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定款  変更

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

Microsoft Word 第1章 定款.doc

参 考 様 式 再 就 者 から 依 頼 等 を 受 けた 場 合 の 届 出 公 平 委 員 会 委 員 長 様 年 月 日 地 方 公 務 員 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 261 号 ) 第 38 条 の2 第 7 項 規 定 に 基 づき 下 記 のとおり 届 出 を します この

財団法人○○会における最初の評議員の選任方法(案)

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Taro-○離島特産品等マーケティング支援事業に係る企画提案募集要領

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

別 紙

Speed突破!Premium問題集 基本書サンプル

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

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った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

答申第585号


ような 厚 生 年 金 基 金 関 係 の 法 改 正 がなされており (2)については 平 成 16 年 10 月 1 日 から (1) 及 び(3)については 平 成 17 年 4 月 1 日 から 施 行 されている (1) 免 除 保 険 料 率 の 凍 結 解 除 ( 母 体 企 業 (

続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

定款

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

異 議 申 立 人 が 主 張 する 異 議 申 立 ての 理 由 は 異 議 申 立 書 の 記 載 によると おおむね 次 のとおりである 1 処 分 庁 の 名 称 の 非 公 開 について 本 件 審 査 請 求 書 等 について 処 分 庁 を 非 公 開 とする 処 分 は 秋 田 県

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

景品の換金行為と「三店方式」について

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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18 国立高等専門学校機構

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係


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学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

神 戸 法 学 雑 誌 65 巻 1 号 45 神 戸 法 学 雑 誌 第 六 十 五 巻 第 一 号 二 〇 一 五 年 六 月 a b c d 2 a b c 3 a b 4 5 a b c

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

第4回税制調査会 総4-1

弁護士報酬規定(抜粋)

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長 は10 年 ) にすべきことを 求 める ⑸ 改 善 意 見 として 事 務 引 継 書 にかかる 個 別 フォルダーの 表 示 について 例 えば 服 務 休 暇 全 般 ( 事 務 引 継 書 を 含 む) といったように 又 は 独 立 した 個 別 フォルダーとして 説 明 を 加 え

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

人 に 使 用 される 者 としての 勤 続 期 間 を 当 該 職 員 となつた 者 の 職 員 としての 勤 続 期 間 に 通 算 することと 定 められている 法 人 に 限 る )をいう 3 第 一 項 の 退 職 手 当 通 算 予 定 職 員 とは 任 命 権 者 又 はその 委 任

23信託の会計処理に関する実務上の取扱い

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第 3 章 会 員 ( 会 員 の 資 格 ) 第 5 条 協 会 の 会 員 は 協 会 の 目 的 に 賛 同 して 入 会 した 次 の 各 号 に 掲 げる 者 とする (1) 軽 種 馬 を 生 産 する 者 (2) 軽 種 馬 を 育 成 する 者 (3) 馬 主 (4) 調 教 師 (

1

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

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年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 における 年 金 財 政 のイメージ 積 立 時 給 付 時 給 付 定 基 (1/2) で 年 金 を 基 準 利 率 で 付 利 給 付 定 基 ( 付 与 利 の ) 有 期 年 金 終 身 年 金 退 職 1 年 2 年 1 月 2 月 ( 終 了 )

一般競争入札について

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財団法人山梨社会保険協会寄付行為


Taro-事務処理要綱250820

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目     次

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技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

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4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

ー ただお 課 長 を 表 示 するものとする ( 第 三 者 に 対 する 許 諾 ) 第 4 条 甲 は 第 三 者 に 対 して 本 契 約 において 乙 に 与 えた 許 諾 と 同 一 又 は 類 似 の 許 諾 を することができる この 場 合 において 乙 は 甲 に 対 して 当

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6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

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別紙3

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

も た ら そ う と す る 効 標 標 名 標 設 定 考 え 方 単 位 4 年 度 実 績 5 年 度 見 込 6 年 度 計 画 7 年 度 計 画 8 年 度 計 画 法 規 定 に 基 づく 選 挙 事 務 ため 標 というような は 困 難 である 事 業 実 施 妥 当 性 活 動

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公表表紙

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PowerPoint プレゼンテーション

⑨持分法基準

第1章 財務諸表

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

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16 日本学生支援機構

文化政策情報システムの運用等

Q IFRSの特徴について教えてください

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Transcription:

議 院 内 閣 制 の 二 つのモデルと 実 定 憲 法 論 堀 内 健 志 目 次 1. 序 問 題 の 所 在 2. 議 院 内 閣 制 の 二 つのモデル 3. 実 定 憲 法 解 釈 論 としての 議 院 内 閣 制 4. 結 び 1. 序 問 題 の 所 在 (1) 憲 法 学 上 の 統 治 組 織 論 に 登 場 する 国 家 機 関 相 互 間 の 諸 態 様 は もともと 近 代 立 憲 主 義 の 歴 史 的 発 展 過 程 に 即 して 生 成 展 開 され てきたものである 権 力 分 立 原 理 や 議 院 内 閣 制 といった 制 度 もその 例 外 ではない 従 っ て これらの 統 治 組 織 原 理 は その 背 景 と なっている 歴 史 的 政 治 的 な 状 況 すなわち 絶 対 君 主 制 のもとその 権 威 に 基 づく 行 政 府 と 人 民 の 意 思 を 反 映 する 議 会 との 間 の 二 元 的 対 立 を 背 景 とする 国 家 社 会 構 造 において 理 解 されたものであることはよく 知 られている が このような 政 治 状 況 が 克 服 解 消 され た 今 日 の 現 代 民 主 制 のもとにおいても 権 力 分 立 原 理 や 議 院 内 閣 制 がなお 実 定 憲 法 上 の 制 度 として 存 続 し そのような 統 治 制 度 を 前 提 とした 憲 法 条 項 がみられるし また 学 説 上 も かかる 制 度 についての 解 説 がなされている これをどのように 理 解 すべきであるか と いう 問 題 は 憲 法 論 上 古 くしてまた 新 しい 難 題 である (2) 今 日 の 通 説 的 見 解 によると わが 国 の 日 本 国 憲 法 は 議 院 内 閣 制 を 採 用 していると いう その 根 拠 としては まず 第 一 に 憲 法 66 条 3 項 で 内 閣 は 行 政 権 の 行 使 につい て 国 会 に 対 し 連 帯 して 責 任 を 負 ふ と 規 定 し 行 政 府 が 議 会 に 対 して 責 任 を 負 う 近 代 立 憲 主 義 における 責 任 政 治 の 原 則 が 表 明 され ている そして もう 一 つ 憲 法 69 条 は 内 閣 は 衆 議 院 で 不 信 任 の 決 議 案 を 可 決 し 又 は 信 任 の 決 議 案 を 否 決 したときは 十 日 以 内 に 衆 議 院 が 解 散 されない 限 り 総 辞 職 をしな ければならない と 規 定 し ややわかりにく い 言 い 回 しであるが 解 釈 上 ここに 内 閣 が 衆 議 院 の 信 任 を 失 った 場 合 に 解 散 権 をもってこ れに 対 抗 しうるものとされる 近 代 立 憲 主 義 的 な 二 元 的 構 造 が 伺 われる (3) 従 来 わが 国 の 学 説 上 行 政 府 の 議 会 に 対 する 責 任 にこの 制 度 の 本 質 を 見 る 責 任 本 質 説 と 二 元 的 構 造 に 力 点 をおく 対 等 均 衡 説 と があり 後 者 の 立 場 からは 憲 法 70 条 で 内 閣 が 解 散 権 を 行 使 したとしても 衆 議 院 議 員 総 選 挙 の 後 に 初 めて 国 会 が 召 集 があったとき は 内 閣 は 総 辞 職 をしなければならない ことになっているので わが 国 は 議 院 内 閣 制 というよりも 議 会 がより 強 い 議 会 支 配 制 に 近 いものではないかといった 議 論 もなされた これは 議 院 内 閣 制 の 本 質 をフランス 第 三 共 和 制 以 後 の 解 散 権 が 行 使 されない 議 会 優 位 型 として 捉 えるか イギリス 古 典 型 などにみ られた 議 会 と 政 府 との 均 衡 型 として 捉 えるか によってその 位 置 づけが 異 なるといったこと が 背 景 にあった が いずれにしても 議 会 と 政 府 との 関 係 を 前 提 として 議 会 による 民 主 的 統 制 のあり 方 が 議 論 されることになる (4)さて 周 知 のごとく 平 成 17 年 8 月 8 日 かねてから 話 題 になっていた 郵 政 民 営 化 法 案 をめぐり 自 民 党 内 部 は 大 きく 意 見 が 割 れ 衆 議 院 ではかろうじて 過 半 数 の 賛 成 を 得 て 通 147

過 したものの 参 議 院 では 僅 少 差 ながら 否 決 される 事 態 となり 小 泉 総 理 大 臣 はこの 法 案 が 国 会 内 では 承 認 を 得 られないとみて 衆 議 院 を 解 散 した 9 月 11 日 に 行 われた 総 選 挙 で 連 立 与 党 が 衆 議 院 の 総 議 席 の 3 分 の 2 を 上 回 る 圧 倒 的 多 数 の 議 席 を 獲 得 して 新 たな 国 会 において 同 法 案 は 可 決 成 立 した このような 解 散 権 の 行 使 のあり 方 を 憲 法 学 上 の 議 院 内 閣 制 との 関 係 でどのように 理 解 す べきかという 問 題 が 提 起 されうるわけであ る 2. 議 院 内 閣 制 の 二 つのモデル a 権 力 分 立 モデル 議 院 内 閣 制 は 歴 史 的 にみると 絶 対 君 主 制 から 制 限 君 主 制 或 いは 権 力 分 立 へという 近 代 立 憲 主 義 の 発 展 経 緯 を 反 映 して 国 家 元 首 の 権 力 の 衰 退 さらには 消 滅 最 終 的 には 会 議 政 ( 議 会 支 配 制 )にいたる 過 程 の 間 にみられ る 元 首 内 閣 議 会 間 の 諸 々の 政 治 的 相 互 関 係 の 一 態 様 として 把 握 されうるものであっ た (1) 議 会 と 行 政 府 との 間 の 関 係 で いまアメリ カ 大 統 領 制 のように 連 邦 議 会 と 大 統 領 がそれ ぞれ 別 個 に 選 出 され 議 会 に 責 任 を 負 う 体 制 に ないもの( 隔 絶 型 )と 議 会 が 完 全 に 政 治 権 力 を 掌 握 し 政 府 は 議 会 の 命 令 に 従 う 実 行 委 員 会 のごとき 体 制 である 会 議 政 ( 議 会 支 配 制 ) 及 びこれとちょうど 反 対 の 関 係 で 議 会 と 政 府 が 対 照 をなす 独 裁 制 ( 主 従 型 )とを 度 外 視 する そうすると その 中 間 的 な 両 者 の 協 同 型 を なすものとしては 君 主 が 国 務 大 臣 の 任 命 権 を 持 ちこれに 対 して 議 会 は 君 主 じしんに 対 し ては 責 任 追 及 ができず 議 会 が 担 当 国 務 大 臣 に 対 する 責 任 追 及 をするという 絶 対 君 主 の 力 が 比 較 的 強 かった19 世 紀 ドイツにみられる 君 主 政 原 理 の 体 制 ( 大 臣 共 同 責 任 制 )がある が さらに 内 閣 が 議 会 に 対 しても 責 任 を 負 う つまりここでは 議 会 が 内 閣 に 対 して 不 信 任 決 議 権 を 行 使 し これに 対 して 国 王 が 議 会 解 散 権 をもって 対 抗 する 古 典 的 な 均 衡 型 議 院 内 閣 制 が 確 立 する これがイギリス 古 典 型 議 院 内 閣 制 と 言 われるものである かかる 協 同 型 構 造 は 王 政 復 古 期 のフラン ス(オルレアン 型 )や 共 和 制 下 の 大 統 領 制 の もとでも(ヴァイマール 憲 法 )みられる フ ランス 第 五 共 和 制 憲 法 は この 協 同 型 にも 類 似 するが 大 統 領 が 政 府 の 責 任 追 及 ができな いので 半 大 統 領 制 と 称 される この 大 統 領 が 1962 年 以 降 直 接 公 選 制 となり その 民 主 的 正 当 性 が 確 保 される ドイツ 基 本 法 では 政 府 の 議 会 解 散 権 が 厳 しく 制 限 されているが 同 時 に 不 信 任 決 議 の ほうも 建 設 的 なものに 限 定 されていて( 基 本 法 67 条 ) 均 衡 型 となっている ここでは 大 統 領 は 連 邦 議 会 議 員 を 含 む 連 邦 会 議 で 選 出 されることになっている 一 方 において 1875 年 フランス 第 三 共 和 制 憲 法 下 大 統 領 の 議 会 解 散 権 規 定 が 死 文 化 し た 結 果 議 会 優 位 の 議 院 内 閣 制 となった とい うのも 1877 年 5 月 16 日 マクマオン 元 帥 が 議 会 を 解 散 して 優 位 に 立 とうとしたところ 予 想 に 反 して 議 会 多 数 派 が 代 議 院 に 送 り 込 まれて しまい 自 らの 目 的 を 達 成 することができな かったことがその 後 解 散 権 が 行 使 されないと いう 慣 例 をつくってしまったのである この 体 制 は 第 四 共 和 制 においても 議 会 解 散 権 を 制 限 することにより 引 き 継 がれることになっ た フランス 責 任 本 質 型 議 院 内 閣 制 がこれで ある b 民 主 主 義 モデル また 他 方 においては 19 世 紀 後 半 のイギリ スで 選 挙 権 の 拡 大 にともない 国 民 の 政 治 過 程 への 参 加 が 実 現 し 議 会 の 多 数 政 党 の 指 導 者 が 内 閣 を 組 閣 すると ここに 有 権 者 下 院 内 閣 のルートが 確 立 し この 民 主 的 内 閣 が 国 王 の 権 力 の 名 目 化 にともない 国 民 の 意 思 を 代 弁 する 形 で 権 限 範 囲 を 拡 大 し 議 会 に 優 148

議 院 内 閣 制 の 二 つのモデルと 実 定 憲 法 論 位 する 内 閣 の 指 導 的 な 地 位 が 確 立 する これ が 内 閣 統 治 型 である 議 院 内 閣 制 を a でみたような 議 会 と 政 府 との 間 の 権 力 分 立 モデルの 視 点 からみると 二 元 的 均 衡 型 よりも 議 会 優 位 議 会 支 配 制 の ほうが 国 政 への 民 意 の 反 映 度 が 強 く 一 元 型 は 内 閣 の 解 散 権 を 限 定 する 方 向 へ 傾 く けれ ども 現 代 民 主 制 モデルのもと 国 政 の 中 心 が 内 閣 に 移 り これに 民 意 を 反 映 させるという 視 点 よりすると むしろ 両 機 関 間 にのみ 視 野 を 限 定 せずに 国 民 による 意 思 決 定 を 重 視 す るための 解 散 権 の 位 置 づけが 民 主 的 要 請 に 適 合 することになる (2) そして 論 者 によっては このような 権 力 分 立 モデルと 民 主 主 義 モデルとを 分 けて 後 者 の 把 握 こそ 真 の 意 味 での 議 院 内 閣 制 だとさ れるのである (3) もっとも ここで 民 主 主 義 というの は 議 会 が 国 民 の 一 般 意 思 を 具 現 するとする 議 会 制 民 主 主 義 とは 異 なる 国 民 による 議 会 政 府 の 正 当 づけという 視 点 からの 現 代 民 主 制 を 意 味 しているごとくである が この 民 主 主 義 の 二 つの 構 想 を 実 定 憲 法 論 と して 果 たして 二 者 択 一 的 に 決 めつけてよいの かについては 吟 味 を 要 するように 思 われる 3. 実 定 憲 法 解 釈 論 としての 議 院 内 閣 制 (1) 解 散 権 のあり 方 という 憲 法 上 の 問 題 を めぐり 権 力 分 立 モデルにおける 二 元 的 均 衡 型 と 議 会 支 配 制 的 な 責 任 本 質 型 現 代 民 主 主 義 モデルといった 類 型 が 提 示 されているが とりわけ 今 日 においては この 最 後 者 が 有 力 に 主 張 されるようになっている (2)いうまでもなく これらの 思 考 モデル は 日 本 国 憲 法 には 改 正 がないので 一 つの 憲 法 のもとでその 中 での 議 院 内 閣 制 の 理 解 にそうした 違 いがあるということである (3)そして かかるモデルの 背 後 には 君 主 主 権 国 民 主 権 人 民 主 権 といった 主 権 論 についてのフランス 憲 法 学 史 上 の 認 識 が ベースとしてあって それらの 歴 史 的 発 展 段 階 に 対 応 した 統 治 組 織 論 があるとされる さきの 国 民 を 含 む 議 会 政 府 の 三 極 構 造 は 積 極 的 市 民 が 選 挙 人 団 として 組 織 される 人 民 主 権 論 からくる 当 然 の 帰 結 であると 主 張 される (4)このような 歴 史 的 観 念 としての 議 院 内 閣 制 モデルの 展 開 は 実 定 法 上 の 議 院 内 閣 制 概 念 を 考 える 上 で 有 益 なもので ある 多 くの 憲 法 上 の 統 治 組 織 原 理 は 近 代 立 憲 主 義 の 歴 史 的 発 展 過 程 のなかで 生 成 し 発 展 してきたものであることは 否 定 できない からである (5)が 問 題 は わが 国 の 日 本 国 憲 法 上 の 議 院 内 閣 制 はどのようなものである か ということである 戦 後 の 日 本 国 憲 法 制 定 過 程 の 議 論 やそ れ 以 降 の 展 開 は さきに 見 た 現 代 民 主 制 モデ ルで 一 貫 してきたわけではない 制 憲 時 は 憲 法 69 条 の 不 信 任 決 議 に 対 抗 して 解 散 権 が 行 使 されるべきものと 考 えられていた かかる 意 味 で 均 衡 型 である が 苫 米 地 事 件 の 最 高 裁 判 決 においていわゆる 統 治 行 為 の 法 理 にな らうような 判 決 が 出 され その 後 の 憲 政 は 憲 法 7 条 のみによる 解 散 が 常 態 化 した 学 説 は 議 会 制 民 主 主 義 の 進 展 にむしろ 肯 定 的 で 議 院 内 閣 制 の 概 念 としては 議 会 支 配 制 的 な 責 任 本 質 制 を 支 持 する 立 場 が 有 力 に 主 張 さ れ 内 閣 による 政 治 的 運 用 に 利 用 される 7 条 解 散 には 批 判 的 であった これも 民 主 主 義 の 一 つのあり 方 である さきの 民 主 主 義 モデルは これとは 別 に 国 民 による 直 接 民 主 制 的 決 着 の 機 会 をむ しろ 歓 迎 すべきものと 評 価 する 内 閣 による 解 散 権 の 行 使 を 民 主 主 義 的 性 格 を 有 するもの として 積 極 的 に 意 義 づけする ここに 現 代 民 主 制 における 議 院 内 閣 制 の 理 念 が 提 示 され ている 均 衡 的 把 握 と 責 任 制 とが 調 和 的 に 把 握 されうる 149

4. 結 び こうした 日 本 国 憲 法 の 解 釈 論 において し かし つぎのような 疑 問 を 抱 いている すなわち うえのごとき 議 院 内 閣 制 をめぐ るいくつかのモデルは いずれも 日 本 国 憲 法 のもとでの 解 釈 学 説 であるが しかし 上 述 した 権 力 分 立 モデルは 歴 史 的 には 君 主 主 権 を 背 景 としていたとされていた ま た 民 主 主 義 モデルというものは 議 会 じし んを 国 民 の 一 般 意 思 を 具 現 するものとなす 国 民 主 権 をストレートに 反 映 するものと は 別 の つまり 議 会 主 権 から 切 り 離 さ れた 人 民 主 権 をベースとしているという 構 造 をなすものとされていた そして その 故 にこれらのうち 最 後 者 である 民 主 主 義 モデ ルが 適 切 であると 主 張 されるのである が こうした 説 明 は 妥 当 であろうか この 見 解 は 日 本 国 憲 法 が 一 定 の 人 民 主 権 を 採 用 するものと 前 提 したうえで あらかじ めその 帰 結 としていた 内 容 のものを 解 釈 論 と して 適 切 であるといっているに 過 ぎないので はないか このようなロジックは 日 本 国 憲 法 という 実 定 法 にそくした つまり こ れを 出 発 点 としての 解 釈 論 といえるのだろう か かかる 論 法 は 議 会 制 民 主 主 義 を 強 調 す る 立 場 からは 別 の 帰 結 をも 同 様 に 主 張 されう るのではないか つまり 議 会 代 表 制 民 主 主 義 の 立 場 からは これを 日 本 国 憲 法 が 採 用 しているが 故 に 議 会 支 配 制 的 な 責 任 本 質 説 が 妥 当 であり 議 会 政 府 の 二 元 的 な 構 成 は 認 められない と どちらも 民 主 主 義 論 の 一 つのあり 方 を 述 べているのである 日 本 国 憲 法 の 実 定 法 の 解 釈 論 とは 言 えないの ではないか また 権 力 分 立 モデルといわれるものも 君 主 主 権 下 の 産 物 ではあっても 今 日 の 日 本 国 憲 法 の 解 釈 論 のもとでは 君 主 主 権 を 通 して 主 張 されているものではあるま い 民 主 主 義 体 制 の 下 で そのような 見 解 が なお 有 意 義 であるとして 主 張 されうるという ことであろう そうすると それらのいずれもが 日 本 国 憲 法 の 解 釈 論 として 妥 当 しうるということ になるのではないか これらを 念 頭 に 置 きな がら 実 定 法 にそくして 解 釈 し 直 す 必 要 があ るだろう (1)まず わが 憲 法 は 君 主 主 権 の 憲 法 ではないので 議 院 内 閣 制 の 権 力 分 立 モデ ルはそのままでは 妥 当 しない が 議 会 と 政 府 との 間 の 対 抗 図 式 と 政 府 の 議 会 に 対 する 責 任 は 今 日 の 憲 法 でも 無 意 味 になったわけで はなく 憲 法 69 条 において 議 会 による 政 府 の 不 信 任 決 議 権 と 内 閣 による 総 辞 職 衆 議 院 の 解 散 権 とが 制 度 づけられている また 憲 法 66 条 3 項 では 国 会 に 対 する 内 閣 の 連 帯 責 任 が 規 定 されている これらは 議 会 と 政 府 と の 間 の 二 元 的 構 造 を 前 提 とする (2)つぎに わが 憲 法 は 国 民 主 権 の 憲 法 である が 他 方 では 代 表 制 民 主 主 義 を 採 用 していることは 憲 法 前 文 の そ もそも 国 政 は 国 民 の 厳 粛 な 信 託 によるもの であつて その 権 威 は 国 民 に 由 来 し その 権 力 は 国 民 の 代 表 者 がこれを 行 使 し その 福 利 は 国 民 がこれを 享 受 する この 憲 法 は かかる 原 理 に 基 くものである というところ から 明 らかである この 国 民 主 権 はいか なる 国 家 権 力 といえども その 権 威 は 国 民 に 由 来 し その 正 当 づけを 受 けなければ 行 使 で きないという 意 味 であるされている (3) 国 会 は 憲 法 43 条 で 両 議 院 は 全 国 民 を 代 表 する 選 挙 された 議 員 でこれを 組 織 す る とされるので 代 表 議 会 といえる 憲 法 前 文 でも 日 本 国 民 は 正 当 に 選 挙 された 国 会 における 代 表 者 を 通 じて 行 動 し 主 権 が 国 民 に 存 することを 宣 言 し この 憲 法 を 確 定 する とも 言 っている 国 民 じしん が 直 接 この 憲 法 を 制 定 するということではな いし それは 事 実 にも 反 しよう (4) 議 院 内 閣 制 について かかる 意 味 での 民 主 主 義 モデル を 考 えると 何 より 150

議 院 内 閣 制 の 二 つのモデルと 実 定 憲 法 論 もまず 議 会 中 心 型 の 議 会 が 強 化 された 責 任 本 質 型 が 想 起 されよう 議 会 の 信 任 を 失 った 政 府 は 総 辞 職 することが 要 請 される 逆 に 内 閣 による 衆 議 院 の 解 散 権 はできるだけ 限 定 的 に 解 釈 されるべきで 例 えば 憲 法 7 条 の みによる 解 散 権 は 天 皇 の 国 事 行 為 の 儀 礼 的 演 出 的 行 為 を 言 い そこからは 内 閣 の 政 治 的 決 定 権 は 到 底 導 出 され 得 ないということ になろう いわゆる 国 民 代 表 (ないし 議 会 が 人 民 の 意 思 を 背 景 とする 半 代 表 )の 立 場 からの 一 つの 論 理 帰 結 である (5)これに 対 して 現 代 民 主 制 の 議 院 内 閣 制 での 民 主 主 義 モデル では す でにみたごとく 内 閣 による 衆 議 院 の 解 散 権 は 直 接 国 民 に 信 を 問 う 機 会 をつくると いう 意 味 において 直 接 民 主 主 義 の 要 請 にか なうので 憲 法 69 条 による 場 合 に 限 らず む しろ 積 極 的 に 憲 法 7 条 による 解 散 権 も 広 く 認 められるべきものとされる ここでは 国 民 による 正 当 づけを 受 けた 内 閣 の 地 位 が 強 調 される けれども その 結 果 としては 権 力 分 立 モデルに 見 られた 議 会 と 政 府 との 間 の 均 衡 型 すなわち 二 元 的 構 造 がここに 新 たな 形 で 民 主 主 義 体 制 のもと 再 現 されていること は 看 過 されえまい さらには 改 めて 国 民 による 正 当 づけ を 問 い 解 散 総 選 挙 後 の 新 たな 国 会 の 召 集 に 伴 って 内 閣 が 総 辞 職 をする( 憲 法 70 条 )とい う 議 会 と 政 府 との 間 での 均 衡 型 が 調 和 的 に 機 能 することになる これが 人 民 主 権 でかつ 半 直 接 的 で あるといって 理 論 づけされることがある (6)さて これらをしかしいま 読 み 直 して みると さきの(4)の 場 合 もいまの(5)の 場 合 も いずれも 民 主 主 義 国 民 主 権 のもとでの 国 家 権 力 に 対 する 国 民 に よる 正 当 づけのあり 方 の 一 態 様 ということ で 理 解 されうるようにみえる わが 国 憲 法 はしかしそれ 以 上 に 君 主 主 権 人 民 主 権 さらにこのなかの 半 代 表 半 直 接 というようなそのいずれかのモデルを 選 択 す ることを 宣 明 にしているわけではなく 憲 法 じしんはもともと 国 民 主 権 のもと 有 権 者 団 をも 含 めてどんな 国 家 機 関 といえど も それじしんが 国 家 を 正 当 づける 次 元 で 語 られた 法 である 国 民 の 一 般 意 思 を 独 占 することはできず それを 個 々に 具 現 するために 国 民 による 正 当 づけを 受 けな くてはならない という 構 成 をとっているに 過 ぎない 議 院 内 閣 制 は かかる 枠 組 みの 中 で 内 閣 が 自 己 の 存 在 をもとにして 議 会 に 対 し 責 任 を 負 う 立 憲 主 義 体 制 でありそれ 以 上 で もそれ 以 下 でもない 現 代 民 主 制 モデルのも とで 優 位 に 立 つ 内 閣 が 自 由 な 解 散 権 を 獲 得 し たということにはならないだろう (7) 最 後 に 平 成 17 年 の 郵 政 民 営 化 法 案 が 衆 議 院 でやっと 可 決 したものの 参 議 院 では 否 決 された これに 対 して 内 閣 が 衆 議 院 を 解 散 し 総 選 挙 後 国 民 の 支 持 を 得 て 再 び 国 会 に 法 案 を 提 出 して 可 決 成 立 させた と いう 一 連 の 出 来 事 に 対 して どのように 見 る かである 憲 法 は 59 条 で 衆 議 院 で 可 決 し 参 議 院 でこれと 異 なつた 議 決 をした 場 合 は 衆 議 院 での 三 分 の 二 以 上 の 多 数 で 再 び 可 決 させるか 法 律 の 定 めるところにより 衆 議 院 が 両 議 院 の 協 議 会 を 開 くことができ るようになっている これが 議 会 内 での 通 常 の 手 続 きである が 政 府 はこの 法 案 を 議 会 内 で 上 記 の 規 定 通 りに 手 続 きしても 成 立 させることはできな いとみた しかも この 郵 政 民 営 化 法 案 成 立 を 内 閣 の 最 重 要 課 題 としてきたのであるか ら その 不 成 立 を 内 閣 に 対 する 不 信 任 決 議 と 同 様 の 意 思 表 明 とみることはそれ 程 に 無 理 は ない そう 考 えると 憲 法 69 条 の 要 件 に 準 じ て 内 閣 が 総 辞 職 をするか または 解 散 権 を 行 使 するかの 選 択 に 至 る 単 純 に 政 府 の 恣 意 的 な 憲 法 7 条 解 散 と 言 うこともできないのでは ないか 解 散 総 選 挙 が 常 に 政 府 の 思 い 通 りの 151

支 持 をもたらすものとは 限 らないし 新 国 会 召 集 後 には 総 辞 職 が 待 っているのである 繰 り 返 しになるが 現 代 民 主 制 の 民 主 主 義 モデルからもたらされるごとくに 内 閣 が 全 く 自 由 に 解 散 権 を 政 治 的 に 濫 用 行 使 しても よいという 論 理 にはならないはずである そ こには なお 権 限 濫 用 抑 制 を 眼 目 として 形 成 された 立 憲 主 義 的 権 力 分 立 を 背 景 とした 議 院 内 閣 制 の 存 立 基 盤 があるというべきではなか ろうか 注 ⑴ ルネ カピタン 時 本 義 昭 訳 議 院 内 閣 制 ( 龍 谷 大 学 社 会 学 部 紀 要 16 号 ( 平 成 3 年 )89 頁 以 下 ⑵ このような J カダール(Jacques Cadart)の 議 院 内 閣 制 論 についての 高 橋 和 之 教 授 による 紹 介 は 国 民 内 閣 制 の 理 念 と 運 用 ( 有 斐 閣 平 成 6 年 )394 頁 参 照 ⑶ 大 石 眞 議 院 内 閣 制 講 座 憲 法 学 第 五 巻 ( 日 本 評 論 社 平 成 5 年 )239 頁 以 下 同 立 憲 民 主 制 ( 信 山 社 1996 年 )179 頁 以 下 152