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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農


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18 国立高等専門学校機構

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Q IFRSの特徴について教えてください

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

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は し が き

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Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

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経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

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官報掲載【セット版】

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

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別紙3

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情 報 通 信 機 器 等 に 係 る 繰 越 税 額 控 除 限 度 超 過 額 の 計 算 上 控 除 される 金 額 に 関 する 明 細 書 ( 付 表 ) 政 党 等 寄 附 金 特 別 控 除 額 の 計 算 明 細 書 国 庫 補 助 金 等 の 総 収 入 金 額 不 算 入 に 関

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定款

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(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

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Transcription:

日 本 の 国 際 競 争 力 強 化 に 向 けた 戦 略 と 課 題 竹 村 敏 彦 1 要 旨 本 稿 では 最 初 に 国 際 競 争 力 および ICT 国 際 競 争 力 の 意 義 などについて 説 明 し 次 に 世 界 経 済 フォーラム(WEF)が 公 表 している 国 際 競 争 力 レポート(Global Competitiveness Report) や 総 務 省 が 公 表 している ICT 国 際 競 争 力 指 標 などの 情 報 をもとに 日 本 の 近 年 の ICT( 国 際 ) 競 争 力 について 考 察 を 行 い 日 本 の 競 争 力 を 強 化 するための 戦 略 について 提 案 を 行 う 最 後 に 新 市 場 の 創 出 と 今 後 の 課 題 および 国 際 展 開 の 可 能 性 について 考 察 する キーワード: 国 際 競 争 力 ICT 国 際 競 争 力 ICT 利 活 用 国 際 展 開 戦 略 1.はじめに 経 済 のグローバル 化 が 進 んでいる 状 況 において 自 国 のみならず 他 国 の 市 場 の 情 勢 等 について 客 観 的 な 視 点 から 把 握 しておくことは 重 要 である また そこから 自 国 の 国 際 的 に 見 た 強 みと 弱 みを 理 解 し 強 みを 活 かし 弱 みをなくすことによってグローバル 化 の 進 む 経 済 において より 優 位 に 立 つことが 可 能 となる これらについて 知 ることができる 1 つのキーワードとして 国 際 競 争 力 または 単 に 競 争 力 というものがある 有 名 な 各 国 地 域 の 国 際 競 争 力 ランキングとしては 国 際 経 営 開 発 研 究 所 (IMD; International Institute for Management Development)が 発 表 している 世 界 競 争 力 年 鑑 (WCY; World Competitiveness Yearbook) 2 や 世 界 経 済 フォーラム(WEF; World Economic Forum) が 発 表 している 国 際 競 争 力 レポート (GCR; Global Competitiveness Report) 3 などが ある 日 本 においても 日 本 経 済 研 究 センターが 作 成 した 世 界 50 カ 国 地 域 潜 在 力 調 査 4 などがある しかしながら 国 際 競 争 力 や 競 争 力 をわれわれはよく 見 聞 きし ているものではあるが 実 はバズワードであることが 知 られている つまり その 定 義 や 尺 度 は 必 ずしも 明 確 なものではないのである これは 上 述 したランキングや 調 査 におい てもそれぞれにおいて 独 自 に 国 際 競 争 力 を 定 義 しているだけでなく ランキングを 算 出 する 評 価 方 法 も 大 きく 異 なっているため 注 意 が 必 要 となる それゆえに これらのラ ンキング 結 果 で 一 喜 一 憂 するのではなく わが 国 のグローバル 競 争 における 強 みと 弱 みを 知 るためには その 中 身 について 吟 味 する 必 要 がある そのために 次 節 において まず IMD の WCY WEF の GCR 日 本 経 済 研 究 センターの 世 界 50 カ 国 地 域 潜 在 力 調 査 の 概 要 特 色 を 概 観 することにする なお WCY と GCR のランキングの 比 較 などについ ては 小 針 (2013)が 詳 しいので 参 照 されたい 1 佐 賀 大 学 経 済 学 部 准 教 授 2 http://www.imd.org/wcc/ 3 http://www.weforum.org/issues/global-competitiveness 4 http://www.jcer.or.jp/research/world/index.html 1

情 報 通 信 技 術 (ICT; Information and Communications Technology)の 普 及 進 展 は 生 活 の 質 の 向 上 のみならず 企 業 活 動 の 効 率 化 生 産 性 の 向 上 などをはじめとして 国 内 外 の 経 済 活 動 に 大 きく 寄 与 していることは 周 知 の 事 実 である( 篠 﨑, 2003; 西 村 峰 滝, 2004; 竹 村, 2008) この ICT に 関 するいくつかの 国 際 指 標 ランキングも 存 在 している 5 この 中 から 本 稿 では WEF が GCR とは 別 に 毎 年 発 表 している グローバル 情 報 技 術 報 告 書 ( GITR; Global Information Technology Report) 6 と 総 務 省 が 発 表 している 日 本 の ICT 産 業 の 国 際 競 争 力 を 調 べた ICT 国 際 競 争 力 指 標 について 第 3 節 で 概 観 することに する 国 際 競 争 力 と 同 様 に ICT 国 際 競 争 力 もまた 調 査 毎 に 様 々な 定 義 がされている 次 節 と 第 3 節 にて 国 際 競 争 力 および ICT 国 際 競 争 力 について 概 観 したのちに 第 4 節 に て 日 本 におけるとりわけ ICT に 関 する 検 討 課 題 および 今 後 の 展 望 について 議 論 するとと もに グローバル 競 争 の 中 で 日 本 が 展 開 できる 戦 略 について 考 えたい 2. 国 際 競 争 力 2.1. 国 際 競 争 力 の 概 要 第 1 節 において 国 際 競 争 力 はバズワードであるといった 理 由 を ここで 簡 単 ではあ るが 説 明 したい 国 際 競 争 力 といっても 国 家 として 企 業 として 個 別 の 製 品 として など さまざまなレベルで 考 えられる 本 稿 では 主 として 国 家 レベルで 捉 えることにす る しかしながら 国 家 レベルで 捉 えるとしても 国 際 競 争 力 という 概 念 は 様 々な 定 義 がされ それと 同 時 に 様 々な 測 り 方 がある 7 表 1 には 本 稿 で 概 観 する IMD ランキングと WEF ランキングの 概 要 を 示 している 8 IMD ランキングと WEF ランキングともに 国 や 地 域 の 競 争 力 の 包 括 的 な 評 価 を 試 みている 点 では 共 通 しているが その 中 で 用 いられている 国 際 競 争 力 の 意 味 や その 尺 度 指 標 お よびその 作 成 方 法 も 全 くもって 異 なる IMD ランキングでは 国 際 競 争 力 を グローバル 企 業 にとっての 企 業 の 力 を 保 つ 環 境 を 創 出 維 持 する 環 境 が 整 っているか の 視 点 で 評 価 し ているのに 対 して WEF ランキングでは 国 際 競 争 力 を 国 の 生 産 力 や 収 益 力 のレベルを 決 定 する 諸 要 素 に 焦 点 を 当 てている 点 に 違 いがある 勿 論 いずれのランキングにおけ る 国 際 競 争 力 もある 種 の 企 業 の 活 動 しやすさ(ビジネス 環 境 の 土 壌 )を 表 している 点 では 共 通 している 5 これらの ICT 国 際 指 標 の 傾 向 の 詳 細 については 総 務 省 (2012)を 参 照 されたい 6 http://www.weforum.org/issues/global-information-technology 7 学 術 的 には 国 際 競 争 力 という 概 念 について 批 判 がある 例 えば ポール クルーグマ ン 教 授 は 貿 易 とは 国 家 間 でお 互 いに 利 益 をもたらす 交 換 であり 国 家 を 企 業 と 見 立 て 貿 易 を 市 場 における 巡 る 勝 ち 負 けのゼロサム 的 認 識 が 生 んだ 幻 想 に 過 ぎない そもそも 国 際 競 争 力 という 概 念 は 明 確 には 存 在 しない と 指 摘 し 批 判 している(Krugman, 1997) 8 1989 年 から 1995 年 まで IMD と WEF は 共 同 で 国 際 競 争 力 ランキングを 発 表 していた が 1996 年 以 降 は 別 々にランキングを 発 表 している 2

表 1 IMD ランキングと WEF ランキングの 概 要 IMD ランキング WEF ランキング 調 査 主 体 国 際 経 営 開 発 研 究 所 (IMD) 世 界 経 済 フォーラム(WEF) 資 料 世 界 競 争 力 年 鑑 (WCY) 国 際 競 争 力 レポート(GCR) 調 査 対 象 国 地 域 数 * 60 148 国 際 競 争 力 の 定 義 意 味 経 済 財 政 インフラなどの 分 野 で 評 価 し グローバル 企 業 にとっ てのビジネス 環 境 の 整 備 状 況 国 の 生 産 力 レベルを 決 定 する 諸 要 素 ( 制 度 やインフラ 教 育 など) の 組 み 合 わせ 項 目 指 標 の 評 価 方 法 各 種 統 計 データ 及 び 調 査 対 象 国 の 経 営 者 層 へのアンケート 調 査 結 果 * WCY2013 GCR2013-2014 の 国 地 域 数 である 表 2 には IMD ランキングにおける 大 項 目 および 中 項 目 表 3 には WEF ランキングに おける 大 項 目 および 中 項 目 をそれぞれ 示 している なお これらの 項 目 がなぜ 選 ばれたか についてはいずれのランキングでも 特 に 言 及 されていない IMD ランキングは 4 つの 大 項 目 ( 経 済 状 況 政 府 の 効 率 性 ビジネスの 効 率 性 インフラ)でもって 評 価 される さら に それぞれの 大 項 目 は 5 つの 中 項 目 (20 項 目 )で 構 成 されており それはさらに 300 以 上 もの 小 項 目 から 構 成 されている 小 項 目 としては 経 済 状 況 に 家 計 消 費 支 出 GDP 経 常 収 支 物 価 上 昇 率 為 替 レートなど 政 府 の 効 率 性 に ジニ 係 数 一 般 政 府 負 債 総 計 政 府 予 算 収 支 など ビジネスの 効 率 性 には 顧 客 満 足 度 社 会 的 責 任 労 働 力 成 長 率 など インフラには 英 語 の 堪 能 さ コンピュータの 使 用 シェア 健 康 寿 命 R&D の 総 支 出 な どがある なお IMD ランキングにおける 中 項 目 は 全 て 同 じ 重 み 付 け(1/20)がされてい る 9 一 方 で WEF ランキングは 3 つの 大 項 目 ( 基 礎 的 条 件 効 率 性 向 上 要 因 イノベー ション 要 因 )でもって 評 価 され さらにそれは 中 項 目 (12 項 目 ) 100 以 上 もの 小 項 目 か ら 構 成 されている 小 項 目 としては 制 度 的 環 境 に 組 織 犯 罪 企 業 の 倫 理 的 行 動 テロ に 対 するビジネスコスト 無 駄 な 政 府 支 出 など インフラ 整 備 に 鉄 道 インフラの 質 電 力 供 給 の 質 固 定 電 話 数 など マクロ 経 済 に 政 府 負 債 残 高 政 府 予 算 収 支 インフレー ションなど 初 等 教 育 保 健 衛 生 に マラリアのビジネスへの 影 響 マラリアの 罹 患 寿 命 初 等 教 育 就 業 率 など 高 等 教 育 に 教 育 システムの 質 高 等 教 育 就 業 率 マネジメン トスクールの 質 学 校 におけるインターネットアクセスなど 商 品 市 場 の 効 率 性 に 顧 客 適 応 度 買 い 手 の 洗 練 度 地 域 競 争 の 激 しさ 輸 入 の GDP 比 農 業 制 作 コスト 市 場 支 配 の 広 さなど 労 働 市 場 の 効 率 性 に 労 使 関 係 の 協 力 支 払 と 労 働 制 男 性 に 対 する 女 性 の 労 働 力 の 割 合 雇 用 慣 行 など 金 融 市 場 に 金 融 サービスの 可 用 性 ベンチャービジネ スの 可 用 性 株 式 市 場 の 規 制 など 技 術 的 応 力 に 最 新 技 術 の 可 用 性 個 人 のインターネ ット 利 用 率 モバイルブロードバンドの 加 入 者 数 など 市 場 規 模 に 国 内 市 場 規 模 海 外 市 場 規 模 など ビジネスの 洗 練 度 に 地 域 サプライヤーの 量 地 域 サプライヤーの 質 生 産 プロセスの 洗 練 度 競 争 優 位 の 性 質 など イノベーションに イノベーション 能 力 企 9 中 項 目 における 小 項 目 数 はそれぞれで 異 なり それに 対 しての 重 み 付 けもまた 異 なる 3

業 の R&D 支 出 R&D における 産 学 連 携 科 学 者 技 術 者 の 利 活 用 などがある なお WEF ランキングにおける 中 項 目 は 国 地 域 の 一 人 あたり GDP に 応 じて 重 み 付 けされてい る しかしながら 基 礎 的 条 件 効 率 性 向 上 要 因 イノベーション 要 因 の 重 み 付 け の 方 法 が 国 地 域 によって 異 なり ダブルスタンダードであるとの 批 判 がある 10 それゆ えに IMD では 小 国 や 開 発 途 上 の 国 でも 上 位 にくることがある 一 方 で WEF では 先 進 国 の 方 が 有 利 になるという 傾 向 がある IMD ランキングおよび WEF ランキングにおける 項 目 は 統 計 データから 算 出 されている ものもあれば 経 営 者 層 を 対 象 としたアンケート 調 査 結 果 から 算 出 されるものもある ア ンケート 調 査 結 果 を 用 いた 場 合 主 観 的 な 自 己 評 価 になるために 評 価 結 果 は 必 ずしも 各 国 の 実 情 に 即 した 妥 当 なものにならない 可 能 性 があることには 注 意 が 必 要 である 表 2 IMD ランキングの 評 価 項 目 大 項 目 経 済 状 況 政 府 の 効 率 性 ビジネスの 効 率 性 インフラ 中 項 目 国 内 経 済 (25) 財 政 (12) 生 産 性 効 率 性 (11) 基 礎 インフラ(25) 貿 易 (24) 租 税 政 策 (13) 労 働 市 場 (23) 技 術 インフラ(23) 国 際 投 資 (17) 制 度 的 枠 組 (13) 金 融 (17) 科 学 インフラ(23) 雇 用 (8) 物 価 (4) ビジネス 法 (20) マネジメント(9) 社 会 的 枠 組 (12) 意 識 と 価 値 (7) 健 康 と 環 境 (27) 教 育 (16) ( ) 内 は 最 新 版 の 小 項 目 数 を 表 している 表 3 WEF ランキングの 評 価 項 目 大 項 目 基 礎 的 条 件 効 率 性 向 上 要 因 イノベーション 要 因 中 項 目 制 度 的 環 境 (22) 高 等 教 育 (8) ビジネスの 洗 練 度 (9) インフラ 整 備 (9) 商 品 市 場 の 効 率 性 (16) イノベーション(7) マクロ 経 済 (5) 労 働 市 場 の 効 率 性 (8) 初 等 教 育 保 健 衛 生 (10) 金 融 市 場 (8) 技 術 適 応 力 (7) 市 場 規 模 (2) ( ) 内 は 最 新 版 の 小 項 目 数 を 表 している 日 本 においても 日 本 経 済 研 究 センターが 作 成 した 国 際 競 争 力 と 類 似 の 概 念 である 国 地 域 潜 在 競 争 力 を 調 べた 世 界 50 カ 国 地 域 潜 在 力 調 査 がある 11 この 調 査 について も 触 れておきたい 潜 在 競 争 力 とは 現 状 における 経 済 成 長 の 結 果 ではなく 将 来 に 向 け ての 競 争 力 と 定 義 している( 日 本 経 済 研 究 センター, 2011) この 調 査 においては 計 算 された 潜 在 競 争 力 はある 時 点 でのその 後 10 年 間 の 競 争 力 の 潜 在 的 な 能 力 を 表 すとされて いる そして この 潜 在 競 争 力 は 8 つの 大 項 目 ( 国 際 化 企 業 教 育 金 融 政 府 科 学 技 術 インフラストラクチャ(インフラ= 社 会 資 本 ) IT)から 構 成 されている 特 に 10 これらの 点 については 小 針 (2013)が 詳 しい 11 http://www.jcer.or.jp/research/world/index.html 4

国 際 化 や 教 育 科 学 技 術 などの 順 位 が 高 い 国 地 域 は 長 期 的 な 潜 在 競 争 力 を 保 持 してい ると 考 えられる なお これらの 項 目 指 標 は アンケート 調 査 結 果 などを 用 いずに 入 手 可 能 な 経 済 社 会 データをもとに 定 量 的 に 分 析 している 点 ( 主 観 的 な 評 価 が 入 っていな い 点 )が 特 徴 の 一 つである また 指 標 作 成 において 主 成 分 分 析 を 行 い 国 や 地 域 をラン キング 付 けしている 点 において IMD ランキングや WEF ランキングよりも 客 観 性 がある といえる しかしながら 2014 年 2 月 時 点 で 2010 年 までしか 公 表 されていない 2.2. 国 際 競 争 力 ランキング 表 4 には 過 去 5 年 間 の IMD ランキングの 上 位 の 推 移 を 示 している 表 4 を 見 て 分 かる ように IMD ランキングは 5 年 間 において 若 干 の 順 位 の 入 れ 替 えはあるものの 香 港 やア メリカは 上 位 にとどまっている また 上 述 したように IMD ランキングは 小 国 開 発 途 上 国 にとって 有 利 となることから 実 際 に スイスやシンガポールといった 国 地 域 が 上 位 に 位 置 している 2013 年 の IMD ランキングでは 1 位 がアメリカ 2 位 がスイス 3 位 が 香 港 となっている 日 本 に 関 しては 全 60 カ 国 地 域 の 中 で 24 位 であり 前 年 よりも 3 位 順 位 を 上 げた また アジア 地 域 においては 11 カ 国 地 域 中 7 位 である 表 4 IMD ランキング(2009~2013 年 ) 2009 2010 2011 2012 2013 1 位 アメリカ シンガポール 香 港 香 港 アメリカ 2 位 香 港 香 港 アメリカ アメリカ スイス 3 位 シンガポール アメリカ シンガポール スイス 香 港 4 位 スイス スイス スウェーデン シンガポール スウェーデン 5 位 デンマーク オーストラリア スイス スウェーデン シンガポール 6 位 スウェーデン スウェーデン 台 湾 カナダ ノルウェー 7 位 オーストラリア カナダ カナダ 台 湾 カナダ 8 位 カナダ 台 湾 カタール ノルウェー アラブ 首 長 国 連 邦 9 位 フィンランド ノルウェー オーストラリア ドイツ ドイツ 10 位 オランダ マレーシア ドイツ カタール カタール 日 本 17 位 日 本 27 位 日 本 26 位 日 本 27 位 日 本 24 位 総 数 55 57 58 59 60 表 5 には 過 去 5 年 間 の WEF ランキングの 上 位 の 推 移 を 示 している 表 5 を 見 て 分 かる ように WEF ランキングでは 過 去 5 年 間 においてスイスが 連 続 1 位 となっている 2013-2014 年 の WEF ランキングでは 1 位 スイス 2 位 がシンガポール 3 位 がフィンラ ンドとなっている これは 2012-2013 年 と 同 じである 日 本 に 関 しては 全 148 カ 国 地 域 の 中 で 9 位 であり 前 年 よりも 1 位 順 位 を 上 げた また アジア 地 域 においては 23 カ 国 地 域 中 3 位 である 5

表 5 WEF ランキング(2009-2010~2013-2014) 2009-2010 2010-2011 2011-2012 2012-2013 2013-2014 1 位 スイス スイス スイス スイス スイス 2 位 アメリカ スウェーデン シンガポール シンガポール シンガポール 3 位 シンガポール シンガポール スウェーデン フィンランド フィンランド 4 位 スウェーデン アメリカ フィンランド スウェーデン ドイツ 5 位 デンマーク ドイツ アメリカ オランダ アメリカ 6 位 フィンランド 日 本 ドイツ ドイツ スウェーデン 7 位 ドイツ フィンランド オランダ アメリカ 香 港 8 位 日 本 オランダ デンマーク イギリス オランダ 9 位 カナダ デンマーク 日 本 香 港 日 本 10 位 オランダ カナダ イギリス 日 本 イギリス 総 数 133 139 142 144 148 表 6 を 見 て 分 かるように 過 去 5 年 間 において 1 位 が 香 港 2 位 がシンガポール 3 位 がアメリカという 状 況 が 続 いている また 若 干 の 順 位 の 変 動 はあるものの 10 位 までの 国 地 域 にはこの 5 年 間 で 大 きな 変 化 はないことがうかがえる また 日 本 に 関 しては この 5 年 間 で 12 位 から 14 位 の 間 にとどまり 1980 年 代 や 1990 年 代 と 比 べて 大 幅 に 順 位 を 下 げている(1980 年 に 6 位 1990 年 に 9 位 であった) アジア 地 域 での 相 対 的 な 順 位 も 低 下 傾 向 にある なお 2010 年 の 結 果 には 2011 年 3 月 に 起 きた 東 北 関 東 大 震 災 の 影 響 は 考 慮 されていないことを 踏 まえると 2011 年 にはさらに 順 位 を 下 げる 可 能 性 が 多 分 にあることが 予 想 される 表 6 潜 在 力 調 査 総 合 ランキング 2006 2007 2008 2009 2010 1 位 香 港 香 港 香 港 香 港 香 港 2 位 シンガポール シンガポール シンガポール シンガポール シンガポール 3 位 アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ 4 位 スイス イギリス ドイツ スイス ドイツ 5 位 ベルギー スイス オランダ ドイツ スイス 6 位 オランダ オランダ スウェーデン スウェーデン スウェーデン 7 位 イギリス ドイツ スイス オランダ オランダ 8 位 スウェーデン スウェーデン イギリス ノルウェー ノルウェー 9 位 ドイツ ノルウェー ノルウェー イギリス イギリス 10 位 カナダ ベルギー ベルギー ベルギー ベルギー 日 本 12 位 日 本 13 位 日 本 12 位 日 本 14 位 日 本 14 位 総 数 50 50 50 50 50 * 潜 在 力 調 査 は 2010 年 までしか 発 表 されていないため 2006 年 から 2010 年 となってい る 6

IMD ランキングや WEF ランキング 潜 在 力 調 査 総 合 ランキングは 総 合 順 位 よりも 詳 細 な 分 析 が 可 能 な 個 別 の 評 価 指 標 ( 大 項 目 や 中 項 目 小 項 目 )に 注 目 することで 国 際 競 争 力 の 強 みと 弱 みを 捉 えることができる 表 7 には IMD ランキング 大 項 目 別 の 過 去 5 年 間 における 日 本 の 順 位 の 推 移 を 示 してい る 2013 年 において ビジネスインフラの 順 位 が 相 対 的 に 高 く 2012 年 よりも 7 位 順 位 を 上 げている 一 方 で 政 府 の 効 率 性 の 順 位 は 2012 年 よりも 3 位 順 位 を 上 げて 45 位 とな っているものの 順 位 は 低 い 2008 年 と 比 較 すると 経 済 状 況 政 府 の 効 率 性 ビジネス の 効 率 性 ビジネスインフラともに 順 位 が 低 下 している とりわけ 政 府 の 効 率 性 が 大 き な 課 題 となっていることが 予 想 できる さらに 2013 年 の 個 別 指 標 ( 小 項 目 )を 見 てみる と 2012 年 と 同 様 に 高 順 位 の 項 目 と 低 順 位 の 項 目 にはそれほど 大 きな 違 いは 見 られない そして 政 府 の 効 率 性 における 政 府 予 算 支 出 一 般 政 府 負 債 総 計 政 府 予 算 収 支 法 人 税 率 などが 2012 年 のランキング 同 様 に かなり 下 位 である 表 7 IMD ランキング 大 項 目 別 順 位 ( 日 本 ) 2009 2010 2011 2012 2013 総 合 順 位 17 27 26 27 24 経 済 状 況 (Economic Performance) 24 39 27 24 25 政 府 の 効 率 性 (Government Efficiency) 40 37 50 48 45 ビジネスの 効 率 性 (Business Efficiency) 18 23 27 33 21 ビジネスインフラ(Infrastructure) 5 13 11 17 10 表 8 には WEF ランキング 中 項 目 別 の 過 去 5 年 間 における 日 本 の 順 位 の 推 移 を 示 して いる 2013-2014 年 において ビジネスの 洗 練 度 が 連 続 で 1 位 であり また 市 場 規 模 やイ ノベーションも 相 対 的 に 高 い 順 位 となっており イノベーション 要 因 ( 大 項 目 )は 国 際 競 争 力 の 順 位 の 向 上 に 寄 与 していることがわかる 一 方 で マクロ 経 済 は 144 カ 国 地 域 中 127 位 と 低 い 順 位 となっている 2009-2010 年 と 比 較 すると マクロ 経 済 労 働 市 場 の 効 率 性 市 場 規 模 イノベーションが 順 位 を 下 げていることがわかる とりわけ マクロ 経 済 が WEF ランキングの 順 位 を 下 げている 理 由 になっていることが 予 想 できる さらに 2013-2014 年 の 個 別 指 標 ( 小 項 目 )を 見 てみると 2012-2013 年 と 同 様 に 高 順 位 の 項 目 と 低 順 位 の 項 目 にはそれほど 大 きな 違 いは 見 られない 具 体 的 には ビジネスの 洗 練 度 は 9 項 目 中 8 項 目 が 10 位 以 内 であり イノベーションも 7 項 目 中 5 項 目 が 10 位 以 内 に 入 っ ていた 一 方 で マクロ 経 済 の 政 府 予 算 収 支 と 政 府 債 務 残 高 商 品 市 場 の 効 率 性 の 農 業 政 策 コスト 輸 入 の GDP 比 が 2012-2013 年 と 同 様 に かなり 下 位 に 位 置 している 7

表 8 WEF ランキング 中 項 目 別 順 位 ( 日 本 ) 2009-2010 2010-2011 2011-2012 2012-2013 2013-2014 総 合 順 位 8 6 9 10 9 制 度 的 環 境 28 25 24 22 17 インフラ 整 備 13 11 15 11 9 マクロ 経 済 97 105 113 124 127 初 等 教 育 保 健 衛 生 19 9 9 10 10 高 等 教 育 23 20 19 21 21 商 品 市 場 の 効 率 性 17 17 18 20 16 労 働 市 場 の 効 率 性 12 13 12 20 23 金 融 市 場 40 39 32 36 23 技 術 適 応 力 25 28 25 16 19 市 場 規 模 3 3 4 4 4 ビジネスの 洗 練 度 1 1 1 1 1 イノベーション 4 4 4 5 5 表 9 には 潜 在 力 調 査 個 別 項 目 における 2010 年 までの 日 本 の 順 位 の 推 移 を 示 している 2010 年 では 科 学 技 術 ( 人 口 あたり R&D 研 究 者 数 などの 項 目 で 構 成 されている)の 2 位 企 業 ( 財 サービス 輸 出 入 合 計 額 の GDP 比 や 製 造 業 の 労 働 生 産 性 などの 項 目 で 構 成 され ている)の 5 位 と 順 位 が 高 いが 他 の 項 目 に 関 しては 10 位 を 下 回 っている とりわけ 金 融 ( 銀 行 の 流 動 性 準 備 の 資 産 に 対 する 比 率 などの 項 目 で 構 成 されている)は 42 位 と 順 位 がかなり 低 い インフラ( 道 路 舗 装 率 や 送 配 電 ロスの 比 率 などの 項 目 で 構 成 されている) に 関 してはこの 5 年 間 で 順 位 の 変 動 はなく 27 位 を 維 持 したままである また 固 定 電 話 回 線 普 及 率 やパソコン 普 及 率 ブロードバンド 普 及 率 などの 項 目 で 構 成 される IT に 関 し ては じわじわと 順 位 を 下 げる 傾 向 にあることがわかる 表 9 潜 在 力 調 査 個 別 項 目 ( 日 本 ) 2006 2007 2008 2009 2010 総 合 順 位 12 13 12 14 14 国 際 化 17 17 17 16 18 企 業 5 4 5 5 5 教 育 11 11 15 14 14 金 融 31 32 35 41 42 政 府 30 32 24 30 26 科 学 技 術 2 2 2 2 2 インフラ 27 27 27 27 27 IT 18 15 18 20 21 8

これらのランキングを 踏 まえると 日 本 はビジネス 環 境 や 技 術 革 新 研 究 開 発 費 の 支 出 の 多 さなどである 程 度 高 い 評 価 を 受 けているといえるが マクロ 経 済 の 脆 弱 性 などがマイ ナス 要 因 となっていることがわかる 言 い 換 えると マクロ 経 済 要 因 として 財 政 税 制 等 に 課 題 があることがわかる また 人 材 に 関 する 要 因 としても 理 数 教 育 高 等 教 育 外 国 語 教 育 等 の 教 育 面 および 女 性 の 労 働 力 化 雇 用 の 柔 軟 性 外 国 人 雇 用 等 の 労 働 市 場 面 に 課 題 があることがわかる さらに 技 術 適 応 力 に 関 する 要 因 として ICT の 活 用 に 関 する 法 制 度 にも 課 題 があるといえる 3.ICT 国 際 競 争 力 ここでは WEF が 発 表 している グローバル 情 報 技 術 報 告 書 ( GITR; Global Information Technology Report)と 総 務 省 が 発 表 している ICT 国 際 競 争 力 指 標 につい て 第 3 節 で 概 観 する いずれの 報 告 書 における ICT 国 際 競 争 力 は 異 なる 意 味 を 持 っている 前 者 はネットワーク 整 備 指 数 (Networked Readiness Index) によって 総 合 した 全 体 的 な 充 実 度 でもって ICT 国 際 競 争 力 を 測 っているのに 対 して 後 者 は 市 場 シェア( 世 界 市 場 に 占 める 日 本 企 業 の 売 上 高 シェア)と 輸 出 額 シェア( 世 界 の 輸 出 額 合 計 に 占 める 日 本 の 輸 出 額 のシェア)でもって 測 られ 前 者 は 企 業 競 争 力 ( 日 本 企 業 の 世 界 市 場 における 競 争 力 ) 後 者 は 輸 出 競 争 力 ( 企 業 立 地 における 国 としての 競 争 力 )の 観 点 から 国 際 競 争 力 を 捉 えよ うとしている そのため ICT 国 際 競 争 力 といっても 概 念 が 違 うことに 注 意 されたい 表 10 には WEF の ICT ランキングの 評 価 項 目 を 示 している このランキングは 各 国 地 域 の ICT 充 実 度 につき 政 策 ビジネス 環 境 (Environment) インフラやコンテンツ の 対 応 力 (Readiness) 実 際 の 利 用 (Usage) 経 済 社 会 への 影 響 力 (Impact)の 4 つ のカテゴリーによって 評 価 するものである なお これは 2012 年 版 から 評 価 項 目 および 構 成 が 大 きく 変 更 されている それまでは カテゴリーとして 環 境 構 成 指 標 ( 中 項 目 と して 市 場 環 境 行 政 制 度 環 境 インフラ 環 境 ) 対 応 力 構 成 指 標 ( 中 項 目 として 個 人 の 対 応 力 ビジネス 対 応 力 行 政 の 対 応 力 ) 利 用 構 成 指 標 ( 中 項 目 として 個 人 の 利 用 ビジネスの 利 用 行 政 の 利 用 )の 3 つがあった そのため 2012 年 以 降 とそれ 以 前 のラ ンキング( 総 合 )を 比 較 するには 注 意 が 必 要 である また 中 項 目 は 50 以 上 もの 小 項 目 から 構 成 されている 小 項 目 の 内 容 等 の 改 変 もあるが 一 番 大 きな 変 更 は インパクト 指 標 が 新 たに 導 入 されていることである 表 10 WEF-ICT ランキングの 評 価 項 目 大 項 目 環 境 構 成 指 標 対 応 力 構 成 指 標 利 用 構 成 指 標 インパクト 中 項 目 行 政 制 度 環 境 (9) インフラとデジタ 個 人 の 利 用 (7) 経 済 的 インパクト ビジネスとイノベ ルコンテンツ(5) ビジネスの 利 用 (4) ーション 環 境 (9) 適 正 価 格 (3) スキル(4) (6) 行 政 の 利 用 (3) 社 会 的 インパクト (4) 大 項 目 中 項 目 の 内 容 は 最 新 版 (2013 年 版 )のものである ( ) 内 は 最 新 版 の 小 項 目 数 を 表 している 9

表 11 には 過 去 5 年 間 の WEF-ICT ランキングの 上 位 の 推 移 を 示 している これを 見 て 分 かるように WEF-ICT ランキングではスウェーデンやシンガポール フィンランドな どが 常 に 上 位 にきていることがわかる 同 じ WEF による GCR( 表 5)と 見 比 べると シ ンガポールは 2009-2010 年 から 2013 年 までいずれも 2 位 となっている そして 近 年 は 上 位 10 位 にそれほど 大 きな 変 動 はないことが 見 てとれる 特 徴 としては GCR と 同 様 に スウェーデンなどの 北 欧 諸 国 が 上 位 を 占 めている 日 本 に 関 しては 全 144 カ 国 地 域 の 中 で 21 位 であり 前 年 よりも 3 位 順 位 を 下 げる 結 果 となった 日 本 は ここ 5 年 間 でじり じりと 順 位 を 下 げている 表 11 WEF-ICT ランキング(2008-2009~2013) 2008-2009 2009-2010 2010-2011 2012 2013 1 位 デンマーク スウェーデン スウェーデン スウェーデン フィンランド 2 位 スウェーデン シンガポール シンガポール シンガポール シンガポール 3 位 アメリカ デンマーク フィンランド フィンランド スウェーデン 4 位 シンガポール スイス スイス デンマーク オランダ 5 位 スイス アメリカ アメリカ スイス ノルウェー 6 位 フィンランド フィンランド 台 湾 オランダ スイス 7 位 アイスランド カナダ デンマーク ノルウェー イギリス 8 位 ノルウェー 香 港 カナダ アメリカ デンマーク 9 位 オランダ オランダ ノルウェー カナダ アメリカ 10 位 カナダ ノルウェー 韓 国 イギリス 台 湾 日 本 17 位 日 本 21 位 日 本 19 位 日 本 18 位 日 本 21 位 総 数 134 133 138 142 144 表 12 と 表 13 には WEF-ICT ランキング 大 項 目 および 中 項 目 別 の 過 去 5 年 間 における 日 本 の 順 位 の 推 移 を 示 している 上 述 したように 2012 年 版 からそれ 以 前 と 評 価 項 目 が 変 わっているため 2 つの 表 に 分 けている カテゴリーの 1 つである 利 用 構 成 指 標 は 2012 年 以 降 10 位 以 内 に 入 っている この 理 由 は 小 項 目 の 構 成 も 変 わっているので 直 接 比 較 はできないが 利 用 構 成 指 標 の 中 の ビジネスの 利 用 がこの 5 年 間 上 位 に 位 置 してい るためと 考 えられる また 個 人 の 利 用 も 一 度 2009-2010 年 で 26 位 に 下 がったものの それ 以 外 は 13 位 となっている さらに 環 境 構 成 指 標 の 中 の 行 政 制 度 環 境 はこの 5 年 間 20 位 以 内 には 入 っているものの 順 位 を 大 きく 上 げられてはいない 2012 年 および 2013 年 において 日 本 の 総 合 順 位 に 大 きくマイナスの 影 響 を 与 えている 項 目 としては 適 正 価 格 が 考 えられる(2012 年 では 78 位 2013 年 では 92 位 ) それ 以 前 では 個 人 の 対 応 力 がそれに 当 たる 適 正 価 格 の 小 項 目 では 携 帯 電 話 料 金 がかなり 低 順 位 (2012 年 は 138 位 2013 年 は 136 位 )にあり これはそれ 以 前 の 個 人 の 対 応 力 の 小 項 目 におい ても 100 位 以 上 に 位 置 していた しかしながら 適 正 価 格 の 小 項 目 インターネットの 価 格 は 2012 年 と 2013 年 ともに 1 位 であった(この 小 項 目 が 作 られてからずっと 1 位 で ある) 2012 年 以 前 の 個 人 の 対 応 力 については 上 述 したように 携 帯 電 話 料 金 や 家 庭 10

用 電 話 加 入 初 期 費 用 (2009-2010 年 で 123 位 2010-2011 年 で 134 位 )などがこの 項 目 の 順 位 を 下 げる 要 因 となっていることがわかる これまで 日 本 の 携 帯 電 話 スマートフォン の 料 金 は 高 額 な 携 帯 電 話 やスマートフォンをインセンティブと 引 き 換 えに 分 割 払 いで 購 入 させ 高 額 な 月 額 料 金 で 回 収 するという 従 来 のビジネスモデルにより 高 止 まりしていた が もしユーザ 獲 得 のために( 新 たなビジネスモデルによる) 価 格 競 争 が 起 これば この 項 目 は 順 位 を 大 きく 伸 ばすかもしれない さらに 上 述 したが 表 12 および 表 13 を 見 てわかるように ビジネスの 利 用 の 小 項 目 の 多 く( 例 えば イノベーション 能 力 は 2012 年 と 2013 年 でともに 1 位 企 業 レベルの 技 術 吸 収 力 は 2012 年 が 3 位 で 2013 年 が 4 位 である)が 上 位 にいる 2012 年 より 新 たに 導 入 されたインパクト 指 標 についてもここで 簡 単 に 触 れておきたい 経 済 的 インパクトでは 知 識 集 約 的 労 働 の 順 位 は 26 位 で 変 化 はないが それ 以 外 の 小 項 目 はいずれも 順 位 を 上 げている 一 方 で 社 会 的 インパクトは 学 校 でのインターネット 接 続 の 小 項 目 などで 順 位 を 下 げたため 2012 年 よりも 5 位 順 位 を 下 げている ちなみに インターネット 接 続 の 項 目 は 以 前 の 中 項 目 個 人 の 利 用 に 含 まれていた 中 項 目 の ス キル の 中 にある 教 育 システムの 質 や 高 等 教 育 就 業 率 といった 教 育 関 連 の ICT の 利 用 は 以 前 には 個 人 の 適 応 力 に 含 まれており その 結 果 この 項 目 が 低 調 であった これらの 結 果 からから 教 育 面 を 中 心 とした ICT 利 活 用 の 推 進 についての 検 討 が 必 要 であるように 思 える 表 12 WEF-ICT ランキング 中 項 目 別 順 位 ( 日 本 )(2012-2013) 2012 2013 総 合 順 位 18 21 環 境 構 成 指 標 26 26 行 政 制 度 環 境 16 19 ビジネスとイノベーション 環 境 39 37 インフラとデジタルコンテンツ 22 24 対 応 力 構 成 指 標 27 28 適 正 価 格 78 92 スキル 22 13 利 用 構 成 指 標 8 9 個 人 の 利 用 13 13 ビジネスの 利 用 3 2 行 政 の 利 用 21 27 インパクト 17 17 経 済 的 インパクト 10 8 社 会 的 インパクト 26 31 11

表 13 WEF-ICT ランキング 中 項 目 別 順 位 ( 日 本 )(2008-2009~2010-2011) 2008-2009 2009-2010 2010-2011 総 合 順 位 17 21 19 環 境 構 成 指 標 20 21 22 市 場 環 境 12 28 30 行 政 制 度 環 境 18 20 18 インフラ 環 境 20 25 23 対 応 力 構 成 指 標 20 38 36 個 人 の 対 応 力 31 68 80 ビジネス 対 応 力 11 13 15 行 政 の 対 応 力 25 38 37 利 用 構 成 指 標 18 8 14 個 人 の 利 用 13 26 13 ビジネスの 利 用 4 3 4 行 政 の 利 用 34 22 19 2012 年 からインパクト 指 標 が 導 入 されたが それ 以 外 にも 2012 年 と 2013 年 の 小 項 目 においてもその 内 容 の 一 部 が 改 変 されている このことからもわかるように ICT 国 際 ランキングを どのような 基 準 尺 度 でもって 評 価 すればよいか 試 行 錯 誤 しているように 思 える 例 えば 環 境 構 成 指 標 の 市 場 環 境 においては 2012 年 から 知 的 財 産 権 の 保 護 やソフトウェアの 著 作 権 ICT に 関 する 法 律 などの 項 目 が 作 られている これらについて いくつかの 小 項 目 でそのランキングは 低 調 であるが 国 際 社 会 経 済 で 優 位 性 を 持 つため には 更 なる 整 備 等 を 行 い 評 価 を 上 げることが 期 待 される 12 日 本 では 総 務 省 が 平 成 20 年 (2008 年 )より 毎 年 ICT 産 業 の 国 際 競 争 力 の 強 化 に 資 するため ICT 国 際 競 争 力 指 標 を 策 定 し 公 表 している これは これまで 見 てきたラン キングとは 異 なり 日 本 の ICT 産 業 の 国 際 競 争 力 を 明 らかにしようとしたものである そ のため ICT 国 際 競 争 力 指 標 は 上 記 の WEF-ICT ランキングなどとは 異 なる 具 体 的 に は 市 場 シェア( 世 界 市 場 に 占 める 日 本 企 業 の 売 上 高 シェア)と 輸 出 額 シェア( 世 界 の 輸 出 額 合 計 に 占 める 日 本 の 輸 出 額 のシェア)でもって 測 られ 前 者 は 企 業 競 争 力 ( 日 本 企 業 の 世 界 市 場 における 競 争 力 ) 後 者 は 輸 出 競 争 力 ( 企 業 立 地 における 国 としての 競 争 力 )の 観 点 から 国 際 競 争 力 を 捉 えようとしている また 対 象 領 域 も 通 信 情 報 システム/ サービス および 放 送 /メディア の 分 野 による 区 分 と サービス 端 末 機 器 お よび デバイス のレイヤによる 区 分 をもとに 主 要 サービス 製 品 事 業 部 門 を 分 類 と なっている 12 ここでも 注 意 すべきことがある WEF-ICT ランキングの 項 目 は 調 査 対 象 国 地 域 の 約 3 分 の 2 以 上 からデータが 得 られることが 指 標 として 採 用 する 条 件 とされている しか し 新 技 術 の 普 及 の 実 態 はデータが 入 手 しにくく この 条 件 に 合 致 しない この 考 え 方 は 先 端 技 術 よりも 陳 腐 化 した 技 術 に 有 利 に 働 くことになる それゆえ 日 本 においては 不 利 に 働 くこともある 12

( 出 所 : 総 務 省 (2013a) 平 成 25 年 版 ICT 国 際 競 争 力 指 標 ) 図 1 ICT 国 際 競 争 力 指 標 の 構 成 この ICT 国 際 競 争 力 指 標 で 対 象 となっている 品 目 の 中 で 日 本 の 企 業 競 争 力 が 強 いもの (シェアが 25% 以 上 )は 8 品 目 (コピー 機 プリンタ 液 晶 テレビ DVD/ブルーレイレ コーダ 光 ファイバ ディスクリート 半 導 体 オプトエレクトロニクス 携 帯 電 話 用 液 晶 デバイス) 逆 に 企 業 競 争 力 が 弱 いもの(シェアが 5% 以 下 )は 9 品 目 (アプリケーション ソフトウェア インフラ ソフトウェア 携 帯 電 話 機 モバイルインフラ LAN スイッチ 企 業 向 けルータ デスクトップ PC プロセッサ PC 用 液 晶 デバイス)となっている 企 業 競 争 力 が 強 い 品 目 の 中 でもコピー 機 とプリンタは 平 成 24 年 版 に 比 べてシェアは 増 えて いるが それ 以 外 の 品 目 のシェアは 減 っている 特 に 競 争 力 が 強 い 品 目 が 含 まれる 端 末 機 器 デバイスは 全 体 的 な 傾 向 として 競 争 力 が 低 下 傾 向 にあることがわかる なお 端 末 機 器 に 関 しては 世 界 の 市 場 規 模 自 体 が 縮 小 傾 向 にある 特 に DVD/ブルーレイレ コーダに 関 しては 21 年 版 と 比 較 すると 市 場 規 模 は 57.6%も 縮 小 している また 輸 出 競 争 力 が 強 い 品 目 は 2 品 目 (デジタルカメラとディスクリート 半 導 体 ) 逆 に 輸 出 競 争 力 が 弱 いものは 15 品 目 ( 携 帯 電 話 機 モバイルインフラ テレビ 放 送 送 信 機 など)となっ ている 13 平 成 25 年 版 においては 一 部 の 品 目 を 除 いて 10% 以 下 のシェアに 留 まり 特 に 端 末 機 器 では 輸 出 額 シェアが 5%に 満 たないものが 大 半 である また 平 成 24 年 版 と 比 較 しても 多 くの 品 目 においてシェア またそもそも 世 界 の 総 輸 出 額 の 規 模 自 体 が 減 少 し ていることがわかる 他 方 で 輸 出 競 争 力 において 世 界 の 総 輸 出 額 が 増 加 した 中 で 日 本 の 輸 出 額 シェアが 大 きく 減 少 した 品 目 として コピー 機 その 他 半 導 体 デバイス デジタ ルカメラがあ る( 図 2) 図 2 を 見 て 分 かるように ここ 5 年 間 で この 3 品 目 に 関 しては 日 本 と 同 様 に 北 米 や 欧 州 のシェアも 縮 小 している 一 方 で アジア 太 平 洋 地 域 のシェアが 拡 大 していることがわかる 13 平 成 25 年 版 ICT 国 際 競 争 力 指 標 では 企 業 競 争 力 と 異 なり 輸 出 額 シェアにおいてシ ェアが 10% 以 上 の 品 目 を 輸 出 競 争 力 が 強 い 品 目 シェアが 5% 以 下 のものを 輸 出 競 争 力 が 弱 い 品 目 としていることに 注 意 されたい 13

( 出 所 : 総 務 省 (2013a) 平 成 25 年 版 ICT 国 際 競 争 力 指 標 ) 図 2 日 本 の 輸 出 額 シェアが 大 きく 減 少 した 品 目 4. 考 察 国 際 競 争 力 ランキングにおける 2013 年 の 日 本 の 総 合 順 位 は IMD ランキングが 60 カ 国 地 域 中 24 位 WEF ランキングで 148 カ 国 地 域 中 9 位 となっている 過 去 5 年 間 の 総 合 順 位 の 推 移 を 見 れば 前 者 の 順 位 は 若 干 低 下 傾 向 後 者 の 順 位 は 10 位 以 内 に 位 置 し てはいるが 横 ばいである 上 述 したように これらのランキングにおける 国 際 競 争 力 の 定 義 が 異 なるため 個 々のランキングの 総 合 順 位 が 国 の 経 済 や 社 会 の 評 価 を 全 て 表 している わけではないから この 結 果 の 見 方 には 注 意 が 必 要 である しかしながら この 2 つのラ ンキングを 構 成 するカテゴリー( 項 目 ) またその 更 に 中 身 を 見 ることによって 共 通 した 日 本 経 済 の 強 みと 弱 みが 見 える 強 みは IMD ランキングの ビジネスインフラ WEF ランキングの ビジネスの 洗 練 度 市 場 規 模 イノベーション が 挙 げられ 逆 に 弱 みは IMD ランキングの 政 府 の 効 率 性 WEF ランキングの マクロ 経 済 が 挙 げられ る また 同 時 に 見 た 日 本 経 済 センターによる 国 地 域 潜 在 力 調 査 のランキングにおいて もほぼ 同 様 の 傾 向 が 見 てとれる つまり 強 みはビジネスインフラであり 弱 みは 財 政 関 連 であると 言 える 弱 みの 財 政 関 連 についてはすぐに 対 応 が 可 能 ではないが 経 済 の 活 性 化 が 行 われることで 次 第 と 問 題 は 解 消 に 向 かうと 考 えられる 勿 論 そのための 様 々な 施 策 を 行 う 必 要 がある 強 みについては 世 界 最 先 端 の ICT 基 盤 を 利 活 用 して 様 々な 課 題 ( 少 子 高 齢 化 医 師 不 足 協 働 教 育 の 実 現 地 域 経 済 の 活 性 化 等 )に 対 応 することで 新 たなモデルを 構 築 し 世 界 において 優 位 性 を 保 つことが 期 待 できる 続 いて これらの 国 際 競 争 力 と 関 連 する ICT に 関 する 国 際 競 争 力 について 見 たところ WEF-ICT ランキングでは 2013 年 は 144 カ 国 地 域 中 21 位 となり 過 去 5 年 間 の 総 合 順 位 はほぼ 横 ばいである そしてその 構 成 項 目 を 見 ると 利 用 構 成 指 標 は 10 位 以 内 に 位 置 しているが それ 以 外 のものはそれほど 順 位 が 高 くない 特 に 携 帯 電 話 の 価 格 ( 対 14

応 力 構 成 指 標 の 構 成 項 目 )が 総 合 順 位 および 該 当 カテゴリー(2012 年 以 降 は 適 正 価 格 それ 以 前 は 個 人 の 対 応 力 )の 順 位 を 下 げる 要 因 となっていることがわかった 一 方 で インターネットの 価 格 はこの 小 項 目 が 作 られてから 連 続 で 1 位 となっている つまり 日 本 は インターネット ブロードバンドの 価 格 は 安 いものの 携 帯 電 話 の 価 格 は 高 いと いった 状 況 にあり 携 帯 電 話 の 新 たなビジネスモデルを 期 待 するところである また 小 項 目 では ビジネスの 利 用 がここ 5 年 間 で 上 位 にランキングしていることも 踏 まえると 日 本 の ICT 国 際 競 争 力 ひいては 日 本 の 産 業 競 争 力 や GDP を 向 上 させていくためには 高 速 の 通 信 インフラ ICT を 活 用 したイノベーションの 創 出 が 期 待 される(ビジネスの 利 用 の 小 項 目 イノベーション 能 力 の 順 位 は 2 年 連 続 で 1 位 となっている)( 総 務 省, 2012, 2013b) 特 に 近 年 注 目 されているクラウドサービスやビッグデータの 利 活 用 が 積 極 的 に 行 われば さらなる 強 みになると 思 われる 一 方 で 利 用 に 関 してビジネスにおいては 強 みとなっているが 個 人 および 政 府 の 利 用 はインフラ 環 境 が 整 っているもののそれほど 強 みとなっていないことが 懸 念 事 項 である 様 々な 理 由 が 考 えられるが 個 人 の 利 用 に 関 し て 理 由 の 1 つとして インターネットリテラシーや 情 報 セキュリティへの 不 安 があるの ではないかと 思 われる 総 務 省 (2013b)によれば インターネット 利 用 への 不 安 感 を 抱 いている 割 合 が 約 60%と 報 告 されている さらに サービス 内 容 で 見 ると ソーシャル メディアの 利 用 や 商 品 サービスの 購 入 取 引 の 利 用 に 不 安 を 抱 いているとのこと である 14 このようなインターネットリテラシーの 向 上 や 情 報 セキュリティへの 不 安 を 払 拭 するための 教 育 訓 練 等 も 今 後 必 要 となる 教 育 に 関 しては WEF-ICT ランキングの 結 果 からもその 必 要 性 がうかがえる 日 本 の ICT 産 業 の 国 際 競 争 力 を 調 べた ICT 国 際 競 争 力 指 標 からは 企 業 競 争 力 で 見 た 強 みとなる 品 目 は 数 品 あったものの 輸 出 競 争 力 で 見 た 強 みとなる 品 目 は 少 なく さらに それらの 市 場 規 模 は 縮 小 傾 向 にあることがわかった また 輸 出 競 争 力 をつけてきている 地 域 としては 北 米 や 欧 州 ではなく アジア 太 平 洋 地 域 であることがわかり その 地 域 に 対 する 戦 略 についても 考 える 必 要 がある 5.おわりに 本 稿 では 国 際 競 争 力 について IMD の 世 界 競 争 力 年 鑑 と WEF の 国 際 競 争 力 レ ポート を 中 心 に また ICT 国 際 競 争 力 について WEF の グローバル 情 報 技 術 報 告 書 総 務 省 の ICT 国 際 競 争 力 指 標 によって 近 年 のランキングおよびグローバル 経 済 にお ける 日 本 のランキングについて 概 観 してきた そこから 国 際 競 争 力 において 日 本 の 強 みがビジネスインフラであり 弱 みが 財 政 関 連 であることがわかった これは 少 なくとも ここ 5 年 共 通 したものである また ICT 国 際 競 争 力 に 関 しては インターネット ブロ ードバンドの 価 格 が 安 価 である 一 方 で 携 帯 電 話 の 価 格 が 高 価 となっていること ビジネ スの ICT 利 用 は 高 い 評 価 を 受 けている 一 方 で 個 人 の ICT 利 用 はそれほど 評 価 が 高 くな いといった 二 面 性 をもっていることがわかった これらの 乖 離 を 解 消 するための 政 策 が 今 後 求 められる 特 に 世 界 的 に 見 ても 低 価 格 で 高 品 質 のインターネット ブロードバンド 14 WEF-ICT ランキングにおいても 個 人 の 利 用 の 小 項 目 である ソーシャルメディア の 利 用 の 順 位 は 2013 年 で 74 位 と 低 かった 15

環 境 が 整 っているにもかかわらず 個 人 の ICT 利 用 に 対 する 評 価 が 低 いのは インターネ ット 情 報 セキュリティへの 不 安 が 1 つの 理 由 として 考 えられる そのため 利 活 用 を 促 進 するような 政 策 やリテラシー 教 育 が 望 まれる また 最 後 に 今 回 様 々な 指 標 を 見 てきたが 調 査 において 国 際 競 争 力 の 定 義 は 独 自 に 行 われており この 順 位 でもって 一 喜 一 憂 する 必 要 はない しかしながら 各 調 査 の 特 徴 を 理 解 した 上 で これらの 調 査 指 標 の 詳 細 に 目 を 向 けることによって 日 本 の 持 つ 強 みと 弱 みを 把 握 し それを 今 後 の 経 済 発 展 につなげられるような 戦 略 政 策 を 考 えるこ とが 望 まれる 参 考 文 献 [1] Krugman, P.(1997)Pop Internationalism, MIT Press(ポール クルーグマン 良 い 経 済 学 悪 い 経 済 学 山 田 洋 一 ( 訳 ) 日 本 経 済 新 聞 社, 2000) [2] 小 針 泰 介 (2013) 国 際 競 争 力 ランキングから 見 た 我 が 国 と 主 要 国 の 強 みと 弱 み レ ファレンス 平 成 25 年 1 月 号, 109-132 [3] 篠 﨑 彰 彦 (2003) 情 報 通 信 技 術 革 新 の 経 済 効 果 - 日 米 経 済 の 明 暗 と 逆 転 日 本 評 論 社 [4] 総 務 省 (2013a) 平 成 25 年 版 ICT 国 際 競 争 力 指 標 http://www.soumu.go.jp/main_content/000255646.pdf [5] 総 務 省 (2012) 平 成 24 年 版 情 報 通 信 白 書 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/pdf/index.html [6] 総 務 省 (2013b) 平 成 25 年 版 情 報 通 信 白 書 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h25/pdf/index.html [7] 竹 村 敏 彦 (2008) 情 報 通 信 技 術 の 経 済 分 析 多 賀 出 版 [8] 西 村 清 彦 峰 滝 和 典 (2004) 情 報 技 術 革 新 と 日 本 経 済 - ニュー エコノミー の 幻 を 超 えて 有 斐 閣 16