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別紙3

Transcription:

第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしての シンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 177

第 1 節 中 国 経 済 の 減 速 と 高 まる ASEAN の 存 在 感 アジア 地 域 の 経 済 成 長 が 呼 ばれて 久 しいが 近 年 は 中 国 経 済 の 減 速 が 市 場 関 係 者 の 間 では 非 常 に 重 要 なテーマとなっている 1978 年 に 改 革 開 放 政 策 が 導 入 されて 以 降 2003 年 から2007 年 まで 5 年 連 続 で 二 桁 成 長 を 実 現 する 等 中 国 はアジア 経 済 全 体 の 成 長 を 牽 引 してきた ところが 近 年 は 人 件 費 の 高 騰 や 人 口 ボーナス 期 の 終 焉 ( 労 働 力 人 口 が2015-2020 年 に 増 加 から 減 少 へと 転 じる 見 込 み) リーマンショック 後 の 世 界 的 な 景 気 減 速 に 対 応 した 大 型 財 政 出 動 の 反 動 によるオーバーキャパシティ 問 題 先 進 諸 国 の 経 済 低 迷 に 伴 う 外 需 の 減 速 等 従 来 の 輸 出 投 資 主 導 型 の 成 長 路 線 が 明 確 に 行 き 詰 りつつあ る 内 需 主 導 型 経 済 への 転 換 の 必 要 性 が 高 まる 中 で 発 足 した 周 近 平 政 権 は 2013 年 11 月 の 三 中 全 会 にて 改 革 の 全 面 的 深 化 を 掲 げ 過 去 の 成 長 モデル からの 脱 却 を 図 るために 金 融 システム 改 革 や 汚 職 撲 滅 等 の 構 造 改 革 を 推 し 進 める 政 策 を 進 めている その 一 方 で 経 済 成 長 は 多 少 犠 牲 になっている 側 面 もあり 本 稿 執 筆 時 点 の2014 年 12 月 時 点 では2014 年 は7.5% の 目 標 成 長 率 の 達 成 が 危 うい 状 況 となっており 更 に2015 年 の 成 長 率 は 7 % 程 度 にまで 落 ち 込 む 見 通 しとなっている 図 表 7-1 中 国 労 働 力 人 口 の 推 移 と 変 化 見 通 し ( 出 所 ) 世 界 銀 行 データに 基 づき 作 成 178

図 表 7-2 中 国 のオーバーキャパシティ: 固 定 資 産 投 資 総 額 と 固 定 資 本 形 成 の 違 い 本 7 7 ( 出 所 ) 中 国 国 家 統 計 局 データに 基 づき 作 成 図 表 7-3 減 速 傾 向 にある 中 国 の 成 長 7 7 ( 出 所 ) 中 国 国 家 統 計 局 データに 基 づき 作 成 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 179

かかる 状 況 下 これまで 中 国 に 主 に 生 産 拠 点 として 進 出 してきた 各 国 企 業 中 でも 尖 閣 諸 島 をめぐる 問 題 等 で 日 中 関 係 が 悪 化 したことも 影 響 した 日 本 企 業 は 近 年 より 安 価 な 労 働 力 や 最 終 消 費 市 場 としての 将 来 性 政 治 体 制 や 商 慣 行 上 の 親 和 性 等 を 評 価 して タイやインドネシア ベトナム 等 の ASEAN 地 域 への 投 資 を 積 極 化 している ASEAN は 人 口 動 態 の 面 では 若 い 労 働 力 が 豊 富 で また 消 費 が 大 きく 伸 びていることから 最 終 消 費 市 場 として の 魅 力 も 高 い また 日 本 企 業 にとっては 欧 米 型 の 資 本 主 義 市 場 経 済 システ ムとの 高 い 融 和 性 や 親 日 的 な 国 柄 が 多 いことも 手 伝 い 進 出 先 地 域 として の 人 気 が 高 い さらにはミャンマー 等 のフロンティア 地 域 が 新 たに 市 場 経 済 化 を 進 める 等 将 来 性 も 高 く 評 価 されている 図 表 7-4 日 本 の 対 外 直 接 投 資 ( 国 際 収 支 ベース ネット フロー) ( 出 所 )JETRO データに 基 づき 作 成 一 方 ASEAN は 複 数 の 文 化 慣 習 の 異 なる 地 域 の 集 合 体 であるため 地 域 内 の 経 済 活 動 は 地 域 統 括 拠 点 を 設 立 することで 効 率 的 に 管 理 遂 行 することが できる 事 実 ASEAN に 進 出 済 みの 日 系 企 業 の 多 くは 地 域 統 括 センターと してシンガポール 拠 点 を 有 しているケースが 多 く 企 業 活 動 上 重 要 な 役 割 を 果 たしている 場 合 も 多 い 180

シンガポールは 都 市 国 家 であり 国 土 面 積 や 天 然 資 源 が 極 めて 限 られるこ とから 経 済 政 策 上 は 土 地 当 りの 生 産 性 を 高 める 工 夫 を 重 ねてきた 歴 史 を 持 つ 広 大 な 敷 地 面 積 を 必 要 とする 工 場 や 倉 庫 は 現 在 も 国 内 の 一 部 に 集 積 地 は あるものの シンガポールの 中 心 的 産 業 には 金 融 サービスや 医 療 観 光 IT 等 といった 土 地 当 り 付 加 価 値 の 高 いサービス 業 が 多 い 特 に 金 融 につ いては キャピタルゲイン 課 税 や 相 続 税 等 を 免 除 することで 証 券 ビジネスや 富 裕 層 向 け 金 融 ビジネスを 戦 略 的 に 支 援 しているほか 国 際 金 融 センターと しての 地 位 を 確 立 すべく 通 貨 庁 (Monetary Authority of Singapore)を はじめとする 各 種 行 政 機 関 が 国 際 的 に 金 融 センター シンガポールのプロモ ーションを 行 っている また 地 域 経 済 のハブ 拠 点 としての 魅 力 を 高 める 工 夫 もなされており 港 湾 や 空 港 等 のインフラ 整 備 を 積 極 的 に 行 っているほ か アジア 地 域 統 括 会 社 や 海 運 業 者 には 優 遇 税 制 も 導 入 している 本 章 では 今 後 のアジア 経 済 において ASEAN の 重 要 性 が 高 まることを 踏 まえて 日 本 がアジア 及 び ASEAN の 経 済 成 長 を 金 融 面 で 取 り 込 む 可 能 性 を 探 る 世 界 的 な 国 際 金 融 センターとしての 地 位 を 確 立 しつつあるシンガ ポールの 事 例 を 参 考 に 東 京 に 対 する 金 融 センターとしての 国 際 的 な 評 価 や 東 京 が 持 つ 強 みと 弱 みを 国 内 金 融 取 引 の 集 積 機 能 の 側 面 と クロスボー ダー 型 の 金 融 ハブ 機 能 の 側 面 から 分 析 する また 今 後 の 日 本 の 金 融 センタ ーのあり 方 について 考 察 し 実 務 家 の 立 場 から 政 策 提 言 を 行 う 東 京 の 国 際 金 融 センター 構 想 についてはこれまでも 幾 度 となく 提 唱 されており 90 年 代 以 降 の 円 の 国 際 化 にもさかのぼるテーマであるが 直 近 では 舛 添 東 京 都 知 事 の 下 で 改 めて 提 唱 された 東 京 国 際 金 融 センター 構 想 が 新 しい 本 稿 ではアジ アの 金 融 実 務 界 における 東 京 に 対 する 評 価 が 実 際 には 香 港 やシンガポールに 比 べて 低 い 点 に 焦 点 を 当 て 東 京 の 国 際 金 融 センター 化 が 今 なお 実 現 できて いない 要 因 を 実 務 的 見 地 から 探 ると 共 に 東 京 以 外 の 日 本 の 都 市 地 域 に 新 たな 金 融 センターを 設 ける 等 の 代 替 的 発 想 も 含 めたフレキシブルかつ 現 実 的 な 考 察 を 心 掛 ける 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 181

第 2 節 ASEAN 地 域 統 括 センターとしての シンガポールの 重 要 性 ASEAN への 企 業 進 出 が 加 速 する 中 グローバル 企 業 にとっては 戦 略 的 な 地 域 統 括 センターとしてのシンガポール 拠 点 の 重 要 性 が 高 まっている 元 々 ASEAN は1967 年 ベトナム 戦 争 時 に 米 国 支 援 の 下 で 組 成 された 反 共 地 域 連 合 であり 地 域 の 平 和 と 安 全 保 障 が 当 時 の 主 目 的 であったが 東 西 冷 戦 終 結 後 はその 目 的 が 経 済 統 合 へと 変 わり 2015 年 より 正 式 に ASEAN 経 済 共 同 体 へと 移 行 する 中 国 の 台 頭 に 伴 い ASEAN 加 盟 国 の 間 で 中 国 に 配 慮 せざ るを 得 ない 立 場 の 国 とそうでない 立 場 の 国 との 間 で 足 並 みが 揃 わないケース 等 も 見 受 けられるが 基 本 的 には 現 在 も 政 治 経 済 面 での 最 も 重 要 な 戦 略 的 共 同 体 として 機 能 しており 地 域 内 での 自 由 貿 易 協 定 や 関 税 削 減 通 関 手 続 きの 簡 素 化 等 人 的 物 的 資 本 の 往 来 は 原 則 的 に 自 由 化 され 経 済 統 合 に 向 け て 着 実 に 歩 を 進 めている 状 況 にある しかし タイ インドネシア マレー シア フィリピン ブルネイ あるいはベトナムやカンボジア ミャンマ ー ラオスと 多 種 多 様 な 政 治 経 済 体 制 所 得 水 準 歴 史 文 化 を 有 する 多 民 族 地 域 であることには 変 わりなく そのためビジネスの 現 場 では 国 によって 異 なる 商 慣 行 や 市 場 特 性 消 費 性 向 に 応 じたフレキシブルな 対 応 を 求 められ るケースが 多 い かかる 問 題 に 対 応 する 上 では 地 理 的 なアクセスが 容 易 で 且 つ 地 域 全 体 を 統 括 し 易 い 情 報 物 流 交 通 インフラが 確 保 されている シンガポールの 重 要 性 はグローバル 企 業 に 取 って 非 常 に 高 いものとなってい る <シンガポールに 地 域 統 括 拠 点 を 置 くメリット> ASEAN の 中 心 に 位 置 する 地 理 的 優 位 性 先 進 国 であり グローバルスタンダードに 照 らしても 充 実 している 各 種 イ ンフラ 182

英 語 圏 であり 教 育 水 準 も 高 いことから 現 地 採 用 でグローバル 人 材 を 確 保 しやすい 駐 在 員 及 び 家 族 にとっての 生 活 水 準 の 高 さ 政 治 の 安 定 と 各 種 法 制 度 の 透 明 性 税 務 上 のメリット ASEAN 金 融 センターとしての 地 位 が 確 立 されており 域 内 の 財 務 資 本 取 引 の 一 元 管 理 がし 易 い 各 種 国 際 機 関 やグローバル 金 融 機 関 の 多 くが 進 出 しており 政 治 経 済 面 で の 情 報 集 約 性 が 高 い 第 3 節 シンガポールの 経 済 政 策 1: 土 地 当 り 生 産 性 の 追 求 シンガポールは 先 述 の 通 り 国 土 面 積 が 小 さく 天 然 資 源 も 乏 しい 都 市 国 家 である またその 成 り 立 ちには 近 隣 諸 国 との 争 いの 歴 史 や 欧 米 列 強 諸 国 の 植 民 地 政 策 に 翻 弄 された 歴 史 を 有 する 英 国 領 マレー 連 邦 から 正 式 に 独 立 し た1965 年 以 来 シンガポールの 首 相 は 現 在 までに 3 名 合 理 的 なトップダウ ン 政 治 を 可 能 とする 体 制 を 安 定 的 に 維 持 することは 小 国 が 生 き 延 びるため の 防 衛 上 の 観 点 からも 経 済 上 の 観 点 からも 理 に 適 っている 物 理 的 に 国 力 を 争 う 状 況 となってはひとたまりもないという 危 機 意 識 が 高 い 次 元 で 共 有 され ているため 国 民 からも 現 政 治 体 制 に 対 する 信 任 は 相 対 的 に 高 い 独 立 当 初 のシンガポールは 1 人 当 たり GNP が320 米 ドルにも 満 たない 発 展 途 上 国 であった 60 年 代 には 繊 維 産 業 や 玩 具 等 の 労 働 集 約 型 産 業 に 依 存 していたが シンガポール 政 府 は 土 地 当 り 付 加 価 値 の 生 産 性 を 重 視 し 70 年 代 にはコンピューター 部 品 や 周 辺 機 器 の 加 工 組 み 立 て 80 年 代 にはシリコン ウエハー 製 造 や IC 設 計 また90 年 代 以 降 は 金 融 医 療 IT 等 のサービス 産 業 やバイオメディカル 産 業 と 時 代 ごとにバリューチェーンのハイエンドに シフトすることに 成 功 してきた また 貿 易 ハブとしての 経 済 発 展 も 重 視 さ 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 183

れ 港 湾 やハブ 空 港 等 の 物 流 インフラを 整 備 したほか 近 年 では 自 由 貿 易 協 定 (FTA)をアジア 各 国 と 積 極 的 に 締 結 し アジア 地 域 の 統 括 センターと して 物 流 商 流 を 一 括 管 理 する 役 割 を 果 たしている その 一 方 で 土 地 あた り 生 産 性 が 低 くなりがちな 農 業 セクターが 経 済 に 占 める 割 合 はほぼゼロとな っており 相 当 に 輸 入 依 存 度 の 高 い 経 済 構 造 ともなっている 従 って 輸 入 購 買 力 を 高 位 安 定 維 持 することは 国 益 にも 繋 がっており 通 貨 政 策 は 名 目 実 効 為 替 レートで 年 率 1 2 % 程 度 の 上 昇 バイアスを 維 持 する 方 針 となってい る ともすれば 輸 出 競 争 力 を 高 める 為 に 通 貨 安 政 策 を 採 用 しがちな 日 本 とは 明 確 な 違 いが 表 れているポイントであり 特 にアベノミクスの 影 響 を 受 けた ここ 数 年 の SGD/JPY 相 場 は 中 長 期 的 に 安 定 した 上 昇 トレンドにある な お 自 助 努 力 による 生 産 性 の 改 善 に 限 界 がある 労 働 集 約 的 産 業 は 土 地 も 広 大 で 安 価 な 労 働 力 も 有 するインドネシアやマレーシア 等 の 近 隣 諸 国 へ 自 然 と 移 転 が 促 進 されている 図 表 7-5 ASEAN 地 域 の 基 礎 データ 国 名 人 口 国 土 面 積 名 目 GDP 一 人 当 たり ( 百 万 人 )( 平 方 km) ( 億 ドル) GDP 時 価 総 額 GDP 比 率 売 買 高 GDP 比 率 ブルネイ 0.4 5,270 170 41,127 カンボジア 14.9 176,520 140 944 インドネシア 246.9 1,811,570 8,780 3,557 45.2 10.4 ラオス 6.6 230,800 94 1,417 マレーシア 29.2 328,550 3,050 10,432 156.2 40.8 ミャンマー 52.8 653,290 0 フィリピン 96.7 298,170 2,502 2,587 105.6 13.9 シンガポール 5.3 700 2,765 52,052 149.8 56.6 タイ 66.8 510,890 3,660 5,480 104.7 62.7 ベトナム 88.8 310,070 1,558 1,755 21.1 2.2 ( 出 所 ) 2013 年 世 界 銀 行 データに 基 づき 作 成 184

図 表 7-6 経 済 構 造 比 較 (すべて 対 GDP 比 ) 国 名 政 府 支 出 資 本 形 成 消 費 輸 出 輸 入 農 業 産 業 ( 内 製 造 業 ) サー ビス ブルネイ 17.3 13.6 18.9 81.4 31.2 0.7 71.1 28.2 カンボジア 35.6 24.3 (16.0) 40.1 インドネシア 8.9 36.0 56.6 24.3 25.8 14.4 46.9 (23.9) 38.6 ラオス 11.5 31.9 68.9 36.2 48.4 28.0 36.2 (8.4) 35.8 マレーシア 13.5 25.8 48.9 87.1 75.3 10.1 40.8 (24.2) 49.1 ミャンマー フィリピン 10.5 18.5 74.2 30.8 34..0 11.8 31.1 (20.5) 57.1 シンガポール 9.7 27.0 41.2 200.7 178.5 0.0 26.7 (20.7) 73.2 タイ 13.6 29.7 55.5 75.0 73.8 12.3 43.6 (34.0) 44.2 ベトナム 5.9 27.2 63.3 80.0 76.5 19.7 38.6 (17.4) 41.7 ( 出 所 ) 2013 年 世 界 銀 行 データに 基 づき 作 成 図 表 7-7 シンガポールドルの 名 目 実 効 為 替 レートの 推 移 S ( 出 所 ) 2011-2014 年 の JP モルガンの 名 目 実 効 為 替 レート 指 数 に 基 づき 作 成 月 次 ベース 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 185

図 表 7-8 安 定 した 上 昇 トレンドにある SGD/JPY ( 出 所 ) 2011-2014 年 の Bloomberg データに 基 づき 作 成 月 次 ベース 第 4 節 シンガポールの 経 済 政 策 2: 外 国 資 本 の 有 効 活 用 シンガポールは 外 国 資 本 の 導 入 を 積 極 的 に 行 ってきた 外 国 資 本 による 事 業 所 有 に 関 しては 国 防 関 連 や 公 共 事 業 メディア 等 を 除 いて 原 則 制 限 はな く 出 資 比 率 に 関 しても 全 額 出 資 が 可 能 となっている 事 実 金 融 や 流 通 製 造 業 を 中 心 にこれまで 多 額 の 直 接 投 資 を 受 け 入 れており 直 近 の 対 内 直 接 投 資 額 でみるとその GDP 比 率 は20% を 超 える(2013 年 時 点 ) アジアの 他 国 と 比 較 しても 非 常 に 大 きな 割 合 を 外 国 資 本 が 占 めている 経 済 構 造 となって おり アジア 随 一 のオープンエコノミーとも 言 える なお 外 国 人 による 土 地 所 有 に 関 しては 個 人 企 業 を 問 わずかなり 制 限 さ れている 限 られた 国 土 の 有 効 活 用 を 目 的 に 元 々 全 国 土 の 6 割 近 くが 国 有 地 となっており 民 間 による 土 地 の 取 得 も 市 場 の 需 要 や 政 府 の 政 策 意 向 に 基 づき 原 則 政 府 主 導 で 行 われる 中 でも 外 国 人 及 び 外 国 企 業 については 土 186

地 付 き 戸 建 ての 所 有 がごく 一 部 の 地 域 を 除 いて 禁 止 され また 国 籍 離 脱 者 や 永 住 権 返 上 の 外 国 人 或 いは 相 続 により 宅 地 戸 建 て 住 宅 を 取 得 した 外 国 人 は 離 脱 返 上 或 いは 相 続 から 一 定 期 間 内 の 所 有 宅 地 戸 建 て 住 宅 の 売 却 を 義 務 付 けられている 図 表 7-9 アジア 各 国 の 対 内 直 接 投 資 /GDP 比 率 ル ン ンシ 日 本 ーシ ン シンガポール タ 7 7 7 7 ( 出 所 ) 世 界 銀 行 データに 基 づき 作 成 7 第 5 節 国 際 金 融 センターとしてのシンガポール シンガポールはまた 世 界 有 数 でアジア 随 一 の 国 際 金 融 センターである Z/Yen 社 がロンドン 市 の 協 力 の 下 で 発 行 しているグローバル 金 融 センター インデックス( GFCI )の 最 新 版 (2014 年 9 月 )によると シンガポール はニューヨーク ロンドン 香 港 に 次 ぐ 世 界 4 位 の 金 融 センターとなってい る GFCI は 金 融 実 務 家 のアンケートと 経 済 データや 市 場 データ 及 びイン フラ 整 備 度 合 やビジネス 環 境 インデックス 等 の 統 計 に 基 づいて 算 出 されてお 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 187

り 筆 者 も 定 期 的 にアンケートに 回 答 しているが ファンドマネージャーや インベストメントバンカー エコノミスト 等 の 市 場 関 係 者 及 び 金 融 実 務 家 の 間 では 一 定 の 評 価 を 受 けているソースである 客 観 的 データに 基 づき 且 つ 金 融 実 務 家 の 実 感 にも 一 致 した 比 較 的 フェアなランキングであると 言 えよ う ここ 数 年 ニューヨークとロンドン 香 港 とシンガポールの 上 位 4 都 市 は 同 じ 顔 ぶれとなっており またトップ 4 対 5 位 以 下 の 差 も 例 年 大 きい な お 東 京 は 直 近 のランキングでは 5 位 のサンフランシスコに 次 いで 1 ポイン ト 差 の 6 位 となっているが そのスコアを 基 準 にみると 4 位 のシンガポー ルとの 差 が28ポイントある この28ポイントは 東 京 よりも 下 位 の 都 市 と 比 較 すると 20 位 にランクする 上 海 との 差 に 相 当 しており トップ 4 と 5 位 以 下 の 差 がいかに 開 いているかが 分 かる 188

図 表 7-10 国 際 金 融 センターランキング 上 位 20 都 市 GFCI16(2014/ 9 ) GFCI15(2014/ 3 ) 変 動 ランク スコア ランク スコア ランク スコア ニューヨーク 1 778 1 786 0-8 ロンドン 2 777 2 784 0-7 香 港 3 756 3 761 0-5 シンガポール 4 746 4 751 0-5 サンフランシスコ 5 719 10 711 5 8 東 京 6 718 6 722 0-4 チューリッヒ 7 717 5 730-2 -13 ソウル 8 715 7 718-1 - 3 ボストン 9 705 8 715-1 -10 ワシントン DC 10 704 13 706 3-2 トロント 11 703 14 705 3-2 シカゴ 12 702 15 704 3-2 ジュネーヴ 13 701 9 713-4 -12 バンクーバー 14 700 17 698 3 2 ルクセンブルグ 15 697 12 707-3 -10 フランクフルト 16 695 11 709-5 -14 ドバイ 17 694 29 684 12 10 モントリオール 18 693 16 699-2 - 6 アブダビ 19 692 32 678 13 14 上 海 20 690 20 695 0-5 ( 出 所 ) Z/Yen The Global Financial Centres Index 16 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 189

<GFCI ランキングの 算 出 方 法 > Z/Yen 社 の GFCI ランキングは 大 きく 分 けて 第 三 者 機 関 による 統 計 的 データに 基 づき 算 定 される Instrumental Factors と 金 融 実 務 界 によるア ンケート 形 式 の Financial Centre Assessments の 2 つに 基 づいて 算 定 され る 統 計 スコアの Instrumental Factors は ビジネス 環 境 金 融 センタ ーの 発 展 度 合 インフラ 整 備 人 的 資 本 レピュテーションその 他 一 般 要 素 の 5 つの 項 目 105のファクターについて 世 界 83 都 市 を 評 価 して 算 出 される 評 価 対 象 となる105のファクターのうち 相 対 的 に 重 要 度 の 高 いファクターには 高 度 専 門 性 を 有 する 人 材 の 確 保 のし 易 さ や 規 制 環 境 外 国 の 金 融 市 場 へのアクセスのし 易 さ ビジネスインフラの 整 備 度 合 顧 客 へ の ア ク セ ス 等 が 含 ま れ る 算 定 は EIU(Economic Intelligence Unit) の Global Digital Economy Ranking や Institutional Environment Rating 国 際 連 合 の Telecommunication Infrastructure Index 世 界 銀 行 の Ease of Doing Business Index World Economic Forum の IT Industry Competitiveness Survey 等 の 外 部 指 標 に 基 づいて 統 計 的 に 実 施 さ れる 一 方 の Financial Centre Assessments は 金 融 実 務 家 によるオンラ インアンケート 調 査 結 果 に 基 づき 評 価 される 回 答 者 は 馴 染 みのある 都 市 に 対 してのみ 回 答 することを 前 提 とし 2014 年 9 月 版 の 回 答 実 績 は 回 答 者 数 で 3,633 名 回 答 数 で29,226 件 に 上 る 190

第 6 節 首 都 機 能 型 金 融 センターと クロスボーダーハブ 型 金 融 センターの 違 い 国 際 金 融 センターと 一 口 に 言 っても 実 際 には 様 々なタイプの 都 市 が 含 ま れており 国 際 金 融 センター という 言 葉 の 定 義 自 体 も 明 確 な 基 準 はな い そこで 本 稿 では 金 融 センターが 果 たす 機 能 面 に 着 目 し 首 都 機 能 タ イプ と クロスボーダーハブタイプ とに 分 けて 分 析 する 首 都 機 能 タ イプ と 言 うのは その 都 市 が 自 国 の 経 済 活 動 を 金 融 面 でサポートすること で 金 融 センター 化 しているケースを 指 す GFCI のランキングで 見 ると ニ ューヨークや 東 京 ソウル トロント フランクフルト 上 海 と 言 った 都 市 が 該 当 する これらの 都 市 に 共 通 するのは 自 国 の 言 語 及 び 商 慣 習 に 基 づ き 主 に 自 国 の 金 融 取 引 を 集 積 処 理 する 場 所 として 機 能 していることが 挙 げ られる 国 自 体 の 経 済 規 模 が 大 きくなると 必 然 的 に 集 積 する 金 融 取 引 の 規 模 も 大 きくなるため 金 融 センターとしてのスケール 感 は 大 きくなるもの の 機 能 としては 基 本 的 には 自 国 経 済 の 金 融 インフラの 範 疇 にある 一 方 の クロスボーダーハブタイプ と 言 うのは 内 外 或 いは 外 外 の 金 融 取 引 を 決 済 するハブとして 機 能 しているケースを 指 し ロンドン 香 港 シン ガポール チューリッヒ ルクセンブルグ 等 が 該 当 する なお ロンドンは 英 国 の 金 融 首 都 としての 機 能 と 大 陸 欧 州 やユーロドル 市 場 ユーロ 円 市 場 等 も 含 めたユーロ 資 本 市 場 全 体 のクロスボーダー 金 融 機 能 の 両 方 を 有 してい る 数 少 ない 金 融 センターである 一 方 ニューヨークは 世 界 有 数 の 国 際 都 市 であり ウォール 街 には 世 界 各 国 からプレーヤーが 集 まっているため 非 常 に 国 際 的 な 金 融 センターではあるものの 実 際 の 機 能 としては 米 国 の 金 融 取 引 を 集 積 処 理 する 金 融 首 都 としての 色 合 いが 強 い ちなみにアジアではマレー シアのクアラルンプールが イスラム 金 融 センターとしての 地 位 を 確 立 する ことができれば 自 国 経 済 の 首 都 機 能 とイスラム 諸 国 のクロスボーダー 金 融 機 能 の 両 方 を 有 することになる 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 191

第 7 節 アジア 勢 からの 評 価 が 低 い 東 京 GFCI では 各 都 市 への 評 価 について 回 答 者 の 所 属 地 域 分 布 も 公 表 してい るが 東 京 に 対 する 評 価 の 特 徴 の 一 つにアジア 勢 からの 評 価 が 例 年 低 いこと が 挙 げられる 香 港 やシンガポールに 対 する 評 価 はアジア 地 域 からも 概 ね 高 い 評 価 を 受 けているが 東 京 の 場 合 は 米 州 地 域 からの 評 価 が 高 い 一 方 で ア ジア 地 域 からの 評 価 は 全 地 域 の 中 で 最 も 低 くなっている 筆 者 の 実 感 とし て 香 港 やシンガポールに 拠 点 を 置 く 金 融 マンは 必 ずしもアジア 人 が 多 いわ けではなく 人 種 構 成 はかなり 多 種 多 様 である しかしその 大 多 数 が 職 務 内 容 としてはアジアの 金 融 ビジネスに 携 わっていることから 東 京 に 対 するア ジア 勢 の 評 価 の 低 さはアジアの 金 融 ビジネスにおける 東 京 のプレゼンスの 低 さを 表 していると 考 えられる アジアの 金 融 ビジネスを 行 う 上 で 香 港 やシ ンガポールでなく 敢 えて 東 京 に 拠 点 を 置 くインセンティブは 実 務 界 の 回 答 者 は 今 のところ 感 じていないのが 実 態 と 言 えよう 図 表 7-11 各 都 市 のトータルスコアに 対 する 評 価 者 地 域 別 スコアの 相 対 比 較 ( 出 所 )Z/Yen The Global Financial Centres Index 16 192

第 8 節 都 市 総 合 力 インデックスに 見 る 東 京 の 弱 点 GFCI の 金 融 センターランキングは 都 市 の 総 合 力 を 図 る 各 種 指 標 との 相 関 も 高 い KPMG が 算 出 する City Global Image や IMD の World Competitiveness Scoreboard 等 がよく 知 られるが 本 邦 でも 森 記 念 財 団 都 市 戦 略 研 究 所 が 発 表 する Global Power City Index( 以 下 GPCI )が GFCI との 相 関 が 高 い GPCI では 経 済 R&D 文 化 居 住 環 境 交 通 の 分 野 で 世 界 の 都 市 力 をスコア 化 しており アクター 別 ランキングとして 経 営 者 研 究 者 アーティスト 観 光 者 生 活 者 の 5 タイプからどう 評 価 されているかも 分 析 している GPCI における 東 京 に 対 する 評 価 のうち シンガポールと 比 べて 特 に 低 い 項 目 はアクター 別 の 経 営 者 からの 評 価 である シンガポールに 対 する 経 営 者 評 価 は40 都 市 中 2 位 である 一 方 で 東 京 に 対 するそれは 9 位 となっている 東 京 は 市 場 の 規 模 が 非 常 に 大 きく 経 済 集 積 や 人 的 集 積 の 面 でも 世 界 有 数 の 都 市 であるものの その 弱 点 は 法 規 制 や 市 場 の 魅 力 とされており 特 にビジ ネスの 容 易 性 や 成 長 性 の 面 での 評 価 が 低 い インフラは 既 に 整 っているが 成 長 が 見 込 めない ビジネスが 容 易 でない 都 市 であるという 現 実 の 評 価 を 踏 まえると 果 たして 東 京 がアジアの 成 長 を 取 り 込 む 金 融 センターになりうる のかを 今 一 度 考 えるべきであろう 一 方 のシンガポールは 対 照 的 にビジネ スの 成 長 性 の 項 目 で 高 い 評 価 を 受 けている 先 述 の 通 り シンガポール 自 体 は 都 市 国 家 で 国 内 経 済 の 規 模 は 極 めて 小 さいが 今 後 もアジア 地 域 全 体 の 成 長 を 取 り 込 める 都 市 だとみられていればこその 高 い 評 価 と 言 える 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 193

図 表 7-12 GPCI-2014 分 野 別 スコア 及 びランキング 順 位 総 合 スコア 経 済 研 究 開 発 1 London 1,485.8 Tokyo 345.9 New York 223.2 2 New York 1,362.8 New York 312.8 Tokyo 155.7 3 Paris 1,292.4 Beijing 309.5 London 149.4 4 Tokyo 1,276.1 London 307.7 Los Angeles 134.8 5 Singapore 1,138.6 Hong Kong 267.7 Boston 118.4 6 Seoul 1,117.8 Singapore 265.9 Seoul 111.6 7 Amsterdam 1,055.5 Shanghai 252.7 Paris 111.5 8 Berlin 1,054.9 Zurich 246.7 Singapore 107.1 9 Hong Kong 1,012.8 Sydney 239.5 Chicago 93.4 10 Vienna 1,004.3 Toronto 239.2 San Francisco 84.9 11 Frankfurt 988.1 Seoul 237.4 Osaka 79.8 12 Zurich 973.8 Paris 233.4 Hong Kong 78.1 13 Sydney 968.7 Washington, D.C. 229.1 Washington, D.C. 68.3 14 Beijing 960.3 Vancouver 226.4 Sydney 64.7 15 Shanghai 958.3 Stockholm 222.3 Shanghai 63.1 16 Stockholm 954.3 Geneva 221.5 Berlin 62.5 17 Toronto 938.5 Copenhagen 215.4 Toronto 56.4 18 Copenhagen 921.7 Amsterdam 214.9 Taipei 54.5 19 Madrid 914.8 Berlin 210.3 Moscow 53.5 20 Los Angeles 912.0 Frankfurt 206.8 Stockholm 52.3 21 Istanbul 901.2 Istanbul 198.1 Beijing 51.4 22 Vancouver 894.1 Osaka 192.4 Zurich 50.9 23 Brussels 884.6 Taipei 191.2 Amsterdam 46.0 24 Washington, D.C. 884.4 San Francisco 189.9 Vancouver 41.9 25 Milan 874.3 Kuala Lumpur 188.0 Vienna 40.0 26 Osaka 872.5 Boston 187.4 Fukuoka 39.7 27 Barcelona 869.3 Vienna 186.5 Geneva 39.0 28 Geneva 860.4 Brussels 185.0 Frankfurt 35.1 29 Bangkok 851.0 Chicago 184.5 Brussels 34.9 30 Boston 846.7 Los Angeles 175.7 Istanbul 34.1 31 Chicago 840.9 Moscow 173.5 Copenhagen 33.5 32 San Francisco 832.0 Bangkok 170.5 Madrid 30.9 33 Taipei 816.3 Sao Paulo 168.1 Barcelona 29.2 34 Kuala Lumpur 786.7 Fukuoka 166.2 Bangkok 27.4 35 Moscow 760.3 Madrid 160.8 Kuala Lumpur 26.2 36 Fukuoka 747.4 Mexico City 160.0 Milan 25.7 37 Mexico City 711.7 Milan 154.4 Sao Paulo 17.4 38 Sao Paulo 692.8 Barcelona 145.5 Mexico City 11.0 39 Mumbai 615.3 Mumbai 133.6 Mumbai 10.8 40 Cairo 537.5 Cairo 101.1 Cairo 3.2 ( 出 所 ) 森 記 念 財 団 都 市 戦 略 研 究 所 194

文 化 交 流 居 住 環 境 交 通 アクセス London 347.2 Paris 307.1 Geneva 205.8 London 248.5 New York 260.9 Vancouver 290.7 Stockholm 198.9 Paris 234.6 Paris 243.3 Berlin 288.5 Zurich 196.9 Amsterdam 222.9 Singapore 188.1 Vienna 285.7 Frankfurt 194.5 Frankfurt 217.9 Berlin 160.6 Barcelona 280.8 Singapore 190.5 Seoul 213.8 Tokyo 159.8 Geneva 276.0 Vienna 189.5 Hong Kong 209.2 Beijing 158.7 Zurich 275.4 London 189.0 New York 204.8 Vienna 154.6 Amsterdam 274.2 Copenhagen 183.3 Singapore 191.4 Istanbul 152.4 Milan 273.1 Tokyo 180.9 Istanbul 187.3 Sydney 150.2 Stockholm 273.1 Berlin 179.9 Tokyo 175.8 Los Angeles 145.7 Madrid 272.4 Seoul 175.3 Shanghai 175.5 Seoul 142.2 Osaka 267.9 Madrid 171.6 Bangkok 157.8 Brussels 137.4 Copenhagen 267.8 Amsterdam 167.2 Milan 157.7 Barcelona 133.9 Toronto 267.5 Sydney 164.8 Madrid 157.5 Amsterdam 130.4 Fukuoka 263.7 Sao Paulo 164.4 Brussels 154.8 Bangkok 124.4 Frankfurt 260.0 Paris 162.5 Barcelona 154.2 Madrid 121.6 Tokyo 257.9 Washington, D.C. 161.0 Berlin 153.1 Moscow 117.5 Taipei 255.8 Milan 157.5 Moscow 150.1 Shanghai 117.3 Shanghai 250.1 Hong Kong 157.1 Taipei 149.5 Mexico City 112.4 Brussels 247.9 Los Angeles 152.2 Vienna 148.0 Chicago 109.4 London 244.0 Bangkok 151.7 Copenhagen 142.2 Milan 105.9 Kuala Lumpur 243.5 Fukuoka 150.2 Toronto 139.9 Washington, D.C. 100.1 Seoul 237.5 Vancouver 148.0 Zurich 137.6 Toronto 98.3 Beijing 228.5 San Francisco 145.5 Chicago 136.7 San Francisco 97.6 Mumbai 227.1 New York 145.1 Kuala Lumpur 134.7 Hong Kong 96.6 Istanbul 222.3 Toronto 137.3 Boston 131.9 Stockholm 90.0 Sydney 219.8 Boston 137.0 Beijing 130.5 Boston 79.5 Bangkok 219.2 Taipei 134.4 Sydney 129.7 Copenhagen 79.4 New York 216.0 Kuala Lumpur 132.9 Osaka 129.0 Osaka 74.1 Washington, D.C. 214.0 Osaka 129.2 Stockholm 117.7 Frankfurt 73.9 Mexico City 212.5 Barcelona 125.7 San Francisco 116.0 Vancouver 73.7 Sao Paulo 206.3 Brussels 124.7 Vancouver 113.4 Sao Paulo 68.9 Chicago 204.4 Chicago 112.4 Washington, D.C. 111.9 Zurich 66.4 Hong Kong 204.2 Mumbai 107.3 Cairo 110.9 Kuala Lumpur 61.4 Los Angeles 198.8 Istanbul 106.9 Mexico City 109.2 Cairo 57.1 San Francisco 198.1 Mexico City 106.7 Los Angeles 104.7 Mumbai 47.6 Singapore 195.6 Shanghai 99.5 Fukuoka 103.5 Geneva 31.9 Boston 192.5 Moscow 98.3 Mumbai 88.9 Taipei 30.9 Cairo 183.4 Cairo 81.7 Geneva 86.2 Fukuoka 24.1 Moscow 167.4 Beijing 81.7 Sao Paulo 67.6 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 195

図 表 7-13 GPCI-2014 アクター 別 スコア 及 びランキング 順 位 経 営 者 研 究 者 アーティスト 1 London 58.1 New York 65.1 Paris 56.6 2 Singapore 55.8 Tokyo 51.4 London 52.6 3 Hong Kong 51.2 London 51.1 New York 51.9 4 Beijing 48.2 Paris 45.9 Berlin 49.6 5 Shanghai 47.9 Los Angeles 40.2 Vienna 48.6 6 New York 47.4 Boston 37.2 Amsterdam 45.8 7 Istanbul 47.1 Seoul 35.2 Los Angeles 45.7 8 Paris 47.0 San Francisco 35.1 Tokyo 45.6 9 Tokyo 46.6 Singapore 34.5 Barcelona 44.1 10 Toronto 45.7 Washington, D.C. 32.9 Beijing 43.2 11 Seoul 44.9 Chicago 30.6 Madrid 42.2 12 Vancouver 43.9 Sydney 29.7 Washington, D.C. 40.1 13 Kuala Lumpur 43.4 Osaka 29.0 Milan 39.4 14 Amsterdam 42.5 Beijing 28.9 Mexico City 39.1 15 Stockholm 42.3 Berlin 28.6 Chicago 39.0 16 Berlin 42.2 Hong Kong 26.4 Vancouver 38.0 17 Zurich 41.8 Vancouver 25.8 Shanghai 38.0 18 Taipei 40.9 Zurich 25.5 Toronto 38.0 19 Vienna 40.8 Stockholm 25.3 Frankfurt 37.3 20 Sydney 40.2 Vienna 25.0 Copenhagen 36.8 21 Copenhagen 39.9 Moscow 24.7 Stockholm 36.8 22 Geneva 38.7 Toronto 24.4 Brussels 36.4 23 Frankfurt 38.0 Amsterdam 23.7 Istanbul 35.6 24 Boston 37.4 Geneva 22.6 Bangkok 35.5 25 Bangkok 37.2 Copenhagen 22.6 Osaka 34.2 26 Brussels 36.9 Frankfurt 20.6 Sydney 33.8 27 Washington, D.C. 35.8 Milan 20.1 Sao Paulo 33.2 28 Osaka 34.6 Fukuoka 19.8 Cairo 32.9 29 Madrid 34.4 Shanghai 19.7 Fukuoka 32.7 30 Barcelona 33.6 Taipei 19.4 San Francisco 32.6 31 Milan 33.5 Madrid 19.2 Mumbai 32.5 32 Chicago 33.1 Istanbul 18.8 Moscow 32.0 33 Fukuoka 32.6 Brussels 18.3 Kuala Lumpur 31.7 34 San Francisco 31.5 Mexico City 18.1 Zurich 31.4 35 Los Angeles 31.2 Bangkok 17.2 Seoul 31.4 36 Mumbai 29.8 Barcelona 16.1 Boston 30.8 37 Sao Paulo 28.5 Kuala Lumpur 15.6 Taipei 27.7 38 Moscow 27.1 Sao Paulo 15.4 Geneva 26.6 39 Mexico City 25.9 Mumbai 12.3 Singapore 20.0 40 Cairo 23.5 Cairo 9.2 Hong Kong 18.4 ( 出 所 ) 森 記 念 財 団 都 市 戦 略 研 究 所 196

観 光 客 生 活 者 London 58.0 Paris 62.0 New York 53.6 London 54.9 Paris 51.1 New York 54.0 Istanbul 44.2 Zurich 52.2 Shanghai 43.8 Tokyo 51.8 Tokyo 42.8 Berlin 51.6 Beijing 41.4 Frankfurt 51.2 Barcelona 41.4 Vienna 50.9 Singapore 41.3 Washington, D.C. 49.1 Berlin 41.2 Stockholm 48.4 Bangkok 39.2 Amsterdam 47.0 Vienna 38.4 Milan 46.7 Amsterdam 38.3 Vancouver 46.3 Madrid 37.9 Geneva 46.0 Seoul 37.6 Copenhagen 46.0 Hong Kong 35.4 Madrid 45.7 Toronto 33.6 Boston 45.0 Brussels 33.1 Seoul 44.7 Milan 33.0 Osaka 44.5 Frankfurt 32.1 Hong Kong 44.3 Sydney 31.6 Toronto 43.8 Vancouver 30.9 San Francisco 43.5 Osaka 30.6 Sydney 43.5 Washington, D.C. 30.3 Barcelona 43.1 Mexico City 30.3 Beijing 42.8 Zurich 29.9 Brussels 42.5 Chicago 29.8 Shanghai 41.9 Boston 29.2 Fukuoka 41.6 Taipei 28.8 Singapore 41.5 San Francisco 28.7 Taipei 41.0 Copenhagen 28.5 Los Angeles 39.4 Stockholm 28.2 Chicago 38.2 Cairo 28.2 Moscow 37.1 Kuala Lumpur 27.9 Mexico City 33.8 Los Angeles 27.8 Bangkok 32.2 Moscow 24.9 Istanbul 32.2 Fukuoka 23.4 Sao Paulo 31.4 Mumbai 23.3 Kuala Lumpur 30.5 Geneva 21.6 Mumbai 27.3 Sao Paulo 19.5 Cairo 26.8 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 197

図 表 7-14 GPCI-2014 アジア 主 要 都 市 のアクター 要 素 別 順 位 ( 世 界 40 都 市 中 ) アクター 経 営 者 研 究 者 ア ー テ ィ ス ト 観 光 客 生 活 者 アクター 要 素 対 象 都 市 Bangkok Beijing Fukuoka Hong Kong 1 ) 企 業 や 商 取 引 等 の 一 定 以 上 の 集 積 15 7 39 10 2 ) ビジネスの 成 長 性 13 1 34 8 3 ) ビジネスの 容 易 性 16 37 23 1 4 ) ビジネス 環 境 34 36 31 9 5 ) 人 材 プール( 人 材 の 豊 富 さ) 39 11 34 10 6 ) 関 連 サポート 産 業 の 集 積 8 1 38 11 7 ) 家 族 及 び 従 業 員 にとっての 良 好 な 環 境 28 36 17 31 8 ) 政 治 経 済 災 害 リスク 32 33 1 19 1 ) 質 の 高 い 研 究 機 関 研 究 者 指 導 者 の 存 在 31 10 31 8 2 ) 研 究 機 関 や 研 究 者 の 集 積 37 18 19 11 3 ) 研 究 活 動 における 発 想 や 思 考 に 対 して 刺 激 となる 空 間 機 会 の 存 在 21 20 37 32 4 ) 研 究 者 受 入 態 勢 ( 研 究 費 助 成 や 生 活 費 補 助 など) 36 11 33 24 5 ) 自 らの 研 究 分 野 における 就 業 機 会 29 2 18 21 6 ) 日 常 生 活 の 環 境 ( 住 みやすさ) 30 37 17 23 1 ) 文 化 的 刺 激 30 17 32 35 2 ) アーティストの 集 積 34 15 38 37 3 ) マーケットの 存 在 35 5 39 21 4 ) 創 作 環 境 (スタジオ アトリエ 賃 料 広 さなど) 6 3 11 38 5 ) 日 常 生 活 の 環 境 ( 住 みやすさ) 30 37 20 24 1 ) 文 化 的 魅 力 や 接 触 機 会 25 12 35 40 2 ) 安 全 29 33 1 12 3 ) 観 光 の 対 象 の 存 在 ( 施 設 文 化 等 ) 19 13 39 26 4 ) 一 定 水 準 以 上 の 宿 泊 施 設 7 2 40 9 5 ) 食 事 ( 選 択 肢 や 値 段 等 ) 13 33 38 26 6 ) 買 物 ( 環 境 や 値 段 魅 力 等 ) 11 7 40 17 7 ) 目 的 地 までの 移 動 の 利 便 性 ( 所 要 時 間 運 賃 等 ) 16 21 36 9 1 ) 購 買 環 境 ( 物 価 商 品 の 得 やすさ 等 ) 5 6 30 28 2 ) 生 活 環 境 ( 住 環 境 などの 日 常 の 生 活 のしやすさ 等 ) 28 39 20 26 3 ) 就 業 環 境 ( 収 入 雇 用 機 会 等 ) 21 3 24 17 4 ) 教 育 環 境 35 23 21 3 5 ) 余 暇 活 動 24 18 37 33 6 ) 安 全 30 31 7 9 7 ) 医 療 水 準 40 32 17 30 ( 出 所 ) 森 記 念 財 団 都 市 戦 略 研 究 所 198

対 象 都 市 Kuala Lumpur Mumbai Osaka Seoul Shanghai Singapore Sydney Taipei Tokyo 24 16 13 6 8 5 27 38 1 4 5 40 20 3 6 14 12 39 17 40 23 14 37 2 11 4 26 35 40 18 6 22 10 27 30 5 36 35 16 7 20 3 6 27 4 14 19 28 9 3 10 13 16 7 29 39 23 26 32 21 12 27 10 24 39 1 26 28 21 34 18 21 31 31 12 21 31 11 16 25 14 35 39 7 3 17 6 16 13 1 28 35 31 19 30 4 17 38 7 39 38 22 12 14 16 4 26 3 30 33 12 14 32 22 13 31 1 32 38 12 21 31 18 25 29 5 39 33 31 27 28 26 25 38 7 40 28 36 32 16 33 23 39 17 36 34 15 10 23 24 29 38 4 2 4 16 32 5 40 26 18 30 31 39 16 22 33 21 23 29 9 39 33 34 31 27 38 32 37 15 35 37 2 23 30 16 25 10 8 35 37 28 6 29 4 15 40 8 10 14 32 11 1 5 12 15 13 34 30 14 27 10 7 28 31 1 10 3 34 14 1 35 32 27 20 24 40 31 6 15 7 28 27 11 3 1 31 17 7 39 21 9 36 37 35 15 6 36 7 19 30 2 36 25 15 8 6 22 16 34 1 36 38 10 11 9 4 17 20 8 32 39 36 29 34 20 13 38 16 32 36 1 23 27 19 25 20 11 38 39 24 27 35 36 25 18 21 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 199

第 9 節 東 京 の 国 際 金 融 センター 構 想 は 時 宜 に 適 しているのか? 東 京 国 際 金 融 センター 構 想 に 欠 如 する 国 際 標 準 の 実 務 家 視 点 金 融 庁 の 有 識 者 会 議 が 発 表 した 金 融 資 本 市 場 活 性 化 に 向 けて 重 点 的 に 取 り 組 むべき 事 項 (2013 年 12 月 提 言 その 後 2014 年 6 月 に 追 加 ) を 皮 切 り に 2014 年 5 月 には 東 京 圏 が 国 家 戦 略 特 区 に 指 定 され 大 和 総 研 日 本 経 済 研 究 センター みずほ 総 合 研 究 所 のシンクタンク 3 社 が 共 同 提 言 東 京 金 融 シティ 構 想 の 実 現 に 向 けて を 発 表 東 京 都 では 東 京 国 際 金 融 センター 検 討 タスクフォース が 設 置 され 会 合 を 重 ねる 等 ここへきて 東 京 国 際 金 融 セ ンター 構 想 が 国 内 では 官 民 一 体 となって 動 き 始 めている 様 に 見 える 東 京 の 国 際 金 融 センター 化 構 想 自 体 は 古 くから 存 在 したが 今 なお 実 現 は していない 東 京 都 の 舛 添 知 事 も 幾 度 となく シンガポールや 香 港 上 海 に 先 を 越 される 東 京 の 国 際 的 地 位 の 低 下 に 高 い 危 機 感 を 持 ち 2020 年 の 東 京 オリンピックを 機 に 東 京 を 世 界 の 金 融 センターにする と 意 気 込 みを 述 べて いる 東 京 都 のタスクフォースでは 目 指 す 金 融 センターのイメージを 世 界 中 から 資 金 と 人 材 と 情 報 を 呼 び 込 み 国 内 外 の 必 要 な 分 野 に 資 金 を 供 給 する 拠 点 とした 上 で 1 海 外 の 企 業 人 材 が 東 京 でビジネスをしやすい 環 境 づくり 2 国 内 外 からの 資 金 を 今 後 国 内 で 成 長 が 見 込 まれる 分 野 へ 呼 び 込 む 仕 組 みづくり 3 国 内 の 金 融 資 産 を 預 金 中 心 から その 他 金 融 商 品 への 運 用 に 広 げる ための 仕 組 みづくり 商 品 開 発 4 国 際 金 融 センターで 活 躍 できる 人 材 の 育 成 上 記 の 4 つを 実 現 に 向 けた 課 題 とし これらの 解 決 に 向 けて 東 京 都 国 200

民 間 が 一 体 となって 取 り 組 むとしている 過 去 17 年 に 渡 り 実 務 界 にてアジアの 資 本 市 場 のダイナミックな 発 展 を 目 の 当 たりにしてきた 筆 者 の 率 直 な 感 覚 としては なぜ 今 敢 えて 東 京 なの か を 金 融 センターのユーザーである 投 資 家 やバンカー 等 の 金 融 実 務 家 の 視 点 特 にアジアのプレーヤーの 視 点 から 捉 えた 検 証 が 不 足 しているところ に 大 きな 違 和 感 を 覚 える 先 述 した 通 り 金 融 センターには 国 内 経 済 の 金 融 首 都 機 能 と クロスボー ダー 取 引 のハブ 機 能 がある そして 東 京 は 既 に 国 内 経 済 金 融 に 関 しては 世 界 トップクラスにあると 言 える 世 界 有 数 の 経 済 規 模 を 誇 る 日 本 の 金 融 首 都 として 東 京 では 日 本 語 で 日 本 の 業 界 慣 習 に 基 づき 日 々 国 内 の 金 融 取 引 が 集 積 処 理 されている 一 方 で 東 京 は クロスボーダーハブ 機 能 については 弱 い 日 本 人 同 士 の 金 融 取 引 はルール 慣 習 が 世 界 標 準 とは 異 なっており 英 語 や 税 制 法 規 制 等 クロスボーダーハブ 機 能 を 東 京 に 与 えるには 国 内 金 融 機 能 を 維 持 する 上 で 変 えにくい 側 面 もある しかしアジア 及 び ASEAN の 今 後 の 経 済 発 展 に 派 生 する 取 引 ニーズ 例 えばアジア 域 内 のクロスボーダー 取 引 等 を 取 り 込 むために 必 要 なインフラは 東 京 の 様 な 国 内 型 金 融 首 都 機 能 ではなく むしろクロスボーダー 型 ハブ 機 能 の 方 である 具 体 的 には 例 えば 税 務 上 のメリットのある ファンド 登 記 地 としてのオ フショアセンターを 東 京 以 外 に 作 るのはどうか 現 状 ではアジアに 投 資 する 多 くのファンドがケイマン 籍 やルクセンブルグ 籍 となっているが 実 務 上 は 欧 米 時 間 にファンドの 運 営 管 理 業 務 が 行 われるため アジアとの 時 差 がオペ レーションを 難 しくしている また 基 準 価 額 の 算 出 クオリティも 日 本 籍 ファ ンドほど 精 緻 ではない 日 本 が 経 済 特 区 でアジアのオフショアセンターを 作 り 税 務 上 のメリットも 有 し アジア 時 間 に 日 本 人 の 精 緻 なオペレーション サービスを 提 供 すれば アジアに 投 資 する 相 当 数 のオフショアファンドを 取 り 込 めるのではないか その 為 には 東 京 で 税 制 を 変 えたり 或 いは 特 区 を 作 るよりも アジアとの 交 流 の 歴 史 も 長 く 文 化 風 土 面 でも 融 和 性 が 高 いと 思 わ れる 九 州 沖 縄 等 で 新 たにゼロからオフショアセンターを 作 る 方 が 実 現 性 は 高 いのではなかろうか これまで 世 界 各 地 で 発 展 してきたオフショア 金 融 センターと 比 較 すると 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 201

沖 縄 が 持 つポテンシャルは 特 にアジア 地 域 においては 相 当 高 いことが 見 えて くる 例 えばファンドの 登 記 地 として 沖 縄 がオフショアセンター 化 した 場 合 ファンド 運 営 管 理 ビジネスに 関 連 する IT やオペレーション 等 のバック オフィス 機 能 の 集 積 が 期 待 できよう またこれまでは 日 本 株 運 用 のヘッジフ ァンド 等 が リサーチ 等 の 実 運 用 面 では 日 本 が 有 利 であるものの 税 務 上 の 理 由 で 致 し 方 なくシンガポールや 香 港 に 拠 点 を 移 しているケースが 多 かっ た 沖 縄 が 税 務 面 で 他 の 金 融 センターに 対 抗 できれば 本 来 は 日 本 にいた 方 が 有 利 というケースではその 多 くを 呼 び 込 むことも 可 能 だろう また 沖 縄 ならばロケーション 的 にもアジア 各 国 へのアクセスがし 易 く 時 差 もない 気 候 や 土 地 風 土 の 面 では 非 常 に 魅 力 的 なリゾート 地 でもあるため 国 土 が 狭 いシンガポールや 香 港 よりもライフクオリティはかなり 高 い インターナシ ョナルスクールや 最 先 端 の 医 療 機 関 世 界 各 国 へ 繋 がるハブ 空 港 等 といった 各 種 インフラを 整 備 できれば 日 本 人 に 限 らずアジア 人 や 欧 米 人 にも 質 の 高 い 住 環 境 をアピールできるだろう 東 京 はこれまでもグローバリゼーションの 流 れに 合 わせて 金 融 機 能 も 発 展 拡 大 させようとしてきたが 結 果 として 今 も 日 本 の 国 内 金 融 首 都 機 能 に 留 まっている そもそも 東 京 は ニューヨークになることは 難 しい ニューヨ ークは 世 界 最 大 の 金 融 首 都 であるが グローバルな 集 積 を 実 現 しているのは 米 国 が 世 界 経 済 の 覇 権 国 として 世 界 の 金 融 ルールを 主 導 できたという 側 面 が 強 い 東 京 がニューヨークを 目 指 すには 日 本 が 覇 権 国 になるしかないが これは 都 市 経 済 の 政 策 範 疇 を 超 えた 議 論 である 東 京 がロンドンを 目 指 すことも 現 実 的 ではないだろう 先 述 した 通 り ロ ンドンにはイギリス 国 内 の 首 都 金 融 機 能 と 大 陸 欧 州 を 含 めた EU 全 体 のク ロスボーダーハブとしての 機 能 がある そしてロンドンが 総 合 金 融 センター として 発 展 できた 要 因 には ロンドンが 既 に 有 していた 国 際 プレゼンスと EU 統 合 のための 規 制 緩 和 がある 東 京 がアジアのロンドンになるために は 先 ずアジアの 金 融 センターとしてのプレゼンスを 高 める 必 要 がある 更 に 規 制 緩 和 の 面 では 日 本 側 が 規 制 を 緩 和 するだけでなく 中 国 や ASEAN 側 も 東 京 での 金 融 決 済 日 本 アジア 間 の 資 本 の 出 入 りを 緩 和 しなければな らない そのメリットが 果 たして 今 のアジアにあるのだろうか 先 述 した 通 202

り 東 京 に 対 する 金 融 センターとしての 評 価 が 特 にアジア 勢 の 間 で 低 いと いう 現 実 は 重 い 今 の 日 本 では 現 実 的 には 東 京 がロンドンやニューヨークを 目 指 すより も 東 京 に 欠 如 しているクロスボーダーハブ 機 能 を 東 京 よりも 制 度 を 整 え やすい 別 の 都 市 につくることで 発 展 できる 余 地 の 方 が 大 きいのではないだろ うか 中 国 でも 上 海 が 国 内 金 融 首 都 して 発 展 しつつ オフショアとの 取 引 は 香 港 で 行 うという 共 存 共 栄 が 模 索 されている 同 様 に 東 京 は 引 き 続 き 日 本 経 済 を 日 本 型 金 融 の 集 積 地 として 支 える 一 方 新 たなクロスボーダーハブは 外 内 或 いは 外 外 の 取 引 を 集 積 する 場 所 として アジアで 金 融 ビジネス を 展 開 する 海 外 のプレーヤーに 場 所 を 提 供 してマージンを 稼 ぐ 方 が 現 実 的 で 成 功 見 込 も 高 いのではないだろうか シンガポールが1965 年 の 独 立 以 来 50 年 足 らずで 発 展 途 上 国 から 国 際 的 な 金 融 センターまで 発 展 できた 背 景 には 合 理 的 なトップダウンを 可 能 とする 政 治 体 制 や 土 地 当 りの 生 産 性 を 追 求 する 経 済 政 策 外 国 資 本 を 積 極 的 に 活 用 する 対 外 開 放 性 等 いくつもの 要 因 がある しかし おそらくもっとも 重 要 なポイントはシンガポールという 都 市 国 家 の 政 策 運 営 自 体 が 極 めてビジネ スライクに 行 われていることだろう 金 融 センターというのは 金 融 取 引 の 集 積 地 として 機 能 するところに 本 質 的 な 存 在 意 義 があるが 金 融 センターとし て 発 展 するためには ビジネスを 展 開 する 取 引 主 体 にとってより 魅 力 ある 金 融 サービスを 提 供 できなければならない 国 際 基 準 に 基 づく 金 融 実 務 界 の 声 及 び 世 界 からの 現 実 の 評 価 を 真 摯 に 受 け 止 めた 上 での 民 間 感 覚 での 議 論 を 政 策 当 局 者 には 期 待 したいところであ る 第 7 章 ASEAN 金 融 センターとしてのシンガポールと 日 本 の 金 融 センターのあり 方 203