実 験 室 スケールの 現 象 をどのようにして 天 体 に 応 用 するか?その 合 理 性 と 限 界 は? THE SCALING OF IMPACT POCESSES IN PLANETAY SCIENCES K. A. Holsapple, 1993 神 戸 大 学 M1 原 田 竣 也
クレーター 形 成 実 験 の 問 題 点 衝 突 クレーターは 天 体 表 面 で 普 遍 的 で 主 要 な 地 質 プロセス どのような 衝 突 体 サイズ, 衝 突 速 度, 標 的 強 度 によって 形 成 されたかを 知 るには? 実 験 的 手 法 物 質 の 密 度 やサイズ, 強 度 を 操 作 できる その 場 で 直 接 観 察 ができる しかし 衝 突 速 度 サイズや 重 力 などの 実 際 との 乖 離 衝 突 メルトや 蒸 気 の 発 生 を 考 慮 できない 速 度 域 どうすれば 天 体 スケールへ 応 用 出 来 るのか?
衝 突 体 サイズで 衝 突 を 考 える 物 理 量 のスケールを 考 えてみる 衝 突 体 ( 半 径 a, 速 度 U, 密 度 )によるクレーター 形 成 はサイズスケールa, 速 度 スケールU, 時 間 スケールτ, 質 量 スケールa 3 による これらスケールを 無 次 元 化 すれば 絶 対 値 に 縛 られない しかし 本 来 これらは 衝 突 体 サイズ 程 度 の 空 間 スケールのみに 当 てはまる 衝 突 体 サイズよりも 大 きく 成 長 したクレーター(aの 数 倍 以 上 )や 衝 突 後 の 時 間 スケール(τの 数 倍 以 上 )では? 最 終 クレーター 体 積 に 物 理 量 はどう 影 響 するか? a a 3 U τ 衝 突 体 サイズとクレーターサイズを 結 びつける 理 論 が 必 要
衝 突 を 点 源 に 近 似 する 衝 突 点 から クレーター 全 体 への 橋 渡 し: 点 源 近 似 衝 突 過 程 を 点 源 問 題 として 考 える 衝 突 点 に 衝 突 の 総 エネルギー 運 動 量 が 存 在 し,それが 外 側 へ 時 間 とともに 伝 播 すると 考 える 衝 突 点 遠 方 への 力 の 伝 播 がわかる 衝 突 体 と 標 的 に 関 するに 関 するパラメーターについて, 圧 力 強 度 比 や 密 度 比 をとることで 無 次 元 化 関 係 式 がべき 乗 則 で 表 せる どんなべき べき 乗 則 に 従 うか スケーリング 則 の 決 定
近 似 の 方 法 衝 撃 波 の 点 源 近 似 前 密 度 ρ 0 の 無 限 範 囲 に 広 がる 理 想 気 体 初 期 圧 力 を 持 つ 半 径 a の 球, それ 以 外 の 圧 力 はP 0 衝 撃 波 背 後 圧 力 p, 衝 撃 波 位 置, 衝 撃 波 圧 力 P f は 次 のような 物 理 量 の 組 み 合 わせで 決 まる p = p r, t, a,, P 0, ρ 0, γ = t, a,, P 0, ρ 0, γ P f = F t, a,, P 0, ρ 0, γ 無 次 元 化 p = f a = f P f = f ρ 0, P 0 a r a, t, P 0 t, P 0 t, P 0 理 想 気 体 定 数 :γ 時 間 :t r, p 衝 撃 波 面, P f 初 期 エネルギーは E 1 = 4π 3 γ 1 a3 時 間 スケール = a ρ 0 ( 音 速 の 伝 わる 時 間 )
近 似 の 方 法 衝 撃 波 の 点 源 近 似 p = f a = f P f = f r a, t, P 0 t, P 0 t, P 0 時 間 スケール ρ 0, P 0 P 0 P 0 は 無 視 r, t は 衝 突 体 サイズスケールに 比 べ 大 きい r a, t 1 点 源 へ 近 似 :a, 0 すなわち このような 極 限 は? = a ρ 0 点 源 に 残 っている とaの 組 み 合 わせで 以 下 のように 極 限 をとる lim a 0 a β 一 定 β は 正 の 値 理 想 気 体 定 数 :γ 時 間 :t r, p 衝 撃 波 面, P f
近 似 の 方 法 衝 撃 波 スケーリング 則 の 導 出 lim a 0 a β p = f a = f P f = f r a, t, P 0 t, P 0 t, P 0 一 定 より, 次 元 解 析 して 各 式 は p a P f r a t t β = f 2 t r a 2+β = 一 定 2β 2+β = 一 定 β+2 2 点 源 の 極 限 が 存 在 する= など 物 理 量 の 値 が 決 定 される 点 源 近 似 した 場 合 のスケーリング 則 の 導 出 指 数 を 求 める(ここではβ) スケーリング 則 のべきの 決 定 この 結 果 は 球 状 爆 風 の 観 測 結 果 と 合 う 形 となった 求 めたい 項 目 ごとに 点 源 近 似 しスケーリング 則 を 求 める
クレーター 体 積 のスケーリング 衝 突 体 が 標 的 ( 表 面 重 力 g, 強 度 Y, 密 度 ρ)に 衝 突 するときのクレーター 体 積 V これを 無 次 元 化 して V = f a, U,, ρ, Y, g 標 的 強 度 と 初 期 動 圧 の 比 ρ, Y, g a U V ρv m = f ga U 2, Y ρu 2, ρ, m = 4π 3 a3 クレーター 質 量 / 衝 突 体 質 量 クレーター 効 率 = π V 静 水 圧 と 初 期 動 圧 の 比 質 量 密 度 比 強 度 支 配 域 なら ρga Y 重 力 支 配 域 なら ρga Y ρv m = f Y ρu 2 ρv = f ga m U 2
点 源 近 似 した 体 積 スケーリングの 導 出 衝 突 体 に 関 するある 基 準 C = au μ ν を 仮 定 する(Holsapple 1981) μとνは 未 知 数 だが 実 験 的 に 求 められる 値 体 積 スケーリングは,V = f au μ ν, ρ, Y, g より 次 元 解 析 して 強 度 支 配 域 : ρv m Y ρu 2 3μ 2 ρ 3ν 1 ga ρu = F 2 U 2 Y 2 ρ ν 重 力 支 配 域 : ρv m ga U 2 3μ ρ 6ν 2 μ = G Y ρu 2 ga U 2 2 強 度 支 配 域 では 重 力 項 を, 重 力 支 配 域 では 強 度 項 を 無 視 ( 右 辺 F 0, G 0 より 定 数 ) V m ρ ρu 2 Y 3μ 2 ρ 1 3ν 1, V m ρ ga U 2 両 支 配 域 の 体 積 スケーリングが 求 められた 3μ ρ ρ 2ν 6ν 2
Y ρga π V スケーリング 強 度 支 配 域 (クレーターサイズ: 小 ) 重 力 支 配 域 (クレーターサイズ: 大 ) クレーター 効 率 π V = ρv m 衝 突 速 度 1 クレーターサイズ α = 3μ 2 + μ 重 力 スケールサイズ π 2 = ga U 2 式 1,2でρ~とおくと, 同 ターゲットに 対 して 強 度 支 配 域 : クレーター 効 率 π V は 衝 突 速 度 のみに 依 存 重 力 支 配 域 :クレーター 効 率 π V は 衝 突 体 サイズのみに 依 存
移 行 を 含 むπ V スケーリングの 導 入 目 的 : 強 度 支 配 域 重 力 支 配 域 の 中 間 領 域 も 取 り 扱 う 強 度 - 重 力 支 配 域 の 移 行 を 含 む 経 験 式 π V = K 1 π 2 ρ π 2 = ga U 2, π 3 = 6ν 2 μ 3μ K 2 π 3 π 3 として 整 理 すると Y + K 2 π 3 ρ 6ν 2 3μ 2 3μ ρu 2,K 1, K 2 は 重 力, 強 度 に 関 する 定 数 1 3 + π 3 2 α ρ π V = K 1 π 2 強 度 - 重 力 支 配 域 の 移 行 はY = ρgaのとき 括 弧 内 の 二 項 が 等 しい 時 すなわち,π 2 = Y ρu 2,α = 3μ 2 の 時 に 強 度 - 重 力 支 配 域 の 移 行
π V スケーリング- 結 果 の 例 クレーター 効 率 π V = ρv m 強 度 支 配 域 重 力 支 配 域 重 力 スケールサイズ π 2 = ga U 2 比 較 的 柔 らかい 岩 石 への 衝 突 実 験 結 果 地 球 重 力 において 10 km/sで 衝 突 衝 突 体 半 径 が 10 km 以 上 で 重 力 支 配 域 クレーター 体 積 4 10 6 m 3 移 行 領 域 を 求 め ることができる
クレーターのサイズ- 単 純 クレーターの 半 径 天 体 の 小 さなおわん 型 クレーター 実 験 では e, 観 測 では r をよく 利 用 一 般 的 な 半 径 に 関 するスケーリング 2 r h d e d r π = m 1 3 = K 1 π 2 ρ 1 3 + π 3 2 α 3 2 e 重 力 支 配 域 ではπ = K 1 π α 2 3 乾 いた 土 壌 への 実 験 (Schmidt & Housen 1987)から e は e = 7.8G 0.17 a 0.83 U 0.34 r は 実 験 (Schmidt & Housen 1983)からこの 係 数 の1.3 倍 となり r = 10.14G 0.17 a 0.83 U 0.34 (Gは 重 力 に 関 する 項 )
サイズスケーリングの 適 用 堆 積 土 壌 への 実 験 (Schmidt et al. 1986)より, e d e = 2, h e 0.07 月 の 観 測 結 果 (Pike 1977)より, r d r = 2.55, h r = 0.072 e = 7.8G 0.17 a 0.83 U 0.34 を 月 の 値 でそれぞれで 割 って d r = 4.0G 0.17 a 0.83 U 0.34 h = 0.71G 0.17 a 0.83 U 0.34 月 のクレーターの 深 さ リム 高 さが 求 められる 半 径 に 関 するスケーリングπ も 当 てはめられる d e 2 r d r 2 e h
クレーターのサイズ- 複 雑 クレーターの 半 径 浅 く 直 径 が 大 きなクレーター 1 単 純 クレーターからの 移 行 ρ, Y, g 2 クレーター 緩 和 とともに r t t : 移 行 半 径 最 終 リム 半 径 は = f t, ρ, Y, g より, 無 次 元 化 して t = f ρg t Y ある 移 行 半 径 を で 書 き 換 えて, Y ρg より t = 3 クレーター 半 径 π = m β 重 力 スケールサイズ π 2 = ga U 2 に 関 する スケーリング
複 雑 クレーターのスケーリング 指 数 の 推 定 t = β クレーター 緩 和 とともに r t 2 ρ, Y, g クレーター 体 積 はスランピングを 経 ても 一 定 月 のクレーター 観 測 (Crof985):β = 0.15 体 積 一 定 +エジェクタブランケットの 厚 さはエネルギー スケーリングに 従 う(Melosh 1989) Holsapple: 体 積 一 定 + 実 際 の 観 測 値 から, 体 積 はの 関 数 とし て 決 定 できる β = 0.079 r = 1.02 0.079, e = 1.32 0.079
移 行 前 からのクレーター 半 径 の 変 化 割 合 月 の 複 雑 クレーターのサイズ 移 行 によるクレーター 半 径 の 変 化 Croft (1985):β = 0.15 Shoemaker (1962) Copernicusの r Melosh (1989) Copernicusのモデル 計 算, r = e Grieve and Head (1983) Manicouaganの e Holsapple = 1.02 0.079 r = 1.32 0.079 e r と e を 区 別 できる
クレーターリム 半 径,リム 深 さ km 月 面 クレーターサイズ 単 純 クレーター 複 雑 クレーター スケーリング 則 から 月 の 単 純 - 複 雑 の 移 行 半 径 は8.5 km 8.5 観 測 値 (Pike 1977) と 等 しい 深 さについて d = 0.313 0.301 衝 突 体 半 径 km 観 測 値 (Pike 1977) と 同 等 月 面 クレーターに スケーリング 則 が 適 用 できる
スケーリング 則 と 月 面 クレーター 半 径 25 kmの 衝 突 体 が,25 km/sで 月 に 衝 突 するとき まず 深 さ72 km, 半 径 141 kmの 穴 を 開 ける (d r = 4.0G 0.17 a 0.83 U 0.34, e = 7.8G 0.17 a 0.83 U 0.34 ) 移 行 前 のリム 半 径 は150 km ( r = 10.14G 0.17 a 0.83 U 0.34 ) 重 力 による 緩 和 で, 深 さは7.3 km, 半 径 244 kmとなる ( d = 0.313 0.301, e = 1.32 0.079 ) 最 初 の 深 さはとても 深 いように 見 えるが,この 結 果 はモデル 計 算 (obby et al. 1987)に 似 たような 値 である サイズスケーリングから, 月 面 の 複 雑 クレーターの 形 状 を 予 測
まとめ 衝 突 直 下 の 点 源 に 衝 突 の 総 エネルギー 運 動 量 が 存 在 すると 近 似 し, スケーリング 則 を 求 めた 衝 突 に 関 するパラメーターを 無 次 元 化 し,どのようなべき 乗 則 に 従 うかを 求 めた クレーター 効 率 π V は, 強 度 - 重 力 支 配 域 の 移 行 を 含 めた 関 数 を 求 められた ( 実 験 結 果 より) 月 のクレーターの 半 径 や 深 さは,その 観 測 と 実 験 結 果 からスケーリング 則 が 求 められ, 月 の 実 際 と 比 較 できた 実 験 室 スケールの 現 象 をどのようにして 天 体 に 応 用 するか? 点 源 近 似 を 仮 定 したスケーリング 則 を 適 用 しパラメーターを 調 べることで, 実 験 室 のデータを 応 用 する その 合 理 性 と 限 界 は? 導 いたスケーリング 則 は 実 際 の 観 測 とも 合 う 一 方, 衝 突 メルト 蒸 気 などの 現 象 も 考 慮 する 必 要 がある