平 成 27 年 7 月 17 日 中 国 四 国 防 衛 局 お 知 らせ 岩 国 飛 行 場 内 で 発 生 した 航 空 機 用 燃 料 の 油 漏 れ 事 案 に 関 する 原 因 調 査 の 報 告 について 平 成 27 年 1 月 20 日 岩 国 飛 行 場 内 において 燃 料 配 管 工 事 に 関 して 配 管 に 燃 料 を 通 す 試 験 中 に 発 生 した 漏 油 事 案 については これまで 受 注 者 による 原 因 の 調 査 分 析 とともに 中 国 四 国 防 衛 局 において 有 識 者 からなる 岩 国 飛 行 場 漏 油 事 故 原 因 調 査 委 員 会 を 設 置 し 漏 油 の 原 因 について 調 査 してまいりました 今 般 調 査 及 び 原 因 の 特 定 が 完 了 し その 調 査 結 果 をとりまとめましたので 本 日 山 口 県 及 び 岩 国 市 へ 当 該 調 査 結 果 について 報 告 いたしました 今 般 の 漏 油 に 至 った 主 たる 原 因 は ステンレス 製 の 燃 料 配 管 の 施 工 中 におき た 大 雨 による 配 管 の 水 没 に 際 して 洗 浄 等 の 適 切 な 措 置 を 行 わなかったため 配 管 内 に 塩 化 物 イオンが 残 存 し これにより ステンレス 製 の 配 管 が 腐 食 し 漏 油 に 至 ったものであることが 判 明 しました これは 雨 水 の 流 入 対 策 や 管 内 の 洗 浄 等 の 施 工 に 対 する 配 慮 が 欠 けたもので あり ステンレス 管 の 腐 食 に 対 する 認 識 不 足 によるものと 考 えています ( 当 該 調 査 報 告 は 別 添 のとおり) 中 国 四 国 防 衛 局 としては 今 回 とりまとめた 調 査 結 果 の 内 容 を 踏 まえ 今 後 実 施 する 復 旧 工 事 について 万 全 を 期 すよう 監 理 の 徹 底 に 努 めてまいります 別 添 : 岩 国 飛 行 場 漏 油 事 故 原 因 調 査 委 員 会 報 告 問 い 合 わせ 先 中 国 四 国 防 衛 局 調 達 部 調 達 計 画 課 長 丸 山 幹 夫 TEL 082-223-8429 同 設 備 課 長 村 崎 浩 幸 TEL 082-223-7254
平 成 27 年 6 月 15 日 岩 国 飛 行 場 漏 油 事 故 原 因 調 査 委 員 会 報 告 ( 委 員 長 ) 篠 﨑 賢 二 広 島 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 教 授 ( 委 員 ) 礒 本 良 則 広 島 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 准 教 授 ( 委 員 ) 爲 末 和 政 弁 護 士 幟 立 爲 末 法 律 事 務 所 中 国 四 国 防 衛 局 調 達 部 設 備 課
1. 事 故 原 因 調 査 委 員 会 の 目 的 本 委 員 会 は 平 成 27 年 1 月 20 日 に 米 海 兵 隊 岩 国 飛 行 場 基 地 内 で 発 生 した 燃 料 施 設 から の 航 空 機 用 燃 料 漏 油 事 故 に 関 して 事 故 原 因 を 多 角 的 に 検 討 し 原 因 の 究 明 を 行 うことを 目 的 とした 2. 燃 料 施 設 の 概 要 本 施 設 は KC-130J 空 中 給 油 機 に 対 し 2 基 同 時 に 航 空 機 燃 料 を 直 接 給 油 するシステム である 主 要 な 設 備 は 以 下 のとおり 使 用 燃 料 :JP-5 ポンプ 室 :RC-1 500m2 燃 料 タンク:2 基 燃 料 ポンプ:3 基 パンタグラフ:2 基 燃 料 配 管 (SUS304L): 配 管 用 ステンレス 鋼 管 口 径 200A 長 さ:2,000m 埋 設 深 さ: 約 2.5m その 他 燃 料 附 帯 設 備 等 3. 漏 油 事 故 内 容 平 成 27 年 1 月 20 日 岩 国 飛 行 場 内 で 施 工 中 の 給 油 施 設 において 航 空 機 燃 料 の 循 環 試 験 中 に 埋 設 した 給 油 配 管 から 最 大 で15.1klの 油 が 漏 出 した 4. 燃 料 配 管 ( 埋 設 部 )からの 漏 油 原 因 について 平 成 27 年 2 月 28 日 までに 漏 油 箇 所 の 埋 設 管 (ステンレス 鋼 管 )をテストピースとし て 切 断 三 機 工 業 ( 株 )は JFEテクノリサーチ( 株 )に 分 析 を 依 頼 し 提 出 された 報 告 書 及 び 施 工 環 境 等 を 参 考 に 漏 油 原 因 について 考 察 した なお サンプリングされた 配 管 には 以 下 の 特 徴 が 見 受 けられる 漏 油 箇 所 が 発 生 している 場 所 は 配 管 底 部 に 集 中 している 腐 食 に 関 して 孔 食 及 びすき 間 腐 食 1 が 発 生 した 痕 跡 が 確 認 できる 腐 食 しているのは 溶 接 部 ならびに 溶 接 部 から 数 ミリ 離 れた 母 材 領 域 に 限 定 されている テストピースの 写 真 を 見 る 限 りでは 管 外 側 および 管 内 の 溶 接 ビード 形 態 2 には 問 題 はないようであるが 管 内 部 の 溶 接 部 の 酸 化 の 有 無 は 不 明 であり 管 内 部 の 溶 接 施 工 技 術 の 良 否 は 不 明 である 1 孔 食 とすき 間 腐 食 孔 食 とは 金 属 内 部 に 向 かって 孔 状 に 進 行 する 局 部 腐 食 をいう また すき 間 腐 食 とは 一 般 的 に 鋼 と 鋼 又 は 鋼 と 非 金 属 との 間 に 狭 い すき 間 が 存 在 する 場 合 にすき 間 内 部 で 腐 食 し 続 ける 2 溶 接 ビード 溶 接 痕 の 盛 り 上 がりをいう 1
孔 食 が 生 じるには 塩 化 物 イオンを 含 む 水 が 必 要 不 可 欠 であり 三 機 工 業 ( 株 )の 施 工 環 境 を 確 認 したところ 埋 設 配 管 施 工 時 には 燃 料 配 管 が 複 数 回 水 没 したとのこと 水 没 後 に 配 管 内 部 等 の 清 掃 を 行 っていないため 配 管 内 には 長 期 間 にわたり 塩 化 物 イオン を 含 んだ 水 分 が 滞 留 していたと 考 えられる これらの 水 分 は 日 中 に 燃 料 配 管 が 温 められ 水 分 が 蒸 発 し やがて 塩 分 濃 度 の 高 い 水 分 が 燃 料 配 管 内 部 に 滞 留 していた 可 能 性 が 高 い これは 三 機 工 業 ( 株 )の 報 告 書 にも 記 載 があるが サンプリングされた 配 管 の 成 分 分 析 に も 高 濃 度 の 塩 素 ( 約 500mg/l)が 確 認 されており ステンレス 鋼 管 の 不 動 態 皮 膜 3 を 破 壊 し 耐 食 性 を 劣 化 させる 大 きな 要 因 となったと 考 えられる また 配 管 の 溶 接 後 に 管 内 溶 接 部 のスケール 等 を 除 去 するピグ 洗 浄 は 配 管 を 溶 接 したの ち 約 1 年 半 後 に 行 われているが 管 内 部 では 裏 波 溶 接 部 4 の 表 面 に 酸 化 スケールが 長 期 間 残 置 された 状 況 となり これが 原 因 で 一 種 のすき 間 腐 食 が 生 じ 易 くなった 可 能 性 が 考 えら れる なお 一 般 的 にステンレス 鋼 管 が 腐 食 する 場 合 1~2mm/ 年 程 度 は 条 件 さえ 満 たせば 起 こり 得 る 腐 食 スピードであるが 今 回 のステンレス 鋼 管 は 約 6mmの 厚 さがあるため 配 管 が 施 工 されてから 漏 油 が 起 きる 約 1 年 半 で 貫 通 するほどの 孔 食 が 起 きるためには 腐 食 を 加 速 させる 要 因 があると 考 えられる 今 回 の 現 場 状 況 や 三 機 工 業 ( 株 )の 報 告 書 を 参 考 に 腐 食 を 促 進 させる 原 因 について 検 討 を 行 ったが 一 般 的 に 溶 接 金 属 は 母 材 及 び 熱 影 響 部 に 比 べ 孔 食 が 起 こりやすいと 言 われてお り 高 濃 度 の 塩 化 物 イオンにより 不 動 態 皮 膜 が 破 壊 され 孔 食 すき 間 腐 食 によって 加 速 さ れれば 1 年 半 程 度 で6mmのステンレス 鋼 管 を 貫 通 する 腐 食 スピードも 説 明 ができる 加 えて 腐 食 の 原 因 となる 因 子 の 存 在 と 水 分 があれば 容 易 に 孔 食 が 起 きるが 温 度 が 高 いほど 孔 食 が 促 進 されることは 一 般 的 であり これらも 影 響 したと 考 えられる 今 回 の 漏 油 に 関 しては 高 濃 度 の 塩 化 物 イオンがステンレス 管 を 腐 食 させ 漏 油 に 至 った ことは 間 違 いないと 思 われる 5. 漏 油 に 至 ったプロセスについて 三 機 工 業 ( 株 )の 報 告 書 によれば 塩 化 物 イオンを 含 んだ 地 下 水 により 配 管 の 内 外 面 から 孔 食 等 が 生 じたと 言 及 されているが 1 サンプリングされた 配 管 の 特 徴 に 記 載 されている 孔 食 等 が 配 管 底 部 に 集 中 しているこ と 2 溶 接 部 を 保 護 する 熱 収 縮 チューブにブチルゴム 系 内 装 材 ( 粘 着 剤 )が 配 管 周 囲 を 覆 っ ており さらにテープにて 防 水 処 理 が 施 されている 状 況 下 では 外 部 の 地 下 水 が 溶 接 部 に 到 達 し 腐 食 を 起 こすことは 考 えられないこと 3 配 管 内 部 の 底 部 には 貫 通 に 至 らない 腐 食 痕 が 複 数 みられること 3 不 動 態 皮 膜 金 属 の 表 面 に 酸 化 した 被 膜 ( 薄 膜 )ができ 内 部 を 酸 による 腐 食 や 酸 化 等 から 保 護 する 状 態 のこと 4 裏 波 溶 接 外 面 からの 溶 接 だけで 内 面 まで 溶 かし 込 み 裏 側 から 溶 接 を 施 したように 溶 接 ビードを 出 した 溶 接 部 分 2
上 記 1~3の 事 実 が 認 められており さらに 貫 通 した 孔 食 部 分 の 分 析 において インク 壺 状 の 腐 食 痕 5 が 見 られるため 腐 食 は 配 管 の 内 面 から 外 面 へ 至 ったと 考 えられる 6.まとめ 今 般 の 漏 油 に 至 った 主 たる 原 因 は 燃 料 配 管 の 施 工 中 におきた 配 管 の 水 没 に 際 して 洗 浄 等 の 適 切 な 処 置 を 行 わなかったことにより 配 管 内 に 塩 化 物 イオンが 残 存 し 燃 料 配 管 が 腐 食 し たものである これは 雨 水 の 流 入 対 策 や 管 内 の 洗 浄 等 の 施 工 に 対 する 配 慮 が 欠 けたものであり ステン レス 管 の 腐 食 に 対 する 認 識 不 足 によって 漏 油 に 至 ったものと 考 えられる 海 の 影 響 を 強 く 受 ける 建 設 場 所 においては 自 然 環 境 の 影 響 をできるだけ 少 なくすること が 重 要 である 特 に 腐 食 に 関 しては 腐 食 の 要 因 である 塩 化 物 イオンを 含 む 水 の 供 給 が 必 要 条 件 であり 施 工 時 の 工 夫 で 腐 食 を 防 止 することも 可 能 であることから 塩 害 に 対 する 環 境 下 での 施 工 方 法 には 注 意 を 要 する 燃 料 配 管 の 復 旧 工 事 についても 塩 化 物 イオンを 含 む 水 の 浸 入 を 防 ぐとともに 埋 設 ステン レス 鋼 管 の 施 工 時 には 配 管 清 掃 の 実 施 溶 接 時 には 厳 密 な 溶 接 施 工 管 理 や 溶 接 箇 所 の 清 掃 等 を 十 分 行 うことにより 安 定 した 不 動 態 皮 膜 を 形 成 し 腐 食 に 強 い 設 備 を 形 成 することが 可 能 であると 思 料 する 以 上 添 付 資 料 : 第 3 者 委 員 会 審 議 資 料 5 インク 壺 状 の 腐 食 痕 ( 添 付 資 料 P27 参 照 ) 孔 食 の 断 面 形 状 インク 壺 状 を 呈 する 3
添 付 資 料 第 3 者 委 員 会 審 議 資 料 1. 施 設 概 要 (P5) 2.a 部 からサンプリングしたテストピースの 分 析 (P6~P11) 3.b 部 からサンプリングしたテストピースの 分 析 (P12~P18) 4.c 部 からサンプリングしたテストピースの 分 析 (P19~P25) 三 機 工 業 ( 株 ) 提 出 資 料 の 抜 粋 5. 比 較 健 全 部 の 外 観 写 真 (P26) 6. 電 流 量 と 温 度 による 孔 食 変 化 (P27) 広 島 大 学 礒 本 准 教 授 の 論 文 ( 抜 粋 ) 7. 配 管 内 部 の 陥 没 痕 (P28) 三 機 工 業 ( 株 ) 提 出 資 料 の 抜 粋 8. 施 工 中 に 水 没 した 燃 料 配 管 ( 写 真 ) (P29) 4
施 設 概 要 新 設 ポンプ 室 漏 洩 箇 所 c b a 直 接 給 油 システム ステンレス 鋼 管 (SUS304L Sch20( 一 部 Sch40)) 配 管 長 : 約 2,000m ( 往 き 管 :1,000m 還 り 管 1,000m) 5
a 部 からサンプリングしたテストピースの 分 析 0 90 270 180 6 写 真 1 サンプルAの 外 観 写 真
7 写 真 2 内 外 面 の 外 観 写 真
溶 接 ビード 8 写 真 3 漏 れ 部 のマイクロスコープ 写 真
9 写 真 4 溶 接 部 断 面 マクロ 組 織
漏 れ 部 のEDX(エネルギー 分 散 型 X 線 ) 分 析 外 面 内 面 塩 素 塩 素 が 検 出 された 10 図 1 腐 食 部 のEDX 分 析 結 果
漏 れ 部 のEDX(エネルギー 分 散 型 X 線 ) 分 析 外 面 内 面 塩 素 塩 素 が 塩 検 出 された 素 11 図 2 溶 接 金 属 腐 食 部 のEDX 分 析 結 果
b 部 からサンプリングしたテストピースの 分 析 0 90 270 180 12 写 真 1 サンプルBの 外 観 写 真
13 写 真 2 内 外 面 の 外 観 写 真
14 写 真 3 汚 れ 除 去 後 の 漏 れ 部 外 面 の 外 観 写 真
15 写 真 4 漏 れ 部 のマイクロスコープ 写 真
16 写 真 5 溶 接 部 断 面 マクロ 組 織
漏 れ 部 のEDX(エネルギー 分 散 型 X 線 ) 分 析 外 面 内 面 塩 素 塩 素 が 検 出 された 17 図 1 穴 あき 部 腐 食 生 成 物 のEDX 分 析 結 果
漏 れ 部 のEDX(エネルギー 分 散 型 X 線 ) 分 析 外 面 内 面 塩 素 塩 素 塩 素 が 検 出 された 18 図 2 溶 接 金 属 腐 食 部 のEDX 分 析 結 果
c 部 からサンプリングしたテストピースの 分 析 0 90 270 180 19 写 真 1 サンプルCの 外 観 写 真
20 写 真 2 内 外 面 の 外 観 写 真
21 写 真 3 ライニング 汚 れ 除 去 後 の 漏 れ 部 外 面 の 外 観 写 真
22 写 真 4 漏 れ 部 のマイクロスコープ 写 真
23 写 真 5 溶 接 部 断 面 マクロ 組 織
漏 れ 部 のEDX(エネルギー 分 散 型 X 線 ) 分 析 外 面 内 面 塩 素 塩 素 が 検 出 された 24 図 1 腐 食 生 成 物 のEDX 分 析 結 果
漏 れ 部 のEDX(エネルギー 分 散 型 X 線 ) 分 析 外 面 内 面 塩 素 塩 素 が 検 出 された 25 図 2 溶 接 金 属 腐 食 部 のEDX 分 析 結 果
熱 影 響 部 熱 影 響 部 溶 接 部 比 較 健 全 部 の 外 観 写 真 26
電 流 量 と 温 度 による 孔 食 変 化 孔 食 の 始 まり 部 が 類 似 内 面 孔 食 が 始 まったと 思 われる 場 所 外 面 電 気 イオンを 含 まない0.08M NaCl 溶 液 では 孔 食 断 面 が 低 い 電 流 値 で は 細 長 く 電 流 増 加 に 伴 って 丸 い 形 状 に 変 わっていくことが 分 かる 0.3mAの 定 電 流 条 件 で Mn 2+ イオンを 添 加 した 場 合 孔 食 成 長 の 初 期 か ら 縦 方 向 に 楕 円 状 のインク 壺 状 に 成 長 する また 温 度 の 上 昇 によって 孔 食 が 大 きくなる 出 典 : 広 島 大 学 礒 本 准 教 授 の 論 文 ステンレス 綱 の 孔 食 電 位 および 孔 食 成 長 挙 動 に 及 ぼす 金 属 イオンの 影 響, 材 料 と 環 境,61, (5) 213-218 (2012). 27
配管内部の陥没痕 陥没痕 陥没痕 貫通孔 陥没痕 陥没痕 28 出典 三機工業(株)提出資料 抜粋
29 施 工 中 に 水 没 した 燃 料 配 管