 地 域 間 の 広 域 FTA が し かもほぼ 同 時 にできれば 地 域 統 合 の 多 国 間 化 (multilateralizing regional integrations)が 可 能 となり 新 たな 多 国 間 体 制 の 強 化 が 期 待 できるからである( 図 -1 参 照 ) そもそも 日 EUEIA は 2007 年 6 月 の BDRT で 提 案 された 用 語 であるが その 後 の 議 論 の 中 で EU 側 が 関 税 撤 廃 が 含 まれる EIA は 拒 否 するとの 姿 勢 を 貫 いたため 次 のステップを EIA として 推 し 進 めることは 余 程 強 力 な 政 治 的 イニシアチブが EU 側 から 発 揮 されない 限 り 現 実 的 ではないと 見 られていた そして そのような 強 力 な 政 治 的 イニシアチブが 発 揮 されるきっかけは EU に 匹 敵 する 日 本 の 経 済 パートナーである 米 国 との EPA に 日 本 が 動 き 出 した 時 以 外 には 考 えられない と 思 われた そこに 日 本 の TPP 参 加 問 題 が 絡 んできた 日 本 と 米 国 との 間 でレベルの 高 い 特 恵 的 な 経 済 取 決 めとしての TPP が 動 き 出 した 時 に EU はその 重 い 腰 を 上 げることになった TPP で 意 味 のある 参 加 をするためには 日 本 側 にも 農 業 市 場 の 開 放 や 農 政 の 再 構 築 など 相 当 の 覚 悟 と 準 備 が 必 要 である かかる 準 備 が 徐 々に 整 えば 日 EU 間 の FTA 交 渉 にも 新 たなインプットが 可 能 となる 日 EU 間 で 交 渉 される 非 関 税 障 壁 の 問 題 も TPP 交 渉 の 中 では 規 制 の 収 斂 (regulatory coherence)として 重 要 になっ てくる このように 日 EUFTA が TPP および TTIP と 並 行 して 進 捗 することには 単 にバイラ テラルな 意 義 があるだけではなく マルチラテラルにも 大 きな 意 義 があると 言 えるのでは -128-

ないだろうか 表 -1. 年 表 日 EU 経 済 関 係 の 展 開 1955 年 日 本 GATT に 加 盟 英 仏 など 西 欧 諸 国 GATT 第 35 条 を 援 用 し GATT 原 則 の 対 日 不 適 用 を 宣 言 1961-62 年 英 仏 など 対 日 数 量 制 限 を 日 本 との 通 商 条 約 に 規 定 することで GATT 第 35 条 の 援 用 を 撤 回 1976 年 土 光 経 団 連 ミッション 訪 欧 各 地 で 貿 易 不 均 衡 を 批 判 される 1986 年 日 米 半 導 体 協 定 日 本 の 酒 税 問 題 などで 欧 州 委 員 会 が GATT 提 訴 (EC 勝 訴 ) 1988 年 EC の 反 ダンピング 迂 回 措 置 について 日 本 が GATT 提 訴 ( 日 本 勝 訴 ) 1991 年 日 EC 共 同 宣 言 1995 年 WTO 協 定 発 効 対 日 数 量 制 限 自 動 車 の 自 主 規 制 等 終 了 酒 税 問 題 再 び WTO 提 訴 1999 年 日 EU ビジネス ダイアログ ラウンドテーブル (BDRT) 発 足 2001 年 日 EU 行 動 計 画 2010 年 日 欧 協 力 の 10 年 終 了 予 定 2011 年 5 月 日 EU 定 期 首 脳 協 議 で FTA/EPA 交 渉 の 大 枠 を 決 める スコーピング 作 業 の 開 始 に 合 意 2012 年 7 月 スコーピング 作 業 終 了 欧 州 委 員 会 として 交 渉 権 限 を 加 盟 国 に 求 めるこ とを 正 式 決 定 2012 年 11 月 EU 外 相 理 事 会 で 交 渉 権 限 が 採 択 される 2013 年 3 月 日 EU 首 脳 電 話 会 談 で 交 渉 開 始 を 決 定 2013 年 4 月 第 1 回 交 渉 会 合 開 催 -129-

表 -2 日 本 EU EIA 検 討 タスクフォース 合 同 報 告 の 構 成 と 内 容 (1) 別 紙 3 1. 背 景 (Background) 日 本 EU EIA 検 討 タスクフォースは2007 年 6 月 のBDRT 提 言 を 受 け EIAのフィージビリティ 検 討 を 目 的 に 設 立 された 2. 報 告 書 の 構 成 (Structure of the report) 短 期 的 中 期 的 に 具 体 的 な 実 現 を 義 務 付 ける 目 標 に 焦 点 を 当 て 長 期 的 課 題 については 協 議 を 継 続 することを 提 言 3. 合 同 報 告 (Joint report) a) 日 本 とEUの 貿 易 関 係 日 本 とEUは 共 通 の 課 題 に 直 面 しているとの 認 識 に 立 ち これらに 効 果 的 に 取 り 組 んでいくために 規 制 面 での 協 力 イノベーション 環 境 安 全 性 貿 易 投 資 環 境 の 改 善 の 分 野 での 協 力 強 化 を 提 言 b) 日 本 EU 双 方 の 関 心 課 題 詳 細 は 次 ページ Ⅰ.イノベーション Ⅴ. 規 制 面 での 協 力 Ⅱ. 環 境 Ⅵ. 人 の 移 動 Ⅲ. 投 資 Ⅶ. 安 全 確 保 Ⅳ.サービス Ⅷ. 公 共 調 達 c) 貿 易 交 渉 日 EU 双 方 は WTOドーハ 開 発 ラウンドを 成 功 させるために 継 続 的 な 支 援 を 行 うことを 確 認 二 国 間 の 関 税 撤 廃 については 双 方 が 異 なる 見 解 を 持 つことを 認 識 非 関 税 障 壁 (NTB)に 関 しては 上 述 の 関 心 課 題 に 関 する 協 力 を 強 化 することが 多 大 な 利 益 を 生 む 4. 次 のステップ (Next step) 双 方 の 閣 僚 レベルが 主 導 し 関 係 政 府 当 局 と 経 済 団 体 が 参 画 する 協 議 体 を 設 立 することを 提 言 日 本 EU 当 局 に 対 し 長 期 的 な 課 題 を 念 頭 に 置 きつつ 上 記 3.b)に 挙 げた 短 期 的 中 期 的 に 成 果 を 実 現 し 得 る 課 題 から 着 手 する ことを 要 請 毎 年 のBDRT 総 会 で 進 捗 を 検 証 する 機 会 を 設 けることを 提 案 1 図 -1 WTO 体 制 と3つのメガ リージョン -130-

- 注 - 1 2 3 4 5 ECSC/EEC はドイツ フランス イタリア ベネルックス 経 済 共 同 体 (1948 年 ベルギー オランダ ルクセンブルク)の 6 か 国 でスタートした その 後 1973 年 に 英 国 デンマーク アイルランドが 加 盟 1980 年 代 は 南 欧 に 拡 大 ギリシャ(1981 年 ) スペイン ポルトガル(1986 年 )が 加 盟 した さらに ベルリンの 壁 崩 壊 (1989 年 )を 受 けて 冷 戦 時 代 は 中 立 国 であったスウェーデン オース トリア さらにはフィンランドが 1995 年 に 加 盟 した 2004 年 には 鉄 のカーテン の 東 側 にいた 中 東 欧 諸 国 (ハンガリー チェコ スロバキア ポーランド スロベニア バルト 三 国 のエストニア ラトビア リトアニア)に 加 えて マルタとサイプラスの 10 か 国 が 加 盟 した 2007 年 には 加 盟 交 渉 が 遅 れていたブルガリアとルーマニアも 加 盟 し 27 か 国 となった 2013 年 7 月 にはクロアチアが 加 盟 することがほぼ 確 実 となっている 近 代 トルコの 父 として 敬 愛 されるケマル アタチュルク 以 来 の 伝 統 である 政 教 分 離 や 西 欧 化 路 線 の 集 大 成 としての EC 加 盟 を 目 指 してきたトルコであるが クルド 対 策 などで 妥 協 したり 死 刑 制 度 を 凍 結 するなど 様 々な 努 力 をしてきたにもかかわらず なかなか 加 盟 交 渉 が 進 展 しないことに 業 を 煮 やし 近 年 では EU への 加 盟 に 後 ろ 向 きの 傾 向 も 見 られるようになってきている ちなみに EC とトルコは 1995 年 に 関 税 同 盟 を 形 成 するに 至 っている トルコは 加 盟 候 補 国 にはなっているが 交 渉 は 停 滞 している コトヌ 協 定 の 6 つの 地 域 とは 1カリブ 海 諸 国 地 域 2 南 東 部 アフリカ 地 域 (11/16 か 国 が 署 名 済 み) 3 西 部 アフリカ 地 域 (2/16 か 国 署 名 済 み) 4 中 部 アフリカ 地 域 (1/8 か 国 署 名 済 み) 5 南 部 アフリ カ 地 域 (9/10 か 国 署 名 済 み) 6 太 平 洋 地 域 (2/15 か 国 署 名 済 み) 出 典 : 経 済 産 業 省 資 料 欧 州 連 合 (EU)と 日 本 ( 平 成 24 年 9 月 )16 頁 2009 年 10 月 に 仮 署 名 2010 年 に 正 式 署 名 EU の 全 加 盟 国 の 議 会 と 欧 州 議 会 による 批 准 が 必 要 なた め 正 式 の 発 効 には 時 間 がかかるため 暫 定 発 効 という 形 式 をとっている BDRT は 1999 年 6 月 に 日 欧 産 業 人 ラウンド テーブル と 日 EU ビジネスフォーラム が 合 併 して 発 足 した 1999 年 10 月 から 2007 年 7 月 までに 10 回 東 京 とブリュッセルで 交 互 に 本 会 合 (plenary)を 開 催 してきた 日 欧 財 界 トップ 約 50 人 で 構 成 し 政 策 立 案 に 効 果 的 な 提 案 を 行 うこと を 目 的 とし 討 議 の 結 果 を 踏 まえて 共 同 提 言 書 を 日 欧 首 脳 に 提 出 することが 慣 例 となっている -131-