新 興 国 経 済 2013 年 8 月 8 日 全 7 頁 人 口 動 態 がもたらすアジアの 成 長 連 鎖 ポスト 中 国 はインドネシア インドシナ フィリピンか 経 済 調 査 部 アジアリサーチ ヘッド 児 玉 卓 [ 要 約 ] アジアの 特 徴 は 多 様 な 発 展 段 階 の 国 が 存 在 し 先 発 国 から 後 発 国 へ そのまた 後 発 国 へと 成 長 の 核 が 引 き 継 がれることで 地 域 としての 高 成 長 を 長 期 にわたり 実 現 している 点 にある そこで 決 定 的 な 役 割 を 果 たしているのが 構 成 国 の 年 齢 構 成 の 多 様 性 である 長 くアジアの 成 長 の 中 心 にあったのが 中 国 であるが 同 国 の 生 産 年 齢 人 口 比 率 のピーク アウトは アジアにおける 新 陳 代 謝 が 新 たな 局 面 を 迎 えつつあることを 示 唆 している 成 長 の 核 を 受 け 継 ぐ 可 能 性 の 高 い 国 地 域 はインドネシア インドシナ 5 カ 国 フィリ ピンであろう アジアの 中 期 的 成 長 パフォーマンスが 他 地 域 を 圧 する 状 況 は ほぼ 間 違 いなく 今 後 も 維 持 されよう 多 様 性 が 生 むアジアの 成 長 連 鎖 アジアの 特 徴 の 一 つは 経 済 の 発 展 段 階 ( 所 得 水 準 )の 多 様 性 にある 国 際 通 貨 基 金 (IMF) によれば 2012 年 の 一 人 当 たり GDP で 見 たアジアの 最 貧 国 は 626 ドルのネパールだが バング ラデシュ(818 ドル) ミャンマー(835 ドル) カンボジア(934 ドル)など 1,000 ドル 未 満 の 国 を 抱 える 一 方 で 域 内 最 富 裕 国 のシンガポールのそれは 51,162 ドルに 達 する これに 日 本 (46,736 ドル) ブルネイ(41,703 ドル) 香 港 (36,667 ドル) 韓 国 (23,113 ドル) 台 湾 (20,328 ドル)を 加 えた 6 カ 国 地 域 は 富 裕 国 ( 地 域 )に 属 する そして これらと 貧 困 国 の 間 をさまざまな 所 得 水 準 の 中 進 国 途 上 国 が 埋 めている こうした 多 様 性 は アジアに 大 きな 経 済 的 アドバンテージを 与 えている 港 湾 都 市 国 家 ( 地 域 )であるシンガポールと 香 港 また 人 口 ( 約 40 万 人 ) 当 たりの 石 油 ガスの 産 出 量 の 多 さ( 名 目 GDP の 約 70% 輸 出 の 約 95%を 同 分 野 が 占 める)ゆえの 富 裕 国 であるブルネイは(その 成 長 発 展 パターンにおいて) 例 外 とみなすべきであろうが 多 様 な 発 展 段 階 の 国 が 存 在 するために 日 本 を 起 点 とした 先 発 国 から 後 発 国 へ またその 後 発 国 へという 成 長 の 連 鎖 が 持 続 し アジ アの 地 域 としての 長 期 にわたる 高 成 長 を 可 能 としてきたからである そして 恐 らく この 連 鎖 はまだ 終 わっていない 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは 投 資 勧 誘 を 意 図 して 提 供 するものではありません このレポートの 掲 載 情 報 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 源 から 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 を 保 証 する ものではありません また 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 大 和 総 研 の 親 会 社 である 大 和 総 研 ホールディングスと 大 和 証 券 は 大 和 証 券 グループ 本 社 を 親 会 社 とする 大 和 証 券 グループの 会 社 です 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 無 断 での 複 製 転 載 転 送 等 はご 遠 慮 ください
2 / 7 図 表 1 は 先 進 国 と 途 上 国 新 興 国 の 成 長 率 後 者 についてはさらに 地 域 別 に 見 た 成 長 率 を 示 している 従 って ここでの アジア は 日 本 や 韓 国 などの 先 進 国 を 含 まない そのため 図 におけるアジアの 成 長 率 は 特 に 韓 国 台 湾 シンガポールが 地 域 の 成 長 の 核 となっていた 80 年 代 については 過 小 評 価 されていることになる にもかかわらず 過 去 30 年 超 にわたり 地 域 としてのアジアは 他 を 圧 する 成 長 パフォーマンスを 示 してきた アジア 通 貨 危 機 に 見 舞 わ れた 98 年 でさえ アジアの 成 長 率 は 3.6% 途 上 国 新 興 国 全 体 の 2.6%を 上 回 っている こ のときの 下 支 え 役 は 中 国 とインドであった 特 にインドの 成 長 率 は 前 年 から 加 速 さえしている これも 多 様 な 発 展 段 階 にある 国 が 存 在 することのメリットの 具 体 的 事 例 とみなせよう 図 表 1 地 域 別 実 質 GDP 成 長 率 ( 前 年 比 %) 15 10 5 0-5 -10-15 先 進 国 中 東 欧 アジア 中 東 北 アフリカ 途 上 国 新 興 国 旧 ソ 連 中 南 米 サブサハラアフリカ 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 ( 注 ) 日 本 韓 国 台 湾 シンガポール 香 港 は 先 進 国 に 含 まれ アジア には 含 まれない ( 出 所 )IMF より 大 和 総 研 作 成 人 口 構 成 に 裏 付 けられた 高 度 成 長 このような 発 展 段 階 の 多 様 性 の 背 景 にあるのが アジア 各 国 の 人 口 の 年 齢 構 成 の 多 様 さであ る 図 表 2 は 世 界 197 カ 国 について 横 軸 に 年 齢 中 央 値 縦 軸 に 生 産 年 齢 人 口 (15 歳 ~64 歳 ) 比 率 をプロットしたものである 年 齢 中 央 値 の 低 い( 年 齢 構 成 が 若 い) 図 の 左 下 の 領 域 では 年 齢 が 上 がるほど 生 産 年 齢 人 口 比 率 が 高 いという 関 係 が 明 白 である これは 一 国 の 年 齢 成 熟 化 の 初 期 的 な 過 程 と 同 じく 経 済 発 展 に 応 じて 進 展 する 多 産 多 死 から 多 産 少 死 更 には 少 産 少 死 への 移 行 を 反 映 したものであろう 年 齢 中 央 値 が 20 歳 に 満 たない 国 のほとんどはアフリ カ 諸 国 で 占 められており アジアの 最 若 国 群 は 中 央 値 20.3 歳 のラオス ネパール(21.3 歳 ) フィリピン(22.3 歳 ) カンボジア(23.5 歳 ) バングラデシュ(24.0 歳 )などからなる 冒
3 / 7 頭 に 示 した 最 貧 国 のリストとかなり 重 なっていることが 確 認 されよう 年 齢 中 央 値 と 生 産 年 齢 人 口 比 率 がともに 上 昇 する 局 面 は 前 者 が 30 歳 前 後 に 達 した 時 点 で 終 わり 後 は 高 齢 化 が 生 産 年 齢 人 口 比 率 の 上 昇 を 伴 わずに 進 行 することになる いわゆる 人 口 ボ ーナスが 出 尽 くしとなり ここから 少 子 高 齢 化 が 始 まる 図 表 2 生 産 年 齢 人 口 比 率 と 年 齢 中 央 値 90 85 カンボジア ラオス マレーシア ベトナム ミャンマー 中 国 シンガポール 韓 国 香 港 日 本 生 80 産 年 75 齢 人 70 口 比 65 率 ( % ) インド インドネシア タイ フィリピン 45 10 15 20 25 30 35 40 45 年 齢 中 央 値 ( 歳 ) ( 注 )2010 年 時 点 ( 出 所 )United Nations, World Population Prospects: The 2012 Revision より 大 和 総 研 作 成 アジアの 成 長 の 連 鎖 は 概 ね 年 齢 の 成 熟 度 に 沿 って 実 現 している 高 度 成 長 の 先 陣 を 日 本 が 切 ったのも 年 齢 構 成 上 の 必 然 であった 図 表 3 が 示 すように 70 年 代 初 頭 まで アジア 主 要 国 の 中 では 日 本 のみが 多 産 多 死 多 産 少 死 を 経 て 少 産 少 死 の 局 面 に 入 り 生 産 年 齢 人 口 比 率 が 急 上 昇 していたからである 戦 前 からの 製 造 業 基 盤 の 存 在 冷 戦 構 造 の 定 着 などを 背 景 と した 米 国 からの 援 助 朝 鮮 戦 争 の 特 需 など 日 本 の 高 度 成 長 の 要 因 背 景 はさまざまに 説 明 さ れてきたが 人 口 ボーナスの 享 受 こそがその 最 大 の 要 因 だったと 考 えられよう 他 のアジア 諸 国 が 出 遅 れたのは 1970 年 頃 まで 多 産 少 死 の 局 面 から 抜 け 出 せず 生 産 年 齢 人 口 比 率 が 低 下 し ていたためとも 考 えられる そして 高 度 成 長 のバトンを 韓 国 等 が 受 け 継 いだことも やはり 人 口 構 成 上 の 必 然 だったと みなせよう こうして 先 に 述 べたアジアにおける 経 済 的 アドバンテージは アジアが 多 様 な 年 齢 構 成 の 国 々で 構 成 されていることでもたらされている 経 済 成 長 で 先 行 した 国 の 年 齢 構 成 が 成 熟 化 し 成 長 率 の 鈍 化 に 直 面 する 局 面 で 生 産 年 齢 人 口 比 率 の 上 昇 下 にある 他 の 国 が 高 度 成 長 を 受 け 継 ぐ その 継 続 が 途 切 れていないということである
4 / 7 図 表 3 アジア 諸 国 の 生 産 年 齢 人 口 比 率 (%) 75 70 日 本 インドネシア 中 国 韓 国 タイ ラオス 65 19 19 19 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 20 ( 出 所 )United Nations, World Population Prospects: The 2012 Revision より 大 和 総 研 作 成 以 上 のようなアジアの 優 位 性 は 多 くの 中 小 規 模 の 新 興 国 からなる 中 東 欧 と 比 較 することで より 明 確 になる アジアに 比 較 すれば 中 東 欧 を 構 成 する 国 々の 所 得 水 準 のばらつきは 小 さい シンガポールや 日 本 に 匹 敵 する 高 所 得 国 もなければ 一 人 当 たり GDP が 1,000 ドルに 満 たない 国 もない それでもスロベニア(2012 年 の 一 人 当 たり GDP 22,193 ドル) チェコ( 同 18,579 ドル) スロバキア( 同 16,899 ドル)は 富 裕 国 といってよく グルジア( 同 3,542 ドル) ウ クライナ( 同 3,877 ドル) セルビア( 同 4,943 ドル)などとの 差 は 大 きい 図 表 4 生 産 年 齢 人 口 比 率 と 年 齢 中 央 値 中 東 欧 90 85 生 80 産 年 75 齢 人 70 口 比 65 率 ( % ) セルビア モンテネグロ スロバキア ルーマニア ハンガリー ポーランド ベラルーシ ウクライナ チェコ スロベニア ブルガリア クロアチア グルジア 45 10 15 20 25 30 35 40 45 年 齢 中 央 値 ( 歳 ) ( 注 )2010 年 時 点 ( 出 所 )United Nations, World Population Prospects: The 2012 Revision より 大 和 総 研 作 成
5 / 7 従 って アジアの 経 験 を 当 てはめれば チェコなどの 人 口 構 成 の 成 熟 化 と 賃 金 等 要 素 費 用 の 上 昇 に 伴 い 他 の より 所 得 水 準 が 低 く 年 齢 構 成 の 若 い 国 の 成 長 が 促 されると 考 えたくなる が 恐 らくそうはならない それは 図 表 4 が 示 すように 年 齢 構 成 のばらつきが 極 めて 小 さい ためである つまり グルジア 等 同 地 域 における 所 得 水 準 の 低 い 国 々は 所 得 水 準 が 低 いま まに 年 齢 構 成 の 成 熟 化 が 進 んだことになる こうした 国 に 高 度 成 長 の 実 現 を 期 待 すること は 難 しい 一 つには 高 度 成 長 の 初 期 段 階 をけん 引 する 労 働 集 約 的 製 造 業 の 支 えとなる 若 年 労 働 者 が 少 なすぎるためである さらに 年 齢 構 成 の 成 熟 化 は 総 人 口 の 増 加 余 地 が 小 さくなって いることを 意 味 する そのような 消 費 市 場 としての 拡 大 に 限 界 が 見 える 国 は おのずとグロ ーバル 企 業 による 直 接 投 資 を 引 き 付 けることは 困 難 になる 中 東 欧 の 教 訓 中 国 或 いはミャンマー 中 東 欧 の 現 実 が 示 唆 するのは 労 働 人 口 比 率 の 上 昇 局 面 で 高 成 長 が 実 現 するためには ある 程 度 の 制 度 的 インフラが 整 備 されている 必 要 があるということだ グルジアやウクライナが 所 得 水 準 の 低 いままに 老 いてしまった つまり 生 産 年 齢 人 口 比 率 の 上 昇 を 高 度 成 長 に 結 びつける ことができなかったのは ソ 連 経 済 圏 の 中 での 分 業 体 制 において 主 として 農 業 生 産 を 割 り 当 てられた 結 果 である 可 能 性 が 高 い こうした 制 度 的 条 件 が 製 造 業 の 勃 興 のみならず 高 度 成 長 期 に 特 有 の 都 市 化 それに 伴 う 住 宅 や 耐 久 財 需 要 の 増 加 などが 実 現 する 妨 げになったと 考 え られる 地 域 全 体 としてみれば こうした 制 度 的 不 利 が 深 刻 ではなかったことも アジアにおける 成 長 連 鎖 の 重 要 な 背 景 をなしている そして この 文 脈 でいえば アジア 地 域 最 大 の 事 件 は 中 国 の 改 革 開 放 であるに 違 いない 同 政 策 は 1970 年 代 末 まさに 生 産 年 齢 人 口 比 率 が 急 上 昇 する 局 面 で 始 まった このことは 人 口 ボーナスが 同 国 の 市 場 経 済 化 を 通 じた 高 度 成 長 を 後 押 ししたと 評 価 することも 可 能 であろうし 仮 に 中 国 が 改 革 開 放 に 踏 み 切 ることがなければ 人 口 ボーナスの 果 実 を 得 ることなく 高 度 成 長 の 機 会 を 事 実 上 永 遠 に 逸 してしまっていた 可 能 性 が 高 いということでもある その 場 合 には 例 えばインドネシアの 成 長 率 が 若 干 押 し 上 げられたといったことが 起 こって いたかもしれない しかし 中 国 が 閉 鎖 的 経 済 体 制 を 維 持 するということは 同 国 における 億 単 位 の 労 働 力 がグローバル 経 済 の 枠 外 に 置 かれたままになるということであり アジアにおけ る 労 働 市 場 は 逼 迫 し 高 い 賃 金 上 昇 圧 力 の 下 で 地 域 全 体 の 成 長 率 は 抑 制 されざるを 得 なかっ たであろう また 近 年 大 いに 注 目 されているミャンマーにしても 軍 事 政 権 による 独 裁 を 継 続 してい れば 中 東 欧 化 してしまった 可 能 性 が 高 い 同 国 は 中 東 欧 の 最 貧 国 以 上 に 所 得 水 準 が 低 い ため 成 長 機 会 を 失 うことによる 潜 在 的 損 失 はより 莫 大 だったはずである ミャンマーは 年 齢 中 央 値 が 27.8 歳 所 得 水 準 の 見 合 いからすれば さほど 若 い 国 ではない それだけ 長 く 続 い た 事 実 上 の 鎖 国 が 同 国 に 経 済 的 損 失 を 与 えてきたということであろう 同 国 の 生 産 年 齢 人 口 比 率 は 2025 年 頃 にピークに 達 する 人 口 の 成 熟 化 と 海 外 経 済 とのリンケージとの 両 輪 による 高
6 / 7 度 成 長 を 実 現 する 上 で 軍 事 独 裁 の 放 棄 が 遅 きに 失 することはなかったと 思 われるが 製 造 業 基 盤 の 整 備 を 急 ぐ 必 要 があることは 間 違 いあるまい ポスト 中 国 はどこか アジアにおける 成 長 連 鎖 の 歴 史 において 中 国 は 絶 大 な 存 在 感 を 示 してきた 高 度 成 長 の 先 発 国 から 後 発 国 への 移 行 は 前 者 における 賃 金 等 の 要 素 費 用 の 上 昇 を 重 要 な 背 景 としているが それがどのようなペースで 上 昇 するかは 大 雑 把 には 成 長 率 の 速 さと 初 期 時 点 の 余 剰 労 働 力 のパイの 大 きさで 決 まる その 点 中 国 は 労 働 市 場 の 懐 が 圧 倒 的 に 深 く 顕 著 な 賃 金 上 昇 を 伴 わない 高 度 成 長 を 長 期 間 持 続 させることができた このことは アジア 地 域 のみならず 世 界 経 済 全 体 にとって 明 らかなプラスであったが 一 面 で 地 域 における 先 行 国 から 後 発 国 へという 成 長 の 新 陳 代 謝 を 遅 らせる 要 因 になってきた 可 能 性 がある しかし このような 中 国 がアジアの 成 長 のコアであり 続 けるという 局 面 が 終 焉 に 近 づいて いるらしいことは 同 国 の 生 産 年 齢 人 口 比 率 が 2010 年 にピークに 達 したことからも 示 唆 される 問 題 は その 域 内 他 国 へのインパクトである ここまでの 文 脈 に 従 って 考 えれば ポスト 中 国 の 恩 恵 を 最 も 受 けやすいのは 現 時 点 で 生 産 年 齢 人 口 比 率 が 上 昇 局 面 にある 国 地 域 とい うことになろう ただし 人 口 の 絶 対 水 準 も 無 視 し 得 ないポイントであると 思 われる 中 国 を 含 むアジア 各 国 に 拠 点 を 構 えるグローバル 企 業 の 意 識 において 中 国 における 成 功 体 験 が 貴 重 なレッスンになっている 可 能 性 が 高 いためである つまり 労 働 集 約 財 の 生 産 拠 点 としてキャ ッチアップを 開 始 した 中 国 が これだけ 長 期 の 高 度 成 長 を 実 現 させたのは 継 続 的 な 所 得 水 準 の 上 昇 により 同 国 のステイタスが 単 純 な 生 産 拠 点 から 生 産 拠 点 かつ 巨 大 な 消 費 市 場 にステ ップアップしたからであった グローバル 企 業 がこのような 展 望 を 踏 まえて 被 投 資 国 を 選 択 す るとすれば 人 口 規 模 は 重 要 なポイントになる そこで 図 表 5 では 一 定 程 度 の 人 口 を 有 する 国 地 域 の 生 産 年 齢 人 口 比 率 の 推 移 を 示 して いる 人 口 規 模 年 齢 構 成 いずれの 面 からも 現 在 最 も 有 利 な 位 置 にいるのはインドであ る(2010 年 の 総 人 口 12 億 5 万 人 ) しかし そもそもアジアにおける 成 長 の 連 鎖 の 範 疇 に 同 国 を 入 れるべきかという 問 題 がある 第 一 に インドの 成 長 パターンはこれまでのところ サービス 産 業 主 導 型 であり 製 造 業 をけん 引 役 とした 東 アジアとの 違 いは 大 きい グローバル 企 業 が 同 国 の 経 済 成 長 に 重 要 な 役 割 を 果 たしていることは 確 かだが 労 働 集 約 財 の 生 産 拠 点 で はなく サービス 生 産 の 拠 点 であるか 或 いは 自 動 車 などの 資 本 集 約 財 の 生 産 拠 点 として 位 置 付 けられる 傾 向 が 強 い 製 造 業 については 外 国 企 業 がインドに 求 めるのは 同 国 の 内 需 であり グローバルな 生 産 ネットワークの 一 つとして 同 国 を 組 み 入 れる 動 きは 限 定 的 であると 思 われる そこではやはり 物 的 インフラの 未 熟 さ 労 働 市 場 の 分 断 などにより 生 産 拠 点 として 考 えた とき 同 国 は 決 して 低 コスト 国 ではないという 事 情 が 働 いていよう インドの 成 長 ポテンシャ ルを 過 小 評 価 することも 危 険 であるが こうした 状 況 から 脱 皮 しない 限 り こと ポスト 中 国 としてのメリットを 同 国 が 享 受 することは 難 しい
7 / 7 図 表 5 人 口 大 国 地 域 の 生 産 年 齢 人 口 比 率 (%) 75 70 65 インドネシア インド インドシナ 中 国 フィリピン 45 19 19 19 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 20 ( 注 )インドシナはタイ ベトナム カンボジア ミャンマー ラオスの 加 重 平 均 ( 出 所 )United Nations, World Population Prospects: The 2012 Revision より 大 和 総 研 作 成 他 の 3 カ 国 地 域 は 中 国 からの 成 長 の 連 鎖 を 受 け 継 ぐ 上 で それぞれの 強 みを 持 っている 人 口 規 模 と 年 齢 の 若 さを 兼 ね 備 えているという 面 では インドネシアが 地 域 の 最 有 力 というこ とになろう(2010 年 の 総 人 口 2 億 4,070 万 人 ) インドシナ 5 カ 国 (タイ ベトナム カン ボジア ミャンマー ラオス 5 カ 国 合 計 の 2010 年 の 総 人 口 は 2 億 2,810 万 人 )の 強 みは 同 地 域 がいわば プチ アジア の 様 相 を 呈 していることにある 述 べてきたように アジアの 地 域 としての 強 みは 構 成 国 の 発 展 段 階 の 多 様 性 にあった これが 長 期 的 な 成 長 の 連 鎖 を 可 能 にすると 同 時 に 地 域 における 分 業 体 制 の 不 断 の 深 化 をもたらしている インドシナはインド ネシアやフィリピンなどに 比 べれば 人 口 構 成 は 成 熟 化 しているものの 地 域 内 に 所 得 水 準 が 低 く 年 齢 構 成 の 若 い 国 地 域 を 抱 えている ここが 例 えばバンコク 周 辺 からの 生 産 拠 点 の 受 け 皿 になるなど インドシナ 内 での 新 陳 代 謝 が 見 込 めることが 強 みである こうした 展 開 を 物 流 インフラの 整 備 が 後 押 しすることになろう フィリピンの 強 みは 圧 倒 的 な 年 齢 構 成 の 若 さにある 若 さは 人 口 増 加 率 の 高 さと 裏 腹 の 関 係 にあり 2010 年 時 点 の 総 人 口 は 9,340 万 人 インドネシアの 41%にすぎないが 2020 年 には 45% 2030 年 には %に 達 する 同 国 は 海 外 出 稼 ぎ 労 働 者 からの 送 金 が GDP 比 10%に 達 すると いう 他 のアジア 諸 国 に 見 られない 特 色 を 有 するが これは 消 費 レベルの 底 上 げに 寄 与 する 一 方 で 英 語 の 話 せる 潜 在 的 な 余 剰 労 働 者 の 豊 富 さを 示 すものでもある 上 記 3 カ 国 地 域 それぞれが ポスト 中 国 期 におけるメリットを 享 受 しやすい 位 置 にいる 中 国 経 済 の 成 熟 が アジアにおける 成 長 の 連 鎖 が 終 わりを 意 味 しないことは 明 白 である 地 域 としてのアジアが 他 を 圧 する 成 長 パフォーマンスを 今 後 20 年 超 にわたって 継 続 することは ほ ぼ 間 違 いない